JP5523965B2 - 高分子電解質粒子及びその製造方法、並びに固体高分子電解質 - Google Patents

高分子電解質粒子及びその製造方法、並びに固体高分子電解質 Download PDF

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Description

本発明は、高分子電解質粒子及びその製造方法、並びに固体高分子電解質に関する。
従来、電池、コンデンサー、エレクトロクロミック素子、センサーなどの電気化学素子において、イオン伝導を司る媒体としては、水あるいは有機溶媒などに電解質を溶解させた液状の電解質が用いられてきた。
近年では、耐漏液性の点、信頼性の高い素子を提供できる点、素子の密閉製造の簡略化による素子自身の小型・軽量化が可能な点等から、固体電解質に対する研究開発が活発になされている。
固体電解質の中でも、固体高分子電解質は無機系固体電解質に比べ、軽量であるため更なる高エネルギー密度が期待され、かつ柔軟性を有するため密着性、成形性に優れていることから特に大きな注目を集めている。
固体高分子電解質の中でもポリエチレンオキシド(PEO)は、電解質として過塩素酸リチウムを溶解させた系において1×10−7S/cm程度のイオン伝導度が得られたことが、1979年にグルノーブル大学(仏)のArmandらにより報告されて以来、盛んに研究が行われてきた(例えば、非特許文献1参照)。
このような系は、マトリックス高分子中へ解離したイオンはポリマー中の酸素(−O−)と会合体を作って溶媒和し、電界を印加することにより、会合と解離を繰り返しながら高分子鎖のセグメント運動によってイオンが拡散輸送される現象を利用したものである。 そのため、結晶部分は高分子鎖の動きを妨げ、室温、もしくはそれ以下の温度におけるイオン伝導性を急激に低下させてしまい、十分なイオン伝導度を得ることができないという問題点があった。PEOをこの系の一般的な融点である60℃以上の温度に保持すれば、高分子鎖のセグメント運動が活発になるためイオン伝導性は顕著に大きくすることができる。しかし、一方こうした温度においてPEOは粘性の液体として振舞い、寸法安定性を失ってしまう。これでは、固体高分子電解質よりもはるかに高いイオン伝導性を示す従来の液状の電解質に対して、固体高分子電解質の優位性がなくなってしまう。
このようなジレンマを解決するため、従来の研究の多くは、室温でのイオン伝導度を上げるために、可塑剤の添加、異種ポリマーの共重合、側鎖の導入など、PEOの結晶性を低下させる方向性でなされていた。しかし結果的には、これらの方法では、PEOが非晶質に近づいていくため、一般には高いイオン伝導度と十分な機械的な特性(寸法安定性)を両立させ、かつ簡便なプロセスで固体高分子電解質を作製することはできなかった。
高いイオン伝導度を持ち、かつ機械的な強度を付与するために幾つかの手段が知られている。例えば、電子線架橋あるいは化学的架橋によって網目構造を形成し電解質をゲル状にする手法が検討されてきた。
しかし、これらの手法では液状の電解質並みの高いイオン伝導度を達成できているものの十分な機械強度を保持することはできていない上に、電解質の製造には架橋工程を含み、多くの工程が必要となり製造工程が煩雑となる欠点がある。さらに、架橋されたネットワーク構造には流動性がなく不溶性であるため、これらの電解質はリサイクル性がなく、電極シートと電解質を張り合わせる際に密着性を確保するための特殊な工程を導入する必要があった。
更に、イオン伝導性機能を有する部位と機械強度を保持する機能を有する部位の両方を持った構造を有する高分子電解質も検討されてきた。例えば、ポリスチレンを主鎖として、デンドリマー構造を用いることによりイオン伝導度を向上させようとする試みもある(例えば、特許文献1及び2参照)。
更に別な試みとして、ポリスチレン主鎖からATRPを用いて側鎖部分に比較的低分子量のPEG構造をグラフトさせることにより、常温での高いイオン伝導度と機械強度を両立させた固体高分子電解質が得られるとされている(例えば、特許文献3参照)。
また更に別な試みとして、ポリスチレン−マレイン酸無水物共重合体(例えば、特許文献4参照)、もしくは、無水マレイン酸をグラフトさせたポリプロピレン(例えば、特許文献5参照)に対して、エステル結合を使ってPEGをグラフト、及び/又は架橋させた構造を高分子電解質として用いる試みもある。
特開平8−69817号公報 特開2009−1803公報 特開2004−161873公報 特開2000−53772公報 特開2004−224944公報
Fast Ion Transport in Solids, North Hollow, NY(1979)
しかしながら、特許文献1及び2に記載の高分子電解質は、デンドリマー作製には合成経路が多段階となり煩雑なプロセスを採用しなければならないという問題点がある。
また、特許文献3に記載の固体高分子電解質では、触媒として使用された銅を完全に取り除くのが困難であり、残留した銅イオンが電極での界面抵抗となり、結果として電池性能を悪化させてしまう場合がある。
また、特許文献4及び5に記載の固体高分子電解質では、マレイン酸無水物とヒドロキシル基とのエステル化によるカルボン酸基が残ってしまい、この官能基が電解質中のLiイオンと配位してしまい、結果として、十分なイオン導電度を得ることができない場合がある。
従って、広い温度域わたり十分なイオン導電度を維持し、広い温度域にわたり十分な機械強度を維持する固体高分子電解質を、簡易な方法で作製する技術については、更なる改善が求められている。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、広い温度域にわたり(特に、20℃以下等の低温時においても)十分なイオン導電度を維持し、広い温度域にわたり(特に、ポリアルキレンオキサイド部位の融点以上等の高温時においても)十分な機械強度を維持する固体高分子電解質を、簡易な方法で作製できる高分子電解質粒子及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、広い温度域にわたり(特に、20℃以下等の低温時においても)十分なイオン導電度を維持し、広い温度域にわたり(特に、ポリアルキレンオキサイド部位の融点以上等の高温時においても)十分な機械強度を維持する固体高分子電解質を提供することである。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 極性溶媒中に、一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体を、前記ポリオレフィン部位の融点以上の温度で分散させて分散体とする工程と、
得られた分散体を冷却して重合体粒子を得る工程と、
前記冷却後の分散体に電解質を添加して、前記重合体粒子及び前記電解質を含む高分子電解質粒子を得る工程と、
を有する高分子電解質粒子の製造方法。
<2> 前記電解質がイオン性塩であり、
前記一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の総酸素原子数と、前記イオン性塩に含まれる総陽イオン数と、の比率〔前記総酸素原子数/前記総陽イオン数〕が、0.1〜30である<1>に記載の高分子電解質粒子の製造方法。
<3> 前記一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体が、下記一般式(1)、下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)、又は下記一般式(7)で表される重合体である<1>又は<2>に記載の高分子電解質粒子の製造方法。
〔一般式(1)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、及び一般式(7)中、Aは、ポリオレフィン部位を表し、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、及びX11は、それぞれ独立に、ポリアルキレンオキサイド部位を表す。
一般式(1)中、Rは、水素原子又はヒドロキシル基を表す。
一般式(7)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖型アルキル基、又は分岐型アルキル基を表す。
一般式(7)で表される重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体である。〕
<4> 前記一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体に含まれるポリオレフィン部位の数平均分子量(Mn)が400〜8000であり、該重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の数平均分子量(Mn)が400〜5000である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の高分子電解質粒子の製造方法。
<5> 前記一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体は、前記ポリアルキレンオキサイド部位のうち少なくとも一部の末端が、エステル化により修飾されているか、または、シアノ基により修飾されている<1>〜<4>のいずれか1項に記載の高分子電解質粒子の製造方法。
<6> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の高分子電解質粒子の製造方法によって製造された高分子電解質粒子。
<7> 前記重合体粒子におけるポリオレフィン部位が、結晶性を有する<6>に記載の高分子電解質粒子。
<8> 前記重合体粒子は、前記ポリオレフィン部位から構成されるコアと、前記ポリアルキレンオキサイド部位から構成されるシェルと、からなるコアシェル型粒子である<6>又は<7>に記載の高分子電解質粒子。
<9> <6>〜<8>のいずれか1項に記載の高分子電解質粒子を用いて作製された固体高分子電解質。
<10> 前記重合体粒子におけるポリアルキレンオキサイド部位が、互いに連結して連続相を形成している<9>に記載の固体高分子電解質。
<11> 更に、固体高分子電解質全量に対して0.1質量%〜30質量%の可塑剤を含有する<9>又は<10>に記載の固体高分子電解質。
<12> 一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体からなる重合体粒子であって、前記ポリオレフィン部位から構成されるコアと、前記ポリアルキレンオキサイド部位から構成されるシェルと、からなるコアシェル型粒子と、
電解質と、
を含む高分子電解質粒子。
<13> <12>に記載の高分子電解質粒子を用いて作製された固体高分子電解質。
本発明によれば、広い温度域にわたり(特に、20℃以下等の低温時においても)十分なイオン導電度を維持し、広い温度域にわたり(特に、ポリアルキレンオキサイド部位の融点以上等の高温時においても)十分な機械強度を維持する固体高分子電解質を、簡易な方法で作製できる高分子電解質粒子及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明の目的は、広い温度域にわたり(特に、20℃以下等の低温時においても)十分なイオン導電度を維持し、広い温度域にわたり(特に、ポリアルキレンオキサイド部位の融点以上等の高温時においても)十分な機械強度を維持する固体高分子電解質を提供することができる。
本発明における重合体粒子の一例を模式的に表した図である。 実施例1で得られた固体高分子電解質ディスクの断面薄片をTEM観察した結果である。 実施例1で得られた固体高分子電解質ディスクの常温から170度までの固体粘弾性測定結果である。 実施例及び比較例における、測定温度とイオン伝導度との関係を示すグラフである。
≪高分子電解質粒子及びその製造方法≫
本発明の高分子電解質粒子の製造方法は、極性溶媒中に、一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体を、前記ポリオレフィン部位の融点以上の温度で分散させて分散体とする工程(以下、「分散工程」ともいう)と、得られた分散体を冷却して重合体粒子を得る工程(以下、「冷却工程」ともいう)と、前記冷却後の分散体に電解質を添加して、前記重合体粒子及び前記電解質を含む高分子電解質粒子を得る工程(以下、「電解質添加工程」ともいう)と、を有する。本発明の高分子電解質粒子の製造方法は、必要に応じ、上記以外の工程を含んでいてもよい。
また、本発明の高分子電解質粒子は、上記本発明の高分子電解質粒子の製造方法によって製造されたものである。
本発明の高分子電解質粒子の製造方法では、前記分散工程において、ポリオレフィン部位が溶融した状態で、極性溶媒中に重合体が分散される。
このとき、極性溶媒中において重合体は、溶融したポリオレフィン部位の周囲を、ポリオレフィン部位よりも極性溶媒との親和性が強いポリアルキレンオキサイド部位が取り囲んだ状態(ミセル)となっていると考えられる。
次に、冷却工程において、上記の状態のままポリオレフィン部位が固化し、重合体粒子が形成される。
以上のようにして、界面活性剤を用いることなく、極性溶媒中に重合体粒子を分散させることができる。
ここで、前記重合体粒子におけるポリオレフィン部位(例えば、下記コア)は、結晶性を有していることが好ましい。これにより、作製される固体高分子電解質の機械強度をより向上させることができる。また、分散体の乾燥による重合体粒子の取り出し後も再度溶媒等の液体中に分散することがより容易となり、また、固体高分子電解質として成型する際もその形状を保持し続けることがより容易となる。
また、重合体粒子に含まれるポリオレフィン部位(例えば、下記コア)の融点は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることが好ましい。これにより、耐熱性及び機械強度により優れた固体高分子電解質を好適に得ることができる。
図1は、本発明における冷却工程後の重合体粒子の一例を模式的に表した図である。
図1に示すように、本一例における重合体粒子は、前記ポリオレフィン部位から構成されるコアと、前記ポリアルキレンオキサイド部位から構成されるシェル、からなるコアシェル型粒子の構造となっている。
前記冷却工程後、電解質添加工程において、前記重合体粒子の周りに電解質が相互作用することにより、高分子電解質粒子が形成される。
このようにして形成された高分子電解質粒子を用いることで、固体高分子電解質を容易に作製することができる。例えば、前記高分子電解質粒子の集合体を、常温(例えば、20℃〜30℃)で加圧成型することにより、容易に固体高分子電解質を得ることができる。但し、固体高分子電解質の作製方法はこの方法に限定されることはない。固体高分子電解質の作製方法の詳細については後述する。
作製された固体高分子電解質においては、高分子電解質粒子におけるポリオレフィン部位が構造保持体として機能し、高分子電解質粒子におけるポリアルキレンオキサイド部位がイオン伝導体として機能する。
このため、前記高分子電解質粒子を用いて作製された固体高分子電解質は、常温以下の温度(例えば20℃以下)でも前記ポリアルキレンオキサイド部位の運動性が保たれるので、広い温度域わたり十分なイオン導電度が維持される。
