光ディスクの記録容量を増大する手法として、光ディスクの高密度化と記録層の多層化とがある。CDからDVD、そしてDVDからBlu−ray Discといった記録容量の増大化においては、対物レンズの高開口数化及びレーザ波長の短波長化といった光ピックアップの構成の変化に加え、光ディスクの記録層を表面に近づけるといった光ディスクの構造の変化により、光ディスクの高密度化を実現している。
近年、再生信号処理技術の発展により、光ピックアップの光学系の構成及び光ディスクの形状は維持したままで、より高密度な情報の記録又は再生が可能となっており、Blu−ray Discに対応した光学系を用いて情報を記録又は再生することが可能なBlu−ray Discより高密度の光ディスクが提案されている。記録密度が異なると、光ディスク上のアドレスと光ディスク上の実半径位置との対応が変化してしまう。そのため、記録密度が異なる光ディスクが光ディスク装置に装填される場合は、記録密度の判別が必要となる。
従来、同一光学系で情報の記録又は再生が可能であり、記録密度の異なる光ディスクとしては、例えば1層DVDと2層DVDとが挙げられる。1層DVDの記録容量は4.7GBytesであり、2層DVDの記録容量は8.5GBytesである。2層DVDの1層あたりの記録密度は1層DVDに対して約10%異なっている。
この場合は、記録層数と記録密度とが1対1で対応しており、記録層数を数えることで記録密度は容易に判別可能である。そのため、情報を記録又は再生する前に記録密度の判別が可能である。
Blu−ray Discであれば、ユーザーデータ領域とは異なるトラックピッチ及び異なるアドレスフォーマットで作られた、光ディスク固有の物理情報を納めた物理情報領域が光ディスクの内周部に存在している。物理情報領域の物理情報が再生されることで、光ディスク装置に装填された光ディスクの記録層数及び記録密度を得ることが可能となる。
また、特許文献1には、光ピックアップを特定の半径位置へ移動させ、かつスピンドルモータを特定の回転速度で回転させ、光ディスクに形成されたウォブリンググルーブの周波数を計測することで、物理情報を再生する前に光ディスクの記録密度を判別する方法が提案されている。
一方で、あらかじめ記録層数が正確に数えられない場合や、記録密度が正確に判別できない場合が想定される。
記録層数を数える方法としては、レーザを発光させた状態で対物レンズを光ディスクの記録層に近づけたときに得られるフォーカスエラー信号(以下、FE信号)を数えることで実現することができる。
ところが、記録層数が3層及び4層と増えていった場合に、正確に層数を数えることが困難となるケースが存在する。
対物レンズを高開口数化するとともにレーザ波長を短波長化したBlu−ray Discに対応した光学系では、光ディスクのカバー層の厚みに応じて変化する球面収差を適切に補正する必要がある。複数の記録層のうち、特定の記録層に対して球面収差が最適な状態になるように補正すると、他の記録層に対しては大きな球面収差が出た状態となり、他の記録層から得られるFE信号の振幅は大きく劣化してしまう。
図6は、1層光ディスク、2層光ディスク、3層光ディスク及び4層光ディスクのそれぞれにおける、表面及び各記録層の厚み方向の配置の例を示す図である。2層光ディスク、3層光ディスク及び4層光ディスクは、表面に対して最も遠い記録層である第1の記録層が存在する位置を基準として第2〜第4の記録層が順次配置される構成となっている。
1層光ディスクは、第1の記録層を有する。2層光ディスクは、表面(光入射面)から最も遠い第1の記録層及び表面に最も近い第2の記録層を有する。3層光ディスクは、表面から最も遠い第1の記録層、表面から2番目に遠い第2の記録層及び表面に最も近い第3の記録層を有する。4層光ディスクは、表面から最も遠い第1の記録層、表面から2番目に遠い第2の記録層、表面から3番目に遠い第3の記録層及び表面に最も近い第4の記録層を有する。
多層光ディスクの層構造は既存ディスクとの互換性を考慮すると、2層光ディスク、3層光ディスク及び4層光ディスクは、1層ディスクの記録層が存在する第1の記録層を基準として第2〜第4の記録層が配置される。すなわち、2層光ディスク、3層光ディスク及び4層光ディスクのそれぞれの表面から第1の記録層までの距離は、1層光ディスクの表面から第1の記録層までの距離と同じである。
図7及び図8は、それぞれ球面収差を光ディスクの表面に対して最も遠い記録層において最適になるように補正し、レーザ光を発光させた状態で対物レンズを光ディスクに近づけたときに検出されるFE信号を示す図である。図7は、3層光ディスクから検出されるFE信号を示す図であり、図8は、4層光ディスクから検出されるFE信号を示す図である。
一般的に、記録層数を増やしつつ各記録層の反射率の差を少なくしようとすると、反射率は記録層数が増えるに従い低下する。上で述べた球面収差の影響を含めると、FE信号の振幅が表面より小さくなる記録層が存在する。
図7において、FE信号201,202,203,204は、それぞれ表面、第1の記録層、第2の記録層及び第3の記録層において得られるFE信号である。記録層の有無はFE信号のレベルが正側検出閾値205及び負側検出閾値206を超えたかどうかで判定される。この場合は、表面に対応するFE信号を含めて検出閾値を超えたFE信号は4つとなり、記録層は3つであると判定される。
図8において、FE信号301,302,303,304,305は、それぞれ表面、第1の記録層、第2の記録層、第3の記録層及び第4の記録層において得られるFE信号である。記録層の有無はFE信号のレベルが正側検出閾値205及び負側検出閾値206を超えたかどうかで判定される。この場合は、第4の記録層で得られるFE信号305が正側検出閾値205及び負側検出閾値206を超えていない。そのため、表面に対応するFE信号を含めて検出閾値を超えたFE信号は4つとなり、記録層は3つであると誤って判定されてしまう。
このように、記録層数が増加すると、光ディスクの表面に最も近い記録層と光ディスクの表面から最も遠い記録層との層間隔が増加する。そのため、球面収差によるFE信号振幅の劣化はより増大し、このような状態ではFE信号による記録層数の判別が精度よくできない。
球面収差を想定される記録層毎に補正しつつ対物レンズを駆動してFE信号を測定する動作を繰り返すことで、記録層数検出の精度を上げることは可能ではある。しかしながら、この場合、記録層数が多ければ多いほど測定動作に多大な時間がかかってしまう。
また、記録密度の判別において、前述したウォブリンググルーブの周波数を計測する方法は、記録密度差が十分大きい場合は判別が可能である。しかしながら、光ピックアップの半径方向の移動精度、スピンドルモータの回転速度の誤差及びスピンドルモータの回転ゆらぎの影響を考慮すると、記録密度差が少ない場合は、精度よく記録密度を判別することは困難である。
次に、Blu−ray Discの光学系に対応した光ディスクにおいて、さらなる高密度化を行う際の課題について述べる。
