JP5533997B2 - 電気光学装置、その駆動方法、および電子機器 - Google Patents
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Description
一般的に、画素電極を薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」という)により駆動するアクティブマトリクス型の液晶表示装置では、フリッカや、表示画像の焼き付き等の表示不具合を防止するために、例えば、各画素電極に印加される駆動電圧の極性を、画像信号におけるフレーム毎に反転させる面反転駆動などの反転駆動(交流駆動)が採用されていた。
これは、反転駆動によって液晶層へ直流電圧成分が印加されることを防止し、焼き付き等の表示不具合を解消しようとしたものであったが、単純に反転駆動を行うだけでは、直流電圧成分の印加は完全には解決されず、依然として表示不具合が発生していた。
まず、1つ目の現象は、いわゆるフィールドスルー(プッシュダウンとも呼ばれる)現象であり、TFTのゲート・ドレイン端子間、およびソース・ドレイン端子間の寄生容量に起因して、オンからオフ状態に切換るときに、ドレイン端子と接続された画素電極の電圧が低下してしまう現象である。具体的には、寄生容量および蓄積容量に蓄積された電荷が、TFTのオフのタイミングで、再分配されることによる画素電極の電圧低下現象である。
2つ目の現象は、液晶層を挟持する素子基板と対向基板との特性差に起因した直流電圧成分である。より詳しくは、画素電極やTFTなどが形成された素子基板と、共通電極が形成された対向基板とにおける、それぞれの電気的な特性が非対称であることに起因したものである。
当該駆動方法では、反転駆動における極性反転の基準となる共通電極電位を、あらかじめフィールドスルーおよび特性差による電圧変化分シフトさせることを提案している。
詳しくは、フィールドスルーによる電圧変動分と、特性差による直流電圧成分とを、所定の計測条件により計測し、それらを加算した値を初期設定における一定の補正電圧として、共通電極の設定電位に加味していた。
詳しくは、発明者等の実験データに基づく知見によれば、特に、素子基板と対向基板との電気的な特性差によって発生する直流電圧成分には、駆動電圧との相関性が認められるため、この種の直流電圧成分を一定の補正電圧で相殺することは困難であった。また、特性差よりも割合は小さいものの、フィールドスルーについても駆動電圧との相関性が認められている。
つまり、これらの2つの現象に起因する直流電圧成分を一定の補正電圧値によって賄っていた従来の液晶表示装置では、液晶層へ直流電圧成分が印加されてしまい、焼き付きなどの表示不具合が発生してしまうという課題があった。
走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、前記画素電極と向い合う対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に挟持された電気光学層とを、有する表示パネルと、前記表示パネルにおける表示輝度を検出するための光センサと、前記対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、第1の期間において、前記画素電極に前記正極性のデータ信号を印加し、第2の期間において、前記画素電極に前記負極性のデータ信号を印加し、前記正極性のデータ信号の印加期間における前記表示輝度を前記光センサにより逐次検出して、所定の輝度に達するまでの第1の応答時間を計測し、前記負極性のデータ信号の印加期間における前記表示輝度を前記光センサにより逐次検出して、所定の輝度に達するまでの第2の応答時間を計測し、前記第1の応答時間と第1の積算電流との相関関係、および前記第2の応答時間と第2の積算電流との相関関係とに基づき、前記第1の積算電流の絶対値と前記第2の積算電流の絶対値との差が小さくなるように、前記第1の期間と、前記第2の期間とを調整する制御部とを備えることを特徴とする電気光学装置。
また、対向電極電位を制御部から対向電極に検出部を介さずに供給するための第2配線と、第1配線と、第2配線とを切換えるための切換スイッチとを、さらに備え、制御部は、対向電極電位を調整する際には、切換スイッチにより第1配線を選択し、通常の表示を行う際には、切換スイッチにより第2配線を選択することが好ましい。
また、対向電極は、表示パネルの表示領域と平面的に重なる領域に設けられた第1対向電極と、表示領域の外側の領域に設けられ、第1対向電極と電気的に独立した第2対向電極とから構成され、第1対向電極および第2対向電極には、制御部から共通の対向電極電位がそれぞれ供給され、検出部は、第2対向電極を介して電気光学層に流れる電流を検出することが好ましい。
また、検出部は、表示パネルにおける表示輝度を検出するための光センサを有し、制御部は、正極性電圧の印加期間における表示輝度を光センサにより逐次検出して、所定の輝度に達するまでの第1の応答時間を計測し、負極性電圧の印加期間における表示輝度を光センサにより逐次検出して、所定の輝度に達するまでの第2の応答時間を計測し、第1の応答時間と第1の積算電流との相関関係、および第2の応答時間と第2の積算電流との相関関係とに基づき、第1の応答時間と第2の応答時間との差が小さくなるように対向電極電位を調整することが好ましい。
《電気装置の概略構成》
図1は、本実施形態に係る電気光学装置の概略構成図である。
まず、本発明の実施形態1に係る電気光学装置1の概要構成について、図1を用いて説明する。
制御部50は、タイミング信号発生回路53、表示データ処理回路55、Com電圧生成回路57を含んで構成され、表示パネル10の表示駆動を制御する。
また、制御部50には、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性のメモリからなる記憶部(図示せず)が設けられている。記憶部には、検出部60からの検出データに基づいて、対向電極電位Vcomの電位を調整するための順序と内容を規定した複数の調整プログラムを含み、電気光学装置1の動作を制御するための様々なプログラムおよび付随するデータが記憶されている。
なお、制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、およびメモリを含んだ1チップの画像プロセッサーにより構成することができる。また、制御部50と表示パネル10とは、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)によって接続されている。
クロック発生回路54は、水晶振動子などの発振素子を内蔵し、各部の制御動作の基準となるクロック信号を生成してタイミング信号発生回路53に出力する。
タイミング信号発生回路53は、外部上位装置(図示省略)から供給される垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびドットクロック信号Dclkに同期して表示パネル10を制御するための各種の制御信号を生成する。
表示データ処理回路55は、不図示のDAコンバータを含んで構成されており、外部上位装置から供給される表示データVideoを、表示パネル10での表示に適した形態に処理し、当該パネルの駆動に同期したアナログのデータ信号Vid(駆動電圧)として出力する。なお、表示データVideoは、表示パネル10における画素の階調を規定しており、垂直同期信号Vsの供給タイミングを契機として1フレーム分供給されるとともに、水平同期信号Hsの供給タイミングを契機として1行分供給される。
検出部60は、電流検出素子としての抵抗Rs、増幅器61、ADコンバータ62を含んで構成され、対向電極Comを介して電気光学層に流れる電流を検出し、符号化した検出データを制御部50に送信する。
抵抗Rsは、Com電圧生成回路57から対向電極Comに接続する配線108に挿入されており、当該配線に流れる電流に比例した電圧がその両端に発生する。なお、抵抗Rsの抵抗値は、駆動電圧の大きさや、検出したい電流レベルに応じて適宜設定される。例えば、駆動電圧が5V程度で、検出電流が数nAであった場合、数K〜数十KΩ程度の抵抗Rsを選択する。抵抗Rsは、例えば、制御部50と表示パネル10とを接続するFPC上に実装されている。
ここで、抵抗R1の入力側の電圧をV1、抵抗R3の入力側の電圧をV2、オペアンプOpの出力端子における出力電圧をVoとしたときに、以下の数式(1)が成り立つ。
Vo=(R2/R1)(V2−V1)…(1)
また、抵抗R1〜抵抗R4の抵抗値は、抵抗Rsの値や、ADコンバータ62の特性などを考慮して適宜設定すれば良い。なお、増幅器61は、差動増幅器に限定するものではなく、抵抗Rsの両端に発生する電圧を検出に必要なレベルにまで増幅可能な増幅器であれば良い。
また、本実施形態における垂直同期信号Vsは、説明を容易にするために周波数60Hz(周期16.7ミリ秒)とするが、これに限定する主旨ではない。また、ドットクロック信号Dclkについては、表示データVideoのうち、1画素分が供給される期間を規定するものとする。
詳細は後述するが、制御部50は、表示データVideoの供給に同期して各部を制御する。
図2は、表示パネル10の構成を示す図である。図3は、画素の等価回路図である。
次に、表示パネル10の構成について説明する。
図2に示されるように、表示パネル10は、表示領域100の周辺に走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140を内蔵した構成となっている。
