以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明に係る印刷方法を実施するための印刷装置の構成の一例について説明する。図1は、本発明に係る印刷方法を実施するための印刷装置10全体の斜視図である。また、図2は印刷装置10の一部を拡大して示す斜視図である。さらに、図3および図4は、それぞれ印刷装置10の要部構成を示す側面図および平面図である。図1および以降の各図においては、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を必要に応じて付している。
印刷装置10においては、版胴14の外周面に装着された印刷版17によって有機ELの発光材料が基板(ガラス基板)Wに転写されて有機EL素子のパターン形成が行われる。印刷装置10は、主たる構成として、基台20、スリットノズル11、塗布液供給ローラ12、版胴14、ステージ22、版側カメラ52および基板側カメラ53を備える。また、印刷装置10は、装置の各動作機構を制御して印刷処理を実行させる制御部90を備える(図3参照)。
図1に示すように、基台20上には、一対の直動ガイド32と、これらの直動ガイド32の間に配設されたリニアモータ31とが配設されている。これらの直動ガイド32およびリニアモータ31は、その長手方向が版胴14の回転軸と垂直な方向(Y方向)に沿うように配設されている。直動ガイド32およびリニアモータ31にはアライメントテーブル51が連結されており、アライメントテーブル51上にステージ22が配設されている。このため、アライメントテーブル51は、リニアモータ31の駆動を受けてステージ22とともに版胴14の回転軸と垂直な方向(Y方向)に沿って直線移動する。また、アライメントテーブル51には、ステージ22の位置調整を行う位置調整機構55が内蔵されている(図5参照)。位置調整機構55は、ステージ22をアライメントテーブル51に対してX方向およびY方向にスライド移動させるとともに、θ方向に回転移動させる。
基台20の左右側面には支持側板24が固設されている。支持側板24には一対のガイド部材25が鉛直方向(Z方向)に沿って配設されている。昇降テーブル21は、これら計4本のガイド部材25に案内されて昇降可能とされている。また、昇降テーブル21には、スリットノズル11、塗布液供給ローラ12、版胴14、版側カメラ52および基板側カメラ53が搭載されている。これらの要素は昇降モータ26の駆動によって昇降テーブル21とともに一体的に昇降する。
版胴14は、円筒形状を有するローラであり、X方向に沿って延設された回転軸を中心に回転可能に配置されている。版胴14は、モータ15によって回転軸を中心として回転される。版胴14は、図3の紙面上で時計回りおよび反時計回りのいずれの方向にも回転可能であるが、印刷処理時にはモータ15によって時計回りに回転する。版胴14の外周面には、ポリエステル系樹脂製の印刷版17(本実施形態では凸版)が装着される。印刷版17の両端は図示を省略するクランプ機構によって版胴14の外周面上に固定される。
版胴14と平行に(つまりX方向に沿って)塗布液供給ローラ12が配置されている。塗布液供給ローラ12の上方にはスリットノズル11が設けられている。スリットノズル11は、塗布液供給ローラ12の回転軸方向(X方向)に延びるスリットを有して塗布液供給ローラ12の表面に塗布液として有機ELの高分子発光材料を吐出する。スリットノズル11と塗布液供給ローラ12の表面との間隔、および塗布液供給ローラ12の表面と版胴14上の印刷版17の表面との間隔は、図示しない調整機構により調整される。
印刷装置10においては、スリットノズル11から回転する塗布液供給ローラ12の表面に塗布液が供給され、塗布液供給ローラ12の表面に塗布液の薄膜が形成される。そして、塗布液供給ローラ12および版胴14の双方が回転することによって、塗布液供給ローラ12から版胴14に装着された印刷版17のパターンに塗布液が転写され、塗布液のパターンが形成される。さらに、ステージ22に載置した基板Wをアライメントテーブル51とともにY方向に沿って一定速度で直線移動させつつ、版胴14を回転させ、塗布液を載せた印刷版17を基板Wに当接させることによって塗布液のパターンが印刷版17から基板Wに転写される。
図1,図3および図4に示すように、版胴14と対向する位置には、印刷版17に形成されたアライメントマーク(版側マーク)の位置を測定するための一対の版側カメラ52が版胴14の回転軸方向に沿って配設されている。版側カメラ52は、例えばCCDカメラを用いて構成される。一対の版側カメラ52は図示を省略する機構によってX方向に沿って移動可能とされており、双方の間隔は調整可能とされている。
また、図2,図3および図4に示すように、ステージ22と対向する位置には、基板Wに形成されたアライメントマーク(基板側マーク)の位置を測定するための一対の基板側カメラ53がステージ22の幅方向(X方向)に沿って配設されている。基板側カメラ53は、例えばCCDカメラを用いて構成される。後に詳述するように、これら基板側カメラ53は、基板Wの表面に転写された版側マークの位置を測定するためにも用いられる。版側カメラ52と同様に、一対の基板側カメラ53は図示を省略する機構によってX方向に沿って移動可能とされており、双方の間隔は調整可能とされている。
図5は、制御部90のハードウェア構成を示す図である。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行うCPU91、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM92、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM93および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク94をバスライン99に接続して構成されている。