記録密度が異なる場合であっても、光ディスク上の各種領域の配置は既存の光ディスクの記録密度に合わせることが望ましい。特に、物理特性が異なる領域については略同一半径位置に配置することが望ましい。
すなわち、Blu−ray Discの物理情報領域は、ユーザーデータ領域とは異なるトラックピッチ及び異なるアドレスフォーマットで作られているので、ユーザーデータ領域と同じ様にシーク動作したとしても、アドレスを読むことができない。そのため、記録密度が異なる光ディスクの物理情報領域が、既存の光ディスクの記録密度と異なる半径位置に存在すると、誤って物理情報領域に突入してしまった場合にアドレスが読めなくなり、以降の動作を行うことができなくなってしまうことがある。
ところが、2つの異なる半径位置でのアドレスは、記録密度が異なれば当然ながら変化する。これは、ユーザーデータ領域の最内周を基準としたときに、記録密度が異なる光ディスクにおいて、同一半径位置に物理情報が存在しているにもかかわらず物理情報領域のアドレスが異なることを意味する。
光ディスク上の情報を読み出すためには、読み出し対象となる情報が記録されているアドレス情報が必要である。ところが、正確な記録密度が判別できていない状態では、物理情報領域のアドレスを正確に得ることができない。
例えば、光ディスク装置に装填された光ディスクの記録密度を、実際の記録密度とは異なる記録密度であると仮定して物理情報領域のアドレスを設定してシーク動作したとする。この場合、シーク動作した先には物理情報が存在しないため、装填された光ディスクに固有の物理情報を得ることができず、以降の動作を行うことができなくなってしまう。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す光ディスク装置は、光ピックアップ11、フォーカスアクチュエータ駆動回路21、トラッキングアクチュエータ駆動回路22、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23、レーザ駆動回路24、フォーカスエラー信号生成器31、トラッキングエラー信号生成器32、ウォブル信号生成器33、RF信号生成器34、マイクロコンピュータ51、制御部61及びスピンドルモータ71を備える。光ピックアップ11は、対物レンズ1、フォーカスアクチュエータ2、トラッキングアクチュエータ3、受光部5、1/4波長板6、球面収差補正素子7、コリメータレンズ8、レーザ光源9及び偏光ビームスプリッター10を備える。
図1の光ピックアップ11は、光ディスク41に対して光ビームを照射して光ディスク41に記録されている情報を読み取る又は光ディスク41に対して情報を記録する。フォーカスアクチュエータ駆動回路21は、光ピックアップ11の対物レンズ1を光ディスク41に対して略垂直方向に変位させる。
図1に記載された光ディスク装置は、光ディスク41に情報を記録し、又は、光ディスク41に記録された情報を再生する。
レーザ光源9は、レーザ光を出力する。マイクロコンピュータ51は、レーザ駆動回路24に駆動指令値を出力する。レーザ駆動回路24は、駆動指令値に応じた電流をレーザ光源9に供給する。これにより、レーザ光源9からレーザ光が出射される。
まず、光ピックアップ11に設けられたレーザ光源9から出射された光ビームはコリメータレンズ8によって平行光ビームに変換される。平行光ビームは、球面収差補正素子7、偏光ビームスプリッター10及び1/4波長板6を通過し、対物レンズ1によって光ディスク41の情報記録層(記録膜)に収束する。
光ディスク41からの反射光は、対物レンズ1及び1/4波長板6を通過し、偏光ビームスプリッター10によって反射され、受光部5に到達する。ここで、光ディスク41は、スピンドルモータ71によって回転駆動されている。マイクロコンピュータ51は、スピンドルモータ71に駆動指令値を出力する。スピンドルモータ71は、駆動指令値に応じて光ディスク41を回転駆動する。
受光部5は、光ディスク41からの反射光を電気信号に変換する。受光部5からの出力は、フォーカスエラー信号生成器31、トラッキングエラー信号生成器32、ウォブル信号生成器33及びRF信号生成器34に供給される。
フォーカスエラー信号生成器31は、受光部5からの出力に基づいて、光ディスク41に照射された光ビームのフォーカス位置と光ディスク41の情報面(記録層)との間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをフォーカスエラー信号(FE信号)として出力する。FE信号は、例えば、非点収差法によって生成することができる。
トラッキングエラー信号生成器32は、受光部5からの出力に基づいて、光ディスク41の情報面上に形成される光ビームのスポットと光ディスク41の情報面上のトラックとの間の位置ずれを検出し、検出した位置ずれをトラッキングエラー信号として出力する。トラッキングエラー信号は、例えば、プッシュプル法によって生成することができる。
FE信号及びトラッキングエラー信号は制御部61に供給される。制御部61は、FE信号及びトラッキングエラー信号に対して位相補償等の信号処理を施し、制御信号を生成する。
フォーカスアクチュエータ駆動回路21及びトラッキングアクチュエータ駆動回路22は、制御部61からの制御信号に応じて、光ピックアップ11に設けられたフォーカスアクチュエータ2及びトラッキングアクチュエータ3にそれぞれ駆動信号を供給することにより、フォーカスアクチュエータ2及びトラッキングアクチュエータ3を駆動する。
フォーカスアクチュエータ2及びトラッキングアクチュエータ3は、フォーカスアクチュエータ駆動回路21及びトラッキングアクチュエータ駆動回路22からの駆動信号に応じて、対物レンズ1を駆動する。
このように、制御部61は、FE信号に応じて、フォーカスアクチュエータ2を駆動するフォーカスアクチュエータ駆動回路21を制御することにより、フォーカス制御のためのサーボループを形成する。また、制御部61は、トラッキングエラー信号に応じて、トラッキングアクチュエータ3を駆動するトラッキングアクチュエータ駆動回路22を制御することにより、トラッキング制御のためのサーボループを形成する。このようにして、サーボ制御が実行される。
球面収差補正アクチュエータ駆動回路23は、マイクロコンピュータ51からの制御信号に応じて、球面収差補正素子7に駆動信号を供給することにより、光ビームに含まれる球面収差を補正する。球面収差補正素子7は、例えば液晶素子で構成され、球面収差補正アクチュエータ駆動回路23からの駆動信号に応じて、屈折率を変化させ、光ビームに含まれる球面収差を補正する。
ウォブル信号生成器33は、受光部5からの出力に基づいて、ウォブル信号を生成し、生成したウォブル信号をマイクロコンピュータ51へ出力する。
ウォブル信号は、マイクロコンピュータ51内に備えたアドレス読み取り回路52へ送られる。アドレス読み取り回路52は、ウォブル信号に基づいてアドレスを読み取る。
RF信号生成器34は、受光部5からの出力に基づいて、RF信号を生成し、生成したRF信号をマイクロコンピュータ51へ出力する。マイクロコンピュータ51は、RF信号に基づいて、光ディスク41に記録された情報を読み取る。
