JP5043766B2 - 流体輸送装置 - Google Patents
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Description
また、従来から、マウス、モルモット等の小動物を用いて薬液の効力を実験・検証することが行われており、そのために小動物に薬液を供給する種々の薬液供給装置(流体輸送装置)が提案されている。
その中で、実験動物のマウスにハーネスを装着させ、そのハーネスに支持されたカテーテルを実験動物の皮膚に貫通させて連続的に薬液を供給するタイプが提案されている(特許文献2)。
一方、実験動物の体内に薬液供給装置(流体輸送装置)を埋め込むタイプが提案されている(非特許文献1参照)。このタイプは、実験動物の皮下に埋め込むものであるが、外部から専用のニードルを薬液供給装置に刺し込んで薬液を注入することにより、カテーテルを介して実験動物の体内に薬液を注入するものである。
他方、人体内に植込んでインスリンを患者に供給する人工膵臓装置も提案されている(特許文献3参照)。この人工膵臓装置は、その図1にも開示されているように、電源としてのリチャージャブルバッテリー、インスリンを貯蔵するインスリンリザーバ、インスリンを腹腔内に送り込むマイクロポンプ等を備え、患者に埋め込まれる。例えば毎月1回を目処に1か月分のインスリンを経皮的に穿刺してリザーバーに補給するものである。
また、モータモジュールとポンプモジュールとの連結は、モータモジュール側に設けられるピニオンとポンプモジュール側に設けられるギヤとを噛合して行う。このようにピニオンとギヤとを噛合させながら組立てることは、通常、ピニオンとギヤの位相がずれていることから作業性を著しく低下させるとともに、ピニオンとギヤとを傷つけやすいことが予測され、時計用のステップモータによる低トルク駆動の場合、駆動に支障が生ずる恐れがある。
また、薬剤を収容するリザーバーとポンプ本体とは離間して設けられ、これらをチューブによって接続しているが、仮にポンプ本体を生体内に装着した場合には、チューブによって生体の内外を連通することになり、この連通部に感染症等が発生しやすいという恐れがある。
さらに、薬剤を追加して駆動する際にはリザーバーを交換しなければならず、薬剤の連続注入が停止されることになることが考えられる。
上記非特許文献1のタイプは、薬液供給装置から実験動物の体内に薬液を供給するマイクロポンプを備えていないことから、薬液を実験動物の体内に供給するのは基本的に外部の専用のニードルからの薬液の供給力による。よって薬液を実験動物に継続的に、また定量的に供給することはできない。
上記特許文献3のタイプは、インスリンを供給する装置を患者の体内に植込むものであるが、カテーテルを腹腔内に留置することから人工膵臓そのものも腹腔の近傍に植込むものと予想される。従って、皮下に埋め込むタイプほどには小型・薄型化は要求されないことから比較的に大型、又は厚型の人工膵臓であるものと思われる。また前述のリチャージャブルバッテリー、インスリンリザーバ、マイクロポンプ、カテーテル等を人工膵臓内でどのように配置するかについては、具体的な開示はなされていない。
さらに上述した各特許文献および非特許文献1は、動物の皮下に埋め込む際の動物に違和感をもたらすことを極力低減しようとする外形形状の配慮はなされていない。
また、動物等の皮下に埋め込んで使用する際に薬液(流体)の供給を連続的に、安定して行わせることができる流体輸送装置を提供することを目的とする。
更には、外部からリザーバーへの薬液(流体)の補給を確実に行わせる流体輸送装置を提供することを目的とする。
また、動物等の皮下に埋め込む際(埋め込んだ後も含む)の動物等に対する違和感をもたらすことを極力低減する外形形状を有した流体輸送装置を提供することを目的とする。
ここで、電源としては、例えばウォッチ等に用いられるボタン型小型電池を採用することができる。
この発明によれば、少なくとも流体輸送機構と駆動伝達機構と電池とポート等の構成要素の全てを外装ケース内に密閉格納をしているため、水分や塵埃等が外装ケース内に浸入することがなく、生体内や流体中、塵埃の多い環境での使用を可能にしている。
また、本発明の流体輸送装置は、仮に生体内に装着した場合において、チューブを含め生体外に突出する構成要素がないため、生体の内部と外部との接続部における感染症の発生はなく、安全に使用することができる。
また、リザーバーに流体を注入するポートを備えているため、流体輸送装置を駆動している間においても、任意のタイミングで流体の追加注入が可能であるため、流体の追加注入によって駆動を停止することなく流体の連続流動を継続して行うことができる。
また、流体輸送機構、駆動伝達機構、電池、リザーバー、ポートを、上述したように配設することで、小型化、薄型化が実現できる。
この発明によれば、リザーバーも外装ケース内に密閉格納をしているため、水分や塵埃等が外装ケース内に浸入することがなく、リザーバーを含めて外部環境から保護することが可能である。
また、本発明実施態様3の流体輸送装置は、本発明実施態様1の流体輸送装置において、前記リザーバーが、前記外装ケースの外側に、該表面に対して傾斜した状態で保持されることを特徴とする。
この発明によれば、リザーバーが外装ケースの外側に取り付けられるため、リザーバーの表面に結露が生じた場合でも駆動伝達機構や電池に対する影響を回避することができ、錆の発生や回路の不具合を抑制することで耐久性を向上させることが可能となる。
さらに、リザーバーが外装ケースの表面に傾斜した状態で保持されるため、例えば、この流体輸送装置を皮下に埋め込んだ場合に、リザーバーの端部で皮膚が突っ張られないようにすることが可能となり、装着後の違和感を軽減することが可能となる。
また、本発明実施態様4の流体輸送装置は、本発明実施態様1または本発明実施態様3の流体輸送装置において、前記リザーバーが、前記外装ケースの外側にリザーバー枠を介して着脱可能な状態で取り付けられることを特徴とする。
この発明によれば、リザーバーがリザーバー枠を介して着脱可能な状態で取り付けられるため、外装ケースの所定位置に確実にリザーバーを保持可能にするとともに、交換等の作業性を向上させることが可能となる。
さらに、この流体輸送装置を皮下に埋め込んだ場合に、リザーバーの下側は硬質のリザーバー枠で生体を保護するとともに、上側はオープンとすることでリザーバーを容易に変形させることが可能となる。
ここで、輪列とは、ステップモータの回転をカムまで伝達する複数の歯車を総称して呼称する。
このように、駆動伝達機構がウォッチ用ムーブメントで構成されているため、駆動伝達機構の小型化、薄型化を実現し、このことから流体輸送装置の小型化、薄型化を実現できる。また、カムを挿着する時針車を含めて大量生産されるウォッチ用ムーブメントを採用するため、コストの低減にも寄与する。
このようにすることにより、ポートからリザーバーに流体を注入する際に、ポート上方に注入作業を妨げる部材がないため注入作業を容易に行うことができる。
リザーバー内の流体は、ポートに連通する流体注入口部からチューブと連通する流体流入口部に向かって流動する。従って、流体注入口部を上流側に、流体流入口部を下流側に離間して配設することで、リザーバー内において、流体の渦流や脈流の発生を抑制することができ、所定流量と安定した連続流動を維持することができる。
リザーバーは、上蓋と下蓋とからなる外装ケースの密閉空間に格納されるため、流体を流体輸送機構によって流動、吐出すると、リザーバー内の圧力が低下する。そこで、リザーバーを変形可能な包袋で構成することにより、内部圧力の低下に伴いリザーバーの容積が縮小するよう変形することで、リザーバー内の圧力をほぼ一定に保つことがきる。従って、フィンガーによりチューブを閉塞し、その後開放した際に開放されたチューブに流体が流入するため、安定した流体流動を維持することができる。
流体輸送装置の外形形状をこのようにすることにより、この流体輸送装置を生体内に装着した際、生体組織と外装ケースとの生体整合性がよくなり、外装ケースが生体組織を損傷させたり、装着することによる違和感を抑制することができる。
詳しくは、後述する実施の形態で説明するが、チューブの流体の流出側端部は、外装ケース外部に突設されるが、チューブの流出側端部が、なだらかな流線型状に形成される外周部に沿って延在されているため、チューブと生体組織との生体整合性もよく、チューブが生体組織を損傷させたり、装着することによる違和感を抑制することができる。
従って、上述した流体注入栓に注入針を刺挿して、流体を流体容器内に注入した後、注入針を抜脱すると、流体注入栓自身の弾性力で注入針が刺挿された部位が閉塞し、ポートから流体が流出することを防止することができる。このようなポートは弁等を用いない簡単な構造で実現でき、流体の注入作業を繰り返し行うことができる。
前記外装ケースは、皮下に埋め込まれた際に皮膚側に対応させる皮膚側対応面を有し、
前記ポートは、前記皮膚側対応面に配設されていることを特徴とする。
加えて、本発明の流体輸送装置は、自己完結型であることから自身だけで薬液等の流体を体内に供給することができ、マイクロポンプの作動を制御する等により薬液等の供給条件を適宜コントロールしやすい。
また、薬液とは、医療用の新薬開発のための薬液であったり、小動物等の栄養補給のための栄養液であったり、その他、薬効をもたらす液体を指す。
前記ポートが、平面視で前記リザーバーと前記マイクロポンプの間に配置されていることを特徴とする。
さらに本発明は、前記リザーバーと前記マイクロポンプとが、平面視で互いに離れて配置されており、実質的に平面視で互いに重ならないことから、装置全体が薄型となる。前記リザーバーは薬液等の流体を出来るだけ多く貯蔵する必要性から、また前記マイクロポンプは効率よく強力に薬液等を供給することから、共に流体輸送装置にとっては比較的に容量体積が大きいものとなる。
従って、前記リザーバーと前記マイクロポンプが平面視(平面方向から見て)離れた位置関係ではなく両者が重なり合っている場合には、断面視(平面視に対しては直角方向のいわば厚さ方向)で流体輸送装置全体が厚くなってしまう。すると、実験動物等の皮下に埋め込まれると、いたずらに皮膚を引張ってしまい、あるいは圧迫を与えて違和感をもたらせ、また損傷させてしまう。
加えて、比較的体積容量を大きく確保したいリザーバーとマイクロポンプは、実質的に平面視で互いに重ならないことから、断面視方向の寸法(厚さ寸法)同士は、互いに妨げあうことがなく、従って厚さ寸法を最大限に確保することも可能となる。よって、リザーバーは薬液等を多く収納でき、マイクロポンプは効率よく強力に薬液等を供給できるようになる。
しかも、ポートが、前述した平面視で前記リザーバーと前記マイクロポンプの間に配置されているので、装置全体としての薄型を損なうことがない。
上記構成によれば、本発明実施態様12で述べた作用効果を有する。
さらに本発明は、前記ポートが前記外装ケースから突出形成された突出部を備えていることから、次のような特有な作用効果を有する。
すなわち、流体輸送装置が実験動物等の皮下に埋め込まれても、外部からポートの所在場所を認識しやすくなる。つまり、本発明のポートは、前述の様に突出部を有しており、この突出部が外装ケースから突出しているので、実験動物等の表皮が局部的に盛り上がる。それは、流体輸送装置が実験動物等の皮下という特有な場所に埋め込まれること、つまり皮膚(表皮)が比較的薄いのでその下に埋め込まれることから、上記突出部により表皮が容易に盛り上がる。よって実験者等(薬液等の流体を注入しようとする者の全てを含む意であり、本明細書では同様の意で用いる。)がポートの所在場所を容易に認識することができる。このため、実験者等は容易にその表皮の盛り上がり部の中心に注液具を刺し込むことができ、リザーバーに薬液等を補給することが出来るようになる。
上記構成によれば、前記電池は、平面視で前記リザーバーと重なり、断面視において前記リザーバーを挟んで前記ポートとは反対側に配置されていることから、平面視で大きな面積を必要とするリザーバーおよび電池を平面視で離して配置する場合に比べて、平面視面積が小型の薬液供給装置が得られる。
また、前記ポートがリザーバーとは断面視方向(厚さ方向)において近接配置されるので、薬液等がポートからリザーバーに供給される流路が短くなり、より確実に薬液等がリザーバーに供給されることになる。また上記のように流路が短くなるので、流体輸送装置の小スペース化が図られる。
上記構成によれば、ポートは、平面視で電池と重ならない位置に配置されていることから、断面視方向においてポートは比較的厚い電池に妨げられることなくポートの底部を構成できる。よって、ポートからリザーバーへの導通路を最適高さ位置に配置できる。また、外部から前記注液具がポートに刺し込まれる際の案内開口を深く確保できるので、刺し込まれた上記注液具は前記案内開口によって支えられ薬液等の補給操作が安定する。
加えて、電池の断面視方向の厚さ寸法は厚く構成することができ、前述のように容量の大きな電池を採用することができる。
上記構成によれば、まずICによりマイクロポンプの動作を制御することが実現する。
このICには、ロジック回路で構成しても良いし、マイクロコンピュータで構成してもよい。従って、マイクロポンプの、特に回転駆動部の動作を適宜制御することが可能となる。そこで、流体輸送装置の駆動開始時や駆動停止時を設定し易く、また動物実験中などにおいて薬液等の供給量を適宜制御することも可能となるので、動物実験などを効果的に行うことが出来る。
さらに上記構成によれば、上記信号供給ポートが設けられ、しかも前記外装ケースに露出配置されているので、流体輸送装置が組立て完成した後において、随時マイクロポンプの駆動条件を設定できる。そこで、流体輸送装置を実験動物等に埋め込む前に、上記駆動プログラムを記憶させることができ、あるいは動物実験中などでも上記信号供給ポートに接続し実験動物等の体外に引き出された信号線により実験状態などに応じて上記プログラムを変更入力することもできる。
上記構成によれば、前記取付部に糸を通して巻く等の絡ましにより、そしてその糸を前記動物等に縫い付けることにより、流体輸送装置を動物等に容易に取り付けることができる。
