以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1・第1実施例)
まず、図1、図2を参照して流体輸送装置の構成について説明する。
図1は、実施形態1の第1実施例に係る流体輸送装置の主たる構成を示す平面図、図2は、図1のA−P−A切断面を示す断面図である。本実施形態に係る流体輸送装置10は、チューブユニット11を制御ユニット12に形成される空間内にスライド装着し、固定枠13によって制御ユニット12に圧接するよう螺子90を用いて着脱可能に固定して構成されている。
チューブユニット11は、流体を収容するリザーバー14と、弾性を有するチューブ50と、複数のフィンガー40〜46と、これらを収容する第1チューブ枠55と第2チューブ枠56とから構成されている。
なお、本実施形態では、リザーバー14とチューブ50とは中空成形法によって一体に形成する構成を例示しており、共に弾性を有する材料からなる。
チューブ50は、第1チューブ枠55に形成されたチューブ案内溝55bに装着されている。チューブ案内溝55bの一部は、チューブユニット11を制御ユニット12に装着した状態で、カム20の回転中心Pから円弧状に形成されている。この円弧形成領域は、フィンガー40〜46によるチューブ50の圧閉領域である。チューブ50の流出口部53は、チューブユニット11及び固定枠13を貫通して外部に延在される。
フィンガー40〜46は、カム20の回転中心Pから等間隔で放射状に配列されている。フィンガー40〜46は、第1チューブ枠55に形成されたフィンガー案内溝55aに挿着されている。フィンガー40〜46のそれぞれの形状は、同じ形状をしているのでフィンガー43を例示して説明する(図2、参照)。
フィンガー43は、棒状の軸部43aと、軸部43aの一方の端部に鍔状に形成されるチューブ押圧部43bと、他方の端部に半球状に形成されるカム当接部43cとから構成されており、本実施形態では金属材料からなる。チューブ押圧部43bは、チューブ案内溝55b内に突出してチューブ50に近接する位置に、カム当接部43cは、チューブユニット11からカム20に近接する位置に突出されている。
フィンガー40〜46は、チューブ50とカム20との間にあって、カム20の回転中心P方向からチューブ案内溝55bの外側側壁であるチューブ規制部55cに向かって進退可能である。なお、図2は、フィンガー43がチューブ50の流体流動部51を圧閉した状態を表している。
なお、本実施形態は、生体に装着して薬液を生体に注入することに好適な流体輸送装置であって、例えば、チューブ50の外径が1mm〜2mm程度、カム20の外径が7mm〜10mm程度の小型の輸送装置に適用もできる。
そして、リザーバー14には、セプタム95が設けられている。セプタム95の一端は、固定枠13から外部に覗くように配設されており、薬液を補充可能な構成としている。
制御ユニット12は、カム20と、伝達車110と、ローター120と、駆動源としての振動体130と、図示しない電源(小型電池)と、振動体130の駆動制御を行う制御回路と、これらを保持する第1機枠15と第2機枠16とから構成されている。
カム20は、カム車軸25と、カム車軸25に軸止されるカム歯車26とカム案内軸27と、カム案内軸27の軸部27aに嵌着される弾性部材としての弾性リング29と、弾性リング29の外周部に装着される第1カム体21と第2カム体22と第3カム体23と第4カム体24と、これらカム体の厚さ方向への移動を規制するカム体保持板28と、から構成され、第1機枠15及び第2機枠16とによって軸支されている。なお、弾性リング29はゴム系材料を用いることが好ましい。
伝達車110は、ピニオン113が形成された伝達車軸111と、伝達車軸111に軸止された伝達歯車112と、から構成され、第1機枠15及び第2機枠16とによって軸支されている。
ローター120は、ローター軸121と、ローター軸121に軸止されるピニオン122とから構成され、第1機枠15及び第2機枠16とによって軸支されている。
振動体130は、圧電素子131と、腕部132と、ローター軸121に当接される凸部133と、から構成されている。振動体130は、第1機枠15に植立された固定軸135に腕部132を螺子等で螺着固定される。なお、振動体130の構成及び駆動は、特許第3972608号公報(図3、図4、参照)に記載の振動体が適合できるので説明を省略する。