また、バスライン99には、版胴14を回転させるモータ15、昇降テーブル21を昇降させる昇降モータ26、ステージ22を直動移動させるリニアモータ31、ステージ22の位置調整を行う位置調整機構55、版側カメラ52および基板側カメラ53等の要素が電気的に接続されている。さらに、バスライン99には、種々の情報を表示するためのディスプレイ、コマンドやパラメータ等の入力を受け付けるキーボード、DVD等の記録媒体を読み取るディスクドライブを接続するようにしても良い。
上記の構成以外にも印刷装置10は、版胴14および塗布液供給ローラ12をそれぞれ洗浄する洗浄機構、並びに、スリットノズル11と塗布液供給ローラ12との距離、塗布液供給ローラ12と印刷版17との距離および印刷版17と基板Wとの距離をそれぞれ調整する機構等を備えている。
次に、上述の構成を有する印刷装置10における処理動作について説明する。図6および図7は、印刷装置10における処理手順を示すフローチャートである。まず、印刷装置10のオペレータが版胴14の外周面に印刷版17を装着する(ステップS1)。そして、ステージ22に調整用基板AWを載置する(ステップS2)。調整用基板AWとは、以下に述べるステージ22の位置調整に使用するための基板である。なお、ステップS1とステップS2とは順序が逆であっても良い。
次に、版側カメラ52によって印刷版17の版側マークを撮像する(ステップS3)。図8は、印刷版17の平面図である。本実施形態における印刷版17は、有機EL素子のパターン形成を行うためのポリエステル系樹脂製の凸版であり、その表面にはストライプ(縞状)のパターン領域PAが形成されている。パターン領域PAのストライプ形成方向(図8のパターン領域PAの長手方向)が版胴14の回転方向に沿うように印刷版17は版胴14に装着される。また、印刷版17の四隅にはパターン領域PAとは別に十字形状の版側マークPMが形成されている。
ステップS3では、これら4箇所の版側マークPMを一対の版側カメラ52によって撮像する。具体的には、まず、図8の印刷版17の上側2箇所の版側マークPMが版側カメラ52の視野内に入る位置まで版胴14を手動または制御部90の制御により回転させ、当該2箇所の版側マークPMを版側カメラ52によって撮像する。版側カメラ52によって撮像された画像は制御部90に伝送される。そして、制御部90は、2つの版側カメラ52の撮像画像に画像処理を行って版側マークPMの中心位置を測定して記憶するとともに、上側2箇所の版側マークPMを撮像したときの版胴14の回転角度位置を記憶する。版胴14の回転角度位置は、例えば図示省略のロータリーエンコーダによって測定すれば良い。なお、一対の版側カメラ52の設置間隔は版側マークPMの幅方向(X方向)間隔に合わせて予め調整されている。
続いて、図8の印刷版17の下側2箇所の版側マークPMが版側カメラ52の視野内に入る位置まで版胴14を手動または制御部90の制御により回転させ、当該2箇所の版側マークPMを版側カメラ52によって撮像する。版側カメラ52によって撮像された画像は制御部90に伝送される。そして、上記と同様に、制御部90は、2つの版側カメラ52の撮像画像に画像処理を行って版側マークPMの中心位置を測定して記憶するとともに、下側2箇所の版側マークPMを撮像したときの版胴14の回転角度位置を記憶する。なお、上側2箇所の版側マークPMと下側2箇所の版側マークPMとの測定順序は上記と逆であっても良い。
次に、基板側カメラ53によって調整用基板AWの基板側マークを撮像する(ステップS4)。図9は、調整用基板AWの平面図である。調整用基板AWは、専らステージ22の位置調整に使用する基板であるが、通常の処理対象となる基板と同様に、その表面には被印刷領域BAが形成されている。被印刷領域BAには、画素と画素との間を仕切る隔壁(バンク)が縞状に形設されている。被印刷領域BAにおけるバンクの形成方向(図9の被印刷領域BAの長手方向)がステージ22の直線移動方向(Y方向)に沿うように調整用基板AWはステージ22に載置される。また、調整用基板AWの四隅には被印刷領域BAとは別に十字形状の基板側マークWMが形成されている。
ステップS4では、これら4箇所の基板側マークWMを一対の基板側カメラ53によって撮像する。具体的には、まず、図9の調整用基板AWの上側2箇所の基板側マークWMが基板側カメラ53の視野内に入る位置までステージ22を手動または制御部90の制御によりY方向に沿って移動させ、当該2箇所の基板側マークWMを基板側カメラ53によって撮像する。基板側カメラ53によって撮像された画像は制御部90に伝送される。そして、制御部90は、2つの基板側カメラ53の撮像画像に画像処理を行って基板側マークWMの中心位置を測定して記憶するとともに、上側2箇所の基板側マークWMを撮像したときのステージ22の位置を記憶する。ステージ22の位置は、例えば図示省略のリニアエンコーダによって測定すれば良い。なお、一対の基板側カメラ53の設置間隔は基板側マークWMのX方向間隔に合わせて予め調整されている。
続いて、図9の調整用基板AWの下側2箇所の基板側マークWMが基板側カメラ53の視野内に入る位置までステージ22を手動または制御部90の制御によりY方向に沿って移動させ、当該2箇所の基板側マークWMを基板側カメラ53によって撮像する。基板側カメラ53によって撮像された画像は制御部90に伝送される。そして、上記と同様に、制御部90は、2つの基板側カメラ53の撮像画像に画像処理を行って基板側マークWMの中心位置を測定して記憶するとともに、下側2箇所の基板側マークWMを撮像したときのステージ22の位置を記憶する。なお、上側2箇所の基板側マークWMと下側2箇所の基板側マークWMとの測定順序は上記と逆であっても良い。また、ステップS3とステップS4とは順序が逆であっても良いし、同時期に実行するようにしても良い。
