次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
図1から図22を参照し、第1の実施の形態に係る面発光型半導体レーザアレイ及びその面発光型半導体レーザアレイを搭載したマルチビーム光源を説明する。
図1は、マルチビーム光源装置の概略の構成を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、マルチビーム光源装置107は、面発光型半導体レーザアレイ201、カップリングレンズ202、アパーチャミラー203、収束レンズ204、光検知センサ210、制御基板206及び光束分割プリズム108から構成される。
なお、面発光型半導体レーザアレイは、本発明における発光装置に相当する(以下の変形例及び実施の形態においても同様)。
カップリングレンズ202は、面発光型半導体レーザアレイ201から出射される複数の光ビームを平行光束にするように調整される。すなわち、面発光型半導体レーザアレイ201から出射される複数の光ビームは、カップリングレンズ202のX、Y、Z方向の配置を調整することによって、カップリングレンズ202の光軸に直交する面内(YZ平面)において、光軸に対して各発光素子が対称に配列するように調整される。このように調整された状態で、光ビームが出射される。
アパーチャミラー203は板状に形成され、面発光型半導体レーザアレイ201側の面を反射面となし、光軸と直交する面から主走査方向に所定角度、例えば45°傾けられて配備される。アパーチャミラー203の中央部には、面発光型半導体レーザアレイ201から出射される光束の径よりも小さい径の開口が設けられる。面発光型半導体レーザアレイ201から出射され、アパーチャミラー203の開口を通過した光束は、図示していないポリゴンミラーへと向かう。一方、アパーチャミラー203の開口を通過せず反射された周辺光は、収束レンズ204を介して光検知センサ210に導かれる。面発光型半導体レーザアレイ201から出射される光ビームの図示していないポリゴンミラー各面による走査を開始した後、画像領域に至るまでの時間を利用して、面発光型半導体レーザアレイ201の各発光素子(面発光レーザ素子)を順次点灯する。そして各々のビーム強度を検出し、基準値と比較して、各発光素子の出力が所定値となるように注入電流をセットする。セットされた注入電流は次の検出時まで保持され、ビーム強度を一定に保つ。
なお、本実施の形態では、光検知センサ210を面発光型半導体レーザアレイ201を実装する制御基板206上に実装し、外部ノイズ等による検出信号への影響がないようにしている。
制御基板206には、発光素子の発光出力を一定に保持するパワー制御回路及び画像情報に応じて発光素子を各々変調する駆動回路が形成されている。制御基板206は、カップリングレンズ202とともに一体的に保持され、マルチビーム光源装置を構成する。
図2は、マルチビーム光源装置の分解斜視図である。図3は、図2に示すマルチビーム光源装置を裏面側から見たときの制御基板とベース部材の組み付け部分を示す分解斜視図である。図4は、図2に示すマルチビーム光源装置の主走査方向の断面を示す図である。
マルチビーム光源装置107は、カップリングレンズ202を保持するホルダ部材208と、面発光型半導体レーザアレイ201を実装した制御基板206を保持するベース部材207とをカップリングレンズ202の光軸に直交する基準面で接合し、ねじ締結する。これにより一体化した構成としている。
ベース部材207とホルダ部材208とは、本実施の形態では、いずれもアルミダイキャストにより形成しているが、略同一の熱膨張係数であれば別材質であってもよい。ベース部材207には、面発光型半導体レーザアレイ201からのビーム強度を検出するためのアパーチャミラー203、収束レンズ204及び制御基板206上に実装される光検知センサ210へとビームを折り返すミラー205が配備される。
図3及び図4に示すように、制御基板206のベース部材207への取り付けは、ベース部材207に形成された取付面221(当接面248と同じ)に、パッケージの表面301側を当接して光軸と直交する面内での位置決めを行う。また、パッケージの側面のうち、隣接する2面320、321をあらかじめ決められた基準面である内側面に突き当てて、光軸と直交方向の位置決めを行う。更に、取付面222には光検知センサ210の上面が当接され、位置決めを行う。
本実施の形態では、板金で成型された付勢部材209の板ばね部220により制御基板206を裏側から押圧するとともに、3点のアンカー部(折り曲げ部)218を制御基板206の穴219に嵌合して制御基板206を矢印方向223に寄せ組みする。これにより、ベース部材207に対する面発光型半導体レーザアレイ201の位置決めがなされる。
ベース部材207には、3箇所のスタッド216が形成され、制御基板206に開けた貫通穴217を貫通して、スタッド216に付勢部材209をネジ232で締結することで、制御基板206を支持する。付勢部材209にて制御基板206を裏側から押圧しており、制御基板206をベース部材207等に直接締結しない構成である。従って、制御基板206に負荷をかけずに確実に、ベース部材207に面発光型半導体レーザアレイ201を位置決め、支持することができる。
なお、付勢部材209は弾性を有する材質であれば、樹脂等で形成しても良く、板ばね部の代わりに、ゴム等の弾性部材を挟み込んでもよい。
図4に示すように、カップリングレンズ202は、ホルダ部材208に形成された円筒面230に、コバ部との隙間に接着剤を充填して固定される。カップリングレンズ202の光軸251に直交する面250と面発光型半導体レーザアレイ201の配列面との平行性を合わせるため、当接面248にパッケージ246−1(面発光型半導体レーザアレイ201)の表面301側を突き当てて搭載する。なお、当接面248は、カップリングレンズ202の光軸251に直交する面250と平行になるようあらかじめ設計されている。
こうすることにより、光軸方向の位置が決まり、光ビームの出射方向を当接面248と直交させることができる。
次に、図5から図10を参照し、本実施の形態に係る面発光型半導体レーザアレイについて説明する。
図5は、マルチビーム光源装置に含まれる面発光型半導体レーザアレイの構成を模式的に示す分解斜視図である。図6は、面発光型半導体レーザアレイの詳細な構成を示す平面図である。図7は、図6のA−A線に沿う断面図である。図6及び図7では、見やすくするために一部が省略され、一部が誇張して描かれている。また、図6及び図7は、カバー部材が実装された後の状態を示す。図8から図10は、面発光型半導体レーザアレイの実装状態を説明するための図である。図8は、カバー部材が実装される前のパッケージの構成を示す平面図である。図9は、カバー部材の構成を示す平面図である。図10は、カバー部材が実装される際の構造を示す断面図である。図10は、図8及び図9のA−A線に沿う断面図である。
なお、以下、本実施の形態では、面発光型半導体レーザアレイ201における発光素子のピッチが70μmであるものを例示して、説明する。後述するように、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、隣り合うかそれ以上離れた他の発光素子に、入射しないか又は入射角が10°以上になるようにするには、発光素子と反射面(カバー部材の上下面)との距離を184μm以下にすればよい。
図5に示すように、面発光型半導体レーザアレイ201は、チップ245、パッケージ246−1、カバー部材410を有する。