第1機枠15の外側(図示、下側)には第3機枠17、第2機枠16の外側(図示、上側)には第4機枠18が固定されており、第3機枠17と第4機枠18とを含めて制御ユニット12が構成されている。そして、チューブユニット11は、第3機枠17と第4機枠18の間に形成される空間内にスライド挿着される。
次に、振動体130からカム20に至る回転力の伝達について説明する。振動体130の凸部133の楕円振動により、ローター120を時計回りに回転させ、ローター120の回転力は、ピニオン122から伝達歯車112、ピニオン113を介してカム歯車26に所定の減速比で伝達され、カム20が時計回りに回転する。
続いて、図3、図4を参照して、第1実施例に係るカム20の構成の詳細と流体流動作用について説明する。
図3は、本実施例に係るカムの構成及び流体流動作用の一状態を表す部分平面図、図4は、図3のB−P−B切断面を示す部分断面図である。カム20は、第1カム体21と第2カム体22と、第3カム体23と、第4カム体24とを有し、平面的に互いに間隙を有して配設されている。第1カム体21は、フィンガーを押動しない解除領域21aと、フィンガーを押動していく押動領域21bと、フィンガーによるチューブ50の流体流動部51を圧閉する圧閉領域21cとを有している。
また、第2カム体22も同様に、解除領域22aと押動領域22bと圧閉領域22cを有し、第3カム体23も解除領域23aと押動領域23bと圧閉領域23cを有し、第4カム体24も解除領域24aと押動領域24bと圧閉領域24cとを有している。
そして、第1カム体21には貫通孔21d,21eが開設され、第2カム体22には貫通孔22d,22e、第3カム体23には貫通孔23d,23e、第4カム体24には貫通孔24d,24eが開設されている。第1カム体21と第2カム体22と第3カム体23と第4カム体24とは、同じ形状を有している。
カム案内軸27の円盤部27bには、各カム体の平面方向の移動を所定の範囲で規制するカム規制軸32,34,36,38と、カム回転軸31,33,35,37とが植立されている。カム案内軸27への各カム体の装着構造は同じであるため、第1カム体21を例示して説明する。
第1カム体21は、カム回転軸31に貫通孔21d、カム規制軸32に貫通孔21eを挿着することで一体で回転可能となる。この際、カム回転軸31と貫通孔21dとの勘合は第1カム体21が回転可能な範囲で互いの径差を小さく設定する。また、カム規制軸32と貫通孔21eとの勘合は、第1カム体21がカム回転軸31を回転中心として所定の範囲で回動可能な範囲で径差を設定する。
各カム体は、弾性リング29を圧縮するように装着されるが、カム回転軸31に対して貫通孔21dの径差は極めて小さいため、第1カム体21はほとんど移動しない。しかし、カム規制軸32に対して貫通孔21eの径は大きいため、第1カム体21は、弾性リング29の弾性力によってカム回転軸31を中心にチューブ規制部55cに近づく方向に、且つ、カム規制軸32と貫通孔21eとが当接する位置まで回転(移動)される。
この状態で、第1カム体21の圧閉領域21cの位置は、図3の状態では、フィンガー44がチューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準位置よりも僅かにチューブ規制部55cに近づく方向に突出している。この突出量は、チューブ50の圧閉量(つぶし量)を決定する構成部品の寸法ばらつきを吸収して確実に圧閉可能な量に設定される。そして、カム規制軸32と貫通孔21eとの径差は、このフィンガー44の弾性リング29の弾性力による移動量と標準移動量との差よりも大きく設定される。
ここで、チューブ50を含んでフィンガー44及び第1カム体21の寸法が標準寸法よりも大きい場合には、フィンガー44が流体流動部51を圧閉し、なおチューブ規制部55cに近づく。すると、弾性リング29が弾性変形し、第1カム体21の圧閉領域21cが回転中心Pの方向にカム規制軸32と貫通孔21eとの径差の分だけ回動する。よって、フィンガー44もチューブ規制部55cから離間する方向に移動する。なお、流体流動部51は圧閉された状態である。
このように構成される第1カム体21の押動領域21bがフィンガー45,46を倣動させる場合、弾性リング29には流体流動部51を圧閉する方向への押動力があるため、この領域でのフィンガーの移動はほとんどない。
(流体輸送方法)
続いて、本実施例における流体輸送方法について図3を参照して説明する。なお、図1も参照する。カム20は、振動体130によって所定の減速比で時計回りに回転される。図3の状態は、フィンガー44が、チューブ50の流体流動部51を圧閉している。フィンガー45,46は、第1カム体21の押動領域21bにあるため流体流動部51は完全には圧閉していない。