なお、前記取付部は図示のような高さに設けられていること(外装ケースの裏面から皮膚側対応面側に離れて配置されること)により、流体輸送装置を実験動物等に糸にて縫いつけて固定する際に、実験動物等の縫い付け部を前記取付部の平面視位置に近づけることができ、流体輸送装置を真下側に引き寄せるように取付けることができ、浮かせないように取り付けることができる。
前記注液ポートは、前記薬液供給装置が前記皮下に埋め込まれた際に前記動物の皮膚側に向けて配設されており、
前記リザーバーと前記マイクロポンプと前記電池とは、平面視で互いに離れた位置に配置されていることを特徴とする。
さらに本発明は、リザーバーとマイクロポンプと電池が、平面視で互いに離れて配置されて、実質的に平面視で互いに重ならないことから、装置全体が薄型となる。前記リザーバーは薬液を出来るだけ多く貯蔵する必要性から、また前記マイクロポンプは効率よく強力に薬液を供給することから、さらに電池が電池容量を大きく確保してマイクロポンプを強力に駆動させるあるいは駆動時間を長く持続させる上から、各々は薬液供給装置にとっては比較的に容量体積が大きいものとなる。
従って、リザーバーとマイクロポンプと電池の少なくともいずれかの組み合わせにおいて平面視で重なり合っていると、薬液供給装置全体が厚くなってしまう。すると、実験動物等の皮下に埋め込むことにより、いたずらに皮膚を引張ってしまい、あるいは圧迫を与え、また損傷させてしまう。
加えて、比較的容量を大きく確保したいリザーバーとマイクロポンプと電池は、実質的に平面視で互いに重ならないことから断面視方向の寸法(厚さ寸法)を互いに妨げることがなく、各々の厚さ寸法を最大限に確保することも可能となる。よって、リザーバーは薬液を多く収納でき、マイクロポンプは効率よく強力に薬液を供給でき、電池はマイクロポンプを強力に駆動できあるいは駆動時間を長く持続させることができる。
なお前述の本発明実施態様16から本発明実施態様18のいずれか1つに記載の流体輸送装置に関する記載は、本発明実施態様19においても適用されるものである。
前記注液ポート(ポート)が、平面視で前記薬液供給装置の幅狭となる幅狭幅方向のほぼ中央に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、注液ポートが、平面視で薬液供給装置の幅狭となる幅狭幅方向のほぼ中央に配置されていることにより、外部から注液具が注液ポートに刺し込まれ、また刺し抜かれる際に、幅狭方向で薬液供給装置が傾くことが防止される。
従って前述したように、注液ポートに前記注液具が刺し込まれた際の圧力、または抜き出す際の圧力が働いても薬液供給装置全体がその圧力を受け止めることになり、よって薬液供給装置全体が傾くことが少なくなる。従って、前記注液具が良好に刺し込まれ、抜き去さられること、およびスムースな注液操作が行われることになる。また、装置全体が傾かないことから、実験動物等に局部的な圧力が掛からないことになって、局部的な痛みを与えることがない。よって、実験動物等への負担を軽減することが出来、実験を良好に継続することができる。
そこで、注液ポートが、平面視で前記薬液供給装置の幅狭となる幅狭幅方向のほぼ中央に配置されていること、さらには本発明実施態様13のように平面視でリザーバーとマイクロポンプの間に配置されていることの両者を満足するように配置されていると、上述した作用効果はより増大されるものである。
また別の見方としては、幅狭幅方向とは、本発明実施態様13において平面視でリザーバーの中央部または重心とマイクロポンプの中央部または重心を結ぶ直線に対してほぼ直行する方向を指す。
従って、薬液供給装置の平面視形状が、幅広方向(長手方向)の幅寸法と幅狭幅方向(短手方向)の幅寸法が存在する平面形状、例えば略長方形状、小判形状、楕円形状等では、概ね、上記平面視でリザーバーの中央部または重心とマイクロポンプの中央部または重心を結ぶ直線方向が長手方向となり、その長手方向にほぼ直行する方向が幅狭幅方向(短手方向)となる。また、薬液供給装置の平面視形状が、ほぼ円形状や異形形状の場合のように、長手方向や幅狭幅方向(短手方向)が判定できない場合には、本発明実施態様18でいう幅狭方向とは、前述したように平面視でリザーバーの中央部または重心とマイクロポンプの中央部または重心を結ぶ直線に対してほぼ直行する方向と捕らえるものとする。
前記注液ポート(ポート)が、前記注入開口部の内方に配置され前記注液具が貫通可能な弾性材からなる注液具貫通可能部材と、前記注液具貫通可能部材を貫通した前記注液具より注入された薬液が前記リザーバーに供給される薬液供給部とを、備えていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記注液ポートには、前記注入開口部の内方に配置され前記注液具が貫通可能な弾性材からなる注液具貫通可能部材を備え、注液具貫通可能部材がいわば蓋の役割を有していることから、薬液供給装置が実験動物の皮下に埋め込まれた状態でその体液等の液体やその他の気体が薬液供給装置の内部に侵入することが防止される。従って、薬液が上記体液や気体等により汚染されることが防止される。
さらに、前記注液具貫通可能部材は弾性材で構成されているので、注液のために外部から前記注液具が前記注液具貫通可能部材に刺し込まれることが可能となる。よって、注液ポートからリザーバーに薬液が補給されることになる。
以上のように、前記弾性材からなる注液具貫通可能部材により、薬液の汚染が防止されると共に、前記注液具が貫通可能であるので、薬液の補給も可能となるものである。
前記リザーバーが、側壁の一端において前記注液ポート(ポート)と連通する薬液注入部と、側壁の他端において前記薬液導通部(流体導通部)と連通する薬液排出部と、前記薬液注入部と薬液排出部との中間に形成される薬液貯蔵部とを備えていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記リザーバーは、前記薬液注入部と前記薬液排出部とが、その側壁(上下方向の上方壁や下方壁でない横方向の壁)の一端に設けられており厚さ方向(断面視方向、高さ方向)に設けられていないことから、厚さ方向に上記薬液注入部と薬液排出部とが突出して設けられる場合の様に前記リザーバーを厚くすることがない。従って、薬液供給装置が薄型となる。
またリザーバーは、一端に設けられ前記注液ポートと連通する薬液注入部にて薬液が注入され、他端に設けられ前記薬液導通部と連通する薬液排出部にて薬液が排出されるのであるが、それら薬液注入部にて注入された薬液が中間の薬液貯蔵部にて貯蔵され、薬液排出部にて排出されるので、薬液の流れが連続することとなり、リザーバー内の空気が抜け易く薬液も滞ることなくスムースに流れることになる。
前記薬液導通部(流体導通部)が、弾性を有するチューブで構成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記薬液導通部は、弾性を有するチューブで構成されていることから、リザーバー以後の薬液流路の位置を移動すること、その形状を多少変形することができ、薬液供給装置内の各部材に多少の寸法誤差が生じても弾性チューブが弾性を有するのでその位置・形状を修正することが容易となる。よって関係部材の寸法バラツキが生じても良好な薬液の流路を確保することが出来る。
さらに、流路がチューブであるので、流路の断面が丸形状とすることができ、その場合は高効率の断面積が得られるから薬液を多量に供給することが出来る。
前記マイクロポンプは、回転駆動部と、前記回転駆動部により回転されるカム部と、前記カム部により順次前記チューブを放射方向に押圧される複数個の押圧ピンとを備え、前記押圧ピンが順次チューブを押圧することにより薬液が外部に排出されることを特徴とする。
上記構成によれば、前記マイクロポンプは、前記回転駆動部により回転されるカム部により押圧ピンが順次前記チューブを押圧するので、前記回転駆動部、カム部、押圧ピンという機械的な駆動力にてチューブを押圧することが出来る。従って、その動作が確実であり、しかも比較的強力が得られるので、チューブ内の薬液を確実かつ強力に送り出すことが出来る。また前記押圧ピンは、前記カム部の回転中心に対して放射方向にチューブを押圧するので、その押圧ピンの動作は安定し、安定的にチューブを押圧することが出来る。
前記チューブは、一端側が前記リザーバーに連通するリザーバー接続部と、他端側が薬液が外部に排出される薬液排出部と、前記リザーバー接続部と薬液排出部の中間に形成され前記カム部及び前記押圧ピンに対し平面視で外周側に配置されている円弧状チューブ部とを備えていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記チューブは、前記リザーバー接続部と薬液排出部との中間に、円弧状チューブ部を形成し、この円弧状チューブ部がマイクロポンプの一部を構成しているので、チューブは、薬液導通部とマイクロポンプの両者を兼用する効率化が図られる。
しかも、この部分のチューブは円弧状に形成されているので円弧状チューブ部の長さは必要量が確保され、よって必要な押圧ピンの複数個が配置されるものである。しかも円弧状チューブ部の円弧中心側に前記カム部及び前記押圧ピンが配置されているので、円弧中心側領域を有効利用でき、マイクロポンプの小スペース化も実現できる。
また、前記押圧ピンが突出してチューブを押圧しても、チューブはその弾性により押圧ピンを元の位置に戻すことも可能となり、その場合は戻りバネ部材を不要にして部品数を低減できる。また押圧ピンが戻ると、チューブはその弾性のゆえに元の断面形状に戻ることから、流路径が確保されるという効果も有する。
前記電池は、平面視で前記マイクロポンプの回転駆動部と重なり、断面視で前記回転駆動部を挟んで前記チューブとは反対側に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記電池は、チューブとは直接的に機械的な関連性はない。また、前記電池は、平面視で前記マイクロポンプの回転駆動部に近接配置されることになるが、断面視で前記チューブとは反対側に配置されているので、前記チューブと回転駆動部とによるマイクロポンプの構成を電池が妨げることはない。よって、前記チューブと回転駆動部の構造は、最適に構成することができる。
前記外装ケースは、上蓋が透明材からなり、前記上蓋からは、少なくとも前記リザーバー、マイクロポンプ、チューブが視認可能に構成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記上蓋が透明材からなるため、前記上蓋からは少なくとも前記リザーバー、マイクロポンプ、チューブを視認することが可能となることから、薬液供給装置の組立て後においても、前記リザーバー、マイクロポンプ、チューブの組立てや動作の異常を外部から発見できる。上記異常が発見されると、動物等内への埋め込み前に、改善を図ることが出来る。
上記構成によれば、外装ケースの外壁に傾斜面を形成することにより、この流体輸送装置を生体内に装着した際、傾斜面を形成した部分において生体組織と外装ケースとの生体整合性がよくなり、生体組織の損傷や、装着による違和感を抑制することができる。
上記構成によれば、流体輸送装置を皮下に埋め込んだ後に、皮膚を介して把持用垂直面をつかむことにより容易に流体輸送装置を固定することができ、流体の注入時等でこの装置を固定させる必要があるときの作業性を向上させることができる。
上記構成によれば、上記傾斜面が形成されていることにより、動物の皮下に埋め込まれると動物の皮膚は薬液供給装置の体積及び高さに応じて引っ張られることになり、最悪の場合はその皮膚が損傷することになる。そこで、上記引っ張りが極力少なくかつ上記皮に局部的なせん断力が掛からないように上記の傾斜面を形成することにより、特に皮膚に近い側の幅が狭く形成されているので、上述のように皮膚に損傷を与えることを極力防止することが出来る。
なお、上記傾斜面の傾斜角は、5度から60度、中でも15度から30度が好ましい。上記傾斜面の傾斜角は、各々同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記構成によれば、前記外装ケースが上記のように傾斜面が形成されていることによって、本発明実施態様30の際に述べたように、流体輸送装置が動物等の体内に埋め込まれる際に、前記幅狭方向においても動物等の皮膚が流体輸送装置の体積及び高さに応じて引っ張られることが極力少なくなえい、特に皮膚に近い側の幅が狭く形成されているので、上述のように皮膚に損傷を与えることが極力防止される。
上記構成によれば、皮膚側対応面が凸形状に形成されていることによって、あるいは裏面が凹形状に形成されていることによって、流体輸送装置が動物等の体内に埋め込まれる際に、動物等の皮下形状にほぼ沿った上表面形状、また下裏面形状に形成されていることから皮膚などになじみやすくなり、動物等に無理な引張りや損傷をもたらすことを防止することができる。この場合、皮膚側対応面が凸形状に形成され、同時に裏面が凹形状に形成されることによって、流体輸送装置の各皮膚側対応面または各裏面が各々接する動物等の皮膚内面形状、皮下形状等に沿いやすくなり、上記作用効果をより効果的にすることが出来る。
上記構成によれば、前記外装ケースが上記のように凸状面または/および凹状面に形成されることによって、本発明実施態様30の際に述べたように、流体輸送装置が動物等の体内に埋め込まれる際に、前記幅狭方向においても動物等の皮下形状にほぼ沿った皮膚側対応面形状、また裏面形状に形成されていることから皮膚などになじみやすくなり、動物等に無理な引張りや損傷をもたらすことを防止することができる。
〔第1実施形態〕
図1〜図6は、本発明の第1実施形態に係る流体輸送装置を示し、図1は厚さ方向の構成を示し、図2は平面方向の構成、図3は駆動伝達機構としてのウォッチ用ムーブメントの平面図、図4は駆動伝達機構及び流体輸送機構の一部を示す断面図、図5は流体の注入、流出に関わる構造を示す断面図、図6は流体輸送機構を示す平面図である。
なお、本実施の形態では、人体や動物などの生体内に装着し、流体として薬液を用いる流体輸送装置を例示して説明する。なお、流体とは、ゲル状の流動体を含み、さらに気体も含む。
