JP5528855B2 - 低温ブルーム防止剤 - Google Patents

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Description

本発明は、低温ブルーム防止剤に関し、詳しくは、特にテンパリング型チョコレートに対し、ナッツ類、焼菓子類、ゼリー、センタークリーム等の食品を複合した複合チョコレートを低温下に保管した際に、そのチョコレート部分に発生する低温ブルームを防止するためのブルーム防止剤に関する。
チョコレートは、テンパリング型と非テンパリング型に大別される。テンパリング型のチョコレートは、油脂の主成分として、カカオ脂、及び/又は、その組成や物性をカカオ脂に類似させたテンパリング型ハードバターを使用したチョコレートである。そのトリグリセリドの主成分はβ−不飽和−α,α′ジ飽和トリグリセリド(以下、「SUS型トリグリセリド)と略記する)であり、比較的トリグリセリド組成が単純であるため、油脂結晶の転移、安定化が速く、油脂結晶が粗大化しやすい。このような結晶特性のためにテンパリング工程が必須となっている。即ち、テンパリング工程は、安定でしかも微細な油脂結晶核を多数析出させることにより、油脂結晶が粗大化するのを防止すると同時に、その後に引き続いて行われる冷却固化工程での油脂結晶化を促進し、チョコレート表面の艶や、型からの剥離(離型性)を良好なものとするための操作である。
一方、非テンパリング型チョコレートは、油脂の主成分として、SUS型トリグリセリドを多く含有する油脂ではなく、ラウリン酸を多く含有する油脂や、トランス脂肪酸を多く含有する油脂、あるいは、ランダムエステル交換油脂等の非テンパリング型ハードバターを使用したチョコレートである。その油脂のトリグリセリドの組成は極めて複雑であることから、上記のテンパリング型チョコレートと異なり、テンパリング操作を行わず単に冷却しただけでも、十分な艶と離型性を有するチョコレートを得ることができる。
これらのチョコレートは、保管中にその表面や内部が白色化し、極端な場合はなめらかな食感が失われ、ざらついた食感になってしまう現象が観察されることがある。この白色化は、ファットブルーム又は単にブルームと称され、油脂が分離したり溶解したりした後に再結晶した油脂結晶によりチョコレートの表面が粗面化したり、あるいは粗大結晶が生成することにより光の乱反射が起き、白く見えているものである。
ここで、チョコレートに発生するブルームは4種類に分類することができる(非特許文献1参照)。即ち、(i)テンパリング不良や高温保管時に発生するブルーム(以下「高温ブルーム」という)、(ii)20℃程度で放置した場合に1年半〜2年で発生するブルーム(以下「中温ブルーム」という)、(iii)カカオ脂と非テンパリング型ハードバターを併用した際に発生するブルーム(以下「共晶による激しいブルーム」という)、並びに、(iv)油分及び/又は水分を多く含有する食品素材との複合チョコレートを低温に保管した場合に発生するブルーム(以下「低温ブルーム」という)である。
各ブルームは外見上、高温ブルームはチョコレート表面の艶が消え、さらには表面が白色化し、ついには内部にわたって粉状化する状態、中温ブルームはチョコレート表面の艶の消失、さらには表面が白色化する状態、共晶による激しいブルームは表面から内部までチョコレート全体にわたってのざらつきの発生、そして、低温ブルームはチョコレート表面に薄い膜状に白色化した層が生成する状態、という違いがある。
そして、各ブルームの原因としては、高温ブルームはSUS型トリグリセリドのV型結晶からVI型結晶への急速な融液媒介転移、中温ブルームはSUS型トリグリセリドのV型結晶からVI型結晶への非常にゆっくりした固相転移、共晶による激しいブルームは、SUS型トリグリセリドとハードバターの油脂が別個に結晶化してそれぞれ結晶成長する粗大結晶化(グレーニングとも言う)、そして、低温ブルームは他の食品素材からチョコレート部分への油分移行あるいは水分移行(まとめてミグレーションという)によって溶解したり押し出されたりしたチョコレート中の固形脂の再結晶化とされている。
この低温ブルームの発生機構についてさらに詳しく述べると、例えば、ナッツ類とチョコレートとの複合チョコレートでは、ナッツ類に含まれる液状油成分がチョコレートの油脂中に移行し、そこでチョコレート中の油脂を溶解し、チョコレート表面に押し出し、再結晶化させることにより発生すると考えられている。また、焼菓子類とチョコレートとの複合チョコレートでは、焼菓子中の液状油成分がチョコレートの油脂中に移行し、そこでチョコレート中の油脂を溶解し、チョコレート表面に押し出し、再結晶化させることにより発生するものと考えられている。さらに、ゼリーとチョコレートとの複合チョコレートでは、ゼリー中の水分がチョコレート中に移行し、そこでチョコレート中の溶解した油脂をチョコレート表面に押し出し、再結晶化させることにより発生するものと考えられている。
ここで、上記各ブルームのうち、共晶による激しいブルームは、チョコレートに使用する油脂のカカオ脂含量を一定の比率以下とし、且つ、油脂結晶成長を抑制する乳化剤を使用することによって解消可能である。高温ブルームは、油脂結晶成長を抑制する乳化剤を使用する方法によっても解消可能であるし、テンパリングを適正に行い、また流通・保管時に、チョコレートが融解しない温度に保つことで解消可能である。また、中温ブルームは、通常は発生までの期間が極めて長いため、一般的なチョコレートの賞味期限(約1年)では問題にならないことが多い。
