JP5530699B2 - 皮革様シート状積層体 - Google Patents

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本発明は、加熱成型により鞄、ランドセル、ケース類等を成型することができる皮革様シート状積層体に関するものである。
従来、鞄、ランドセル等には、天然皮革や人工皮革が使用されているが、その製造には、素材の複合化や成型のために複雑な工程を要し、さらに、製品は型崩れ防止用板等の使用により重量が重い物であった。
例えば、アタッシュケース等のケース類等については、ハードタイプではABS樹脂シート、ソフトタイプではペフ(ポリオレフィン系発泡体)等を成型し裏張りを実施しているが、重量が重くなったり、外観が劣ったものとなったりする。
また、普通のポリエステル繊維に低融点のポリエステル繊維を混ぜ、これを加熱処理して低融点のポリエステル繊維を溶融させた後、押し固めてなる中芯に、合成皮革その他適宜材料を組合せ、次いで熱成型する方法が知られている(特許文献1等参照)。
特開平2−41227号公報
特許文献1に記載の発明は、熱融着繊維を混合した不織布を予め加熱した後、熱成型しているが、成型時の伸展が不十分であり、また得られる芯材はその厚みが厚くなり、重量も重くなっていた。
本発明の目的は、これらの欠陥を解消し、薄くて軽量であり、強度が高く、熱成型性に優れた皮革様シート状積層体を提供することにある。また、本発明の目的は、良好な外観を有し、剛性に優れた成型体を製造し得る皮革様シート状積層体を提供することにある。
上記の目的は、芯部樹脂融点と鞘部樹脂融点との差が30℃以上であり、芯部樹脂融点が230℃以下であり、鞘部樹脂融点が260℃以上である芯鞘構造繊維からなる織編物と、表皮材とを接着剤層を介して積層した皮革様シート状積層体によって達成される。
また、本発明は、芯部樹脂がイソフタル酸共重合ポリエステルであり、鞘部樹脂がホモポリエチレンテレフタレートであることが好適である。
本発明により、薄くて軽量であり、強度が高く、熱成型性に優れた皮革様シート状積層体が提供される。また、本発明の皮革様シート状積層体を成型した成型体は、良好な外観を有し、耐久性、保型性に優れたものである。
本発明の皮革様シート状積層体は、鞄、ランドセル、ケース類等の他、靴、クッション,ソファー等の家具類、自動車内装材、トレイ等に好適に使用される。
本発明で使用する芯鞘構造繊維は、芯部樹脂融点と鞘部樹脂融点との差が30℃以上あることが必要である。ここで、芯部又は鞘部に非晶性樹脂を使用する場合は、融点ではなく軟化点を採用する。
尚、融点とは結晶性を有する熱可塑性樹脂のDSC測定における結晶融解温度を意味し、軟化点とは繊維を構成する樹脂が軟化し始める温度を意味する。
本発明においては、融点は、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定するものである。一方、軟化点は、JIS K7196法の「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に従って測定するものである。
また、本発明で使用する芯鞘構造繊維は、例えば、芯部樹脂が230℃以下の樹脂融点を有する樹脂、例えば低融点ポリエステル、鞘部樹脂が260℃以上の樹脂融点を有する樹脂、例えばホモポリエチレンテレフタレートからなるものであってもよい。低融点ポリエステルとしては、例えば、イソフタル酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを使用する。また、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を15〜40モル%共重合した共重合ポリエステルは非晶性となり、そのため軟化点は130〜230℃となる。
また、部樹脂はホモポリエチレンテレフタレートではなく、10モル%以下のイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いてもよい。
このような、芯部に鞘部より低融点の樹脂を用いた芯鞘構造繊維を使用すると、相対的に柔らかい皮革様シート状積層体が得られる。
芯鞘部樹脂の複合比(容積比)は20:1〜3:1であることが好ましい。芯部の容積が大きいと芯鞘構造が保持できないことがあり、また、鞘部の容積が大きいと成型性が悪くなることがある。
本発明で使用する芯鞘構造繊維の繊度は30〜330dtexが好ましい。30dtex未満であると強度が低くなる傾向にあり、330dtexを超えると成型性が悪くなる傾向にある。より好ましくは50〜300dtexである。また、芯鞘構造繊維の構成本数は適宜設定すればよい。
本発明で使用する芯鞘構造繊維は、通常の紡糸装置で製造することが可能である。
また、本発明で使用する芯鞘構造繊維は、偏心していないことが好ましく、また、芯部が2つ以上あってもよいし、芯部の一部が繊維表面に露出していてもよい。