マイクロコンピュータ51は、シーク制御部53及び光ディスク種類決定部54を備える。シーク制御部53は、光ディスクの所定のアドレスへ光ピックアップ11をシーク動作させる。なお、シーク動作とは、光ピックアップ11を所定のトラックへ移動させる動作を表す。アドレス読み取り回路52は、シーク制御部53によってシーク動作された位置の現在アドレスを読み取る。光ディスク種類決定部54は、アドレス読み取り回路52によって読み取られた現在アドレスに基づき光ディスクの種類を決定する。
なお、フォーカスエラー信号生成器31、トラッキングエラー信号生成器32、ウォブル信号生成器33、RF信号生成器34、制御部61及びマイクロコンピュータ51は、1つ以上のデジタル回路で構成されることが好ましい。フォーカスエラー信号生成器31、トラッキングエラー信号生成器32、ウォブル信号生成器33、RF信号生成器34、制御部61及びマイクロコンピュータ51は、単一の半導体集積回路基板(単一の半導体チップ)上に集積され得る。
次に、光ディスク41に光ビームを入射させたときに得られるFE信号について説明する。
記録層数が増加し、反射率等に代表される各記録層の物理パラメータが記録層毎にあまりに大きく異なると光ディスク装置側での対応が困難となる。そのため、各記録層の物理パラメータはおよそ同一であることが求められる。DVD又はBlu−ray Discの2層ディスクであれば、2つの記録層間の反射率比は最大でも2倍程度である。また、一般的に記録層数が増加すると、光ディスクの表面から見て奥の記録層ほど、その記録層に到達するまでに複数の他の記録層を通過することになるため、反射率が低下する。この両者の条件を満たすように多層光ディスクを設計すると、記録層の反射率は全体的に低くなる。
なお、現在市販されている2層Blu−ray Discの記録層の反射率は、およそ5%程度である。また、Blu−ray Discに限らず、CD又はDVDなどを含めた各種光ディスクの表面の反射率もまた5%程度である。そのため、2層光ディスクよりもさらに記録層を増やした3層光ディスク又は4層光ディスクの各記録層の反射率は光ディスクの表面よりさらに小さくなる。
また、カバー層の厚み差によって発生する球面収差により光ディスク上のスポットが劣化しFE信号振幅が低下する。特定の記録層に対して最適になるように球面収差を補正すると、他の記録層では大きな球面収差が発生し、他の記録層から得られるFE信号の振幅が小さくなる。記録層数が増加すると、表面に最も近い記録層と表面から最も遠い記録層との層間隔が増加するため、球面収差によるFE信号の振幅はますます小さくなる。
このような理由から、多層の光ディスクに光ビームを入射したときに得られるFE信号は図7及び図8のようになる。図7は、3つの記録層を有する光ディスクに対して光ビームを入射させたときに得られるFE信号を示す図であり、図8は、4つの記録層を有する光ディスクに対して光ビームを入射させたときに得られるFE信号を示す図である。ここで、球面収差は光ディスクの表面から最も遠い記録層において最適となるように補正されている。
図7において、FE信号201は、3層光ディスクの表面において得られるFE信号であり、FE信号202,203,204は、3層光ディスクの第1の記録層、第2の記録層及び第3の記録層において得られるFE信号である。なお、3層光ディスクは、表面から最も遠い第1の記録層、表面から2番目に遠い第2の記録層及び表面に最も近い第3の記録層を有する。FE信号が正側検出閾値205を超えた後、負側検出閾値206を超えるたびに記録層を1つとカウントすることで、記録層数を数えることができる。図7の場合であれば、光ディスクの表面、第1の記録層、第2の記録層及び第3の記録層に対応する4つのFE信号がカウントされる。したがって、光ディスクの表面を除く3つの記録層が検出できたとして、光ディスク装置に装填された光ディスクは、3層光ディスクであると判定される。
一方、図8において、FE信号301は、4層光ディスクの表面において得られるFE信号であり、FE信号302,303,304,305は、4層光ディスクの第1の記録層、第2の記録層、第3の記録層及び第4の記録層において得られるFE信号である。なお、4層光ディスクは、表面から最も遠い第1の記録層、表面から2番目に遠い第2の記録層、表面から3番目に遠い第3の記録層及び表面に最も近い第4の記録層を有する。4層光ディスクの場合、第4の記録層は反射率が低く、かつ球面収差が最も大きく発生している。そのため、FE信号305は、他の記録層のFE信号よりかなり小さくなってしまっており、記録層を数えるための正側検出閾値205及び負側検出閾値206を超えないため記録層としてカウントすることができていない。
この場合、光ディスクの表面、第1の記録層、第2の記録層及び第3の記録層に対応する4つのFE信号がカウントされる。したがって、図7の3層光ディスクと同様の考え方であれば、光ディスクの表面を除く3つの記録層が検出できたとして、光ディスク装置に装填された光ディスクは、3層光ディスクであると判定されてしまい、正しく4層光ディスクであると判定されない。
以上のように、記録層が増加するとFE信号の個数が確実に判定できないことがあるため、フォーカス制御動作を行うまでに光ディスクの種類を決定することができない可能性が高く、光ディスクの種類は、ディスク固有の物理情報が記録された物理情報領域を再生するまで確定させることができない。
次に、記録密度が異なる2つの光ディスクA,Bの領域配置について図2(A)及び図2(B)を用いて説明する。図2(A)は、記録密度が異なる第1の光ディスクA及び第2の光ディスクBにおける物理情報領域及びユーザーデータ領域と半径位置との関係を示す図であり、図2(B)は、記録密度が異なる第1の光ディスクA及び第2の光ディスクBにおける物理情報領域及びユーザーデータ領域とアドレスとの関係を示す図である。
図2(A)において、いずれの光ディスクも、互いにフォーマットが異なる物理情報領域401とユーザーデータ領域402とを有する。物理情報領域401とユーザーデータ領域402とは、アドレスフォーマットが異なっており、アドレス読み取り回路52を一方の領域用の設定にした状態では他方の領域でアドレスを読むことができない。そのため、物理情報領域401とユーザーデータ領域402との2つの領域間を移動する際には、目標とする領域近辺へ移動させた後、アドレス読み取り回路52の設定を目標とする領域用の設定に切り換え、アドレスの読み取りを開始する必要がある。
物理情報始端半径位置411は、物理情報領域401において、物理情報が記録されている領域の始端位置を表し、物理情報終端半径位置412は、物理情報領域401とユーザーデータ領域402との境界位置を表し、基準半径位置413は、ユーザーデータ領域402において、アドレスの読み取りの基準となる半径位置を表す。ここで、基準半径位置413は、いずれの記録密度であっても同一のアドレスとなる半径位置である。また、図2(A)において、第1の光ディスクAの記録密度は第2の光ディスクBの記録密度よりも大きい。また、物理情報始端半径位置411より内側の領域は、物理情報領域401と同じアドレスフォーマットでトラックが形成されているが、物理情報自体は記録されていない領域である。
