JP5541406B2 - セメント製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プレヒータにセメント原料を供給しながらキルンで焼成してセメントクリンカを製造する装置に関する。
本願は、2012年8月28日に出願された特願2012-187322号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
セメント製造装置には、セメント原料を予熱するためのプレヒータが設けられている。このプレヒータは、複数のサイクロンが上下方向に連結状態とされたものであり、その最下段のサイクロンがセメントキルンの窯尻部に接続されている。セメント原料は、ミルにより粉体にされた後、このプレヒータの途中位置で最上段のサイクロンとその下段のサイクロンとの間を連結している導管からプレヒータに供給される。プレヒータ内においては、セメント原料は、セメントキルンから上昇してくる排ガスの流れに乗って最上段のサイクロンに導かれた後、各サイクロンを順次下降しながら排ガスの熱を受けて予熱され、最下段のサイクロンからセメントキルンに供給される。
このセメント原料を導管に供給する場合、その上方に複数のサイクロンが設置されている関係上、これらサイクロンでの予熱を均等にするために均等に原料を供給する必要がある。
このセメント原料のような粉体を供給する装置として、特許文献1から特許文献3に記載の装置があり、それぞれ分散性を向上させる工夫がなされている。
特許文献1記載の装置は、セメント原料の粉体を供給する原料供給管(傾斜シュート)の底板の下端部上面に、確率曲線状に隆起した山形の凸部が設けられている。この凸部は下端側がもっとも高く上流側の高さが零になるように形成されており、供給した原料が凸部に当たると、左右に分散して導管内に供給されるようになっている。
一方、特許文献2においては、原料供給管(投入シュート)と導管(ダクト)との連結部に、水平軸線まわりに角変位し、最大限で投入シュートの内径の1/2まで突出可能な分散板が設けられた粉末材料の分散装置が提案されている。また、特許文献3記載の装置は、原料供給管(原料シュート)と導管(熱ガス導管)との接合部に、ガス流に対してほぼ直交する方向に原料スライド面を形成したものが開示されている。特許文献4にも導管内に分散板を突出させたものが開示されている。
これら特許文献2〜4記載の装置では、導管内に突出させた分散板や原料スライド面に原料を衝突させることにより、導管内に分散させて供給するようにしている。
また、特許文献5には、原料供給管と導管との接続部に、原料シュート内を落下した原料を反射拡散させる原料分散函を設けたものが開示されている。
特開平6−191615号公報 特開平9−262452号公報 実公昭62−29919号公報 実公昭61−30156号公報 実公昭62−4879号公報
しかしながら、特許文献1〜4記載の装置では、原料供給管の下端部あるいは導管の内部に分散のための凸部や分散板が配置されるので、閉塞等の原因となり易いとともに、導管内に分散板を配置する場合は、下方から上昇してくる排ガス流通の抵抗となり、安定した操業を阻害するおそれがある。また、特許文献5に開示の装置では、導管の外周部で原料を反射分散させているので、導管内への原料供給に偏りが生じ易い。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、導管内に原料を均一に分散させて供給し、予熱を均等にして熱交換効率を高めるとともに、閉塞等を防止して、安定した操業を行わせることができるセメント製造装置を提供することを目的とする。
