JP5526548B2 - 溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法 - Google Patents

溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶鉄(例えば、溶銑)を貯蔵する誘導炉に設けられ、マグネシア系の耐火物を用いて湯道を形成した溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法に関する。
溶鉄を貯蔵する誘導炉に設けられた溝型誘導加熱装置は、主原料にマグネシア(MgO)を用いたマグネシア系ラミング材、主原料にアルミナ(Al)を用いたアルミナ系ラミング材、又は主原料にアルミナマグネシアスピネル(MgO・Al)を用いたスピネル系ラミング材により、溶鉄が流れる湯道を形成している。これらのラミング材は、高温に曝される稼働面(溶鉄との接触面)近傍が焼き固まることにより、必要な焼結強度を発現する。これを一般に、焼結層と称する。
なお、焼結層の背面側(稼働面とは反対側)には未焼結層が存在するため、なんらかの原因により、焼結層に亀裂が生じた場合でも、亀裂が鉄皮にまで達することはなく、湯漏れの危険性が非常に低くなる。
溝型誘導加熱装置では、電力効率を上げるため、耐火物の厚みを極力薄くする必要があり、ウェアライニングとパーマライニングという2層の耐火物を張り分けることが困難であるため、上記したラミング材が賞用されている。中でも、特に耐溶損性を重視する場合は、マグネシア系ラミング材を採用することが一般的である。
このマグネシア系ラミング材とは、マグネシアがマグネシアとアルミナのモル比で1対1を超え、化学量論的にフリー(単体)のマグネシアが存在する組成で構成されるラミング材を意味する。なお、アルミナマグネシアスピネルのクリンカーを主原料として用いたラミング材もあるが、その場合も、単体のマグネシアや単体のスピネルを副原料として配合する場合がほとんどである。従って、本願発明においては、このようなラミング材も、上記した定義に従ってマグネシア系ラミング材として扱うこととする。
なお、マグネシアとアルミナのモル比が1対1のラミング材は、マグネシアが28質量%、アルミナが72質量%となるため、マグネシア系ラミング材は、マグネシアの質量比が28%より大きなものを意味するが、例えば、他の化学成分やバインダー等が配合されれば、当然のことながら、マグネシアの質量比が28%以下となる場合もある。
一般に、マグネシア系ラミング材は、マグネシアを主成分とし、比較的少量のアルミナ、極めて少量のバインダー成分、及び不可避的に含まれる不純物からなる。このラミング材は、使用に伴う昇温によりマグネシアとアルミナが反応してスピネルを形成し、焼結強度を発現させるが、マグネシアが比較的多量に含まれ、昇温後も単体のマグネシアが残存するため、マグネシア系ラミング材と呼ばれる。
このように、マグネシア系ラミング材は、高融点のマグネシアを主成分とするため、耐溶損性に優れたラミング材となる。
このラミング材を用いた溝型誘導加熱装置の使用中の湯道状況の監視には、一般にコンダクタンスレシオと呼ばれる指標を用いることが多い。コンダクタンスレシオとは、溝型誘導加熱装置の使用開始時の導電率を100%とし、使用に伴う導電率(1/Ω)の変化をパーセント表示した指標である。なお、導電率は、一次電流と電圧を測定し、二次側の導電率(湯道の電気抵抗)を算出して求めている。
ここで、溶鉄との接触による溶損や溶鉄流による磨耗等で生じる損耗によって湯道内径が拡大する場合、湯道の電気抵抗が下がるため、コンダクタンスレシオは100%より大きく表示される。一方、溶鉄内に巻き込まれたスラグや溶湯から酸化析出してきた酸化物などの異物が、湯道内壁(以下、湯道内面ともいう)に付着することによって湯道内径が縮小する場合、湯道の電気抵抗が上がるため、コンダクタンスレシオは100%より小さく表示される。
即ち、コンダクタンスレシオを用いることで、湯道内径の変化を容易に推定できる。
溝型誘導加熱装置を用いて溶鉄を誘導加熱する場合、湯道内の溶鉄に発生する誘導電流は一般に大電流であるため、湯道内では電流と電流が互いに引き付け合う作用が生じ、湯道内の溶鉄にはその断面積を収縮させる方向の力が働く。この作用を、一般にピンチ作用(ピンチ効果、ピンチング作用)と称しており、このピンチ作用により、湯道内の溶鉄が収縮し始め、ついには切断される状態となる。これをピンチ現象(ピンチング現象)と呼ぶ。
このピンチ現象は、大容量負荷の電源投入と遮断を断続的に行う状態と同じであり、これによる突入電流により、電源装置の異常停止が発生し、操業中断や機器損傷を招く等の問題が発生する。
