以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による作業用車両の概略的な全体構成について説明する。
この作業用車両は、図1に示すようなホイールクレーンであり、下部走行体2とクレーン作業を行うための作業機4とを備えている。
下部走行体2は、車輪6を備えており、この車輪6を後述の車輪駆動装置36によって回転駆動することにより作業用車両の走行を行う。
作業機4は、油圧によって駆動し、クレーン作業を行うものである。この作業機4は、上部旋回体8と、旋回モータ9(図2参照)と、ブーム10と、ブーム起伏用シリンダ12と、ブーム伸縮用シリンダ14(図2参照)と、主巻フック16と、補巻フック18と、図略の主巻ウィンチと、図略の補巻ウィンチとを有する。
上部旋回体8は、下部走行体2上に縦軸回りに旋回可能に搭載されている。
旋回モータ9は、油圧モータであり、上部旋回体8を下部走行体2に対して旋回させる。この旋回モータ9が一方向に回転することによって上部旋回体8が例えば右回りに旋回し、旋回モータ9が他方向に回転することによって上部旋回体8が例えば左回りに旋回するようになっている。
ブーム10は、基端部が上部旋回体8に取り付けられ、その基端部を支点として起伏動作可能となっている。
ブーム起伏用シリンダ12は、ブーム10を起伏動作させるための油圧シリンダである。このブーム起伏用シリンダ12が伸長することによってブーム10が起立する一方、ブーム起伏用シリンダ12が収縮することによってブーム10が倒伏するようになっている。
また、ブーム10は、伸縮可能に構成されている。具体的には、ブーム10は、複数の単位ブーム10aを有しており、基端側の単位ブーム10aの内部に先端側の単位ブーム10aが挿入されている。先端側の単位ブーム10aは、基端側の単位ブーム10a内から突出する方向又は基端側の単位ブーム10a内に没入する方向にスライド可能となっている。
ブーム伸縮用シリンダ14(図2参照)は、ブーム10を伸縮させるための油圧シリンダであり、図1には示していないがブーム10の長手方向に沿って設けられている。このブーム伸縮用シリンダ14が伸長することにより、先端側の単位ブーム10aが基端側の単位ブーム10a内から突出する方向に動かされてブーム10が伸長する一方、ブーム伸縮用シリンダ14が収縮することにより、先端側の単位ブーム10aが基端側の単位ブーム10a内に没入する方向に動かされてブーム10が収縮するようになっている。
主巻フック16は、ブーム10の先端から主巻ロープ22によって吊り下げられ、吊荷を吊るものである。
図略の主巻ウィンチは、上部旋回体8に設けられ、主巻ロープ22を巻き取り又は繰り出すことにより主巻フック16を昇降させる。この主巻ウィンチは、主巻ロープ22を巻き取る図略の主巻ドラムと、その主巻ドラムを回転駆動する油圧モータである主巻ウィンチモータ24(図2参照)とを有する。主巻ウィンチモータ24が一方向に回転することによって、主巻ドラムが例えば主巻ロープ22を巻き取る方向に回転し、主巻ウィンチモータ24が他方向に回転することによって、主巻ドラムが例えば主巻ロープ22を繰り出す方向に回転するようになっている。
補巻フック18は、ブーム10の先端から補巻ロープ26によって吊り下げられ、主巻フック16による吊荷重に対して比較的小さい荷重の吊荷を吊ることが可能となっている。
図略の補巻ウィンチは、補巻ロープ26を巻き取り又は繰り出すことにより補巻フック18を昇降させる。この補巻ウィンチは、主巻ウィンチと同様に構成されている。すなわち、補巻ウィンチは、主巻ウィンチの主巻ドラム及び主巻ウィンチモータ24と同様に構成された補巻ドラム(図示せず)及び補巻ウィンチモータ28(図2参照)を有する。
なお、上記上部旋回体8、ブーム10、単位ブーム10a、主巻ドラム及び補巻ドラムは、本発明の作動部の概念に含まれるものであり、上記旋回モータ9、ブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、主巻ウィンチモータ24及び補巻ウィンチモータ28は、本発明の駆動部の概念に含まれるものである。すなわち、旋回モータ9、ブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、主巻ウィンチモータ24及び補巻ウィンチモータ28が、作業機4を構成する上部旋回体8、ブーム10、単位ブーム10a、主巻ドラム及び補巻ドラムをそれぞれ駆動することによってクレーン作業が行われるようになっている。
次に、図2を参照して、この第1実施形態による作業用車両の駆動系統の詳細な構成について説明する。
まず、作業用車両の走行を行うための駆動系統について説明する。作業用車両は、図2に示すように、エンジン30と、燃料噴射装置32と、動力分配装置34と、車輪駆動装置36と、コントローラ38と、アクセル装置40と、走行方向指示装置41と、リターダ切換装置42とを備えている。
エンジン30は、駆動軸30aを有しており、その駆動軸30aに動力分配装置34が接続されている。動力分配装置34は、エンジン30の動力を車輪駆動装置36と後述する作業機駆動装置52とに分配する。すなわち、動力分配装置34への動力の入力側にエンジン30の駆動軸30aが接続されており、動力分配装置34の動力の出力側に車輪駆動装置36と作業機駆動装置52が接続されている。
燃料噴射装置32は、エンジン30に付設されており、エンジン30へ燃料を供給するものである。燃料噴射装置32は、エンジン30への燃料の供給量を増減可能に構成されており、この燃料噴射装置32からエンジン30への燃料の供給量の増減によって、エンジン30の回転数が増減するようになっている。
車輪駆動装置36は、エンジン30の動力を受けて車輪6を回転駆動させ、作業用車両の走行を行うものである。この車輪駆動装置36は、走行用油圧ポンプ44(以下、単に走行用ポンプ44という)と、走行用ポンプ傾転駆動装置45と、走行用油圧モータ46(以下、単に走行用モータ46という)と、走行用モータ傾転駆動装置47と、一対の流路48a,48bと、駆動伝達装置49とを有する。
走行用ポンプ44は、可変容量型で、かつ、両方向吐出型の油圧ポンプである。この走行用ポンプ44は、作動油の吐出口44aと導入口44bを有している。走行用ポンプ44は、動力分配装置34によって分配される動力を受けて作動し、吐出口44aから作動油を吐出する。また、走行用ポンプ44は、走行用モータ46から吐出された戻り油を導入口44bから受け入れる。
走行用ポンプ傾転駆動装置45は、走行用ポンプ44に付設されている。この走行用ポンプ傾転駆動装置45は、走行用ポンプ44の斜板の傾転角度を変更し、走行用ポンプ44の容量を変更する。