本発明のセメント製造装置は、セメントキルンで発生した排ガスを流通させる複数のサイクロンが上下方向に連結状態に設けられ、複数の前記サイクロンのうち複数の上段側サイクロンとその下方に配置される下段側サイクロンとの間に設けられ、前記下段側サイクロンから導出される前記排ガスを上方に流通させ分配して各前記上段側サイクロンに導く導管と、前記導管における前記複数の上段側サイクロンへの分配部よりも下方位置に接続され、セメント原料を供給する原料供給管と、前記原料供給管の前記導管への接続部から前記導管内に突出状態に設けられ、前記原料供給管から供給されるセメント原料を受けて前記導管内に落下させる原料案内シュートとを備え、前記原料案内シュートは、その上面が平坦面に形成され、先端が前記導管の内壁面からの水平方向の挿入深さが前記導管の内径の0.15〜0.5倍となるようにスライド伸縮可能である。
原料供給管から供給されるセメント原料は、原料案内シュートをスライドさせて導管のほぼ中心部に落下させる。この導管内は、下段側サイクロンからの排ガスが旋回流となって上昇している。この旋回流は、中心部では旋回方向の速度ベクトルは小さく垂直上向きの速度ベクトルが支配的であるため、中心部に落下した原料は、上昇成分に乗って上昇し、緩やかに遠心力で半径方向外方に分散して均等に広がりながら上昇する。したがって、上段側の複数のサイクロンにはセメント原料がほぼ均等に供給される。
この場合、原料供給管から供給されるセメント原料を原料案内シュートにより受けて導管内に供給することにより、原料案内シュートの先端により導管内の供給位置を定めて正確にセメント原料を供給することができ、セメント原料を導管のほぼ中心部に確実に供給して、上段側サイクロンへの供給を均等にすることができる。
また、管状のシュートの場合は、その円弧状の内底面の中央にセメント原料が集中して、塊となって落下し易いことにより、導管内の上昇流の流れに乗りにくく、下段サイクロンに原料が直接落下することもある(この現象を以降、直落ちと呼ぶ)。この原料の直落ちは、原料と排ガスとの熱交換効率を著しく悪化させる。一方、本発明の原料案内シュートは、上面を平坦面に形成したことにより、セメント原料がかたまって落下することが防止され、導管内の上昇流の流れに確実に乗せることができ、原料の直落ちを防止できる。
また、原料案内シュートの導管内への挿入長さを導管の内径の半分までの範囲に限定して、導管内を上昇する排ガスの流通を阻害しないようにしている。
本発明のセメント製造装置において、前記原料案内シュートは前記導管の管軸方向から60°以上75°以下の角度で傾斜しているとよい。
これにより、原料案内シュートを60°以上75°以下の角度で傾斜させたことにより、その先端から原料を慣性で導管のほぼ中心部に投下させることができ、中心部に発生する垂直上向きのベクトル成分に乗せて上昇させ、上段側サイクロンに均等に分散させて供給することができる。
更に、本発明のセメント製造装置において、前記導管の前記分配部を含む水平面から前記原料案内シュートの先端までの垂直距離が前記導管の前記内径に対して2.25倍以上であり、前記下段側サイクロンの上端から前記原料案内シュートの前記先端までの距離が前記導管の前記内径に対して1.0倍以上であるとよい。
分配部を含む水平面から原料案内シュートの先端までの垂直距離を上記の範囲とすることにより、原料案内シュートの先端から導管の中心部に原料を投下したときにこの原料を旋回流の中心部で安定して分散させることができ、分配部から各サイクロンへ原料を均等に供給することができる。導管の分配部を含む水平面から原料案内シュートの先端までの垂直距離が導管の内径に比べて小さ過ぎると、分配が均等になされず、上段側サイクロンの温度負荷に偏りが生じる。また、下段側サイクロンの上端から原料案内シュートの先端までの距離が小さ過ぎると、原料案内シュートから供給された原料が下段側サイクロンまで落下して、排ガスと原料との熱交換効率が著しく悪化する。
本発明のセメント製造装置において、前記原料案内シュートの下面は、その両側縁から幅方向中央部に向かうにしたがって漸次下方に突出する凸状面に形成されているとよい。原料案内シュートの下面を凸状面に形成することにより、排ガスの上昇流に対する抵抗を小さくして、排ガスの流れをより円滑にすることができる。