表示領域100には、480行の走査線112が行(X)方向に延在するように設けられ、また、640列のデータ線114が列(Y)方向に延在するように、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられている。
また、480行の走査線112と640列のデータ線114との交差に対応して、複数の画素110が形成されている。換言すれば、複数の画素110が、縦480行×横640列のマトリクス状に配列されている。
なお、本実施形態では、説明を容易にするために、解像度をVGA(Video Graphics Array)としているが、これに限定するものではなく、例えば、XGA(eXtended Graphics Array)や、SXGA(Super-XGA)などの解像度であっても良い。
なお、i、(i+1)は、画素110が配列する行を示しており、ここでは、1以上480以下の整数となる。また、j、(j+1)は、画素110が配列する列を示しており、ここでは、1以上640以下の整数となる。
複数の画素110の各々は、nチャネル型のTFT116と液晶容量120とを含んで構成されている。
当該i行j列の画素110におけるTFT116のゲート電極はi行目の走査線112に接続される一方、そのソース電極はj列目のデータ線114に接続され、そのドレイン電極は液晶容量120の一端である画素電極118に接続されている。
また、液晶容量120の他端は、対向電極Comに接続されている。この対向電極Comは、全ての画素110にわたって共通であって、時間的に一定の電圧が印加されている。
このうち、素子基板には、走査線112や、データ線114、TFT116および画素電極118が走査線駆動回路130やデータ線駆動回路140とともに形成される一方、対向基板に対向電極Comが形成されて、これらの電極形成面が互いに対向するように一定の間隙を保って貼り合わせられている。
このため、液晶容量120は、画素電極118と対向電極Comとが液晶105を挟持することによって構成されている。
なお、本実施形態では、液晶容量120において保持される電圧実効値がゼロに近ければ、液晶容量を通過する光の透過率が最大となって白色表示になる一方、電圧実効値が大きくなるにつれて透過する光量が減少して、ついには透過率が最小の黒色表示になるノーマリーホワイトモードに設定されているものとする。
なお、走査線112が非選択状態になると、TFT116がオフ(非導通)状態となるが、このときのオフ抵抗が理想的に無限大とはならないので、液晶容量120に蓄積された電荷が少なからずリークする。このオフリークの影響を少なくするために、蓄積容量109が画素毎に形成されている。この蓄積容量109の一端は、画素電極118(TFT116のドレイン)に接続される一方、その他端は、全画素にわたって容量線107に共通接続されている。この容量線107は、常に一定の電位、例えば対向電極Comと同じ対向電極電位Vcomに保たれている。
走査線駆動回路130は、走査信号G1、G2、G3、…、G480を、それぞれ1、2、3、…、480行目の走査線112に供給するものである。走査線駆動回路130は、選択した走査線への走査信号を選択電圧に相当するHレベルとし、それ以外の走査線への走査信号を非選択電圧に相当するLレベルとする。
データ線駆動回路140は、サンプリング信号出力回路142と、各データ線114にそれぞれ対応して設けられたnチャネル型のTFT146とによって構成される。データ線駆動回路140は、選択された走査線における各画素に当該画素の階調を規定するデータ信号Vidを供給する。
図4は、実施形態1における駆動方法のタイミングチャートである。
ここでは、本実施形態の電気光学装置における基本的な表示駆動方法について図4を用いて説明する。
実施形態1では、垂直同期信号Vsごとにデータ信号Vidの極性を反転させるフレーム反転駆動を採用している。
図4において、フレームとは、1枚の画像を表示パネル10に表示させるのに要する期間をいう。また、1つの走査線は、1フレームの期間において、1回選択されている。
本実施形態における垂直同期信号Vsは、上述したように周波数60Hzであるので、1フレームの期間についても16.7ミリ秒で固定である。制御部50(図1)は、デューティ比が50%のクロック信号Clyを、1フレームの期間に渡って走査線数に等しい480周期分出力する。なお、クロック信号Clyの1周期分の期間をHと表記している。
詳しくは、垂直同期信号Vsが立ち下がると、クロック信号ClyのHレベルの立ち上がりに同期させて、スタートパルスDyを出力する。
また、制御部50は、スタートパルスDyの立ち上がりと同期して正負の極性を反転させる交流化信号FRを生成し、この信号の極性に合わせたデータ信号Vidを出力する。詳しくは、交流化信号FRは、1フレーム目において正極性、2フレーム目において負極性となり、以降、奇数フレームでは正極性、偶数フレームでは負極性の信号となっている。
まず、最上段の走査線に供給される走査信号G1は、スタートパルスDyが供給された後、クロック信号Clyが最初に立ち上がってから半周期遅延したタイミングで出力される。そして、走査信号G1に続いて、順次走査信号G2〜G480が、クロック信号Clyの論理レベルが変化する毎にクロック信号の半周期分の期間において順次Hレベルとなる。
よって、図4に示されるように、各フレームにおいて、スタートパルスDyの供給を契機として1〜480行目の走査線がこの順番で順次選択される。
また、走査信号G480が出力されてから、次フレームのスタートパルスDyが出力されるまでの期間は、走査線の帰線期間Fbを示している。
図5は、本実施形態における対向電極電位の調整方法を示すフローチャートである。図6は、当該調整方法による一態様の検出電流を示すタイミングチャートである。
続いて、本実施形態における対向電極電位Vcomの調整方法について、図5および図6を中心に説明する。
なお、本実施形態の調整方法では、フレーム反転駆動における正極画像表示期間に流れる電流と、負極画像表示期間に流れる電流とが等しくなるように対向電極電位Vcomを調整する。
また、図5を用いて以下説明する各ステップは、制御部50の記憶部に記憶されている対向電極電位Vcom調整プログラムに基づき、電気光学装置1の各部によって実行される。なお、以下説明におけるフレーム数は、特定のフレームを示すものではなく、時系列に連続するフレームを指している。
ステップS1では、第1フレームにおいて正極画像が表示される。
ステップS2では、正極画像表示期間において対向電極Comに流れ込む電流、換言すれば、配線108を流れる電流が検出部60によって検出される。
ステップS3では、制御部50において正極画像表示期間に流れた電流が積算され記録される。
ステップS4では、次の第2フレームにおいて負極画像が表示される。
ステップS5では、負極画像表示期間において、配線108を流れる電流が検出部60によって検出される。
ステップS6では、制御部50において正極画像表示期間に流れた電流が積算され記録される。
まず、第1フレームにおいて、表示データ処理回路55から、交流化信号FRのタイミングおよび極性に同期したデータ信号Vidが出力される。つまり、正極性のデータ信号Vidが出力される(ステップS1)。
図6には、正極性のデータ信号Vidが印加された際に、検出部60によって検出された検出電流Ia1の時間変化が示されている。当該グラフに示されるように、データ信号Vidの立ち上がり時に最大の電流が流れて、以降、徐々に低下している(ステップS2)。なお、極性反転時における大きな電流が、特に焼き付きに影響のある電流であると推測されるため、図6のように、この部分を確実に検出することが重要である。
制御部50では、この検出電流Ia1を積算し、積算電流値として内部の記憶部に記録する。図6の最下段のグラフは、積算された積算電流Ib1を示している(ステップS3)。このグラフにおいて、積算電流値は、積算電流Ib1の高さで示されている。
なお、検出電流Ia1のグラフにおける縦軸と、積算電流Ib1のグラフにおける縦軸とは、共に電流を取っているが、それぞれのスケールは異ならせてある。
負極性のデータ信号Vidが印加された際に、検出部60によって検出された検出電流Ia2の時間変化が示されている。検出電流Ia2は、第1フレームにおける検出電流Ia1とは極性が反転しているが、当該グラフに示されるように、データ信号Vidの立ち上がり時に最大の電流が流れて、以降、徐々に低下している(ステップS5)。
なお、検出電流Ia1,Ia2には、前述したように極性があるが、本調整方法においては、極性は関係なく、正極性電圧の印加期間(正極画像表示期間)における積算電流と、負極性電圧の印加期間(負極画像表示期間)における積算電流との、それぞれの絶対値が把握できれば良い。
このため、図6の最下段のグラフでは、負極性の検出電流Ia2も、正極性側に示している。
ステップS7では、正極画像表示期間における積算電流と、負極画像表示期間における積算電流とが等しいか否か判断する。両者が等しい場合は、本フローを終了する。異なる場合は、ステップS8へ進む。
なお、積算電流が等しいという判断は、絶対値が等しい場合のみに限定するものではなく、両者が実質的に等しいと見なせる範疇の幅を持っていても良い。
ステップS8では、正極画像表示期間における積算電流が、負極画像表示期間における積算電流よりも大きいか否か判断する。正極画像表示期間における積算電流が大きい場合は、ステップS9へ進む。正極画像表示期間における積算電流の方が、負極画像表示期間における積算電流よりも小さい場合は、ステップS10へ進む。
ステップS9では、対向電極電位Vcomの電位を1段階上げた後、本フローを終了する。ステップS10では、対向電極電位Vcomの電位を1段階下げた後、本フローを終了する。なお、駆動電圧が5V程度である場合、Com電圧生成回路57で生成される対向電極電位Vcomの電位は、例えば、数mV〜数百mVの範囲内における所定の電圧値刻みで段階的に設定可能に設けられている。