走行用モータ46は、可変容量型の油圧モータである。走行用モータ46は、走行用ポンプ44から供給される作動油の油圧によって駆動され、車輪6を回転させるための動力を発する。走行用モータ46は、作動油の導入口46aと吐出口46bを有する。走行用モータ46は、走行用ポンプ44から吐出された作動油を導入口46aから受け入れ、吐出口46bから吐出する。
走行用モータ傾転駆動装置47は、走行用モータ46に付設されている。この走行用モータ傾転駆動装置47は、走行用モータ46の斜板の傾転角度を変更し、走行用モータ46の容量を変更する。
一対の流路48a,48bは、走行用ポンプ44と走行用モータ46との間で作動油が循環可能なようにそれらのポンプ44とモータ46を相互に接続している。具体的には、一方の流路48aは、走行用ポンプ44の吐出口44aと走行用モータ46の導入口46aとを互いに接続している。他方の流路48bは、走行用ポンプ44の導入口44bと走行用モータ46の吐出口46bとを互いに接続している。これにより、走行用ポンプ44の吐出口44aから吐出された作動油は、一方の流路48aを通って走行用モータ46の導入口46aに流れ込み、その後、走行用モータ46の吐出口46bから吐出されて他方の流路48bを通り、走行用ポンプ44の導入口44bに戻るようになっている。
駆動伝達装置49は、走行用モータ46の動力を車輪6に伝達して車輪6を回転駆動するものである。この駆動伝達装置49は、減速機50と車軸装置51を有する。
減速機50は、走行用モータ46の駆動軸に接続されており、走行用モータ46の動力、換言すれば走行用モータ46の駆動軸の回転を減速して車軸装置51へ伝達するものである。この減速機50は、図略の連結状態切換機構を有している。連結状態切換機構は、走行用モータ46の駆動軸の回転を正回転で車軸装置51へ伝達する正回転結合状態と、走行用モータ46の駆動軸の回転を逆回転で車軸装置51へ伝達する逆回転結合状態と、走行用モータ46の駆動軸の回転を車軸装置51へ伝達しない解離状態とに切り換え可能となっている。
車軸装置51は、減速機50に接続されており、その減速機50から伝達された動力(回転)を車輪6へ伝達するものである。車軸装置51は、作業用車両の車幅方向に延びる車軸51aを有しており、この車軸51aの両端にそれぞれ車輪6が取り付けられている。車軸装置51では、減速機50から動力(回転力)が伝達されることにより、車軸51aが回転し、それに伴って車輪6が回転する。車軸装置51は、減速機50から正回転の回転力が伝達された場合には、車輪6を前進回転させる一方、減速機50から逆回転の回転力が伝達された場合には、車輪6を後進回転させる。
コントローラ38は、燃料噴射装置32、走行用ポンプ傾転駆動装置45、走行用モータ傾転駆動装置47及び減速機50の制御を行う。具体的には、コントローラ38は、燃料噴射装置32へ制御信号を送ることによってエンジン30への燃料噴射装置32の燃料の供給量(噴射量)を制御する。また、コントローラ38は、走行用ポンプ傾転駆動装置45へ制御信号を送ることによって走行用ポンプ傾転駆動装置45による走行用ポンプ44の斜板の傾転角度の変更動作を制御する。また、コントローラ38は、走行用モータ傾転駆動装置47へ制御信号を送ることによって走行用モータ傾転駆動装置47による走行用モータ46の斜板の傾転角度の変更動作を制御する。また、コントローラ38は、減速機50へ制御信号を送ることによってその減速機50の連結状態切換装置の前記正回転結合状態と前記逆回転結合状態と前記解離状態の間の切り換え動作を制御する。
アクセル装置40は、オペレータがエンジン30の回転数を変更するために用いるものである。具体的には、アクセル装置40は、アクセルペダル40aを有しており、オペレータがアクセルペダル40aを操作すると、その操作量(踏み込み量)を表すアクセル信号が当該アクセル装置40からコントローラ38へ送られるようになっている。コントローラ38は、そのアクセル信号に応じてエンジン30に対する燃料噴射装置32の燃料の供給量を制御することによって、エンジン30の回転数を前記アクセルペダル40aの操作量に応じた回転数に変更する。
走行方向指示装置41は、オペレータが作業用車両の走行方向を指示するために用いるものである。具体的には、走行方向指示装置41は、走行方向指示レバー41aと、走行方向指示装置本体41bとを有している。走行方向指示レバー41aは、オペレータによって操作されるものであり、前進位置Fとニュートラル位置Nと後進位置Rの間で切換可能に走行方向指示装置本体41bに設けられている。走行方向指示装置本体41bは、走行方向指示レバー41aの位置に対応する走行方向指示信号をコントローラ38へ送る。コントローラ38は、その走行方向指示信号に応じて減速機50の連結状態切換機構を制御する。具体的には、コントローラ38は、前進位置Fに対応する走行方向指示信号を受信した場合には、連結状態切換機構を前記正回転結合状態とし、ニュートラル位置Nに対応する走行方向指示信号を受信した場合には、連結状態切換機構を前記解離状態とし、後進位置Rに対応する走行方向指示信号を受信した場合には、連結状態切換機構を前記逆回転結合状態とする。
リターダ切換装置42は、オペレータがリターダ機能のオン/オフの切り換えを指示するために用いるものである。ここで、リターダとは、走行用ポンプ44をモータとして駆動して動力を発生させ、その動力を利用して後述の発電機60に発電させるとともに発電された電力を後述のバッテリ62に蓄電することを意味する。リターダ切換装置42は、リターダ切換レバー42aと、リターダ切換装置本体42bとを有する。リターダ切換レバー42aは、リターダ機能のオフを指示するリターダオフ位置Nとリターダ機能のオンを指示するリターダオン位置Bとに切換可能にリターダ切換装置本体42bに設けられている。リターダ切換装置本体42bは、リターダ切換レバー42aの位置に対応するリターダ指示信号をコントローラ38へ送る。コントローラ38は、受信したリターダ指示信号に応じて走行用ポンプ傾転駆動装置45及び走行用モータ傾転駆動装置47を制御する。
具体的には、コントローラ38は、リターダ切換レバー42aがリターダオン位置Bにあることを表すリターダ信号を受信した場合には、走行用ポンプ44の斜板の傾転角度を減少させるように走行用ポンプ傾転駆動装置45を制御するとともに、走行用モータ46の斜板の傾転角度を増大させるように走行用モータ傾転駆動装置47を制御する。これにより、走行用モータ46の作動油の吐出流量が走行用ポンプ44の作動油の吐出流量よりも大きくなって走行用モータ46の吐出圧が上昇し、ブレーキ圧力が発生する。このブレーキ圧力によって走行用ポンプ44がモータとして駆動され、リターダ機能が発現するようになっている。
次に、作業機4を駆動するための駆動系統の構成について説明する。作業用車両は、作業機駆動装置52と、エンジン回転数設定装置53とを備えている。