記録密度が異なる2つの光ディスクA,Bにおいて、基準半径位置413のアドレスはいずれも“100000”である。第1の光ディスクAの物理情報始端半径位置411のアドレスは“40000”であり、第2の光ディスクBの物理情報始端半径位置411のアドレスは“64000”であり、第1の光ディスクAの物理情報終端半径位置412のアドレスは“50000”であり、第2の光ディスクBの物理情報終端半径位置412のアドレスは“70000”である。また、基準半径位置413から物理情報始端半径位置411までの実距離は、第1の光ディスクAと第2の光ディスクBとで同じであるが、より記録密度が高い第1の光ディスクAの方がアドレスの変化量は大きくなる。
図2(B)は、図2(A)で説明した記録密度が異なる2つの光ディスクA,Bの領域配置を、アドレス基準で表現している。基準アドレス“100000”における基準半径位置413は、図2(A)で説明したように、第1の光ディスクAと第2の光ディスクBとで同一の半径位置となっている。ただし、第1の光ディスクAの物理情報領域401はアドレス“40000”から“50000”の間に、第2の光ディスクBの物理情報領域401はアドレス“64000”から“70000”の間に存在する。このように、物理情報領域401は、光ディスクの半径方向についてはほぼ同じ位置に存在するが、アドレス空間においては異なる位置に存在する。
シーク制御部53は、ユーザーデータ領域402内の所定の基準アドレスへシーク動作するように制御部61に指示し、制御部61は、トラッキングアクチュエータ駆動回路22を介して、ユーザーデータ領域402内の所定の基準アドレスへ光ピックアップ11をシーク動作させる。
シーク制御部53は、基準アドレスから物理情報領域401内の所定の目標アドレスへシーク動作するように制御部61に指示し、制御部61は、トラッキングアクチュエータ駆動回路22を介して、基準アドレスから物理情報領域401内の所定の目標アドレスへ光ピックアップ11をシーク動作させる。シーク制御部53は、基準アドレスから物理情報領域401内の所定の目標アドレスへ、第1の光ディスクAに対応するアドレスと半径位置との変換係数を用いてシーク動作する。
アドレス読み取り回路52は、シーク制御部53によってシーク動作された位置の現在アドレスを読み取る。
光ディスク種類決定部54は、アドレス読み取り回路52によって読み取られた現在アドレスに基づき光ディスクの種類を決定する。光ディスク種類決定部54は、アドレス読み取り回路52によって読み取られた現在アドレスが所定の閾値以上であるか否かを判断する。光ディスク種類決定部54は、現在アドレスが所定の閾値より小さいと判断された場合、装填された光ディスクが第1の光ディスクAであると決定し、現在アドレスが所定の閾値以上であると判断された場合、装填された光ディスクが第2の光ディスクBであると決定する。
また、シーク制御部53は、光ディスク種類決定部54によって決定された光ディスクの種類に応じて物理情報領域401内の目標アドレスへシーク動作する。シーク制御部53は、光ディスク種類決定部54によって装填された光ディスクが第2の光ディスクBであると決定された場合、アドレス読み取り回路52によって読み取られた現在アドレスから物理情報領域401内の所定の目標アドレスへ、第2の光ディスクBに対応するアドレスと半径位置との変換係数を用いてシーク動作する。
なお、物理情報領域401は複数の記録層のうちの全ての記録層に存在する必要は無い。物理情報領域401は、例えば図6の第1の記録層のように層数が異なる各光ディスク間で共通な位置にある記録層のみに存在すればよい。
次に、物理情報領域401へ確実にシークする手順について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置の動作を説明するためのフローチャートである。なお、図3では、光ディスク装置は、装填された光ディスクが、3つの記録層を有する第1の光ディスクAと、4つの記録層を有する第2の光ディスクBとの2種類の光ディスクのうちのいずれかを判別する。
まず、シーク動作を開始するにあたって、記録密度が定まっていないとシーク目標アドレスが確定できない。そのため、シーク制御部53は、いずれかの記録密度用の読み取り設定を行う。記録密度用の読み取り設定とは、記録密度に応じて決まる半径位置とアドレスとの換算係数の設定である。ここでは、シーク制御部53は、第1の光ディスクAの記録密度用の読み取り設定を行う(ステップS1)。
次に、シーク制御部53は、基準半径位置413に対応した基準アドレス“100000”をシーク目標アドレスTgt0として設定する(ステップS2)。次に、トラッキングアクチュエータ駆動回路22は、トラッキングアクチュエータ3を駆動し、ユーザーデータ領域402内のシーク目標アドレスTgt0へ光ピックアップ11をシークする(ステップS3)。ここで、最初に基準半径位置413へシークさせることは、異なる記録密度の光ディスクが装填される光ディスク装置において、シーク動作時の安定性を高める効果がある。すなわち、光ディスク装置に装填された光ディスクがいずれの記録密度であるかが確定していない状態では、基準半径位置413以外の領域では、現在位置におけるアドレスと半径位置との関係が不確定であるため、以降のシーク動作が正確に行えなくなるからである。
その後、シーク制御部53は、第1の光ディスクAの物理情報始端半径位置411に対応したアドレス“40000”をシーク目標アドレスTgtAとして設定する(ステップS4)。次に、トラッキングアクチュエータ駆動回路22は、トラッキングアクチュエータ3を駆動し、ユーザーデータ領域402内の基準アドレスから物理情報領域401内のシーク目標アドレスTgtAへ光ピックアップ11をシークさせる(ステップS5)。
次に、マイクロコンピュータ51は、アドレス読み取り回路52を物理情報領域401でアドレスが読み取れる設定に切り換える(ステップS6)。アドレス情報は、ウォブル信号に変調されて記録されており、物理情報領域401とユーザーデータ領域402とではそれぞれ異なる変調フォーマットで記録されている。そのため、アドレス読み取り回路52は、物理情報領域401用のウォブル信号デコード設定に変更する。すなわち、アドレス読み取り回路52は、ユーザーデータ領域402からアドレスを読み取る設定から、物理情報領域401からアドレスを読み取る設定に切り換えられる。
ここで、物理情報始端半径位置411へのシーク動作と、アドレス読み取り回路52の設定切換との順番はこの手順に限定されるものではなく、基準半径位置413へシーク動作してアドレスを読み取った後、物理情報始端半径位置411でアドレスを読み取る前にアドレス読み取り回路52の設定を切り換えてもよい。