さらに、駆動伝達機構3の裏面側(流体輸送機構2とは反対側の面)には、駆動伝達機構3の駆動制御のための図示しない制御回路が実装された回路基板5が配設され、リザーバー60の下方には電源としての電池4が配設されている。
これら流体輸送機構2、駆動伝達機構3、リザーバー60、バルブ80、電池4及び回路基板5は上蓋13と下蓋16とによって形成される外装ケースの密閉空間内にチューブ50の流出口部53を除いて格納されている。
この駆動伝達機構3の中央に配設される輪列の最終段の時針車がカム駆動車76であり、カム駆動車76の筒状の軸部76aが流体輸送機構2の方向に突設されており、この軸部76aにカムが装着されている(図2、参照)。
カムは、軸部76aに軸止される第1カム20と軸部76aに軸支される第2カム30とから構成され、第2カム30は第1カム20によって回転されることにより、この第1カム20と第2カム30とは、あたかも一枚のカムとしての機能を有している。
チューブ50は弾性を有し、本実施形態では生体整合性のあるシリコン系ゴムから構成され、流体輸送機構2の機枠であるチューブ枠12のチューブ案内溝121に装着されている。チューブ案内溝121にはカム駆動車76の回転中心Pを中心とする同心円上にチューブ案内壁122が設けられている。
これらフィンガー40〜46は、フィンガー案内溝126内において軸方向に移動可能に装着されており、第1カム20及び第2カム30によって押圧されてチューブ50を閉塞する。流体輸送機構2の作用については図4、図6を参照して後述する。
リザーバー60は、薬液が充填されているときには膨らみ、薬液が流出したときには、その容積が縮小することが可能な薄肉の包袋で形成されている。このリザーバー60は、平面形状が略半円形を有し、その弦に相当する部分の一方の端部が流体排出口部63であり、先述した接続管55に接続されている。他方の端部は流体注入口部62であり、バルブ80に突設された注入パイプ83に接続されている。
このようにして、バルブ80、リザーバー60、チューブ50の薬液流動経路が形成される。
なお、流出口部53はチューブ枠12の外周部近傍に接着剤等で固着され、接続管55もチューブ枠12に接着剤等で固着され、上蓋13との間で密閉構造を形成し、チューブ50の両端部から体液等の内部への侵入を防止している。
電池4はウォッチ用のボタン型小型電池を採用し、リザーバー60の一部に重なる位置に配設され、上述したリード基板を介してIC6に電力を供給する。
駆動伝達機構3と回路基板5とは、ムーブメント枠15に植立された固定軸96と固定螺子91及び固定軸92によってムーブメント枠15に螺合固定されている。
図3は、駆動伝達機構3としてのウォッチ用ムーブメントを示す平面図、図4は、ウォッチ用ムーブメントの輪列と流体輸送機構2の断面構造を示している。図3において、駆動伝達機構3は第1機枠11(ウォッチでは地板に相当する)と第2機枠14(ウォッチでは輪列受に相当する)との間に輪列が軸支されている。
また、コイルブロック101とステーター102とステップロータ70とから構成されるステップモータが設けられている。ステップモータの構成は公知であるため説明を省略する。
ここで、第2伝達車72はウォッチの秒針を装着する秒針車に相当し、第4伝達車74はウォッチの分針を装着する分針車、カム駆動車76はウォッチの時針を装着する時針車(筒車と呼称することもある)に相当する。第1伝達車71からカム駆動車76までの伝達車を総称して輪列と表している。
これらのステップロータ70、第1伝達車71、第3伝達車73、第4伝達車74は、第1機枠(地板)11と第2機枠(輪列受)14によって回転可能に軸支されている。第1機枠11には伝達車軸75が植立されており、筒部が上方(第1カム20、第2カム30が配設される方向)に突出されている。この伝達車軸75に開設されている貫通孔に第4伝達車74の筒部が挿通され、第4伝達車74に開設される貫通孔に第2伝達車72の軸部が挿通されている。従って、通常、カム駆動車76は12時間で1回転するが、本実施形態ではステップロータ70を45倍加速している。
カム駆動車76は、中央に開設された貫通孔を伝達車軸75の筒部外周に挿通して軸支される。そしてカム駆動車76の軸部76aが、第1カム20及び第2カム30が配設される方向に突出している。カム駆動車76の軸部上方は、上蓋13に植立されるカム駆動車支持軸受78によって軸支される。上蓋13には、カム駆動車支持軸受78を軸支する穴が穿設されており、この穴は上蓋13を貫通せず、カム駆動車支持軸受78の端部は、上蓋13によって封止されている。カム駆動車76は、ステップロータ70の回転を上述した各伝達車によって所定の回転速度で回転される。
なお、カム駆動車76は、伝達車軸75とカム駆動車支持軸受78とによって軸支されているために支持部間の距離が長くなり、カム駆動車76の傾き量を抑制し、後述する第1カム20及び第2カム30の負荷トルクによって生ずるカム駆動車76の軸部にかかる側圧を減じている。
第1カム20及び第2カム30の周囲にはチューブ枠12が設けられている。チューブ枠12は、上述した上蓋13と第1機枠11との間に挟持されており、上蓋13、チューブ枠12、第1機枠11は図示しない固定螺子により重ねて螺合されそれぞれの接続面は密接されている。
図5は流体の注入、流出部に関わる構造について示す断面図である。図5において、バルブ80は、L字状の流動部を有するバルブ体81と、バルブ体81に圧入された弾性を有する流体注入栓82とを備えて構成されている。バルブ体81には注入パイプ83が突設されており、リザーバー60に接続されている。また、流体注入栓82にはスリット82bが設けられている(図2も参照する)。
なお、流体注入栓82の上面には、注入針案内部82aが穿設されており、注入針の刺挿を誘導し、スリット82bのほぼ中央部を刺挿できるように配慮している。
図6は、流体輸送装置1の作用について示す説明図である。図4も参照して説明する。まず、図6を参照して、第1カム20と第2カム30の形状と機能について説明する。第1カム20には、外周部に3箇所の突出されたフィンガー押圧部21a〜21cが形成されており、第2カム30には1個所の突出されたフィンガー押圧部32が形成されている。これらのチューブ押圧部は、それぞれが回転中心Pから等距離の同心円上に等間隔で形成されている。
そして、接続部23,36は、フィンガー40〜46がチューブ50を開放する位置に形成され、それぞれが回転中心Pから等距離の同心円上に形成される。さらに、フィンガー押圧部21a,21b,21c、32の端部は回転中心Pに向かう直線で接続部23,36に結ばれている(図中、符号24,35で表す)。
フィンガー40〜46は、チューブ枠12に穿設されたフィンガー案内溝126内に軸方向に往復移動可能に装着されている。
また、フィンガー41〜43は第2カム30の接続部36の領域にあり、チューブ50を開放している。フィンガー40は第1カム20の斜面部22に乗り始めた位置にあって、僅かにチューブ50を押圧し始めた状態である。このような状態では、フィンガー40〜43の領域において、チューブ50の流体流動部51にはリザーバー60から薬液が侵入してきている。
チューブ50は、チューブ枠12に穿設されるチューブ案内溝121と上蓋13のチューブ案内溝によって保持され、フィンガー40〜46が配設される範囲には、フィンガーの鍔部が可動できるような凹部125,131がそれぞれに穿設され、チューブ50が閉塞され変形された際に必要な空間を形成されている。なお、図4では、チューブ50が閉塞された状態を実線で表し、開放された状態を二点鎖線で表している。
なお、本発明の流体輸送装置10の具体的実施例としては、チューブ50の外径が1.1mm、流体流動部51の直径0.6mm、第1カム20及び第2カム30の回転速度を4回転/時間としたときに、薬液の15μl/時間の微量、連続流動を実現している。
また、流体輸送装置1のサイズは、幅18mm、長さ32mm、厚さ8.5mmという小型化を実現している。
また、流体輸送機構2、駆動伝達機構3、電池4、リザーバー60、バルブ80を、前述したように適正に配設することで、小型化、薄型化が実現でき、生体内に装着することを可能にしている。
また、流体輸送装置1は、チューブ50を含め、生体外へ突出する構成要素がないため、生体の内部と外部との接続部における感染症の発生はなく、安全に使用することができる。
また、リザーバー60に流体を注入するバルブ80を備えているため流体輸送装置1を駆動している間においても、薬液の追加注入が任意のタイミングで可能であるため、薬液の追加注入によって駆動を停止することなく、薬液の連続流動を継続して行うことができる。
また、バルブ80が、駆動伝達機構3と流体輸送機構2との間に形成される平面空間に、上蓋13を貫通して配設されているために、バルブ80からリザーバー60に薬液を注入する際に、バルブ80の上方に注入作業を妨げる部材がなく、注入作業を容易に行うことができる。さらに、流体輸送装置1を生体内に装着した状態で、皮膚の上から薬液をリザーバー60に注入することが可能で、薬液を追加注入する際に、流体輸送装置を取り出す必要がなく、生体への負担を軽減することができる。
さらに、リザーバー60を変形可能な包袋で構成することにより、薬液を流動することによる内部圧力の低下に伴い、リザーバー60の容積が縮小するよう変形するため、リザーバー60内の圧力をほぼ一定に保つことがでる。従って、フィンガー40〜46により、チューブ50を閉塞し、その後開放した際に、開放された領域の流体流動部51に薬液が充填されるため、安定した流体流動を維持することができる。
さらに、バルブ80に圧入されている流体注入栓82のスリット82bに注入針を容易に刺挿することができ、流体をリザーバー60内に注入した後、注入針を抜脱すると、流体注入栓82自身の弾性力でスリットが閉塞し、バルブから流体が流出することを防止することができる。このようなバルブは弁等を用いない簡単な構造を実現でき、流体の注入作業を繰り返し行うことができるという効果もある。
図7〜図9は、本発明の第2実施形態に係る流体輸送装置を示し、図7は平面方向の構成、図8は厚さ方向の構成であって(A)は幅狭側から見たもの、(B)は幅広側から見たもの、図9はリザーバー枠であって(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。なお、本実施の形態では、人体や動物などの生体内に装着し、流体として薬液を用いる流体輸送装置を例示して説明する点や、流体が、ゲル状の流動体を含み、さらに気体も含む点は第1の実施形態と同様である。
また、リザーバー170は、リザーバー枠180を介して外装ケース161に保持されており、注液ポート167に接続する流体注入口部171と、チューブ165に接続する流体排出口部172とを有している。なお、外装ケース161外のリザーバー170から外装ケース161内のチューブ165に接続するため、接続部材173を介して両者を接続するとともに、外装ケース161と接続部材173との間をシールして外装ケース161内の密封性を確保している。
リザーバー170は、この傾斜部169の傾斜に沿うよう、リザーバー枠180を介して保持されており、図8に示すように、リザーバー170自体も角度Xに傾斜した状態となっている。このように、リザーバー170を傾斜させることにより、動物等の皮下に埋め込んだ際に、この流体輸送装置160の端部によって皮膚を突っ張らないようにすることが可能である。従って、リザーバー170の傾斜角度、すなわち傾斜部の角度Xは、皮膚の突っ張りを抑制できる角度であればよく、例えば10度から30度など設置状況に応じて好適な角度に設定可能である。また、図示のように直線的に傾斜させることに限定されず、曲線的に傾斜させてもよい。
リザーバー170とリザーバー枠180とは、下面170aと底部180aとが接着剤等で固着されることにより一体化される。なお、固着する手段として接着剤に限定されるものではない。また、図示のように、リザーバー170とリザーバー枠180とを別体で形成し、その後一体化することに限定されず、同一の素材で下面側を硬質にかつ上面側を軟質に形成できるものであれば一体形成することも可能である。この場合、下面側の硬質部分が本実施形態のリザーバー枠180に相当し、上面側の軟質部分がリザーバー170に相当する。
なお、底部180aは、リザーバー170の下面170aの形状に対応させて形成されるため、例えば下面170aが平坦である場合は底部180aも平坦に形成される。
以上のように構成された流体輸送装置160において、リザーバー170に収容された流体を外部に排出する動作(作用)について、さらにはリザーバー170に流体を補充する手順については、第1実施形態の流体輸送装置1と同様である。
なお、組み立てられた後は、リザーバー170、および製品全体(流体輸送装置160全体)の表面にシリコンコート処理を施して、より無毒性を確保することが好ましい。
さらに、リザーバー170が外装ケース161の表面に傾斜した状態で保持されるため、例えば、この流体輸送装置160を皮下に埋め込んだ場合に、リザーバー170の端部で皮膚が突っ張られないようにすることができ、装着後の違和感を軽減することができる。
また、リザーバー170がリザーバー枠180を介して着脱可能な状態で取り付けられるため、外装ケース161の所定位置に確実にリザーバー170を保持するとともに、交換等の作業性を向上させることができる。
さらに、この流体輸送装置160を皮下に埋め込んだ場合に、リザーバー170の下側は硬質のリザーバー枠180で保護するとともに、上側はオープンとすることでリザーバー170を容易に変形させることが可能となる。
また、注液ポート167を外装ケース161に設けることに代えて、リザーバー枠180の一部に形成してもよく、さらにはリザーバー170の上側表面の一部、例えばリザーバー170の上面中央部分や流体排出口部172から離れた部分などに設けてもよい。