本発明のセメント製造装置によれば、プレヒータの内部にセメント原料を均一に分散させて供給することができるので、その予熱を均等にすることが可能になる。更に、プレヒータ最上段のサイクロン出口におけるガス温度差が例えば100℃以上になると、熱量原単位が少なくとも3kcal/kg−cli(クリンカ1kgあたりの熱量原単位)以上増大するため、本発明の装置によって、熱量原単位の低減が可能になる。しかも、原料案内シュートの先端部を導管内に挿入した単純な構造であり、安定した操業を行わせることができる。
本発明のセメント製造装置の一実施形態における原料供給管付近の縦断面図である。 図1の横断面図である。 導管内の排ガスの流れを立体的に示した模式図である。 原料案内シュートの斜視図である。 原料案内シュートの横断面図である。 導管内の横断面方向におけるガスの流れの速度ベクトルを計算して示した図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。 セメント製造装置の全体を示す概略構成図である。 本発明の他の実施形態における原料案内シュートの斜視図である。 本発明のさらに他の実施形態における原料案内シュートの斜視図である。 導管内への原料案内シュートの挿入深さ(スライド長さ)と導管内径との比に対する導管出口の温度差の計算結果を示したグラフである。 原料案内シュートの導管への設置角度と導管出口の温度差との関係を計算した結果を示す、L/D=0.3におけるグラフである。 導管の内径に対する分配部を含む平面から原料供給管の先端までの垂直距離の比と導管出口の温度差との関係を計算した結果を示す、L/D=0.3におけるグラフである。 原料供給管から供給される原料の導管内の流れを示した模式図である。
以下、本発明に係るセメント製造装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。
このセメント製造装置は、図7に全体を示したように、セメント原料として石灰石、粘土、珪石、鉄原料等を個別に貯蔵する原料貯蔵庫1と、これらセメント原料を粉砕、乾燥する原料ミル及びドライヤ2と、この原料ミルで得られた粉体状のセメント原料を予熱するプレヒータ3と、プレヒータ3によって予熱されたセメント原料を焼成するセメントキルン4と、セメントキルン4で焼成された後のセメントクリンカを冷却するためのクーラー5等とを備えている。
セメントキルン4は、横向きで若干傾斜した円筒状のロータリーキルンであり、軸芯回りに回転することにより、その窯尻部6にプレヒータ3から供給されるセメント原料を窯前部7に送りながら、その送る過程で窯前部7のバーナー8によって1450℃程度に加熱焼成してセメントクリンカを生成し、このセメントクリンカを窯前部7からクーラー5に送り出すようになっている。セメントクリンカは、クーラー5で所定温度まで冷却された後、仕上げ工程へ送られることになる。
また、セメントキルン4で発生する排ガスは、ライジングダクト41を通じてプレヒータ3を下方から上方に経由した後、排気管9を通って原料ミル及びドライヤ2に導入されるようになっており、原料ミル及びドライヤ2は、セメントキルン4からの排ガスが導入されることにより、セメント原料の粉砕と乾燥を同時に行うようになっている。この原料ミル及びドライヤ2には、集塵機10、煙突11等を備える排ガスライン12が接続されている。
プレヒータ3は、セメントキルン4で発生した排ガスを流通させる複数のサイクロン13が上下方向に連結状態とされて構築されたものであり、その最下段部分のサイクロン13がセメントキルン4の窯尻部6に接続されている。
なお、図7においては、プレヒータ3の構成を簡略化して示したものであり、本実施形態ではプレヒータ3は上下に4段のサイクロン13により構成されている。この場合、下から3段目(以下「3段目」)のサイクロン13は2基並んで設けられており(図示略)、その一方のサイクロン13に対して、最上段である下から4段目(以下「最上段」または「4段目」)のサイクロン13が2基、並列状態に接続されている(図示略)。すなわち、最上段のサイクロン13は、2基の3段目のサイクロン13に対して2基ずつ、合計4基設けられている。プレヒータ3は、この構成と異なる構成のものとしてもよい。