チップ245は、同一平面に配列するように設けられ、各々がその平面の一方の側に光ビームを出射する発光素子を有する。すなわち、チップ245は、同一平面に発光素子である面発光型半導体レーザ素子がモノリシックに2次元配列されてなる。
なお、本実施の形態におけるチップは、本発明における発光素子アレイに相当する。
図5から図7に示すように、パッケージ246−1は、一方の面に形成された、チップ245を固定するための固定部246a−1、チップ245に接続されるリード端子である配線402を備える。リード端子である配線402は、図6及び図7を用いて後述するように、ボンディングワイヤ401によりチップ245の電極端子であるパッド403に接続される。パッケージ246−1は、放射状にリード端子である配線402が設けられてなる実装用パッケージである。
チップ245は、チップ245の光ビームを出射する側の面である出射面245aと反対面を固定部246a−1に対向させた状態で、固定部246a−1に固定される。そして、チップ245は、発光素子である面発光型半導体レーザ素子の配列された平面がパッケージの上面と平行となるように、平面視におけるパッケージ246−1に形成された固定部246a−1に実装される。
図6及び図7に示すように、本実施の形態では、ボンディングワイヤを避け反射面をチップに極力近づけている。
カバー部材410は、チップ245の出射面245aに対向する領域R1で、チップ245の出射面245aに近接するように設けられている。また、カバー部材410は、チップ245の出射面245aに対向する領域以外の領域R2で、リード端子である配線402を電極端子であるパッド403に接続するボンディングワイヤ401と接触しないように設けられている。また、カバー部材410は、ある発光素子から出射された光ビームがカバー部材410に反射された反射光が、その発光素子に隣接する発光素子に入射する方向と、発光素子が配列している平面に垂直な方向との角度が10°以上になるように設けられている。カバー部材410により、パッケージ246−1内は、不活性ガスを封入した状態で封止される。
なお、カバー部材410が出射面245aに近接するとは、カバー部材410が出射面245aに接している場合、あるいはカバー部材410が出射面245aに近づいている場合を含む。
図6及び図8に示すように、パッケージ246−1には配線402のパターンが作られている。配線402は、チップ245のパッド403とボンディングワイヤ401で電気的に接続されている。図中405は省略を表す点であり、配線やボンディングワイヤ、パッド等はこの点の部分にも存在しているが省略している。
図7に示すように、チップ245は、パッケージ246−1の一方の面に形成され、チップ245を固定するための固定部246a−1に、図示していない熱伝導の良い接着剤で固定されている。カバー部材410は、パッケージ246−1に接着剤404にて固定されている。
図7及び図9に示すように、カバー部材410は、平行平板な部分410a、及び平行平板な部分410aの以外の部分であって、平面視において平行平板な部分410aの周縁に設けられている部分410bを有する。平行平板な部分410aには、カバー部材410の上面408が反射面407にできるだけ近づくよう(平行平板部分の厚さは約100μm)に空間406が設けられている。平行平板な部分410aの以外の部分410bは、ボンディングワイヤ401に接触しないような形状に設計されている。平行平板な部分410a、及び平行平板な部分以外の部分410bを含むカバー部材410は、透明な樹脂で射出成形によって作られている。また、カバー部材410の上下面には、図示していない反射防止膜があらかじめ設けられている。
図10に示すように、図8に示すパッケージ246−1に、図9に示すカバー部材410、すなわち発光エリアに相対する位置の部分の肉厚が薄くなるよう空間406を設けたカバー部材410を、接着剤404を介して実装する。換言すれば、図9に示すカバー部材410は、チップ245の出射面245aに対向する領域R1における平行平板な部分410aの肉厚が薄くなるよう空間406を設けたものである。
図11は、チップがパッケージに実装された後におけるチップの周辺を拡大して示す断面図である。カバー部材410はパッケージ246−1の固定部246a−1に接着剤404で固定され、チップ245の表面である出射面245aと反射面407の間には微小な隙間G(約50μm)が存在するように設計されている。すなわち、カバー部材410は、チップ245の出射面245aに対向する領域R1で、チップ245の出射面245aに近接するように設けられている。また、カバー部材410は、チップ245の出射面245aの出射面245aに対向する領域以外の領域R2で、ボンディングワイヤ401に接触しないような形状に設計されている。更に、前述したように、カバー部材410の上面408は反射面407に十分近く(約100μm)設計されている。従って、上面408が戻り光の反射面となったとしても、出射面245aと反射面の距離は約150μmになる。従って、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、隣り合う又はそれ以上離れた他の発光素子に、入らないか又は入射角が10°以上になるような条件にすることができる。
図12は、カバー部材がチップの表面(出射面)に密着するように、カバー部材を設計し、固定した例を示す拡大断面図である。この場合、接着剤404はその厚みで実装誤差を吸収するように設計されている。チップ245の表面(出射面)245aと反射面407は密着しているため、戻り光は他の発光素子に入らない。またカバー部材410の上面408が戻り光の反射面になったとしても、光源と反射面の距離は、約100μmになって、図11に示す例よりもさらに近づくことになる。従って、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、隣り合う又はそれ以上離れた他の発光素子に、入らないか又は入射角が10°以上になるような条件にすることができる。
次に、図13から図18を参照し、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、隣り合う又はそれ以上離れた他の発光素子に、入らないか又は入射角が10°以上になるように、反射面407を出射面245aに近づける条件について説明する。なお、図13から図18では、説明しやすくするために、寸法やサイズは、一部が省略され、一部が誇張して描かれている。また、カバー部材410の上面408が反射面となった場合については、反射面407に置き換えて同様に説明できるので、説明は省略する。
図13は、面発光型半導体レーザアレイのチップにおける発光素子の配列パターンを示す図である。チップ245には、複数(ここでは21個)の発光素子249が同一基板上、すなわち同一平面上に配置されている。ここでは、X軸方向は主走査対応方向であり、Y軸方向は副走査対応方向である。複数の発光素子249は、Y方向に沿って等間隔d1となるように配列されている。また、複数の発光素子249は、すべての発光素子をY軸方向に伸びる仮想線上に正射影したときに等間隔d2となるように配置されている。すなわち、21個の発光素子は、2次元的に配列されている。なお、発光素子249の間隔とは発光素子の中心と他の発光素子の中心の間隔、すなわち中心間距離を示す。また、発光素子の数は21個に限定されるものではない。