ピンチ現象は、湯道の断面積あたりの電流密度が大きくなるほど発生し易くなるため、湯道内に異物が付着する等の原因により、湯道の断面積が縮小してピンチ現象が多発する場合には、溝型誘導加熱装置への印加電力を低下させて、湯道の断面積あたりの電流密度を低減せざるを得なくなる。その結果、冷鉄源の溶解所要に必要な電力を印加できなくなり、溶解量を削減せざるを得なくなる。
また、ピンチ現象が多発する場合には、溝型誘導加熱装置を安定して使用することが不可能となるため、溝型誘導加熱装置の交換が必要になる場合もある。
この問題に対して、以下のような方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、高出力の通電と低出力の通電とを交互に行うことにより、湯道内面を正常な状態に維持して、ピンチ現象の抑制、昇熱操業の安定化、加熱電力効率の向上、更には異物による湯道閉塞の抑制や防止を図る技術が開示されている。
また、特許文献2には、誘導加熱中に、湯道を流れる溶銑流の方向を逆転させることにより、湯道を洗浄する技術が開示されている。
そして、特許文献3には、誘導加熱中に、湯道内径よりも小さい径の鋼球を、溶銑流に乗せて湯道内を通過させることにより、湯道内壁の付着物を除去する技術が開示されている。
更に、特許文献4には、特許文献3に記載の方法により、湯道内壁への付着物を剥離させ、この剥離した異物を特許文献2に記載の方法により、湯道内から洗い流す技術が開示されている。
特開2004−218038号公報 特開2007−46075号公報 特開2007−70726号公報 特開2008−180452号公報
しかしながら、前記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1の技術は、異物付着による湯道の断面積の縮小に一定の効果はあるものの、損耗による湯道の断面積の拡大への対応は困難であるため、湯道内径が拡大し過ぎると、耐火物の残厚が薄くなり、溝型誘導加熱装置の交換が必要になる。また、湯道への異物付着のメカニズムに踏み込んだ対応策ではないため、付着物の発生量を制御することができない。更には、一時的ではあるが、冷鉄源の溶解所要に適した電力よりも大きな電力を投入しなければならないという問題があった。
また、特許文献2の技術では、湯道内面に単に引っ掛かった状態の異物を洗浄除去することはできるが、湯道内面に接着したように付着(強固に付着)した異物は除去できず、また溶銑流の方向を逆転させるために高価で特殊な設備が必要であるという問題もある。そして、この技術も、特許文献1の技術と同様に、損耗による湯道の断面積の拡大への対応が困難であり、湯道への異物付着のメカニズムに踏み込んだ対応策ではないため、付着物の発生量を制御することができないという問題があった。
そして、特許文献3の技術は、湯道内面に局部的に大きく成長した異物の除去に一定の効果はあるものの、湯道内面の広範囲に渡って滑らかに付着した異物の除去は困難であり、また溝型誘導加熱装置の湯道入口へ効率的に鋼球を投入するのは困難であるという問題がある。そして、この技術も、特許文献1、2の技術と同様に、損耗による湯道の断面積の拡大への対応が困難であり、湯道への異物付着のメカニズムに踏み込んだ対応策ではないため、付着物の発生量を制御することができないという問題があった。
更に、特許文献4の技術も、既に記載した通り、湯道内面に局部的に大きく成長した異物の除去に一定の効果があるものの、湯道内面の広範囲に渡って滑らかに付着した異物の除去は困難であり、また溝型誘導加熱装置の湯道入口へ効率的に鋼球を投入するのは困難であるという問題がある。そして、この技術も、特許文献1〜3の技術と同様に、損耗による湯道の断面積の拡大への対応が困難であり、湯道への異物付着のメカニズムに踏み込んだ対応策ではないため、付着物の発生量を制御することができないという問題があった。
以上のように、従来の技術では、溝型誘導加熱装置の湯道内径を一定に保つことが非常に困難であるという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、湯道内面へのアルミナの析出量を制御して、湯道内径の安定化を図り、溝型誘導加熱装置が設けられた誘導炉の安定操業を可能にする溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法は、溶鉄を貯蔵する誘導炉に設けられ、マグネシア系の耐火物を用いて湯道を形成した溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法において、