次に、印刷版17の版側マークPMと調整用基板AWの基板側マークWMとが印刷時に一致するようにステージ22の位置調整を行う(ステップS5)。より詳細には、印刷版17に塗布液を載せて調整用基板AWに印刷を行ったとしたときに、版側マークPMと基板側マークWMとが一致するようにステージ22の位置調整を行う。上記のステップS3にて、印刷版17の四隅に形成された版側マークPMの撮像画像中における中心位置とそれらを撮像したときの版胴14の回転角度位置が取得されている。また、ステップS4では、調整用基板AWの四隅に形成された基板側マークWMの撮像画像中における中心位置とそれらを撮像したときのステージ22の位置(Y方向位置)が取得されている。制御部90は、これらのデータに基づいて、ステージ22をY方向に沿って直線移動させつつ版胴14を回転させて印刷版17から調整用基板AWに塗布液を転写したと仮定したときの、版側マークPMと基板側マークWMとのずれ量を算定する。そして、そのずれ量がゼロとなるように、すなわち版側マークPMと基板側マークWMとが一致するようにステージ22の位置調整を行うのである。
図10は、ステップS5にて実行されるステージ22の予備位置調整を概念的に説明する図である。同図においては、版側マークPMと基板側マークWMと区別する便宜上、版側マークPMを十字印にて示し、基板側マークWMを丸印にて示している。ステップS3での版側マークPMの撮像およびステップS4での基板側マークWMの撮像によって取得されたデータに基づいて、印刷版17から調整用基板AWにそのまま位置調整を行うことなく塗布液を転写したと仮定したときの印刷結果を図10(a)に示す。図10(a)に示すように、位置調整を行うことなく印刷を実行すると版側マークPMと基板側マークWMとにずれが生じる。制御部90はこのずれ量を算定する。
印刷版17の版側マークPMと調整用基板AWの基板側マークWMとは相互に対応する位置に形成されている。すなわち、印刷版17と調整用基板AWとの相対位置関係にずれが生じていなければ、4つの版側マークPMと4つの基板側マークWMとは完全に一致する。よって、版側マークPMと基板側マークWMとにずれが生じていることは、パターン領域PAと被印刷領域BAとの間にも位置ずれが生じていることを示している。このため、図10(a)における版側マークPMと基板側マークWMとのずれ量がゼロとなるように、ステージ22の位置調整を行う。具体的には、アライメントテーブル51に設けられた位置調整機構55によってステージ22をX方向およびY方向にスライド移動させ、図10(b)に示すように版側マークPMと基板側マークWMとのずれ量をゼロとする。なお、ステージ22の位置調整は、算定したずれ量に基づいて制御部90が位置調整機構55を制御して行うようにしても良いし、位置調整機構55を手動で操作して行うようにしても良い。
ステージ22の予備位置調整が完了した後、印刷版17から調整用基板AWへのダミー印刷を実行する(ステップS6)。すなわち、版胴14に装着された印刷版17に塗布液供給ローラ12から塗布液を供給し、ステージ22に載置した調整用基板AWをY方向に沿って直線移動させつつ版胴14を回転させて印刷版17を調整用基板AWに当接させることによって塗布液の転写を行う。図8に示すように、印刷版17にはパターン領域PAおよび4つの版側マークPMが形成されているため、これらが印刷結果として調整用基板AWに転写されることとなる。
ここで、ダミー印刷を実行する段階においては、既にステージ22の予備位置調整(ステップS5)が完了しており、印刷版17と調整用基板AWとの相対的な位置ずれは解消されている。このため、ダミー印刷を実行すれば、版側マークPMが基板側マークWMに一致するように転写されるとともに、パターン領域PAが被印刷領域BAに合わせて正確に転写されるはずである。
しかしながら、これは印刷版17が硬質の素材(例えば、金属材料)にて形成されていて通常の印圧程度では印刷版17に変形が生じないことを前提としている。すなわち、印刷版17が変形しなければ、印刷版17と調整用基板AWとの相対的な位置ずれを解消しさえすれば印刷ずれを防止することができる。ところが、上述したように、塗布液として有機ELの発光材料を用いる本実施形態の印刷版17はポリエステル系の樹脂にて形成されており、印刷時に印圧によって比較的容易に印刷版17の変形が発生する。印刷時に印刷版17の変形が発生すると、印刷版17と調整用基板AWとの相対的な位置ずれが解消されていたとしても印刷結果にはずれが生じるのである。
図11は、ダミー印刷の印刷結果の一例を示す図である。印刷時に印刷版17が変形した結果、長方形のパターン領域PAも変形して転写され、調整用基板AWに印刷されたパターン領域PPAは変形した四角形となっている。また、版側マークPMも位置がずれて転写され、調整用基板AWに印刷された版側マークPPMと基板側マークWMとは一致していない。もっとも、ダミー印刷の前に予め予備位置調整を行っているため、ダミー印刷結果が大きくずれる(例えば、印刷された版側マークPPMが調整用基板AWからはみ出る)ようなことは防止される。