また、外装ケース161に対するリザーバー枠180の着脱手段として、フック181及び段部191を用いることに限定されず、例えばネジ止め等を用いてリザーバー枠180を外装ケース161に固定してもよい。
本発明の第3実施形態は、実験動物の皮下に埋め込むための薬液供給装置(流体輸送装置)を示すものである。流体として薬液を用いるとともに、設置する対象を実験動物としている。実験動物とは、マウス、ラット、モルモット等の薬液の動物実験を行い得る小動物を指す。薬液とは、例えば薬用液体や栄養液体を指し、それらの開発のための動物実験や動物の治療を行うための全ての液体をいう。
図10において、実験動物の皮下に埋め込むための薬液供給装置201は、外観が略箱型状である。長手方向の横幅寸法は概ね34mm、幅狭幅方向(短手方向)の奥行寸法は概ね18mm、高さ寸法は概ね8.5mmである。
その外装ケースとして上蓋202、下蓋203、上基枠(第1実施形態のチューブ枠12に相当)204、下基枠(第1実施形態のムーブメント枠15に相当)205が互いに固定されている。なお、上蓋202の表面は皮下に埋め込まれた際に皮膚側に対応させる皮膚側対応面であり、下蓋203の表面は皮膚側対応面の裏面である。上記上蓋202、下蓋203、上基枠204、下基枠205等実験動物に接触する部材の材質は、実験動物に対し無毒であることが必要である。加えてその部材は、機能部材でもあるので、強強度や高硬度も要求される。そこで、外装ケースとしての上蓋202、下蓋203、上基枠204、下基枠205等の材質は、実験動物に対し無毒性で且つ高強度、高硬度であり、好ましくは軽量である、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等の合成樹脂とする。組み立てられた後は、シリコンコート処理を施して、より無毒性を確保することが好ましい。なお、前述の材料は、生体親和性を確保する観点から選定されるようにしてもよい。
上蓋202は、透明材で形成し、内蔵構造や部品の組立て状態及び動作状態が正常か異常かを簡単に識別できるようになっている。他の外装ケース部材としての下蓋203、上基枠204、下基枠205は、非透明材な有色樹脂で構成されている。
図10の(A)に図示されているように、薬液供給装置201の長手方向の左右両側面は、上方に行くに従って薬液供給装置201の長手方向の寸法が狭くなる様な傾斜面となっており、図10(A)において左端の長手左側傾斜面201d、右端の長手右側傾斜面201eが構成されている。この傾斜面201d、201eは、実験動物の皮下に埋め込まれると実験動物の皮膚は薬液供給装置201の体積及び高さに応じて引っ張られることになり、最悪の場合はその皮膚が損傷することになる。そこで、上記引っ張りが極力少なくかつ上記皮に局部的なせん断力が掛からないように上記の傾斜面を201d、201e形成している。
上記傾斜面201d、201eの傾斜角α1、α2は、5度から60度、中でも15度から30度が好ましい。上記傾斜面201d、201eの傾斜角α1、α2は、各々同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記傾斜角は、実験動物の皮膚の引っ張りを低減する観点からは、大きい方が好ましいが、薬液供給装置201の内蔵スペースと内蔵部材の効率的配置、および当初の薬液注入時に薬液供給装置201を手で持って保持しやすい観点からは小さい方が好ましく、両者の観点を総合判断して決定すればよい。
図10の(A)に図示されているように、下蓋203の長手方向の左右の角部は大きな円弧状になっており、同(C)に図示されているように下蓋203の幅狭幅方向の左右の角部は大きな円弧状に形成されている。同様に、図10の(A)のように、上蓋202の長手方向の左右の角部は大きな円弧状に形成され、同(C)のように上蓋202の幅狭幅方向の左右の角部は大きな円弧状に形成されている。上記長手方向の円弧状部は幅狭幅方向の円弧状部より大きな半径の円弧状に形成され、下蓋203の円弧状部は、各々上蓋202の円弧状部よりも大きな半径の円弧状に形成されている。なお、上記半径の大きさは、前述と反対の関係でもよく、ほぼ同じ半径の円弧状としてもよい。
この糸掛け部207は、下蓋203の側面に突出形成されており、下蓋203の底面から糸掛け部207の下面までは所定高さh1の位置にある。この所定高さh1は、薬液供給装置201の厚さ、すなわち上蓋202の上表面と下蓋203の下面までの厚さHの1/10〜1/2、好ましくは1/5〜1/3の位置に形成されていることが好ましい。それは、糸掛け部207が上記高さh1を有していることから、薬液供給装置201を実験動物に糸にて縫いつけて固定する際に、実験動物の縫い付け部を前記糸掛け部207に近づいた平面視位置とすることができ、薬液供給装置201を真下側に引き寄せるようにすることもでき、より浮かせないように取り付けることが出来るからである。
また、前記糸掛け部207の形成される平面視での位置は、図12のように薬液供給装置201の左右両側面個所である。すなわち、右側面では、チューブ211が外部に突出している個所付近と、その上方側の2箇所と、左側面のほぼ中央付近に1箇所の径3箇所である。
なお、前記糸掛け部207は、右側面の形成個所においては、チューブ211の突出位置を挟んだ両側位置とすれば、薬液供給装置201の側面から突出したチューブ211の突出部をより移動させることがなく固定することができ、実験動物への薬液供給用のカテーテルが移動することなく安定して薬液を実験動物に供給しつづけることができる。
このように、前記各糸掛け部207が、平面視で上記四辺形内に配置されることにより、前記各糸掛け部207が、前記外装ケースの側面からいたずらに飛び出すことが無く、前記各糸掛け部207が実験動物をむやみに押し付けて実験動物に損傷を与えまた違和感をもたらすことを防止する。特に前記各糸掛け部7は、突起状に形成されやすいので、上記実験動物を局部的に押圧することになりやすく、上記損傷を起こしやすいだけに、上記四辺形内に収めることは、その不具合を防止する上で、有効な手段である。
また図10の(A)に図示されているように、側面からチューブ211bが外部に突出している。
なお、この実施形態では取付部として糸掛け部207としているが、これに限定されるものではない。例えば、設置対象に対して糸で縫いつけることに代えて、ステープルや接着剤で固定してもよく、その場合の取付部はステープルや接着剤での固定に適した形状に形成される。
図12において、ほぼ中央の上部には、外部から薬液が薬液注入装置201に注入されるポートとしての注液ポート208(以下、この実施形態では注液ポートという。)、その左隣には注液ポート208に連通しており薬液が内部に貯蔵されるリザーバー209、リザーバー209に一部が平面的に重なりリザーバー209の右下方向に配置された扁平円形状の電池210(酸化銀電池)、薬液注入装置全体のほぼ右方に配置されて前記リザーバー209に連通して薬液を導通させる弾性を有するチューブ211(薬液導通部)、チューブ211の略中央部付近に構成されるマイクロポンプ212と、マイクロポンプ212の駆動回路及びこの駆動回路を制御する駆動制御回路を備えた集積回路(IC)225(図13参照)と、このIC及び必要に応じて他の電子素子を実装し且つ各電子部品間の導通を図る回路基板226(図13参照)とを、少なくとも有して内蔵部を構成している。
上記マイクロポンプ212は、回転駆動部214と、この回転駆動部214により回転される第1カム215と第2カム216を備えたカム部217と、前記カム部217の外方に放射状に配置され前記カム部217により順次外方向に突出移動する複数個の押圧ピン218と、前記チューブ211のほぼ中央部に円弧状に形成されている円弧状チューブ部211aを有している。
また上記マイクロポンプ212のカム部217と押圧ピン218は、上記注液ポート208、リザーバー209、電池210、チューブ211とは平面視で重なっていない。
なお、前記チューブ211の右端部は、薬液供給装置201の外部に突出している露出チューブ部211bであり、その先端にカテーテル(図示せず)が取り付けられており、カテーテルを介して実験動物の体内に薬液が注入されるものである。
以上が全体レイアウトの概要である。
まず、上記のように上蓋202、下蓋203、上基枠204、下基枠205は、断面方向の上下双方から前記外装ケース固定ネジ213がねじ込まれることにより、断面方向でも位置決め固定されている。なお、外装ケースとしては、上蓋202と下蓋203だけとしてもよく、その場合は上基枠204、下基枠205は外周側面に露出せず、上蓋202と下蓋203により形成された側面壁の内側に配置されるようになる。
注液ポート208は、上蓋202の上面側に構成されて、前記薬液供給装置201が前述皮下に埋め込まれた際に実験動物の皮膚側に向けて配設されている。
この上蓋202の上面には、ほぼ円形形状の筒状の注液ポート突出部208aが突出形成されており、その内側には、外部から挿入される注液具を導入する注入開口部208bが設けられている。この注液具は注射針状のもので、リザーバー209に薬液を補給するものである。なお、上記注液ポート突出部208aは、上蓋202と一体に形成され、上蓋202と同じ材質となっている。
上記注液ポート突出部208aは、次のような寸法を有している。図16に図示されているが、上記注液ポート突出部208aの先端(上端)の外径d1はほぼ6.0mmで、上蓋202の上面から上記注液ポート突出部208a先端までの高さh2はほぼ1.5mmである。上記注液ポート突出部208aの先端から上蓋202の上面にかけて末広がりのテーパーを有した傾斜面208cが形成され、その傾斜角γはほぼ30度で、その先端コーナー部はアールが付与されており、実験動物に損傷を与えないようになっている。その内方に形成された注入開口部208bの内径d2はほぼ4.0mmである。その下方の注液ポートパッキン221の外径d3は3.0.mmである。その下方の空間部220aの直径d4は2.3mmである。
注液ポート枠220は、注液ポートパッキン221の下部内方に空間部220aと、それに続いてリザーバー209の側壁に向かって突出しているパイプ状の接続筒部220bとが形成されている。この接続筒部220bの中心側には、上記空間部220aと連通する連通路220cが形成されている。
リザーバー209の材料は、薬液に対する耐薬品性と弾性と強強度を有しガスバリア性(気体を透過させない性質)に優れた材料がこのましく、中でも合成樹脂材料が好ましい。上記ガスバリア性に優れた材料が要求されるのは、リザーバー209の薬液に外部から空気等の気体の進入を阻止し薬液に有害物質が混入することを防止するためであり、加えて外部から気体が侵入して気泡が存在するとマイクロポンプ212のポンプ機能が低下することから、その機能低下を防止するためである。このため、耐薬品性と弾性と強強度とガスバリア性に優れ、且つゴム硬度25度〜40度程度の硬度を必要とするが、その合成樹脂としては、オレフィン系、塩化ビニール系、シリコン系の合成樹脂が好ましい。
図12に見られるようにリザーバー209の平面視形状は、概ね半円形状である。但し、図10、図11のように電池210の平面視で重なる領域に相当する下部は、電池210を避けるために断面視での厚さが薄く形成されている。
上記接続パイプ222は、薬液に対する耐薬品性と強強度を有しガスバリア性の観点から、ステンレススチール等の金属かポリプロピレン、塩化ビニール等の合成樹脂が好ましく、リザーバー209側の一端とチューブ211側の他端には、上記接続パイプ接続部209b及びチューブ211の接続パイプ取付部211cとの接合がし易くなるように外径が多少大きい段部が形成されている。上記接続パイプ222の中心側には、薬液が通過できる薬液導通路が形成されている。
またチューブ211は、断面視方向では図13、図14に図示されているように、マイクロポンプ212の回転駆動部214の上部に配置され、カム部217及び押圧ピン218とほぼ同じ高さに配置されている。
さらに、上蓋202と上基枠204には、平面視で前記円弧状チューブ部211aの対応する外方部分に、チューブ211の円弧状チューブ部211aの外側形状とほぼ同じ半径に形成された円弧状のチューブ収納部224が形成されて、このチューブ収納部224の外側壁が前記円弧状チューブ部支持壁224aであって、前記円弧状チューブ部211aの外側壁を支えるように構成されている。この円弧状チューブ部支持壁224aは、図15の如くに上下方向に直線壁に構成されている。従って、マイクロポンプ212の押圧ピン218により円弧状チューブ部211aが外方に押し付けられると、前記円弧状チューブ部支持壁224aが円弧状チューブ部211aの外方への移動を防止するので、円弧状チューブ部211aの内部の薬液導通路をほぼ密閉することが出来る。
以上の様に、図12において、押圧ピン218がカム部217により順次円弧状チューブ部211aを押圧して行くので、チューブ211内の薬液が露出チューブ部211b側に排出されることになる。
また、チューブ211の右端の露出チューブ部211bは、上蓋202及び上基枠204の右側壁に設けられたチューブ露出開口223から外部に突出している。このチューブ露出開口223から外部に突出した先端には、実験動物の血管や体内の所定部に薬液を注入するカテーテルが取り付けられている。
なお、チューブ露出開口223から外部に露出するものは、チューブではなくても良い。その場合は、例えばチューブ露出開口223の内部にてチューブ211の端部とカテーテル(図示せず)とを接続し、そのカテーテルの先端をチューブ露出開口223から外部に突出させるようにする。このカテーテルの先端側にて実験動物の血管等に薬液を供給するようにするものである。
上記接続パイプ取付部211cは、前記接続パイプ222の外形部にはめ込まれ接着または加熱圧着されて固定されている。
上記円弧状チューブ部211aは、平面視で円弧状に形成されており、平面視での円弧中心側に配置された前述の多数個の押圧ピン218やカム部217を囲むように配置されている。
マイクロポンプ212は、前述した円弧状チューブ部211a、複数個の押圧ピン218、カム部217、カム部217を回転駆動する回転駆動部214を備えている。