前記溝型誘導加熱装置の使用開始時の導電率を100%とした場合に、該溝型誘導加熱装置の使用に伴う導電率の変化を示すコンダクタンスレシオが、100%を超え140%以下の範囲内のとき、又は、1日あたりに換算した前記コンダクタンスレシオの上昇幅が0.7%以上になるとき、前記溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%以上に調整し、前記コンダクタンスレシオが、65%以上85%以下の範囲内のとき、又は、半日あたりに換算した前記コンダクタンスレシオの下降幅が2.5%以上になるとき、前記溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0又は0を超え0.0009質量%未満に調整する。
本発明に係る溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法において、前記溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を上昇させる場合、前記溶鉄に、金属アルミニウムの塊及び金属アルミニウムを含む鉄鋼スクラップのいずれか一方又は双方を装入することが好ましい。
本発明に係る溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法において、前記溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を低下させる場合、前記溶鉄に、溶銑及び溶銑を固めた型銑のいずれか一方又は双方を装入することが好ましい。
本発明に係る溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法は、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオが、100%を超え140%以下の範囲内のとき、又は、1日あたりに換算したコンダクタンスレシオの上昇幅が0.7%以上になるとき、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%以上に調整するので、湯道内面へのアルミナ析出量を増加させ、耐火物の損耗速度よりも湯道内面へのアルミナの付着速度を大きくできる。これにより、湯道内面に析出したアルミナは、湯道内面を形成する耐火物中の単体マグネシアとの間でスピネルを生成し、湯道内面へ強固に付着して、拡大傾向にあった湯道内径を縮小できる。このとき、コンダクタンスレシオは低下する傾向となる。
また、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオが、65%以上85%以下の範囲内のとき、又は、半日あたりに換算した前記コンダクタンスレシオの下降幅が2.5%以上になるときは、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0又は0を超え0.0009質量%未満に調整するので、湯道内面へのアルミナ析出量を低下させ、湯道内面へのアルミナの付着速度よりも耐火物の損耗速度を大きくできる。これにより、縮小傾向にあった湯道内径を拡大できる。このとき、コンダクタンスレシオは上昇する傾向となる。
このように、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオに応じて、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を調整するので、湯道内径の状況に応じて、湯道内面へのアルミナの析出量を制御できる。従って、湯道内径の安定化が図れ、溝型誘導加熱装置が設けられた誘導炉の安定操業が可能となる。
また、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を上昇させる際に、溶鉄に、金属アルミニウムの塊及び金属アルミニウムを含む鉄鋼スクラップのいずれか一方又は双方を装入する場合、特別な作業を行うことなく、しかも溶鉄の化学成分を大幅に変動させることなく、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度調整ができる。
そして、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を低下させる際に、溶鉄に、溶銑及び型銑のいずれか一方又は双方を装入する場合、特別な作業を行うことなく、しかも溶鉄の化学成分を大幅に変動させることなく、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度調整ができる。
使用済みの溝型誘導加熱装置の部分拡大説明図である。 図1に示した各部分の化学分析の結果を示す説明図である。 溶銑中の金属アルミニウムの濃度増加によるコンダクタンスレシオの変化を示す説明図である。 溶銑中の金属アルミニウムの濃度減少によるコンダクタンスレシオの変化を示す説明図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は使用済みの溝型誘導加熱装置の部分拡大説明図、図2は図1に示した各部分の化学分析の結果を示す説明図である。