次に、調整用基板AWに転写されたダミー印刷結果を一対の基板側カメラ53によって撮像する(ステップS7)。このときには、ダミー印刷終了後の4箇所の基板側マークWMおよびその周辺を一対の基板側カメラ53によって撮像する。具体的には、ステップS4と同様に、図11に示したダミー印刷終了後の調整用基板AWの上側2箇所の基板側マークWMを撮像した後、下側2箇所の基板側マークWMを撮像する。ダミー印刷の前に予備位置調整を行っているため、版側マークPPMは基板側マークWMの近傍に印刷されており、基板側マークWMを撮像する基板側カメラ53の視野内に版側マークPPMが収まっている。従って、基板側カメラ53によって基板側マークWMを撮像することによって、印刷された版側マークPPMをも同時に撮像することができる。なお、基板側マークWMと版側マークPPMとをより確実に同時に撮像できるようにするために、ステップS5にて予備位置調整を行う際に、基板側マークWMが基板側カメラ53の視野の中心に来るようにステージ22の位置を調整することが好ましい。
ステップS7にて基板側カメラ53によって撮像された画像は制御部90に伝送される。制御部90は、基板側カメラ53の撮像画像に画像処理を行って基板側マークWMおよび印刷された版側マークPPMの中心位置を測定して記憶する。そして、制御部90は、印刷された版側マークPPMの位置と基板側マークWMの位置とのずれ量を測定し、そのずれ量に基づいて印刷版17に対する調整用基板AWの位置調整補正量を算出する。
第1実施形態においては、制御部90は、位置調整補正量としてθ方向についての補正角度とX方向およびY方向についての補正スライド量とを算出する。まず、制御部90は、版側マークPPMの位置と基板側マークWMの位置とのずれ量からθ方向についての補正角度を算出する(ステップS8)。
図12は、補正角度の算出について説明するための図である。ステップS7にて、4つの基板側マークWMおよび4つの版側マークPPMのそれぞれの中心位置が測定されている。このため、調整用基板AWに印刷された4つの版側マークPPMによって版側四角形QDPが形成される。また、調整用基板AWの4つの基板側マークWMによって基板側四角形QDWが形成される。なお、版側四角形QDPおよび基板側四角形QDWは、実際に調整用基板AW上に描かれるものではなく、制御部90が4つの基板側マークWMおよび4つの版側マークPPMのそれぞれの中心位置から演算処理によって仮想的に形成するものである。
制御部90は、版側四角形QDPの四辺のそれぞれと、それに対応する基板側四角形QDWの辺とのなす角度を算出する。図12に示す例においては、制御部90は、版側四角形QDPの左辺と基板側四角形QDWの左辺とのなす角度θ1を算出する。同様に、制御部90は、版側四角形QDPの右辺と基板側四角形QDWの右辺とのなす角度θ2、版側四角形QDPの下辺と基板側四角形QDWの下辺とのなす角度θ3、版側四角形QDPの上辺と基板側四角形QDWの上辺とのなす角度θ4をそれぞれ算出する。
続いて、制御部90は、得られた4つの角度θ1,θ2,θ3,θ4の平均値、すなわち(θ1+θ2+θ3+θ4)/4を補正角度Δθとして算出する。この補正角度Δθは、ダミー印刷によって判明した印刷版17の変形角度に相当する値である。
次に、制御部90は、X方向およびY方向についての補正スライド量を算出する(ステップS9)。図13は、補正スライド量の算出について説明するための図である。制御部90は、ステップS8にて求められた補正角度Δθだけステージ22とともに調整用基板AWを仮想的に回転させて印刷版17の変形角度の補正を行う。なお、この段階においては、ステージ22を実際に回転させるのではなく、制御部90が演算処理によってステージ22を仮想的に回転させ、4つの基板側マークWMによって形成される基板側四角形QDWの回転補正後の位置を算出する。このような演算処理を実行するために、ステージ22の回転中心に対する調整用基板AWの4つの基板側マークWMの相対位置関係(座標・距離・角度)は予め設定して既知としておく。
図13には、上記のようにして補正角度Δθに従って回転補正した後の基板側四角形QDWを示している。印刷された4つの版側マークPPMによって形成される版側四角形QDPについては回転されることなくそのままである(つまり、図12と同じ位置である)。制御部90は、回転補正した後の4つの基板側マークWMのそれぞれと、それに対応する版側マークPPMとの変位を算出し、それらの平均値を補正スライド量として算出している。
第1実施形態においては、制御部90は、回転補正した後の4つの基板側マークWMのそれぞれと、それに対応する版側マークPPMとのステージ22の幅方向(X方向)に沿った変位およびステージ22の移動方向(Y方向)に沿った変位を算出する。図13に示す例においては、制御部90は、回転補正した後の左下の基板側マークWMと左下の版側マークPPMとのX方向に沿った変位x1およびY方向に沿った変位y1を算出する。同様に、制御部90は、回転補正した後の右下の基板側マークWMと右下の版側マークPPMとのX方向に沿った変位x2およびY方向に沿った変位y2、左上の基板側マークWMと左上の版側マークPPMとのX方向に沿った変位x3およびY方向に沿った変位y3、右上の基板側マークWMと右上の版側マークPPMとのX方向に沿った変位x4およびY方向に沿った変位y4、をそれぞれ算出する。
続いて、制御部90は、ステージ22の幅方向(X方向)について得られた4つの変位x1,x2,x3,x4の平均値、すなわち(x1+x2+x3+x4)/4を幅方向補正スライド量Δxとして算出する。また、制御部90は、ステージ22の移動方向(Y方向)について得られた4つの変位y1,y2,y3,y4の平均値、すなわち(y1+y2+y3+y4)/4を移動方向補正スライド量Δyとして算出する。これらの幅方向補正スライド量Δxおよび移動方向補正スライド量Δyは、補正角度Δθだけ回転させた調整用基板AWの被印刷領域BAを変形を考慮した印刷版17のパターン領域PAに位置合わせするための補正量である。