また、前記高分子電解質粒子を用いて作製された固体高分子電解質は、高温(例えば、ポリアルキレンオキサイド部位の融点以上)でも、前記ポリオレフィン部位により機的強度が維持されるので、広い温度域にわたり十分な機械強度が維持される。
また、前記高分子電解質粒子が熱可塑性を有する場合には、リサイクル性も向上する。
以下、まず、本発明で用いられる、一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体(以下、「特定重合体」ともいう)及びその製造方法について説明し、引き続き、分散工程、冷却工程、電解質添加工程等について説明する。
<一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体(特定重合体)>
本発明において、一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体(特定重合体)としては特に限定はなく、例えば、1つのポリオレフィン部位と1つ又は複数のポリアルキレンオキサイド部位とを有する重合体を用いることができる。
前記特定重合体の具体的な形態としては、例えば、1つのポリオレフィン部位と1つ又は複数のポリアルキレンオキサイド部位とが2価以上の連結基で結合された重合体や、ポリオレフィン部位(主鎖)の側鎖に1つ又は複数のポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体等を挙げることができる。
前記特定重合体の数平均分子量は、例えば、2.5×10以下、好ましくは5.5×10〜1.5×10、より好ましくは8×10〜4.0×10である。
数平均分子量がこの範囲にあると、分散体中の粒子の安定性、極性溶媒への分散性がより良好となる傾向があり、分散体の調製がより容易になる上に、ポリアルキレンオキサイド部位が固体高分子電解質として連続相を形成することが可能になるため好ましい。
(ポリオレフィン部位)
前記特定重合体におけるポリオレフィン部位は、オレフィン(例えば、炭素数2〜20のオレフィン)を重合したものを用いることができる。
炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられる。これらのオレフィンの中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
前記ポリオレフィン部位は、1種のオレフィンの単独重合体であってもよいし、2種以上のオレフィンの共重合体(ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい)であってもよい。また、特性を損なわない範囲で、オレフィンと他の重合性の不飽和化合物との共重合体(ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい)であってもよい。
また、前記特定重合体におけるポリオレフィン部位としては、下記一般式(2)で表されるモノマーユニットの1種からなる単独重合体、又は、該モノマーユニットの2種以上からなるランダム共重合体若しくはブロック共重合体であることも好ましい。
一般式(2)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖型アルキル基、又は分岐型アルキル基を表す。
前記直鎖型アルキル基としては、炭素数1〜18の直鎖型アルキル基が好ましい。炭素数1〜18の直鎖型アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
直鎖型アルキル基の炭素数としては、炭素数1〜10がより好ましい。
前記分岐型アルキル基としては、炭素数3〜20の分岐型アルキル基が好ましい。
炭素数3〜20の分岐型アルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基等が挙げられる。
分岐型アルキル基の炭素数としては、炭素数3〜12がより好ましい。
前記特定重合体におけるポリオレフィン部位は、GPCにより測定された数平均分子量(Mn)が、400〜8000であることが好ましく、500〜4000であることがより好ましく、500〜2000であることが更に好ましい。
ここで数平均分子量はポリスチレン換算の値である。
ポリオレフィン部位の数平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン部分の結晶性が良く分散体の安定性が良好になり、固体電解質としての機械物性、熱安定性が上昇する傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散体の調製が容易になる傾向があるため好ましい。
前記ポリオレフィン部位の、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、通常1.0〜数十であるが、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあると、分散体中の粒子の形状や粒子径の均一性などの点で好ましい。
本発明において、GPCによる、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い、以下の条件の下で測定できる。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,重合体粒子は末端分岐型構造重合体、または、主鎖から分岐鎖がグラフトした構造の重合体に対して、長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
なお、前記ポリオレフィン部位の分子量は、後述の、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
(ポリアルキレンオキサイド部位)
前記特定重合体におけるポリアルキレンオキサイド部位としては、アルキレンオキシドを付加重合することによって得られるポリアルキレングリコール基であることが好ましい。
前記ポリアルキレングリコール基を構成するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールメチルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、等が挙げられる。
これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、トリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルである。より好ましくはプロピレンオキシド、エチレンオキシド、またはトリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルであり、特に好ましくは、エチレンオキシドまたはトリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルである。
前記ポリアルキレングリコール基としては、これらのアルキレンオキシドの単独重合により得られる基でもよいし、もしくは2種以上の共重合により得られる基でもよい。
好ましいポリアルキレングリコール基の例としては、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合により得られる基、またはトリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルを付加重合することによって得られる基であり、特に好ましい基としては、ポリエチレングリコール基またはトリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルを付加重合することによって得られる基である。
また、前記ポリアルキレングリコール基としては、直鎖アルキレングリコール基または分岐アルキレングリコール基が挙げられる。
分岐アルキレングリコール基の分岐態様は、例えば、多価の炭価水素基あるいは窒素原子を介した分岐等である。
例えば、主骨格の他に2つ以上の窒素原子または酸素原子または硫黄原子に結合した炭化水素基による分岐や、主骨格の他に2つのアルキレン基と結合した窒素原子による分岐等が挙げられる。
前記ポリアルキレンオキサイド部位の末端は水酸基であってもよいし、前記ポリアルキレンオキサイド部位のうちの少なくとも一部の末端が、非プロトン性官能基によって修飾されていてもよい。例えば、前記ポリアルキレンオキサイド部位のうちの少なくとも一部の末端が、エステル化により修飾されているか、または、シアノ基により修飾されていてもよい。
また、前記特定重合体におけるポリアルキレンオキサイド部位としては、下記一般式(3)で表されるモノマーユニットの1種からなる単独重合体、又は、該モノマーユニットの2種以上からなるランダム共重合体若しくはブロック共重合体であることも好ましい。
この場合、ポリアルキレンオキサイド部位の末端は下記一般式(3)の酸素原子側となっており、該酸素原子には水素原子が結合しているか(末端が水酸基である形態)、または、全ポリアルキレンオキサイド部位のうちの少なくとも一部の末端において、該酸素原子に後述する非プロトン性官能基が結合している(末端が修飾されている形態)。
一般式(3)中、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖型アルキル基、分岐型アルキル基、又はアルキレンオキサイド基を表す。
ここで、直鎖型アルキル基及び分岐型アルキル基については、それぞれ、一般式(2)の説明で述べた直鎖型アルキル基及び分岐型アルキル基と同様のものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。また、直鎖型アルキル基及び分岐型アルキル基は、下記のアルキレンオキサイド基によって置換されていてもよい。
また、アルキレンオキサイド基としては、プロピレンオキサイド基、エチレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基、スチレンオキサイド基、シクロヘキセンオキサイド基、エピクロロヒドリン基、エピブロモヒドリン基、メチルグリシジルエーテル基、アリルグリシジルエーテル基、下記式(a)又は式(b)で表される基(式(a)及び式(b)において、n及びmはそれぞれ独立に1〜5の整数を表し、R及びRはそれぞれ直鎖型アルキル基及び分岐型アルキル基(一般式(2)の説明で述べた直鎖型アルキル基及び分岐型アルキル基と同様のものを用いることができ、好ましい範囲も同様である)を表す)、等が挙げられる。
上記式(a)又は式(b)で表される基においてn及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数であることが特に好ましい。
本発明におけるアルキレンオキサイド基としては、上記で列挙した基を2種以上併用してもよい。
これらの中で、好ましくは、プロピレンオキサイド基、エチレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基、スチレンオキサイド基、上記式(a)で表される基である。より好ましくは金属イオン(例えばリチウムイオン)との配位の観点から、プロピレンオキサイド基、エチレンオキサイド基、または上記式(a)で表される基である。
前記特定重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の数平均分子量(Mn)は、50〜10000であることが好ましく、400〜5000であることがより好ましく、400〜3000であることが更に好ましく、400〜2500であることが更に好ましく、400〜2000であることが特に好ましい。
ここで、前記特定重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の数平均分子量(Mn)とは、一分子中にポリアルキレンオキサイド部位が複数含まれる場合(例えば後述する一般式(4)、(5)、又は(6)で表される重合体等)には、該複数のポリアルキレンオキサイド部位(例えば、一般式(5)においては、X、X、及びX)を合計したものの数平均分子量を意味する。
前記特定重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の数平均分子量が50以上であると、陽イオン(例えば、リチウムイオン等の金属イオン)を解離させ、高分子電解質として機能するため好ましい。
前記特定重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の数平均分子量が10000以下であると、低温(例えば、20℃以下)におけるイオン伝導性がより向上するため好ましい。更に、数平均分子量が10000以下であると、分散体の分散性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散体の調製が容易になる上に、ポリアルキレンオキサイド部位が固体高分子電解質として連続相を形成することが可能になるため好ましい。
(特定重合体の具体例)
前記特定重合体として、具体的には、下記一般式(1)、下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)、又は下記一般式(7)で表される重合体が好ましい。

一般式(1)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、及び一般式(7)中、Aは、ポリオレフィン部位を表し、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、及びX11は、それぞれ独立に、ポリアルキレンオキサイド部位を表す。
一般式(1)中、Rは、水素原子又はヒドロキシル基を表す。
一般式(7)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖型アルキル基、又は分岐型アルキル基を表す。
一般式(7)で表される重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体である。
一般式(1)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、及び一般式(7)において、Aは、前述のポリオレフィン部位と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(1)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、及び一般式(7)において、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、及びX11は、前述のポリアルキレンオキサイド部位と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(4)、一般式(5)、又は一般式(6)で表される重合体は、末端分岐型共重合体であり、一般式(7)で表される重合体はグラフト型重合体である。