上記押圧ピン218は、金属または硬質の合成樹脂からなり、カム部217の回転中心Oから放射状方向に突出しまた元の回転中心O側に戻る直線運動が可能なように押圧ピン案内部材(図示せず)に配置されている。また上記押圧ピン218は、前記カム部217により前記放射方向の外方向に押し出されて突出し、円弧状チューブ部211aをチューブ収納部224の外側壁に押圧するものである。
カム部217は、第1カム215と第2カム216とを有し、第1カム215と第2カム216は回転中心Oを中心に一方方向(図12の時計回り)に回転することができる。
上記第1カム215と第2カム216は、ポリアセタール樹脂等の機械的強度の大きいエンジニアプラスチックや、強度と耐磨耗性に優れた金属で構成されている。特に、合成樹脂を用いる場合は、前述した充填剤を混入すると好ましい。この充填剤を混入した合成樹脂は、前述したように、高硬度が得られ強度も増し、低摩擦係数を呈し且つ磨耗しにくくなる。上記第1カム215と第2カム216は、各々のカム面が接触して押圧ピン218を放射方向に押し出し、円弧状チューブ部211aを押し潰すため、大きな反力を受けることになる。よって上記第1カム215と第2カム216は、高硬度、強強度、低摩擦係数が要求されるものであることから、充填剤混入合成樹脂を用いると好ましい。
上記第1カム215と第2カム216の平面視での位置は、図12においては4つの突出部が全周で等間隔にセットされている。これは、マイクロポンプ212の駆動時、つまり薬液供給装置201が実験動物の皮下に埋め込まれた後の通常の使用状態であるマイクロポンプ212の駆動状態においての第1カム215と第2カム216の平面視位置であって、各々の突出部は略90度づつ回転した位置にセットされている。
なお、前記押圧ピン218が回転中心O側に押し戻す弾性力は、円弧状チューブ部211aの弾性力を利用するものではなく、バネ部材を用いて上記弾性力を付与するようにしても良い。例えば、コイルばねや板ばねを前記押圧ピン218と押圧ピン案内部材(図示せず)との間に設置するようにしてもよい。
その各々の回転駆動軸は、同じ回転中心Oを中心に回転するものであり、一方の回転駆動軸は、他方の回転駆動軸の外側に挿入されている。
各回転駆動軸は、図15のように回転駆動部214から上方の上記第1カム215と第2カム216側に突出しており、各回転駆動軸は、種々の歯車とピニオンの歯車列を有した輪列により回転駆動される。この輪列の回転駆動源は、ステッピングモータであって、2極の永久磁石を回転軸に取り付けたロータが、ステータの開口内で1ステップ180度の角度で回転する。この回転駆動部214は、腕時計のステップモータ、輪列、輪列の末端の2番車軸、2番車軸に摩擦係合している筒カナ及び筒カナと連動回転する筒車の構造をほぼ採用することができるものである。上記ステップモータは、1.5V程度の直流電圧で駆動される。
図15には、下蓋203の下面に外部信号入力ポート228が2箇所構成されている。
この外部信号入力ポート228は、その平面視での好ましい配置場所は、下蓋203の内面との断面視方向において多少なりとも空間が存在する場所であって、しかも回路基板226と平面視で重なる場所であればどこでもかまわない。より好ましい配置場所は、平面視で注液ポート208、回転駆動部214の配置領域及びその周辺領域である。他方、好ましくない配置場所は、リザーバー209と電池210の平面視領域及びその周辺領域であり、リザーバー209と電池210が断面視で下蓋203の下面の付近まで構成されているからである。
この入力ピン229により、予めマイクロポンプ212の駆動特性、駆動プログラムを内蔵するICに入力しておく。例えば、薬液の吐出開始時、同吐出終了時、同吐速度、単位時間あたりの吐出量、等である。動物実験開始前に入力しておくことが好ましいが、動物実験中に上記駆動特性を変更することも可能である。その変更入力のためには、実験動物の外部に、入力ピン229と接続した接続ケーブルを突出しておくことが必要とされる。
まず、薬液の通過経路を構成する部材に、減菌処理を施す。
ここで、薬液通過経路構成部材は、それらが組み立てられた注液部ユニットを指す場合と、各個別の部材を指す場合とがある。作業性からは注液部ユニットに組み立ててから減菌処理を施すことが好ましい。
まず、前記注液部ユニットに組み立ててから減菌処理を施す場合を説明する。
前記注液部ユニットは、注液ポート208の注液ポート枠220および注液ポートパッキン221、リザーバー209、接続パイプ222、チューブ211が組み立てられたユニットである。この注液部ユニットが、エチレンオキサイドガスにてガス減菌処理を施されて、減菌処理される。
以上により、前記注液部ユニットの薬液通過経路の減菌処理は終了することになる。前記露出チューブ部211bの加熱圧着された先端は、実験動物に埋め込まれる前後の適切なタイミングで開封され、カテーテルと接続される。
なお、エチレンオキサイドガスの注入、排出は、上記手順に限られるものではなく、例えば、注液ポートパッキン221からエチレンオキサイドガス注入具が刺し込まれてエチレンオキサイドガスが注入され、前記露出チューブ部211bの先端から前述のように排出され、この排出を確認してから露出チューブ部211bの先端を加熱圧着し封止するようにしてもよい。
以上の様に、減菌処理は2回行われる。すなわち、前記注液部ユニットに組み立ててから前述のガス減菌処理を施し、薬液供給装置201を完成してから前述のガス減菌処理を施す。1回目の減菌処理は、薬液通過経路が狭い通路と小さい袋で構成されているので、そのような厳しい減菌処理に最適な処理方法(ガスの種類、ガス圧、ガス注入時間等)を選択できる。一方、薬液供給装置201の完成後に減菌処理を施すことにより、外装ケース部材や内蔵部材の材質に損傷を与えないようなガス環境にて減菌処理を施すことができる。
この高圧蒸気減菌処理は、130度C程度の高圧の蒸気を前記注液部ユニットの薬液通過経路に通す。
すなわち、前述と同様に、前記注液部ユニットの入口である注液ポートパッキン221から高圧蒸気注入具(あるいは高圧蒸気供給装置)が刺し込まれ、さらに前記注液部ユニットの出口であるチューブ211の露出チューブ部211bの先端に高圧蒸気注入具(あるいは高圧蒸気供給装置)が挿入(接続)されて、注液ポートパッキン221側と露出チューブ部211bの先端側の両端側から高圧蒸気が注入され、前述のエチレンオキサイドガスの排出と同様に、前記注液部ユニットから高圧蒸気が排出される。この排出は、上記エチレンオキサイドガスの排出と同様に種々の方法が用いられる。
以上により、前記注液部ユニットの薬液通過経路の減菌処理は終了する。しかるのち、前記露出チューブ部211bの加熱圧着された先端は、実験動物に埋め込まれる前後の適切なタイミングで開封され、カテーテルと接続される。
なお、上記高圧蒸気の注入、排出は、上記手順に限られるものではなく、例えば、注液ポートパッキン221から上記高圧蒸気注入具が刺し込まれて上記高圧蒸気が注入され、前記露出チューブ部211bの先端から前述のように排出され、この排出を確認してから露出チューブ部211bの先端を加熱圧着し封止するようにしてもよい。
上記の蒸気温度は、前述の130度Cに限定されるものではなく、120度C〜150度Cが好ましい。
この高圧蒸気減菌処理の後の2回目である薬液供給装置201全体に施す減菌処理は、前述と同様なガス減菌処理である。
なお最初の減菌処理は、無菌室などの無菌条件下で、人間の手を介さないように全自動で前記注液部ユニット組立て前の各部材に施し、その後、無菌条件下で前記注液部ユニットを組立ててもよい。
このため、外部に露出する部分を有する部材同士は、防水機能を有する接着剤が付着されて互いに接合されている。
上蓋202と上基枠204との外周側の当接面、上基枠204と下基枠205との外周側の当接面、下基枠205と下蓋203との当接面、注液ポート208の注入開口部208bの内壁面と注液ポート枠220の上部外周壁面、注液ポート枠220の内壁面と注液ポートパッキン221の外周壁面、チューブ211右端の露出チューブ部211bの外周面と上蓋202及び上基枠204の右側壁に設けられたチューブ露出開口223の内周壁面には、上記接着剤である例えば紫外線硬化型接着剤が塗布され、外装ケース固定ネジ213をネジ締める。その直後に本薬液供給装置201の全表面に紫外線を照射すると、前述の紫外線硬化型接着剤が硬化し、防水性が確保されるものである。
本装置201の組立て後に、外部信号入力ポート228の入力ピン229を介してICに対し、マイクロポンプ212の回転駆動部214の駆動制御プログラム(第1カム215、第2カム216の駆動タイミング、それらのカムの駆動スピード、それらの駆動力等に対応する駆動方法、駆動条件等の制御用)を供給する。具体的には、回転駆動部214に組み込まれているステッピングモータ(図示せず)の駆動ドライバーに、駆動開始時期、駆動パルス幅、駆動パルス出力周期、駆動電圧等の駆動信号に対応するプログラムである。
なお、上記の駆動制御プログラムは、予めICに記憶させておいても良いものである。
さらに注液ポート208の注液ポートパッキン221に注液具を刺し込んで、リザーバー209の中に薬液を初期供給する。
予め麻痺させておいた実験動物の皮膚を切り開いて、皮下に本薬液供給装置201の下蓋203を下向きにセットし、糸掛け部207の穴207aに通した糸を実験動物に縫い付けることにより本薬液供給装置201を取り付ける。上記糸掛け部207の穴207aが周囲に複数箇所にわたって設けられているので、本薬液供給装置201を安定して取り付けることができる。
次に、薬液供給装置201の側壁から突出しているチューブ211の先端に取り付けられているカテーテルを介して実験動物の体内、例えば血管に薬液を供給出来るようにセットする。
以上の準備が完了したところで、実験動物の皮部を縫い合わせることによって動物実験がスタートする。上記マイクロポンプ212による薬液の供給量(実験動物への吐出量)は、1時間当たり0.1〜15マイクロリットル前後であるが、予め任意に設定可能である。また動物実験中に、経過時間に応じて、その吐出量を変えるように予めICにプログラムしておくことも可能である。
次に、第4実施形態について図17、図18に基いて説明する。
第3実施形態では、リザーバー209と電池210は平面視で一部が重なっていたが、第4実施形態ではリザーバー209と電池210は平面視で重ならないように配置されている。
また、第3実施形態では、マイクロポンプ212における円弧状チューブ部211a、カム部217.押圧ピン218等は、回転駆動部214の上方に配置されていたが、第4実施形態では逆に回転駆動部214の下方に配置されている点が異なっている。
それ以外は、第3実施形態と同様である。
電池210は、図17に図示されているように、薬液供給装置201の長手方向(図17の左右方向)で中央よりやや左側に、かつ幅狭幅方向(図17の上下方向)でほぼ中央に配置されている。また電池210は、図18に図示されているように、上蓋202の内面と下蓋203の内面とにほぼ接するほどに厚い電池、例えばボタン型電池が採用されている。
リザーバー209は、図17のように上記電池210を避けるように電池210側は半円状に形成されており、図18に見られるが上蓋202の内面と下蓋203の内面とにほぼ接するほどの厚さに形成されている。
加えて、リザーバー209も、第3実施形態のように電池と平面視で一部が重なることがないので、薬液の収納容積を大きく確保することが可能となる。
従って、リザーバー209および電池210の容積確保の効率が高まることから、薬液供給装置201の平面視で小型化を図ることができる。よって、薬液供給装置201を実験動物に埋め込む際に、実験動物に対する負担を軽減することができ、薬液の動物実験の確実性を高めることにも寄与する。
しかも、リザーバー209には、図13、図14に見られるように電池210を避けるための段部を設ける必要がない。すなわち、リザーバー209は、例えば上蓋202の内面から下蓋203の内面に至るまで形成することもできるように、薬液収納部のほぼ全領域にわたり同じ厚さで形成できることから、薬液の減少と補給により収縮と膨張を繰り返しても強度を損ねる個所がなく安定した長期の強強度を確保することが出来る。
注液ポート208からリザーバー209に接続する注液ポート枠220の接続筒部220bは、平面視では図14のように電池210の上方に配置され、電池210とは平面視で重なっていない。
同様に、リザーバー209からマイクロポンプ212に接続する接続パイプ222は、平面視で電池210を避けるように図17のごとく電池210の下方に設置されている。
注液ポート208からリザーバー209に接続される接続筒部220bは、第3実施形態とほぼ同様で図14のごとく断面視でリザーバー209の中央部より上方側に接続している。
リザーバー209からチューブ211に接続する接続パイプ222の配置場所は、図18に図示されているようにリザーバー209の下方に配置されており、断面視でリザーバー209の中央部より下方側に接続している。
また、マイクロポンプ212において、上記接続パイプ222に連通しているチューブ211の接続パイプ取付部211c、カム部217を構成する第1カム215および第2カム216、押圧ピン218、円弧状チューブ部211a等は、図18のように断面視で下蓋203の内面側、すなわち前記接続パイプ部222とほぼ同じ高さ位置に設置されている。チューブ211における露出チューブ部211bも、下蓋203の内面側に位置して外部に突出している。
従って、マイクロポンプ212は、第3実施形態とは断面視方向において逆向きに配置されることになる。すなわち、回転駆動部214、チューブ211の接続パイプ取付部211c、カム部217を構成する第1カム215および第2カム216、押圧ピン218、円弧状チューブ部211a等は、図14および図15とは断面視方向において逆向きに構成されている。
回路基板226、IC225も同様に、断面視で回転駆動部214の上方に設けられている。