各発光素子は、円形で且つ光密度の高い微小な光スポットを21個同時に感光体ドラム上に形成することが可能である。
また、面発光レーザアレイでは、各発光素子を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光素子の間隔が等間隔d2である。従って、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム上では副走査方向に等間隔で発光素子が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
そして、例えば、上記間隔d2を2.65μm、光走査装置の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。また、主走査対応方向の発光素子数を増加したり、副走査対応方向の間隔d1を狭くして間隔d2を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光素子の点灯のタイミングで容易に制御できる。
図14は、面発光型半導体レーザアレイのチップの周辺において光ビームが出射される様子及びカバー部材で反射される様子を示す断面図である。図14は、図13のB−B線に沿う断面図である。ただし、図13では、発光素子が3個配列しているが、図14では、発光素子が3個ではなく5個配列している例を示している。
なお、図14で示しているビーム線(長い矢印)は、発光素子中心から出ている任意のビームである。また、図14に示すθが、戻り光の発光素子に入射する入射角となる。
本発明の発明者らは、入射角θを任意に変えることができるように光学系を組み付けて、戻り光が発光波形に悪影響を与えるか実験を行った。その実験の結果を図15に示す。図15は、発光素子の光出力の時間依存性を模式的に示すグラフである。図15では、縦軸を発光素子の光出力、横軸を時間としている。図15に示すように、点線で示した正常波形は時間とともに一様に光出力を低下させる。それに対し、実線で示した異常波形では、一様な低下ではなく、ある時間に対し局所的に光出力を低下させている。この実験では、同時に全ての発光素子を発光させて、その全体の光量をフォトディテクターで検出した。実験に用いた波形は、周波数が1kHzであり、デューティーが50%のものである。この実験を行うことにより、この光源を複写機に利用する場合に、4800dpi相当の1ラインをどの程度高精細に形成できるかを判断するための指標が得られる。詳細な説明は省略するが、この波形において、1つの発光素子の光出力に対して、数%程度の誤差が生じると画像形成を行う際に不具合が生じることが判っているからである。従って、この実験では、誤差が数%を超えた場合に、不具合があると判断することになる。
今回行った実験では、1つの発光素子につき、約1.4mWの光出力となるように注入電流量を制御した。パッケージは温度の制御を行い25℃の一定値とした。
本実験では、上記条件下で入射角θを0°、5°、7.5°、10°と変化させ、図15に示す異常波形が観察される不具合があったか否かを判定した。表1に、その判定結果をまとめて示す。
表1において、1列目は入射角度を示し、2列目はその入射角度において不具合があったか否かを示す判定結果を示す。OKは不具合がなかったことを示し、NGは図15に示す異常波形が観察され、不具合があったことを示す。
表1に示すように、入射角θを0°、5°、7.5°とした場合において、図15に示す異常波形が、観察された。この異常波形は先に示した数%を超えており、画像形成装置上でも不具合として認識される。
更に、光出力及び温度の値をそれぞれ変化させて組み合わせた数百の条件について自動的に測定できる装置を作製して、同様な実験を繰り返したところ、入射角θの依存性については、表1と同じ結果が得られた。また、この条件に限らず、発光素子の波長、波形の周波数、波形のデューティー比、隣接する発光素子の中心間距離P、電極パターンなど、様々な条件について、膨大な量の実験を繰り返したところ、入射角θのみに依存した先に示す代表値のような結果が得られた。すなわち、今回観察された異常波形は、入射角θに非常に強く影響を受ける物理現象であることがわかった。従って、面発光型半導体レーザアレイでは、反射防止膜等で反射されたわずかな戻り光(0.1%程度)が近隣の発光素子に入射しても、その光量に変動が生じることがある。
この波形変動は一般的に報告されている一つの発光素子における、戻り光による不具合と類似しているが、複数の発光素子が関係する点において、従来報告されている不具合と明らかに異なる物理現象である。この波形変動は、数十μmという非常に近い中心間距離Pで隣接する発光素子を有する面発光レーザアレイ特有の現象である。このような物理現象についての過去の報告例はなく、光量の変動が戻り光の入射角に依存しているという現象は、今回初めて明らかにされたものである。
すなわち、面発光型半導体レーザアレイにおいて、反射防止膜等で反射されたわずかな戻り光(0.1%程度)が近隣の発光素子に入射しても、その光量に変動が生じるという課題は、本発明の発明者らが、検討を重ねた結果、初めて発見した課題である。
次に、この光量に変動が生じる不具合が入射角に依存することについて説明する。
面発光レーザ素子は、上面DBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ反射ミラー)および下面DBRのエタロン構造を有している。エタロン構造における反射率の波長依存性である反射スペクトルは、シミュレーションを行うことができる。図16は、シミュレーションを行って得たエタロン構造の反射スペクトルを示すグラフである。図16に示すように、共振器長によって決まる波長(以下、反射スペクトルにおけるこの波長の位置を「ディップ位置」という。)を中心に反射率が低下する形状となる。ディップ位置の波長の光が面発光レーザ素子の表面から入射した場合、このディップ位置では反射率が低下しているため、光が共振器の中心にある量子井戸まで侵入する。この光(外部光)が量子井戸に侵入することで、誘導放出の安定性を劣化させ、光出力に悪影響を与える。面発光レーザ素子から出射された光はコヒーレント性が高く、誘導放出を起こしやすいためである。逆に、外部光がディップ位置ではない波長の光であれば、面発光レーザ素子の光出力に悪影響を与えない。
一方、エタロン構造での入射角を垂直入射(0°)から斜め入射へ傾けていくと、ディップ位置がずれていく。つまり、入射角を傾けることで、同じエタロン構造でも光が侵入しなくなる。例えば、入射角が10°の場合の例を図17に示す。図17は、入射角が0°及び10°の条件でシミュレーションを行って得た反射スペクトルを示すグラフである。反射スペクトルの形状はほぼ同じであるが、ディップ位置における波長が約2nm程度ずれている。
同様にシミュレーションを行って検討すると、入射角が7.5°程度であっても、反射率が低下するディップ位置の波長は1.5nm程度シフトしている。従って、入射角が7.5°程度であっても、戻り光対策にはある程度の効果はあり、戻り光が近隣の発光素子に入射して及ぼす影響をある程度低減できる。しかし、いくつかのサンプルにおいて、入射角が7.5°でも異常波形が観察され、悪影響があることが観察された。従って、戻り光対策に十分な効果を有するためには、入射角が10°以上あることが好ましい。
次に、戻り光対策に入射角が10°以上あることが好ましいことについて説明する。
