以下、本発明の一実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の車両用灯具10は、例えば、車両用ヘッドランプであり、車両前部の左右両側にそれぞれ配置されている。
図1(a)は本発明の一実施形態である車両用灯具10の外観図、図1(b)は縦断面図である。図2は、光源20の簡略化した断面図である。
図1(a)、図1(b)、図2に示すように、車両用灯具10は、LED素子21とLED素子21の発光面を覆うように配置された波長変換層22(蛍光体とも称される)とを含み、LED素子21からの光のうち波長変換層22を透過した光とLED素子21からの光で励起されて発光した波長変換層22からの光とを含む白色光を発光するように構成された光源20、光源20の光源像を車両前方に投影することにより、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン上にヘッドランプ用配光パターンを形成するように構成された投影光学系30等を備えている。
[LED素子21の構造]
まず、LED素子21の構造について説明する。図3(a)はLED素子21の正面図(上面図)、図3(b)はLED素子21の背面図、図3(c)はLED素子21の断面図(側面図)、図3(d)は図3(a)中A−A断面におけるLED素子21(発光面)の輝度分布の例である。
LED素子21は、基板(例えばサファイア基板)を上に実装し当該基板側から青色光を取り出すフリップチップ型(FC型とも称される)のLED素子であり、正面視で略矩形の発光面を備えている(図3(a)参照)。一般的なLED素子(発光面)が縦300μm×横500μm程度のサイズであるのに対し、本実施形態のLED素子21(発光面)は縦H=500〜1200μm、横W=4〜5mm程度の大サイズである(図3(a)参照)。
図3(b)に示すように、LED素子21は、矩形の基板21a、基板21aの片面に形成されたn型半導体層21b、n型半導体層21b表面のうち一方の長辺を含む細幅領域21b1に形成された長辺方向に延びるn電極21c、n電極21cから遠い方の長辺とn電極21cとの間のn型半導体層21b表面上に形成された活性層21d、活性層21d表面のうち一方の長辺と他方の長辺との間に形成されたp型半導体層21e、p型半導体層21e表面のうち一方の長辺と他方の長辺との間に形成された透明電極21f、透明電極21f表面のうち一方の長辺と他方の長辺との間に形成されたp電極21g等を備えている。
基板21aは、例えば、青色光に対し透過性を有するサファイア基板等の単結晶基板である。n型半導体層21bは、例えば、n-GaN層等の窒化物半導体層である。n電極21cは、例えば、基板上の配線パターンにバンプ等を介して接続されるパッド21c1を含む電極である。パッド21c1は、任意に設けられる。パッド21c1の数も、任意に設けられる。活性層21dは、例えば、InGan層等の発光層である。p型半導体層21eは、例えば、p-GaN層等の窒化物半導体層である。透明電極21fは、AuNiやITO等の薄膜で低抵抗の透明電極である。透明電極21fは、n型半導体層21bと比べ抵抗率の高いp型半導体層21eの電流拡散を補うために用いられる。p電極21gは、例えば、青色光に対し高反射率の電極(反射電極とも称される)である。p電極21gは、透明電極21f表面のうち一方の長辺から他方の長辺にかけての略全領域に形成されている(図3(b)参照)。本実施形態のLED素子21によれば、p電極21gの反射作用により、フェイスアップ型のLED素子に比べ、出力増が可能となる。また、本実施形態のLED素子21においては、放熱効果の高い大サイズのp電極21gを用いることが可能となるため、フェイスアップ型のLED素子に比べ、大電流を供給することに起因するLED素子21の発熱による影響(発光輝度の低下等)を防止又は緩和することが可能となる。
ヘッドランプの用途では、LED素子21には、DC−DCコンバータ等により制御された定電流(順電流:1〜5A、電流密度:35A/cm2以上)を供給するための回路(例えば定電流回路。図示せず)が接続されている。この回路は、例えば、LED素子21に対し、下記の電流分布が形成される程度の電流密度の電流を供給する。この回路からの電流が、p電極21g、透明電極21f、p型半導体層21e、活性層21d、n型半導体層21bを通ってn電極21cへ流れると、活性層21dは青色光を発光する。当該青色光は図3(c)中基板21aから上方向へ直接又はp電極21gで反射して出射する。