作業機駆動装置52は、エンジン30の動力を受けて作業機4に油圧を供給することにより作業機4を駆動するものである。この作業機駆動装置52は、作業機駆動用油圧ポンプ54(以下、単に作業機駆動ポンプ54という)と、作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56と、コントロールバルブ58と、発電機60と、バッテリ62と、電動機64と、コンバータ66と、インバータ68と、パイロット圧用ポンプ70と、作業機操作装置72と、パイロット圧検出部76とを有する。この作業機駆動装置52では、動力分配装置34によって作業機駆動ポンプ54と発電機60とに動力が分配されるようになっている。すなわち、作業機駆動ポンプ54と発電機60が、動力分配装置34の動力の出力側に接続されている。
作業機駆動ポンプ54は、作業機4の駆動部であるブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24及び補巻ウィンチモータ28に油圧を供給するためのものである。この作業機駆動ポンプ54は、動力分配装置34によって分配される動力を受けて作動し、ブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24及び補巻ウィンチモータ28に供給するための作動油を吐出する。また、作業機駆動ポンプ54は、可変容量型の油圧ポンプであり、作動油の吐出口54aを有する。
作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56は、作業機駆動ポンプ54に付設されている。この作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56は、作業機駆動ポンプ54の斜板の傾転角度を変更して作業機駆動ポンプ54の容量の変更を行うものである。
コントロールバルブ58は、ブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24及び補巻ウィンチモータ28のそれぞれに設けられた2つの供給口のうちどちらに作業機駆動ポンプ54から供給される作動油を流すかを制御することにより、ブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24及び補巻ウィンチモータ28の駆動方向をそれぞれ制御するものである。なお、コントロールバルブ58は、ブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24及び補巻ウィンチモータ28にそれぞれ1つずつ接続されているが、図1では図示の簡略化のためにそれらのコントロールバルブをまとめて1つで模式的に表している。
ブーム起伏用シリンダ12は、一側の供給口12aと他側の供給口12bを、ブーム伸縮用シリンダ14は、一側の供給口14aと他側の供給口14bを、旋回モータ9は、一側の供給口9aと他側の供給口9bを、主巻ウィンチモータ24は、一側の供給口24aと他側の供給口24bを、補巻ウィンチモータ28は、一側の供給口28aと他側の供給口28bをそれぞれ有している。ブーム起伏用シリンダ12は、一側の供給口12aに作動油が供給されることにより伸長してブーム10を起立させる一方、他側の供給口12bに作動油が供給されることにより収縮してブーム10を倒伏させる。ブーム伸縮用シリンダ14は、一側の供給口14aに作動油が供給されることにより伸長してブーム10を伸長させる一方、他側の供給口14bに作動油が供給されることにより収縮してブーム10を収縮させる。旋回モータ9は、一側の供給口9aに作動油が供給されることにより例えば上部旋回体8を右旋回させる一方、他側の供給口9bに作動油が供給されることにより例えば上部旋回体8を左旋回させる。主巻ウィンチモータ24は、一側の供給口24aに作動油が供給されることにより例えば主巻ロープ22を巻き取る方向へ主巻ドラムを回転させる一方、他側の供給口24bに作動油が供給されることにより例えば主巻ロープ22を繰り出す方向へ主巻ドラムを回転させる。補巻ウィンチモータ28は、一側の供給口28aに作動油が供給されることにより例えば補巻ロープ26を巻き取る方向へ補巻ドラムを回転させる一方、他側の供給口28bに作動油が供給されることにより例えば補巻ロープ26を繰り出す方向へ補巻ドラムを回転させる。
各コントロールバルブ58は、図3に示すような構成を有しており、パイロット圧が供給される2つのポート58a,58bを備えている。2つのポート58a,58bのうち一側のポート58aは、作業機4の駆動部の一側の供給口12a,14a,9a,24a,28aに対応しており、他側のポート58bは、作業機4の駆動部の他側の供給口12b,14b,9b,24b,28bに対応している。具体的には、各コントロールバルブ58は、作業機駆動ポンプ54の吐出口54aと配管59を介して接続されている。そして、各コントロールバルブ58は、作業機駆動ポンプ54から前記一側の供給口12a,14a,9a,24a,28a及び前記他側の供給口12b,14b,9b,24b,28bへの作動油の供給を遮断する中立位置Pcと、作業機駆動ポンプ54から前記一側の供給口12a,14a,9a,24a,28aへの作動油の流通を許容する第1流通位置Pf1と、作業機駆動ポンプ54から前記他側の供給口12b,14b,9b,24b,28bへの作動油の流通を許容する第2流通位置Pf2との間で切換可能となっている。そして、各コントロールバルブ58は、一側のポート58aにパイロット圧が供給されることによって第1流通位置Pf1に切り換えられる一方、他側のポート58bにパイロット圧が供給されることによって第2流通位置Pf2に切り換えられるようになっている。
発電機60とバッテリ62と電動機64は、図2に示すように、互いに電気的に接続されている。発電機60は、動力分配装置34によって分配される動力を受けて作動し、発電を行う。バッテリ62は、発電機60によって発電された電力を蓄電する一方、蓄電した電力を電動機64に供給する。なお、このバッテリ62は、本発明の蓄電装置の概念に含まれるものである。電動機64は、発電機60及びバッテリ62のうち少なくとも一方から供給される電力によって駆動され、パイロット圧用ポンプ70を駆動する。
コンバータ66は、発電機60とバッテリ62との間の電気の伝達経路に設けられている。コンバータ66は、バッテリ62と電力の授受を行い、発電機60を制御するものである。
インバータ68は、バッテリ62と電動機64との間の電気の伝達経路に設けられている。このインバータ68は、バッテリ62と電力の授受を行い、電動機64を制御するものである。