次に、アドレス読み取り回路52は、物理情報始端半径位置411における現在アドレスAdr1を読み取る(ステップS7)。次に、光ディスク種類決定部54は、読み取った現在アドレスAdr1を所定の閾値ThAと比較する。すなわち、光ディスク種類決定部54は、読み取った現在アドレスAdr1が所定の閾値ThA以上であるか否かを判断する(ステップS8)。閾値ThAは、物理情報始端半径位置411における第1の光ディスクA及び第2の光ディスクBのそれぞれのアドレスを切り分けできる値である必要があり、光ピックアップ11を物理情報始端半径位置411に移動する際の移動誤差があった場合に読み取ったアドレスがばらつくことを考慮して設計する。本実施の形態の場合であれば、閾値ThAは、“40000”から“64000”の間の値に設定することが望ましい。
読み取った現在アドレスAdr1が閾値ThAより小さいと判断された場合(ステップS8でNO)、光ディスク種類決定部54は、現在光ディスク装置に装填されている光ディスクの種類を第1の光ディスクAであると決定する(ステップS9)。なお、読み取った現在アドレスAdr1に目標アドレス40000との誤差がある場合、シーク制御部53は、光ピックアップ11をさらにシークさせる。
一方、読み取った現在アドレスAdr1が閾値ThA以上であると判断された場合(ステップS8でYES)、光ディスク種類決定部54は、現在光ディスク装置に装填されている光ディスクの種類を第2の光ディスクBであると決定する(ステップS10)。次に、シーク制御部53は、第1の光ディスクAの記録密度用の読み取り設定から、第2の光ディスクBの記録密度用の読み取り設定に切り換える(ステップS11)。次に、シーク制御部53は、現在設定されているシーク目標アドレスTgtAを第2の光ディスクBにおける物理情報始端半径位置411に対応したアドレスに切り換える(ステップS12)。すなわち、シーク制御部53は、第2の光ディスクBの物理情報始端半径位置411に対応したアドレス“64000”をシーク目標アドレスTgtBとして設定する。
最後に、トラッキングアクチュエータ駆動回路22は、トラッキングアクチュエータ3を駆動し、物理情報領域401内のシーク目標アドレスTgtBへ光ピックアップ11をシークさせる(ステップS13)。これにより、光ピックアップ11は、目標となる物理情報始端半径位置411へ到達する。
このような手順で動作させることにより、記録密度が不確定な状態であっても確実に物理情報領域401へ光ピックアップ11をシークさせることができる。
なお、ステップS6のアドレス読み取り回路52の設定切換処理では、第1の光ディスクAの記録密度用の設定に切り換えるが、第1の光ディスクAの記録密度と第2の光ディスクBの記録密度との中間の記録密度用の設定に切り換え、ステップS8のアドレス比較で記第1の光ディスクAに決定された後に第1の光ディスクAの記録密度用の設定に切り換えてもよい。このようにすれば、装填された光ディスクが第2の光ディスクBであったとしても、さらに安定に現在アドレスを取得することができる。
なお、ステップS7の現在アドレスの読み取りにおいて、現在アドレスが読み取れなかった場合には、アドレス読み取り回路52の設定を第2の光ディスクBの記録密度用に設定し、再度現在アドレスの読み取りを行っても良い。
また、図3では、第1の光ディスクA及び第2の光ディスクBの2種類の光ディスクを判別しているが、第1の光ディスクA、第2の光ディスクB及び第3の光ディスクCの3種類の光ディスクを判別してもよい。3種類の光ディスクを判別する場合、読み取った現在アドレスAdr1が所定の閾値ThA以上であると判断された場合、光ディスク種類決定部54は、読み取った現在アドレスAdr1が閾値ThAよりも大きい閾値ThB以上であるか否かを判断する。そして、読み取った現在アドレスAdr1が閾値ThBより小さいと判断された場合、光ディスク種類決定部54は、現在光ディスク装置に装填されている光ディスクの種類を第2の光ディスクBであると決定し、読み取った現在アドレスAdr1が閾値ThB以上であると判断された場合、光ディスク種類決定部54は、現在光ディスク装置に装填されている光ディスクの種類を第3の光ディスクCであると決定する。なお、第1の光ディスクAの記録密度は、第2の光ディスクBの記録密度より大きく、第2の光ディスクBの記録密度は、第3の光ディスクCの記録密度より大きいとする。
なお、4種類以上の光ディスクを判別する場合は、判別する光ディスクの種類の数に応じて閾値の数を設定し、判別する光ディスクの種類の数に応じて現在アドレスと閾値との判断処理の数をさらに設定する。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における光ディスク装置について説明する。
本実施の形態2における光ディスク装置の構成は実施の形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
マイクロコンピュータ51は、シーク制御部53によって基準アドレスへシーク動作する前に、光ディスクの種類を仮に判別する。シーク制御部53は、マイクロコンピュータ51による光ディスクの種類の仮判別結果に基づいて、目標アドレスの値を切り換える。また、マイクロコンピュータ51は、フォーカスエラー信号の数から求めた記録層数、トラッキングエラー信号の振幅及びウォブリンググルーブの周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、光ディスクの種類を仮に判別する。
物理情報領域401へ確実にシーク動作する手順について、図4のフローチャートを用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2における光ディスク装置の動作を説明するためのフローチャートである。図4において、図3のフローチャートと同じ符号が付いている手順は同様の処理内容であるため説明を省略する。
まず、マイクロコンピュータ51は、初期ディスク判別結果を取得する(ステップS21)。初期ディスク判別結果とは、例えば前述したFE信号の数から求めた記録層数、トラッキングエラー信号生成器32によって生成されたトラッキングエラー信号の振幅、又はウォブリンググルーブの周波数等を用いて判定した光ディスクの種類である。次に、シーク制御部53は、初期ディスク判別結果に基づいて特定される光ディスクの種類に応じた記録密度(記録密度X)用の読み取り設定を行う(ステップS22)。
なお、マイクロコンピュータ51は、FE信号の数から求めた記録層数、トラッキングエラー信号の振幅、又はウォブリンググルーブの周波数と、光ディスクの種類(記録密度)とを対応付けて予め記憶している。
その後、ステップS23において、マイクロコンピュータ51は、ステップS22で設定した記録密度Xと、光ディスク装置に装填される可能性がある光ディスクの記録密度とを比較し、記録密度Xに類似する光ディスクが複数存在するか否かを判断する。ここで、記録密度Xに類似する光ディスクが複数存在すると判断された場合(ステップS23でYES)、ステップS7の処理へ移行する。
一方、記録密度Xに類似する光ディスクが複数存在しないと判断された場合(ステップS23でNO)、ステップS7からステップS13の処理を省き、動作を終了する。