図14には、補正角度Δθに従って回転させるとともに、幅方向補正スライド量Δxおよび移動方向補正スライド量Δyに従ってスライド移動させた基板側四角形QDWを示している。なお、図14に示すのは、ステージ22に載置された調整用基板AWを補正角度Δθおよび補正スライド量(幅方向補正スライド量Δxおよび移動方向補正スライド量Δy)に従って仮想的に回転およびスライド移動させたものである。同図に示すように、補正角度Δθおよび補正スライド量Δx,Δyに従って基板側四角形QDWの位置調整を行うことにより、印刷版17の変形に起因した位置ずれを補正して調整用基板AWの基板側四角形QDWを印刷された版側マークPPMによって形成される版側四角形QDPと概ね一致させることができる。
以上のようにして、補正角度Δθおよび補正スライド量(幅方向補正スライド量Δxおよび移動方向補正スライド量Δy)を算出した後、ステージ22から調整用基板AWを取り外してパターン印刷処理の対象となる基板(処理対象基板)PWを載置する(ステップS10)。処理対象基板PWの表面にも被印刷領域BAおよび基板側マークWMが調整用基板AWと同じ位置に形成されている(図9参照)。すなわち、調整用基板AWと処理対象基板PWとは構成としては全く同じであり、複数の処理対象基板PWのうちの1枚を調整用基板AWとして使用すれば良い。なお、調整用基板AWと処理対象基板PWとを区別しない場合には、これらを総称して単に基板Wとする。
次に、基板側カメラ53によって処理対象基板PWの基板側マークWMを撮像する(ステップS11)。具体的には、ステップS4での撮像と同様に、処理対象基板PWの上側2箇所の基板側マークWMが基板側カメラ53の視野内に入る位置までステージ22を移動させ、当該2箇所の基板側マークWMを基板側カメラ53によって撮像する。基板側カメラ53によって撮像された画像は制御部90に伝送される。そして、制御部90は、2つの基板側カメラ53の撮像画像に画像処理を行って基板側マークWMの中心位置を測定して記憶するとともに、上側2箇所の基板側マークWMを撮像したときのステージ22の位置を記憶する。
続いて、処理対象基板PWの下側2箇所の基板側マークWMが基板側カメラ53の視野内に入る位置までステージ22を移動させ、当該2箇所の基板側マークWMを基板側カメラ53によって撮像する。基板側カメラ53によって撮像された画像は制御部90に伝送される。そして、上記と同様に、制御部90は、2つの基板側カメラ53の撮像画像に画像処理を行って基板側マークWMの中心位置を測定して記憶するとともに、下側2箇所の基板側マークWMを撮像したときのステージ22の位置を記憶する。
次に、印刷版17の版側マークPMと処理対象基板PWの基板側マークWMとが印刷時に一致するようにステージ22の位置調整を行う(ステップS12)。ここでの処理内容は上述したステップS5と全く同じである。すなわち、印刷版17に塗布液を載せて処理対象基板PWに印刷を行ったとしたときに、版側マークPMと基板側マークWMとが一致するようにステージ22の位置調整を行う。印刷版17については交換していないため、ステップS3にて取得した版側マークPMの撮像画像中における中心位置およびそれらを撮像したときの版胴14の回転角度位置をそのまま使用することができる。また、処理対象基板PWの四隅に形成された基板側マークWMの撮像画像中における中心位置とそれらを撮像したときのステージ22の位置についてはステップS11にて取得される。
制御部90は、これらのデータに基づいて、ステージ22をY方向に沿って直線移動させつつ版胴14を回転させて印刷版17から処理対象基板PWに塗布液を転写したと仮定したときの、版側マークPMと基板側マークWMとのずれ量を算定する。そして、そのずれ量がゼロとなるように、すなわち版側マークPMと基板側マークWMとが一致するようにステージ22の位置調整を行う。このステップS12におけるステージ22の位置調整は、印刷版17と新たにステージ22に載置された処理対象基板PWとの相対的な位置ずれを補正するための予備位置調整である。
次に、ステップS8にて算出した補正角度Δθに従ってステージ22を回転させる(ステップS13)。制御部90が位置調整機構55を制御してステージ22を補正角度Δθだけ回転させるようにしても良いし、位置調整機構55を手動で操作してステージ22を補正角度Δθだけ回転させるようにしても良い。
次に、ステップS9にて算出した補正スライド量Δx,Δyに従ってステージ22をスライド移動させる(ステップS14)。この処理も、制御部90が位置調整機構55を制御または位置調整機構55を手動で操作してステージ22を幅方向補正スライド量Δxおよび移動方向補正スライド量ΔyだけX方向およびY方向にスライド移動させるようにすれば良い。これらステップS8およびステップS9におけるステージ22の位置調整は、印刷版17の変形に起因した位置ずれを補正するための位置調整である。
ステップS12〜ステップS14の全ての位置調整が終了した後、印刷版17から処理対象基板PWへの印刷処理を実行する(ステップS15)。版胴14に装着された印刷版17に塗布液供給ローラ12から再度塗布液を供給し、ステージ22に載置した処理対象基板PWをY方向に沿って移動させつつ版胴14を回転させて印刷版17を処理対象基板PWに当接させることによって塗布液の転写を行う。
その後、同じ印刷版17を用いて新たな処理対象基板PWにパターンの印刷処理を行うときにはステップS10に戻って同様の処理を繰り返す。印刷版17を交換しない限りにおいては、同じ位置調整補正量を適用することができる。一方、印刷版17そのものを交換したときには、変形挙動が異なるため、再びステップS1に戻って位置調整補正量の算出を行う。なお、同じ印刷版17を用いて印刷処理を繰り返す場合であっても、1回の印刷処理が終わる毎に、或いは所定回数の印刷処理毎にステップS1に戻って位置調整補正量の算出を行うようにしても良い。