パイロット圧用ポンプ70は、電動機64により駆動されてコントロールバルブ58のポート58a,58bへ供給するためのパイロット圧を生じる作動油を吐出する油圧ポンプである。このパイロット圧用ポンプ70は、作動油の吐出口70aを有している。
作業機操作装置72は、オペレータが上部旋回体8の旋回動作、ブーム10の起伏動作、ブーム10の伸縮動作、主巻ウィンチによる主巻フック16の昇降、補巻ウィンチによる補巻フック18の昇降の各動作を指示するために操作するものである。作業機操作装置72は、ブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24及び補巻ウィンチモータ28のそれぞれに対応して1つずつ設けられているが、図2では図示を簡略化するためにそれらの作業機操作装置をまとめて1つで表している。そして、各作業機操作装置72は、作業機操作レバー72aと、パイロット圧方向切換装置72bとをそれぞれ有する。
作業機操作レバー72aは、オペレータが上部旋回体8の旋回、ブーム10の起伏、ブーム10の伸縮、主巻ウィンチの主巻ドラムの回転又は補巻ウィンチの補巻ドラムの回転の各動作のオン/オフや、それら各動作の方向及び速度を指示するために操作するものである。なお、この作業機操作レバー72aは、本発明の操作部の概念に含まれるものである。この作業機操作レバー72aは、中立位置に対して一方向とその一方向の反対方向である他方向とに倒すことが可能なようにパイロット圧方向切換装置72bに設けられている。作業機操作レバー72aを一方向へ倒すことは、例えば、上部旋回体8の右旋回、ブーム10の起立、ブーム10の伸長、主巻フック16を上昇させる方向への主巻ウィンチの回転、又は補巻フック18を上昇させる方向への補巻ウィンチの回転を指示することに相当する。また、作業機操作レバー72aを他方向へ倒すことは、例えば、上部旋回体8の左旋回、ブーム10の倒伏、ブーム10の収縮、主巻フック16を降下させる方向への主巻ウィンチの回転、又は補巻フック18を降下させる方向への補巻ウィンチの回転を指示することに相当する。
パイロット圧方向切換装置72bは、パイロット圧用ポンプ70から吐出された作動油を作業機操作レバー72aによって指示された上部旋回体8、ブーム10、主巻ウィンチ又は補巻ウィンチの動作方向に対応したコントロールバルブ58のポート58a又は58bへ流すものである。具体的には、パイロット圧方向切換装置72bは、パイロット圧用ポンプ70の吐出口70aと配管73を介して接続されている。また、パイロット圧方向切換装置72bは、図3に示すように、一側配管74aを介してコントロールバルブ58の一側のポート58aに接続されているとともに、他側配管74bを介してコントロールバルブ58の他側のポート58bに接続されている。パイロット圧方向切換装置72bは、パイロット圧用ポンプ70から配管73を通じて送られてくる作動油を一側配管74aを通じて前記一側のポート58aへ流すか又は他側配管74bを通じて前記他側のポート58bへ流すことが可能となっている。
そして、パイロット圧方向切換装置72bは、作業機操作レバー72aが中立位置から前記一方向側へ操作されたときには、パイロット圧用ポンプ70から吐出された作動油を前記一側のポート58aへ流し、作業機操作レバー72aが中立位置から前記他方向動作位置側へ操作されたときには、パイロット圧用ポンプ70から吐出された作動油を前記他側のポート58aへ流す。パイロット圧方向切換装置72bは、この場合、作業機操作レバー72aの中立位置からの操作量に応じた量の作動油を前記一側のポート58a又は前記他側のポート58bへ流すようになっている。
パイロット圧検出部76は、コントロールバルブ58のポート58a,58bに供給されるパイロット圧を検出するものである。具体的には、パイロット圧検出部76は、一側配管74aと他側配管74bとにそれぞれ接続されている。なお、図2では、図示の簡略化のために一側配管74aと他側配管74bをまとめて1つで表すとともに、それら各配管74a,74bにそれぞれ接続されたパイロット圧検出部76をまとめて1つで表している。一側配管74aに接続されたパイロット圧検出部76は、一側配管74aを通じてコントロールバルブ58の一側のポート58aに供給される作動油の圧力(パイロット圧)を検出し、他側配管74bに接続されたパイロット圧検出部76は、他側配管74bを通じてコントロールバルブ58の他側のポート58bに供給される作動油の圧力(パイロット圧)を検出する。そして、各パイロット圧検出部76は、検出したパイロット圧のデータをコントローラ38へ送る。
エンジン回転数設定装置53は、作業機4を駆動する際のエンジン30の回転数を設定するための装置である。エンジン回転数設定装置53は、オペレータが操作することによってエンジン回転数をエンジン30の最小回転数Nminと最大回転数Nmaxとの間の任意の回転数に設定できるように構成されている。オペレータがエンジン回転数設定装置53によって設定したエンジン30の設定回転数N0は、コントローラ38へ送られるようになっている。
コントローラ38は、作業機4の駆動時には、燃料噴射装置32、作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56、コンバータ66及びインバータ68の制御を行う。具体的には、コントローラ38は、バッテリ62の蓄電量が十分でない場合には、エンジン回転数設定装置53から送られる設定回転数N0に応じた制御信号を燃料噴射装置32へ送ることによってエンジン30に対する燃料噴射装置32の燃料の供給量を制御し、それによってエンジン30の回転数が前記設定回転数N0となるようにその回転数を制御する。また、コントローラ38は、パイロット圧検出部76から送られてくるパイロット圧のデータに応じた制御信号を作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56へ送ることによってその傾転駆動装置56による作業機駆動ポンプ54の斜板の傾転角度の変更動作を制御する。また、コントローラ38は、発電機60が発電した電力とバッテリ62に蓄電された電力の少なくとも一方により電動機64が駆動されるようにコンバータ66及びインバータ68を制御する。
また、本実施形態の作業用車両は、エンジン30のアイドリングストップを行うための構成を有している。具体的には、作業用車両は、アイドリングストップ切換装置80を備えている。
アイドリングストップ切換装置80は、オペレータがエンジン30のアイドリングストップの実施と停止の切り換えを指示するために用いるものである。このアイドリングストップ切換装置80は、アイドリングストップ切換レバー80aと、アイドリングストップ切換装置本体80bとを有する。アイドリングストップ切換レバー80aは、アイドリングストップの実施を指示する実施位置Sとアイドリングストップの停止を指示する停止位置Nとの間で切換可能にアイドリングストップ切換装置本体80bに設けられている。アイドリングストップ切換装置本体80bは、切換レバー80aの位置(実施位置S又は停止位置N)を表す信号をコントローラ38へ送るようになっている。