例として、ウォブリンググルーブの周波数を用いて初期ディスク判定を行う場合について説明する。
装填される可能性がある光ディスクの記録密度が、25GB、28GB、32GB、33GB及び40GBの5種類であるとし、ウォブリンググルーブの周波数の測定ばらつきから設定した判定基準が10%であるとする。このとき、ステップS22において得られた記録密度Xが25GBである場合、25GBの±10%に相当する22.5GBから27.5GBの間の記録密度の光ディスクは25GB以外に存在しない。したがって、この場合、マイクロコンピュータ51は、記録密度Xに類似する光ディスクが複数存在しないと判断する。また、ステップS22において得られた記録密度Xが33GBである場合、33GBの±10%に相当する30.0GBから36.3GBの間の記録密度の光ディスクは33GB以外に32GBの光ディスクが存在する。したがって、この場合、マイクロコンピュータ51は、記録密度Xに類似する光ディスクが複数存在すると判断する。
上記の判断結果によって、記録密度Xに類似する光ディスクが複数存在する場合にのみステップS7からステップS13の処理を行うことで、記録密度Xに類似する光ディスクが複数存在しない場合の処理時間を短縮することが可能となる。
また、図8のように、反射率が非常に低い記録層を有する光ディスクではあらかじめ光ディスクの種類を確定させることは困難である。しかしながら、反射率が非常に低い記録層を有していない光ディスクであればシーク目標アドレスとして正しいアドレスを与えることができる。したがって、ステップS10〜ステップS13の処理を実行する頻度が低減するので、光ディスク判別処理の高速化が可能となる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における光ディスク装置について説明する。
本実施の形態3における光ディスク装置の構成は実施の形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた再生パワーが設定されたレーザ光源9を用いて再生される。マイクロコンピュータ51は、シーク制御部53によって目標アドレスにシーク動作する前に、複数種類の光ディスクの再生パワーのうち最も低い再生パワーに切り換える。
また、複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた高周波成分が駆動電流に重畳されたレーザ光源9を用いて再生される。マイクロコンピュータ51は、シーク制御部53によって目標アドレスにシーク動作する前に、高周波成分の重畳を停止させ、レーザ光源9を直流駆動させる。
さらに、複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた線速度で回転駆動される。マイクロコンピュータ51は、シーク制御部53によって目標アドレスにシーク動作する前に、複数種類の光ディスクのうち最も高い線速度で光ディスクを回転駆動させる。
物理情報領域401へ確実にシーク動作する手順について、図5のフローチャートを用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態3における光ディスク装置の動作を説明するためのフローチャートである。図5において、図3及び図4のフローチャートと同じ符号が付いている手順は同様の処理内容であるため説明を省略する。
記録層数が増加すると記録層の反射率が低下することは前述したが、光ディスクから反射される信号のS/N比を確保するため、レーザ光源の出力を上げたり、レーザ駆動回路で駆動電流に高周波成分を重畳させてレーザ光源を発光駆動させることがある。
また、それぞれ記録密度が異なる複数の光ディスクに情報を記録又は再生する光ディスク装置の場合、記録密度毎に同一読み取り速度に設定しようとすると、記録密度毎にスピンドルモータ71の回転速度が変化する。記録密度が高い光ディスクは、記録密度が低い光ディスクより遅い速度でスピンドルモータ71を回転させる必要がある。
また、光ディスク装置において、レーザ光源9の出力を規定より大きくしたり、スピンドルモータ71の回転速度を遅くしたりすると、記録された信号が徐々に消えていく再生光劣化という現象が知られている。また、光ディスクの種類によっては、レーザ駆動回路24に高周波成分を重畳させると、再生光劣化による信号劣化がさらに顕著になることがある。
そのため、光ディスクに照射する光ビームの出力、及びスピンドルモータ71の回転速度は、光ディスク装置に装填された光ディスクの種類に合わせて適切に変更しなければならない。
ところが、記録層数又は記録密度を確定させるためには、前述のように物理情報を読み出さなければならない。しかしながら、そのためには、情報が記録されている可能性がある光ディスク上のトラックに光ビームを照射してシーク動作を行う必要がある。
もし記録層数又は記録密度を誤って判定し、誤った判定結果に基づいてレーザ光源の出力を大きく、またスピンドルモータ71の回転速度を遅く設定してしまうと、誤って光ディスク上に記録された情報を消去してしまう可能性がある。
そこで、図5のフローチャートにおいて、マイクロコンピュータ51は、初期ディスク判別結果に基づいて、光ディスク装置に装填された光ディスクに対して、当該光ディスク装置に装填され得る光ディスクの再生パワーのうちの最も低い再生パワーで、かつ、高周波成分の重畳を停止してレーザ光源9をDC駆動させ、スピンドルモータ71を最も早い回転数に設定する(ステップS31)。その状態で、物理情報領域401へのシーク動作が行われる。このステップS31の処理は、光ディスクに対して光ビームを照射してフォーカス制御を開始する前に行うことが望ましい。
このようにすることで、記録層数又は記録密度が不確定な状態であっても、光ディスク上の情報を誤消去することなく物理情報領域401へ確実にシーク動作し、物理情報を読み出すことにより光ディスクの種類を確定させることができ、最適な光ビーム出力及びスピンドルモータ71の回転数を得ることができる。
なお、想定される光ディスクの記録密度と規定の再生パワーとの組み合わせが、記録密度が高くなるにつれ再生パワーが上がる組み合わせの場合には、最も記録密度の低い光ディスクの再生パワーに設定しておけばよい。
また、想定される光ディスクの再生パワーの設定組み合わせにおいて、高周波成分の重畳を停止する設定がない場合は、平均再生パワーが想定され得る最も低い光ビーム出力となり、かつ、高周波成分の重畳によるピークパワーレベルが想定され得る最も低いピーク光ビーム出力以下となるように高周波成分を設定することによりさらに安定にアドレスを読み取ることができる。
ここまで述べた実施の形態1〜3において、図2を用いて記録密度が異なる2種類の光ディスクが装填される場合の動作について述べてきたが、記録容量のさらなる大容量化を図るために、記録層数の増加とともに記録密度を変化させた光ディスクが出現するなどして記録密度の種類が増加した場合であっても対応可能である。図3〜図5の現在アドレスを取得する処理(ステップS7)において得られる現在アドレスは記録密度によって変化する。そのため、ステップS8のアドレス比較処理における判断条件(閾値)を複数備えることで記録密度の種類の増加に対応することが可能となる。