そして、プレヒータ3の最上段の2基の並列したサイクロン13と、3段目の一つのサイクロン13との間は、導管21によって連結されている。この導管21は、3段目のサイクロン13から垂直上方に延びた後、分配部23を介して左右に分岐されることにより、全体としてT字状をなし、上段側の2基のサイクロン13にそれぞれ接続されている。導管21には、原料ミル及びドライヤ2からの原料が供給される原料供給管22が接続されている。図3には、下段側のサイクロン13のみ示し、導管21の上部は出口21aまでを示し、上段側サイクロン13は省略している。
原料供給管22の導管21との接続部は、導管21の分配部23よりも下方位置に設けられており、その接続部に、導管21内に突出する原料案内シュート24が設けられている(図3)。この原料案内シュート24は、図4及び図5に示すように、帯板状の底板部25とその両側に立設する側板部26とから樋状に形成されており、原料供給管22の外面に固定された支持部27に、基端部がスライド可能に支持され、原料供給管22の壁を貫通して導管21内に挿入されている。また、その支持部27には、原料案内シュート24を長さ方向に移動する操作部28が設けられている。図示例では、操作部28は、送りねじ29をハンドル30によって回転することにより、原料案内シュート24を移動する構成とされている。
この場合、図1に示すように、導管21の分配部23を含む水平面P(図3参照)から原料案内シュート24の先端までの垂直距離Hは、導管21の内径Dに対して2.25倍以上とされ、また、3段目のサイクロン13の上端13a(図3参照)から原料案内シュート24の先端までの距離h(図1参照)は、導管21の内径Dに対して1.0倍以上とされている。なお、分配部23は、導管21の軸線C1と上段側の両サイクロンへの各出口21aの中心間を結ぶ線C2との交点部分とする(図3参照)。
また、原料案内シュート24は、図1及び図2に示すように、導管21の管軸方向から60°〜75°の適宜の角度θで傾斜して形成されている。原料供給管22から供給されたセメント原料は、原料案内シュート24により受けられ、この原料案内シュート24から落下しながら導管21内に投入される。また、原料案内シュート24の先端24aは、導管21の内壁面21bからの挿入深さが導管21の内径Dの0.15〜0.5倍となるように突出している。
このように構成したセメント製造装置において、原料貯蔵庫1からセメント原料が供給されると、このセメント原料は、原料ミル及びドライヤ2で粉砕、乾燥された後、原料供給管22よりプレヒータ3に投入され、プレヒータ3内を落下しながら下方のセメントキルン4に供給される。このプレヒータ3では、セメントキルン4からの排ガスが、セメント原料とは反対方向に各サイクロン13を下方から順次上方に流通しており、セメント原料は、これらサイクロン13内を通過する際にセメントキルン4からの排ガスによって所定温度(例えば900℃)まで予熱される。そして、予熱されたセメント原料が最下段のサイクロン13からセメントキルン4の窯尻部6に供給される。
原料供給管22からのセメント原料の供給についてさらに詳述すると、この原料供給管22が接続されている導管21には、下段側(3段目)のサイクロン13から上昇してくる排ガスが流通しており、セメント原料は、その流れに乗って上段側(4段目)のサイクロン13に導かれる。一方、セメントキルン4での燃焼により発生した排ガスは、サイクロン13によって旋回流となってプレヒータ3内を上昇する。原料供給管22から供給されるセメント原料は、この旋回流の中に投下されることになる。
この旋回流は、図6(a)の横断面方向の速度ベクトルにより示されるように、導管21の内壁面21b近傍では周方向の速度ベクトルが大きくなり、導管21の中心部Cに向けて徐々に周方向成分が小さくなり、図6(b)に示すように垂直上向きの速度ベクトルが大きくなる。