コントローラ38は、前記切換装置本体80bから送られてくる信号に応じて燃料噴射装置32とインバータ68を制御する。具体的には、コントローラ38は、前記切換装置本体80bから前記切換レバー80aがアイドリングストップの実施位置Sにあることを表す信号を受信した場合には、燃料噴射装置32にエンジン30への燃料の供給を停止させるとともに、インバータ68にバッテリ62の電力のみによって電動機64を駆動させる。
また、本実施形態の作業用車両は、運転室内の冷暖房を行うエアコン用のコンプレッサ82を備えており、このコンプレッサ82が電動機64によって駆動されるようになっている。
次に、第1実施形態による作業用車両の動作について説明する。
まず、作業用車両の走行時の動作について説明する。
エンジン30が駆動されると、そのエンジン30の動力が動力分配装置34によって走行用ポンプ44に分配される。これにより、走行用ポンプ44が作動し、作動油を吐出する。この走行用ポンプ44から吐出された作動油は、走行用モータ46に供給され、それによって走行用モータ46が駆動される。
オペレータが走行方向指示レバー41aをニュートラル位置Nから前進位置Fに切り換えると、コントローラ38が減速機50の連結状態切換機構を正回転結合状態に切り換える。これにより、走行用モータ46の駆動軸の回転力が減速機50を介して減速されるとともに正回転で車軸装置51へ伝達され、車軸装置51はその回転力を車輪6へ伝達して車輪6を前進回転させる。その結果、作業用車両が前進する。
オペレータがアクセルペダル40aの踏み込み量を増加させると、それに伴って、コントローラ38が燃料噴射装置32にエンジン30への燃料の供給量を増加させる。これにより、エンジン30の回転数が上昇し、それに伴って、走行用ポンプ44の回転数も上昇するため、走行用ポンプ44の作動油の吐出量が増加する。その結果、走行用モータ46の回転数が増加し、それに伴って車輪6の回転数が増加する。
一方、オペレータがアクセルペダル40aの踏み込み量を減少させると、上記とは逆に燃料噴射装置32による燃料の供給量が減少してエンジン30の回転数が低下し、それに伴って走行用ポンプ44の回転数が低下する。この際、走行用モータ46は、慣性で回転を続けるため、走行用モータ46の作動油の吐出流量が走行用ポンプ44の作動油の吐出流量よりも多くなる。その結果、走行用モータ46の作動油の吐出圧が上昇し、いわゆるブレーキ圧力が発生する。走行用ポンプ44は、このブレーキ圧力によってモータとして駆動され、動力を発する。この走行用ポンプ44から発生した動力は、エンジン30の動力とともに動力分配装置34を介して発電機60に伝達され、発電機60は、これらの動力によって作動し、発電を行う。そして、発電機60により発電された電力は、バッテリ62に蓄電される。このように、アクセルペダル40aの踏み込み量が減少された時には、動力が回生されて電力として蓄えられる。
次に、リターダ機能をオンにした時の作業用車両の動作について説明する。
作業用車両が長い下り道等を走行する場合には、オペレータは、リターダ切換レバー42aをリターダオフ位置Nからリターダオン位置Bへ切り換える。これにより、コントローラ38は、走行用ポンプ44の斜板の傾転角度を減少させるように走行用ポンプ傾転駆動装置45を制御する一方、走行用モータ46の斜板の傾転角度を増加させるように走行用モータ傾転駆動装置47を制御する。これにより、走行用ポンプ44の容量が減少する一方、走行用モータ46の容量が増加する。作業用車両には、下り道を下ることによる慣性力が作用し、走行用モータ46は、車輪6側から動力を供給される。これにより、走行用モータ46は、回転を続け、当該走行用モータ46から吐出されて走行用ポンプ44へ戻る作動油の流量が走行用ポンプ44から吐出されて走行用モータ46へ供給される作動油の流量よりも多くなる。その結果、上記アクセルペダル40aの踏み込み量が減少された場合と同様にして、ブレーキ圧力が発生し、走行用ポンプ44がモータとして駆動され、その走行用ポンプ44の動力が発電機60によって発電される電力として回収されてバッテリ62に蓄電される。
次に、作業機4の駆動時における作業用車両の動作について説明する。
作業機4の駆動時には、オペレータは、走行方向指示レバー41aをニュートラル位置Nとするとともに、エンジン回転数設定装置53によってエンジン30の回転数を設定し、その後、エンジン30を駆動する。
エンジン30の動力は、動力分配装置34によって作業機駆動ポンプ54と発電機60とに分配される。作業機駆動ポンプ54は、動力が分配されることによって作動し、作動油を吐出する。
また、発電機60は、動力が分配されることによって作動し、発電を行う。そして、コントローラ38がコンバータ66とインバータ68の制御を行うことによって、発電機60によって発電された電力とバッテリ62に蓄電された電力の少なくとも一方により電動機64を駆動する。この電動機64の動力を受けてパイロット圧用ポンプ70が作動し、作動油を吐出する。パイロット圧用ポンプ70から吐出された作動油は、各パイロット圧方向切換装置72bへそれぞれ送られる。
各パイロット圧方向切換装置72bは、対応する作業機操作レバー72aがオペレータによって操作されると、その操作方向に応じたコントロールバルブ58のポート58a,58bのいずれか一方へパイロット圧用ポンプ70から吐出された作動油を供給する。また、各パイロット圧方向切換装置72bは、対応する作業機操作レバー72aの操作量に応じた圧力で作動油を対応するコントロールバルブ58のポート58a,58bのいずれかへ送る。