また、フィンガー41,42,43は、第2カム体22の解除領域22aにあるため流体流動部51は開放されている。フィンガー40は押動領域22bにかかり始めている状態で、まだ流体流動部51は開放状態である。流体流動部51の圧閉されていない領域には流体が入り込んでいる。
さらにカム20を時計回りに回転させることにより、フィンガー40〜46をカム20の回転方向に上流側から下流側に向かって、順次、流体流動部51の圧閉〜開放〜圧閉を繰り返し、流体をカム20の回転方向に流動する。
この過程で、各フィンガーが流体流動部を圧閉するときに、標準寸法よりも圧閉量が大きい場合(つまり、チューブ規制部55cに標準寸法より近づく場合)に、弾性リング29が変形してカム体がフィンガーをチューブ規制部55cよりも遠ざける方向に移動し、チューブの押し圧力を一定の範囲内に収めることを可能にしている。
なお、フィンガー40〜46はチューブ50を圧閉後、各カム体の押動力が解除されるとチューブ50の弾性力によって回転中心Pの方向に押し戻される。
本実施例によれば、カム20が、フィンガー40〜46のそれぞれをチューブ規制部55cに向かって押動する第1カム体21〜第4カム体24を有し、弾性部材としての弾性リング29によって第1カム体21〜第4カム体24をチューブ規制部55cに向かって常時押圧している。この際、フィンガー40〜46がチューブ50の流体流動部51を圧閉可能な標準寸法よりも弾性リング29により押圧する寸法分だけチューブ規制部55cに近づけるように構成部品のばらつき寸法分だけ突出されている。
よって、チューブ50を含む構成部品が標準寸法より小さい場合に流体流動部51を確実に圧閉することができ、標準寸法より大きい場合には、弾性リング29が変形して過剰な負荷を吸収することで、流体流動部51の内面及びチューブ50の外面の損傷を防止することができる。
チューブ50を含んでフィンガー44及び第1カム体21の寸法が標準寸法よりも大きい場合、フィンガー44が流体流動部51を圧閉し、なおチューブ規制部55cに近づく。チューブ50を圧閉し、さらに標準寸法より圧閉量(つぶし量)が増加すると、カム20にかかる負荷が急激に増加し、カム20が駆動停止してしまうことがある。しかし、弾性リング29が変形しこの過剰な負荷を吸収するため、この負荷を一定範囲に収めることから、カム20が駆動途中で停止することを防止できる。また、このことから、駆動源としての振動体130を高トルクで駆動させるために大型化する必要がなく、小型化を実現できる。
また、弾性部材として第1カム体21〜第4カム体24に対して一つの弾性リング29を用いることで、部品数を少なくして構成を簡単にできる。また、各カム体それぞれの押動量、押圧力をほぼ一定にすることができる。
さらに、弾性部材に熱伝導性が低い性質を持つ樹脂複合材等を用いることで、チューブ50とカム20との熱伝導を抑制することができる。
また、本実施例では、4つの第1カム体21〜第4カム体24を有しているが、それぞれが共通であるためカム体の製造負荷が増加せず、組み立て性もよい。
なお、本実施形態では、弾性部材として弾性リング29を用いているが、第1カム体21〜第4カム体24に対応して板状の弾性部材を個別に具える構成としてもよい。
また、弾性部材としては、適度な弾性を有していれば材質は限定されない。
また、本実施例では、カム体の数が4個の場合を例示して説明したが、カム体の数は少なくとも2個以上あればよく、5個にしてもそれ以上であってもよい。
(実施形態1・第2実施例)
続いて、実施形態1の第2実施例について図面を参照して説明する。第2実施例は、前述した第1実施例に対して、複数のカム体をチューブ規制部に向かってスライド可能な構成にしていることを特徴としている。よって、第1実施例との相違箇所を中心に説明する。なお、同じ機能を有する部分には第1実施例と同じ符号を附している。
図5は、実施形態1の第2実施例に係るカムの構成及び流体流動作用の一状態を表す部分平面図、図6は、図5のD−P−D切断面を示す部分断面図である。カム20は、第1カム体21と、第2カム体22と、第3カム体23と、第4カム体24と、を平面的に互いに間隙を有して配設されている。第1カム体21は、フィンガーを押動していく押動領域21bと、フィンガーによりチューブ50の流体流動部51を圧閉する圧閉領域21cとを有している。