これらに対し、低温ブルームは、テンパリングを適正に行い、さらに流通・保管温度を適正に保ったとしても2〜5週間という比較的短い期間で発生し、その発生機構がミグレーションであることから、チョコレート製造時の温度条件の制御のみで完全に防止することは極めて困難である。また、共晶による激しいブルームや高温ブルーム防止のような考え方で、油脂結晶成長を抑制する乳化剤を使用すると、チョコレート表面に押し出される油脂が増加し、低温ブルームは逆に悪化してしまう。
そして、最近はチョコレート製造時の温度管理はもちろん、流通・販売時の温度管理も、冷蔵配送の一般化や、販売箇所での空調や保冷の徹底、さらには、消費者がチョコレートを購入後の家庭での保管の際にも十分な温度管理がなされることが一般的になってきたため、高温ブルームが発生する機会はほとんど考えられなくなってきており、そのため、従来のチョコレートで重視されていた高温ブルーム耐性に比べ、相対的に低温ブルーム耐性が重要視されるようになってきている。
この低温ブルームを防止する方法については、多く検討され、各種提案されている。
先ず、複合する食品素材としてナッツを使用する場合、ナッツ類を糖やガム質等でコーティングして、ナッツ類からのナッツ油のチョコレートへの移行を抑制することによって低温ブルームを防止する方法、あるいは、ナッツ類を予め高温に加熱しておき、チョコレートと混合し低温ブルームを防止する方法が一般的に行われている。
また、複合する食品素材として焼菓子を使用する場合、焼菓子練込用油脂として特定の乳化剤を含有する油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献1参照)や、USU(U:不飽和脂肪酸、S:飽和脂肪酸)で表されるトリグリセリドを含有することを特徴とする油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献2参照)や、特定のエステル交換油脂を含有する油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献3参照)が提案されている。
しかし、このような、チョコレートではなく、チョコレートに複合する側の食品素材に使用する原料の面からの改良では、液状油成分の移行を完全に抑制することは困難であるために十分な改良効果が得られないという問題に加え、食品素材の持つ特有の食感や風味が失われてしまうという問題があった。そのため、チョコレートに使用する油脂の改良によって、この低温ファットブルームを防止する方法についても各種提案されている。
基本的には低温ブルームは、その発生機構からわかるように、チョコレートに液状油脂を使用し、油脂の再結晶化を防止することによって解決可能である。しかし、液状油脂を使用する方法は極めて高い低温ブルーム防止効果があるが、液状油脂はたとえ少量の使用であってもチョコレート表面がべとつきやすく、使用量が多い場合はチョコレート自体が軟化してしまう問題がある。
そのため、特定の乳化剤を含有する油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献4参照)、炭素数20及び/又は炭素数22の飽和脂肪酸を含有するSUS型油脂と炭素数22の1不飽和脂肪酸を含有する硬化油を含有する油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献5参照)、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とする1、3位飽和2位不飽和型グリセリドを有効成分として含有する吸油膨潤防止機能性油脂を使用する方法(例えば特許文献6参照)、複合菓子において焼菓子とチョコレートそれぞれに、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を含有するエステル交換油脂を使用する方法(例えば特許文献7参照)等が提案されている。
しかし、特許文献4記載の方法は、十分な効果を得るためには、チョコレートと、複合する食品素材の両方に使用する必要があることに加え、高濃度の乳化剤の使用を必要とするため、食感と風味に影響が出やすいという問題がある。
また、特許文献5〜7記載の方法は、長鎖脂肪酸を含有するSUS型トリグリセリドを使用することで、チョコレート使用油脂の融点の低下とチョコレートの口溶けの悪化を伴うことなく、低温ブルームの発生をある程度防止することができるが、このトリグリセリドを使用すると、粘りが強くスナップ性に欠けた物性になってしまうという問題がある。さらに、特許文献5記載の油脂は非テンパリング型ハードバターであり、チョコレート中に多量の配合を必要とするため、テンパリング型チョコレートに使用できないという問題もある。特許文献6記載の方法は、SUS型トリグリセリドが有効成分であるため、十分な効果を得るためには油脂中5%程度の添加が必要であり、食感と物性に影響が出やすいという問題もある。特許文献7記載の方法は、チョコレートと、複合する食品素材の両方に使用する必要があることに加え、食感や口溶けも悪いという問題もあった。
一方、高温ブルームや共晶による激しいブルームでは、上述の解決方法以外に、低温ブルームとは逆に、チョコレートにカカオ脂(飽和脂肪酸の主体はステアリン酸であり不飽和脂肪酸の主体はオレイン酸)よりも高融点であり且つ油脂結晶化を促進する油脂や乳化剤を使用することによっても解決可能であることが知れられている。例えば、構成脂肪酸としてベヘン酸を20〜60%、好ましくは40〜60%含有することを特徴とする製菓用油脂のグレイニング防止剤(例えば特許文献8参照)、炭素数20〜26の飽和脂肪酸を含有するSUS(Sは炭素数16以上の飽和脂肪酸残基、Uは不飽和脂肪酸残基)型トリグリセリドを使用する方法(例えば特許文献9、10参照)等の、炭素数18よりも長い脂肪酸(長鎖脂肪酸)含有油脂を使用する方法が提案されている。