本発明の一実施の形態に係る溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法は、溶鉄を貯蔵する誘導炉に設けられ、マグネシア系ラミング材(マグネシア系の耐火物の一例)を用いて湯道を形成した溝型誘導加熱装置の湯道内径の制御方法であり、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオに応じて、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を調整し、湯道内径(内幅)の安定化を図る方法である。なお、本実施の形態において、金属アルミニウムには、酸化物としてのアルミナは含まない。また、湯道は、その断面形状が完全に円形でないものも含まれる。
以下、本発明に想到した経緯について説明した後、本発明について詳しく説明する。
本発明者は、使用済みの溝型誘導加熱装置の湯道の状況調査を行った。この結果を、図1、図2を参照しながら説明する。なお、図1には、湯道を形成するマグネシア系ラミング材(以下、単にラミング材ともいう)の構成と、このラミング材表面に付着した付着物の構成を示しており、図2には図1の各部分の化学分析を行った結果を示している。なお、図2には溶鉄中に浮遊していた炉内スラグの化学分析結果もあわせて示している。
図1に示すように、湯道を形成するラミング材は、酸化鉄等の浸潤を受けて液相焼結している「焼結層(浸潤層ともいう)」と、湯道から離れているため温度が上昇せず焼結に至っていない「未焼結層」とに分離できる。このラミング材表面(溶鉄との接触面)に付着した付着物は、ラミング材表面に形成された非常に緻密な「緻密質付着物」と、その表面を覆う脆い質感の「網目状付着物」とで構成されている。
この各部分について化学分析を行ったところ、図2に示すように、「緻密質付着物」は、マグネシアとアルミナのモル比(MgO/Al)が概ね1であり、アルミナマグネシアスピネルが生成していることが分かった。
また、図2に記載の網目状付着物は、その化学成分の70質量%以上がアルミナであることから、スラグを巻き込んで形成されたものではなく、網目状付着物及び緻密質付着物を構成するアルミニウム成分の由来は、溶鉄中に溶解しているアルミニウム成分であることが分かった。これは、通常のスラグが、CaO:30〜50質量%、SiO:30〜50質量%、Al:3〜10質量%程度(図2においては、炉内スラグのアルミナ量が10質量%未満)であることに起因する。
以上の結果から、湯道を形成する耐火物がマグネシア系ラミング材で構成された溝型誘導加熱装置の湯道内面への異物付着のメカニズムは、以下のように解釈できる。
(1)溶解したアルミニウムを含有した溶鉄が、溶鉄の流れによって湯道内へ流入する。
(2)湯道内面近傍にて、溶鉄中の金属アルミニウムが酸化してアルミナを生成し、湯道内面に付着する。なお、湯道内面には、溶鉄の流れに巻き込まれたスラグ中のアルミナが付着することもあり得るが、溶鉄との比重差が2倍以上もあることから、湯道内に到達することはほとんどないものと考えられる。
(3)湯道を形成するラミング材中の単体のマグネシアと、付着物であるアルミナとの間で相互に拡散現象が起こり、アルミナマグネシアスピネルが生成することにより、付着物が湯道内面に強固に接着する。
続いて、以上のように解明した湯道内面への異物付着メカニズムに基づいて、本発明者が想到した発明について説明する。
使用中の溝型誘導加熱装置の湯道状況の監視には、コンダクタンスレシオを用いる。このコンダクタンスレシオとは、溝型誘導加熱装置の使用開始時(未使用状態からの立上げ時)の導電率を100%とした場合に、溝型誘導加熱装置の使用に伴う導電率(1/Ω)の変化を示す指標である。
従って、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオは、溝型誘導加熱装置の稼働直後は100%であり、設備仕様通りの能力を発揮することができる。しかし、溶鉄中の成分によるコンダクタンスレシオの変動が原因で、設備能力に制約が発生することとなるため、コンダクタンスレシオを管理し、設備を健全に保持することが重要となる。
そこで、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオが上昇するとき、即ち上昇傾向又は100%を超え140%以下の範囲内の所定値を上回るとき、湯道の内径が拡大していくため、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%以上に調整する。