また、第2カム体22も同様に、押動領域22bと圧閉領域22cを有し、第3カム体23も押動領域23bと圧閉領域23cを有し、第4カム体24も押動領域24bと圧閉領域24cを有している。なお、カム案内軸27の円盤部27bの外周部27gが、第1実施例(図3、参照)の各カム体の解除領域21a,22a,23a,24aに相当する。
そして、第1カム体21には長穴21f、第2カム体22には長穴22f、第3カム体23には長穴23f、第4カム体24には長穴24fが、各カム体の裏面側(カム案内軸27の円盤部27bに対向する面)から開設されている。第1カム体21と第2カム体22と第3カム体23と第4カム体24とは、同じ形状を有している。
長穴21f,22f,23f,24fはそれぞれ、回転中心Pからチューブ規制部55cに向かって等間隔で放射状(つまり、フィンガーの進退方向)に開設されている。そして、これら長穴は、回転中心Pと各カム体の圧閉領域21c,22c,23c,24cの範囲内に長方形で開設される。
カム案内軸27の円盤部27bには、長穴21f,22f,23f,24fそれぞれに対向する突起部27c,27d,27e,27fが形成されている。これらの突起部も長方形であって、回転中心Pからチューブ規制部55cに向かって等間隔で放射状(つまり、フィンガーの進退方向)に形成されている。突起部27c,27d,27e,27fと、長穴21f,22f,23f,24fとの寸法関係は、各カム体がスライド可能な最小限の間隙を有する幅とし、長さ方向は、各カム体が所定の範囲内でスライド可能な長差を設定する。この長さ方向の寸法関係について第1カム体21を例示して説明する。
第1カム体21は、弾性リング29の弾性力によってチューブ規制部55cに近づく方向に、且つ、突起部27cと長穴21fとが当接する位置まで押圧される。この状態で、第1カム体21の圧閉領域21cの位置は、図5の状態では、フィンガー44がチューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準位置よりもチューブ規制部55cに近づく方向に構成部品のばらつき寸法分だけ突出されている。そして、突起部27cと長穴21fとの長差は、このフィンガー44の移動量と標準移動量との差よりも大きく設定される。
フィンガー44が流体流動部51を圧閉し、さらにチューブ規制部55cに近づく場合には、弾性リング29が弾性変形し、第1カム体21が回転中心Pの方向に移動する。よって、フィンガー44もチューブ規制部55cから離間する方向に移動する。この際、流体流動部51は圧閉された状態である。
なお、第1カム体21の押動領域21bがフィンガー45,46を倣動させる場合、弾性リング29には流体流動部51を圧閉する押動力があるため、この領域での第1カム体21はほとんど移動しない。
なお、第2実施例による流体輸送装置10の流体輸送作用は、前述した第1実施例と同様であるため説明を省略する。
よって、第2実施例においても、カム体の構成は異なるものの第1実施例と同様な効果が得られる。
(実施形態2・第1実施例)
続いて、実施形態2について図面を参照して説明する。実施形態2は、前述した実施形態1が、弾性リングにより各カム体をフィンガーの進退方向に移動可能な構成にしていることに対して、カム体に弾性部を形成していることに特徴を有している。従って、実施形態1との相違箇所を中心に説明する。同じ機能を有する部分には実施形態1と同じ符号を附している。
図7は、実施形態2の第1実施例に係るカムの構成及び流体流動作用の一状態を表す部分平面図、図8は、図7のE−P−E切断面を示す部分断面図である。カム220は、カム車軸25に軸止されるカム体140と、カム歯車26とによって構成されている。カム体140は、外周側面方向に4箇所のカム面を有し、それぞれが解除領域141と押動領域142と圧閉領域143、解除領域144と押動領域145と圧閉領域146、解除領域147と押動領域148と圧閉領域149、解除領域150と押動領域151と圧閉領域152と、が形成されている。
そして、圧閉領域143には半島状の押動部155、圧閉領域146には半島状の押動部156、圧閉領域149には半島状の押動部157、圧閉領域152には半島状の押動部158が形成されている。これら半島状の押動部155〜158は、片持ち梁状の弾性部を形成し、フィンガーの進退方向に撓むことが可能な構成となっている。
押動部155〜158は、フィンガー40〜46を押動しない状態にあるときには撓みがなく、フィンガー40〜46がチューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準位置よりもチューブ規制部55cに近づく方向に構成部品のばらつき寸法分だけ突出されている。