しかし、これらの油脂組成物を使用して低温ファットブルームを防止可能であることの記載はなく、また、特許文献9に記載されているように、高温ファットブルームを防止することを目的とした場合は、長鎖脂肪酸を使用する場合炭素数20の飽和脂肪酸は少なくすることが必要である。即ち、脂肪酸の鎖長が長いほど高温ファットブルーム防止効果が高いという知見はあるが、低温ファットブルームについては、現在に至るまで、脂肪酸の種類、特にその鎖長と低温ファットブルーム防止効果との関係について検討されたことはなかった。
「菓子の事典」、小林彰夫、村田忠彦、朝倉書店、361〜363頁
特開平06−311845号公報 特開2002−065162号公報 特開2008−148670号公報 特開平06−311845号公報 特開平01−157342号公報 特開平07−264983号公報 特開2001−197858号公報 特開昭58−198245号公報 特開昭62−134043号公報 特開平02−000406号公報
従って、本発明の目的は、複合チョコレート、例えば、チョコレートとナッツ類を複合した複合チョコレートや、焼菓子とチョコレートを複合した複合チョコレートにおいて、チョコレート部分に発生する低温ファットブルームを、チョコレート部分の物性を変えることなく、ごく少量の添加量で防止することができるブルーム防止剤、該ブルーム防止剤を使用したチョコレート類、及び、該チョコレート類を使用した複合チョコレートを提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々の脂肪酸を使用した各種のトリグリセリドの低温ブルーム抑制効果を比較検討していたところ、液状油が最も効果が高いとされる低温ブルーム防止剤で、全く逆に3飽和トリグリセリドという極めて高融点の油脂を使用しても、その脂肪酸の組成が特定のものであると極めて高い低温ブルーム防止効果があること、さらには、鎖長が長い飽和脂肪酸ほどブルーム耐性が高いという高温ファットブルームでの常識に反し、低温ファットブルームにおいては炭素数20の飽和脂肪酸が炭素数22の飽和脂肪酸よりも低温ブルーム耐性が高く、その効果は炭素数22以上の飽和脂肪酸が一定量以上併含している場合には見られなくなることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記の(1)並びに(2)及び/又は(3)を満たす3飽和トリグリセリドを有効成分とすることを特徴とする低温ブルーム防止剤を提供するものである。
(1)構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量≧5質量%
(2)構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量(質量%)/構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量(質量%)≧0.3
(3)構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量≦40質量%
本発明の低温ブルーム防止剤を使用すると、チョコレートに対しごく少量添加するだけで、ナッツ類、焼菓子、ゼリー等を複合した複合チョコレートにおいて、チョコレート部分に発生する低温ブルームを、チョコレート部分の物性、食感や口溶けの悪化を生じさせることなく、防止することができる。さらに、本発明のチョコレートは、複合チョコレートとした場合の低温ブルームが、チョコレート部分の物性、食感や口溶けの悪化を生じさせることなく、防止されている。
先ず、本発明の低温ブルーム防止剤について詳細に説明する。
本発明の低温ブルーム防止剤は、構成脂肪酸組成において、下記の(1)並びに(2)及び/又は(3)を満たす3飽和トリグリセリドを有効成分とするものである。尚、ここでいう3飽和トリグリセリドの構成脂肪酸組成は、本発明の低温ブルーム防止剤が含有する全ての3飽和トリグリセリド分子により構成されるものである。
(1)構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量≧5質量%
(2)構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量(質量%)/構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量(質量%)≧0.3
(3)構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量≦40質量%
本発明の低温ブルーム防止剤は、上記3飽和トリグリセリドを構成する脂肪酸組成において、上記(1)の通り、構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量が5質量%以上であり、好ましくは7質量%以上、より好ましくは12質量%以上、最も好ましくは20質量%以上である。構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量が5質量%未満であると、本発明の効果が得られない。尚、上限については100質量%であり、大きいほど好ましい。