このように、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を現状よりも上昇させることで、コンダクタンスレシオを下降させる。なお、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を上昇させる方法としては、溶鉄に、金属アルミニウム源である金属アルミニウムの塊及び金属アルミニウムを含む鉄鋼スクラップ(例えば、アルミキルド鋼やアルミシリコンキルド鋼)のいずれか一方又は双方を装入するのがよいが、これに限定されるものではない。なお、一般に、アルミキルド鋼やアルミシリコンキルド鋼の金属アルミニウム濃度は、0.015質量%以上であるため、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度上昇に好都合である。
ここで、コンダクタンスレシオが上昇傾向とは、例えば、1日あたりに換算したコンダクタンスレシオの上昇幅が0.7%以上になることをいう。この場合には、上昇開始のコンダクタンスレシオが、例えば、95%以上100%以下(安定した領域)の場合であっても、金属アルミニウム源の投入などによる金属アルミニウムの濃度増加のアクションを行うことが望ましい。
なお、コンダクタンスレシオの上昇幅を1日あたりに換算したのは、コンダクタンスレシオの上昇が湯道の損耗に起因するものであり、湯道がゆっくりと広がるため、即座に対策を講じなくても十分に対応できることによる。しかし、コンダクタンスレシオが上昇する場合は、湯漏れのリスクも増加するため、コンダクタンスレシオの急激な上昇には注意が必要である。このため、コンダクタンスレシオが上昇する場合は、例えば、1日ごと、又はそれより高い頻度で、コンダクタンスレシオの測定が必要である。
また、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオを100%を超えとしたのは、上記したように、溝型誘導加熱装置の稼働直後が100%であることによる。
一方、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオを140%以下としたのは、140%より大きいコンダクタンスレシオでの操業を保障している溝型誘導加熱装置は、その強度確保のため、過剰な耐火物厚みを必要とし、必然的に湯道とコイルの距離が離れて、加熱効率が悪化するという問題があることによる。
従って、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%以上に調整する場合のコンダクタンスレシオを、100%を超え140%以下の範囲内としたが、上限を130%、更には120%とするのが好ましい。なお、作業性の観点から、下限を105%、更には110%とするのがよい。
なお、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%(好ましくは、0.0010質量%、更には0.0013質量%)以上としたのは、0.0009質量%以上で、湯道内面へのアルミナの析出を促進できることによる。
一方、上限値については特に定めていないが、これは、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度が高くなれば、湯道内面へのアルミナの析出を促進でき、拡大傾向にあった湯道の内径を縮小できるためである。しかし、金属アルミニウムの濃度が0.03質量%を超えると、湯道内径の縮小効果が飽和するため、0.03質量%(好ましくは、0.025質量%)以下にするとよい。付着物が成長していく速度は、金属アルミニウムが溶鉄中から酸化析出して湯道内面に付着する速度と、ラミング材との間で物質拡散が生じてアルミナマグネシアスピネルの層として成長する速度に律速する。このため、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を高くすれば、湯道内面に付着する速度は上昇するが、アルミナマグネシアスピネルの層として成長する速度に追従できないため、湯道内面に強固に付着できない。従って、付着物は溶鉄の流れで取れ易いため、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を高く設定しても、付着物の成長速度が上がらない。
また、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオが下降するとき、即ち下降傾向又は65%以上85%以下の範囲内の所定値を下回るとき、湯道の内径が縮小していくため、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0又は0を超え0.0009質量%未満に調整する。