図6に示された態様の場合、正極性電圧が印加された第1フレームにおける積算電流Ib1と、負極性電圧が印加された第2フレームにおける積算電流Ib2とは、当該図面に示されるように等しくなく、積算電流Ib1の方が積算電流Ib2よりも大きい(ステップS7,8)。
このため、対向電極電位Vcomの電位を1段階上げた後、次の第3フレームに進んでいる(ステップS9)。
また、第1,第2フレームにおける対向電極電位Vcomの電位は、基準電位Vcと同一に設定されている。
つまり、対向電極電位Vcomの電位を1段階上げたことにより、第3,第4フレームでは、対向電極電位Vcomの電位は点線にて示された電位v+1となる。
このため、第3,第4フレームにおいて、液晶に印加される電圧は、電位v+1を基準としたものとなるため、基準電位Vcを基準とした場合と比べて、正極側の電圧が小さくなり、負極側の電圧が大きくなる。
換言すれば、正極側の電圧が負極側より小さくなるように振幅中心をシフトすることにより、正負極間における積算電流が近づくように、制御している。
なお、本明細書においては、対向電極電位Vcomを基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性と定義している。
そして、正極性電圧が印加された第3フレームにおける積算電流Ib3と、負極性電圧が印加された第4フレームにおける積算電流Ib4とは、図6に示されるように等しくなく、積算電流Ib3の方が積算電流Ib4よりも大きかった(ステップS7,8)。
このため、対向電極電位Vcomの電位をさらに1段階上げた後、次の第5フレームに進んでいる(ステップS9)。
このため、第5,第6フレームにおいて、液晶に印加される電圧は、電位v+2を基準としたものとなるため、電位v+1を基準とした場合と比べて、さらに、正極側の電圧が小さくなり、負極側の電圧が大きくなる。
そして、正極性電圧が印加された第5フレームにおける積算電流Ib5と、負極性電圧が印加された第6フレームにおける積算電流Ib6とは、図6に示されるように等しかったため、電位v+2を維持したまま、次のフレームに進んでいる。(ステップS7)。
なお、上記態様においては、ステップS10を実行する状態がなかったが、ステップS8において、正極画像表示期間における積算電流の方が、負極画像表示期間における積算電流よりも小さい場合は、対向電極電位Vcomの電位を1段階下げる処理を行う。
これにより、液晶に印加される電圧は、一段階低い電位を基準としたものとなるため、基準電位Vcを基準とした場合と比べて、正極側の電圧が大きくなり、負極側の電圧が小さくなる。つまり、正極側の電圧が負極側より大きくなるように振幅中心をシフトすることにより、正負極間における積算電流が近づくように制御する。
電気光学装置1によれば、制御部50は、検出部60からの検出データに基づき、正極画像表示期間における第1の積算電流と、負極画像表示期間における第2の積算電流とが等しくなるように対向電極電位Vcomを調整する。
つまり、反転駆動と並行してリアルタイムに電流検出を行い、その結果を対向電極電位Vcomに反映させている。これにより、データ信号Vidの変化に合わせてリアルタイムに補正電圧を調整することが可能となり、駆動電圧と相関を持っている直流電圧成分を相殺することができる。
従って、従来の電気光学装置よりも、焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
よって、効率良く、焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置の駆動方法を提供することができる。
このため、瞬間の検出電流を用いて正負極間の比較を正確に行うことは難しいが、図5の調整フローのように正極画像表示期間における積算電流と、負極画像表示期間における積算電流とを比較する方法としたことにより、検出精度を高めることができる。
従って、フィールドスルーおよび特性差の影響による偏り度合いを正確に検出することが可能となり、対向電極電位Vcomを適切に調整することができる。
特に、電流検出素子は、Com電圧生成回路57から対向電極Comに接続する配線108に抵抗Rsを挿入するという簡便な構成となっている。
従って、小型、かつシンプルな構成で、焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図7は、実施形態2における調整方法を示すフローチャートである。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態2の電気光学装置は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置と同じ構成であり、駆動方法も図4に示されたフレーム反転駆動を採用している。実施形態2においては、対向電極電位の調整方法のみが実施形態1と異なる。
詳しくは、実施形態1の調整方法では、正負極期間におけるそれぞれの積算電流が等しくなるように制御していたが、実施形態2の調整方法においては、正負極期間における合計積算電流が所定の電流値よりも小さくなるように制御を行う。
まず、ステップS11から始まるフローAの動作処理から説明する。
ステップS11では、第1フレームにおいて正極画像が表示されるとともに、配線108を流れる電流が検出され、正極画像表示期間における積算電流が記録される。なお、ステップS11は、詳しくは、図5におけるステップS1〜S3と同一であるが、ここでは、説明を簡略化するために、1つのステップとして括っている。
ステップS13では、ステップS11,S12で記録された、正極画像表示期間における積算電流に、負極画像表示期間における積算電流を加えた、第1フレームと第2フレームにおける合計電流が算出される。なお、図6を用いて説明すると、第1,第2フレームでは、積算電流Ib1と積算電流Ib2とを高さ方向に積み上げた電流値が合計電流となる。
ここで、所定の電流値は、表示パネル10の設計仕様や、実験データなどに基づいてあらかじめ設定される閾値であり、合計電流が所定の電流値より小さければ、焼き付けなどの表示不具合を抑制可能な値となっている。
ステップS15では、所定の電流値から、ステップS13で求められた合計電流を引いた差分(前回差分)を算出し記憶する。
ステップS16では、対向電極電位Vcomの電位を1段階下げる。
ステップS18では、4フレームにおいて負極画像が表示されるとともに、配線108を流れる電流が検出され、負極画像表示期間における積算電流が記録される。
ステップS19では、ステップS17,S18で記録された、正極画像表示期間における積算電流に、負極画像表示期間における積算電流を加えた、第3フレームと第4フレームにおける合計電流が算出される。
ステップS20では、所定の電流値から、ステップS19で求められた合計電流を引いた差分(今回差分)を算出し記憶する。
ここでは、ステップS16において対向電極電位Vcomの電位を1段階下げたことによって、合計電流が所定の電流値に近づいたか否かを判断している。今回差分が前回差分よりも小さい場合は、合計電流が所定の電流値に近づいていることになるため、調整(補正)方向は正しいので、再度、フローAを行うことになる。
ステップS23から始まるフローBは、フローAと基本的な流れが同じであり、同様な処理が多いため、フローAと異なる処理についてのみ説明する。
まず、ステップS23〜S25は、フローAのステップS11〜S13の処理と同じである。
ステップS26では、ステップS25で求められた合計電流が、所定の電流値よりも小さいか判断する。所定の電流値よりも小さい場合は、スタートBに戻る。合計電流が所定の電流値と等しいか、または所定の電流値よりも大きい場合は、ステップS27に進む。
ステップS27では、所定の電流値から、ステップS25で求められた合計電流を引いた差分(前回差分)を算出し記憶する。
ステップS28では、対向電極電位Vcomの電位を1段階上げる。
ステップS33では、ステップS32で記録された今回差分が、ステップS27で記録された前回差分より小さいか否か判断する。前回差分より小さい場合、スタートBに戻る。今回差分が前回差分と等しいか、または前回差分よりも大きい場合は、スタートAへ進む。
フローBでは、ステップS28において対向電極電位Vcomの電位を1段階上げる調整をしている。つまり、フローBは、フローAと反対方向の調整を行うためのフローであり、フローAとフローBとを組合せることで、対向電極電位Vcomの電位を上下させる両方向の調整(補正)が実現される。
電気光学装置1によれば、制御部50は、検出部60からの検出データに基づき、正極画像表示期間における第1の積算電流と、負極画像表示期間における第2の積算電流との絶対値を合計した合計電流が、所定の電流値よりも小さくなるように対向電極電位Vcomを調整する。また、所定の電流値は、焼き付けなどの表示不具合を抑制可能な閾値に設定されている。
つまり、反転駆動と並行してリアルタイムに電流検出を行い、その結果を対向電極電位Vcomに反映させている。これにより、データ信号Vidの変化に合わせてリアルタイムに補正電圧を調整することが可能となり、駆動電圧と相関を持っている直流電圧成分を相殺することができる。
従って、従来の電気光学装置よりも、焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図7の調整フローによれば、正負極の画像表示期間における2つの積算電流の絶対値を合計することにより、電流の検出精度を高めることができる。そして、当該合計電流が、所定の電流値よりも小さくなるように対向電極電位Vcomを調整する。