さらに、本発明の低温ブルーム防止剤は、上記3飽和トリグリセリドを構成する脂肪酸組成において、上記(2)、(3)の少なくとも一方を満たすことが必要であり、上記(2)、(3)の両方を満たすことが好ましい。
上記(2)の通り、構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量(質量%)/構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量(質量%)は0.3以上であり、好ましくは0.5以上である。尚、上限については特になく、大きいほど好ましい。また、分母である、構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量が0の場合も、上記(2)を満たすものとみなす。
上記(3)の通り、構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量は40質量%以下であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。尚、下限は0%であり、少ないほど好ましい。
上記(2)、(3)の少なくとも一方を満たすことが必要な理由は以下の通りである。3飽和トリグリセリドを構成する脂肪酸組成において、構成脂肪酸の全てが炭素数20以下である場合は、炭素数20の飽和脂肪酸含量が5質量%以上であれば低温ブルーム防止効果を示すのであるが、ここで、構成脂肪酸として炭素数20を超える飽和脂肪酸を含む場合、炭素数20の飽和脂肪酸に対して一定比以内の含量であるか、又は、炭素数20を超える飽和脂肪酸の含量が一定範囲内でないと、炭素数20の飽和脂肪酸含量の効果が消失してしまう、即ち低温ブルーム防止効果が得られないためである。具体的には、炭素数20の飽和脂肪酸含量/炭素数22以上の飽和脂肪酸含量が0.3未満で、且つ、構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量が40質量%超であると、炭素数20の飽和脂肪酸の効果が大きく減じられてしまうため、本発明の効果が得られない。
上記3飽和トリグリセリドを構成する脂肪酸組成は、その90質量%以上が炭素数16以上の飽和脂肪酸であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくはその全てが炭素数16以上の飽和脂肪酸である。
炭素数16未満の飽和脂肪酸が10質量%を超えると、少量の添加で低温ブルーム防止効果が得られるという本発明の効果が得られなくなるおそれがある。また、3飽和トリグリセリドの融点が下がることからも、チョコレートの物性に影響を及ぼすおそれがある。
上記3飽和トリグリセリドを得る方法としては、先ず、脂肪酸と、グリセリンあるいはトリグリセリドとをエステル交換する方法が挙げられる。この場合、極度硬化した場合に上記3飽和トリグリセリドとなるような油脂が得られるようなエステル交換油脂を得て、これを極度硬化油とする方法を採ってもよい。
また、別の方法としては、極度硬化した場合に上記3飽和トリグリセリドとなり得る油脂を天然油脂から選択するか、エステル交換等により製造し、極度硬化油とする方法が挙げられる。
極度硬化油とした場合に上記3飽和トリグリセリドとなり得る油脂とは、構成脂肪酸組成において下記の(4)並びに(5)及び/又は(6)を満たす油脂である。
(4)構成脂肪酸組成における炭素数20の脂肪酸が5質量%以上(好ましくは7質量%以上、より好ましくは12質量%以上、最も好ましくは20質量%以上)
(5)構成脂肪酸組成における炭素数20の脂肪酸含量(質量%)/構成脂肪酸組成における炭素数22以上の脂肪酸含量(質量%)が0.3以上(好ましくは0.5以上)
(6)構成脂肪酸組成における炭素数22以上の脂肪酸含量が40質量%以下(好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下)
本発明では、上記3飽和トリグリセリドとして、天然油脂からエステル交換することなく製造可能な点、並びに上記(2)及び(3)を共に満たす点で、からし油の極度硬化油及び/又はサル脂分別中部油の極度硬化油を使用することが好ましい。サル脂分別中部油については、ヨウ素価が好ましくは20〜45、より好ましくは25〜40のものを使用するとよい。
本発明の低温ブルーム防止剤は、上記3飽和トリグリセリドを含有するものである。従って、上記3飽和トリグリセリドをそのまま(100%で)、本発明の低温ブルーム防止剤として使用することもできるが、上記3飽和トリグリセリドは極めて高融点であり、そのままであるとチョコレート生地に溶解し、混合することは困難である。また、該3飽和トリグリセリドの融点以上にチョコレート生地を加熱すると、他のチョコレート成分、例えばカカオマス、カカオパウダー、全粉乳、脱脂粉乳等に含まれるたんぱく質が変性したり、フレーバーが蒸散してしまう等して、風味面で好ましくないチョコレートになってしまうおそれがある。そのため、上記3飽和トリグリセリドを低温ブルーム防止剤として使用する際には、チョコレート生地原料としてカカオバターやハードバター等の食用油脂を配合する場合は、それらの食用油脂に予め溶解してから使用することが好ましい。