このように、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を現状よりも低下させることで、コンダクタンスレシオを上昇させる。なお、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を低下させる方法としては、溶鉄に、溶銑及び溶銑を固めた型銑のいずれか一方又は双方を装入するのがよいが、これに限定されるものではない。
ここで、コンダクタンスレシオが下降傾向とは、例えば、半日あたりに換算したコンダクタンスレシオの下降幅が2.5%以上になることをいう。この場合には、下降開始のコンダクタンスレシオが、例えば、100%より大きく120%以下(比較的安定した領域)の場合であっても、型銑の投入などによる金属アルミニウムの濃度低減のアクションを行うことが望ましい。
なお、コンダクタンスレシオの下降幅を半日あたりに換算したのは、コンダクタンスレシオの下降が湯道内面への付着物の付着に起因するものであり、湯道が拡大する速度よりも急激に縮小するため、即座に対策を講じる必要があることによる。このため、コンダクタンスレシオが下降する場合は、例えば、半日ごと、又はそれより高い頻度で、コンダクタンスレシオの測定が必要である。
また、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオの低下時には、85%以下とならないように制御することが、安定操業を継続する上で好適である。このため、コンダクタンスレシオが85%以下で65%以上では、ピンチ現象が多発し、操業上問題となる。なお、コンダクタンスレシオが65%未満となると、ピンチ現象が継続して発生するため、操業継続が不可となる。
従って、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0又は0を超え0.0009質量%未満に調整する場合のコンダクタンスレシオを、65%以上85%以下の範囲内としたが、安定操業を考慮すれば、下限を70%、更には75%とするのが好ましい。
なお、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0又は0を超え0.0009質量%未満としたのは、湯道内面へのアルミナの析出量を低下させ、ラミング材の損耗により湯道内径を拡大できることによる。従って、溶鉄中の金属アルミニウムの濃度が0質量%であることが最も望ましいが、完全に0質量%となることはほとんどないため、現実的には、下限値が0.0001質量%、更には0.0002質量%程度である。一方、上限値は、0.0008質量%、更には0.0005質量%とすることが好ましい。
以上に示したコンダクタンスレシオの100%を超え140%以下の間の所定値と、65%以上85%以下の所定値は、コンダクタンスレシオの上昇時と下降時の範囲の数値から、使用する設備の設計方針や、操業時の湯道径の拡大又は減少の速度の過去のデータ等を参考に、適宜選択すればよい。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、溝型誘導加熱装置が設けられた溶銑(溶鉄の一例)を貯蔵する誘導炉の操業を行って、コンダクタンスレシオの変化を測定した結果について説明する。なお、鉄鋼スクラップを溶解したため、溶鉄中の炭素濃度は1.5質量%から飽和濃度であり、溝型誘導加熱装置の湯道は、マグネシア系ラミング材(MgO:86質量%、Al:11質量%)を用いて形成している。
まず、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオが、110%(100%を超え140%以下の範囲内の所定値)を上回ったときの結果について、図3を参照しながら説明する。
図3の比較例1(◆)に示すように、溶銑中の金属アルミニウムの濃度([Al])を0.0009質量%未満(0.0006〜0.0008質量%の範囲内)に調整した場合、コンダクタンスレシオは、誘導炉の操業日数の経過に伴って、若干の増加傾向がみられる。
従って、湯道内径の拡大傾向を抑えることができず、更に拡大する傾向にあることが分かった。
一方、図3の実施例1(□)、実施例2(○)、実施例3(△)は、いずれも溶銑中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%以上(実施例1:0.0009〜0.0011質量%、実施例2:0.0013〜0.0016質量%、実施例3:0.0025〜0.0030質量%)に調整したため、コンダクタンスレシオは、誘導炉の操業日数3日後に減少している。なお、金属アルミニウムの濃度調整は、型銑とアルミキルド鋼スクラップ(金属アルミニウム濃度:0.02質量%)の装入量を調整して行った。