p電極21gへ供給された電流は、p電極21g及び透明電極21fがp型半導体層21eのほぼ全域にわたって形成されているため、p電極21gにおいては均一に拡散するが、電流は最短距離を通りやすいため、p型半導体層21e(縦断面)においては均一には拡散せず、n電極21c側に集中し(n電極21c側にピークを持ち)、n電極21cから縦方向に離れるにつれ徐々に減少する電流分布(図3(d)と略同一の分布)を形成する。一方、p電極21gへ供給された電流は、透明電極21f(横断面)においては、n電極21cとp電極21gとが互いに平行に配置されているため(図3(b)参照)、一定の電流分布を形成する。
このように分布した電流により活性層21dが発光することで、LED素子21(の発光面)には、上記電流分布と同様の輝度分布、すなわち、LED素子21の発光面(縦断面)においては、n電極21c側にピークを持ち(n電極21c側に最大輝度部がある)、n電極21cから縦方向に離れるにつれ徐々に減少する輝度分布(図3(d)参照)が形成され、LED素子21の発光面(横断面)においては、一定の輝度分布が形成される。LED素子21の発光面の輝度分布は、最大輝度を示すピークが素子中央より一方の長辺側にあり、輝度ピークは一方の長辺から他方の長辺にかけて1つ存在する。
なお、透明電極21fの厚み、各電極21c、21f、21gの面積、両電極21c、21gの間隔等を調整することで、LED素子21(光源20)の縦断面における輝度分布(ピークの位置、ピークの幅等)を目的の輝度分布に調整することが可能である。
[LED素子21の製造方法]
次に、LED素子21の製造方法(実施例)について説明する。
サファイア基板21aを準備し、MOCVDにより半導体層(n型半導体層21b、活性層21d、p型半導体層21e等)を成長(エピタキシャル成長)させる。
半導体層の成長を順に説明する。サファイア基板21aをMOCVD装置に投入後、水素雰囲気中で1000℃のサーマルクリーニングを10分間行う。TMG(トリメチルガリウム)およびNH3を供給してGaN層からなるバッファ層(図示せず)を形成する。続いて、TMG、NH3およびドーパントガスとしてSiH4を供給し、n型GaN層からなるn型半導体層21bを形成する。続いて、n型半導体層21bの上に活性層21dを形成する。本実施例では、活性層21dには、InGaN/GaNからなる多重量子井戸構造を適用した。すなわち、InGaN/GaNを1周期として5周期成長を行う。具体的には、TMG、TMI(トリメチルインジウム)、NH3を供給しInGaN井戸層を形成し、続いてTMG、NH3を供給してGaN障壁層を形成する。かかる処理を5周期分繰り返すことにより活性層21dが形成される。次に、TMG、TMA(トリメチルアルミニウム)、NH3およびドーパントとしてCP2Mg(bis-cyclopentadienyl Mg)を供給し、p型AlGaNクラッド層(図示せず)を形成する。続いて、TMG、NH3およびドーパントとしてCP2Mgを供給しp型GaN層からなるp型半導体層21eを形成する。
次に、n型半導体層21b(n型GaN層)の一部が表出するように、ウエハ上方からドライエッチングを施す。n型半導体層21b(n型GaN層)が露出した部分21b1を覆うようなレジストパターンを新たにフォトリソグラフィで形成した後、p型半導体層21eを覆うようにITOからなる透明電極21fを形成する。続いて、電子ビーム蒸着法により、反射電極21gが形成される。例えば、反射電極21gは、Ag/Ti/Pt/Auからなる多層膜である。反射電極21gは、抵抗加熱蒸着によって形成されも良い。その後、レジストパターンをリムーバで除去する。
次に、n型半導体層21b(n型GaN層)の露出面21b1にTiAuからなるTiAlからなるn電極21cを形成する。パッドもしくは電極21c形成の際は、それぞれが形成される部分以外にはマスクをフォトリソグラフィ等で形成しておき、パッドもしくは電極21c形成後は、マスクをリムーバで除去する。
以上により、LED素子21が製造される。
[波長変換層22]
波長変換層22は、LED素子21の発光面を覆うように配置されている。図2は、セラミック基板やシリコン基板等の実装基板Cに実装されたLED素子21、LED素子21の発光面を覆うように配置された波長変換層22の例である。なお、LED素子21と実装基板Cとは、例えば、バンプB等を介してp電極21g、n電極21cと実装基板C上の配線パターンとが電気的に接続されている。
これにより、LED素子21からの青色光のうち波長変換層22を透過した青色光成分とLED素子21からの青色光で励起されて発光した波長変換層22からの黄色光成分とを含む白色光(擬似白色光)を発光する光源20(白色光源)を構成することが可能となる。波長変換層22としては、例えば、LED素子21からの青色光で励起されて黄色光を発光する蛍光体(例えば、YAG系蛍光体粒子等の蛍光体粒子が分散された樹脂層)を用いることが可能である。