これらはいずれも本発明における特定重合体として好適に用いることができ、好ましい分子量も、前記特定重合体の好ましい分子量として説明したとおりである。
但し、前記一般式(7)で表される重合体の重量平均分子量(Mw)としては、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、40000〜60000であることも好ましい。
前記一般式(7)で表される重合体における主鎖とグラフト部との質量比〔主鎖:グラフト部〕は、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、5:1〜1:1であることも好ましい。
また、一般式(7)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17が直鎖型アルキル基又は分岐型アルキル基である場合、該直鎖型アルキル基又は分岐型アルキル基としては、それぞれ、一般式(2)の説明で述べた直鎖型アルキル基及び分岐型アルキル基と同様のものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。
また、一般式(7)で表される重合体のマレイミド化率は、90〜100%が好ましく、95〜100%がより好ましい。
(末端修飾)
前記特定重合体のポリアルキレンオキサイド部位の末端は水酸基であってもよいし、前記ポリアルキレンオキサイド部位のうちの少なくとも一部の末端が、非プロトン性官能基によって修飾されていてもよい。
末端の修飾基である非プロトン性官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基、ジヒドロキシベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、ジメトキシベンゾイル基、カーボネート基が好ましい。
末端の修飾基の導入方法としては、ポリアルキレンオキサイドの末端のヒドロキシル基と反応させることができる官能基を導入する方法であればよく、例えば、エステル結合による官能基(例えばアシル基)の導入、ウレタン結合による官能基(例えば、カルバモイル基)の導入、マイケル付加によるシアノ基の導入などが挙げられる。
エステル結合による官能基の導入に用いられるエステル修飾剤としては、各種カルボン酸が考えられるが、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸といった脂式カルボン酸や、安息香酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、ヒドロケイ皮酸といった芳香族カルボン酸の他に、これらの誘導体として、サリチル酸、アニス酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、ピルビン酸、没食子酸といったヒドロキシル基を含有するカルボン酸も有用である。
本発明において、前記特定重合体のポリアルキレンオキサイド部位のうちの少なくとも一部の末端が、非プロトン性官能基によって修飾されている形態としては、エステル化により修飾されている形態、または、シアノ基により修飾されていている形態が好ましい。
<特定重合体の製造方法>
前記特定重合体の製造方法には特に限定はないが、例えば、以下の方法によって合成することができる。
前記一般式(1)、(4)、(5)、又は(6)で表される重合体(以下、「末端分岐型共重合体」ともいう)は、次の方法によって製造することができる。
最初に、下記一般式(9)で表されるポリオレフィン(片末端に二重結合を有するポリオレフィン)を製造する。
一般式(9)中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合した数平均分子量が400〜8000の基、R18およびR19は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子を表す。
このポリオレフィンは、以下の方法によって製造することができる。
(1)特開2000−239312号公報、特開2001−2731号公報、特開2003−73412号公報などに示されているようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
(2)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(3)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(4)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
上記(1)〜(4)の方法の中でも、特に(1)の方法によれば、上記ポリオレフィンを収率よく製造することができる。(1)の方法では、上記サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物の存在下で、前述したオレフィンを重合または共重合することで上記片方の末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造することができる。
(1)の方法によるオレフィンの重合は、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれによっても実施できる。詳細な条件などは既に公知であり上記特許文献を参照することができる。
(1)の方法によって得られるポリオレフィンの分子量は、重合系に水素を存在させるか、重合温度を変化させるか、または使用する触媒の種類を変えることによって調節することができる。
次に、上記ポリオレフィンをエポキシ化して、すなわち上記ポリオレフィンの末端の二重結合を酸化して、下記一般式(10)で示される末端にエポキシ基を含有する重合体を得る。
一般式(10)中、A、R18およびR19は、一般式(9)におけるA、R18およびR19と同義である。
かかるエポキシ化方法は特に限定されるものではないが、以下の方法を例示することができる。
(1)過ギ酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸による酸化
(2)チタノシリケートおよび過酸化水素による酸化
(3)メチルトリオキソレニウム等のレニウム酸化物触媒と過酸化水素による酸化
(4)マンガンポルフィリンまたは鉄ポルフィリン等のポルフィリン錯体触媒と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(5)マンガンSalen等のSalen錯体と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(6)マンガン−トリアザシクロノナン(TACN)錯体等のTACN錯体と過酸化水素による酸化
(7)タングステン化合物などのVI族遷移金属触媒と相間移動触媒存在下、過酸化水素による酸化
上記(1)〜(7)の方法の中でも、活性面で特に(1)および(7)の方法が好ましい。
また、例えばMw400〜600程度の低分子量の末端エポキシ基含有重合体はVIKOLOXTM(登録商標、Arkema社製)を用いることができる。
上記方法で得られた一般式(10)で表される末端エポキシ基含有重合体に種々の反応試剤を反応させることにより、一般式(11)で表されるようなポリマー末端のα、β位に様々な置換基Z、Zが導入された重合体(重合体(I))を得ることが出来る。
一般式(11)中、A、R18、およびR19は、一般式(9)におけるA、R18およびR19と同義である。
一般式(11)中、ZおよびZは、同一または相異なり、水酸基、アミノ基、または下記一般式(12a)〜(12c)で表される基を表す。
一般式(12a)〜(12c)中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、R20はm+1価の炭化水素基を表し、Tは同一または相異なり、水酸基またはアミノ基を表し、mは1〜10の整数を表す。
例えば、一般式(10)で表される末端エポキシ基含有重合体を加水分解することにより、一般式(11)においてZ、Zが両方とも水酸基である重合体が得られ、アンモニアを反応させることによりZ、Zの一方がアミノ基、他方が水酸基の重合体が得られる。
また、一般式(10)で表される末端エポキシ基含有重合体と一般式(13a)で示される反応試剤Aとを反応させることにより、一般式(11)においてZ、Zの一方が一般式(12a)に示される基で他方が水酸基の重合体が得られる。
一般式(13a)中、E、R20、T、およびmは、一般式(12a)〜(12c)中のE、R20、T、およびmと同義である。
また、末端エポキシ基含有重合体と一般式(13b)、(13c)で示される反応試剤Bを反応させることにより、一般式(11)においてZ、Zの一方が一般式(12b)または(12c)に示される基で他方が水酸基の重合体が得られる。
一般式(13b)及び一般式(13c)中、R20、T、およびmは、一般式(12a)〜(12c)中のR20、T、およびmと同義である。
一般式(13a)で示される反応試剤Aとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ブタントリオール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。
一般式(13b)、(13c)で示される反応試剤Bとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノフェノール、ヘキサメチレンイミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジエチレントリアミン、N−(アミノエチル)プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、スペルミジン、スペルミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン等を挙げることができる。
エポキシ体とアルコール類、アミン類との付加反応は周知であり、通常の方法により容易に反応が可能である。
一般式(1)、(4)、(5)、(6)は一般式(11)で示される重合体(I)を原料として、アルキレンオキシドを付加重合することにより製造することができる。
前記アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。
これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくは金属イオン(例えばリチウムイオン)との配位の観点からプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドである。
触媒、重合条件などについては、公知のアルキレンオキシドの開環重合方法を利用することができ、例えば、大津隆行著,「改訂高分子合成の化学」,株式会社化学同人,1971年1月,p.172−180には、種々の単量体を重合してポリオールを得る例が開示されている。開環重合に用いられる触媒としては、上記文献に開示されたように、カチオン重合向けにAlCl、SbCl、BF、FeClのようなルイス酸、アニオン重合向けにアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド、アミン類、フォスファゼン触媒、配位アニオン重合向けにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、アルコキシドあるいは、Al、Zn、Feなどのアルコキシドを用いることができる。
フォスファゼン触媒としては、例えば、特開平10−77289号公報(特許文献10)に開示された化合物、具体的には市販のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)フォスフォラニリデンアミノ]フォスフォニウムクロリドのアニオンをアルカリ金属のアルコキシドを用いてアルコキシアニオンとしたものなどが利用できる。
反応溶媒を使用する場合は、重合体(I)、アルキレンオキシドに対して不活性なものが使用でき、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
触媒の使用量はフォスファゼン触媒以外については原料の重合体(I)の1モルに対して、0.05〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜3モルの範囲である。フォスファゼン触媒の使用量は、重合速度、経済性等の点から、重合体(I)の1モルに対して1×10−4〜5×10−1モルが好ましく、より好ましくは5×10−4〜1×10−1モルである。
反応温度は通常25〜180℃、好ましくは50〜150℃とし、反応時間は使用する触媒の量、反応温度、オレフィン類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分〜50時間である。
一般式(1)、(4)、(5)、(6)の数平均分子量は、前述の通り一般式(11)で示される重合体(I)の数平均分子量と、重合させるアルキレンオキシドの質量から計算する方法や、NMRを用いる方法により算出することができる。
(アドマータイプ)
前記一般式(7)で表される重合体(グラフト型重合体;アドマータイプ)は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト変性したポリオレフィンと、ポリアルキレンオキサイドの片方のみにアミノ基で修飾させたものと、を反応させて製造することができる。その際には、固体高分子電解質としての特性の観点からマレイミド基を形成することが好ましく、反応温度は120℃〜220℃、より好ましくは150℃〜190℃で反応させる。反応時には、高沸点の溶媒を用いてもよく、溶解もしくは分散させるための有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル類、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。この中では、芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素が好ましい。
前記グラフト型重合体の原料樹脂として用いられるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ3−メチルブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ3−メチルペンテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリデセン−1、ポリドデセン−1、ポリテトラデセン−1、ポリヘキサデセン−1、等、エチレンもしくは炭素原子を3〜20個含むα−オレフィンの単独重合体、エチレンと炭素原子を3〜20個含むα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素原子を4〜20個含むα−オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素原子を3〜20個含むα−オレフィン2種類以上との共重合体等が挙げられる。これらのポリオレフィンは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記グラフト型重合体の原料樹脂として用いられるポリエチレンとしては、密度0.945〜0.980g/cm、好ましくは0.945〜0.970g/cm、特に好ましくは0.953〜0.960g/cm、ASTM D 1238による190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは1.0〜15g/10分の高密度ポリエチレンや、密度0.910〜0.940g/cm、好ましくは0.915〜0.935g/cm、特に好ましくは0.920〜0.930g/cm、MFRが0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは1.0〜10g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく用いられる。