以上の理由から、本発明の低温ブルーム防止剤は、上記3飽和トリグリセリドを油脂に溶解してなり、融点が、通常のチョコレート生地作成温度で溶解する温度(通常50℃程度である)以下である油脂組成物の形態とすることが好ましい。この場合の油脂組成物の好ましい融点は50℃未満、より好ましくは40℃未満である。融点の下限は好ましくは20℃である。
上記油脂組成物の形態である本発明の低温ブルーム防止剤において、上記3飽和トリグリセリドの含有量は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは5〜70質量%、最も好ましくは10〜50質量%である。この範囲内であると、本発明の低温ブルーム防止剤の溶解に高温を要することがなく、容易にチョコレート生地中に分散させることが可能であるため利便性が高い。
上記油脂組成物とするために使用する油脂としては特に制限されず、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温(25℃)で液体の油脂や、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂を用いることができ、また、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。尚、エステル交換の場合は、油脂と脂肪酸を用いたエステル交換であってもよい。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、少量の添加で低温ブルーム防止剤の融点を下げることが可能である点、上記油脂組成物自体がブルームを発生しない点、及び、低温ブルーム防止効果をより高めることが可能な点で、上記常温で液体の油脂のうちの1種又は2種以上を使用することが好ましい。
上記油脂組成物の形態である本発明の低温ブルーム防止剤において、油脂の含有量は、上記3飽和トリグリセリドも含めて、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%である。
尚、上記油脂組成物とするために使用する油脂として3飽和トリグリセリドを含有する油脂を使用する場合は、前述した3飽和トリグリセリドとあわせ、得られる低温ブルーム防止剤(油脂組成物)に含まれる3飽和トリグリセリドの組成が、前述の(1)並びに(2)及び/又は(3)を満たすことを必要とするのはもちろんである。
上記油脂組成物の形態である本発明の低温ブルーム防止剤には、一般的にチョコレート製造に使用することのできる各種原材料や、マーガリン・ショートニング等の油脂組成物製造に使用することのできる原材料、例えば、水、乳化剤、酸化防止剤、糖類、糖アルコール、デキストリン、オリゴ糖、澱粉、小麦粉、無機塩及び有機酸塩、ゲル化剤、乳製品、卵製品、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材全般、着香料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、pH調整剤等を用いることができる。ただし、これらの原材料のうち、水や水分を有する原材料を使用すると、生チョコレート以外に使用することが困難となるため、用いないことが好ましい。
上記乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、酵素処理レシチン等の乳化剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。中でも、低温ブルーム防止効果をより高めることが可能である点で、結合脂肪酸が炭素数16〜22のモノエン脂肪酸又はジエン脂肪酸である、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる常温で液状の乳化剤のうちの1種又は2種以上を使用することが好ましい。反対に、本発明の低温ブルーム防止剤では、SUS型トリグリセリドのV型結晶からVI型結晶への転移を抑制する乳化剤を使用すると、その添加量によっては低温ブルーム防止効果を大きく減じてしまうため、公知のテンパリング型チョコレートの高温ブルーム防止効果を有する乳化剤については使用しないことが好ましい。
また、本発明の低温ブルーム防止剤は、上記油脂組成物の形態の一種として、上記3飽和トリグリセリドを含有するハードバター組成物の形態とすることもできる。
本発明のブルーム防止剤がハードバター組成物の形態である場合、該ハードバター組成物は非テンパリング型であってもテンパリング型であってもよいが、テンパリング型であることが好ましい。これは、先ず、低温ブルーム自体が、テンパリング型チョコレートを使用した場合に顕著に発生するものであるため、テンパリング型チョコレートへの相溶性を考えた場合、本発明のブルーム防止剤であるハードバター組成物がテンパリング型であるとカカオバターとの相溶性に全く問題なく、チョコレート生地中での使用量に特に制限を受けることなく使用できるためである。この点、非テンパリング型であると、非テンパリング型チョコレートに使用する場合はほぼ問題なく使用することができるものの、テンパリング型チョコレートに使用する場合は、その油分中で最大でも20質量%程度に使用が制限されてしまい、広範に使用することができない。
即ち、本発明の低温ブルーム防止剤がハードバター組成物の形態である場合、そのトリグリセリド組成におけるSUS型トリグリセリドの含有量は60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは75〜98質量%である。