一般的な面発光レーザ素子よりなる発光素子であれば、隣接する発光素子間における出射される光ビームの波長差はほとんど無い。これは、発光素子のエタロン構造がほぼ同一に形成されていることによる。しかし、面発光レーザ素子よりなる発光素子は、熱によって、その出射する光の波長がシフトすることがある。長時間発光した後、発生する熱が均一でかつ安定したときは、隣接する発光素子間の中心間距離が短いので、隣接する発光素子の環境温度は略等しくなる。しかし、発光素子が発振することによって、発光素子自身が放熱源となる場合には、特に立ち上がりの際の短い時間の間、熱の分布が局所に起きる。これにより、隣接する発光素子間で、熱分布が発生し、エタロン構造を有する面発光レーザ素子の出射する光ビームに波長シフトが生じ、隣接する発光素子間で波長スペクトルにおけるディップ位置に相違が生じることがある。この波長シフトを様々な発光タイミングや様々な環境下(環境温度範囲10℃〜60℃)で調べたところ、約2nm程度であった。ここでは複写機内での利用を仮定して、どの発光素子がどのタイミングで発光するかなどをシミュレーションによって導き膨大な発光素子の種類とタイミングのパターンを決定し、利用されるであろうケースを試した。その結果、最も大きい温度変化による、隣接する発光素子間の波長差は約2nm程度であった。従って、その2nm以内に、エタロンのディップ位置が来なければ、戻り光の影響は無い。また、2nmを入射角へ変換すると、入射角にして約10°となる。よって、戻り光の影響を無くすためには、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、隣り合う又はそれ以上離れた他の発光素子に、入らないか又は入射角が10°以上になるような条件にすればよい。
発光素子への入射光は、カバー部材による正反射光に限らない。例えば、カバー部材やパッケージ側面などに乱反射したものが、再度、発光素子に戻ってくる場合がある。本発明が課題としているように、戻り光は極端に小さな光量でも、不具合を発生させる。従って、入射角が10°以上になるような条件にすることは、このような乱反射した光などにも効果を示す。すなわち、偏光方向や強度などが変化した戻り光であっても、その戻り光が入射する入射角を考慮することにより、戻り光の悪影響を低減できる。
次に、隣接する発光素子間の中心間距離Pと、チップ245の出射面245aとカバー部材410の反射面との距離Zとの関係について検討する。
なお、本発明における一の発光素子と一の発光素子に隣接する発光素子との距離とは、ある発光素子とその発光素子に隣接する発光素子との中心間距離を意味する。また、チップ245の出射面245aとカバー部材410の反射面との距離とは、チップ245の出射面245aと、出射面245aと対向するカバー部材410の反射面との対向距離を意味する。
カバー部材410からの正反射光の強度は先の乱反射に比べはるかに大きいことから、この正反射成分を取り除くことは肝要である。一般に発光素子から出射する光の光量の出射角依存性を示す光量分布は、ガウス分布を示し、出射角が0°からずれると光量が急減する。しかしながら、戻り光が非常に弱い光でも他の発光素子に悪影響を及ぼすことがある。従って、出射角が大きく光量が小さい光を含め全ての光について考慮することが好ましい。そのため、以下では一般的な放射角で定義される1/e2強度等に限定せず、全ての出射方向を含むものとする。
図18は、様々な対向距離Zで対向するチップとカバー部材との間における正反射光の光路を説明するための図である。図18に示すように、発光素子から出射され、カバー部材に反射された光が隣接の発光素子に入射する場合を考える。ここでは、カバー部材と発光素子の基板とが平行であることを前提としている。そのため、正反射であれば、出射角と入射角は同一となる。
図18に示すように、カバー部材410の反射面407の位置が変化すると、θも変化する。反射面が407−1であり、ZがZ1であり小さく、θがθ1であり大きい場合、戻り光が隣接の発光素子に入射する際の入射角θもθ1であり大きくなる。それに対し、反射面が407−2又は407−3であり、ZがZ2又はZ3であり大きい場合、入射角θもθ2又はθ3であり小さくなる。すなわち、隣接する発光素子間の中心間距離Pが決まると、隣接する発光素子からの光の入射角はチップ245の出射面245aとカバー部材410の反射面407との対向距離Zによって決定される。
図18に基づいて、中心間距離Pと対向距離Zとの関係において、前述したように入射角が10°以上となるような条件を検討した。隣接する発光素子からの光が入射することによって悪影響が生じないためには、下記式(1)の条件を満たすようにすればよい。
Z≦P/(2tan10°) (1)
式(1)において、Zはチップ245の表面(出射面)245aからカバー部材410の反射面407までの対向距離、Pは隣接する面発光レーザ素子(発光素子)249の中心間距離を表す。
式(1)に示す条件は、チップ245の出射面245aとカバー部材410の反射面407とは平行であることを前提としている。また、式(1)に示す条件は、発光素子を点光源として表したものである。
一方、発光素子は、実際には、点光源ではなく、発光領域を有する。次に、図19を参照し、発光素子の発光領域の幅寸法を考慮した場合について説明する。
図19は、面発光型半導体レーザアレイのチップの周辺において光ビームが出射される様子及びカバー部材で反射される様子を示す図である。図19で示しているビーム線(長い矢印)は、発光素子中心から出ている任意のビームである。また、図19に示すθ(θ1、θ2、θ3)が、戻り光の発光素子に入射する入射角となる。図19において、隣接する発光素子からの光が入射することによって悪影響が生じないためには、下記式(2)の条件を満たすようにすればよい。
Z≦(P−S)/(2tan10°) (2)
式(2)において、Zはチップ245の表面(出射面)245aからカバー部材410の反射面407までの対向距離、Pは隣接する面発光レーザ素子(発光素子)の中心間距離、Sは発光素子の発光領域の幅寸法を表す。
本実施の形態では、例えばP=70μm、S=5μmとすることができる。その場合、式(2)の条件を満たすようにするためには、Z≦184μmとすればよい。
ここで、本実施の形態に係る面発光型半導体レーザアレイにおいて、隣接する発光素子からの光が入射することによって悪影響が生じないことについて、従来の面発光型半導体レーザアレイを比較例として比較することにより説明する。
図20は、従来の面発光型半導体レーザアレイの構成を模式的に示す分解斜視図である。図21は、従来の面発光型半導体レーザアレイの詳細な構成を示す平面図である。図22は、図21のA−A線に沿う断面図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図20に示すように、面発光型半導体レーザアレイ201aは、チップ245、パッケージ246a、カバーガラス247を有する。
図21に示すように、パッケージ246aには配線402のパターンが作られている。配線402は、面発光型半導体レーザアレイのチップ245のパッド403とボンディングワイヤ401で電気的に接続されている。図中405は省略を表す点で、配線やボンディングワイヤ、パッド等はこの点の部分にも存在しているが省略している。
図21及び図22に示すように、チップ245はパッケージ246aの底部に、図示していない熱伝導の良い接着剤で固定されている。カバーガラス247はパッケージ246aに接着剤404にて固定されている。