第1実施形態においては、専らステージ22の位置調整のために使用する調整用基板AWを用意し、その調整用基板AWに印刷版17からダミー印刷を行うことによって、印刷版17の変形に起因した位置ずれを明らかにしている。この目的のために、印刷版17と調整用基板AWとの相対的な位置ずれは予め解消しておく(ステップS5)。そして、ダミー印刷によって判明した印刷版17の変形に起因した位置ずれを画像処理によって解析し、印刷版17に対する調整用基板AWの位置調整補正量として補正角度Δθ並びに幅方向補正スライド量Δxおよび移動方向補正スライド量Δyを算出する。処理対象基板Wに印刷処理を行う際には、印刷版17と処理対象基板PWとの相対的な位置ずれを補正するとともに、補正角度Δθ並びに幅方向補正スライド量Δxおよび移動方向補正スライド量Δyに従って処理対象基板PWを載置したステージ22を移動させているため、印刷版17の変形に起因した印刷ずれをも防止することができる。その結果、処理対象基板PWの被印刷領域BAに有機ELの発光材料を正確に塗り分けすることができ、有機ELが点灯したときの発光ムラを抑制することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の印刷装置の構成は第1実施形態と全く同じである(図1〜図5参照)。また、第2実施形態における印刷処理の手順も第1実施形態と概ね同じである(図6,図7参照)。但し、第2実施形態においてはステージ22の移動方向(Y方向)についての若干のずれは許容しており、ステップS8およびステップS9にて、制御部90は、位置調整補正量としてθ方向についての補正角度とX方向のみについての補正スライド量とを算出する。
まず、ステップS8において、制御部90は、版側四角形QDPの四辺のうちステージ22の移動方向(Y方向)に沿った二辺のそれぞれと、それに対応する基板側四角形QDWの辺とのなす角度を算出する。図12に示す例においては、制御部90は、版側四角形QDPの左辺と基板側四角形QDWの左辺とのなす角度θ1および版側四角形QDPの右辺と基板側四角形QDWの右辺とのなす角度θ2をそれぞれ算出する。そして、制御部90は、得られた2つの角度θ1,θ2の平均値、すなわち(θ1+θ2)/2を補正角度Δθとして算出する。
次に、ステップS9において、制御部90は、X方向についての補正スライド量を算出する。第1実施形態と同様に、制御部90は、ステップS8にて求められた補正角度Δθだけステージ22とともに調整用基板AWを仮想的に回転させて印刷版17の変形角度の補正を行う。そして、制御部90は、回転補正した後の4つの基板側マークWMのそれぞれと、それに対応する版側マークPPMとのステージ22の幅方向(X方向)に沿った変位を算出する。図13に示す例においては、制御部90は、回転補正した後の左下の基板側マークWMと左下の版側マークPPMとのX方向に沿った変位x1、右下の基板側マークWMと右下の版側マークPPMとのX方向に沿った変位x2、左上の基板側マークWMと左上の版側マークPPMとのX方向に沿った変位x3および右上の基板側マークWMと右上の版側マークPPMとのX方向に沿った変位x4、をそれぞれ算出する。続いて、制御部90は、ステージ22の幅方向(X方向)について得られた4つの変位x1,x2,x3,x4の平均値、すなわち(x1+x2+x3+x4)/4を幅方向補正スライド量Δxとして算出する。
これに対応して、第2実施形態のステップS13においては、処理対象基板PWを載置したステージ22をステップS8にて算出した補正角度Δθに従って回転させる。また、第2実施形態のステップS14においては、ステップS9にて算出した幅方向補正スライド量Δxに従ってステージ22をX方向にスライド移動させる。そして、ステップS12〜ステップS14の全ての位置調整が終了した後、印刷版17から処理対象基板PWへの印刷処理を実行する。
このように、第1実施形態においては印刷版17の変形の起因したX方向およびY方向双方の位置ずれを考慮して位置調整補正量を算出していたが、第2実施形態においては印刷版17の変形の起因したX方向のみの位置ずれを考慮して位置調整補正量を算出している。図8に示したように、有機EL素子のパターン形成を行うための印刷版17の表面には、版胴14の回転方向、つまりステージ22の移動方向(Y方向)と平行に縞状のパターン領域PAが形成されている。また、図9に示したように、調整用基板AWを含む基板Wの表面には、ステージ22の移動方向(Y方向)と平行にバンクが縞状に形設された被印刷領域BAが形成されている。
有機ELの発光材料を塗布する印刷法においては、印刷版17のパターン領域PAおよび基板Wの被印刷領域BAはともにY方向に沿ったパターンを有しているため、Y方向には若干の位置ずれが生じたとしても印刷結果に問題は生じない。このため、ステージ22の幅方向(X方向)の位置ずれのみを考慮して位置調整補正量を算出したとしても、印刷版17の変形に起因した印刷ずれをも防止することができる。
もっとも、第2実施形態のように、X方向の位置ずれのみを考慮して位置調整補正量を算出すると、Y方向の印刷ずれが生じた結果として被印刷領域BAの端部(Y方向に沿った端部)に塗布液が塗布されないという問題が生じるおそれがある。これを確実に防止するために、第2実施形態のようにX方向の位置ずれのみを考慮して位置調整補正量を算出する場合には、印刷版17に形成されたパターン領域PAの版胴14の回転方向に沿った長さを、ステージ22に載置された基板Wにおける被印刷領域BAのステージ22の移動方向(Y方向)に沿った長さよりも片側で5mm〜10mm長くしておく方が好ましい。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の印刷装置の構成は第1実施形態と全く同じである。また、第3実施形態における印刷処理の手順も第1実施形態または第2実施形態と同じである。第3実施形態は、印刷版17と基板Wとの相対的な位置ずれを補正するための予備位置調整(ステップS5,S12)に用いるアライメントマークと印刷版17の変形に起因した位置ずれを補正するための位置調整に用いるアライメントマークとが異なる点において第1実施形態および第2実施形態と相違する。