上記ハードバター組成物の形態である本発明の低温ブルーム防止剤において、上記3飽和トリグリセリドの含有量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜12質量%である。この範囲内であると、チョコレート生地の配合に特に制限されることなく、チョコレート生地中に分散させることが可能であるため利便性が高い。
上記ハードバター組成物に使用する油脂としては、一般のハードバターに使用することのできる油脂であれば特に制限することなく使用することができ、例えば、テンパリング型ハードバター組成物の場合は、カカオバター、シア脂、マンゴ核油、サル脂、イリッペ脂、パーム油及びこれらの分別油等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。また、エステル交換によってSUS型トリグリセリドに富む油脂を製造して用いることもできる。さらに、また、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とする1,3位飽和2位不飽和型トリグリセリド等の低温ブルーム防止効果を有するトリグリセリドを添加してもよい。
また、非テンパリング型ハードバター組成物の場合、ラウリン型、トランス酸型、非ラウリン非トランス型の3種があるが、それぞれに一般的に使用することのできる油脂を特に制限なく使用することができる。
上記ハードバター組成物の形態である本発明の低温ブルーム防止剤において、油脂の含有量は、上記3飽和トリグリセリドも含めて、好ましくは95〜100質量%、より好ましくは99〜100質量%である。
上記ハードバター組成物には、一般的にハードバターに使用することのできる各種原材料、例えば、着色料、乳化剤、酸化防止剤、香料等の任意成分を含有することができる。これらの任意成分の含有量は、上記ハードバター組成物中、好ましくは合計で20質量%以下、より好ましくは10質量%以下とする。
尚、上記乳化剤としては、前述の本発明の低温ブルーム防止剤を油脂組成物の形態とする場合に記載した乳化剤と同様に乳化剤を選択し、使用することができる。
次に、本発明のチョコレートについて述べる。
本発明のチョコレートは、本発明の低温ブルーム防止剤を、該チョコレートの油分中の3飽和トリグリセリド含量として0.01〜3質量%、好ましくは0.03〜1質量%、より好ましくは0.03〜0.5質量%となるように添加したチョコレートである。即ち、本発明のチョコレートにおける本発明の低温ブルーム防止剤の含有量は、該低温ブルーム防止剤に含まれる3飽和トリグリセリド換算で上記の範囲である。本発明のチョコレートの油分中の3飽和トリグリセリド含量として0.01%未満では本発明の効果が得られず、3質量%を超えるとチョコレートの口溶けが悪化してしまう。
本発明において、チョコレートとは、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されたチョコレート、準チョコレートだけでなく、カカオマス、カカオバター、ココアパウダー等のカカオ原料を利用した生チョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等の油脂加工食品も含まれるものであり、カカオマス、ココアパウダー、粉乳等の各種粉末食品、油脂類、糖類、乳化剤、香料、色素等の中から選択した原料を任意の割合で混合し、常法により、ロール掛け、コンチング処理して得ることができるものである。
本発明のチョコレートは、非テンパリング型であってもテンパリング型であってもよいが、上記ハードバター組成物に関して述べたとおり、低温ブルーム自体が、テンパリング型チョコレートを使用した場合に顕著に発生するものであるため、本発明のチョコレートはテンパリング型であることが、本発明の低温ブルーム防止剤の効果の意義が大きく好ましい。即ち、本発明のチョコレートは、その油脂のトリグリセリド組成におけるSUS型トリグリセリドの含有量が60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80〜99質量%である。
本発明のチョコレートの組成は、その種類に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、その一例は以下の通りである。
油分(本発明の低温ブルーム防止剤由来の3飽和トリグリセリドを含む)
35〜50質量%
本発明の低温ブルーム防止剤由来の3飽和トリグリセリド
0.01〜3質量%
カカオマス 10〜50質量%
粉乳 0〜20質量%
砂糖 35〜50質量%
さらに、本発明のチョコレートの製造方法について述べる。
本発明の低温ブルーム防止剤の有効成分である上記3飽和トリグリセリドは、従来の低温ブルーム防止効果を示す油脂、例えば液状油や長鎖飽和脂肪酸を含有するSUS型トリグリセリドと異なり、チョコレート生地にごく少量添加するだけで良好な低温ブルーム防止効果を示す。そのため、本発明の低温ブルーム防止剤のチョコレート生地への添加方法についてはさまざまな添加方法を選択することができるが、大別すると下記(a)、(b)の2つの方法があり、これらのどちらの方法を用いてもよく、両方の方法を用いてもよい。
(a)本発明の低温ブルーム防止剤を、チョコレート生地の原材料として使用し、常法によりチョコレート生地を製造する方法。
(b)本発明の低温ブルーム防止剤を、常法により製造したチョコレート生地に添加する方法。
上記(a)の方法を選択する場合は、本発明の低温ブルーム防止剤の形態は、3飽和トリグリセリドそのもの、上記油脂組成物の形態のどちらの形態で添加してもよいが、チョコレート生地への分散性が高まる点において、上記油脂組成物の形態で添加することが好ましい。