従って、確実に、焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図8は、実施形態3に係る電気光学装置の概略構成図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態3の電気光学装置2は、制御部と対向電極とを接続する配線において、検出部を通る経路と通らない経路とを設けるとともに、検出部を通る経路と通らない経路とを切替るための切換スイッチを設けた点が、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置1と異なる。
また、詳細は後述するが、切換スイッチを設けたことにより、対向電極電位の調整方法も一部変更となっている。
つまり、本実施形態の電気光学装置2は、切換スイッチSWに係る構成が追加になった点が、図1で示された電気光学装置1の構成と異なる。
切換スイッチSWは、例えば、アナログスイッチによって構成され、制御部50からの切替信号に従って、配線108aと配線108bとを切換える。なお、切換スイッチSWは、回路基板などに外付けする構成であっても良いし、制御部50の内部回路の一部として切替スイッチを形成する構成であっても良い。
切換スイッチSWによって配線108aが選択されている場合は、検出部60の抵抗Rsが介在するため、実施形態1の電気光学装置1と同じ回路構成となる。なお、電気光学装置2では、この回路構成を検査回路として用いる。
また、切換スイッチSWによって配線108bが選択されている場合は、制御部50と対向電極Comとが直接接続される回路構成(通常回路)となる。
電気光学装置2では、切換スイッチSWに係る構成が追加になったことにともない、対向電極電位の調整方法も、図5で説明した実施形態1の調整方法と異なっている。
以下、図5のフローとの相違点を中心に説明する。なお、制御部50には、以下説明する動作処理が調整プログラムとして記憶されている。
まず、電気光学装置2では、検出部60が介在する回路を検査回路とし、また、介在しない回路を通常回路として用いるため、通常の表示モードとは別に、専用の検査モードを設けている。検査モードは、電源投入時や、使用者により検査モードが選択された場合などに実行される設定となっている。また、例えば、プロジェクタに搭載されている場合には、シネマモード(暗室環境)から標準モード(照明環境)に切換えるなどの、表示モードの切替えの際にも実行されるように設定してもよい。
ステップS42では、切換スイッチSWにより配線108aを選択し、検査回路に切換える。
ステップS43では、切換スイッチSWにより配線108bを選択し、通常回路に切換える。
ステップS44では、正極検査画像が表示されるとともに、配線108aを流れる電流が検出され、正極画像表示期間における積算電流が記録される。
なお、ステップS44は、図5におけるステップS1〜S3と類似しているが、表示される画像が検査画像となっている。具体的には、全画面ベタ表示の白画像が検査画像として表示される。例えば、ノーマリーブラックの場合には、高階調の画像を表示するためには高い電圧が画素電極に印加されるため、検査画像は高階調の画像が好ましい。
なお、本調整方法では、専用の検査モードで電流検出を行うため、より電流が検出し易い検査モード専用の駆動周波数を採用しても良い。例えば、検査モードにおいては、垂直同期信号Vsの周波数を、例えば、30Hzや、50Hzなどとし、60Hzよりも低くすることにより、1フレーム当たりの時間を長くして、電流の検出精度を高めても良い。
また、検査画像におけるデータ信号Vidの振幅は、例えば、±5V程度とすることが好ましい。
また、ここまで、実施形態1の図5のフローを電気光学装置2に適用した場合の調整方法について説明したが、実施形態2の図7のフローを検査モードで実行しても良い。この場合、図7におけるスタートAの後に、図9のステップS41による検査モードの確認分岐に関連するルーチンを挿入すれば良い。
電気光学装置2によれば、切換スイッチSWの切換によって、検査モードにおいては検出部60を通る配線108aを選択し、通常表示においては検出部60を通らない配線108bを選択する。
つまり、通常表示において、電流検出素子としての抵抗Rsが介在することによる、液晶の応答時間の遅延や、保持容量への電荷が蓄積し難くなる、などの影響をなくすことができる。よって、鮮やかな表示を行うことができる。
さらに、検査モードにおいては、電流検出が容易な専用の検査画像や、駆動周波数を用いることが可能なため、電流の検出精度を高めることができる。
従って、鮮やかな表示を行うとともに、確実に焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図10は、実施形態4に係る電気光学装置の概略構成図である。図11(a)は、表示パネルの平面図であり、(b)は平面図のP−P断面における断面図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態4の電気光学装置3は、表示領域とは異なる専用の電流検出領域が設けられた表示パネルを備えており、表示領域での通常表示と並行して、電流検出領域において電流検出を行う。
これらの構成以外は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置1と同様である。
表示パネル11は、互いに向き合って配置された、素子基板15と対向基板16との間に液晶105を挟持して構成されている。
また、素子基板15と対向基板16とは、対向基板の周縁部に沿って額縁状に塗布されたシール材17によって接着されており、平面視において、シール材17に囲まれた領域には、液晶105が封入されている。
表示パネル11は、例えば、プロジェクタに用いられる透過型の液晶ライトバルブであり、対向基板16側から入射する光をデータ信号に応じて光変調し、素子基板15側から出射する。
また、図11の紙面に向かって横長の長方形をなした表示領域100の右隣には、電流検出領域101が設けられている。
電流検出領域101は、平面的に遮光膜18と重なるとともに、表示領域100の片側の短辺に沿って縦長のライン状に形成されている。
つまり、電流検出領域101において表示される画像は、投射画像に影響を及ぼさない。換言すれば、表示領域100における表示画像と異なる検査画像を表示していても、支障がない構成となっている。
素子基板15の液晶105側には、複数の画素電極118(図3)が表示領域100、および電流検出領域101と重なるように形成されている。
なお、電流検出領域101に形成される画素電極118や、TFT116(図3)は、表示領域100に形成されるものと同様であるが、電流検出領域の画素電極には、検査画像を表すデータ信号が印加される。
制御部50と、表示領域100の対向電極Comとの間は、配線108によって直接接続されている。
また、制御部50と、電流検出領域101のダミー対向電極Comdとの間は、検出部60を介して配線128によって接続されている。
ここで、対向電極Comおよびダミー対向電極Comdには、制御部50から同一電位の対向電極電位Vcomが印加されることになるが、それぞれの回路は独立している。
また、制御部50と、電流検出領域101の画素電極との間は、配線129によって直接接続されているように示されているが、簡略化している。詳しくは、電流検出領域101の複数の画素における全TFTを一括して選択するための選択回路(図示せず)が設けられており、当該領域内の全ての画素に同一の検査画像を表すデータ信号が印加される。
また、電流検出領域101は、遮光膜18と重なる領域に形成されているため、投射画像に影響を及ぼさないため、検査画像としては、高階調の全白画像を用いる。また、ノーマリーブラックの場合は、全黒画像を表示させる。
また、検査画像におけるデータ信号Vidの振幅は、例えば、±5V程度とすることが好ましい。
電気光学装置3によれば、表示領域とは異なる専用の電流検出領域101が設けられた表示パネル11を備えており、表示領域においては検出部60を通らない配線108から対向電極電位Vcomが供給され、電流検出領域101には検出部60を通る配線128から対向電極電位Vcomが供給される。
つまり、表示領域において、電流検出素子としての抵抗Rsが介在することによる、液晶の応答時間の遅延や、保持容量への電荷が蓄積し難くなる、などの影響をなくすことができる。よって、鮮やかな表示を行うことができる。
さらに、電流検出領域101は表示に用いられない領域に設けられているため、電流検出が容易な専用の検査画像などを用いることが可能となり、電流の検出精度を高めることができる。
従って、鮮やかな表示を行うとともに、確実に焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図12は、実施形態5に係る電気光学装置の概略構成図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態5の電気光学装置4は、電流検出素子として磁気センサを用いた検出部を備えており、制御部と液晶パネルとを接続する配線に発生する磁界から、対向電極を介して液晶容量に流れる電流量を検出する。
これらの構成以外は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置1と同様である。
また、電気光学装置4において、制御部50と対向電極Comとの間は、配線108により接続されている。
磁気センサ64は、ホール素子であり、配線108の近傍に実装され、配線108に電流が流れることにより発生する磁界の強度を検出する。そして、検出した磁界強度に応じた電圧(アナログ検出データ)を検出回路65に出力する。