図15は、第3実施形態において使用する印刷版117の平面図である。この印刷版117には、第1および第2実施形態と同様のパターン領域PAおよび版側マークPMが形成されている(図8参照)。また、印刷版117には、パターン領域PAの中央部両側に版側マークPMとは異なる2つの補助マーク118が形成されている。一方、調整用基板AWおよび処理対象基板PWにもそれと対応する補助マーク(図示省略)が形成されている。
第1および第2実施形態においては、印刷版17の版側マークPMと調整用基板AWの基板側マークWMとが印刷時に一致するようにステージ22の位置調整を行い(ステップS5)、これにより印刷版17と調整用基板AWとの相対的な位置ずれを補正していた。そして、その後、ダミー印刷を行って印刷版17の変形に起因した位置ずれを解析し、補正角度および補正スライド量を算出するようにしていた(ステップS8,S9)。また、パターンの印刷を行うときにも、印刷版17の版側マークPMと処理対象基板PWの基板側マークWMとが印刷時に一致するようにステージ22の位置調整を行っていた(ステップS12)。すなわち、版側マークPMおよび基板側マークWMは、印刷版17と基板Wとの相対的な位置ずれを補正するための位置調整用のアライメントマークとして用いるとともに、印刷版17の変形に起因した位置ずれを補正するための位置調整用のアライメントマークとしても用いていたのである。
第3実施形態においては、ステップS5およびステップS12では、印刷版117の補助マーク118と基板Wの補助マークとが印刷時に一致するようにステージ22の位置調整を行う。一方、ステップS8およびステップS9にて補正角度および補正スライド量を算出するときには、第1および第2実施形態と同様に、印刷版117の版側マークPMと調整用基板AWの基板側マークWMとを使用する。すなわち、版側マークPMおよび基板側マークWMは、印刷版17の変形に起因した位置ずれを補正するためのみのアライメントマークとして用いる。印刷版117と基板Wとの相対的な位置ずれを補正するためのアライメントマークとしては補助マークを使用する。相対的な位置ずれを補正するためのみであれば、補助マークは2箇所設けていれば十分である。なお、処理対象基板PWを用いて印刷版117の変形に起因した位置ずれを補正することは無いため、処理対象基板PWには必ずしも四隅の基板側マークWMを設ける必要は無い。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の印刷装置の構成は第1実施形態と全く同じである。また、第4実施形態における印刷処理の手順も第1実施形態または第2実施形態と同じである。但し、第4実施形態においては、印刷版17に版側マークPMを形成しておらず、基板Wにも基板側マークWMを形成していない。
図16は、第4実施形態において使用する印刷版217の平面図である。この印刷版217には、パターン領域PAが形成されているものの、版側マークPMや補助マークは形成されていない。これに対応して調整用基板AWおよび処理対象基板PWにも基板側マークWMや補助マークは形成されていない。
第1および第2実施形態においては、印刷版17の版側マークPMと基板Wの基板側マークWMとを用いてステージ22の位置調整を行っていたが、これに代えて第4実施形態では、印刷版217の矩形のパターン領域PAの角部218と基板Wの矩形の被印刷領域BAの角部とを用いてステージ22の位置調整を行っている。矩形の角部はX方向のラインとY方向のラインとが明確に画像認識できるため、アライメントマークの代わりに用いることができるのである。換言すれば、アライメントマークとしては、X方向およびY方向を画像認識できる形状であれば良い。
第4実施形態のステップS5においては、印刷版217のパターン領域PAの角部218と調整用基板AWの被印刷領域BAの角部とが印刷時に一致するようにステージ22の位置調整を行う。そして、その後、ダミー印刷を行って調整用基板AWに印刷されたパターン領域PAの角部の位置と被印刷領域BAの角部の位置とのずれ量を測定し、そのずれ量に基づいて補正角度および補正スライド量を算出する(ステップS8,S9)。また、ステップS12にてパターンの印刷を行うときにも、印刷版217のパターン領域PAの角部218と処理対象基板PWの被印刷領域BAの角部とが一致するようにステージ22の位置調整を行う。
このようにしても、第1および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。さらには、パターン領域PAの角部と被印刷領域BAの角部とを用いてステージ22の位置調整を行えば、パターン領域PAをより正確に被印刷領域BAに転写することができる。なお、第4実施形態のように、パターン領域PAの角部および被印刷領域BAの角部をアライメントマークとして用いるのであれば、パターン領域PAの形状と被印刷領域BAの形状とを完全に一致させておく(つまり、パターン領域PAの長さと被印刷領域BAの長さとを等しくさせておく)必要がある。