前記グラフト型重合体の原料樹脂として用いられるポリプロピレンとしては、密度0.870〜0.960g/cm、好ましくは0.890〜0.940g/cm、特に好ましくは0.910〜0.920g/cm、ASTM D 1238による230℃、2.16kg荷重におけるMFRが0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、特に好ましくは1.0〜10g/10分のポリプロピレンが好ましく用いられる。
また、前記グラフト型重合体の原料樹脂として用いられるエチレン・α―オレフィン共重合体またはプロピレン・α―オレフィン共重合体としては、エチレン・α―オレフィン共重合体のエチレンモル分率またはプロピレン・α―オレフィン共重合体のプロピレンモル分率が30〜99.5モル%、好ましくは50〜99モル%であるものが好ましい。密度としては0.800〜0.940g/cm、好ましくは0.800〜0.935g/cm、ASTM D1238による190℃、2.16kg荷重におけるMFRとしては0.01〜20g/10分、好ましくは0.05〜20g/10分であるものが好ましい。具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体などが挙げられる。これらの中では、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が好ましく用いられる。これらのエチレン・α―オレフィン共重合体またはプロピレン・α―オレフィン共重合体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記原料樹脂として用いられるポリオレフィンは、公知の方法で得ることができ、通常、遷移金属触媒の存在下にα−オレフィンを単独重合するか、またはα−オレフィンおよび他のモノマーを気相または液相下で共重合することにより得ることができる。触媒や重合方法などには特に制約はなく、例えばチタン(Ti)系、クロム系(Cr)系またはジルコニウム(Zr)系などの遷移金属触媒成分を含むチーグラー型触媒、フィリップス型触媒またはメタロセン型触媒などを使用し、気相法、溶液法、バルク重合法などの重合法により重合することができる。また高圧ラジカル重合法、中・低圧重合法などの重合法により重合することができる。
前記グラフト型重合体の合成に用いられる不飽和カルボン酸および/またはその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物等を挙げることができ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。
具体的な化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、4−メチルシクロヘキセ−4−エン−1,2−ジカルボン酸無水物、α−エチルアクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドシス−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸〔商標〕)、ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オクタ−1,3−ジケトスピロ[4.4]ノン−7−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、x−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、x−メチル−ノルボルネン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルネン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物などをあげることができる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。これらの中では不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、特に無水マレイン酸または無水ハイミック酸が好ましい。これら不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
前記不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をポリオレフィンにグラフトさせるには、従来公知の種々の方法を採用することができる。
例えば、押出機を使用して、ポリオレフィンを溶融し、そこに不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を添加してグラフト反応させる方法、あるいはポリオレフィンを溶媒に溶解して溶液とし、そこに不飽和カルボン酸またはその誘導体を添加してグラフト反応させる方法などが挙げられる。いずれの場合にも前記不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を効率よくグラフト共重合させるためには、ラジカル開始剤の存在下にグラフト反応を実施することが好ましい。グラフト反応は、通常60〜350℃の条件で行われる。ラジカル開始剤の使用割合は変性前のポリオレフィン100質量部に対して、通常0.001〜1質量部の範囲である。
ラジカル開始剤としては、有機ペルオキシドが好ましく、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2.5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert−ブチルペルジエチルアセテートなどが挙げられる。その他アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどを用いることもできる。
前記グラフト型重合体の原料として用いられるポリアルキレンオキシドのモノマーとしては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは2種以上のモノマーを併用して重合してもよい。これらの中で、好ましくは、リチウムイオンとの配位の観点からプロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドである。これらのモノマーを重合して得られたポリアルキレンオキサイドの片方の末端をアミノ基で修飾する方法としては、公知の方法が用いることができる。
<分散工程>
本発明における分散工程は、極性溶媒中に、前述の特定重合体を、該特定重合体に含まれるポリオレフィン部位の融点以上の温度で分散させて分散体とする工程である。
分散時の温度が前記ポリオレフィン部位の融点未満であると、固体高分子電解質の成型性、イオン導電度、機械強度が損なわれる。
分散時の温度は、前記ポリオレフィン部位の融点によっても異なるが、例えば100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは120℃以上200℃以下である。
分散時の温度が200℃以下であると、加熱による重合体の劣化をより効果的に抑制できる。
(極性溶媒)
前記極性溶媒としては、水および/または水と親和性を有する有機溶媒を用いることができる。
水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
水と親和性を有する有機溶媒は、ポリアルキレンオキサイド部位と親和性が高いものであれば特に限定されないが、例えばエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、クロロホルムなどが挙げられる。
(分散方法)
前記分散工程における分散方法は、極性溶媒中に前記特定重合体を前記ポリオレフィン部位の融点以上の温度で分散させること以外には特に限定はないが、例えば、極性溶媒中に前記特定重合体を、前記ポリオレフィン部位の融点以上の温度条件下で、機械的せん断力により物理的に分散させる方法を用いることができる。
分散の方法としては特に限定はなく、各種の分散方法を利用することができる。
具体的に言えば、前記特定重合体と極性溶媒(例えば、水および/または水と親和性を有する有機溶媒)とを混合した後、前記ポリオレフィン部位の融点以上の温度まで昇温し溶融状態にした後、高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー、押出混練機、オートクレーブ等で分散化する方法、高圧で噴射粉砕する方法、細孔より噴霧させる方法が挙げられる。
また、重合体を水以外の溶媒に予め溶解した後、水および/または水と親和性を有する有機溶媒とを混合して、高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー等により分散化する方法も可能である。この際、使用する水以外の溶媒は、重合体が溶解するのであれば特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサンや前記の水と親和性を有する有機溶媒などが挙げられる。水以外の有機溶媒が分散体に混入することが好ましくない場合には、蒸留等の操作により除去することが可能である。
さらに具体的には、例えば、せん断力をかけることが可能な撹拌機付きのオートクレーブ中で、ポリオレフィン部位の融点以上の温度(例えば、100℃以上、好ましくは120〜200℃)でせん断力をかけながら加熱撹拌することによって分散体を得ることができる。上記温度範囲にあると、重合体が溶融状態にあるため分散化が容易であり、かつ前記重合体が加熱により劣化しにくいため好ましい。分散化に要する時間は、分散化温度やその他の分散化条件によっても異なるが、1〜300分程度である。上記の撹拌時間では分散化を十分に行うことができ、かつ前記重合体が劣化しにくいため好ましい。
<冷却工程>
本発明における冷却工程は、前記分散工程において得られた分散体を冷却して重合体粒子を得る工程である。
上記分散工程及び該冷却工程により、界面活性剤を用いることなく、極性溶媒中に、特定重合体からなる重合体粒子を分散させることができる。
冷却の温度としては前記ポリオレフィン部位の融点未満の温度であれば特に限定はないが、ポリオレフィン部位を結晶化させる観点からは、100℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
更に、100℃以下に冷却した後、最終的には常温(20℃〜30℃)まで冷却することが特に好ましい。
冷却工程の具体的形態としては、分散工程における分散後、ポリオレフィン部位が結晶化するように、分散体中の温度が100℃以下になるまで、好ましくは60℃以下になるまでせん断力をかけた状態を保ちながら攪拌し、最終的には常温(20℃〜30℃)まで冷却し、重合体粒子の分散体を得ることが好ましい。
冷却速度としては、0.1℃〜50℃/分の範囲が好ましく、1℃〜10℃/分の範囲がより好ましい。
前記分散工程及び前記冷却工程により得られる分散体は、各種の酸や塩基、例えば塩酸、硫酸、リン酸などの酸や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの塩基を添加することによりpHを1から13まで変化させても、凝集、沈殿を起こしにくい。また、この分散体を常圧下(例えば、75kPa〜110kPa)で、加熱還流もしくは凍結解凍を繰り返すような、幅広い温度範囲においても凝集、沈殿を起こさないことから、後の電解質添加工程における電解質の添加も容易である。
上記で得られた重合体粒子は、分散体から取り出すこともでき、更に、取り出し後、再分散も容易である。
そのため、前述の末端の修飾反応のように、反応のために分散溶媒を変更する際には分散体内の重合体粒子を取り出し、溶媒を変更する操作を行うことが好ましい。
重合体粒子の取り出しは、乾燥等により行なうことができる。乾燥には、凍結乾燥機の使用が望ましいが、噴霧乾燥機、回転乾燥機、気流乾燥機、攪拌乾燥機などを使用する方法も挙げられる。
例えば、凍結乾燥を行なう場合においては、本発明の分散体を予め液体窒素等の冷剤を用いて十分に凍結したのち、市販の凍結乾燥機を使用して減圧下乾燥を行なうとよい。噴霧乾燥を行う場合においては、入り口温度を100℃〜150℃、好ましくは110℃〜130℃、出口温度を20℃〜80℃、好ましくは40℃〜60℃で調節すると分散体中の粒子の凝集を抑制しつつ効率良く乾燥を行うことができる。
取り出された重合体粒子は、極性溶媒を添加した後、マグネチックスターラー、スリーワンモーター等を用いて撹拌、あるいは超音波の照射により、オートクレーブ等を用いることなく再び分散体とすることができる。
再分散における極性溶媒としては、既述の分散工程の項で説明した極性溶媒と同様のものを用いることができる。再分散における極性溶媒としては、既述の分散工程で用いた極性溶媒と同じ溶媒を用いてもよいし、異なる溶媒を用いてもよい。
<電解質添加工程>
本発明における電解質添加工程は、前記冷却工程後の分散体に電解質を添加して、前記重合体粒子及び前記電解質を含む高分子電解質粒子を得る工程である。
前記電解質としては、例えばイオン性塩を用いることができる。
前記イオン性塩としては、前記特定重合体におけるポリアルキレンオキサイド部位に可溶のものならば何でもよいが、以下に挙げるものが好ましく用いられる。
即ち、陽イオン(例えば、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、グアニジウムイオン、等)と、陰イオン(例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6 -、PF6 -、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオン)と、からなる化合物(塩)が挙げられる。
金属陽イオンとしては遷移金属の陽イオンを用いることができる。好ましくはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属から選ばれた金属の陽イオンが用いられる。又、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca及びBa金属から選ばれた金属の陽イオンを用いても好ましい結果が得られる。