すなわち、平面視では図17のように、リザーバー209にとっての薬液貯蔵部209cがリザーバー209の中央領域に形成されており、薬液の供給入り口とも言える注液ポート208は、リザーバー209の前記薬液収納部の上方側に形成されており、薬液の排出口とも言える接続パイプ222が、前記薬液貯蔵部209cの下方側に形成されている。
従って、薬液は、前記薬液貯蔵部209cの上方側の注液ポート208から注入されると上記薬液貯蔵部209cにスムースに収納され、前記薬液貯蔵部209cの下方側の接続パイプ222からスムースに排出されることになって、薬液が滞留なく、無理なく薬液が流路内を流れることになる。
しかも、マイクロポンプ212においても、前述したように上記接続パイプ222に連通しているチューブ211の接続パイプ取付部211c、カム部217、押圧ピン218、円弧状チューブ部211a、露出チューブ部211bも、接続パイプ222とほぼ同じ高さとなるように下蓋203の内面側に位置して外部に突出している。
よって薬液の滞留がなく、無理なく薬液が流路内を流れ、外部に排出されることになるものである。
特に、薬液供給装置201を実験動物に埋め込む際に、薬液供給装置201の下蓋203が垂直方向の下側、上蓋202が垂直方向の上側になるように埋め込まれると、薬液が重力にそって無理がないように流路が形成されることになるから、よりスムースに流れやすくなるものである。
上記、電池210、薬液が収納されたリザーバー209、マイクロポンプ212、ことに回転駆動部214は、比較的重いユニットであるものであり、その重量が大きいユニットが幅狭幅方向および長手方向のほぼ中央に配置されていることによって、薬液供給装置201が実験動物に埋め込まれ動物実験されている際の固定安定性が高まる。つまり、薬液供給装置201の重心が薬液供給装置201の平面視のほぼ中央に位置することになるので、実験動物が移動する際に薬液供給装置201が実験動物の埋め込み部に対して無理な作用力を受けることが少なくなるからである。よって、実験が安定して継続されることになる。
第5実施形態は、第3実施形態と異なる点は、図19の平面図が示されている様に、薬液供給装置201の平面視において注液ポート208が幅狭幅方向の中央側に配置されていることである。
図19において、注液ポート208が薬液供給装置201の幅狭幅方向においてほぼ中央に配置されているとは、注液ポート208の中心位置208dが、薬液供給装置201の幅狭幅方向の中間点201a、つまり図19の上辺縁からの距離と下辺縁からの距離がほぼ等しい位置であることである。但し、上記ほぼ等しい位置とは、上記中間点201aからの所定範囲幅201b内にあることを含む。上記所定範囲幅201bは、薬液供給装置201の最大幅201cに対して5分の1として設定されている。上記所定範囲幅201bは、より好ましくは上記最大幅201cに対して10分の1とし、更に好ましくは15分の1である。
また、注液ポート208は、リザーバー209とマイクロポンプ212との間に配置されているものであり、電池210とマイクロポンプ212との間に配置されているものである。
上述のように、平面視において注液ポート208がリザーバー209又は電池210とマイクロポンプ212との間に配置されているから、薬液供給装置201の長手方向(図19の左右方向)でも薬液供給装置201の中央部付近に注液ポート208が配置されることになる。よって、上述と同様に、注液ポート208に注液具を刺し込んでリザーバー209内に薬液を補給する場合、薬液供給装置201には長手方向においても薬液供給装置201の全域にわたりほぼ均等に刺し込み力が加えられるから、実験動物に対しても局部的な痛みを与えることがなく、薬液補給操作がスムースに行われることになる。
なお、注液ポート208が幅狭幅方向、長手方向のほぼ中央部に配置されていると、注液具を注液ポート208から抜き出す際にも薬液供給装置201の全領域に渡って引き抜き力を及ぼすことになるから、実験動物に対して局部的な痛みを与えることが無く、総じて注液操作を良好に行うことが出来る。
次に、第6実施形態について図20〜図26に基いて説明する。
第6実施形態は、特に薬液供給装置の外形形状に関して変形させたものである。
図20は、実験動物の皮下に埋め込むための薬液供給装置の外形図を示す。図20の(A)は本薬液供給装置の下方から見た下方視側面図で図22の紙面手前側から見た側面図、図20の(B)は本薬液供給装置の上方から見た上方視側面図で図22の紙面上方側から見た側面図、図20の(C)は本薬液供給装置の右方から見た右方視側面図、図20の(D)は本薬液供給装置の左方から見た左方視側面図である。図21は本発明の薬液供給装置における図20の(A)における右側部分拡大図であり、本薬液供給装置を実験動物に埋め込む際に実験動物に糸にて縫いつける糸掛け部の側面図でもある。図22は、本薬液供給装置の平面図で、図20の(A)の紙面上方から見た平面図である。図23は、図22のA2−A2位置での主要部断面図である。図24は、図22のB1−B1位置での主要部断面図である。図25は、図22のマイクロポンプ部の主要部断面図である。図26は、注液ポートの拡大断面図である。
図20において、実験動物の皮下に埋め込むための薬液供給装置301は、外観が略箱型状である。幅広方向(長手方向)の横幅寸法は概ね34mm、幅狭方向(短手方向)の奥行寸法は概ね18mm、高さ寸法は概ね8.5mmである。
その外装ケースとして上蓋302、下蓋303、上基枠304、下基枠305が互いに固定されている。上記上蓋302、下蓋303、上基枠304、下基枠305等実験動物に接触する部材の材質は、実験動物に対し無毒であることが必要である。加えてその部材は、機能部材でもあるので、強強度や高硬度も要求される。そこで、外装ケースとしての上蓋302、下蓋303、上基枠304、下基枠305等の材質は、実験動物に対し無毒性で且つ高強度、高硬度であり、好ましくは軽量である、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等の合成樹脂とする。組み立てられた後は、シリコンコート処理を施して、より無毒性を確保することが好ましい。なお、前述の材料は、生体親和性を確保する観点から選定されるようにしてもよい。
上蓋302は、透明材で形成し、内蔵構造や部品の組立て状態及び動作状態が正常か異常かを簡単に識別できるようになっている。他の外装ケース部材としての下蓋303、上基枠304、下基枠305は、非透明材な有色樹脂で構成されている。
図20の(A)に図示されているように、薬液供給装置301の上表面は幅広方向(長手方向)においてほぼ中央部が最も高くなるように凸形状に形成されている。従って、上蓋302の上面形状は、図20の(A)のように半径R1の円弧状に形成されている。他方、薬液供給装置301の下裏面は、幅広方向(長手方向)においてほぼ中央部が最も高くなる(窪んでいる)ように凹形状に形成されている。従って、下蓋303の下面形状は、図20の(A)のように半径R2の円弧状に形成されている。この半径R1、R2の大きさは、薬液供給装置301が埋め込まれる動物の皮下形状に沿って設定すればよい。また、上記R1、R2は、同心円状であってもよく、また非同心円状であってもよい。
上記長手方向における下裏面のほぼ中央部は前述の凹形状により、下裏面の両端下面位置から深さh41だけ高くなっている。
図20の(C)に図示されているように、薬液供給装置301の上表面は幅狭方向においてほぼ中央部が最も高くなるように凸形状に形成されている。従って、上蓋302の上面形状は、図20の(C)のように半径r1の円弧状に形成されている。他方、薬液供給装置301の下裏面は幅狭方向においてほぼ中央部が最も高くなる(窪む)ように凹形状に形成されている。従って、下蓋303の下面形状は、図20の(C)のように半径r2の円弧状に形成されている。
上記r1、r2は、同心円状であってもよく、また非同心円状であってもよい。
なお、上記長手方向の上表面形状と上記幅狭方向の上表面形状は、円弧状でなくともよく、例えば非円弧曲線状でもよく、あるいは直線の組み合わせであってもよく、要は薬液供給装置301の上表面は長手方向または幅狭方向においてほぼ中央部付近が最も高くなるように凸形状に形成されていればどのように形成されていてもよい。
上記長手方向での上表面形状は上記凸状に形成されるが上記幅狭方向での上表面形状は直線形状であってもよく、逆に上記長手方向での上表面形状は直線形状に形成されるが上記幅狭方向での上表面形状は上記凸状であってもよい。
また上記長手方向での下裏面形状は上記凹状に形成されるが上記幅狭方向での下裏面形状は直線形状であってもよく、逆に上記長手方向での下裏面形状は直線形状に形成されるが上記幅狭方向での下裏面形状は上記凹状であってもよい。
上記、長手方向における上表面の形状や、半径R1、R2の大きさや、上記高さh31や、深さh41は、薬液供給装置301が埋め込まれる動物の皮膚形状、皮下形状に応じて設定すればよい。
上記幅狭方向における上表面の形状や、半径r1、r2の大きさや、上記高さh31や、深さh41は、薬液供給装置301が埋め込まれる動物の皮膚形状、皮下形状に応じて設定すればよい。
すなわち、薬液供給装置301の長手方向の左右両側面は、上方に行くに従って薬液供給装置301の長手方向の寸法が狭くなる様な傾斜面となっており、図20の(A)、(B)において左端の長手左側傾斜面301d、長手右側傾斜面301eが構成されている。この傾斜面301d、301eは、実験動物の皮下に埋め込まれると実験動物の皮膚は薬液供給装置301の体積及び高さに応じて引っ張られることになり、最悪の場合はその皮膚が損傷することになる。そこで、上記引っ張りが極力少なくかつ上記皮膚に局部的なせん断力が掛からないように上記の傾斜面301d、301eを形成している。
上記傾斜面301d、301eの傾斜角α11、α21は、薬液供給装置301を平坦な平面に載置した際の前記平坦面に対し直行する垂直線に対しての前記傾斜面301d、301eがなす角度が前記傾斜角α11、α21となる。この傾斜角α11、α21は、5度から60度、中でも15度から30度が好ましい。上記傾斜面301d、301eの傾斜角α11、α21は、各々同じであってもよく、異なっていてもよい。
すなわち、図20の(C)、(D)に図示される薬液供給装置301の幅狭方向の側面は、上記のような傾斜面を設けなくてもよい(βが0度)が、上方に行くに従って幅が狭くなるような傾斜面とすることが好ましく、図20の(C)において幅狭方向の幅左傾斜面301fと幅右傾斜面301gが形成されている。上記傾斜面301f、301gの傾斜角β11、β21は、薬液供給装置301を平坦な平面に載置した際の前記平坦面に対し直行する垂直線に対しての前記傾斜面301f、301gがなす角度が前記傾斜角β11、β21となる。その傾斜面301f、301gの傾斜角β11、β21は、5度から45度、中でも10度から30度が好ましい。上記傾斜面301f、301gの傾斜角β11、β21は、各々同じであってもよく、異なっていてもよい。
なお、上記傾斜面を301d、301e、301f、301gは、上記の様に直線で形成されることに限るものではなく、曲線であっても良い。その曲線は、上記傾斜面を301d、301e、301f、301gの中央部が凸状となる凸状曲線が好ましい。その傾斜の程度は、薬液供給装置301の高さ(厚さ)H1の1/2の高さ位置での上記傾斜301d、301e、301f、301gの接線が図20の前記垂直線(上下方向線)となす角度を上述したα11、α21、β11、β21とし、それらの角度α11、α21、β11、β21は、前述した角度に設定されることが好ましい。
このように、上記傾斜面301d、301e、301f、301gを凸状の非直線形状に形成することにより、動物によりよくなじみ無理な引張りや損傷をもたらすことをより防止することができる。
図20の(A)に図示されているように、下蓋301の長手方向の左右の角部は大きな円弧状になっており、同(C)に図示されているように下蓋303の幅狭方向の左右の角部は大きな円弧状に形成されている。同様に、図20の(A)のように、上蓋302の長手方向の左右の角部は大きな円弧状に形成され、同(C)のように上蓋302の幅狭方向の左右の角部は大きな円弧状に形成されている。上記長手方向の円弧状部は幅狭方向の円弧状部より大きな半径の円弧状に形成され、下蓋303の円弧状部は、各々上蓋302の円弧状部よりも大きな半径の円弧状に形成されている。なお、上記半径の大きさは、前述と反対の関係でもよく、ほぼ同じ半径の円弧状としてもよい。
この糸掛け部307は、下蓋303の側面に突出形成されており、下蓋303の底面から糸掛け部307の下面までは所定高さh11の位置にある。この所定高さh11は、薬液供給装置301の厚さ、すなわち上蓋302の上表面と下蓋303の下面までの厚さH1の1/10〜1/2、好ましくは1/5〜1/3の位置に形成されていることが好ましい。それは、糸掛け部307が上記高さh11を有していることから、薬液供給装置301を実験動物に糸にて縫いつけて固定する際に、実験動物の縫い付け部を前記糸掛け部307に近づいた平面視位置とすることができ、薬液供給装置301を真下側に引き寄せるようにすることもでき、より浮かせないように取り付けることが出来るからである。
また、前記糸掛け部307の形成される平面視での位置は、図22のように薬液供給装置301の左右両側面個所である。すなわち、右側面では、チューブ306が外部に突出している個所付近と、その上方側の2箇所と、左側面のほぼ中央付近に1箇所の径3箇所である。
なお、前記糸掛け部307は、右側面の形成個所においては、チューブ306の突出位置を挟んだ両側位置とすれば、薬液供給装置301の側面から突出したチューブ306の突出部をより移動させることがなく固定することができ、実験動物への薬液供給用のカテーテルが移動することなく安定して薬液を実験動物に供給しつづけることができる。