なお、電流検出素子は、ホール素子に限定するものではなく、磁界強度を検出可能な磁気センサであれば良い。例えば、カレントトランスや、磁気抵抗効果素子を用いる構成であっても良い。
また、磁気センサ64の実装位置に近い部分の配線108も、同様に、周辺の電子部品などから一定の距離を置いた位置に配線され、また、幅広に形成されている。詳しくは、磁気センサ64の大きさに合わせて局部的に幅広に設けられ、例えば、レジストなどの絶縁層を介して、当該幅広の配線108上に、磁気センサ64が実装されている。
または、例えば、制御部50と表示パネル10との間を接続するFPC上に実装する構成であっても良い。この場合、例えば、配線108が形成された面の反対側の面において、当該配線と重なる位置に、磁気センサ64を実装する構成であっても良い。FPCは薄いため、この構成であっても、良好に磁界を検出することができる。
また、本実施形態における対向電極電位の調整方法としては、実施形態1の図5のフローによる方法、および実施形態2の図7のフローによる方法のいずれも採用することができる。
電気光学装置4によれば、電流検出素子として磁気センサ64を用いた検出部63を備えており、制御部50と表示パネル10とを接続する配線108に発生する磁界から、対向電極Comを介して液晶容量に流れる電流量を検出する。
つまり、表示パネルにおいて、電流検出素子としての抵抗Rsが介在することによる、液晶の応答時間の遅延や、保持容量への電荷が蓄積し難くなる、などの影響をなくすことができる。よって、鮮やかな表示を行うことができる。
従って、鮮やかな表示を行うとともに、焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図13は、実施形態6に係る電気光学装置の概略構成図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
詳しくは後述するが、面反転駆動において、液晶容量に流れる電流は、正負極画像表示期間それぞれにおける液晶の応答時間(時定数)からも予測することができる。換言すれば、液晶容量に流れる電流と、液晶の応答時間との間には、相関関係がある。
実施形態6の電気光学装置5は、この点に鑑み、光センサを含む検出部を備えており、所定の輝度に達するまでの応答時間を計測し、計測結果に基づいて、対向電極電位の調整を行う。
また、本実施形態では、表示パネルをプロジェクタの液晶ライトバルブとして用いることを前提としており、光センサによって投射画像の輝度を測定し、所定の輝度に達するまでの応答時間を計測する。
これらの構成以外は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置1と同様である。
光センサ67は、表示パネル10が出射した光(投射光)を受光可能な場所に設置されており、投射光の輝度に応じた電流を出力する。
検出部66は、光センサ67に加えて、検出回路68などを備えている。検出回路68は、光センサ67の特性に合わせて選定された増幅器や、ADコンバータなどを含んで構成されており、光センサ67が検出したアナログ検出データを、符号化した輝度データとして制御部50に送信する。
また、電気光学装置5において、制御部50と対向電極Comとの間は、配線108により接続されている。
ここでは、光センサの具体的な配置態様について説明する。
図27のプロジェクタ2100には、表示パネル10が3枚使用されている。
3枚の表示パネル10は、それぞれがR光、G光、B光を光変調するために用いられており、略立方体をなしたダイクロイックプリズム2112の連続する3面に面して、表示パネル10R,10G,10Bの順番に配置されている。
また、ダイクロイックプリズム2112において、表示パネル10Gの配置面とは、側反対側の面(出射面)には、レンズユニット2114が設けられている。
ここで、光センサ67は、例えば、ダイクロイックプリズム2112の出射面の上部に配置される。光センサ67の受光部は、レンズユニット2114側を向いて配置されている。詳しくは、ダイクロイックプリズムから出射された投射光の一部が、当該レンズユニットで反射し、その反射光を受光可能な位置に配置されている。
図14は、本実施形態における調整方法のタイミングチャートの一態様を示す図である。ここでは、本実施形態における調整方法の原理について、説明する。
図14において、上段の波形は交流化信号FRを示しており、中段の波形はデータ信号Vidを示しており、下段のグラフは輝度の変化を示している。
中段の波形において、データ信号Vidは、基準電位Vcを基準として正極、および負極画像表示期間において、同じ大きさ(振幅)の駆動電圧となっている。詳しくは、白画像に相当する高階調の駆動電圧が、交流化信号FRの正負極性の切換えと同期して、第1フレームでは正極性、第4フレームでは負極性で印加されている。また、第2フレームおよび第3フレームでは、液晶の応答状態をリセットするため、振幅0Vの駆動電圧、すなわち黒画像に相当する駆動電圧が印加される。
なお、振幅0Vの駆動電圧の印加時間は、2フレーム期間に限定するものではなく、例えば、4フレーム期間であっても良い。この期間を長く取るほど、より確実に液晶を初期状態にすることができる。
下段のグラフは、正極、および負極画像表示期間における液晶パネルの表示輝度の推移を示している。また、当該グラフの縦軸は輝度レベルをパーセントで示し、横軸は時間軸であり、上段および中段の波形の時間軸とタイミングを一致させている。
なお、輝度100%とは、例えば、正極画像表示期間が終了するタイミングにおける到達輝度を指している。換言すれば、1フレームから2フレームに推移する間際の正極画像表示期間における到達輝度を指している。また、負極画像表示期間においても同様である。
ここで、応答時間Tp,Tmは、正極、および負極画像表示期間それぞれにおける電流の流れ易さを示す指標と考えることができる。
例えば、応答時間Tpの方が、応答時間Tmよりも長かった場合、正極画像表示期間における抵抗成分が大きいため、電流が流れ難いと考えられる。
この場合、正極電圧を大きくする方向で、対向電極電位を調整すれば良い。
また、同様に、応答時間Tmの方が、応答時間Tpよりも長かった場合、負極画像表示期間における抵抗成分が大きいため、電流が流れ難いと考えられる。
この場合、負極電圧を大きくする方向で、対向電極電位を調整すれば良い。
このようにして、応答時間Tpと、応答時間Tmとが略等しくなるように調整することにより、相関関係にある液晶容量に流れる電流(過渡電流)を低減することができる。
以下、図5のフローとの相違点を中心に説明する。なお、制御部50には、以下説明する動作処理が調整プログラムとして記憶されている。
ここでは、電気光学装置5を図27のプロジェクタ2100に組み込んだ状態を想定して説明する。また、検査モードは、プロジェクタの電源投入時や、使用者により検査モードが選択された場合などに実行される設定となっている。また、例えば、シネマモード(暗室環境)から標準モード(照明環境)に切換えるなどの、表示モードの切替えの際にも実行しても良い。
また、プロジェクタ2100には、3枚の表示パネル10R,10G,10Bが搭載されているため、検査モードにおいては、1枚の表示パネルごとに検査を行うことになる。つまり、図5のフローをRGBの各色光ごとに3回連続して行うことになる。
ステップS52では、正極検査画像が表示される。検査画像は、表示パネル10Rの場合は全面が赤の表示、表示パネル10Gの場合は全面が緑の表示、表示パネル10Bの場合は全面が青の表示となるが、当該3画像を合成した際に、白画像が形成される高階調の画像データを用いる。
また、検査モードにおいては、全走査線(全TFT)を一括して選択し、全面に検査画像データを書き込む。
ステップS53では、正極検査画像を規定するデータ信号Vidの立ち上がりを起点にして、検出部66からの輝度データが到達輝度の95%に達するまでの応答時間Tpを計測する。なお、到達輝度レベルや、到達輝度の95%のデータについては、あらかじめ設計仕様や、実験結果などから導出されたデータが、例えば、データテーブルとして制御部50の記憶部に記憶されている。
ステップS55では、負極検査画像を規定するデータ信号Vidの立ち下がりを起点にして、検出部66からの輝度データが到達輝度の95%に達するまでの応答時間Tmを計測する。
なお、本調整方法では、専用の検査モードで輝度検出を行うため、より輝度が検出し易い検査モード専用の駆動周波数を採用しても良い。例えば、検査モードにおいては、垂直同期信号Vsの周波数を、例えば、30Hzや、50Hzなどとし、60Hzよりも低くすることにより、1フレーム当たりの時間を長くして、輝度の検出精度を高めても良い。
また、検査画像におけるデータ信号Vidの振幅は、例えば、±5V程度とすることが好ましい。
なお、応答時間が等しいという判断は、絶対値が等しい場合のみに限定するものではなく、両者が実質的に等しいと見なせる範疇の幅を持っていても良い。
ステップS57では、応答時間Tpの方が、応答時間Tmよりも長いか否か判断する。応答時間Tpの方が長い場合は、ステップS58へ進む。応答時間Tpの方が、応答時間Tmよりも短い場合は、ステップS59へ進む。
ステップS58では、対向電極電位Vcomの電位を1段階下げた後、本フローを終了する。
ステップS59では、対向電極電位Vcomの電位を1段階上げた後、本フローを終了する。
上記説明においては、光センサ67をプロジェクタ2100内部に備えた場合について説明したが、例えば、出荷検査時のみに調整を行うのであれば、光センサ67、および検出部66の構成を省略することも可能である。