また、ユーザーデータ領域402内の基準アドレスから物理情報領域401へシーク動作する前にユーザーデータ領域402内の別アドレス、例えばアドレス“80000”へシーク動作して読み取ったアドレスから記録密度を判定した後、物理情報領域401へシーク動作することも考えられる。しかしながら、実施の形態1〜3のように、ユーザーデータ領域402内の基準アドレスから物理情報領域401へシーク動作することにより、ユーザーデータ領域402内の別アドレスへのシーク動作を省くことができるため、高速に物理情報領域401へシーク動作できるという効果がある。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る光ディスク判別方法は、記録密度の異なる複数種類の光ディスクに対して光ビームを照射して前記光ディスクに記録されている情報を読み取る又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置に装填された光ディスクの種類を判別するための光ディスク判別方法であって、前記光ディスクは、互いにフォーマットが異なるユーザーデータ領域と物理情報領域とを有し、前記ユーザーデータ領域内の所定の基準アドレスへシーク動作する第1のシークステップと、前記第1のシークステップにおいてシーク動作された前記基準アドレスから前記物理情報領域内の所定の目標アドレスへシーク動作する第2のシークステップと、前記第2のシークステップにおいてシーク動作された位置の現在アドレスを読み取るアドレス読取ステップと、前記アドレス読取ステップにおいて読み取られた前記現在アドレスに基づき光ディスクの種類を決定する光ディスク種類決定ステップとを含む。
この構成によれば、光ディスクは、互いにフォーマットが異なるユーザーデータ領域と物理情報領域とを有している。第1のシークステップにおいて、ユーザーデータ領域内の所定の基準アドレスへシーク動作され、第2のシークステップにおいて、第1のシークステップでシーク動作された基準アドレスから物理情報領域内の所定の目標アドレスへシーク動作される。アドレス読取ステップにおいて、第2のシークステップでシーク動作された位置の現在アドレスが読み取られ、光ディスク種類決定ステップにおいて、アドレス読取ステップで読み取られた現在アドレスに基づき光ディスクの種類が決定される。
したがって、光ディスク装置に装填された光ディスクの種類が確定していない状態であっても、確実に物理情報領域へシーク動作させることができ、光ディスクの種類を確実に判別することができる。
また、上記の光ディスク判別方法において、前記光ディスク種類決定ステップにおいて決定された光ディスクの種類に応じて前記物理情報領域内の前記目標アドレスへシーク動作する第3のシークステップをさらに含むことが好ましい。
この構成によれば、第3のシークステップにおいて、光ディスク種類決定ステップで決定された光ディスクの種類に応じて物理情報領域内の目標アドレスへシーク動作される。したがって、確実に物理情報領域へシーク動作させて、物理情報領域に記憶されている情報を読み出すことができる。
また、上記の光ディスク判別方法において、前記複数種類の光ディスクは、記録密度が互いに異なる第1の光ディスクと第2の光ディスクとを含み、前記第2のシークステップは、前記第1のシークステップにおいてシーク動作された前記基準アドレスから前記物理情報領域内の所定の目標アドレスへ、前記第1の光ディスクに対応するアドレスと半径位置との変換係数を用いてシーク動作し、前記光ディスク種類決定ステップは、前記アドレス読取ステップにおいて読み取られた前記現在アドレスが所定の閾値以上であるか否かを判断し、前記現在アドレスが前記所定の閾値より小さいと判断された場合、装填された光ディスクが前記第1の光ディスクであると決定し、前記現在アドレスが前記所定の閾値以上であると判断された場合、装填された光ディスクが前記第2の光ディスクであると決定し、第3のシークステップは、前記光ディスク種類決定ステップにおいて装填された光ディスクが前記第2の光ディスクであると決定された場合、前記アドレス読取ステップにおいて読み取られた前記現在アドレスから前記物理情報領域内の所定の目標アドレスへ、前記第2の光ディスクに対応するアドレスと半径位置との変換係数を用いてシーク動作することが好ましい。
この構成によれば、複数種類の光ディスクは、記録密度が互いに異なる第1の光ディスクと第2の光ディスクとを含む。そして、第2のシークステップにおいて、第1のシークステップでシーク動作された基準アドレスから物理情報領域内の所定の目標アドレスへ、第1の光ディスクに対応するアドレスと半径位置との変換係数を用いてシーク動作される。光ディスク種類決定ステップにおいて、アドレス読取ステップで読み取られた現在アドレスが所定の閾値以上であるか否かが判断される。ここで、現在アドレスが所定の閾値より小さいと判断された場合、装填された光ディスクが第1の光ディスクであると決定され、現在アドレスが所定の閾値以上であると判断された場合、装填された光ディスクが第2の光ディスクであると決定される。そして、第3のシークステップにおいて、前記光ディスク種類決定ステップで装填された光ディスクが第2の光ディスクであると決定された場合、アドレス読取ステップで読み取られた現在アドレスから物理情報領域内の所定の目標アドレスへ、第2の光ディスクに対応するアドレスと半径位置との変換係数を用いてシーク動作される。
したがって、第1の光ディスク及び第2の光ディスクのうちの第1の光ディスクに対応するアドレスと半径位置との変換係数を用いてシーク動作させることにより、装填された光ディスクが第1の光ディスクであるか、第2の光ディスクであるかを容易に判別することができる。
また、上記の光ディスク判別方法において、前記第1のシークステップにおいて前記基準アドレスへシーク動作する前に、前記光ディスクの種類を仮に判別する仮判別ステップをさらに含み、前記第2のシークステップは、前記仮判別ステップにおける前記光ディスクの種類の仮判別結果に基づいて、前記目標アドレスの値を切り換えることが好ましい。
この構成によれば、第1のシークステップにおいて前記基準アドレスへシーク動作される前に、仮判別ステップにおいて、光ディスクの種類が仮に判別される。第2のシークステップにおいて、仮判別ステップにおける光ディスクの種類の仮判別結果に基づいて、目標アドレスの値が切り換えられる。
したがって、第1のシークステップの前に、光ディスクの種類が仮に判別されるので、第2のシークステップにおいて物理情報領域内の所定の目標アドレスへ精度よくシーク動作させることができる。
また、上記の光ディスク判別方法において、前記仮判別ステップは、フォーカスエラー信号の数から求めた記録層数、トラッキングエラー信号の振幅及びウォブリンググルーブの周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、前記光ディスクの種類を仮に判別することが好ましい。