また、上記(b)の方法を選択する場合は、本発明の低温ブルーム防止剤の形態は、3飽和トリグリセリドそのもの、上記油脂組成物の形態のどちらの形態で添加してもよいが、この方法を選択する場合、本発明の低温ブルーム防止剤は完全に溶解した状態で添加する必要があるため、溶解温度を低下することが可能で、それによってチョコレート生地への分散性が高まる点において、上記油脂組成物の形態で添加することが好ましい。
尚、チョコレートがテンパリング型であって(b)の方法を選択する場合、テンパリング時期は、本発明の低温ブルーム防止剤の添加前であっても添加後であってもよい。
次に、本発明の複合チョコレートについて述べる。
本発明の複合チョコレートは、本発明のチョコレートと、水分及び/又は油分を多く含有する食品素材を複合したものである。水分及び/又は油分含量が低い食品素材では低温ブルームそのものが発生しないためである。通常、食品素材中の水分及び油分の合計含量が12質量%以上であると、ブルームが発生しやすい。
該水分及び/又は油分を多く含有する食品素材としては、例えば、ナッツ類、クッキー・サブレ・バターケーキ・シュー・パイ等の焼菓子類、ブリオッシュ・デニッシュ等のパン類、ジャム、ゼリー類、糖漬け果実、糖液、クリーム等が挙げられる。
本発明の複合チョコレートにおいて、本発明のチョコレートと食品素材との比率は任意であるが、具体的には下記の通りとすることが好ましい。
チョコレートとナッツ類を複合した複合チョコレートの場合、チョコレートとナッツ類の比は、チョコレート100質量部に対し、ナッツ類を好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜100質量部である。
チョコレートと焼菓子類・パン類等のベーカリー食品を複合した複合チョコレートの場合、チョコレート100質量部に対し、ベーカリー食品を好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜400質量部である。
チョコレートと、ジャム・ゼリー類・糖漬け果実・糖液・クリーム等の水分含量の高い食品素材を複合した複合チョコレートの場合、チョコレート100質量部に対し、食品素材を好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜100質量部である。
複合の方法としては、特に限定されず、例えば、上記食品素材をチョコレート中に分散する、上記食品素材の一部又は全体をチョコレートでエンローバー又はコーティングする、上記食品素材をトリュフ、シェルチョコレート等のチョコレートのセンターに使用する等の方法を挙げることができる。
より具体的には、チョコレートとナッツ類を複合した複合チョコレートの場合、チョコレート製造の際にナッツ類を添加混合したり、センターとしてナッツ類を使用する方法等を挙げることができる。
また、チョコレートとベーカリー食品を複合した複合チョコレートの場合、チョコレート製造の際に焼菓子類の破砕物を添加混合したり、センターとして焼菓子を使用したり、逆に、焼菓子にチョコレートをエンローバー又はコーティングしたりする方法等を挙げることができる。
また、チョコレートとジャム・ゼリー類・糖漬け果実・糖液・クリーム等の水分含量の高い食品素材を複合した複合チョコレートの場合、チョコレート製造の際に水分含量の高い食品素材の破砕物を添加混合したり、センターとして水分含量の高い食品素材を使用したり、逆に、水分含量の高い食品素材にチョコレート類をエンローバー又はコーティングしたりする方法等を挙げることができる。
以下に本発明の実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
<3飽和トリグリセリドの製造>
〔製造例1〕
サル脂分別中部油(ヨウ素価32)を、ニッケル触媒(SO-850:堺化学製)を用いて、反応温度190℃、水素圧3.0kg/cm2下で、ヨウ素価0まで硬化反応を行った。脱触媒後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、サル脂分別中部油の極度硬化油を得た。
〔製造例2〕
からし油を原料油脂とし、ニッケル触媒(SO-850:堺化学製)を用いて、反応温度190℃、水素圧3.0kg/cm2下で、ヨウ素価0まで硬化反応を行った。脱触媒後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、からし油の極度硬化油を得た。
〔製造例3〕
ハイエルシンナタネ油を原料油脂とし、ニッケル触媒(SO-850:堺化学製)を用いて、反応温度190℃、水素圧3.0kg/cm2下で、ヨウ素価0まで硬化反応を行った。脱触媒後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、ハイエルシンナタネ油の極度硬化油を得た。
〔製造例4〕
大豆油を原料油脂とし、ニッケル触媒(SO-850:堺化学製)を用いて、反応温度190℃、水素圧3.0kg/cm2下で、ヨウ素価0まで硬化反応を行った。脱触媒後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、大豆油の極度硬化油を得た。