この場合、光センサ67を投射光が照射されるスクリーン2120上に設置し、検出部66の構成も外部の検査装置(図示せず)に組み込んで置き、検出した輝度データをプロジェクタ2100に送信すれば良い。
電気光学装置5によれば、光センサ67を含む検出部66を備えており、正極画像表示期間における所定の輝度に達するまでの応答時間Tpと、負極画像表示期間における所定の輝度に達するまでの応答時間Tmとを計測し、両者が等しくなる方向に対向電極電位Vcomを調整する。
つまり、液晶容量に流れる電流と、液晶の応答時間との間における相関関係に基づき、液晶の応答時間から電流を推測し、調整を行っている。
よって、表示パネルにおいて、電流検出素子としての抵抗Rsが介在することによる、液晶の応答時間の遅延や、保持容量への電荷が蓄積し難くなる、などの影響をなくすことができるため、鮮やかな表示を行うことが可能となる。
さらに、応答時間の計測は、輝度が測定し易い検査用画像で行われ、また、専用の駆動周波数を用いることも可能であるため、電流の推測精度を高めることができる。
従って、鮮やかな表示を行うとともに、確実に焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図16は、実施形態7に係る電気光学装置の概略構成図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態7の電気光学装置6は、1フレームを時系列に2つのフィールドに分けて、1フレーム内において、正極および負極の画像表示を行う面反転倍速駆動を採用している。
また、このため、制御部には、倍速駆動を実現するためのフレームメモリが搭載されている。
これらの構成以外は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置1と同様である。
なお、フレームメモリ58が搭載されていること以外の構成は、実施形態1の電気光学装置1と同様である。
図17は、実施形態7の駆動方法におけるタイミングチャートである。
ここでは、本実施形態の電気光学装置における基本的な表示駆動方法について図17を用いて説明する。
実施形態7では、第1および第2フィールドのそれぞれにおいて1本の走査線によって、1、2、3、4、…、479、480行目という走査線の順番通りに走査駆動を行い、かつ、各フィールドにおけるデータ信号の極性を反転させる、面反転倍速駆動を採用している。詳しくは、制御部50は、外部上位装置から供給される表示データVideoをフレームメモリ58に記憶させた後、表示パネル10において所定の画素行の走査線が選択されるとき、当該画素行の表示データを記憶速度の倍の速度で読み出させる。
そして、第1および第2フィールドにおいて、当該読み出された表示データを走査線1〜480行目の順番で2倍の速度で書き込む。
まず、最上段の走査線に供給される走査信号G1は、スタートパルスDyaが供給された後、クロック信号Clyが最初に立ち上がってから半周期遅延したタイミングで出力される。そして、走査信号G1に続いて、順次走査信号G2〜G480が、クロック信号Clyの論理レベルが変化する毎にクロック信号の半周期分の期間において順次Hレベルとなるように出力される。
よって、図17に示されるように、第1フィールドではスタートパルスDyaの供給を契機として1〜480行目の走査線が選択され、第2フィールドではスタートパルスDybの供給を契機として1〜480行目の走査線が選択される。また、スタートパルスDybの立ち上がりがタイミングTと一致している。なお、タイミングTは、スタートパルスDyaからクロック信号Cly240周期目のタイミング、つまり、1フレームの中間タイミングを示している。
データ信号は、交流化信号FRのH/Lレベルに対応して極性反転される。具体的には、第1フィールドにおいては正極性の電圧に変換され、第2フィールドにおいては負極性の電圧に変換され、1フレーム内において面反転駆動がなされる。
また、第1フィールドにおいて480行目の走査線を選択してから、次の第2フィールドにおいて1行目の走査線を選択するまでの帰線期間Fb1が設けられている。同様に、第2フィールドにおいて480行目の走査線を選択してから、次のフレームの第1フィールドにおいて1行目の走査線を選択するまでの帰線期間Fb2が設けられている。
実施形態7の面反転倍速駆動を採用した場合、大別して2つの調整方法を選択することができる。液晶容量に流れる電流を検出し、その検出結果に基づいて調整を行うことについては、2つの調整方法ともに共通であるが、電圧実効値の調整方法が異なる。
詳しくは、第1の調整方法では、実施形態1および2で説明したVcomの調整によって、電圧実効値を調整する。
第2の調整方法では、データ信号の1周期における正極性の期間長と、負極性の期間長との割合を調整することによって、正負極性における電圧実効値を調整する。
ここでは、まず、第1の調整方法について説明する。
ここでは、図18と図6とを比較しながら説明する。
図18は、本実施形態の電気光学装置6において、図5の調整フローを行った際におけるタイミングチャートの一態様である。
本実施形態に図5の調整フローを適用する場合、図5,6の説明におけるフレームを、フィールドに読替えれば良い。詳しくは、図5,6の方法では、連続する正負極2つのフレームを1周期として調整を行っていたが、本実施形態では、1フレーム内の正負極2つのフィールドを1周期として調整を行うことになる。
つまり、面反転倍速駆動において、正極画像表示期間(第1フィールド)に流れる電流と、負極画像表示期間(第2フィールド)に流れる電流とが等しくなるように対向電極電位Vcomを調整する。
まず、1フレームの第1フィールドにおいて、交流化信号FRのタイミングおよび極性に同期した正極性のデータ信号Vidが出力される(ステップS1)。
正極性のデータ信号Vidが印加された際の検出電流値が検出電流Ia11として計測される(ステップS2)。
検出電流Ia11が積算されて積算電流Ib11として記録される(ステップS3)。
続いて、第2フィールドにおいても、第1フィールドと同様に交流化信号FRのタイミングおよび極性に同期した負極性のデータ信号Vidが出力される(ステップS4)。
負極性のデータ信号Vidが印加された際の検出電流値が検出電流Ia12として計測される(ステップS5)。
検出電流Ia12が積算されて積算電流Ib12として記録される(ステップS6)。
このため、対向電極電位Vcomの電位を1段階上げた後、次の2フレームの第1フィールドに進んでいる(ステップS9)。
その結果、2フレームの第1フィールドにおける積算電流Ib13と、第2フィールドにおける積算電流Ib14とは、図18に示されるように等しくなく、積算電流Ib13の方が積算電流Ib14よりも大きかった(ステップS7,8)。
このため、対向電極電位Vcomの電位を1段階上げた後、次の3フレームに進んでいる(ステップS9)。
その結果、3フレームの第1フィールドにおける積算電流Ib15と、第2フィールドにおける積算電流Ib16とは、図18に示されるように等しかったため、電位v+2を維持したまま、次のフレームに進んでいる。(ステップS7)。
このようにして、面反転倍速駆動においても、図5の調整フローを適応することができる。
この場合も、図7および図6の説明におけるフレームを、フィールドに読替えれば良い。詳しくは、図7,6の方法では、連続する正負極2つのフレームを1周期として調整を行っていたが、本実施形態では、1フレーム内の正負極2つのフィールドを1周期として調整を行う。
つまり、面反転倍速駆動において、1フレームごとの積算電流値が所定の電流値よりも小さくなるように制御を行う。
具体的には、図18の1フレームでは、積算電流Ib11と積算電流Ib12とを高さ方向に積み上げた電流値が合計電流となる。同様に、2フレームでは、積算電流Ib13と積算電流Ib14と積み上げた電流値が合計電流となる。
このようにして、面反転倍速駆動においても、図7の調整フローを適応することができる。
図19は、面反転倍速駆動において各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
ここでは、第2の調整方法について説明する。
第2の調整方法では、第2フィールドの開始タイミングを調整することによって、1フレームにおける正極性の期間長と、負極性の期間長との割合を変化させ、正負極性における電圧実効値を調整する。
まず、走査線1においては、スタートパルスDyaをトリガとして、1フレームの第1フィールドにおいて正極性の書き込みがなされる。そして、タイミングTで出力されるスタートパルスDybをトリガとして、第2フィールドにおいて負極性の書き込みがなされる。
ここで、正極および負極電圧の保持期間は、1フレームの中間点のタイミングTにおいて切換る第1フィールド、および第2フィールドの長さと同じとなる。
同様に、走査線2〜480についても、時系列で書き込みタイミングはシフトしているものの、正負極電圧の保持期間は、等しくなっている。
つまり、図19のように、タイミングTでスタートパルスDybが出力される場合においては、第1および第2フィールドの期間長は、共にクロック信号Clyの240周期分であるため、正極および負極電圧の保持期間は等しくなるが、前述した基板間の特性差などに起因して、正極および負極における電圧実効値が等しいとは言えなかった。
このため、第2の調整方法では、スタートパルスDybの出力タイミングを段階的に早めるか、または、段階的に遅らせることにより、正負極における電圧実効値を調整する。
また、位相の調整タイミングは、各調整フローにおける対向電極電位Vcomを調整するステップにおいて行われる。
まず、ステップS1〜S8までの処理は、第1の調整方法での説明と同様である。