電解質として前述の化合物を2種類以上併用することは自由である。
電解質の添加量はポリアルキレンオキサイド部位全体に対して、0.1〜50wt%、好ましくは1.0〜30wt%の範囲がよい。この範囲内であれば、加工性、成形性及び得られた固体高分子電解質の機械的強度や柔軟性が低下することをより効果的に抑制でき、さらにイオン伝導性の低下をより効果的に抑制できる。
また、電解質としてイオン性塩(例えば、金属塩)を用いる場合、その添加量は、特定重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の総酸素原子数と、前記イオン性塩(例えば、金属塩)に含まれる総陽イオン数(例えば、総金属原子数)と、の比率〔前記総酸素原子数/前記総陽イオン数(例えば、総金属原子数)〕が、0.1〜30となる量であることが好ましい。
該比率が上記範囲内であれば、加工性、成形性及び得られた固体高分子電解質の機械的強度や柔軟性が低下することをより効果的に抑制でき、さらにイオン伝導性の低下をより効果的に抑制できる。
該比率は、5〜30が好ましく、10〜25がより好ましい。
分散体に電解質を添加する方法については特に制限なく、例えば、電解質を直接(溶媒に溶解又は分散させることなく)分散体に添加する方法や、電解質を溶媒(テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、エタノール、ジメチルホルムアミド、水、アセトン、等)に溶解させた溶液を分散体に添加する方法が挙げられる。
電解質の添加後は、更に分散処理を行ってもよい。
電解質の添加後は、凍結乾燥等の乾燥手段により、高分子電解質粒子を得ることができる。
≪固体高分子電解質≫
本発明の固体高分子電解質は、前述の本発明の高分子電解質粒子を用いて作製されたものである。
本発明の固体高分子電解質においては、前記高分子電解質粒子の重合体粒子におけるポリアルキレンオキサイド部位が互いに連結して連続相を形成していることが好ましい。これにより、イオン導電度がより向上する。
本発明の固体高分子電解質は、例えば、高分子電解質粒子の集合体を成型することにより作製できる。好ましい成型方法について以下説明する。
(成型方法)
好ましい成型方法としては、常温(20℃〜30℃)で加圧成型する方法や、ポリオレフィン部の融点以下の温度で加熱成型又は射出成型する方法が挙げられる。
これにより、任意の形状の固体高分子電解質に成型できることに加え、重合体粒子におけるポリアルキレンオキサイド部位が互いに連結された連続相を容易に得ることができる。
また、固体高分子電解質は、シート状、膜状、フィルム状、ディスク状等の形状に成形するのが好ましい。
本発明の高分子電解質粒子が熱可塑性を有している場合、加工面・成型方法面での自由度が広がり、応用上の大きな利点となる。
シート状等の固体高分子電解質を製造する手段として、ロールコーター法、カーテンコーター法、スピンコート法、ディップ法、キャスト法等の各種コーティング手段により支持体上に、高分子電解質粒子を含む塗布液を塗布して固体高分子電解質を成膜し、その後支持体を除去することによりシート状等の固体高分子電解質を得ることができる。
また、本発明の高分子電解質粒子は電極シート内に含有させることもでき、活剤、導電助剤、結着剤などとともに、本発明の高分子電解質粒子を加えてスラリーを作製し、当該分野で公知の方法により、固体電池用電極シートとしての固体高分子電解質も容易に製造することができる。
(添加剤)
本発明の固体高分子電解質は、必要に応じ、電解質の固体高分子電解質中へのイオン解離を高め、イオン伝導度を向上させる等の目的で、添加剤として、可塑剤を含んでいてもよい。
前記可塑剤としては、ポリアルキレンオキサイド部位と電解質の両方と親和性のある物質であればよく、例えば、非プロトン性溶媒、ポリアルキレンオキサイド化合物が用いられる。
その添加量としては、固体高分子電解質全体に対し0.1質量部〜30質量部の範囲である。
この範囲内であれば、固体高分子電解質の機械強度をより向上させることができる。
前記非プロトン性溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、キシレン、プロピレンカ−ボネ−ト、γ−ブチロラクトン、ブチレンカ−ボネ−ト、エチレンカ−ボネ−ト、ジメチルカ−ボネ−ト、エチルメチルカ−ボネ−ト、ジエチルカ−ボネ−ト、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキプロパン、3−メチル−2−オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4,4−メチル−1,3−ジオキソラン、tert−ブチルエーテル、iso−ブチルエーテル、1,2−エトキシメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングライム、エチレンジグライム、メチルテトラグライム、メチルトリグライム、メチルジグライム、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。これらの2種以上の混合物を用いても良い。
前記非プロトン性溶媒としては、プロピレンカ−ボネ−ト、γ−ブチロラクトン、ブチレンカ−ボネ−ト、3−メチル−2−オキサゾリン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、キシレン、アセトニトリルが好ましく、ジエチルカーボネート、キシレン、アセトニトリルが特に好ましい。
前記ポリアルキレンオキサイド化合物としては、末端が水酸基であるポリアルキレンオキサイド化合物や、末端修飾されたポリアルキレンオキサイド化合物を用いることができる。
また、前記ポリアルキレンオキサイド化合物は、直鎖型であっても分岐型であってもよい。
また、前記ポリアルキレンオキサイド化合物の数平均分子量は、20000以下であることが好ましく、4000以下であることがより好ましく、50〜4000であることが特に好ましい。
前記末端修飾されたポリアルキレンオキサイド化合物における、末端の修飾基としては、前述の「末端修飾」の項で例示した官能基を挙げることができる。中でも、シアノ基が好ましい。
前記ポリアルキレンオキサイド化合物としては、末端が水酸基であるポリアルキレンオキサイド化合物である下記一般式(8a)で表される化合物や、末端修飾されたポリアルキレンオキサイド化合物である下記一般式(8b)で表される化合物が特に好ましい。
一般式(8a)中、X21は、前述の一般式(3)で表されるモノマーユニットの1種からなる単独重合体、又は、該モノマーユニットの2種以上からなるランダム共重合体若しくはブロック共重合体を表す。
一般式(8b)中、X22は、前述の一般式(3)で表されるモノマーユニットの1種からなる単独重合体、又は、該モノマーユニットの2種以上からなるランダム共重合体若しくはブロック共重合体を表す。
一般式(8b)中、Y及びYは、それぞれ独立に、非プロトン性の官能基である。
ここで、非プロトン性の官能基としては、前述の末端修飾の項で例示した官能基を挙げることができる。中でも、シアノ基が好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。下記実施例において、「室温」及び「常温」は、いずれも25℃を指す。
本実施例において、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は高温GPCを用いて測定した。
融点(Tm)はDSC(Pyris 1 DSC(パーキンエルマー製))を用いて、温度:−10℃〜200℃、昇降温速度:±10℃/minの条件で測定して得られたピークトップ温度を採用した。測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。
H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、例えばロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。
分散体中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡H−7650(日立製作所製)で100kVの条件にて行なった。
イオン伝導度の測定は、乾燥させた重合体試料を直径1cm、厚み2mmのディスク状に常温で成型し、上下に銅箔をつけて、HIOKIのケミカルインピーダンスメーター3532−80(測定温度:−5℃〜70℃、測定周波数:4 H 〜 1 M Hz)を用いて複素インピーダンス解析によりイオン伝導度を測定した。なお、測定限界は1×10−8S/cmが測定限界であり、それ以下は測定不能とした。
イオン伝導度測定用の試料の作製は全てドライルーム内で行い、水の混入が起きない条件で行った。固体粘弾性の測定はTAインスルメンツ製のRSA−2を用いて周波数:1rad/sec、歪み:3%、測定温度:常温〜溶融する温度付近、昇温速度:3℃/minの条件で測定を行った。
[合成例A1]
<末端分岐型共重合体(T−1)の合成>
特開2006−131870号公報の合成例2に従って、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)の末端エポキシ基含有エチレン重合体(E−1)を合成し、原料として用いた(末端エポキシ基含有率:90mol%)。
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体(E−1)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(t,3H,J=6.92Hz),1.18−1.66(m),2.38(dd,1H,J=2.64,5.28Hz),2.66(dd,1H,J=4.29,5.28Hz)2.80−2.87(m,1H)
融点(Tm):121℃
Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E−1)84質量部、ジエタノールアミン39.4質量部、トルエン150質量部を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体をろ取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、さらにアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体をろ取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(I−1)(Mn=1223、一般式(11)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R18=R19=水素原子、Z、Zの一方が水酸基、他方がビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ基))を得た。
得られた重合体(I−1)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(t,3H,J=6.6Hz),0.95−1.92(m),2.38−2.85(m,6H),3.54−3.71(m,5H)
融点(Tm):121℃
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに重合体(I−1)20.0質量部、トルエン100質量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0質量部の水に溶解した0.323質量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水およびトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水およびトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
次に、アルキレン部位の付加重合反応を以下の通りに行った。
即ち、加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0質量部および脱水トルエン200質量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド18.0質量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、末端分岐型共重合体(T−1)(一般式(5)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075、Mw=2015)であり、X、X、及びXはそれぞれポリエチレングリコール基である。X、X、及びXを合わせたエチレングリコールユニット数の合計は平均25個(Mn=1100)である。)を得た。
得られた末端分岐型共重合体(T−1)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.06−1.50(m),2.80−3.20(m),3.33−3.72(m)
融点(Tm):116℃
[合成例A2]
<末端分岐型共重合体(T−2)の合成>
合成例A1において、用いるエチレンオキシドの量を12.0質量部に変える他は同様にして、末端分岐型共重合体(T−2)(一般式(5)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075、Mw=2015)であり、X、X、及びXはそれぞれポリエチレングリコール基である。X、X、及びXを合わせたエチレングリコールユニット数の合計は平均17個(Mn=748)である。)を得た。
末端分岐型共重合体(T−2)の融点(Tm)は116℃であった。
[合成例A3]
<末端分岐型共重合体(T−3)の合成>
合成例A1において、用いるエチレンオキシドの量を27.0質量部に変える他は同様にして、末端分岐型共重合体(T−3)(一般式(5)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075、Mw=2015)であり、X、X、及びXはそれぞれポリエチレングリコール基である。X、X、Xを合わせたエチレングリコールユニット数の合計は平均37個(Mn=1628)である。)を得た。
末端分岐型共重合体(T−3)の融点(Tm)は116℃であった。
[合成例A4]
<末端分岐型共重合体(T−4)の合成>
合成例A1において、用いるエチレンオキシドの量を42.0質量部に変える他は同様にして、末端分岐型共重合体(T−4)(一般式(5)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075、Mw=2015)であり、X、X、及びXはそれぞれポリエチレングリコール基である。X、X、Xを合わせたエチレングリコールユニットを平均58個(Mn=2552))を得た。
末端分岐型共重合体(T−4)の融点(Tm)は116℃であった。
[合成例A5]
<末端分岐型共重合体(T−5)の合成>