LED素子21(の発光面)には上記のような輝度分布(図3(d)参照)が形成されるため、光源20(の発光面)には、上記輝度分布と同様の輝度分布、すなわち、光源20の発光面(縦断面)においては、n電極21c側にピークを持ち(n電極21c側に最大輝度部がある)、n電極21cから縦方向に離れるにつれ徐々に減少する輝度分布(図3(d)参照)が形成され、光源20の発光面(横断面)においては、一定の輝度分布が形成される。
図3(d)は、LED素子21(発光面)の縦断面における輝度分布の例である。従来の電極構造のLED素子においては、チップ中心部を最大として周囲に行くほどなだらかに低下する輝度分布となるのに対し(図4参照)、LED素子21においては、n電極21c側にピークを持つ(n電極21c側に最大輝度部がある)輝度分布となることが分かる(図3(d)参照)。
図5は、ヘッドランプ用配光パターンの例である。図5中の真中水平ラインは明暗境界を示しており、上部の暗部が対向車側、下部の明部が路面および歩道側を表している。この照度(輝度)の最大部は図5に示すように、明暗境界部の直下に位置していることが好ましく、下側に行くに従って照度が低下していくグラデーション形状が、遠方視認性および路面照度の最適配光となる。従来の電極構造のLED素子では、図6に示すように、輝度のピークがチップ中心にあるため、前記配光条件を満足させるためには半分の領域をカットして使用しなければならず、光を無駄にしていた。
これに対し、本実施形態のLED素子21では、n電極21c側にピークを持つ(n電極21c側に最大輝度部がある)輝度分布となる(図3(d)参照)ため、従来のようにLED素子からの光の一部をカットすることなく、LED素子21の発光形状をそのまま利用してすれ違いビームに適した配光パターンPを形成することが可能となる。すなわち、従来のようにLED素子からの光の一部をカットすることなく、n電極21c側(輝度がピークの部分)を前記配光の照度最大部に配置して、輝度グラデーション部も配光に合致させることが可能となる。このため、光利用効率が向上する。
以上説明したように、本実施形態のLED素子21によれば、電極構造を工夫することにより、矩形の発光面のうち、縦断面においてはn電極21c側にピークを持ち(n電極21c側に最大輝度部がある)、n電極21cから縦方向に離れるにつれ徐々に減少する輝度分布(図3(d)参照)が形成され、横断面においては一定の輝度分布が形成される、ヘッドランプ用配光パターンの形成に適した輝度分布の光源20を構成することが可能となる。
また、LED素子21は、横長の単一のLED素子であるため、従来のように複数のLED素子を一列に並べて横長にしたもの(図16参照)と比べ、より均一な発光面を形成することが可能となる。なお、図7に示すように、単一のLED素子21ではなく、複数のLED素子21を一列に並べて用いてもよい。
また、波長変換層22は、横長の単一の波長変換層であるため、従来のように一列に並べた複数のLED素子を、それぞれに対応する複数の波長変換層で覆ったもの(図16参照)と比べ、蛍光体粒子の分布の偏りが生じにくくなり、色ムラ、輝度ムラを防止することが可能となる。
[車両用灯具10]
次に、上記構成の光源20を用いて車両用灯具10を構成する例について図面を参照しながら説明する。
図1(a)、図1(b)に示すように、車両用灯具10は、車両前方側に配置された光源20、車両後方側に配置された本発明の投影光学系としての反射面31等を備えている。
光源20は、n電極21c側(輝度がピークの部分)が車両前方側に位置し、n電極21cから遠い方の長辺21a2側が車両後方側(すなわち反射面31側)に位置し、かつ、当該光源20の照射方向(すなわち当該光源20の発光面)が下向きとなるように配置されている(図1(b)参照)。
反射面31は、焦点が光源20近傍に設定された回転放物面系の反射面(例えば、複数の小反射領域に区画されたいわゆるマルチリフレクタ)であり、光源20からの光が入射するように、光源20の側方から前方にかけての範囲を覆うように(すなわち光源20の前方に)配置されている(図1(a)、図1(b)参照)。
反射面31は、図1(b)に示すように、n電極21c(輝度がピークの部分)に対応する像部分P1´が上方に位置するように光源20(の発光面)の複数の光源像P1(図1(b)中1つの光源像P1を例示)を車両前方に投影し、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン(図示せず)上に、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する像部分P1´を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に密に配置することにより形成されるカットオフライン(水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2。図8参照)を含むヘッドランプ用配光パターンPを形成するように構成されている。