このように、前記各糸掛け部307が、平面視で上記四辺形内に配置されることにより、前記各糸掛け部307が、前記外装ケースの側面からいたずらに飛び出すことが無く、前記各糸掛け部307が実験動物をむやみに押し付けて実験動物に損傷を与えまた違和感をもたらすことを防止する。特に前記各糸掛け部307は、突起状に形成されやすいので、上記実験動物を局部的に押圧することになりやすく、上記損傷を起こしやすいだけに、上記四辺形内に収めることは、その不具合を防止する上で、有効な手段である。
また図20の(A)に図示されているように、側面からチューブ311bが外部に突出している。
従って、図21〜図26に記載された上蓋302、下蓋303、上基枠304、下基枠305、外装ケース固定ネジ313については、図11〜図16に記載された上蓋202、下蓋203、上基枠204、下基枠205、外装ケース固定ネジ213に関する記載と同様であるため、説明を省略する。
また、上述のように、注液ポート308については第3実施形態の注液ポート208と同様であり、注液ポート突出部308a、注入開口部308b、傾斜面308c、注液ポート枠320、空間部320a、接続筒部320b、連通路320c、注液ポートパッキン321については、図16に示す第3実施形態の注液ポート突出部208a、注入開口部208b、傾斜面208c、注液ポート枠220、空間部220a、接続筒部220b、連通路220c、注液ポートパッキン221に関する記載と同様であるため、説明を省略する。
また、注液ポート突出部308aの寸法について、図26に示す外径d11、h21、傾斜角γ1、内径d21、外径d31、直径d41については、図16に示す第3実施形態の外径d1、h2、傾斜角γ、内径d2、外径d3、直径d4に関する記載と同様であるため、説明を省略する。
また、上述のように、チューブ311の形状や素材等については第3実施形態のチューブ211と同様であり、円弧状チューブ部311a、露出チューブ部311b、接続パイプ取付部311cについては、図12〜図16に示す第3実施形態の円弧状チューブ部211a、露出チューブ部211b、接続パイプ取付部211cに関する記載と同様であるため、説明を省略する。
また、上述のように、マイクロポンプ312の形状や素材等については第3実施形態のマイクロポンプ212と同様であり、回転駆動部314、第1カム315、第2カム316、カム部317、押圧ピン318、チューブ露出開口323、チューブ収納部324、円弧状チューブ部支持壁324a、回転中心O1については、図12〜図16に示す第3実施形態の回転駆動部214、第1カム215、第2カム216、カム部217、押圧ピン218、チューブ露出開口223、チューブ収納部224、円弧状チューブ部支持壁224a、回転中心Oに関する記載と同様であるため、説明を省略する。
その他、接続パイプ322、IC325、回路基板326、回路基板固定ネジ327、外部信号入力ポート328、入力ピン329については、図12〜図16に示す第3実施形態の接続パイプ222、IC225、回路基板226、回路基板固定ネジ227、外部信号入力ポート228、入力ピン229に関する記載と同様であるため、説明を省略する。
また、本薬液供給装置301の内部に実験動物の体液が侵入しないように防水処理が施されることや、この防水処理のため、外部に露出する部分を有する部材同士が、防水機能を有する接着剤により付着されて互いに接合されていることについても第3実施形態に係る薬液供給装置201に関する記載と同様であるため、説明を省略する。
また、本薬液供給装置301の使用方法についても第3実施形態に係る薬液供給装置201に関する記載と同様であるため、説明を省略する。
次に、第7実施形態について図27、図28に基いて説明する。
第6実施形態では、リザーバー309と電池310は平面視で一部が重なっていたが、第7実施形態ではリザーバー309と電池310は平面視で重ならないように配置されている。
また、第6実施形態では、マイクロポンプ312における円弧状チューブ部311a、カム部317.押圧ピン318等は、回転駆動部314の上方に配置されていたが、第7実施形態では逆に回転駆動部314の下方に配置されている点が異なっている。
それ以外は、第6実施形態と同様である。
図28において、上蓋302の長手方向のほぼ中央部は上方に多少突出する凸状に形成され、下蓋303の下裏面は、凹状に形成されている。その下裏面の凹状は、ほぼ中央側が水平状の直線で、左端側が左下がりの直線状で、右端側が右下がりの直線状で形成されている。
電池310は、図27に図示されているように、薬液供給装置301の長手方向(図27の左右方向)で中央よりやや左側に、かつ幅狭方向(図27の上下方向)でほぼ中央に配置されている。また電池310は、図28に図示されているように、上蓋302の内面と下蓋303の内面とにほぼ接するほどに厚い電池、例えばボタン型電池が採用されている。
リザーバー309は、図27のように上記電池310を避けるように電池310側は半円状に形成されており、図28に見られるが上蓋302の内面と下蓋303の内面とにほぼ接するほどの厚さに形成されている。
第8実施形態は、第6実施形態と異なる点は、図29の平面図が示されている様に、薬液供給装置301の平面視において注液ポート308が幅狭方向の中央側に配置されていることである。その他の構成、特に薬液供給装置としての外装ケースの外形形状は、第6実施形態と同様に形成されている。
また、第7実施形態については、図19に示す第5実施形態と同様であり、図29に関する中間点301a、所定範囲幅301b、最大幅301c、注液ポート308、中心位置308d、リザーバー309、電池310、マイクロポンプ312については、図19に示す第5実施形態の中間点201a、所定範囲幅201b、最大幅201c、注液ポート208、中心位置208d、リザーバー209、電池210、マイクロポンプ212に関する記載と同様であるため、説明を省略する。
次に、第9実施形態について図30に基いて説明する。
前記外装ケースは、その上表面が前記薬液供給装置における幅広方向のほぼ中央部が凸状面に形成され、または/および下裏面が前記薬液供給装置における前記幅広方向のほぼ中央部が凹状面に形成されているので、内蔵構成部品の形状を変形配置することができる。
第9実施形態では、図37のように、下蓋303の下裏面のほぼ中央部が凹状面に形成されていることにより、リザーバー309の下方部を下方に延長形成することができる。図30は、図23に対応する薬液供給装置301の主要部断面図である。
図30において、下蓋303の長手方向の左右両端側は、図23に対して下方向に突出して形成されている場合には、リザーバー309において電池310と平面視で重ならない左外端部の下方部が下側に延長されて、下側延長部309gが構成されている。従って、下側延長部309gだけリザーバー309の容量が多く確保することが出来る。
次に、第10実施形態について図31に基いて説明する。
前記外装ケースは、その上表面が前記薬液供給装置における幅広方向のほぼ中央側が凸状面に形成され、または/および下裏面が前記薬液供給装置における前記幅広方向のほぼ中央側が凹状面に形成されているので、内蔵構成部品の形状を変形配置することができる。
第10実施形態では、図31に示すように、リザーバー309の上下方向軸を薬液供給装置301の上下方向軸311hに対して傾斜させ、マイクロポンプ312の上下方向軸を同様に傾斜させた変形例が示されている。図31は、図28に対応する主要部の断面図である。薬液供給装置301の上記上下方向軸311hは、薬液供給装置301を平坦な平面に載置した際の前記平坦面に対し直行する垂直線軸を指す。
このため、リザーバー309とマイクロポンプ312は、外装ケースである下蓋303の下裏面の凹状面や上蓋302の上表面の凸状面にほぼ直行するようにそれぞれの上下方向軸を傾斜して配置するので、リザーバー309とマイクロポンプ312と外装ケース内面との隙間は少なく配置することが可能となり、薄型の薬液供給装置をもたらすことが出来る。つまり、外装ケースの上表面を凸状面とし、下裏面を凹状面として動物に対して違和感が少なく損傷を最小限とすることを実現しながら、上述のように薄型を実現することから、より、動物に対して損傷をもたらすことをより少なくすることが出来るものである。
次に、第11実施形態について図32に基いて説明する。
外装ケースの上表面、下裏面の形状は、上述に限定されるものではない。
第11実施形態は、図32に示すように構成される。
図32の(A)は、長手方向において、上蓋302の上表面のほぼ中央側が凸状面に形成され、下蓋303の下裏面は直線状に形成されている。(B)は、(A)とは逆に、上蓋302の上表面は直線状に形成され、下蓋303の下裏面のほぼ中央側が凹状に形成されている。(C)は、幅狭方向において、上蓋302の上表面のほぼ中央側が凸状面に形成され、下蓋303の下裏面は直線状に形成されている。(D)は、(C)とは逆に、上蓋302の上表面が直線状に形成され、下蓋303の下裏面のほぼ中央側が凹状に形成されている。
以上の他に、上記組合わせは、それ以外でもよいものである。この構成により、動物に薬液供給装置が組み込まれた際に、動物への違和感がより解消されるものである。
この形態によれば、薬液供給装置301を皮下に埋め込んだ後、皮膚を介して略垂直面(把持用垂直面)をつかみやすくなり、埋め込んだ状態の薬液供給装置301を容易に固定できる。従って、リザーバー309へ薬液を補充する場合、注液ポート308の位置を容易に固定でき、注射針を刺す位置を明確化して作業性を向上させることができる。
また、傾斜面301d、301e、301f、301gのうち、いずれか一つを傾斜面として形成するとともに、他の外壁を傾斜させずに略垂直面とする形態であってもよい。
また、傾斜面の一部に上述のような把持用垂直面が設けられた形態であってもよい。すなわち、図20の第6実施形態を用いて説明すると、傾斜面301f、301gの中間部分を部分的に略垂直(β11,21が0度)に形成されたものであってもよい。この場合、略垂直面の両側に傾斜面301f、301gが形成された形態となり、この略垂直面が把持用垂直面となる。
〔変形例1〕
図33は、注液ポート208(注液ポート308を含む)の変形例が示された注液ポート208の主要断面図である。
図16の注液ポート突出部208aは、図16では上蓋202と一体の色調であったが、図33の注液ポート突出部208aは、上蓋202の色調と異ならせている。
上蓋202の色調は無色透明材で形成したが、図33の注液ポート突出部208aは、赤色で形成している。このため、注液ポート突出部208aは、上蓋202と別部材とし両者の接触面を防水性等の接着剤で接合してもよく、あるいは上蓋202に対して赤色の合成樹脂を形成して注液ポート突出部208aを一体で樹脂形成しても良い。
上記の様に、注液ポート突出部208aが赤色で、上蓋202の色調と異ならせているので、薬液供給装置201が実験動物の皮下に埋め込まれた際に、上記注液ポート突出部208aの赤色が外部から視認しやすくなり。実験者が注液ポート208の存在場所を用意に認識でき、注液ポート208内に注液具を刺し込みやすくなる。
この場合、上記注液ポート突出部208aの色調は、赤色系に限ることなく、外部から実験者が認識しやすい色調であればどのような色調であっても良く、青色系、黒系などでも良い。
なお、図33において、注液ポート枠220の上端には、注液ポートパッキン221が抜け出すことを防止する抜け防止ツバ220dが設けられている。
上記以外は、図16と同様に形成されているものである。
図34には、注液ポート208(注液ポート308を含む)の他の変形例が示された注液ポート208の主要断面図が記載されている。
図34の注液ポート208において、注液ポート枠220の上端に、外部から注液具を刺し込む際の案内となる案内傾斜面220eを設けたものである。この案内傾斜面の傾斜角δは、上方に広がる方向に形成されており、5度〜30度が好ましく、より好ましくは10度〜20度がよい。
図35には、注液ポート208(注液ポート308を含む)のさらに他の変形例が示された注液ポート208の主要断面図が記載されている。
図35は、注液ポート208は、上蓋202の上面からの突出部がないものである。
すなわち、図14、図16のように注液ポート突出部208aが存在しない。
従って、注液ポート枠220の上端が、上蓋202の上面以下の高さに留められて形成されているものである。
このように注液ポート208が、上蓋202の上面からの突出していないと、実験動物の皮を突出させる必要がなく、よって実験動物に負担をかけることを軽減する。
但し、実験者が、薬液の補給の際に注液ポート208の場所を探しにくくなるため、変形例1のように注液ポート枠220の色調を上蓋202の上面の色調と異ならせる必要がある。
マイクロポンプ212(312)は、上述したタイプのものに限定されない。要は、薬液がリザーバー209(309)から外部に適宜供給排出されるものならば、どのようなものであってもよい。
例えば、回転駆動部214(314)及びカム部217(317)の構造は、特許第3702901号公報に開示されているものであっても良い。
また、回転駆動部214(314)は、腕時計の指針を駆動する時計ムーブメントを用い、そのステッピングモータがその駆動制御手段で予め定められた駆動信号や制御プログラムに沿ってステップ駆動して上記カム部を回転駆動していたが、上記回転駆動部はそれ以外のものであってもよい。
また、チューブ211(311)を順次押圧して薬液を送り出すポンプ構造もどのような構造・方式でも良く、例えばチューブの上を複数個の所定間隔を保ったまま回転する金属ボールによってチューブが局部的に順次押圧されて、前述複数個のボールの所定間隔のチューブ間に存在する薬液が排出されるようなマイクロポンプであっても良いものである。
各実施形態における電池210(310)は、酸化銀電池、リチウム電池等の一次電池として使い捨てるタイプでよいが、充電タイプの二次電池としても良い。その場合は、薬液供給装置201(301)の例えば下蓋203(302)に、充電用端子を形成する必要がある。外部充電器の接続端子を上記充電用端子に接像することによって二次電池に充電することが出来、薬液供給装置201(301)を長期に使用し、あるいは再利用することもできる。なお上記各実施形態における電池210(310)は、1.5Vの直流電圧を出力するものを使用した。なお、電池の代わりに、他の電源を用いてもよい。