このような面発光型半導体レーザアレイでは、複数の発光素子は、主走査方向、副走査方向に2次元に配列されているため、各発光素子から出射されたビームがカバーガラス247に反射(上下面)し、その反射光が他の光源に入ると、光量の変動が起きる不具合が発生する。
すなわち、従来の面発光型半導体レーザアレイでは、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、入射角が略0°に近い状態で、その発光素子と隣り合う発光素子又はそれ以上離れた他の発光素子に、入射してしまう。
一方、本実施の形態では、カバー部材(一部平行平板)410の反射面407及び上面408を1つの発光素子から発せられた光ビームの反射光が、隣り合う又はそれ以上離れた他の発光素子に、入らないか又は入射角が10°以上になるような条件まで近づけている。これにより、各発光素子から出射された光ビームの戻り光が、近隣の発光素子に入射して及ぼす影響を低減できる。そして、隣接する発光素子からの戻り光によって起きる強度変調が低減され、安定した光出力が得られる。その結果、本実施の形態に係る面発光型半導体レーザアレイを搭載したマルチビーム光源装置は、光量の変動が少ないマルチビーム光を作ることができる。
また、本実施の形態では、カバー部材が、チップの出射面に対向する領域以外の領域で、ボンディングワイヤに接触しないように設けられている。これにより、カバー部材の実装が容易になる。
なお、本実施の形態では、接着剤をあらかじめカバー部材などに塗布する例を説明した。しかしながら、接着剤をパッケージ側にあらかじめ塗布しても良く、後で塗布しても良い。
また、本実施の形態では、カバー部材を透明樹脂で射出成形したものについて説明した。しかしながら、カバー部材は、ガラスの成形品でも良い。
また、本実施の形態では、光源ピッチが70μmである例を説明した。しかしながら、光源ピッチが70μmより細かい場合でも、それに応じて光源と反射面を近づけるように製作でき、本発明の効果は変わらない。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
次に、図23から図28を参照し、第1の実施の形態の第1の変形例に係る面発光型半導体レーザアレイを説明する。本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイは、カバー部材を平行平板としたものである。
図23は、面発光型半導体レーザアレイの詳細な構成を示す平面図である。図24は、図23のA−A線に沿う断面図である。図23及び図24では、見やすくするために一部が省略され、一部が誇張して描かれている。また、図23及び図24は、カバー部材が実装された後の状態を示す。図25から図28は、面発光型半導体レーザアレイの実装状態を説明するための図である。図25は、カバー部材及び補強部材が実装される前のパッケージの構成を示す平面図である。図26は、カバー部材の構成を示す平面図である。図27は、補強部材の構成を示す平面図である。図28は、カバー部材及び補強部材が実装される際の構造を示す断面図である。図28は、図25から図27のA−A線に沿う断面図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある(以下の変形例、実施の形態についても同様)。
本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイは、チップ245、パッケージ246−2、カバー部材412、414を有する。チップ245は、第1の実施の形態におけるチップ245と同様である。
図23及び図24に示すように、パッケージ246−2は、一方の面に形成された、チップ245を固定するための固定部246a−2、チップ245に接続されるリード端子である配線402を備える。
図23に示すように、パッケージ246−2には配線402のパターンが作られている。また、パッケージ246−2の配線402上、チップ245のパッド403上にはあらかじめマイクロバンプ415(高さ約40μm)が設けられている。配線402上のマイクロバンプ415は、カバー部材である薄いガラス412に形成された導電性の配線413のパターンにより、チップ245のパッド403上のマイクロバンプ415と電気的に接続されている。図中405は省略を表す点で、配線やマイクロバンプ、パッド等はこの点の部分にも存在しているが省略している。
図24に示すように、チップ245は、パッケージ246−2の一方の面に形成され、チップ245を固定するための固定部246a−2に、図示していない熱伝導の良い接着剤で固定されている。
図24、図26及び図27に示すように、カバー部材は、薄いガラス(厚さ約100μm)412、補強ガラス414(厚さ約500μm)を有する。薄いガラス412は、チップ245の出射面245aに対向する領域R1で、チップ245の出射面245aに近接するように設けられている。また、薄いガラス412は、チップ245の出射面245aに対向する領域以外の領域R2で、チップ245のパッド403とパッケージ246−2の配線402とを接続する配線413のパターンが形成されている。補強ガラス414は、薄いガラス412を補強する補強部材である。補強ガラス414は、薄いガラス412の上側に貼り付けられている。補強ガラス414は、チップ245の出射面245aに対向する領域R1において、光ビームが出射される部分に穴が開けられている。その結果、チップ245の出射面245aに対向する領域R1において、カバー部材412、414には、空間406が存在する。カバー部材412、414は、パッケージ246−2に接着剤404にて固定されている。
次に、本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイの実装方法について説明する。
図28に示すように、図25に示すパッケージ246−2に、図26に示す薄いガラス412及び図27に示す補強ガラス414を貼り付けたものを、接着剤404を介して実装する。パッケージ246−2に薄いガラス412及び補強ガラス414を貼り付けた状態で、パッケージ246−2に加圧しながら接着剤404を介して固定する。すると、パッケージ246−2の配線402とチップ245のパッド403とが、マイクロバンプ415及びカバー部材412の配線413を介して電気的に接続される。このとき、マイクロバンプは少しつぶされ、発光素子と反射面407の距離は約30μmになっている。
本変形例でも、カバー部材412の表面(上面)408は、カバー部材412が薄く設計されているため、反射面407に十分近い(100μm)。従って、カバー部材412の表面(上面)408が戻り光の反射面となったとしても、光源と反射面の距離は約130μmになる。よって、カバー部材412は、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、隣り合う又はそれ以上離れた他の発光素子に、入らないか又は入射角が10°以上になるような条件にすることができる。これにより、各発光素子から出射された光ビームの戻り光が、近隣の発光素子に入射して及ぼす影響を低減できる。そして、隣接する発光素子からの戻り光によって起きる強度変調が低減され、安定した光出力が得られる。その結果、本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイを搭載したマルチビーム光源装置は、光量の変動が少ないマルチビーム光を作ることができる。