本実施形態の車両用灯具10によれば、光源20は反射面31に対し上記位置関係に配置されているため(図1(a)、図1(b)参照)、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する複数の像部分P1´を、水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に密に配置することが可能となる。これにより、カットオフライン(水平カットオフラインCL1及び斜めカットオフラインCL2)付近が最も明るく、当該カットオフラインから下側に行くに従って照度が低下していくグラデーション形状の遠方視認性に優れたすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。
また、本実施形態の車両用灯具10によれば、LED素子21はn電極21c側にピークを持つ(n電極21c側に最大輝度部がある)輝度分布となる(図3(d)参照)ため、従来のようにLED素子からの光の一部をカットする(図6参照)ことなく、LED素子21の発光形状をそのまま利用してすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。すなわち、従来のようにLED素子からの光の一部をカットすることなく、n電極21c側(輝度がピークの部分)を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対し15°)に密に配置して、輝度グラデーション部も配光に合致させることが可能となる。このため、本実施形態の車両用灯具10によれば、光利用効率が向上する。
[変形例1−1]
次に、車両用灯具10の変形例1−1について図面を参照しながら説明する。
図9(a)は本発明の一実施形態である車両用灯具10(変形例1−1)の外観図、図9(b)は縦断面図である。
図9(a)、図9(b)に示すように、本変形例の車両用灯具10は車両前方側に配置された光源20、車両後方側に配置された本発明の投影光学系としての反射面32等を備えている。
光源20は、n電極21cから遠い方の長辺21a2側が車両前方側に位置し、n電極21c側(輝度がピークの部分)が車両後方側(すなわち反射面31側)に位置し、かつ、当該光源20の照射方向(すなわち当該光源20の発光面)が上向きとなるように配置されている(図9(b)参照)。
反射面32は、焦点が光源20近傍に設定された回転放物面系の反射面(例えば、複数の小反射領域に区画されたいわゆるマルチリフレクタ)であり、光源20からの光が入射するように、光源20の側方から前方にかけての範囲を覆うように(すなわち光源20の前方に)配置されている(図9(a)、図9(b)参照)。
反射面32は、図9(b)に示すように、n電極21c(輝度がピークの部分)に対応する像部分P1´が上方に位置するように光源20(の発光面)の複数の光源像P1(図9(b)中1つの光源像P1を例示)を車両前方に投影し、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン(図示せず)上に、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する像部分P1´を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に密に配置することにより形成されるカットオフライン(水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2。図8参照)を含むヘッドランプ用配光パターンPを形成するように構成されている。
本変形例の車両用灯具10によれば、光源20は反射面32に対し上記位置関係に配置されているため(図9(a)、図9(b)参照)、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する複数の像部分P1´を、水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に密に配置することが可能となる。これにより、カットオフライン(水平カットオフラインCL1及び斜めカットオフラインCL2)付近が最も明るく、当該カットオフラインから下側に行くに従って照度が低下していくグラデーション形状の遠方視認性に優れたすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。