また、この旋回流は、図3の模式図に示すように、下段側のサイクロン13から導管21を経由して分配部23で二つに分配され、上段側の2基のサイクロン13に分かれて流通する。2基のサイクロンのうちの一方側に流れる流れを黒塗り矢印で示し、他方側に流れる流れを白抜き矢印で示しており、導管21内ではこれらが螺旋状にねじれながら上昇する。そして、導管21内を上昇して分配部23まで到達し、この分配部23から分岐した状態でそれぞれのサイクロン13に導出される。
このように、導管21内が二つの流れがねじれながら上昇する旋回流となることから、セメント原料がそのいずれか一方の流れに偏って投下されてしまうと、上段側の2基のサイクロンのうちの一方にのみ偏って供給され、そのサイクロンのみ負荷が増大することになる。
本発明のセメント製造装置は、3段目サイクロン13から導出される排ガスを分配して2基の4段目サイクロン13に導く導管21の分配部23よりも下方位置に原料供給管22が接続され、この原料供給管22の導管21への接続部に原料案内シュート24をスライド可能に設け、その原料案内シュート24の先端24aを導管21の内壁面21bから導管21の内径Dの0.15〜0.5倍の長さの範囲で突出させたことにより、導管21内の旋回流の中心部Cに原料を投下することができる。前述したように、この中心部Cでは周方向の速度ベクトルは小さく、垂直方向の速度ベクトルが支配的であるため、投下された原料は、この上昇流に乗って上昇しながら緩やかに半径方向外方に分散され、分配部23から4段目の両サイクロン13に均等に供給される。
したがって、両サイクロンの負荷が均衡し、それぞれに供給されたセメント原料の予熱状態を均等にすることができる。プレヒータ3の最上段のサイクロン13出口におけるガス温度差が例えば100℃以上になると、熱量原単位(クリンカ1kgあたり)が少なくとも3kcal/kg−cli以上増大するが、本発明の装置のように予熱状態を均等にすることにより、その温度差を小さくして、熱量原単位を低減させることができる。
しかも、原料案内シュート24はスライド可能であるので、サイクロン13に接続された導管21の各出口21aのガス温度差を検出しながら、その温度差を最小化するように、原料案内シュート24の先端24aの位置を調整することができ、セメント原料を最適な位置に供給することができる。
この場合、原料案内シュート24の上面は、底板部25により平坦面に形成されているので、原料供給管22から受け取ったセメント原料を1箇所に集中させることなく導管21に落下することができ、導管21内の上昇流の流れに確実に乗せることができる。
なお、導管21の分配部23を含む水平面Pから原料案内シュート24の先端24aまでの垂直距離Hに関しては、導管21の内径Dに対して、H/Dを2.25以上とすることで、導管21内への原料案内シュート24の挿入深さを前述の範囲としたときの均等化の効果が高くなる。また、下段サイクロン13の上端13aからの距離hに関しては、下段サイクロン13に原料が直落ちしないように導管21の内径Dの0.5倍以上確保する。したがって、導管21における原料案内シュート24の位置は、導管21全体の長さの中で、原料案内シュート24から分配部23を含む水平面Pまでの垂直距離H、下段サイクロン13までの垂直距離hがそれぞれ導管21の内径Dと上記の関係となるように設定される。
図8及び図9は、本発明に係るセメント製造装置における原料案内シュートの他の実施形態を示している。
図8に示す原料案内シュート35は、底板部36が断面三角形状に形成されており、上面は平坦面とし、その傾斜する下面36aを下方に向けて配置している。この傾斜する下面36aにより、下方から上昇してくる旋回流の流れに対する抵抗が小さくなり、閉塞等を防止して安定した操業を行わせることができる。また、底板部を断面半円形に形成して、下面を円弧面にしてもよい。
一方、図9に示す原料案内シュート38は、導管21内に突出する先端部が管39の中に板40が横断するように設けられ、この板40の上面と管39により囲まれた空間内を原料が落下する構成である。管39により外面が形成されるので、図8に示す原料案内シュート35と同様に、導管21内の旋回流の流れに対する抵抗が小さくなる。なお、管39の断面形状は、楕円や菱形であってもよい。