ステップS9では、正極画像表示期間における積算電流の方が負極画像表示期間における積算電流よりも大きかったことから(ステップS8)、スタートパルスDybの出力タイミングを1段階早めた後、フローを終了する。
図20には、第2フィールドの開始タイミングを早めた様子が示されており、走査線1においては、スタートパルスDybの出力タイミングが早まった分、第1フィールドにおける正極性保持期間が短くなり、その分、第2フィールドにおける負極性保持期間が長くなっている。換言すれば、相対的に1フレーム内における第1フィールドの時間が短くなり、第2フィールドの時間が長くなっている。
また、走査線2〜480についても、時系列で書き込みタイミングはシフトしているものの、相対的に第1フィールドの時間が短くなり、第2フィールドの時間が長くなっている。
なお、第2フィールドの開始タイミングの調整ステップは、クロック発生回路54(図1)のクロック信号に基づいて適宜設定すれば良いが、スタートパルスDybをタイミングTよりも早める場合、その限界は、図20に示されるように、帰線期間Fb1がゼロとなるまでである。
図21には、第2フィールドの開始タイミングを遅らせた様子が示されており、走査線1においては、スタートパルスDybの出力タイミングが遅れた分、第1フィールドにおける正極性保持期間が長くなり、その分、第2フィールドにおける負極性保持期間が短くなっている。換言すれば、相対的に1フレーム内における第1フィールドの時間が長くなり、第2フィールドの時間が短くなっている。
また、走査線2〜480についても、時系列で書き込みタイミングはシフトしているものの、相対的に第1フィールドの時間が長くなり、第2フィールドの時間が短くなっている。なお、第2フィールドの開始タイミングの調整ステップは、クロック発生回路54(図1)のクロック信号に基づいて適宜設定すれば良いが、スタートパルスDybをタイミングTよりも遅らせる場合、その限界は、図21に示されるように、帰線期間Fb2がゼロとなるまでである。
詳しくは、ステップS16では、対向電極電位Vcomの電位を下げる代わりに、スタートパルスDybの出力タイミングを1段階遅らせる。また、ステップS28では、対向電極電位Vcomの電位を上げる代わりに、スタートパルスDybの出力タイミングを1段階早めてやれば良い。
また、電気光学装置6には、図8の構成および図9の調整フロー、または図10の構成と調整方法、または、図12の構成および図15の調整フローを、それぞれ適応することができる。
この場合も、各動作フローにおいて、対向電極電位Vcomの電位を下げるステップでは、スタートパルスDybの出力タイミングを1段階遅らせ、また、対向電極電位Vcomの電位を上げるステップでは、スタートパルスDybの出力タイミングを1段階早めてやれば良い。
電気光学装置6によれば、面反転倍速駆動を採用した場合において、正極性の第1フィールドにおける積算電流と、負極性の第2フィールドにおける積算電流とが等しくなるように対向電極電位Vcomを調整する。
または、第1フィールドにおける積算電流と、第2フィールドにおける積算電流とを合計した合計電流が、所定の電流値よりも小さくなるように対向電極電位Vcomを調整する。
または、第1フィールドにおける積算電流と、第2フィールドにおける積算電流とが等しくなるように、1フレームにおける第1フィールドの期間長と、第2フィールドの期間長との割合を調整する。
よって、面反転倍速駆動と並行してリアルタイムに電流検出を行い、その結果を対向電極電位Vcom、または、正負極性の位相に反映させることができる。
従って、面反転倍速駆動を行うとともに、焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図22は、実施形態8の駆動方法におけるタイミングチャートである。
ここでは、実施形態1,7における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
まず、実施形態8の電気光学装置の構成は、図16の電気光学装置6の構成と同一であり、倍速駆動を行うためのフレームメモリが搭載されている。これらの構成以外は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置1と同様である。
実施形態8では、複数の走査線を第1走査線群と第2走査線群に分けて、1つのフレームにおいて、第1走査線群におけるいずれか1本の走査線と、第2走査線群におけるいずれか一本とが交互に選択され、さらに、1つのフレームにおいて各走査線が2回ずつ選択される、いわゆる領域走査反転駆動を採用している。
図22に示すように、領域走査反転駆動では、第1フレームの第1フィールドにおいて、走査線が241、1、242、2、243、3、…、480、240行目という順番で選択される。詳しくは、走査線1〜240に供給される走査信号G1〜G240はクロック信号ClyがLレベルのときに出力され、走査線241〜480に供給される走査信号G241〜G480はクロック信号ClyがHレベルのときに出力される。
このため、制御部50は、外部上位装置から供給される表示データVideoをフレームメモリ58に記憶させた後、最初に241行目の走査線が選択されるように、走査線駆動回路130を制御する。また、表示データ処理回路55に対し、フレームメモリ58に記憶された241行目に相当する表示データVideoを倍速で読み出させる。
図24には、図22のタイミングチャートがグラフ化して示されており、第1フレームの第1フィールドにおいて、スタートパルスDyaをトリガとして走査線1では正極性の書き込みが行われ、走査線241では負極性の書き込みが行われる様子が示されている。また、以降、走査線2〜240では順次正極性の書き込みがなされ、走査線242〜480では、順次負極性の書き込みがなされている。
ここで、走査線の選択は、前述した通り、241、1、242、2…という順番で行われるが、走査線1〜240に正極性の書き込みを行う走査線を第1の走査線とみなし、走査線241〜480に負極性の書き込みを行う走査線を第2の走査線とみなすこともできる。
また、第1フレームの第2フィールドにおいて、スタートパルスDybをトリガとして第1の走査線では負極性の書き込みが行われ、第2の走査線では正極性の書き込みが行われる。つまり、各走査線において第1フィールドにおける極性が反転した極性の書き込みがなされる。
また、図24の基準位相において、スタートパルスDybは、1フレームの中間であるタイミングTにおいて出力されている。
図23は、実施形態8における調整方法を示すフローチャートである。
実施形態8の領域走査反転駆動を採用した場合においても、第1の調整方法および第2の調整方法を適応することができる。
まず、第1の調整方法について説明する。
前述した通り、領域走査反転駆動では、1つのフィールド内において、2本の走査線によって、正極と負極とが略並行して書き込まれている。このため、正極画像表示期間と、負極画像表示期間とを区分けすることが難しいため、図7の調整フローを応用している。
つまり、フレームごとの積算電流が所定の電流値よりも小さくなるように対向電極電位Vcomを調整する。
まず、ステップS61から始まるフローCの動作処理から説明する。
ステップS61では、第1フレームにおいて画像が表示されるとともに、配線108を流れる電流が検出され、画像表示期間における積算電流が計測される。詳しくは、第1フレームを構成する第1フィールドおよび第2フィールドに渡って、逐次電流が検出され、それらの絶対値が積算される。また、表示画像は、通常表示における画像である。
ステップS62では、ステップS61で求められた積算電流が、所定の電流値よりも小さいか否か判断する。所定の電流値よりも小さい場合は、スタートCに戻る。積算電流が所定の電流値と等しいか、または所定の電流値よりも大きい場合は、ステップS63に進む。
ステップS63では、所定の電流値から、ステップS61で求められた積算電流を引いた差分(前回差分)を算出し記憶する。
ステップS64では、対向電極電位Vcomの電位を1段階下げる。
ステップS65では、2フレームにおいて画像が表示されるとともに、配線108を流れる電流が検出され、画像表示期間における積算電流が計測される。
ステップS66では、所定の電流値から、ステップS65で求められた積算電流を引いた差分(今回差分)を算出し記憶する。
ここでは、ステップS64において対向電極電位Vcomの電位を1段階下げたことによって、積算電流が所定の電流値に近づいたか否かを判断している。今回差分が前回差分よりも小さい場合は、積算電流が所定の電流値に近づいていることになるため、調整(補正)方向は正しいので、再度、フローCを行うことになる。
ステップS68では、第3フレームにおいて画像が表示されるとともに、配線108を流れる電流が検出され、画像表示期間における積算電流が計測される。
ステップS69では、ステップS68で求められた積算電流が、所定の電流値よりも小さいか否か判断する。所定の電流値よりも小さい場合は、スタートDに戻る。積算電流が所定の電流値と等しいか、または所定の電流値よりも大きい場合は、ステップS70に進む。
ステップS70では、所定の電流値から、ステップS68で求められた積算電流を引いた差分(前回差分)を算出し記憶する。
ステップS71では、対向電極電位Vcomの電位を1段階上げる。
ステップS73では、所定の電流値から、ステップS72で求められた積算電流を引いた差分(今回差分)を算出し記憶する。
ステップS74では、ステップS73で求められた今回差分が、ステップS70で記録された前回差分より小さいか否か判断する。前回差分より小さい場合、スタートDに戻る。今回差分が前回差分と等しいか、または前回差分よりも大きい場合は、スタートCへ進む。