また、本変形例の車両用灯具10によれば、LED素子21はn電極21c側にピークを持つ(n電極21c側に最大輝度部がある)輝度分布となる(図3(d)参照)ため、従来のようにLED素子からの光の一部をカットする(図6参照)ことなく、LED素子21の発光形状をそのまま利用してすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。すなわち、従来のようにLED素子からの光の一部をカットすることなく、n電極21c側(輝度がピークの部分)を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対し15°)に密に配置して、輝度グラデーション部も配光に合致させることが可能となる。このため、本変形例の車両用灯具10によれば、光利用効率が向上する。
[変形例1−2]
次に、車両用灯具10の変形例1−2について図面を参照しながら説明する。
図10(a)は本発明の一実施形態である車両用灯具10(変形例1−2)の外観図、図10(b)は縦断面図である。
図10(a)、図10(b)に示すように、本変形例の車両用灯具10は、車両前方側に配置された光源20、車両後方側に配置された本発明の投影光学系としての反射面33等を備えている。
光源20は、n電極21cから遠い方の長辺21a2側が鉛直上方に位置し、n電極21c側(輝度がピークの部分)が鉛直下方に位置し、かつ、当該光源20の照射方向(すなわち当該光源20の発光面)が略水平方向となるように配置されている(図10(b)参照)。
反射面33は、焦点が光源20近傍に設定された回転放物面系の反射面(例えば、複数の小反射領域に区画されたいわゆるマルチリフレクタ)であり、光源20からの光が入射するように、光源20の前方に配置されている(図10(a)、図10(b)参照)。
反射面33は、図10(b)に示すように、n電極21c(輝度がピークの部分)に対応する像部分P1´が上方に位置するように光源20(の発光面)の複数の光源像P1(図10(b)中1つの光源像P1を例示)を車両前方に投影し、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン(図示せず)上に、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する像部分P1´を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に密に配置することにより形成されるカットオフライン(水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2。図8参照)を含むヘッドランプ用配光パターンPを形成するように構成されている。
本変形例の車両用灯具10によれば、光源20は反射面33に対し上記位置関係に配置されているため(図10(a)、図10(b)参照)、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する複数の像部分P1´を、水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に密に配置することが可能となる。これにより、カットオフライン(水平カットオフラインCL1及び斜めカットオフラインCL2)付近が最も明るく、当該カットオフラインから下側に行くに従って照度が低下していくグラデーション形状の遠方視認性に優れたすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。
また、本変形例の車両用灯具10によれば、LED素子21はn電極21c側にピークを持つ(n電極21c側に最大輝度部がある)輝度分布となる(図3(d)参照)ため、従来のようにLED素子からの光の一部をカットする(図6参照)ことなく、LED素子21の発光形状をそのまま利用してすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。すなわち、従来のようにLED素子からの光の一部をカットすることなく、n電極21c側(輝度がピークの部分)を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対し15°)に密に配置して、輝度グラデーション部も配光に合致させることが可能となる。このため、本変形例の車両用灯具10によれば、光利用効率が向上する。
[変形例1−3]
次に、車両用灯具10の変形例1−3について図面を参照しながら説明する。