このように、原料案内シュートの下面を両側縁から幅方向中央部に向かうにしたがって漸次下方に突出する凸状面とすることにより、導管21内の排ガスの流れを円滑にすることができる。
次に、導管の内径Dに対する原料供給管の原料案内シュートの挿入深さLの比(L/D)が0,0.22,0.33,0.4,0.5となる5種類設定し、下段サイクロンの上端から原料案内シュートの先端までの距離hと導管の内径Dとの比(h/D)は0.9または1.0に固定し、分配部を経由した後の導管の左右の出口温度を測定して、その温度差を求めた。温度差がないことが望ましい。
条件としては、3段目サイクロンに風量14300Nm/hour、温度640℃のガスを供給し、原料供給管に風量1400Nm/hour、温度80℃のセメント原料を30.4ton/hour供給した。原料供給管の傾斜角度θは70°、導管の分配部を含む水平面から原料供給管の先端までの垂直距離Hは導管の内径Dの2.9倍とした。
その結果を図10に示す。横軸が導管の内径Dに対する原料案内シュートの挿入深さLの比(L/D)を示し、縦軸は温度差(℃)を示す。
この図10に示される結果より、導管の内径Dに対する原料案内シュートの挿入深さLの比(L/D)が0.15〜0.5までの範囲内であれば、出口の温度差がほぼ50℃以下となり、L/Dが0.35〜0.40付近が最も温度差が小さくなっている。この図10において、L/D=0.00となるのは、原料供給管の先端が導管の内壁面に開口している場合であり、そのような構造では、導管の出口温度差が80℃近くにまで大きくなり、サイクロンへの負荷が偏ることがわかる。
実用的には、原料供給管は導管の内径Dに対して0.15〜0.5倍の長さの範囲で突出するように挿入すれば、原料をほぼ均等に分配することができる。
次に、原料案内シュートの設置角度θを導管の管軸方向に対して50°〜90°の範囲で複数種設定し、同様に分配部を経由した後の導管の左右の出口温度を測定して、その温度差を求めるとともに、原料案内シュートから下段のサイクロンへの原料の直落ちの発生を調べた。
導管の内径Dに対する原料案内シュートの挿入深さLの比(L/D)は0.3に固定するとともに、下段サイクロンの上端から原料案内シュートの先端までの距離hと導管の内径Dとの比(h/D)は0.9または1.0に固定し、その他のガスの風量や温度等は前述した条件とした。結果を表1及び図11に示す。図11において、横軸が導管の管軸方向に対する案内シュートの角度θ(°)、縦軸は温度差(℃)を示す。
Figure 0005541406
この表1及び図11に示される結果より、原料案内シュートの設置角度θが導管の管軸方向に対して60°以上75°以下の範囲であると、導管の出口の温度差を例えば50℃程度以下に小さくすることができる。
また、下段サイクロンの上端から原料案内シュートの先端までの距離hと導管の内径Dとの比(h/D)は、1.0倍以上あると、原料案内シュートの設置角度が60°〜90°の範囲で下段サイクロンへの直落ちは発生していない。
次に、導管の分配部を含む水平面Pから原料供給管の先端までの垂直距離Hの導管の内径Dに対する比(H/D)が1.65、1.75、2.25、2.75、2.9となる5種類設定し、同様に分配部を経由した後の導管の左右の出口温度を測定して、その温度差を求めた。導管の内径Dに対する原料案内シュートの挿入深さLの比(L/D)は0.3に、下段サイクロンの上端から原料案内シュートの先端までの距離hの導管の内径Dに対する比(h/D)は1.0に、原料案内シュートの設置角度θは導管の管軸方向に対して75°にそれぞれ固定するとともに、その他のガスの風量や温度等は前述した条件とした。結果を図12に示す。横軸が導管の内径に対する分配部を含む水平面Pから原料供給管の先端までの垂直距離の比(H/D)を示し、縦軸は温度差(℃)を示す。
この図12に示される結果より、導管の内径Dに対する分配部を含む水平面から原料供給管の先端までの垂直距離Hの比(H/D)が2.25未満では、その比(H/D)が小さくなるにしたがって出口の温度差が急激に大きくなるが、2.25以上であれば、温度差がほぼ10℃以下に安定している。