フローDでは、ステップS71において対向電極電位Vcomの電位を1段階上げる調整をしている。つまり、フローDは、フローCと反対方向の調整を行うためのフローであり、フローCとフローDとを組合せることで、対向電極電位Vcomの電位を上下させる両方向の調整(補正)が実現される。
ここでは、第2の調整方法について説明する。
第2の調整方法では、第2フィールドの開始タイミングを調整することによって、電圧実効値を調整する。
1行目の走査線においては、スタートパルスDyaをトリガとする第1の走査線によって第1フレームの第1フィールドにおいて正極性の書き込みがなされる。そして、タイミングTで出力されるスタートパルスDybをトリガとする第2の走査線によって第2フィールドにおいて負極性の書き込みがなされる。
また、241行目の走査線においては、スタートパルスDyaをトリガとする第2の走査線によって第1フレームの第1フィールドにおいて負極性の書き込みがなされる。そして、スタートパルスDybをトリガとする第1の走査線によって第2フィールドにおいて正極性の書き込みがなされる。
つまり、第1フィールドおよび第2フィールドは、第1フレームの中間を示すタイミングTで切換っているため、正負極性の書き込み順に拘らず、正負極電圧の保持期間は、等しくなっている。
第2の調整方法では、スタートパルスDybの出力タイミングを段階的に早めるか、または、段階的に遅らせることにより、正負極における電圧実効値を調整する。
また、位相の調整タイミングは、図23の調整フローにおける対向電極電位Vcomを調整するステップにおいて行われる。
ステップS64では、対向電極電位Vcomの電位を下げる代わりに、スタートパルスDybの出力タイミングを1段階遅らせた後、フローを終了する。
図26には、位相を遅らせた様子が示されており、1行目の走査線においては、スタートパルスDybの出力タイミングが遅れた分、第1フィールドにおける正極性保持期間が長くなり、その分、第2フィールドにおける負極性保持期間が短くなっている。換言すれば、相対的に1フレーム内における第1フィールドの時間が長くなり、第2フィールドの時間が短くなっている。
つまり、位相を遅らせることにより、対向電極電位Vcomの電位を下げるのと同様に、第1フレーム内における正極性の電圧実効値の割合を高めることができる。
つまり、位相を早めることにより、対向電極電位Vcomの電位を上げるのと同様に、1フレーム内における負極性の電圧実効値の割合を高めることができる。
また、電気光学装置6には、図8の構成、または図10の構成、または、図12の構成を、それぞれ適応することができる。この場合、調整方法は、図23の調整フローを適応し、検査モードが適応される構成においては、検査画像を用いても良い。
領域走査反転駆動を採用した場合において、正極性の第1フィールドにおける積算電流と、負極性の第2フィールドにおける積算電流とを合計した合計電流が、所定の電流値よりも小さくなるように、1フレームにおける第1フィールドの期間長と、第2フィールドの期間長との割合を調整する。
よって、領域走査反転駆動と並行してリアルタイムに電流検出を行い、その結果を正負極性の位相に反映させることができる。
従って、領域走査反転駆動を行うとともに、焼き付きなどの表示不具合の発生を抑制することが可能な電気光学装置を提供することができる。
図27は、上述した電気光学装置1〜6のいずれかの表示パネル10をライトバルブとして用いた3板式プロジェクタの構成を示す平面図である。
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置を用いた電子機器の例について説明する。
プロジェクタ2100において、ライトバルブに入射させるための光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ10R、10Gおよび10Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
ライトバルブ10R、10G、10Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。
ダイクロイックプリズム2112において合成されたカラー画像を表す光は、レンズユニット2114によって拡大投射され、スクリーン2120上にフルカラー画像が表示される。
図1を用いて説明する。
上述した各実施形態において、電流検出素子としての抵抗Rsは、Com電圧生成回路57から対向電極Comに接続する配線108に挿入されていたが、抵抗Rsを外付けする構成に限定するものではない。抵抗は液晶容量に流れる電流を検出できれば良く、例えば、TFT116(図3)のオン抵抗など、表示パネル10の駆動回路などに元々組み込まれている抵抗成分を用いても良い。
この構成によれば、既存の回路定数に影響を与えることなく、電流を検出することができる。
図5および図7を用いて説明する。
上述した各実施形態においては、図5の調整フロー、または、図7の調整フローに基づく調整を、それぞれ単独で行うこととして説明したが、2つの調整フローを連続して行っても良い。
この場合、図5の調整フローを行った後、図7の調整フローを行うことが好ましい。
この複合調整フローによれば、図5の調整フローによって、正極画像表示期間の積算電流と負極画像表示期間の積算電流とが等しくなった後、図7の調整フローによって、正極および負極の合計画像表示期間における合計電流が、所定の電流値よりも小さくなるように調整が行われる。
よって、正負極における積算電流のバランスを取った後に、正負極合計期間における合計電流が小さくなるように調整するため、消費電力を低減させることができる。
上述した各実施形態においては、ある1行の走査線112に沿った画素に対して、階調に応じた電圧を、1列〜640列のデータ信号Vidを順番にサンプリングすることによって、当該行の画素を1列から640列まで順に書き込むという、いわゆる点順次の構成としたが、データ信号を時間軸にn(nは2以上の整数)倍に伸長するとともに、n本の画像信号線に供給する、いわゆる相展開(シリアル−パラレル変換ともいう)駆動を併用した構成としても良い(特開2000−112437号公報参照)。
または、すべてのデータ線114に対してデータ信号を一括して供給する、いわゆる線順次の構成としても良い。
これらの駆動方法であっても、各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
また、上記各実施形態では、液晶モードとして、電圧無印加状態において白色を表示するノーマリーホワイトモードを適用した形態について説明したが、電圧無印加状態において黒色を表示するノーマリーブラックモードにおいても適応することができる。
Claims (3)
- 走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、前記画素電極と向い合う対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に挟持された電気光学層とを、有する表示パネルと、
前記表示パネルにおける表示輝度を検出するための光センサと、
前記対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、第1の期間において、前記画素電極に前記正極性のデータ信号を印加し、第2の期間において、前記画素電極に前記負極性のデータ信号を印加し、
前記正極性のデータ信号の印加期間における前記表示輝度を前記光センサにより逐次検出して、所定の輝度に達するまでの第1の応答時間を計測し、
前記負極性のデータ信号の印加期間における前記表示輝度を前記光センサにより逐次検出して、所定の輝度に達するまでの第2の応答時間を計測し、
前記第1の応答時間と第1の積算電流との相関関係、および前記第2の応答時間と第2の積算電流との相関関係とに基づき、前記第1の積算電流の絶対値と前記第2の積算電流の絶対値との差が小さくなるように、前記第1の期間と、前記第2の期間とを調整する制御部とを備えることを特徴とする電気光学装置。 - 請求項1に記載の電気光学装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。
- 走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、前記画素電極と向い合う対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に挟持された電気光学層とを有する表示パネルと、前記表示パネルにおける表示輝度を検出するための光センサと、を備えた電気光学装置の駆動方法であって、
前記対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、第1の期間において、前記画素電極に前記正極性のデータ信号を印加し、第2の期間において、前記画素電極に前記負極性のデータ信号を印加し、
前記正極性のデータ信号の印加期間における前記表示輝度を前記光センサにより逐次検出して、所定の輝度に達するまでの第1の応答時間を計測し、
前記負極性のデータ信号の印加期間における前記表示輝度を前記光センサにより逐次検出して、所定の輝度に達するまでの第2の応答時間を計測し、
前記第1の応答時間と第1の積算電流との相関関係、および前記第2の応答時間と第2の積算電流との相関関係とに基づき、前記第1の積算電流の絶対値と前記第2の積算電流の絶対値との差が小さくなるように、前記第1の期間と、前記第2の期間とを調整する制御部とを備えることを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
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