図11は、本発明の一実施形態である車両用灯具10(変形例1−3)の縦断面図である。
図11に示すように、本変形例の車両用灯具10は、車両前方側に配置された投影レンズ34a、車両後方側に配置された光源20、光源20からの光が入射するように、光源20の側方から前方にかけての範囲を覆うように(すなわち光源20の前方に)配置された反射面34b、投影レンズ34aと光源20との間に配置されたシェード34c等を備えている。投影レンズ34a、反射面34b、シェード34cが本発明の投影光学系を構成している。
光源20は、n電極21c側(輝度がピークの部分)が車両前方側に位置し、n電極21cから遠い方の長辺21a2側が車両後方側(すなわち反射面31側)に位置し、かつ、当該光源20の照射方向(すなわち当該光源20の発光面)が上向きとなるように配置されている(図11(b)参照)。
反射面34bは、第1焦点が光源20近傍に設定され、第2焦点がシェード34cの上端縁近傍に設定された回転楕円系の反射面であり、光源20からの光が入射するように、光源20の側方から前方にかけての範囲を覆うように(すなわち光源20の前方に)配置されている(図11参照)。
反射面34bは、n電極21c(輝度がピークの部分)に対応する像部分P1´が上方に位置するように光源20(の発光面)の複数の光源像P1を車両前方に投影し、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン(図示せず)上に、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する像部分P1´を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に密に配置することにより形成されるカットオフライン(水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2。図8参照)を含むヘッドランプ用配光パターンPを形成するように構成されている。
シェード34cは、反射面34bからの反射光の一部を遮光してカットオフラインを形成するための遮光部材であり、上端縁を投影レンズ34aの焦点近傍に位置させた状態で投影レンズ34aと光源20との間に配置されている。
本変形例の車両用灯具10によれば、光源20は上記位置関係に配置されているため(図11参照)、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する複数の像部分P1´を、水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に密に配置することが可能となる。これにより、カットオフライン(水平カットオフラインCL1及び斜めカットオフラインCL2)付近が最も明るく、当該カットオフラインから下側に行くに従って照度が低下していくグラデーション形状の遠方視認性に優れたすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。
また、本変形例の車両用灯具10によれば、LED素子21はn電極21c側にピークを持つ(n電極21c側に最大輝度部がある)輝度分布となる(図3(d)参照)ため、従来のようにLED素子からの光の約半分をカットする(図6参照)ことなく、LED素子21の高輝度側端部からのごく一部の光をカットするだけで、LED素子21の発光形状をほぼそのまま利用してすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。すなわち、従来のようにLED素子からの光の約半分までをカットすることなく、n電極21c側(輝度がピークの部分)を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対し15°)に密に配置して、輝度グラデーション部も配光に合致させることが可能となる。このため、本変形例の車両用灯具10によれば、光利用効率が向上する。また、本変形例の車両用灯具10によれば、従来のLED素子を用いる場合と比較して、シェードの受けるエネルギーが少なくなり(すなわちシェードにはLED素子21の高輝度側端部からのごく一部の光しか当たらないため)、シェードが加熱される量を低減することが可能となる。
[変形例1−4]
次に、車両用灯具10の変形例1−4について図面を参照しながら説明する。
図12は、本発明の一実施形態である車両用灯具10(変形例1−4)の縦断面図である。
図12に示すように、本変形例の車両用灯具10は、車両前方側に配置された本発明の投影光学系としての投影レンズ35a、車両後方側に配置された光源20、投影レンズ35aと光源20との間に配置されたシェード35b等を備えている。投影レンズ35a、シェード35bが本発明の投影光学系を構成している。