各コントロールバルブ58は、ポート58a又は58bにパイロット圧(作動油)が供給されると、そのパイロット圧が供給されたポートに対応する流通位置Pf1又はPf2に切り換わる。そして、各コントロールバルブ58は、切り換わった流通位置Pf1又はPf2に応じて、作業機駆動ポンプ54から供給される作動油をブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24、補巻ウィンチモータ28の一側の供給口12a,14a,9a,24a,28a又は他側の供給口12b,14b,9b,24b,28bの対応するものに供給する。これにより、ブーム起伏用シリンダ12の場合には、一側の供給口12aに作動油が供給されると伸長してブーム10を起立させる一方、他側の供給口12bに作動油が供給されると収縮してブーム10を倒伏させる。また、ブーム伸縮用シリンダ14の場合には、一側の供給口14aに作動油が供給されると伸長してブーム10を伸長させる一方、他側の供給口14bに作動油が供給されると収縮してブーム10を収縮させる。また、旋回モータ9の場合には、一側の供給口9aに作動油が供給されると上部旋回体8を右旋回させる一方、他側の供給口9bに作動油が供給されると上部旋回体8を左旋回させる。また、主巻ウィンチモータ24の場合には、一側の供給口24aに作動油が供給されると主巻ロープ22を巻き取って主巻フック16を上昇させる方向に主巻ドラムを回転させる一方、他側の供給口24bに作動油が供給されると主巻ロープ22を繰り出して主巻フック16を降下させる方向に主巻ドラムを回転させる。また、補巻ウィンチモータ28の場合には、一側の供給口28aに作動油が供給されると補巻ロープ26を巻き取って補巻フック18を上昇させる方向に補巻ドラムを回転させる一方、他側の供給口28bに作動油が供給されると補巻ロープ26を繰り出して補巻フック18を降下させる方向に補巻ドラムを回転させる。以上のようにして、作業機4の各駆動部がオペレータによる作業機操作レバー72aの操作に応じて作動し、作業機4によるクレーン作業が行われる。
また、コントローラ38は、パイロット圧検出部76によって検出されたパイロット圧に応じて作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56に作業機駆動ポンプ54の斜板の傾転角度を調節させる。これにより、コントローラ38は、検出されたパイロット圧に対して図4に示すような関係で作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56に作業機駆動ポンプ54の容量を制御させる。具体的には、コントローラ38は、パイロット圧が高い場合には、作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56に作業機駆動ポンプ54の斜板の傾転角度を増大させて作業機駆動ポンプ54の容量を増大させる一方、パイロット圧が低い場合には、作業機駆動ポンプ傾転駆動装置56に作業機駆動ポンプ54の斜板の傾転角度を減少させて作業機駆動ポンプ54の容量を減少させる。これにより、パイロット圧の増減、換言すれば作業機操作レバー72aの操作量の増減に応じてブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24、補巻ウィンチモータ28へ供給される作動油の量が増減される。
次に、エンジン30のアイドリングストップ時における作業用車両の動作について説明する。
エンジン30をアイドリングストップさせる際には、オペレータがアイドリングストップ切換レバー80aを実施位置Sに切り換える。これにより、コントローラ38が、エンジン30に対する燃料噴射装置32の燃料供給を停止させ、エンジン30の駆動を停止させる。
このエンジン30のアイドリングストップ時には、発電機60にエンジン30の動力が伝達されないため、発電機60が駆動されないが、コントローラ38がインバータを制御してバッテリ62に蓄電された電力により電動機64を作動させる。これにより、パイロット圧用ポンプ70が駆動され、そのパイロット圧用ポンプ70からパイロット圧方向切換装置72bにコントロールバルブ58のポート58a,58bへパイロット圧を供給するための作動油が供給される。すなわち、この第1実施形態では、エンジン30のアイドリングストップ中でもコントロールバルブ58のポート58a,58bへ供給するパイロット圧が維持される。
また、本実施形態では、電動機64により運転室内のエアコン用のコンプレッサ82が駆動されるため、エンジン30のアイドリングストップ中でもエアコンを稼働して運転室内の冷暖房が可能となる。
以上説明したように、この第1実施形態の作業用車両では、エンジン30がアイドリングストップして発電機60を駆動できない状態でも、バッテリ62から供給される電力により電動機64を駆動してパイロット圧用ポンプ70を駆動することができる。これにより、エンジン30のアイドリングストップ中でもパイロット圧用ポンプ70からコントロールバルブ58のパイロット圧用の油圧回路に作動油を供給することができ、エンジン30のアイドリングストップ中にパイロット圧が低下するという不都合を解消することができる。エンジン30のアイドリングストップ中にパイロット圧が低下すると、エンジン30が再始動して作業機駆動ポンプ54の吐出する作動油の流量がスタンバイ流量(作業機4の駆動部を通常駆動させるのに要する作動油の流量)に達するまでに掛かる時間よりもパイロット圧用ポンプ70が作動して所定のパイロット圧に達するまでに掛かる時間の方が一般的に長く、その結果、エンジン30の再始動時における作業機4の操作の応答性が悪くなる。これに対して、この第1実施形態では、上記のようにエンジン30のアイドリングストップ中でもパイロット圧の低下を防ぐことができるため、アイドリングストップしていたエンジン30の再始動時にオペレータが作業機操作レバー72aを操作する際、その操作に応じてコントロールバルブ58が即座にブーム起伏用シリンダ12、ブーム伸縮用シリンダ14、旋回モータ9、主巻ウィンチモータ24、補巻ウィンチモータ28の両供給口のいずれかに作動油を流すことができ、その結果、エンジン30の再始動時における作業機4の操作の応答性が向上する。
また、第1実施形態の作業用車両では、エンジン30と動力分配装置34の間の接続/切断を行うためのクラッチを要しないので、駆動装置の構成の複雑化及び製造コストの増大を抑制することができる。
また、第1実施形態の作業用車両では、アクセルペダル40aの操作/非操作に応じたクラッチの接続/切断の切換制御を行う必要もないため、駆動装置の制御が複雑化するのを抑制することができる。
従って、この第1実施形態の作業用車両では、構成及び制御の複雑化と製造コストの増大を抑制しつつ、エンジン30のアイドリングストップに起因して作業機4を駆動するためのコントロールバルブ58のパイロット圧用の油圧回路に生じる不都合を解消することができる。
また、この第1実施形態では、作業用車両が慣性で走行し、車輪6の回転が駆動伝達装置49を経て走行用モータ46に伝達されて走行用モータ46が駆動される場合に、走行用ポンプ44から走行用モータ46へ吐出される作動油の圧力よりも走行用モータ46から走行用ポンプ44へ吐出される戻り油の圧力が大きくなり、それによって走行用ポンプ44がモータとして駆動される。これにより、この走行用ポンプ44がモータとして作動して発する動力を利用して発電機60が発電を行い、その走行用ポンプ44がモータとして発した動力を電力として回収することができる。
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態による作業用車両の構成について説明する。