図13は、原料案内シュートを、導管の分配部から導管の内径Dの2.9倍の距離Hの位置(H/D=2.9)に、導管の内径Dのほぼ1/3の挿入深さで突出させた場合(L/D≒1/3)の原料粒子の流れのみをシミュレーションにより求めたものであり、原料が左右に均等に分配されていることがこの図からわかる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、最上段のサイクロンに接続されている導管への原料供給についてのみ説明したが、各段で複数設置されるサイクロンへの導管や、最下段のサイクロンとセメントキルンの窯尻部6との間を接続するライジングダクト41(図7参照))に原料を供給する場合にも本発明を適用することもできる。
また、セメント原料としてミルから送られる生原料を最上段サイクロンに供給する構成だけでなく、上部のサイクロンを経由した後に下部のサイクロンに導かれる予熱途中の原料を導管に供給する構成にも、本発明を適用することができる。
また、3基以上のサイクロンに分配して原料を供給する導管を用いる場合も含むものとする。
実施形態の分配部は二つの出口を持っているが、本発明は分配部出口の数に依らず適用でき、また、その構造はT字状のものに限らず、Y字状等でも本発明同様の効果を持つ。
また、本発明は、セメント製造以外の粉体を扱う設備においても用いることができる。
プレヒータの内部にセメント原料を均一に分散させて、安定した操業を行わせることができるセメント装置として利用することができる。
3 プレヒータ
4 セメントキルン
5 クーラー
6 窯尻部
13 サイクロン
13a 上端
21 導管
21a 出口
21b 内壁面
22 原料供給管
23 分配部
24 原料案内シュート
24a 先端
25 底板部
26 側板部
27 支持部
28 操作部
29 送りねじ
30 ハンドル
35 原料案内シュート
36 底板部
36a 下面
38 原料案内シュート
39 管
40 板
41 ライジングダクト

Claims (4)

  1. セメントキルンで発生した排ガスを流通させる複数のサイクロンが上下方向に連結状態に設けられ、
    複数の前記サイクロンのうち複数の上段側サイクロンとその下方に配置される下段側サイクロンとの間に設けられ、前記下段側サイクロンから導出される前記排ガスを上方に流通させ分配して各前記上段側サイクロンに導く導管と、
    前記導管における前記複数の上段側サイクロンへの分配部よりも下方位置に接続され、セメント原料を供給する原料供給管と、
    前記原料供給管の前記導管への接続部から前記導管内に突出状態に設けられ、前記原料供給管から供給されるセメント原料を受けて前記導管内に落下させる原料案内シュートと、
    を備え、
    前記原料案内シュートは、その上面が平坦面に形成され、先端が前記導管の内壁面からの水平方向の挿入深さが前記導管の内径の0.15〜0.5倍となるようにスライド伸縮可能であることを特徴とするセメント製造装置。
  2. 前記原料案内シュートは前記導管の管軸方向から60°以上75°以下の角度で傾斜していることを特徴とする請求項1記載のセメント製造装置。
  3. 前記導管の前記分配部を含む水平面から前記原料案内シュートの先端までの垂直距離が前記導管の前記内径に対して2.25倍以上であり、前記下段側サイクロンの上端から前記原料案内シュートの前記先端までの距離が前記導管の前記内径に対して1.0倍以上であることを特徴とする請求項1または2記載のセメント製造装置。
  4. 前記原料案内シュートの下面は、その両側縁から幅方向中央部に向かうにしたがって漸次下方に突出する凸状面に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセメント製造装置。
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