光源20は、n電極21cから遠い方の長辺21a2側が鉛直上方に位置し、n電極21c側(輝度がピークの部分)が鉛直下方に位置し、かつ、当該光源20の照射方向(すなわち当該光源20の発光面)が車両前方側を向くように配置されている(図12参照)。
シェード35bは、光源20からの光の一部を遮光してカットオフラインを形成するための遮光部材であり、上端縁を投影レンズ35aの焦点近傍に位置させた状態で投影レンズ35aと光源20との間に配置されている。
本変形例の車両用灯具10によれば、光源20は上記位置関係に配置されているため(図12参照)、光源20の複数の光源像P1それぞれのn電極21c(輝度がピークの部分)に対応する複数の像部分P1´を、水平方向及び斜め方向(例えば水平に対して15°)に配置することが可能となる。これにより、カットオフライン(水平カットオフラインCL1及び斜めカットオフラインCL2)付近が最も明るく、当該カットオフラインから下側に行くに従って照度が低下していくグラデーション形状の遠方視認性に優れたすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。
また、本変形例の車両用灯具10によれば、LED素子21はn電極21c側にピークを持つ(n電極21c側に最大輝度部がある)輝度分布となる(図3(d)参照)ため、従来のようにLED素子からの光の約半分をカットする(図6参照)ことなく、LED素子21の高輝度側端部からのごく一部の光をカットするだけで、LED素子21の発光形状をほぼそのまま利用してすれ違いビーム用配光パターンPを形成することが可能となる(図8参照)。すなわち、従来のようにLED素子からの光の約半分までをカットすることなく、n電極21c側(輝度がピークの部分)を水平方向及び斜め方向(例えば水平に対し15°)に密に配置して、輝度グラデーション部も配光に合致させることが可能となる。このため、本変形例の車両用灯具10によれば、光利用効率が向上する。また、本変形例の車両用灯具10によれば、従来のLED素子を用いる場合と比較して、シェードの受けるエネルギーが少なくなり(すなわちシェードにはLED素子21の高輝度側端部からのごく一部の光しか当たらないため)、シェードが加熱される量を低減することが可能となる。
[変形例2−1]
次に、LED素子21の構造(変形例2−1)について図面を参照しながら説明する。図13(a)はLED素子21(変形例2−1)の正面図(上面図)、図13(b)はLED素子21(変形例2−1)の背面図、図13(c)はLED素子21(変形例2−1)の断面図(側面図)、図13(d)は図13(a)中B−B断面におけるLED素子21(変形例2−1)の輝度分布の例である。
図13(b)、図13(c)に示すように、p電極21gは、n電極21cと同一方向に延びる複数の電極21g1であってもよい。
例えば、図13(b)、図13(c)に示すように、縦方向に間隔をおいて、かつ、透明電極21f表面のうちn電極21cから遠い方の長辺から、n電極21cに向かうにつれ縦方向寸法が大きくなるように複数の電極21g1を形成する。
本変形例によれば、各電極21g1からn電極21cに流れる電流により活性層21dの略全域が発光する。活性層21dからの光は、縦寸法が大きい電極21g1(反射電極)の反射作用により、当該縦寸法が大きい電極21g1が形成されたn電極21c側からより多く取り出されることになる。このように反射光を制御することで、LED素子21の発光面(縦断面)においては、n電極21c側にピークを持ち、n電極21cから縦方向に離れるにつれ徐々に減少する輝度分布(図13(d)参照)が形成され、LED素子21の発光面(横断面)においては、一定の輝度分布が形成される。
したがって、本変形例のLED素子21の発光面を覆うように波長変換層22を配置することで(図2参照)、縦断面においてはn電極21c側にピークを持ち(n電極21c側に最大輝度部がある)、n電極21cから縦方向に離れるにつれ徐々に減少する輝度分布(図13(d)参照)が形成され、横断面においては一定の輝度分布が形成される、ヘッドランプ用配光パターンの形成に適した輝度分布の光源20を構成することが可能となる。
また、本変形例のLED素子21を含む光源20は上記実施形態の光源20と同様、n電極21c側にピークを持つ輝度分布であるため、本変形例のLED素子21を含む光源20を用いて、車両用灯具10(図1参照)、変形例1−1〜1−4の車両用灯具10(図8〜図12参照)を構成することが可能となる。