この第2実施形態の作業用車両では、上記第1実施形態と異なり、作業機4の駆動部に油圧を供給するための作業機駆動ポンプ54が電動機64によって駆動されるようになっている。
具体的には、この第2実施形態では、動力分配装置34に作業機駆動ポンプ54が接続されておらず、その代わりに、電動機64の駆動軸に作業機駆動ポンプ54が接続されている。なお、この第2実施形態における作業機駆動ポンプ54は、本発明の作業機駆動用主油圧ポンプの概念に含まれるものである。
また、この第2実施形態では、運転室内のエアコン用のコンプレッサが電動機64に接続されていない。
この第2実施形態による作業用車両の上記以外の構成は、上記第1実施形態による作業用車両の構成と同様である。
次に、第2実施形態の作業用車両の動作について説明する。
この第2実施形態の作業用車両では、作業機4の駆動時に、オペレータが走行方向指示レバー41aをニュートラル位置Nにするとともにエンジン回転数設定装置53によってエンジン30の回転数を設定し、エンジン30を駆動した後、図6に示すフローに従ってコントローラ38による処理が行われる。
まず、コントローラ38は、走行方向指示装置41から送られる走行方向指示信号を読み込む(ステップS1)。
次に、コントローラ38は、読み込んだ走行方向指示信号が走行方向指示レバー41aがニュートラル位置Nにあることを示すものであるか否かを判断する(ステップS2)。
このステップS2で、コントローラ38は、走行方向指示信号が走行方向指示レバー41aがニュートラル位置Nにあることを示すものであると判断した場合には、次に、エンジン回転数設定装置53によって設定されたエンジン30の設定回転数N0と、バッテリ62の蓄電量SOCを読み込む(ステップS3)。一方、ステップS2で、コントローラ38は、走行方向指示信号が走行方向指示レバー41aがニュートラル位置Nにあることを示すものではないと判断した場合には、前記ステップS1からの処理をやり直す。
ステップS3の処理の後、コントローラ38は、バッテリ62の蓄電量が十分にあるか否かを判断する(ステップS4)。具体的には、コントローラ38は、当該ステップでバッテリ62の蓄電量が十分であるか否かを判断するためのしきい値SOC−Full(図7参照)をバッテリ62の現状の蓄電量が超えているか否かを判断する。
このステップS4で、コントローラ38は、バッテリ62の蓄電量が十分であると判断した場合、すなわちバッテリ62の蓄電量が前記しきい値SOC−Fullを超えていると判断した場合には、燃料噴射装置32を制御してエンジン回転数を最小回転数Nminに設定する(ステップS5)。この場合、発電機60は、最小の電力を発電し、この発電された電力はバッテリ62に蓄電される。
一方、コントローラ38は、ステップS4でバッテリ62の蓄電量が十分ではないと判断した場合、すなわちバッテリ62の蓄電量が前記しきい値SOC−Full以下であると判断した場合には、燃料噴射装置32を制御してエンジン30の回転数を設定回転数N0に変更する(ステップS6)。この場合、発電機60は、前記設定回転数N0に対応した電力を発電し、この発電された電力はバッテリ62に蓄電される。
そして、コントローラ38は、ステップS5又はS6の処理の後、ステップS1の処理に戻って以降の上記各処理を繰り返し実行する。
作業機駆動ポンプ54及びパイロット圧用ポンプ70は、発電機60から供給される電力とバッテリ62から供給される電力とによって駆動され、作業機駆動ポンプ54は作業機4の駆動部を駆動するための作動油を吐出し、パイロット圧用ポンプ70はコントロールバルブ58のポート58a,58bに供給するためのパイロット圧を生じる作動油を吐出する。
そして、オペレータが作業機操作レバー72aを操作すると、その操作方向に応じたコントロールバルブ58のポート58a又は58bにその操作量に応じたパイロット圧がパイロット圧方向切換装置72bから供給される。パイロット圧検出部76は、このパイロット圧を検出し、その検出圧のデータをコントローラ38へ送る。
コントローラ38は、パイロット圧検出部76によって検出されたパイロット圧に応じてインバータ68を制御することにより図8に示す関係に基づいて電動機64の回転数を制御する。具体的には、コントローラ38は、パイロット圧が図8中の範囲A内にある場合には、パイロット圧が高くなるにつれて電動機64の回転数を上昇させる一方、パイロット圧が低くなるにつれて電動機64の回転数を低下させる。これにより、電動機64によって駆動される作業機駆動ポンプ54は、パイロット圧が高くなる程、回転数が上昇して作動油の吐出量を増加し、パイロット圧が低くなる程、回転数が低下して作動油の吐出量を減少する。
また、この第2実施形態では、エンジン30のアイドリングストップ時には、エンジン30の動力が発電機60に供給されなくて発電機60が駆動できないが、バッテリ62から供給される電力によって電動機64が駆動される。このため、エンジン30が駆動されている時と同様に作業機駆動ポンプ54及びパイロット圧用ポンプ70が駆動され、作業機駆動ポンプ54から作業機4の駆動部へ供給するための作動油が吐出されるとともに、パイロット圧用ポンプ70からパイロット圧を生じる作動油が吐出される。
この第2実施形態による作業用車両の上記以外の動作は、上記第1実施形態による作業用車両の動作と同様である。
以上説明したように、この第2実施形態の作業用車両では、バッテリ62から供給される電力によって駆動可能な電動機64により作業機駆動ポンプ54が駆動されるため、エンジン30がアイドリングストップして発電機60を駆動できない状態でも、バッテリ62から電動機64へ電力を供給して電動機64を駆動し、その電動機64により作業機駆動ポンプ54を駆動することができる。これにより、エンジン30のアイドリングストップ中でも作業機駆動ポンプ54から作業機4を駆動するための作動油を作業機4の駆動部へ供給することができる。このため、この第2実施形態の作業用車両では、エンジン30のアイドリングストップ中でも作業機4を駆動することができる。
この第2実施形態による作業用車両の上記以外の効果は、上記第1実施形態による作業用車両の効果と同様である。
(第3実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第3実施形態による作業用車両の構成について説明する。
この第3実施形態の作業用車両では、上記第2実施形態と異なり、作業機駆動装置52が作業機駆動用主油圧ポンプ84に加えて作業機駆動用副油圧ポンプ86を備えているとともに、パイロット圧用ポンプ70が動力分配装置34によって分配される動力を受けて作動するようになっている。