チューブ50を含んでフィンガー44及びカム体140の寸法が標準寸法よりも大きい場合、フィンガー44が流体流動部51を圧閉し、なおチューブ規制部55cに近づく。すると、フィンガー44が流体流動部51を圧閉し、なおチューブ規制部55cに近づく場合には、押動部155〜158が回転中心P方向に撓み、フィンガー40〜46もチューブ規制部55cから離間する方向に移動し、過剰な負荷を吸収する。この際、流体流動部51は圧閉された状態である。
なお、フィンガー40〜46が、カム220の押動領域142,145,148,151に当接している場合、押動部155〜158はほとんど撓まないか、撓みは無視できる程度であるため、フィンガー40〜46の押動量にはほとんど影響しない。
このようにすれば、チューブ50及びフィンガー40〜46が標準寸法よりも小さい場合には、押動部155〜158の撓みはなく、フィンガー44がチューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準位置よりも僅かにチューブ規制部55cに近づく方向に突出しているため確実に流体流動部51の圧閉と開放を行うことができ、チューブ50、フィンガー40〜46及びカム体140が標準寸法よりも大きい場合には、弾性部としての押動部155〜158が変形して過剰な負荷を吸収する。
従って、前述した実施形態1と同様な効果が得られる。また、一つのカム体140に弾性部としての押動部155〜158を一体で形成できるため、備品数を少なくして構造をより簡単にすることができる。
(実施形態2・第2実施例)
続いて、実施形態2の第2実施例について図面を参照して説明する。第2実施例は、前述した第1実施例が、弾性部としてカム体に片持ち梁状の押動部を形成していることに対して、両持ち梁を形成していることに特徴を有している。従って、第1実施例との相違箇所を中心に説明する。なお、第1実施例と共通部分には同じ符号を附している。
図9は、実施形態2の第2実施例に係るカムの構成及び流体流動作用の一状態を表す部分平面図である。なお、断面構造は第1実施例(図8、参照)と同じであるため省略する。カム体140は、外周側面方向に4箇所のカム面を有し、それぞれに解除領域141と押動領域142と圧閉領域143、解除領域144と押動領域145と圧閉領域146、解除領域147と押動領域148と圧閉領域149、解除領域150と押動領域151と圧閉領域152と、が形成されている。
そして、圧閉領域143と回転中心Pとの間に長孔160、圧閉領域146と回転中心Pとの間に長孔161、圧閉領域149と回転中心Pとの間に長孔162、圧閉領域152と回転中心Pとの間に長孔163が開設されている。これら長孔160〜163を開設することによって、各圧閉領域と各解除領域とにわたる両持ち梁状の弾性部165〜168が形成される。
ここで、カム220がフィンガー40〜46を押動しない状態では、弾性部165〜168には撓みがなく、圧閉領域143,146,149,152は、フィンガー40〜46がチューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準位置よりもチューブ規制部55cに近づく方向に構成部品のばらつき寸法分だけ突出されている。
圧閉領域143,146,149,152により、フィンガー40〜46が流体流動部51を圧閉し、さらにチューブ規制部55cに近づく場合には、弾性部165〜168が回転中心P方向に撓み、フィンガー40〜46もチューブ規制部55cから離間する方向に移動し、過剰な負荷を吸収する。この際、流体流動部51は圧閉された状態である。
なお、フィンガー40〜46が、カム220の押動領域142,145,148,151に当接している場合、弾性部165〜168はほとんど撓まないか、撓みは無視できる程度であるため、フィンガー40〜46の押動量にはほとんど影響しない。
よって、上述した第2実施例の構成でも、第1実施例と同様な効果が得られる。また、第1実施例(図7、参照)の押動部155〜158のように、半島状に突出せずに弾性部165〜168で連続した形態のため、圧閉領域143,146,149,152の位置精度がよいという効果もある。
(実施形態3・第1実施例)
続いて、実施形態3について図面を参照して説明する。前述した実施形態1が弾性部として弾性リング29を用いていることに対して、実施形態3は、フィンガーに弾性部を設けていることを特徴とする。フィンガー43を例示して説明する。