また、本変形例によれば、複数の電極21g1の本数、縦方向寸法等を調整することで、LED素子21(光源20)の縦断面における輝度分布(ピークの位置、ピークの幅等)を目的の輝度分布に調整することが可能となる。
ここで、ヘッドランプ用配光パターンは、発光素子(LED素子)光源の上下方向の拡散よりも、左右方向への拡散が大きいため、発光素子(LED素子)の輝度分布において、横縞が生じるよりも、縦縞が生じるほうが配光ムラへの影響が少ない(図15参照)。なお、本願における横縞は、上方の端部から下方の端部へ輝度が低下する輝度分布ではなく、縦断面において山(ピーク)、谷、山(ピーク)・・・が連続する輝度分布(図15参照)のことを示す。
そのため、複数の電極21g1の本数、縦方向寸法等を調整し、横縞が生じないような輝度分布を形成することが好ましい。
[変形例2−2]
次に、LED素子21の構造(変形例2−2)について図面を参照しながら説明する。図14(a)はLED素子21(変形例2−2)の正面図(上面図)、図14(b)はLED素子21(変形例2−2)の背面図、図14(c)はLED素子21(変形例2−2)の断面図(側面図)、図14(d)は図14(a)中C−C断面におけるLED素子21(変形例2−2)の輝度分布の例である。
図14(a)、図14(c)に示すように、基板21a表面には、活性層21dからの光(活性層21dからの直接光又はp電極21gからの反射光)を取り出すための複数の構造物21a1(マイクロコーンと称される)が形成されていてもよい。複数の構造物21a1は、基板21a表面に対し凸であってもよいし、凹であってもよい。
例えば、図14(b)に示すように、n電極21cと同一方向に延びる付加電極21c2をn電極21cから遠い方の長辺に沿って形成し、n電極21cと付加電極21c2とを縦方向に延びる付加電極21c3により接続する。そして、図14(a)に示すように、基板21a表面のうちn電極21cから遠い方の長辺21a2から、n電極21側に向かうにつれ密となるように複数の構造物21a1を形成する(数の制御)。また、構造物21a1のサイズによっても光取り出し効率は変化するため、複数の構造物21a1の大きさを調整することによっても、輝度分布を適宜調整することができる。
例えば、基板21a表面に対しドライエッチングを施すことで、複数の構造物21a1を形成することが可能である。
本変形例によれば、p電極21gからn電極21c(及び付加電極21c2、21c3)に流れる電流により活性層21dの略全域が発光する。活性層21dからの光は、基板21a表面のうち複数の構造物21a1が密に形成されたn電極21c側からより多く取り出されることになる。このため、LED素子21の発光面(縦断面)においては、n電極21c側にピークを持ち、n電極21cから縦方向に離れるにつれ徐々に減少する輝度分布(図14(d)参照)が形成され、LED素子21の発光面(横断面)においては、一定の輝度分布が形成される。
したがって、本変形例のLED素子21の発光面を覆うように波長変換層22を配置することで(図2参照)、縦断面においてはn電極21c側にピークを持ち(n電極21c側に最大輝度部がある)、n電極21cから縦方向に離れるにつれ徐々に減少する輝度分布(図14(d)参照)が形成され、横断面においては一定の輝度分布が形成される、ヘッドランプ用配光パターンの形成に適した輝度分布の光源20を構成することが可能となる。
また、本変形例のLED素子21を含む光源20は上記実施形態の光源20と同様、n電極21c側にピークを持つ輝度分布であるため、本変形例のLED素子21を含む光源20を用いて、車両用灯具10(図1参照)、変形例1−1〜1−4の車両用灯具10(図8〜図12参照)を構成することが可能となる。
また、本変形例によれば、複数の構造物21a1の密度、サイズ等を調整することで、LED素子21(光源20)の縦断面における輝度分布(ピークの位置、ピークの幅等)を目的の輝度分布に調整することが可能となる。
なお、複数の構造物21a1は、基板21a表面ではなく、例えば、基板21aとn型半導体層21bとの界面等のその他の部分に形成されていてもよい。
なお、本変形例2−2と上記実施形態又は他の変形例とを組み合わせたLED素子21を構成してもよい。
なお、上記実施形態及び各変形例では、LED素子21が青色光を発光するLED素子であり、波長変換層22がLED素子21からの青色光で励起されて黄色光を発光する波長変換層であるように説明したが本発明はこれに限定されない。LED素子21としては青色光以外の波長の光を発光するLED素子を用いることが可能であり、波長変換層22としては黄色以外の波長の光を発光する波長変換層を用いることが可能である。
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。