具体的には、作業機駆動用主油圧ポンプ84は、上記第2実施形態の作業機駆動ポンプ54と同様の油圧ポンプであり、電動機64によって駆動される。この作業機駆動用主油圧ポンプ84の吐出口84aとコントロールバルブ58とを繋ぐ配管59には、ポンプ84側への作動油の逆流を防止するための第1チェック弁88が設けられている。
作業機駆動用副油圧ポンプ86は、可変容量型の油圧ポンプであり、動力分配装置34の出力側に接続されている。作業機駆動用副油圧ポンプ86の吐出口86aは、配管90を介して前記作業機駆動用主油圧ポンプ84の吐出口84aとコントロールバルブ58とを繋ぐ配管59のうち第1チェック弁88よりもコントロールバルブ58側の部位に接続されている。配管90には、作業機駆動用副油圧ポンプ86側への作動油の逆流を防止するための第2チェック弁92が設けられている。この構成により、作業機駆動用主油圧ポンプ84から吐出された作動油と作業機駆動用副油圧ポンプ86から吐出された作動油のうちより高圧の作動油がコントロールバルブ58に供給されるようになっている。
また、作業機駆動装置52は、作業機駆動用副油圧ポンプ傾転駆動装置94を備えている。この傾転駆動装置94は、コントローラ38からの制御信号を受けて作業機駆動用副油圧ポンプ86の斜板の傾転角度を制御することにより作業機駆動用副油圧ポンプ86の容量を制御する。
また、この第3実施形態では、パイロット圧用ポンプ70が動力分配装置34によって分配される動力を受けて作動し、パイロット圧を生じる作動油を吐出するようになっている。
この第3実施形態による作業用車両の上記以外の構成は、上記第2実施形態による作業用車両の構成と同様である。
次に、この第3実施形態による作業用車両の動作について説明する。
この第3実施形態の作業用車両では、エンジン30駆動中及びエンジン30のアイドリングストップ中で電動機64が正常に作動している時には、コントローラ38が作業機駆動用副油圧ポンプ傾転駆動装置94に作業機駆動用副油圧ポンプ86の斜板の傾転角度を制御させて作業機駆動用副油圧ポンプ86の容量を0にさせる。この場合、作業機駆動用副油圧ポンプ86からは作動油が吐出されず、作業機駆動用主油圧ポンプ84からのみ作動油が吐出されてその作動油がコントロールバルブ58へ供給される。
一方、電動機64が故障等により駆動できなくなった場合には、コントローラ38は、作業機駆動用副油圧ポンプ傾転駆動装置94に作業機駆動用副油圧ポンプ86の斜板の傾転角度を制御させて作業機駆動用副油圧ポンプ86の容量を増加させる。この場合、作業機駆動用主油圧ポンプ84は電動機64の駆動不能によって駆動できないため当該圧ポンプ84からは作動油が吐出されないのに対して、作業機駆動用副油圧ポンプ86からは作動油が吐出されてその作動油がコントロールバルブ58へ供給される。
また、この第3実施形態では、エンジン30の駆動時には、動力分配装置34によって分配される動力を受けてパイロット圧用ポンプ70が作動し、コントロールバルブ58のポートへパイロット圧を供給するための作動油を吐出する。一方、エンジン30のアイドリングストップ時には、パイロット圧用ポンプ70に動力が供給されないため、パイロット圧用ポンプ70は駆動できず、作動油を吐出しない。なお、エンジン30のアイドリングストップ時には、バッテリ62から供給される電力により電動機64が駆動され、それによって作業機駆動用主油圧ポンプ84が作動して作業機4を駆動するための作動油をコントロールバルブ58へ供給する。
この第3実施形態による作業用車両の上記以外の動作は、上記第2実施形態による作業用車両の動作と同様である。
以上説明したように、この第3実施形態では、作業機駆動装置52が、動力分配装置34によって分配される動力を受けて作動し、作業機4を駆動するための作動油を作業機4の駆動部へ供給可能な作業機駆動用副油圧ポンプ86を有しているため、電動機64の故障等に起因して作業機駆動用主油圧ポンプ84から作業機4の駆動部へ油圧を供給できない場合でも、作業機駆動用副油圧ポンプ86から作業機4の駆動部へ油圧を供給して作業機4を駆動することができる。また、この第3実施形態では、作業機駆動用副油圧ポンプ86は、容量を変更可能に構成されているため、電動機64が正常に作動していて作業機駆動用主油圧ポンプ84が作業機4の駆動部へ油圧を供給している時は、作業機駆動用副油圧ポンプ86の容量を最低限の容量にして動力消費の削減を図ることができる。
また、この第3実施形態では、エンジン30がアイドリングストップして発電機60を駆動できない状態でも、バッテリ62から供給される電力により電動機64を駆動して作業機駆動用主油圧ポンプ84を駆動することができる。これにより、エンジン30のアイドリングストップ中でも作業機駆動用主油圧ポンプ84からコントロールバルブ58へ作動油を供給することができ、エンジン30のアイドリングストップ中に作業機4の駆動部へ供給すべき作動油の油圧が低下するという不都合を解消することができる。そして、このことに伴って、アイドリングストップしていたエンジン30の再始動時にパイロット圧用ポンプ70が駆動されてパイロット圧を供給できる状態になれば、即座に作業機4の駆動部へその駆動部を駆動可能な圧力をもった作動油を供給することが可能となり、その結果、エンジン30の再始動時における作業機4の駆動の応答性が向上する。
また、第1実施形態の作業用車両では、エンジン30と動力分配装置34の間の接続/切断を行うためのクラッチを要しないので、駆動装置の構成の複雑化及び製造コストの増大を抑制することができる。
また、この第3実施形態では、クラッチを要しないので、作業用車両の構成及び制御の複雑化と製造コストの増大を抑制することができるという上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記各実施形態では、本発明をホイールクレーンに適用した例について説明したが、本発明が適用される作業用車両はそのようなホイールクレーンに限られない。すなわち、ホイールローダやその他の各種作業用車両に本発明を適用することが可能である。従って、本発明の作業機は、クレーン装置にかぎらず、ローダやその他の油圧駆動可能な作業装置であってもよい。
また、上記各実施形態では、蓄電装置としてバッテリ62を用いたが、バッテリの代わりにキャパシタを蓄電装置としてもちいてもよい。
上記実施形態では、コントローラ38がバッテリ62の蓄電量が十分ではない場合にエンジン回転数を設定回転数N0に変更する例について説明したが、この構成に限らず、コントローラ38が、図7に示すバッテリ62の蓄電量(SOC)とエンジン回転数との相関関係を表す関数を持っており、バッテリ62の蓄電量が十分でない場合には、その蓄電量に応じたエンジン回転数を前記関数に従って算出し、その算出したエンジン回転数に実際のエンジン回転数を変更するようにしてもよい。