薬液供給装置の内部に実験動物の体液が侵入しないように前述した防水処理の他に、防水構造を採用しても良い。
例えば、各実施形態において、上蓋202(302)と上基枠204(304)との外周側の当接面同士、上基枠204(304)と下基枠205(305)との外周側の当接面同士、下基枠205(305)と下蓋203(303)との当接面同士において、少なくともどちらかの当接面に、微小突起を薬液供給装置の全周に形成しておく。またその微小突起は、ネジ締めして固定する外装ケース固定ネジ213(313)の内周側に形成しておく。しかるのち、上記外装ケース固定ネジ213(313)をねじ込むことにより各当接面同士が圧接し、上蓋202(302)と上基枠204(304)と下基枠205(305)と下蓋203(303)が合成樹脂で形成されていることから上記微小突起が上記圧接により潰されて防水構造を有することになる。
また、上記微小突起を超音波振動による発熱により融着させてもよい。
以上の場合、注液ポート208(308)の注入開口部208b(308b)と注液ポート枠220(320)の上部外周壁面、注液ポート枠220(320)の内壁面と注液ポートパッキン221(321)の外周壁面、チューブ211(311)右端の露出チューブ部211b(311b)の外周面と上蓋202(302)及び上基枠204(304)の右側壁に設けられたチューブ露出開口223(323)の内周壁面には、前述の紫外線硬化型接着剤で接着させることが好ましい。
例えば、上蓋202(302)と上基枠204(304)との外周側の当接面、上基枠204(304)と下基枠205(305)との外周側の当接面、下基枠205(305)と下蓋203(303)との当接面、注液ポート208(308)の注入開口部208b(308b)と注液ポート枠220(320)の上部外周の当接面、チューブ211(311)右端の露出チューブ部211b(311b)の外周面と上蓋202(302)及び上基枠204(304)の右側壁に設けられたチューブ露出開口223(323)の内周壁面には、合成ゴムからなる防水パッキン配置溝を円周に形成し、その配置溝に防水パッキンを挿入してから組み立て、前述の外装ケース固定ネジ213(313)をねじ込むと、各防水パッキンが弾圧されるから、防水構造が得られることになる。
上記薬液供給装置201(薬液供給装置301を含む)において、前述した材質と厚さを有するリザーバー209に注液ポート208を介して上述した様に薬液が供給された際とマイクロポンプ212により排出された際は、リザーバー209が膨張と収縮を行って外形形状が変化するように設定されている。
例えば、リザーバー209に薬液が充満されている場合は、リザーバー209が膨張して膨張外形形状を呈し、図12、図13、図14などのような平面視形状、側面視形状となる。その後、マイクロポンプ212により薬液が排出されてゆくと、リザーバー209が徐々に収縮して行き、その外形形状も収縮外形形状を呈する。
仮に、マイクロポンプ212によりリザーバー209から薬液が排出されてもリザーバー209の外形形状が変形しない様に設定されている場合は、リザーバー209内に、排出された薬液の体積分の空間部が構成されることになる。その空間部はほぼ真空状態となる。この後マイクロポンプ212による薬液の供給動作が継続されてゆくと、薬液は排出しにくくなり、薬液供給の制御(供給量、供給速度等)がしにくくなる。それは、マイクロポンプ212の薬液供給力に対してリザーバー209内の上述した空間部の真空状態による反作用力が作用するからである。従って、リザーバー209から薬液が排出されるほど、上述の反作用力が大きくなり、薬液供給の制御がしにくくなる。
図36はリザーバー209が収縮できるように構成されている変形例を示している。
図36は、図14とほぼ同方向からみた断面図である。図14に対してリザーバー209及び電池210の左右方向を省略せずに図示している。
図36において、リザーバー209は、図14の場合と同様に構成されており、その材質、厚さも図14とほぼ同様である。
図36の図示では、リザーバー209からマイクロポンプ212により薬液がほとんど排出されていることから、リザーバー209の上側壁209dは、実線表示の垂下り位置209eまで垂下がる。この垂下り位置209eは、リザーバー209の下方壁209fにほとんど接する位置まで垂下っている。この状態の薬液は、マイクロポンプ212により排出されリザーバー209内にわずかしか存在しない状態となっている。
この変形上蓋部230は、リザーバー209と同じ材質であり、具体的には耐薬品性と弾性と強強度とガスバリア性に優れ、且つゴム硬度25度〜40度程度の硬度を有するオレフィン系、塩化ビニール系、シリコン系の合成樹脂であり、その厚さは、0.2mmに構成されている。
上記変形上蓋部230には、外周の外周厚肉部230aの外周面230bが上蓋202の開口の内周面に接着剤により接合されるか、あるいは熱融合により接合されて、防水性が確保されている。上記変形上蓋部230の平面視でほぼ中央は、中央側薄肉部230cとなっている。
なお、上述した上蓋202に設けられた弾性変形可能な変形上蓋部230の構成に限定されることはなく、リザーバー209内の薬液が排出される際のリザーバー209内の圧力低下に相応して薬液供給装置201の外装ケース部が内方に弾性変形する構造ならばどのようであってもよい。例えば、上蓋202内方であってリザーバー209の外方空間に連通するように、薬液供給装置201の外装ケース部に外部と連通する開口部を設けるようにしてもよい。例えば、図13、図14の上蓋202において、リザーバー209の平面視で重なる位置に小孔を設けるようにする。なおこの小孔は、下蓋203のリザーバー209と平面視で重なる位置に設けるようにしてもよい。
なお、前記リザーバー209は、注液ポート208を介して上述の様に薬液が供給された際とマイクロポンプ212により排出された際において、リザーバー209の外形形状がほとんど変化しないように設定されていてもよい。その場合のリザーバー209の材質は、弾性変形しにくいものが選定される。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示し、且つ、説明しているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲に逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、材質、組み合わせ、その他の詳細な構成、及び製造工程間の加工方法において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質、製造工程などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものでないから、それらの形状、材質、組み合わせなどの限定の一部もしくは全部の限定をはずした部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
従って、前述の実施形態によれば、小型化、薄型化を実現し、生体内に装着可能な防水性と、薬液の追加注入が任意のタイミングで行うことができ、薬液等の微量な流体を連続的、継続的に流動でき、且つ、安全性が高い流体輸送装置を提供することができる。
また、前述した実施形態では、平面視で略長方形状の外形形状に形成されているが、これに限定するものはなく、平面視で正方形、円形、楕円形、長円形、半円形であってもよく、さらには球形等であってもよい。
いずれの外形形状が適用されるかは、使用される場所、状況等によって選択され、例えば皮下に埋め込むタイプでは、埋め込んだ際に生体に違和感を与えない(影響を与えない)外形形状が選択される。
また、様々な機械装置において、装置内、または装置外に搭載し、水や食塩水、薬液、油類、芳香液、インク、気体等の流体の輸送に利用することができる。さらに、流体輸送装置単独で、前記流体の流動、供給に利用することができる。
また、本発明の薬液供給装置201、301は、上述したような実験動物の皮下に埋め込んで薬液の動物事件に用いることが出来る。その薬液は、医療用の新薬開発のためであったり、小動物の栄養剤の開発のためであったり、その用途には限定されるものではない。
また、本発明の薬液供給装置201、301は、実験動物に埋め込むための装置に限定されず、人体の皮下に埋め込む用途にも適用され、例えば医療用の治療薬液であったり、栄養液であったりし、例えば血管に、あるいは筋肉に注入されるものでもよい。
Claims (15)
- 皮下に埋め込んで使用される流体輸送装置であって、
外装ケースと、
前記外装ケースの外部に露出して外部から流体を注入し得る注入開口部を備えたポートと、
前記ポートから注入される流体を貯蔵するリザーバーと、
前記リザーバーに連通して流体を導通させる流体導通部と、
前記流体導通部を介して前記流体を外部に供給するマイクロポンプと、
前記マイクロポンプに動力を供給する電源と、を備え、
前記外装ケースは、皮下に埋め込まれた際に皮膚側に対応させる皮膚側対応面を有し、
前記ポートは、前記皮膚側対応面に配設され、
前記外装ケースの幅狭方向の中央に前記リザーバーの薬液貯蔵部が配置され、前記幅狭方向の一端側に前記ポートからの薬液供給口が配置され、前記幅狭方向の他端側に前記リザーバーからの薬液排出口が配置されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1に記載の流体輸送装置において、
前記リザーバーと前記マイクロポンプとは、平面視で互いに離れて配置されており、
前記ポートは、平面視で前記リザーバーと前記マイクロポンプの間に配置されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1または請求項2に記載の流体輸送装置において、
前記ポートは、前記外装ケースから突出形成された突出部を備え、この突出部に前記注入開口部が形成されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流体輸送装置において、
前記電源は、平面視で前記リザーバーと重なり、断面視において前記リザーバーを挟んで前記ポートとは反対側に配置されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流体輸送装置において、
前記ポートは、平面視で前記電源と重ならない位置に配置されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の流体輸送装置において、
前記マイクロポンプの動作を制御するICと、前記ICを実装する回路基板と、前記ICに前記マイクロポンプの動作を制御する制御プログラムを供給し得るように前記外装ケースに露出配置された信号供給ポートとを、さらに備えたことを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の流体輸送装置において、
前記外装ケースには、設置対象に取り付けるための取付部が形成されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1に記載の流体輸送装置において、
前記外装ケースは、前記皮膚側対応面から前記皮膚側対応面とは反対側の裏面に向かう外壁の少なくとも一部に傾斜面を備えることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項8に記載の流体輸送装置において、
前記外装ケースは、前記皮膚側対応面から前記裏面に向かう外壁に把持用垂直面を備えることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項8または請求項9に記載の流体輸送装置において、
前記傾斜面は、前記外装ケースにおける幅広方向の一方端での幅狭方向に形成されている幅狭側外壁、および前記幅広方向の他方端での幅狭方向に形成されている幅狭側外壁を、外装ケースにおける前記裏面から前記皮膚側対応面に向かうに従って前記幅広方向での幅が狭くなるように傾斜させて形成されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の流体輸送装置において、
前記傾斜面は、前記外装ケースにおける幅狭方向の一方端での幅広方向に形成されている幅広側外壁、および前記幅狭方向の他方端での幅広方向に形成されている幅広側外壁を、外装ケースにおける前記裏面から前記皮膚側対応面に向かうに従って前記幅狭方向での幅が狭くなるように傾斜させて形成されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1に記載の流体輸送装置において、
前記外装ケースは、幅広方向に沿って凸状面に形成された前記皮膚側対応面と、前記幅広方向に沿って凹状面に形成された前記皮膚側対応面の裏面とのうち、少なくとも一方を備えることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1または請求項12に記載の流体輸送装置において、
前記外装ケースは、幅狭方向に沿って凸状面に形成された前記皮膚側対応面と、前記幅狭方向に沿って凹状面に形成された前記皮膚側対応面の裏面とのうち、少なくとも一方を備えることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1に記載の流体輸送装置において、
前記外装ケースの前記皮膚側対応面側に前記薬液供給口が配置され、前記皮膚側対応面とは反対側に前記薬液排出口が配置されていることを特徴とする流体輸送装置。 - 請求項1に記載の流体輸送装置において、
前記外装ケースの長手方向に沿って前記リザーバーおよび前記電源、前記ポート、前記マイクロポンプが順次配置され、前記ポートが前記外装ケースの幅狭方向の中央に配置されていることを特徴とする流体輸送装置。
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