第1実施形態から第4実施形態の内容を以下に集約する。本発明に係る印刷方法においては、まず、印刷版17(117,217)および調整用基板AWのそれぞれに形成されたアライメントマークに基づいて、印刷版17に形成されたアライメントマークと調整用基板AWに形成されたアライメントマークとが一致するように印刷版17と調整用基板AWとの位置合わせを行う。これにより、位置調整補正量を算出するための前提として、印刷版17と調整用基板AWとの相対的な位置ずれを補正する。ここでのアライメントマークとしては、四隅に形成された版側マークPMおよび基板側マークWMを用いても良いし、それとは別に形成された補助マークを用いても良いし、或いはパターン領域PAおよび被印刷領域BAの角部を用いても良い。
次に、印刷版17から調整用基板AWに塗布液を転写してダミー印刷を行い、位置調整補正量を算出するための版側着目領域を調整用基板AWに転写する。印刷版17の版側着目領域としては、印刷版17の少なくとも四隅に形成された識別領域であれば良く、版側マークPMを用いても良いし、パターン領域PAの角部を用いても良い。また、版側着目領域に対応して、調整用基板AWの少なくとも四隅には基板側着目領域が形成されている。版側着目領域が版側マークPMであれば、基板側着目領域としては基板側マークWMを用い、版側着目領域がパターン領域PAの角部であれば、基板側着目領域としては被印刷領域BAの角部を用いる。
次に、調整用基板AWに転写された版側着目領域の位置と基板側着目領域の位置とのずれ量を測定し、そのずれ量に基づいて印刷版17に対する調整用基板AWの位置調整補正量を算出する。この位置調整補正量は、ダミー印刷によって判明した印刷版17の変形に起因した印刷ずれを補正するためのパラメータである。
その後、ステージ22上の調整用基板AWをパターンの転写を行うべき処理対象基板PWに置き換え、印刷版17および処理対象基板PWのそれぞれに形成されたアライメントマークに基づいて、印刷版17に形成されたアライメントマークと処理対象基板PWに形成されたアライメントマークとが一致するように印刷版17と処理対象基板PWとの位置合わせを行う。これにより、印刷版17と処理対象基板PWとの相対的な位置ずれを補正する。このときにアライメントマークとして用いるのは、調整用基板AWの相対的な位置ずれを補正するのに用いたのと同様のものである。
さらに、上記の算出された位置調整補正量に従って処理対象基板PWを移動させ、印刷版17の変形に起因した印刷ずれを補正した後に、印刷処理を実行する。印刷版17と処理対象基板PWとの相対的な位置ずれを補正するとともに、位置調整補正量に従って処理対象基板PWを移動させているため、印刷版17の変形に起因した印刷ずれをも防止することができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、2個の基板側カメラ53を設けて4個の基板側マークWMを2回に分けて撮像するようにしていたが、4個の基板側カメラ53を設けて4個の基板側マークWMを一括して撮像するようにしても良い。このようにすれば、基板側カメラ53を用いて撮像するステップS4,S7,S11の各工程は1回の撮像処理で足りるため、処理時間を短くすることができる。なお、これと同様に、4個の版側カメラ52を設けて4個の版側マークPMを一括して撮像するようにしても良い。但し、印刷版17の長さに応じて版側カメラ52を版胴14の周方向に沿って移動させなければならないため、他の構成要素(例えば、塗布液供給ローラ12)との干渉を防止する対策を講ずる必要がある。
また、版側カメラ52および基板側カメラ53はそれぞれ1台ずつであっても良い。この場合、版側カメラ52および基板側カメラ53をX方向に沿ってスキャンさせる機構を設け、4個の版側マークPMおよび4個の基板側マークWMをそれぞれ4回に分けて撮像することとなる。
また、上記各実施形態においては、基板側マークWMを撮像する基板側カメラ53によってダミー印刷の結果を撮像していたが(ステップS7)、調整用基板AWに転写されたダミー印刷の結果を撮像する専用のカメラを別途(例えば、版胴14よりも(−Y)側に)設けるようにしても良い。
また、上記実施形態のステップS4,S7,S11においては、ステージ22を移動させて2個の基板側カメラ53で4個の基板側マークWMを撮像していたが、これに代えて2個の基板側カメラ53を移動させて4個の基板側マークWMを撮像するようにしても良い。同様に、ステップS3では、2個の版側カメラ52を移動させて4個の版側マークPMを撮像するようにしても良い。
また、第4実施形態において、図16の印刷版217に図15の補助マーク118を設け(基板Wにも対応する補助マークを設けておく)、印刷版217と基板Wとの相対的な位置ずれの補正(ステップS5,S12の処理)は補助マーク118を使用して行うようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、印刷版17に4個の版側マークPMを形成し、調整用基板AWに4個の基板側マークWMを形成していたが、版側マークPMおよび基板側マークWMは5個以上形成されていても良い。但し、版側マークPMは印刷版17の少なくとも四隅には形成されている必要があり、基板側マークWMは調整用基板AWの少なくとも四隅に形成されている必要がある。
また、上記各実施形態においては、印刷版17がポリエステル系の樹脂にて形成されていたが、印刷版17の素材はこれに限定されるものではなく、通常の印圧によって変形する素材であれば本発明に係る印刷方法を適用することができる。
また、上記各実施形態においては、有機ELの発光材料を塗布液としてガラス基板にパターン印刷する例を説明したが、本発明に係る印刷方法はこれに限定されるものではなく、例えばカラーフィルタ、液晶用ガラス基板、フレキシブル液晶基板或いは電子ペーパー等の基板の製造に適用することができる。