以下の実施例及び比較例では、製造例1〜4で得られた極度硬化油、構成脂肪酸の全てが炭素数20の飽和脂肪酸である3飽和トリグリセリドとして「トリアラキジン」(東京化成工業製)、構成脂肪酸の全てが炭素数22の飽和脂肪酸である3飽和トリグリセリドとして「トリべへニン」(東京化成工業製)を使用して、ブルーム防止剤を製造した。
〔実施例1〜6、比較例1〜6〕ブルーム防止剤、チョコレート及び複合チョコレートの製造
上記製造例1〜4で得られた極度硬化油(3飽和トリグリセリド)、トリアラキジン及びトリベヘニンを、表1に記載の比率で混合し、さらに、質量基準で9倍量のサル脂分別中部油(SUS型トリグリセリド含有量=95質量%)を添加し、加温、溶解して、ハードバター組成物の形態である本発明の低温ブルーム防止剤A〜F(実施例1〜6)、及び、比較例の低温ブルーム防止剤G〜K(比較例1〜5)を得た。
これらの低温ブルーム防止剤A〜Kの3飽和トリグリセリド含量、3飽和トリグリセリドの(1)構成脂肪酸組成における構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量、(2)構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量/構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量の値、及び(3)構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量については表2に記載した。
得られた低温ブルーム防止剤A〜Kを使用して、下記<チョコレートの配合・製法>により、テンパリング型の本発明のチョコレートA〜F(実施例1〜6)、及び、比較例のテンパリング型チョコレートG〜K(比較例1〜5)を得た。なお、低温ブルーム防止剤を使用しない比較例として、低温ブルーム防止剤3質量部に代えてサル脂分別中部油3質量部を使用したテンパリング型チョコレートL(比較例6)も製造した。
さらに、下記<サブレの配合・製法>によりサブレを製造し、得られたサブレと上記テンパリング型チョコレートA〜Lを使用して、下記<複合チョコレートの配合・製法>により本発明の複合チョコレートA〜F(実施例1〜6)、及び、比較例の複合チョコレートG〜L(比較例1〜6)を得た。得られた複合チョコレートは、下記<低温ブルーム試験>に供した。
<チョコレートの配合・製法>
低温ブルーム防止剤3質量部(3飽和トリグリセリド含有量=10質量%)、カカオバター28質量部、カカオマス(油分含有量=55質量%)2.9質量部を55℃に加温して溶解し、ココアパウダー(油分含有量=22質量%)15質量部、全粉乳(油分含有量=25質量%)8質量部、脱脂粉乳5質量部、砂糖37.7質量部、レシチン0.4質量部を、練り合わせてペースト状とし、ロール掛けした後、コンチングして、チョコレート生地を得た。このチョコレート生地をテンパリングした後、5℃で12時間冷却し、チョコレートを得た。尚、チョコレートの油分含量は37.9質量%、チョコレートの油分中の3飽和トリグリセリド含量は0.08質量%であり、その全てが低温ブルーム防止剤由来であった。
<サブレの配合・製法>
15℃に調温したショートニング(油脂配合はパーム油:豚脂=50:50)45質量部と砂糖45質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、軽く混合した後、高速で7分間クリーミングした。ついで、低速で混合しながら、30秒かけて水13質量部を添加し、さらに1分混合した。さらに、予め混合して篩っておいた小麦粉100質量部、脱脂粉乳2質量部、重曹0.5質量部の混合物を添加し、低速30秒、中速30秒混合し、サブレ生地を得た。このサブレ生地をワイヤーカットで、厚さ5mm、直径5cmに成型し、180℃で10分焼成し、サブレを得た。
<複合チョコレートの配合・製法>
50℃に加温・溶解した後、テンパリングしたチョコレートを、サブレに対し3倍量をエンローバーし、複合チョコレートを得た。
<低温ブルーム試験>
複合チョコレートを、20℃の恒温器で保管し、10日後、30日後、60日後、90日後に、下記(評価基準)に従って低温ブルーム耐性の評価を行なった。その結果を表3に記載した。
(評価基準)
◎:表面の艶は良好であり、低温ブルームはみられない。
○:表面の艶が失われているが、白色化は発生していない。
△:白色化が発生している。
×:激しい白色化が発生している。
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Claims (3)

  1. 下記の(1)並びに(2)及び/又は(3)を満たす3飽和トリグリセリドを有効成分とすることを特徴とする低温ブルーム防止剤。
    (1)構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量≧5質量%
    (2)構成脂肪酸組成における炭素数20の飽和脂肪酸含量(質量%)/構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量(質量%)≧0.3
    (3)構成脂肪酸組成における炭素数22以上の飽和脂肪酸含量≦40質量%
  2. 上記3飽和トリグリセリドを構成する脂肪酸の全てが炭素数16以上の飽和脂肪酸である請求項1記載の低温ブルーム防止剤。
  3. 上記3飽和トリグリセリドが、からし油の極度硬化油及び/又はサル脂分別中部油の極度硬化油である請求項1又は2記載の低温ブルーム防止剤。
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