図10は、実施形態3の第1実施例に係るフィンガーを示す断面図である。なお、図7も参照する。フィンガー43は、軸部43aと、軸部43aの一方の端部に装着されるキャップ状の弾性部材60と、から構成されている。
軸部43aは、一方の端部に半球状のカム当接部43c、他方の端部に鍔部43dが形成されている。弾性部材60は、チューブ50よりも硬度が高い材料により成形されており、チューブ50を圧閉するためには十分な硬度を有し、圧閉後にさらに加重が加えられたときには変形する硬度を有している。
弾性部材60は開口部61を有し、開口部61の開口径は鍔部43dの外径よりも小さく設定され、装着する際は弾性部材60の弾性を利用して押し込むことで装着可能である。
フィンガー43の弾性部材60を含む総長さは、実施形態1(図3、参照)のフィンガー43を標準長さとしたときに、チューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準長さよりも僅かに長く設定されている。つまり、チューブ50及びカム体のばらつき寸法分だけ長く設定される。
なお、本実例では、カム体の形状は、実施形態2(図7、図9、参照)のカム体140から弾性部を除去した単純形状でよい。よって、第1実施例のカム体をカム体140と置き換えて表し説明する。
フィンガー43が流体流動部51を圧閉し、なおチューブ規制部55cに近づく場合には、弾性部材60が軸方向に変形し、過剰な負荷を吸収する。この際、流体流動部51は圧閉された状態である。
なお、フィンガー43が、カム体140の押動領域142に当接している場合、弾性部材60はほとんど変形しないか、変形は無視できる程度であるため、フィンガー43の押動量にはほとんど影響しない。
よって、構成部品が標準寸法よりも小さい場合には、弾性部材60の変形はなく、チューブ50及びカム体140のばらつき寸法分だけ長く設定されているため確実に流体流動部51の圧閉と開放を行うことができ、標準寸法より圧閉量(つぶし量)が大きい場合には、弾性部材60が変形して過加重を吸収する。
従って、前述した実施形態1,2と同様な効果が得られる。また、カム体140は、一枚の板部材で形成でき、フィンガーにも弾性部材60が装着されるだけの構成のため形状を単純化し、備品数が少なく構造をより簡単にすることができ、コスト低減にも寄与する。
また、弾性部材60をゴム系の材料を射出成形法で形成すれば、チューブ50の外面の損傷を抑制することができるという効果がある。
(実施形態3・第2実施例)
次に、実施形態3の第2実施例について図面を参照して説明する。第2実施例は、前述した第1実施例に対して弾性部材の形状が異なるため、第1実施例(図10、参照)との相違箇所を説明する。なお、第1実施例との共通部分には同じ符号を附している。
図11は、第2実施例に係るフィンガーを示す断面図であり、フィンガー43を例示している。図7も参照する。弾性部材60には、開口部61と、鍔部43dに装着した状態で鍔部43dとの間に空隙62が形成されている。そして、弾性部材60の端面は、僅かに凸状に膨らんでいる。
フィンガー43の弾性部材60を含む総長さは、実施形態1(図3、参照)のフィンガー43を標準長さとしたときに、チューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準長さよりも僅かに長く設定されている。つまり、チューブ50及びカム体140のばらつき寸法分だけ長く設定される。
フィンガー43が流体流動部51を圧閉し、なおチューブ規制部55cに近づく場合には、弾性部材60が軸方向に変形し、過剰な負荷を吸収する。この際、流体流動部51は圧閉された状態である。
なお、フィンガー43が、カム体140の押動領域142に当接している場合、弾性部材60はほとんど変形しないか、変形は無視できる程度であるため、フィンガー43の押動量にはほとんど影響しない。
よって、流体流動部51の圧閉量(つぶし量)が標準寸法か標準寸法よりも小さい場合には、弾性部材60の変形はなく、チューブ50及びカム体140のばらつき寸法分だけ長く設定されているため確実に流体流動部51の圧閉と開放を行うことができ、標準寸法より圧閉量(つぶし量)が大きい場合には、弾性部材60が変形して過剰な負荷を吸収する。
従って、前述した実施形態1,2と同様な効果が得られる。また、弾性部材60と鍔部43dとの間には空隙62を設けているため、急激な過負荷に対して単純に弾性部材60を圧縮変形させるよりも応答速度が速くなるという効果がある。また、このことにより弾性部材60の材料選択肢が広がるという効果もある。
(実施形態3・第3実施例)