合成例A1において、用いるエチレンオキシドの量を72.0質量部に変える他は同様にして、末端分岐型共重合体(T−5)(一般式(5)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075、Mw=2015)であり、X、X、及びXはそれぞれポリエチレングリコール基である。X、X、Xを合わせたエチレングリコールユニット数の合計は平均100個(Mn=4400)である。)を得た。
末端分岐型共重合体(T−5)の融点(Tm)は116℃であった。
[合成例B]
<末端分岐型共重合体(T−6)の合成>
特開2006−131870号公報の合成例8に準じて、Mw=1576、Mn=843、Mw/Mn=1.87(GPC)の末端エポキシ基含有エチレン−プロピレン共重合体(E−2)を合成し、原料として用いた。
得られた末端エポキシ基含有エチレン−プロピレン共重合体(E−2)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.80−0.88(m),0.9−1.6(m),2.37−2.40(1H,dd,J=2.97,5.28Hz),2.50(m),2.66(1H,dd,J=3.96,5.28Hz)2.80−2.86(1H,m),2.95(m)
Mw=1576、Mw/Mn=1.87(GPC)
融点(Tm):107℃
合成例A1において、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の代わりに末端エポキシ基含有エチレン−プロピレン共重合体(E−2)63.2質量部を用いる他は同様にして、重合体(I−2)(Mn=948、一般式(11)においてA:エチレンとプロピレンの共重合により形成される基(Mn=800)、R18、R19:一方が水素原子で他方が水素原子またはメチル基、Z、Z:一方が水酸基、他方がビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
得られた重合体(I−2)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.80−0.90(m),0.90−1.56(m),2.46(dd,1H,J=9.2,13.5Hz),2.61(dd,1H,J=3.3,13.5Hz),2.61−2.84(m,4H),3.58−3.68(m,5H)
融点(Tm):106℃
合成例A1において、重合体(I−1)に代えて重合体(I−2)を用い、85%KOHの使用量を0.418質量部とする他は同様にして、末端分岐型共重合体(T−6)(一般式(5)においてAはエチレンとプロピレンの共重合により形成される基(Mn=800)であり、X、X、及びXはそれぞれポリエチレングリコール基である。X、X、及びXを合わせたエチレングリコールユニット数の合計は平均14個(Mn=616)である。)を得た。
H−NMR:δ(CCl)0.83−0.92(m),1.08−1.50(m),2.70−3.00(m),3.55−3.69(m)
融点(Tm):105℃
[合成例C]
<末端分岐型共重合体(T−7)の合成>
特開2006−131870号公報の実施例20に従って、重合体(I−3)(Mn=1136、一般式(11)において、A:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R18=R19=水素原子、Z、Zの両方が水酸基)を合成し、原料として用いた(収率99%、片末端二重結合含有重合体転化率100%)。
重合体(I−3)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.89(3H,t,J=6.92Hz),1.05−1.84(m),3.41(2H,dd,J=5.94,9.89Hz),3.57−3.63(1H,m)
・融点(Tm):122℃
・硬度(針入度):0mm
・溶融粘度:214cp(140℃)
・軟化点:129℃
・5%減量温度:297℃(Thermogravimetric Analysis(TGA))
合成例A1において、重合体(I−1)に代えて重合体(I−3)を用い、85%KOHの使用量を0.3081質量部とする以外は同様にして、末端分岐型共重合体(T−7)(一般式(4)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075、Mw=2015)であり、X及びXはそれぞれポリエチレングリコール基である。X及びXを合わせたエチレングリコールユニット数の合計は平均16個(Mn=704)である。)を得た。
末端分岐型共重合体(T−7)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(3H,t,J=6.6Hz),1.04−1.47(m),3.32−3.69(m)
融点(Tm):119℃
[合成例D]
<末端分岐型共重合体(T−8)の合成>
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン−プロピレン共重合体(E−2)100質量部、トルエン300質量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後撹拌しながら30分間加熱還流した後、内温90〜92℃でギ酸32.7質量部をゆっくり添加してエステル化反応を10時間実施した。その後、温度を保ったまま、温水100質量部を加えて静置し、水層を除去した。これに5%KOHのn−BuOH溶液75質量部を加えて、105℃で3時間攪拌した。60℃まで冷却し、メタノール300質量部をゆっくり加えて冷却しながら、生成物を晶析させ、ろ取した固体をメタノールで洗浄した。
得られた固体を減圧下乾燥させることにより重合体(I−4)(Mn=860、一般式(11)において、A:エチレンとプロピレンの共重合により形成される基(Mn=800)、R18,R19=一方が水素原子で他方が水素原子またはメチル基、Z、Zの両方が水酸基)を合成し、原料として用いた(収率87%、片末端二重結合含有重合体転化率100%)。
得られた重合体(I−4)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(m),1.0−1.80(m),3.41(1H,dd,J=7.58,11.2Hz),3.40−3.45(2H,m)
融点(Tm):106℃
合成例A1において、重合体(I−1)に代えて重合体(I−4)を用い、85%KOHの使用量を0.306質量部とし、用いるエチレンオキシドの量を12.0質量部にする以外は同様にして、末端分岐型共重合体(T−8)(一般式(4)においてAはエチレンとプロピレンの共重合により形成される基(Mn=800)であり、X及びXはそれぞれポリエチレングリコール基である。X及びXを合わせたエチレングリコールユニット数の合計は平均14個(Mn=616)である。)を得た。
末端分岐型共重合体(T−8)の融点(Tm)は102℃であった。
[合成例E]
<重合体(T−9)の合成>
特開2006−131870号公報の合成例2に従って、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)の末端エポキシ基含有エチレン重合体(E−1)を合成し、原料として用いた(末端エポキシ基含有率:90mol%)。
500mLセパラブルフラスコにKOH16質量部、ポリエチレングリコール(Mn=1000)250質量部、トルエン70質量部を仕込み、110℃で30分間攪拌した。ついで、この溶液に末端エポキシ基含有重合体(E−1)50質量部を加え、110℃にて8時間攪拌した。その後、1モル/Lの塩酸水溶液を添加し反応を停止させ、更にアセトンを加えて反応性生物を晶析させた後、固体をろ取した。得られた固体を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とアセトンの混合物で攪拌洗浄し、更にアセトン水溶液で1回、アセトンで2回攪拌洗浄した後、固体をろ取した。その後室温にて減圧乾燥させることにより、エポキシ転化率100%で、対応する重合体(T−9)(一般式(1)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075)であり、Rはヒドロキシル基であり、Xはポリエチレングリコール基(Mn=1000)である。)を得た。
得られた重合体(T−9)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(t、3H,J=6.9Hz),0.95−1.80(m),3.30(dd、1H,J=7.6,9.9Hz),3.46(dd、1H,J=3.3,9.9Hz),3.37−3.79(m)
融点(Tm):121℃
[合成例F]
<末端分岐重合体(T−10)の合成>
合成例A1において、末端エポキシ基含有重合体(E−1)に対してジエタノールアミンを反応させる代わりに、N−メチルグルカミンを反応させる以外は同様にして、末端分岐重合体(T−10)(一般式(6)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075、Mw=2015)であり、X、X、X、X、X10、及びX11はそれぞれポリエチレングリコール基である。X、X、X、X、X10、及びX11をあわせたエチレングリコールユニット数の合計は平均23個(Mn=1012)である。)を得た。
得られた末端分岐重合体(T−10)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.86(3H,t,J=6.5Hz),1.05−1.46(m),2.86(m,3H),3.30−3.80(m)
融点(Tm):120℃
[合成例G]<櫛歯型重合体(T−11)の合成>
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた300mLフラスコに60%NaH4.2質量部入れ、脱水トルエン30mlで3回洗浄し、油分を洗浄した。ここに、脱水THF100mlとトリエチレングリコールモノメチルエーテル16.42質量部滴下した後、2時間室温で攪拌した。その後、エピクロロヒドリン20mlを滴下し、16時間室温で攪拌した。そして、95℃まで外温を上昇させ、4時間還流下で過熱し反応させた。室温まで冷却後、メタノールで希釈した30%硫酸で中和を行い、反応を停止させた。ろ過により残渣を取り除き、ロータリーエバポレーターで溶媒を完全に除去した後、さらに減圧し未反応物を留去し、トリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルを得た。
合成例A1において、エチレンオキサイド18質量部の代わりに、上述のトリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル36質量部を用いた他は同様にして、櫛歯型重合体(T−11)(一般式(5)においてAはエチレンの重合により形成される基(Mn=1075、Mw=2015)であり、X、X、及びXはそれぞれ下記グリシジルエーテルユニットの繰り返しからなる基(末端は水酸基)である。X、X、及びXを合わせた下記グリシジルエーテルユニットの数は平均10個(Mn=2200)である。)を得た。
得られた櫛歯型重合体(T−11)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.86(3H,t,J=6.5Hz),1.05−1.46(m),2.89(3H,s),3.34−3.82(m)
融点(Tm):116℃
[合成例H−1]
<グラフト型重合体(T−12)の合成>
攪拌翼、冷却還流管を備えた500ml四つ口フラスコに、無水マレイン酸を2.9質量%グラフト変性したポリプロピレン(230℃、216kgfでのMFRが200dg/min以上、[η]=0.44dl/g、Tm=151℃、Mw=34,100、Mn=15,935)のペレット20質量部と、アミノ基末端のポリエチレングリコール(ジェファーミンM2070(下記一般式(14)において、プロピレンオキサイド10モル(=m)と、エチレンオキサイド32モル(=n)が共重合したもの、Mn=2,070))を40質量部、メシチレンを20質量部装入した。ヒーターと温度調節機を備えた油浴でフラスコを加熱し、外温を170℃としメシチレンの還流下で、3時間攪拌して、マレイミド化した反応物溶液を得た。この溶液を90℃まで冷却した後、イオン交換水40質量部を添加し攪拌することで、透明な重合体粒子分散溶液を得た。この溶液50質量部を透析膜(SIGMA−ALDRICH製 Dialysis saks(D6191−25E):Mw=12,000以上を残すセルロースチューブ)内に装入し、3Lのイオン交換水内で1日間攪拌し、未反応のポリエチレングリコールを除去した。その後、凍結乾燥を1日間行い十分に乾燥させて、グラフト型重合体(T−12)(一般式(7)において、マレイミド化率は98%、主鎖とグラフト部の質量比は5:3(H―NMRでの0.82−0.92ppmのピークの積分と3.45−3.60ppmのピークの積分比から算出)、Mw=54,500。また、一般式(7)において、R11、R12、R13、及びR14、のうちいずれか1つがメチル基であり、他は水素原子である。また、一般式(7)において、R15、R16、及びR17のうちいずれか1つがメチル基であり、他は水素原子である。)を得た。
得られたグラフト型重合体(T−12)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.82−0.92(4H,m),1.20−1.30(1H.m),1.51−1.63(1H,m),3.33−3.38(1H,m),3.45−3.60(6H,m)
融点(Tm):153℃
[合成例H−2]
<グラフト型重合体(T−13)の合成>
合成例Hで用いた変性ポリプロピレンの代わりに、無水マレイン酸を3.9質量%グラフト変性したポリプロピレン(Mw=2,6500、Mn=6023:三井ハイワックスNP055A)を用いた他は同様にして、グラフト型重合体(T−13)(一般式(7)において、マレイミド化率は98%、主鎖とグラフト部の質量比は5:4(H―NMRでの0.82−0.94ppmのピークの積分と3.45−3.60ppmのピークの積分比から算出)、Mw=47,700。また、一般式(7)において、R11、R12、R13、及びR14、のうちいずれか1つがメチル基であり、他は水素原子である。また、一般式(7)において、R15、R16、及びR17のうちいずれか1つがメチル基であり、他は水素原子である。)を得た。
得られたグラフト型重合体(T−13)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.82−0.94(4H,m),1.20−1.30(1H.m),1.51−1.63(1H,m),3.32−3.37(1H,m),3.45−3.60(6H,m)
融点(Tm):137℃
[合成例J]
<PEG系のシアノ基修飾体(P)の合成>