また、本変形例では、カバー部材が、チップの出射面に対向する領域以外の領域で、チップのパッドとパッケージの配線とを接続する配線が形成されている。これにより、ボンディングワイヤを用いるよりも、カバー部材の実装が容易になる。
なお、本変形例では、接着剤をあらかじめカバー部材などに塗布する例を説明した。しかしながら、接着剤をパッケージ側にあらかじめ塗布しても良く、後で塗布しても良い。
また、本変形例では、カバー部材及び補強部材をガラスとしたものについて説明した。しかしながら、カバー部材及び補強部材は透明樹脂でも良い。
また、本変形例でも、光源ピッチを70μmとすることができる。しかしながら、光源ピッチを70μmより小さくする場合でも、それに応じて光源と反射面を近づけるように製作でき、本発明の効果は変わらない。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
次に、図29から図39を参照し、第1の実施の形態の第2の変形例に係る面発光型半導体レーザアレイを説明する。本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイは、カバー部材を直接チップ表面に設けたものである。
図29は、面発光型半導体レーザアレイの詳細な構成を示す平面図である。図30は、図29のA−A線に沿う断面図である。図29及び図30では、見やすくするために一部が省略され、一部が誇張して描かれている。図31から図39は、面発光型半導体レーザアレイの実装状態を説明するための図である。図31は、カバー部材及び補強部材が実装される前のパッケージの構成を示す平面図である。図32は、補強部材の構成を示す平面図である。図33から図39は、カバー部材及び補強部材を実装する各工程における構造を示す断面図である。
本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイは、チップ245、パッケージ246−3、カバー部材416、417を有する。チップ245は、第1の実施の形態におけるチップ245と同様である。
図29及び図30に示すように、パッケージ246−3は、一方の面に形成された、チップ245を固定するための固定部246a−3、チップ245に接続されるリード端子である配線402を備える。
図29に示すように、パッケージ246−3には配線402のパターンが作られている。配線402は、ボンディングワイヤ401により、チップ245のパッド403と電気的に接続されている。図中405は省略を表す点で、配線やボンディングワイヤ、パッド等はこの点の部分にも存在しているが省略している。
図30に示すように、チップ245は、パッケージ246−3の一方の面に形成され、チップ245を固定するための固定部246a−3に、図示していない熱伝導の良い接着剤で固定されている。
図30及び図32に示すように、カバー部材は、カバー部材416、417を有する。カバー部材416は、チップ245の出射面245aに対向する領域R1で、チップ245の出射面245a上に透明樹脂で形成されている。カバー部材417は、透明樹脂で形成されたカバー部材416を補強する補強部材である。補強部材417は、チップ245の出射面245aに対向する領域R1において、光ビームが出射される部分に穴が開けられている。その結果、チップ245の出射面245aに対向する領域R1において、カバー部材416、417には、空間406が存在する。また、チップ245の出射面245aに対向する側において、穴の縁の表面は突起状になっている。補強部材417は、透明樹脂を射出成型したものを用いることができる。補強部材417は、パッケージ246−3に接着剤404にて固定されている。
次に、本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイの実装方法について説明する。
まず、図31及び図33に示すパッケージ246−3に実装されたチップ245の表面(出射面)245aに、図34に示すように、カバー部材である透明度の高い(透明な)UV樹脂416をディスペンサ418により塗布する。塗布する量は、ボンディングワイヤ401にかからない程度の量になるようにする。次に、図35及び図36に示すように、UV樹脂416が薄い膜(約100μm)になるように、あらかじめ位置決めされた石英製の押し付け冶具419を押し付ける。この状態で、図37に示すように、UV光源420からUV光421を照射し、UV樹脂416を硬化させる。その後、図38に示すように、押し付け冶具419を退避させ、図39に示すように、図32に示す補強部材417をパッケージ246−3に接着剤404を介して固定する。なお、接着剤404は、チップ245の出射面245aに対向する側において、穴の縁の表面に形成された突起部分にも付けてあり、その突起部分がカバー部材416と接着できるようになっている。
本変形例でも、カバー部材416の表面(上面)408は、カバー部材416が薄いため反射面407に十分近い(約100μm)。従って、カバー部材416の表面(上面)408が戻り光の反射面となったとしても、光源と反射面の距離は約100μmになる。よって、カバー部材416は、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、隣り合う又はそれ以上離れた他の発光素子に、入らないか又は入射角が10°以上になるような条件にすることができる。これにより、各発光素子から出射された光ビームの戻り光が、近隣の発光素子に入射して及ぼす影響を低減できる。そして、隣接する発光素子からの戻り光によって起きる強度変調が低減され、安定した光出力が得られる。その結果、本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイを搭載したマルチビーム光源装置は、光量の変動が少ないマルチビーム光を作ることができる。
また、本変形例では、カバー部材が、チップの出射面上に透明樹脂で形成されている。これにより、チップの表面である出射面を直接保護することができる。
なお、本変形例では、UV樹脂を塗布する手段としてディスペンサを使用する例を説明した。しかしながら、UV樹脂を塗布する手段としてディスペンサを使用する場合に限定されるものではなく、微量な接着剤を塗布できるインクジェット方式やスタンパ方式を使用しても良い。
また、本変形例では、接着剤をあらかじめカバー部材などに塗布する例を説明した。しかしながら、接着剤をパッケージ側にあらかじめ塗布しても良く、後で塗布しても良い。
また、本変形例では、補強部材を透明樹脂で射出成形したものについて説明した。しかしながら、補強部材はガラスの成形品でも良い。
また、本変形例でも、光源ピッチを70μmとすることができる。しかしながら、光源ピッチを70μmより小さくする場合でも、それに応じて光源と反射面を近づけるように製作でき、本発明の効果は変わらない。
(第1の実施の形態の第3の変形例)
次に、図40から図44を参照し、第1の実施の形態の第3の変形例に係る面発光型半導体レーザアレイを説明する。本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイは、カバー部材がパッケージ全体を形成したものである。
図40は、面発光型半導体レーザアレイの詳細な構成を示す平面図である。図41は、図40のA−A線に沿う断面図である。図40及び図41では、見やすくするために一部が省略され、一部が誇張して描かれている。図42から図44は、面発光型半導体レーザアレイの実装状態を説明するための図である。図42から図44は、カバー部材を形成する各工程における構造を示す断面図である。