次に、実施形態3の第3実施例について図面を参照して説明する。第3実施例は、前述した実施形態3の第1実施例及び第2実施例に対して、フィンガーのカム当接側に弾性部材を装着していることを特徴としている。第1実施例(図10、参照)及び第2実施例(図11、参照)との相違箇所を説明する。なお、第1実施例、第2実施例との共通部分には同じ符号を附している。
図12は、第3実施例に係るフィンガーを示す断面図であり、フィンガー43を例示している。なお、図7も参照する。フィンガー43は、軸部43aのカム当接側端部に装着される弾性部材70と、フィンガー当接側端部に形成されるチューブ押圧部43bと、から構成されている。
弾性部材70は、半球状のカム当接部71と軸部72とから構成され、軸部43aに穿設された穴部43eに軸部72が挿着される。チューブ押圧部43bは、実施形態1(図2、参照)のチューブ押圧部43bと同じ形状をしている。
フィンガー43の弾性部材70のカム当接部71を含む総長さは、実施形態1(図3、参照)のフィンガー43を標準長さとしたときに、チューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準長さよりも僅かに長く設定されている。つまり、チューブ50及びカム体140のばらつき寸法分だけ長く設定される。
よって、流体流動部51の圧閉量(つぶし量)が標準寸法か標準寸法よりも小さい場合には、弾性部材70の変形はなく、チューブ50及びカム体140のばらつき寸法分だけ長く設定されているため確実に流体流動部51の圧閉と開放を行うことができ、標準寸法より圧閉量(つぶし量)が大きい場合には、弾性部材70が変形して過加重を吸収する。
従って、前述した実施形態1,2と同様な効果が得られる。また、弾性部材70を射出成形法により形成すれば、カム当接部71の表面を滑らかに形成でき、カム体140との摩擦負荷を低減することができる。
(実施形態3・第4実施例)
続いて、実施形態3の第4実施例について図面を参照して説明する。前述した実施形態3の第1実施例〜第3実施例が、弾性部材を軸部に挿着する構成に対して、第4実施例では、フィンガーを軸部とカム当接面側の弾性部材とを2色成形法で一体に形成していることを特徴としている。なお、フィンガー43を例示して説明する。
図13は、第4実施例に係るフィンガーの1例を示す断面図である。フィンガー43は、軸部43aと、弾性部材としてのチューブ当接部80とから形成されている。軸部43aのカム当接側端部は半球状のカム当接部43cと、カム当接部43cとは反対側端部に形成される鍔部43dと、鍔部43dから穿設される穴部43fとから構成されている。
軸部43aは一次モールドによって成形され、チューブ当接部80は二次モールドによって成形される。そして、軸部43aは比較的硬度が高い樹脂であって、チューブ当接部80は、軸部43aよりも硬度が低く、チューブ50よりも硬度が高い弾性を有する材料が用いられる。
フィンガー43のチューブ当接部80を含む総長さは、実施形態1(図3、参照)のフィンガー43を標準長さとしたときに、チューブ50の流体流動部51を圧閉するために必要な標準長さよりも僅かに長く設定されている。つまり、チューブ50及びカム体140のばらつき寸法分だけ長く設定される。
よって、流体流動部51の圧閉量(つぶし量)が標準寸法か標準寸法よりも小さい場合には、チューブ当接部80の変形はなく、チューブ50及びカム体140のばらつき寸法分だけ長く設定されているため確実に流体流動部51の圧閉と開放を行うことができ、標準寸法より圧閉量(つぶし量)が大きい場合には、弾性を有するチューブ当接部80が変形して過加重を吸収する。
従って、前述した実施形態1,2と同様な効果が得られる。また、フィンガーを2色成形法により形成することで、前述した2体構成のフィンガーよりも総長さを高精度で形成できる。また、カム当接部43c及びチューブ当接部80の表面を滑らかに形成することができることから、カム体140との摩擦負荷を低減と、チューブ50の外表面の損傷を抑制することができるという効果がある。
なお、カム当接側を弾性部とし、チューブ当接側を硬度が高い材料としてもよい。
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述した実施形態では、一枚のカム体に回転方向に複数のフィンガーを放射状に配設し、円弧状に曲げられたチューブをフィンガーにより圧閉する構成を例示しているが、チューブを直線状とし、チューブに沿って複数のフィンガーを配列し、フィンガーの数に対応した複数のカム体を設ける構成の流体輸送装置にも本発明を適合することができる。