200ml三つ口フラスコに、PENTAERYTHRITOL ETHOXYLATE(3/4 EO/OH Mn=270)27質量部、アクリロニトリル30質量部、水酸化カリウム0.06質量部装入し、窒素を流通させ氷冷下で3h攪拌し、反応させた。 その後、50℃で2時間減圧乾燥することによってアクリロニトリルを除去した後、アセトン30質量部に分散させ、その溶液に、陽イオン交換樹脂(DOWEX 50W×8 100−200メッシュ 強酸性陽イオン交換樹脂(H型))5質量部を加え攪拌し、イオン交換樹脂をろ過・除去することによって残存するカリウム成分を完全に取り除いた。
その後、アセトンを減圧乾燥し、ジクロロエタンに分散させ、ポリアクリロニトリルと思われる不溶物をろ取し、PEG系のシアノ基修飾体(P)(Mn=480)を得た。
シアノ基修飾体(P)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)2.14(2H,s),2.55−2.63(m)2.73−2.78(m),3.38−3.75(m)
反応率はδ2.14より54%と算出
(実施例1)
合成例A1で製造した末端分岐型共重合体(T−1)10質量部と蒸留水(40質量部)とを100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却し、重合体微粒子が分散した水溶液を得た。
その水溶液に、陽イオン交換樹脂(DOWEX 50W×8 100−200メッシュ 強酸性陽イオン交換樹脂(H型))5質量部を加え攪拌し、イオン交換樹脂をろ過・除去することによって残存するカリウム成分を完全に取り除いた。その際の平均粒径は15nmであった。
この重合体微粒子が分散した水溶液(カリウム成分除去後の水溶液)に、ポリアルキレンオキサイド部の酸素原子とリチウム原子の比率が15.0(=O/Li)となるようにLiBFを0.71質量部添加し30分間攪拌した後、凍結乾燥を1日間行い十分に乾燥させて固体高分子電解質粒子を得た。
得られた固体高分子電解質粒子を、常温で加圧成型し、固体高分子電解質のディスク状成形体を作製した。
作製されたディスク状成形体のイオン伝導度を測定したところ、25℃で1.1×10−5S/cmであった。
各種測定温度(−5℃、10℃、25℃、40℃、70℃)におけるイオン伝導度を表1に示す。
なお、表1〜表7では、例えば1.1×10−5を「1.1E−05」と表記する。その他の数値も同様に、「E」の符号を用いて表記する。
また、測定に用いたディスク状成形体の断面薄片を作製し、TEM観察を行った結果を図2に示す。
図2に示すように、染色されていない10nm程度のPE結晶部が15nm間隔で規則正しく配列しており、常温での成型にも関わらずPEG相が連続相を形成していることも確認された。
また、上記ディスク状成形体について、固体粘弾性測定を行ったときの結果を図3に示す。
図3中、E’は貯蔵弾性率を表し、E’’は損失弾性率を表し、tanδは損失正接を表す。
図3に示すように、常温で貯蔵弾性率E’が9.3MPaであり、115℃にPEの結晶部の融解による軟化は起きるものの、160℃まで貯蔵弾性率E’が1MPa以上の機械強度を保持しており、耐熱性に優れている(即ち、後述する比較例1〜3と比較して高温時における機械強度に優れている)ことが確認された。
(実施例2〜7)
〜リチウム塩添加量の変化〜
実施例1におけるLiBFの添加量を1.42質量部(O/Li=7.5):実施例2、1.07質量部(O/Li=10.0):実施例3、0.85質量部(O/Li=12.5):実施例4、0.61質量部(O/Li=17.5):実施例5、0.53質量部(O/Li=20.0):実施例6、0.47質量部(O/Li=22.5):実施例7、にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてイオン伝導度を測定した。
実施の条件と結果を表1にまとめて示す。
表1に示すように、実施例1〜7(特に、実施例1及び3〜7)のディスク状成形体では、広い温度域にわたり(特に、−5℃や10℃等の低温時)、十分なイオン導電度が維持されていた。
また、測定結果の記載は省略したが、実施例2〜7においても、実施例1と同様に、常温から160℃までの範囲で、十分な機械強度が維持されていた。
(実施例8〜11)
〜エチレングリコールユニット数の変化〜
実施例1において用いた末端分岐型共重合体(T−1)を、合成例A2で製造した末端分岐型共重合体(T−2):実施例8、合成例A3で製造した末端分岐型共重合体(T−3):実施例9、合成例A4で製造した末端分岐型共重合体(T−4):実施例10、合成例A5で製造した末端分岐型共重合体(T−5):実施例11、にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表2に示す。実施例10、11のようにMn=2000よりも大きくなると、PEGの結晶化によるイオン伝導度の低温特性の低下、崩壊温度の低下が起きた。
表2に示すように、実施例8〜11(特に、実施例8及び9)のディスク状成形体は崩壊温度が高く、広い温度範囲で十分な機械強度が維持されていた。
また、実施例8〜11(特に、実施例8及び9)のディスク状成形体では、広い温度域にわたり、十分なイオン導電度が維持されていた。
(実施例12)
〜エチレン−プロピレン共重合構造〜
実施例1において用いた末端分岐型共重合体(T−1)を、合成例Bで製造した末端分岐型共重合体(T−6)に変更した以外は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表3に示す。
(実施例13)
実施例1において用いた末端分岐型共重合体(T−1)を、合成例Cで製造した末端分岐型共重合体(T−7)に変更した以外は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表3に示す。
(実施例14)
実施例1において用いた末端分岐型共重合体(T−1)を、合成例Dで製造した末端分岐型共重合体(T−8)に変更した以外は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表3に示す。
(実施例15)
実施例1におけて用いた末端分岐型共重合体(T−1)を、合成例Eで製造した重合体(T−9)に変更した以外は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例12〜15のディスク状成形体では、広い温度域にわたり(特に、−5℃、10℃等の低温時)、十分なイオン導電度が維持されていた。
また、実施例12〜15のディスク状成形体は崩壊温度が高く、広い温度範囲で十分な機械強度が維持されていた。
(実施例16)
実施例1において用いた末端分岐型共重合体(T−1)を、合成例Fで製造した末端分岐型重合体(T−10)に変更した以外は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表4に示す。
(実施例17)
実施例1において用いた末端分岐型共重合体(T−1)を、合成例Gで製造した櫛歯型重合体(T−11)に変更した以外は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表4に示す。
(実施例18)
合成例H−1で合成したグラフト型重合体(T−12)10質量部と蒸留水(40質量部)を100mlナスフラスコに装入し、30分間常温で攪拌して得た微粒子が分散した溶液を得た。この微粒子分散溶液に、ポリアルキレンオキサイド部の酸素原子とリチウム原子の比率が15.0(=O/Li)となるようにLiBFを0.51質量部添加し30分間攪拌した後、凍結乾燥を1日間行い十分に乾燥させて固体高分子電解質試料を得た他は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表4に示す。
(実施例19)
実施例18で用いたグラフト型重合体(T−12)を、合成例H−2で合成したグラフト型重合体(T−13)に変更した以外は、実施例18と同様にしてイオン伝導度、平均粒径、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、微粒子の粒径、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表4に示す。
表4に示すように、実施例16〜19のディスク状成形体では、広い温度域にわたり(特に、−5℃、10℃等の低温時)、十分なイオン導電度が維持されていた。
また、実施例16〜19のディスク状成形体は崩壊温度が高く、広い温度範囲で十分な機械強度が維持されていた。
(実施例20)
〜可塑剤 ジエチルカーボネート〜
実施例1において作製した固体高分子電解質粒子に対して、10質量%のジエチルカーボネートを添加し乳鉢で混合した後、他は実施例1と同様にして固体高分子電解質のディスク状成形体を作製し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表5に示す。
(実施例21)
〜可塑剤 キシレン〜
実施例20において使用したジエチルカーボネートをキシレンに変更した他は同様にして固体高分子電解質のディスクを作成し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表5に示す。
(実施例22)
〜可塑剤 アセトニトリル〜
実施例20において使用したジエチルカーボネートをアセトニトリルに変更した他は同様にして固体高分子電解質のディスクを作成し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。 各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表5に示す。
(実施例23)
〜添加剤 PEG〜
実施例20において使用したジエチルカーボネートを、ポリエチレングリコール(Mn=200)5質量部に変更した他は同様にして固体高分子電解質のディスクを作成し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表5に示す。
(実施例24)
〜添加剤 PEG−CN 〜
実施例20において使用したジエチルカーボネートを、合成例Jで合成したPEG系のシアノ基修飾体(Mn=480)5質量部に変更した他は同様にして固体高分子電解質のディスクを作成し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した固体形状が崩壊する温度(崩壊温度:貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる温度と定義する)の結果を表5に示す。
表5に示すように、実施例20〜24のディスク状成形体では、可塑化による崩壊温度の若干の低下は見られるものの崩壊温度100℃以上を維持しており、更に、可塑剤を添加していない実施例1と比較してイオン伝導度の更なる向上が確認された。
(実施例25)
〜末端修飾CN〜
合成例A1で製造した末端分岐型共重合体(T−1)2.0質量部とアクリロニトリル1.4質量部とトルエン(5.0質量部)を100mlナスフラスコに仕込み、窒素流通下70℃で10時間攪拌し、反応させた。その後、50℃で2時間、続いて室温で6時間かけ減圧乾燥することによってトルエン及び未反応のアクリロニトリルを除去し、末端修飾体(U−1)(PEG末端のヒドロキシル基をシアノ基で修飾)を得た。
実施例1において用いた末端分岐型共重合体(T−1)を、上記方法で得た末端修飾体(U−1)に代えた他は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、固体粘弾性を測定した。 実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。実施例1と比較し、イオン伝導度の向上と崩壊温度の上昇が確認された。
末端修飾体(U−1)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(3H,t,J=6.8Hz),2.53(6H,t,J=36.3Hz),1.06−1.50(m),2.80−3.20(m),3.33−3.72(m)
なお、CN修飾率はδ2.53のピーク強度より60%と算出
(実施例26)
〜末端修飾 安息香酸〜
合成例A1で製造した末端分岐型共重合体(T−1)10質量部と蒸留水(40質量部)を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却し微粒子が分散した水溶液を得た。その溶液に、陽イオン交換樹脂(DOWEX 50W×8 100−200メッシュ 強酸性陽イオン交換樹脂(H型))5質量部を加え攪拌し、イオン交換樹脂をろ過・除去することによって残存するカリウム成分を完全に取り除いた。この分散溶液に対して、凍結乾燥を1日間行い十分に乾燥させて末端分岐型共重合体(T−1)の微粒子状樹脂(S−1)を得た。
200ml三つ口フラスコに、N−メチルイミダゾール3.0質量部、p−トルエンスルホニル=クロリド2.8質量部、安息香酸1.8質量部、クロロホルム50mlを装入し、窒素を流通させ氷冷下で30分間攪拌した。ここに、上記の微粒子状樹脂(S−1)10質量部をクロロホルム50mLに分散させた溶液を滴下し、2時間反応させた。その後ロータリーエバポレーターを用いて、この反応溶液を40℃減圧下で十分に乾燥させ溶媒を除去した。得られた乾燥物を20mlの蒸留水に分散させ透明な重合体粒子分散溶液を得た。この溶液を透析膜(SIGMA−ALDRICH製 Dialysis tubing, benzoylatedD7884−5FT:Mw=1,200以下を除去)内に装入し、3Lのイオン交換水内で1日間攪拌し、未反応物、副生成物を除去し、末端修飾体(U−2)(PEG末端のヒドロキシル基を安息香酸でエステル化)の分散溶液を得た。
この微粒子分散溶液に、ポリアルキレンオキサイド部の酸素原子とリチウム原子の比率が15.0(=O/Li)となるようにLiBFを0.51質量部添加し30分間攪拌した後、凍結乾燥を1日間行い十分に乾燥させて固体高分子電解質試料を得た他は、実施例1と同様にして、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。
末端修飾体(U−2)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.87(3H,t,J=6.8Hz),1.14−1.36(m),3.33−3.72(m),4.43(2H,t,J=4.1Hz),7.40(2H,t,J=7.4Hz),7.51(1H,t,J=3.6Hz),8.00(2H,d,J=3.6Hz)
なお、修飾率はδ4.43のピーク強度より24%と算出
(実施例27)
〜末端修飾 o−メトキシ安息香酸〜
実施例26において修飾材料として用いた安息香酸を、o−メトキシ安息香酸に代えた他は同様にして、末端修飾体(U−3)(PEG末端のヒドロキシル基をo−メトキシ安息香酸でエステル化)の分散溶液を作製し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。
末端修飾体(U−3)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.87(3H,t,J=6.8Hz),1.14−1.36(m),3.33−3.72(m),4.39(2H,t,J=5.3Hz),6.94(2H,m),7.41(1H,m),7.72(1H,m)