このように、溶銑中の金属アルミニウムの濃度が高くなるに伴い、特に実施例2、3ではコンダクタンスレシオの低減速度が速くなった。
従って、実施例1〜3では、湯道内径の拡大傾向を抑えることができ、特に、実施例2、3については、拡大した湯道内径を縮小できることが分かった。
次に、溝型誘導加熱装置のコンダクタンスレシオが、80%(65%以上85%以下の範囲内の所定値)を下回ったときの結果について、図4を参照しながら説明する。
図4の比較例2(◆)に示すように、溶銑中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%以上(0.0009〜0.0011質量%の範囲内)に調整した場合、コンダクタンスレシオは、誘導炉の操業日数の経過に伴って、若干の低下傾向がみられる。
従って、湯道内径の縮小傾向を抑えることができず、更に縮小する傾向にあることが分かった。
一方、図4の実施例4(□)と実施例5(△)は、いずれも溶銑中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%未満(実施例4:0又は0を超え0.0005質量%以下、実施例5:0.0006〜0.0008質量%)に調整したため、コンダクタンスレシオは、誘導炉の操業日数7日後に増加している
このように、溶銑中の金属アルミニウムの濃度が低くなるにつれて、コンダクタンスレシオの増加速度が速くなった。
従って、実施例4、5では、湯道内径の縮小傾向を抑えることができ、縮小した湯道内径を拡大できることが分かった。
なお、以上に示した実施例1〜5、及び比較例1、2については、溶銑中の金属アルミニウムの濃度を範囲で示しているが、これは、誘導炉の操業を数日間に渡って連続的に行っているため、金属アルミニウムの量が変動していることによる。
以上のことから、本願発明の溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法を使用することで、湯道内面へのアルミナの析出量を制御して、湯道内径の安定化を図り、誘導炉の安定操業が可能になることを確認できた。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、溶鉄に溶銑を使用した場合について説明したが、マグネシア系の耐火物を用いて湯道を形成した溝型誘導加熱装置を使用する溶鉄であれば、これに限定されるものではない。

Claims (3)

  1. 溶鉄を貯蔵する誘導炉に設けられ、マグネシア系の耐火物を用いて湯道を形成した溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法において、
    前記溝型誘導加熱装置の使用開始時の導電率を100%とした場合に、該溝型誘導加熱装置の使用に伴う導電率の変化を示すコンダクタンスレシオが、100%を超え140%以下の範囲内のとき、又は、1日あたりに換算した前記コンダクタンスレシオの上昇幅が0.7%以上になるとき、前記溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0.0009質量%以上に調整し、前記コンダクタンスレシオが、65%以上85%以下の範囲内のとき、又は、半日あたりに換算した前記コンダクタンスレシオの下降幅が2.5%以上になるとき、前記溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を0又は0を超え0.0009質量%未満に調整することを特徴とする溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法。
  2. 請求項1記載の溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法において、前記溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を上昇させる場合、前記溶鉄に、金属アルミニウムの塊及び金属アルミニウムを含む鉄鋼スクラップのいずれか一方又は双方を装入することを特徴とする溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法。
  3. 請求項1記載の溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法において、前記溶鉄中の金属アルミニウムの濃度を低下させる場合、前記溶鉄に、溶銑及び溶銑を固めた型銑のいずれか一方又は双方を装入することを特徴とする溝型誘導加熱装置の湯道内径制御方法。
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