本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイは、チップ245、インサート基板422、カバー部材423を有する。チップ245は、第1の実施の形態におけるチップ245と同様である。
図40及び図41に示すように、パッケージであるインサート基板422は、一方の面に形成された、チップ245を固定するための固定部422a、チップ245に接続されるリード端子である配線402を備える。
図40に示すように、インサート基板422には配線402のパターンが作られている。配線402は、ボンディングワイヤ401により、チップ245のパッド403と電気的に接続されている。図中405は省略を表す点で、配線やボンディングワイヤ、パッド等はこの点の部分にも存在しているが省略している。
図41に示すように、チップ245は、パッケージであるインサート基板422の一方の面に形成され、チップ245を固定するための固定部422aに、図示していない熱伝導の良い接着剤で固定されている。
図41に示すように、カバー部材423は、カバー部材423a、423b、423cを有する。カバー部材423aは、チップ245の出射面245aに対向する領域R1で、チップ245の出射面245a上に透明樹脂で形成されている。カバー部材423bは、チップ245の出射面245aに対向する領域以外の領域R2で、カバー部材423aと一体に、透明樹脂で形成されている。カバー部材423cは、インサート基板422の周縁に透明樹脂で形成されており、インサート基板422と一体で、パッケージを構成する。
すなわち、本変形例では、カバー部材は、全体が透明樹脂で形成されており、パッケージの一部は、カバー部材と一体に、透明樹脂で形成されている。
次に、本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイの実装方法について説明する。
まず、図42に示すように、チップ245は、パッケージであるインサート基板422にあらかじめ実装されている。次に、図43に示すように、チップ245の表面(出射面)245aでカバー部材である透明樹脂423が薄くなるように(約150μm)、薄板用押し付け型424をチップ245の表面(出射面)245aに対向して設置し、型425も用いてインサート成形する。型425には、透明樹脂423を注入するためのゲート425aが設けられている。成形後、図44に示すように型425を取り外すことにより、透明樹脂よりなるカバー部材423が形成される。
本変形例でも、カバー部材423の表面(上面)408は、カバー部材423が薄いため反射面407に十分近い(約150μm)。従って、カバー部材423の表面(上面)408が戻り光の反射面となったとしても、光源と反射面の距離は約150μmになる。よって、カバー部材423は、1つの発光素子から出射された光ビームの反射光が、隣り合う又はそれ以上離れた他の発光素子に、入らないか又は入射角が10°以上になるような条件にすることができる。これにより、各発光素子から出射された光ビームの戻り光が、近隣の発光素子に入射して及ぼす影響を低減できる。そして、隣接する発光素子からの戻り光によって起きる強度変調が低減され、安定した光出力が得られる。その結果、本変形例に係る面発光型半導体レーザアレイを搭載したマルチビーム光源装置は、光量の変動が少ないマルチビーム光を作ることができる。
また、本変形例では、パッケージの一部が、カバー部材と一体に、透明樹脂で形成されている。これにより、チップの表面である出射面を直接保護することができ、カバー部材の実装が容易になる。
また、本変形例でも、光源ピッチを70μmとすることができる。しかしながら、光源ピッチを70μmより小さくする場合でも、それに応じて光源と反射面を近づけるように製作でき、本発明の効果は変わらない。
(第2の実施の形態)
次に、図45及び図46を参照し、第2の実施の形態に係るマルチビーム走査装置を説明する。本実施の形態に係るマルチビーム走査装置は、第1の実施の形態に係るマルチビーム光源装置を用いたマルチビーム走査装置である。
図45は、本実施の形態に係るマルチビーム走査装置の構成を示す斜視図である。
図45に示されるように、本実施の形態に係るマルチビーム走査装置は、4つの感光体ドラム101、102、103、104、ポリゴンミラー106、光源ユニット107、109、光束分割プリズム108、110、シリンダレンズ113、114、115、116、液晶偏向素子117、118を有する。なお、105は転写体の移動方向を示す。
図45に示すマルチビーム走査装置は、4ステーションを走査する光走査装置である。即ち、図45に示すマルチビーム走査装置は、マルチビーム光源装置からの4ステーション分に相当する複数の光ビームを、単一のポリゴンミラーで走査し、対向する方向に偏向、走査することで各感光体ドラムを走査するように一体化された光走査ユニットの構成を有する。
4つの感光体ドラム101、102、103、104は、転写体の移動方向105に沿って等間隔で配列され、順次異なる色のトナー像を転写し重ね合わせることでカラー画像を形成する。
図45に示すように、各感光体ドラム101〜104を走査する光走査装置は一体的に構成され、2段に構成されたポリゴンミラー106により各々光ビームを走査する。
マルチビーム光源装置107、109は同一方向に走査する2ステーションに対し各1つずつ配備され、光束分割プリズム108、110を用い、上記ポリゴンミラー106の上下面に対応して上下2段に光ビームを分岐し、各感光体ドラムに交互に各ステーションに対応した画像を形成していく。
マルチビーム光源装置107、109、及び結像光学系を構成するfθレンズ、トロイダルレンズは、ポリゴンミラー106の回転軸を含み感光体ドラム軸に平行な対称面に対し対称に配備される。ポリゴンミラー106により、各マルチビーム光源装置107、109からの光ビームは相反する方向に偏向され、各感光体ドラム101〜104に導かれる。
従って、各ステーションにおける走査方向は対向する各感光体ドラムで相反する方向となり、記録領域の幅、言いかえれば主走査方向の倍率を合わせ、一方の走査開始端ともう一方の走査終端とが一致するように静電像を書き込んでいく。
なお、液晶偏向素子117では、液晶の配列方向に合った偏光成分のみが偏向されるため、発光素子の偏光方向は一方向に揃えている。
光束分割プリズム108は、ハーフミラー面241(図1参照)とハーフミラー面241と平行なミラー面242(図1参照)とを有する。マルチビーム光源装置107からの複数のビーム201は、各々ハーフミラー面で1/2の光量が反射され、残りの1/2は透過して上下に2分岐され、方向を揃えて副走査方向に所定間隔をもって射出される。
液晶偏向素子117は、光束分割プリズム108の射出面の上下に各々配備され、電圧を印可すると、副走査方向に電位分布を生じて液晶の配向が変化し、屈折率分布を発生して光線の方向を傾けることができ、印可電圧に応じて感光体ドラム面上の走査位置を可変できる。
シリンダレンズ113、114は、分岐された各光ビームに対応して2段に設けられ、その一方は光軸を中心に回動調整可能に取り付けられ、各々の焦線が平行となるように調節できるようにしており、副走査方向に6mm間隔に2段に構成されたポリゴンミラー106の各々に入射される。
シリンダレンズ113、114は、少なくとも副走査方向に正の曲率を有し、ポリゴンミラー面上で、一旦ビームを収束させることで、後述するトロイダルレンズ124、125とにより偏向点と感光体面上とを副走査方向に共役関係とする面倒れ補正光学系をなす。