また、本発明で使用する芯鞘構造繊維は、上記樹脂の組み合わせの他、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を適宜組み合わせたものとしてもよい。
上記のような芯鞘構造繊維からなる織物は、通常の織機を使用して製織すればよく、織組織は適宜設定すればよく、好ましくは平織がよい。また、芯鞘構造繊維の混合比率は40%以上とすることが好ましい。混合比率が40%未満であると、成型体にした場合の保持性が悪くなる傾向にある傾向にある。
上記芯鞘構造繊維と共に用いる繊維は、天然繊維でも合成繊維でもよい。
また、上記芯鞘構造繊維からなる編物は、通常の編機を使用して製編すればよく、タテ編でも丸編でもよい。
また、芯鞘構造繊維の混合比率は40%以上とすることが好ましい。混合比率が40%未満であると、成型体にした場合の保持性が悪くなる傾向にある傾向にある。
本発明は、上記のような融点差のある樹脂からなる芯鞘構造繊維を用いることにより、強度を維持しながら、成型性に優れる皮革様シート状積層体を得ることができる。また、本発明は、上記のような芯鞘構造繊維からなる織編物を用いることにより、皮革様シート状積層体を均一に成型できるものであり、成型後の成型体の歪みが少ないものである。
本発明の皮革様シート状積層体を構成する接着剤は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を任意に使用することができるが、好ましくはポリウレタン系樹脂、特に好ましくはポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が適している。
接着剤層の厚みは接着性及び風合いの観点から10〜250μmであることが好ましい。10μmより少ないと十分な接着性が得られない傾向にあり、250μmを超えると風合いが硬く、鋭角な曲線を有する成型品を得ることが困難となる傾向にある。
接着用樹脂の固形分及び粘度は製造可能な条件であればいかなるものでもよい。
本発明の皮革様シート状積層体を構成する表皮材に使用する樹脂としては、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド等が挙げられ、中でもポリウレタンが好ましい。このポリウレタンは、例えば、分子量500〜6000の低融点ポリオール、有機ジイソシアネート及び分子量500以下の鎖伸長剤から得られる。ポリオールとしては、分子量が500〜5000の脂肪族系のポリカーボネートジオールが好ましい。有機ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水酸化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2.6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサンチレンジイソシアネート等が挙げられる。分子量500以下の鎖伸長剤としては、例えばグリコール、アミノアルコール或いはトリオール等が挙げられる。
表皮材を得るための製造方法は、特に限定されるものではなく、ロールコーター、ナイフオーバーコーター等を用いて行なうことができる。塗布の回数を複数回とし、積層することも可能である。上記樹脂を溶解するために使用する有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルスルホキシド、メチルエチルケトンジオキサン、シクロヘキサン、トルエン等およびそれら2種類以上の混合物が挙げられる。
本発明に使用する表皮材の厚みは、10〜200μmが好ましくは、より好ましくは15〜150μmである。10μm未満では穴空きの問題が発生する可能性があり、200μmを超えると表皮が硬くなりすぎる傾向にある。
本発明に用いる基材、接着剤、表皮材には樹脂に通常使用されている各種添加剤が含有されてもよい。かかる添加剤は、例えば、増粘剤、硬化剤、架橋剤、顔料、光沢付与剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、難燃剤、制電剤等がある。
本発明の皮革様シート状積層体は、強度が120〜300N/3cm、伸度が10〜80%であることが好適である。強度が120N/3cmより低いと実用性に乏しくなる傾向にあり、300N/3cmより大きいと硬くなり成型性に問題が生じる傾向にある。また、伸度については、10%より低いと成型性に問題が生じる傾向にあり、80%を超えると織編組織を壊すことがある。
また、本発明の皮革様シート状積層体は、その厚みを約0.3〜1.0mmとすることができる。皮革様シート状積層体が薄すぎると強度が低くなり、実用上問題が生じることがあり、一方、厚すぎると、成型性が悪くなる傾向にある。