なお、修飾率はδ4.39のピーク強度より30%と算出
(実施例28)
〜末端修飾 2,6−ジメトキシ安息香酸〜
実施例26において修飾材料として用いた安息香酸を、2,6−ジメトキシ安息香酸に代えた他は同様にして、末端修飾体(U−4)(PEG末端のヒドロキシル基を2,6−ジメトキシ安息香酸でエステル化)の分散溶液を作製し、イオン伝導度固体粘弾性を測定した。
実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。
末端修飾体(U−4)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.87(3H,t,J=6.8Hz),1.04−1.55(m),3.33−3.72(m),4.39(2H,t,J=5.3Hz),6.54(2H,d,J=8.6Hz),7.24(H,t,J=8.4Hz)
なお、修飾率はδ4.39のピーク強度より35%と算出
(実施例29)
〜末端修飾 クロロギ酸メチル〜
200ml三つ口フラスコに、ジメチルアミノピリジン0.45質量部、トリエチルアミン3.7質量部、クロロギ酸メチル3.5質量部、クロロホルム25mlを装入し、窒素を流通させ氷冷下で30分間攪拌した。ここに、実施例26で得られた微粒子状樹脂(S−1)10質量部をクロロホルム25mLに分散させた溶液を滴下し、2時間反応させた。その後ロータリーエバポレーターを用いて、この反応溶液を40℃減圧下で十分に乾燥させ溶媒を除去した。得られた乾燥物を20mlの蒸留水に分散させ透明な重合体粒子分散溶液を得た。この溶液を透析膜(SIGMA−ALDRICH製 Dialysis tubing, benzoylatedD7884−5FT:Mw=1,200以下を除去)内に装入し、3Lのイオン交換水内で1日間攪拌し、未反応物、副生成物を除去し、末端エステル化修飾体(U−5)(PEG末端のヒドロキシル基をクロロギ酸メチルでエステル化)の分散溶液を得た。
この微粒子分散溶液に、ポリアルキレンオキサイド部の酸素原子とリチウム原子の比率が15.0(=O/Li)となるようにLiBFを0.51質量部添加し30分間攪拌した後、凍結乾燥を1日間行い十分に乾燥させて固体高分子電解質試料を得た他は、実施例1と同様にして、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。
末端修飾体(U−5)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.06−1.50(m),3.33−3.70(m), 3.74(3H s), 4.24(2H,m)
なお、修飾率はδ4.24のピーク強度より57%と算出
(実施例30)
〜末端修飾 クロロギ酸2−メトキシエチル〜
実施例29において修飾材料として用いたクロロギ酸メチルを、クロロギ酸2−メトキシエチルに代えた他は同様にして、末端エステル化修飾体(U−6)(PEG末端のヒドロキシル基をクロロギ酸2−メトキシエチルでエステル化)の分散溶液を作製し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。
末端修飾体(U−6)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.87(3H,t,J=6.8Hz),1.06−1.50(m),3.34(3H,s),3.55−3.70(m), 3.74(3H s), 4.24(4H,m)
なお、修飾率はδ4.24のピーク強度より50%と算出
(実施例31)
〜末端修飾 メトキシアセチルクロライド〜
実施例29において修飾材料として用いたクロロギ酸メチルを、メトキシアセチルクロライドに代えた他は同様にして、末端エステル化修飾体(U−7)(PEG末端のヒドロキシル基をメトキシアセチルクロライドでエステル化)の分散溶液を作製し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。
実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。
末端修飾体(U−7)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.87(3H,t,J=6.8Hz),1.06−1.50(m),3,40(3H,s),3.51−3.69(m),4.00(3H,s),4.26(2H,t,J=5.1)
なお、修飾率はδ4.26のピーク強度より76%と算出
(実施例32)
〜末端修飾 メチルマロン酸クロリド〜
実施例29において修飾材料として用いたクロロギ酸メチルを、メチルマロン酸クロリドに代えた他は同様にして、末端修飾体(U−8)(PEG末端のヒドロキシル基をメチルマロン酸クロリドでエステル化)の分散溶液を作製し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。
末端修飾体(U−8)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.87(3H,t,J=6.8Hz),1.16−1.50(m),3.34(2H,s), 3.51−3.68(m), 3.71(3H s), 4.25(2H,t,J=3.2Hz)
なお、修飾率はδ4.25のピーク強度より84%と算出
(実施例33)
〜末端修飾 アセチル化処理〜
200ml三つ口フラスコに、実施例26で得られた微粒子状樹脂(S−1)10質量部と無水酢酸100質量部を装入し、窒素を流通させ常温で1日間攪拌し、反応させた。その後、50℃で2時間、続いて室温で6時間かけ減圧乾燥することによって酢酸及び未反応の無水酢酸を除去し、末端修飾体(U−9)(PEG末端のヒドロキシル基をアセチル化)を得た。得られた末端修飾体(U−9)乾燥物10質量部を20mlの蒸留水に分散させ透明な重合体粒子分散溶液を得た。この重合体微粒子が分散した水溶液にポリアルキレンオキサイド部の酸素原子とリチウム原子の比率が15.0(=O/Li)となるようにLiBFを0.71質量部添加し30分間攪拌した後、凍結乾燥を1日間行い十分に乾燥させて固体高分子電解質試料を得た。実施例1と同様に測定試料を作製し、イオン伝導度、固体粘弾性を測定した。実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表6に示す。
末端修飾体(U−9)の物性は以下の通りであった。
H−NMR:δ(CCl)0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.16−1.50(m),2.01(3H,s), 3.51−3.68(m), 4.17(2H,t,J=5.1Hz)
なお、修飾率はδ4.17のピーク強度より80%と算出
表6に示すように、実施例25〜33のディスク状成形体では、広い温度域にわたり(特に、低温時)、十分なイオン導電度が維持されていた。特に、末端修飾していない実施例1と比較して−5℃におけるイオン伝導度が向上していた。
また、実施例25〜33のディスク状成形体は崩壊温度が高く、広い温度範囲で十分な機械強度が維持されていた。
(比較例1)
〜PEG20000〜
ポリエチレングリコール(Mn=20,000)10質量部と蒸留水(40質量部)を100mlナスフラスコに挿入し、30分間攪拌した後、ポリアルキレンオキサイド部の酸素原子とリチウム原子の比率が15.0(=O/Li)となるようにLiBFを1.42質量部添加し30分間攪拌した後、凍結乾燥を1日間行い十分に乾燥させて固体高分子電解質試料を得た他は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、固体粘弾性を測定した。 実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表7に示す。
(比較例2)
〜PEG4000〜
比較例1において用いたポリエチレングリコール(Mn=20,000)を、ポリエチレングリコール(Mn=4,000)に代えた他は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、固体粘弾性を測定した。実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表7に示す。
(比較例3)
〜PEG1000〜
比較例1において用いたポリエチレングリコール(Mn=20,000)を、ポリエチレングリコール(Mn=1,000)に代えた他は、実施例1と同様にしてイオン伝導度、固体粘弾性を測定した。実施の条件と各種測定温度におけるイオン伝導度、固体粘弾性より測定した崩壊温度(貯蔵弾性率E’が1MPa以下になる固体形状が崩壊する温度と定義した)の結果を表7に示す。
表7に示すように、比較例1〜3のディスク状成形体では崩壊温度が55℃以下であり、実施例1〜実施例33のディスク状成形体と比較して、高温(55℃を超える温度)における機械的強度が著しく劣っていた。
また、比較例1〜3のディスク状成形体では、特に、低温(特に−5℃及び10℃)におけるイオン伝導度が低かった。
図4は、実施例1、20、22、25、29、及び比較例1〜3について、測定温度とイオン伝導度との関係を示すグラフである。
比較例1〜3の中では比較的イオン伝導度が高い比較例3においても、各実施例と比較して、−5℃のイオン伝導度が低かった。即ち、−5℃のイオン伝導度と70℃のイオン伝導度との差が大きく、温度変化によるイオン伝導度の変動が大きかった。
〔比較例4〕
実施例1において、末端分岐型共重合体(T−1)と蒸留水とを、140℃、800rpmの速度で30分加熱攪拌する操作に代えて、末端分岐型共重合体(T−1)と蒸留水とを、100℃(ポリオレフィン部位の融点に満たない温度)、800rpmの速度で30分加熱攪拌したこと以外は実施例1と同様にして、固体高分子電解質粒子を作製した。
得られた固体高分子電解質粒子を用い、実施例1と同様にして固体高分子電解質(ディスク状成形体)を作製し、評価を行った。
その結果、常温で成型を行うことができず、固体高分子電解質(ディスク状成形体)を得ることができなかった。
〔比較例5〕
実施例1において、末端分岐型共重合体(T−1)と蒸留水とを、140℃、800rpmの速度で30分加熱攪拌する分散操作を行わず、末端分岐型共重合体(T−1)をそのまま用いた以外は実施例1と同様にして、固体高分子電解質(ディスク状成形体)を作製し、評価を行った。
その結果、常温で成型を行うことができず、固体高分子電解質(ディスク状成形体)を得ることができなかった。

Claims (13)

  1. 極性溶媒中に、一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体を、前記ポリオレフィン部位の融点以上の温度で分散させて分散体とする工程と、
    得られた分散体を冷却して重合体粒子を得る工程と、
    前記冷却後の分散体に電解質を添加して、前記重合体粒子及び前記電解質を含む高分子電解質粒子を得る工程と、
    を有する高分子電解質粒子の製造方法。
  2. 前記電解質がイオン性塩であり、
    前記一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の総酸素原子数と、前記イオン性塩に含まれる総陽イオン数と、の比率〔前記総酸素原子数/前記総陽イオン数〕が、0.1〜30である請求項1に記載の高分子電解質粒子の製造方法。
  3. 前記一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体が、下記一般式(1)、下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)、又は下記一般式(7)で表される重合体である請求項1又は請求項2に記載の高分子電解質粒子の製造方法。

    〔一般式(1)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、及び一般式(7)中、Aは、ポリオレフィン部位を表し、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、及びX11は、それぞれ独立に、ポリアルキレンオキサイド部位を表す。
    一般式(1)中、Rは、水素原子又はヒドロキシル基を表す。
    一般式(7)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖型アルキル基、又は分岐型アルキル基を表す。
    一般式(7)で表される重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体である。〕
  4. 前記一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体に含まれるポリオレフィン部位の数平均分子量(Mn)が400〜8000であり、
    該重合体に含まれる全ポリアルキレンオキサイド部位の数平均分子量(Mn)が400〜5000である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高分子電解質粒子の製造方法。
  5. 前記一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体は、
    前記ポリアルキレンオキサイド部位のうち少なくとも一部の末端が、エステル化により修飾されているか、または、シアノ基により修飾されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の高分子電解質粒子の製造方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の高分子電解質粒子の製造方法によって製造された高分子電解質粒子。
  7. 前記重合体粒子におけるポリオレフィン部位が、結晶性を有する請求項6に記載の高分子電解質粒子。
  8. 前記重合体粒子は、前記ポリオレフィン部位から構成されるコアと、前記ポリアルキレンオキサイド部位から構成されるシェルと、からなるコアシェル型粒子である請求項6又は請求項7に記載の高分子電解質粒子。
  9. 請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の高分子電解質粒子を用いて作製された固体高分子電解質。
  10. 前記重合体粒子におけるポリアルキレンオキサイド部位が、互いに連結して連続相を形成している請求項9に記載の固体高分子電解質。
  11. 更に、固体高分子電解質全量に対して0.1質量%〜30質量%の可塑剤を含有する請求項9又は請求項10に記載の固体高分子電解質。
  12. 一分子中にポリオレフィン部位及びポリアルキレンオキサイド部位を有する重合体からなる重合体粒子であって、前記ポリオレフィン部位から構成されるコアと、前記ポリアルキレンオキサイド部位から構成されるシェルと、からなるコアシェル型粒子と、
    電解質と、
    を含む高分子電解質粒子。
  13. 請求項12に記載の高分子電解質粒子を用いて作製された固体高分子電解質。
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