ポリゴンミラー106は、4面を有し、同一の偏向面により各発光点列からの複数のビームを一括で偏向、走査する。上下のポリゴンミラー106の位相は45°ずつずれており、光ビームの走査は上下段で交互に行われる。
結像光学系はfθレンズ120、121とトロイダルレンズ124、125とからなり、いずれもプラスチック成形によるもので、fθレンズ120は主走査方向にはポリゴンミラー106の回転に伴って感光体面上でビームが等速に移動するようにパワーを持たせた非円弧面形状となし、層状に2段に積み重ねて一体に構成される。
トロイダルレンズ124、125を通った走査ビームは各々、走査開始側に配備された光検知センサ138、140、走査終端側に配備された光検知センサ139、141に入射される。そして、光検知センサ138、140の検出信号を基に各々発光素子毎の同期検知信号が生成され、書込み開始のタイミングがとられる。
一方、走査終端側に配備された光検知センサ139、141の検出信号は、各々走査開始側に配備された光検知センサ138、140からの光ビームの検出時間差を計測し、あらかじめ定められた基準値と比較して、各発光素子を変調する画素クロックを可変することで、後述するように、主走査方向の倍率のずれを補正している。
図46は、副走査断面における光線の経路を示す図である。
複数の発光素子から出射される各光線は、カップリングレンズ202の光軸251に対して対称に配置される。カップリングレンズ202によって平行光束に変換された各光線は、マルチビーム光源装置107から射出される。その後、各光線は、カップリングレンズ202の後側焦点の近傍で一旦収束し、主走査方向には光線間隔を広げつつfθレンズ120に入射され、副走査方向にはシリンダレンズ113、114により、ポリゴンミラー偏向面の近傍で再度収束されてfθレンズ120に入射される。
また、上記したように、マルチビーム光源装置107からの複数の光ビームは光束分割プリズム108によって副走査方向上下に2分岐され、各ステーションに対応する感光体ドラムに導かれる。
光束分割プリズム108の下段から出射された複数の発光素子からの光ビーム261は、シリンダレンズ113を介してポリゴンミラー106の下段で偏向、走査される。そして、光ビーム261は、fθレンズ120の下段を通って折返しミラー129によりトロイダルレンズ123に入射され、折返しミラー130を介して感光体ドラム101上にスポット状に結像し、第1の画像形成ステーションとしてイエロー色の画像情報に対応した潜像を形成する。
光束分割プリズム108の上段から出射された複数の発光素子からの光ビーム262は、シリンダレンズ114を介しポリゴンミラー106の上段で偏向、走査される。そして、光ビーム262は、fθレンズ120の上段を通って折返しミラー127によりトロイダルレンズ124に入射され、折返しミラー128を介して感光体ドラム102上にスポット状に結像し、第2の画像形成ステーションとしてマゼンタ色の画像情報に対応した潜像を形成する。
同様に、対向するステーションにおいても、マルチビーム光源装置109からの複数の光ビームは、光束分割プリズム110によって上下に2分岐され、各ステーションに対応する感光体ドラムに導かれる。
光束分割プリズム110の下段から射出した複数の発光素子からのビーム263は、シリンダレンズ115を介してポリゴンミラー106の下段で偏向、走査される。そして、ビーム263は、fθレンズ121の下段を通って折返しミラー132によりトロイダルレンズ126に入射され、折返しミラー133を介して感光体ドラム104上にスポット状に結像し、第4の画像形成ステーションとしてブラック色の画像情報に対応した潜像を形成する。
また、光束分割プリズム110の上段から射出した複数の発光素子からのビーム264は、シリンダレンズ116を介してポリゴンミラー106の上段で偏向、走査される。そして、ビーム264は、fθレンズ121の上段を通って折返しミラー135によりトロイダルレンズ125に入射され、折返しミラー136を介して感光体ドラム103上にスポット状に結像し、第3の画像形成ステーションとしてシアン色の画像情報に対応した潜像を形成する。
本実施の形態に係るマルチビーム走査装置は、第1の実施の形態から第1の実施の形態の第3の変形例に係る面発光型半導体レーザアレイを搭載したマルチビーム光源装置を使用している。そのため、結像位置を感光体面上に精度良く調整することができ、高精度で信頼性の高い潜像を得ることができる。
(第3の実施の形態)
次に、図47を参照し、第3の実施の形態に係る画像形成装置を説明する。本実施の形態に係る画像形成装置は、第2の実施の形態に係るマルチビーム走査装置を用いた画像形成装置である。
図47は、画像形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
本実施の形態に係る画像形成装置は、光走査装置900、感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングケース905、転写ベルト906、給紙トレイ907、給紙コロ908、レジストローラ対909、定着ローラ910、排紙トレイ911、排紙ローラ912を有する。
感光体ドラム901の周囲には、感光体を高圧に帯電する帯電チャージャ902、光走査装置900により記録された静電潜像に帯電したトナーを付着して顕像化する現像ローラ903が配置される。また、感光体ドラム901の周囲には、現像ローラにトナーを補給するトナーカートリッジ904、ドラムに残ったトナーを掻き取り備蓄するクリーニングケース905が配置される。感光体ドラム901へは、第2の実施の形態で記載したように、ポリゴンミラー1面毎の走査により、複数ライン(第2の実施の形態では4ライン)で同時に画像記録が行われる。
上記した画像形成ステーションは転写ベルト906の移動方向に並列され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー画像が転写ベルト上にタイミングを合わせて順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。各画像形成ステーションはトナー色が異なるだけで、基本的には同一構成である。
一方、記録紙は、給紙トレイ907から給紙コロ908により供給され、レジストローラ対909により副走査方向の記録開始のタイミングに合わせて送りだされる。その後、記録紙は、転写ベルトよりカラー画像が転写されて、定着ローラ910で定着して排紙ローラ912により排紙トレイ911に排出される。
本実施の形態に係るマルチビーム走査装置は、第2の実施の形態に係るマルチビーム走査装置を使用している。そのため、結像位置を感光体面上に精度良く調整することができ、高精度で信頼性の高い画像を得ることができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
なお、本発明の実施の形態では、カバー部材が、ある発光素子からの戻り光が隣接する発光素子に入射する方向と、発光素子が配列する平面に垂直な方向との角度(戻り光の入射角)が10°以上になるように設けられた、面発光型半導体レーザアレイの例について説明した。しかしながら、前述したように、入射角が7.5°程度であっても、戻り光が近隣の発光素子に入射して及ぼす影響をある程度低減できる。従って、本発明には、カバー部材が、戻り光の入射角が10°より小さい所定の角度以上になるように設けられた、面発光型半導体レーザアレイも含まれる。