本発明の皮革様シート状積層は、例えば、離型紙上に形成された表皮材に接着剤を塗布し、その上に基材である織編物を重ね合わせて積層し、ローラーで圧着した後、加熱処理し、離型紙を剥すことにより得られる。
本発明の皮革様シート状積層体の熱成型は、高周波加熱、電熱加熱またはスチーム加熱と真空成型、圧空成型または熱板成型とを組み合わせた方法等により所望の製品形状に賦型または賦型・接合を行う。温度と圧力等の成型条件は、皮革様シート状積層体の構成材料、厚み、賦型形状によって適宜設定すればよい。
本発明の皮革様シート状積層体は、成型時に伸展が十分であり、鋭角な曲線を有する成型も可能であり、また、シワができにくく、成型性に優れたものである。また、表皮材に使用されている樹脂の融点より低い温度で成型することも可能なので、成型加工により表皮材表面が損傷することがない。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。なお、実施例における評価は下記に示す方法により測定を実施した。
強度及び伸度:基布は、JIS L1906に準拠して測定した。幅25mm、長さ200mmの試験片を採取し、引張試験機(オリエンテック製)を用いて、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/minで伸長させ、試験片が破断した時の強度(25mm幅)及び伸度を測定した。
また、皮革様シート状積層体は、JIS K6772に準拠して測定した。幅30mm及び長さ250mmの試験片を採取し、試験片の中央部に距離100mmの標線を付ける。試験片を引張試験機に取り付け、つかみ間隔150mmで引張速度200m/minで引っ張り、最大荷重及び試験片の被膜又は基布のいずれかが切断したときの標線間距離を測定し、強度(30mm幅)及び伸度を測定した。
厚み:JIS L−1098に準じて測定した。測定器:定圧厚さ測定器 TYPE PF−11(ラフロック社製)。
成型性:金型をセットしてオーブンの温度を素材別に適正な温度条件に設定し、2分間熱した後、室温にて1時間放置した。その後、成型性を目視にてシワの発生有無、コーナー部分の形状乱れを評価した。
成型保持性:成型後室温にて24時間放置し、型崩れがしていないか確認した。
(実施例
経糸として、レギュラーポリエステル繊維(56dtex/24f、強度4.5cN/dtex、伸度3.5%)を用い、緯糸としてイソフタル酸共重合ポリエステル(イソフタル酸比率20モル%)(軟化点185℃)を芯部に、ホモポリエステル(融点260℃)を鞘部に用いた芯鞘の複合比が1:1である芯鞘構造繊維(56dtex/24fで、強度4.3cN/dtex、伸度38%)を用いて、経糸密度103本/インチ(2.54cm)、緯糸密度100本/インチ(2.54cm)、幅123cmのタフタを製織した。ピンテンター型のヒートセッターを用いて160℃で1分処理して幅123cmに仕上げた。このタフタの厚みは0.09mm、強度は255N/2.5cm、伸度は46%であった。
続いて、離型紙に粘着した厚さ30μmの乾式ポリカーボネート系ポリウレタンフィルムからなる表皮材の上に、C−4010(DIC株式会社製)100重量部、コロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製)8重量部、アクセルS(DIC株式会社製)5重量部、溶剤(メチルエチルケトン/トルエン)40重量部(20/20重量部)からなるウレタン系接着剤を85g/m 塗布し、次いで、80℃で連続乾燥して溶剤を除去し、次いで前記の織物を重ね合わせ、圧着ローラーでニップして接着剤を適度に織物に押し込んだ後、60℃で24時間熱処理し、最後に離型紙を剥がして皮革様シート状積層体を得た。
(比較例1)
56dtex/24fのレギュラーポリエステル繊維100%使いのタフタを用いる他は、実施例1と同様にして皮革様シート状積層体を得た。
実施例1及び比較例1の皮革様シート状積層体の強度、伸度及び厚みを測定した。その結果を表1に合わせて示す。
また、実施例1及び比較例1の皮革様シート状積層体の成型性を表2の如く、また成型保持性を表3の如く確認した。
Figure 0005530699
Figure 0005530699
Figure 0005530699
実施例1の皮革様シート状積層体は成型性及び成型保持性が良好であった。しかし、比較例1の皮革様シート状積層体は、実施例と同様の成型温度では成型できなかった。

Claims (2)

  1. 芯部樹脂融点と鞘部樹脂融点との差が30℃以上であり、芯部樹脂融点が230℃以下であり、鞘部樹脂融点が260℃以上である芯鞘構造繊維からなる織編物と、表皮材とを接着層を介して積層した皮革様シート状積層体。
  2. 芯部樹脂がイソフタル酸共重合ポリエステルであり、鞘部樹脂がホモポリエチレンテレフタレートである請求項1記載の皮革様シート状積層体
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