この構成によれば、フォーカスエラー信号の数から求めた記録層数、トラッキングエラー信号の振幅及びウォブリンググルーブの周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、光ディスクの種類を仮に判別することができる。
また、上記の光ディスク判別方法において、前記複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた再生パワーが設定された光源を用いて再生され、前記第2のシークステップにおいて前記目標アドレスにシーク動作する前に、前記複数種類の光ディスクの再生パワーのうち最も低い再生パワーに切り換える再生パワー切換ステップをさらに含むことが好ましい。
この構成によれば、複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた再生パワーが設定された光源を用いて再生される。そして、第2のシークステップで目標アドレスにシーク動作される前に、再生パワー切換ステップにおいて、複数種類の光ディスクの再生パワーのうち最も低い再生パワーに切り換えられる。
したがって、第2のシークステップで目標アドレスにシーク動作される前に、複数種類の光ディスクの再生パワーのうち最も低い再生パワーに切り換えられるので、装填された光ディスクの種類が不確定な状態であっても、光ディスク上の情報を誤消去することなく物理情報領域へ確実にシーク動作することができる。
また、上記の光ディスク判別方法において、前記複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた高周波成分が駆動電流に重畳された光源を用いて再生され、前記第2のシークステップにおいて前記目標アドレスにシーク動作する前に、高周波成分の重畳を停止させ、前記光源を直流駆動させる直流駆動ステップをさらに含むことが好ましい。
この構成によれば、複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた高周波成分が駆動電流に重畳された光源を用いて再生される。そして、第2のシークステップで目標アドレスにシーク動作される前に、直流駆動ステップにおいて、高周波成分の重畳が停止され、光源が直流駆動される。
したがって、第2のシークステップで目標アドレスにシーク動作される前に、高周波成分の重畳が停止され、光源が直流駆動されるので、装填された光ディスクの種類が不確定な状態であっても、光ディスク上の情報を誤消去することなく物理情報領域へ確実にシーク動作することができる。
また、上記の光ディスク判別方法において、前記複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた線速度で回転駆動され、前記第2のシークステップにおいて前記目標アドレスにシーク動作する前に、前記複数種類の光ディスクのうち最も高い線速度で前記光ディスクを回転駆動させる回転駆動ステップをさらに含むことが好ましい。
この構成によれば、複数種類の光ディスクは、それぞれ決められた線速度で回転駆動される。そして、第2のシークステップで目標アドレスにシーク動作される前に、回転駆動ステップにおいて、複数種類の光ディスクのうち最も高い線速度で光ディスクが回転駆動される。
したがって、第2のシークステップで目標アドレスにシーク動作される前に、複数種類の光ディスクのうち最も高い線速度で光ディスクが回転駆動されるので、装填された光ディスクの種類が不確定な状態であっても、光ディスク上の情報を誤消去することなく物理情報領域へ確実にシーク動作することができる。
本発明の他の局面に係る光ディスク装置は、記録密度の異なる複数種類の光ディスクに対して光ビームを照射して前記光ディスクに記録されている情報を読み取る又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置であって、前記光ディスクは、互いにフォーマットが異なるユーザーデータ領域と物理情報領域とを有し、前記ユーザーデータ領域内の所定の基準アドレスへシーク動作する第1のシーク部と、前記第1のシーク部によってシーク動作された前記基準アドレスから前記物理情報領域内の所定の目標アドレスへシーク動作する第2のシーク部と、前記第2のシーク部によってシーク動作された位置の現在アドレスを読み取るアドレス読取部と、前記アドレス読取部によって読み取られた前記現在アドレスに基づき光ディスクの種類を決定する光ディスク種類決定部とを備える。
この構成によれば、光ディスクは、互いにフォーマットが異なるユーザーデータ領域と物理情報領域とを有している。第1のシーク部は、ユーザーデータ領域内の所定の基準アドレスへシーク動作し、第2のシーク部は、第1のシーク部によってシーク動作された基準アドレスから物理情報領域内の所定の目標アドレスへシーク動作する。アドレス読取部は、第2のシーク部によってシーク動作された位置の現在アドレスを読み取り、光ディスク種類決定部は、アドレス読取部によって読み取られた現在アドレスに基づき光ディスクの種類を決定する。
したがって、光ディスク装置に装填された光ディスクの種類が確定していない状態であっても、確実に物理情報領域へシーク動作させることができ、光ディスクの種類を確実に判別することができる。
本発明の他の局面に係る集積回路は、記録密度の異なる複数種類の光ディスクに対して光ビームを照射して前記光ディスクに記録されている情報を読み取る又は前記光ディスクに情報を記録する光ディスク装置に装填された光ディスクの種類を判別するための集積回路であって、前記光ディスクは、互いにフォーマットが異なるユーザーデータ領域と物理情報領域とを有し、前記ユーザーデータ領域内の所定の基準アドレスへシーク動作する第1のシーク回路と、前記第1のシーク回路によってシーク動作された前記基準アドレスから前記物理情報領域内の所定の目標アドレスへシーク動作する第2のシーク回路と、前記第2のシーク回路によってシーク動作された位置の現在アドレスを読み取るアドレス読取回路と、前記アドレス読取回路によって読み取られた前記現在アドレスに基づき光ディスクの種類を決定する光ディスク種類決定回路とを備える。
この構成によれば、光ディスクは、互いにフォーマットが異なるユーザーデータ領域と物理情報領域とを有している。第1のシーク回路は、ユーザーデータ領域内の所定の基準アドレスへシーク動作し、第2のシーク回路は、第1のシーク回路によってシーク動作された基準アドレスから物理情報領域内の所定の目標アドレスへシーク動作する。アドレス読取回路は、第2のシーク回路によってシーク動作された位置の現在アドレスを読み取り、光ディスク種類決定回路は、アドレス読取回路によって読み取られた現在アドレスに基づき光ディスクの種類を決定する。
したがって、光ディスク装置に装填された光ディスクの種類が確定していない状態であっても、確実に物理情報領域へシーク動作させることができ、光ディスクの種類を確実に判別することができる。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。