JP5859548B2 - 多孔質正極材料の製造方法 - Google Patents
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Description
界面活性剤を鋳型として細孔を形成した場合、細孔の大きさは直径5nmが限度であることが知られている。界面活性剤の場合、水溶液中では自己組織的にミセルなどの集合体をとっており、この会合体の粒径を大きくしようと、界面活性剤濃度を上げると、相変化を起こしラメラ相やヘキサゴナル相などへと変化し、球状の会合状態を維持できなくなるからである。
特許文献1も、図に記載されているように、窒素吸着法から求めた細孔径は2nm程度である。電池としての特性評価結果は述べられていないが、細孔が2nm程度では電解液が浸透し難かったり、電解液中のリチウムイオンの移動の妨げになったりするため、充放電特性は芳しくないことが予想される。
特許文献4(国際公開第2010/150857号パンフレット)には、鋳型粒子を準備する工程、鋳型粒子を、LiMnPO4の無機源溶液とカーボン源とからなる前駆溶液に浸漬させる工程と、鋳型粒子と前駆溶液からなる複合体を600℃以上900℃未満の焼成温度で焼成し、鋳型粒子を除去する工程とを有する、複合ナノ多孔電極材の製造方法に関する記載がある。実際の作成方法では、まず、粒子の直径が100nm以上400nm以下のポリスチレンからなるコロイド分散液を遠心分離し、ポリスチレン粒子が規則正しく並んだコロイド結晶を作製する。そして、このポリスチレン粒子を減圧乾燥させてから、無機源溶液をポリスチレン粒子の隙間に5日〜7日間かけて浸漬させ、充填させる。これを焼成することでポリスチレン粒子からなる鋳型が除去され、ナノサイズの細孔を有するオリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)とカーボンの複合ナノ多孔電極材4が完成することができる。以上の工程では、ポリスチレン粒子を遠心分離して、規則正しく並べた後、乾燥することで粒子を固定化させてから、無機源溶液を浸漬させ、規則正しい鋳型の構造を作り出すことが重要となる。しかしながら、工業的に生産するには、工程が複雑であり困難である。
(II)メジアン径d50が10〜400nmである水分散性樹脂微粒子、
および水系媒体を含有する原料液を調製する調製工程と、
上記調製工程で得られた上記原料液をスプレードライする工程と、
を含む、リチウムイオン電池用の多孔質正極材料の製造方法。
(ここで、メジアン径d50とは、上記原料液を調整する前にレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準粒度分布におけるメジアン径d50を意味する。)
上記正極活物質がリチウム金属リン酸塩である、多孔質正極材料の製造方法。
上記正極活物質の上記原料が(1)リチウム化合物、(2)周期律表第7族および8族から選ばれる金属を含む金属化合物および(3)リン酸化合物を含む、多孔質正極材料の製造方法。
上記金属化合物が、鉄化合物またはマンガン化合物である、多孔質正極材料の製造方法。
上記(I)の上記メジアン径d50が上記(II)の上記メジアン径d50の0.5倍以下である、多孔質正極材料の製造方法。
上記水分散性微粒子のメジアン径d50の上記調製工程前後の変化率が50%以下である、多孔質正極材料の製造方法。
上記水分散性樹脂微粒子は、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量が2.5×104以下であり、
下記一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子である、多孔質正極材料の製造方法。
上記一般式(1)で表される上記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子において、
上記X1および上記X2は同一または異なっており、下記一般式(2)または下記一般式(4)で表される基を表す、多孔質正極材料の製造方法。
上記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子が下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表される、多孔質正極材料の製造方法。
上記水分散性樹脂微粒子が(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子である、多孔質正極材料の製造方法。
当該多孔質正極材料の炭素含有量が1〜20質量%である、多孔質正極材料の製造方法。
当該多孔質正極材料がLiFePO4を含む、多孔質正極材料の製造方法。
また、この多孔質正極材料を用いることにより、充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
ここで、メジアン径d50とは、上記原料液を調整する前にレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準粒度分布におけるメジアン径d50を意味する。
また、本実施形態におけるスプレードライの意味は、スプレー乾燥をおこなう意味の他に、スプレードライヤーを用いて噴霧焼成する(乾燥と焼成を同時におこなう)意味も含む。
スプレードライする工程においてスプレー乾燥をおこなうのみの場合は、乾燥により得られた前駆体を焼成することにより、正極活物質と炭素からなる多孔質正極材料が得られる。
スプレードライする工程において、乾燥と焼成を同時におこなう場合は、噴霧焼成をおこなうことにより、正極活物質と炭素からなる多孔質正極材料が得られる。
はじめに、原料液の調製工程について説明する。
本実施形態における原料液は、(I)リチウムを吸蔵および放出可能な正極活物質、その製造中間体及びその原料から選ばれる1種以上の物質が溶解または分散しており、水分散性樹脂微粒子が分散している。
(I)リチウムを吸蔵および放出可能な正極活物質、その製造中間体及びその原料から選ばれる1種以上の物質は、水系媒体に溶解していてもよいし、分散していてもよい。
水分散性樹脂微粒子による鋳型効果を十分に発揮させるため、上記(I)の物質が水系媒体に溶解している方が望ましいが、メジアン径d50が水分散性樹脂微粒子のメジアン径d50の1.0倍以下、好ましくは0.5倍以下、より好ましくは0.1倍以下であれば、分散していてもよい。なお、上記物質が溶解している場合はメジアン径の値が0であることを意味する。
リチウムイオン電池においてリチウムイオンを脱挿入し正極材として機能するのは、上記の正極活物質である。正極活物質の結晶構造は特に限定されるものではないが、例えばオリビン型を挙げることができる。
(I)リチウムを吸蔵および放出可能な正極活物質の原料としては、例えば、リチウム化合物と、周期律表第7族および8族から選ばれる金属を含む金属化合物と、リン酸化合物が挙げられる。
また、リチウムを吸蔵および放出可能な正極活物質が分散した原料液は、上記の混合物を、高温高圧の条件下にて反応(水熱合成)させ得ることができる。この高温高圧の条件は、リチウムを吸蔵および放出可能な正極活物質を生成する温度、圧力及び時間の範囲であれば特に限定されるものではないが、反応温度は、例えば、120℃以上かつ250℃以下が好ましく、より好ましくは150℃以上かつ220℃以下である。
ここで、水分散性樹脂微粒子について説明する。
本実施形態における水分散性樹脂微粒子の役割は、大きく分けて三つある。
第一の役割は、有機−無機コンポジットを作り出し、樹脂微粒子間に作り出す多孔質正極材料の壁の厚さを薄くすることで、焼成時において多孔質正極材料の結晶粒子径の成長を抑制し、結晶粒子内のリチウムイオンの拡散距離を短くすることである。
第二の役割は、不活性ガス雰囲気下で焼成した時に生成する炭素成分により、導電性を高めることである。
第三の役割は、不活性ガス雰囲気下で焼成することで電解液が浸透可能な空隙を作り出すことである。この空隙に浸透した電解液が、より速やかにリチウムイオンの移動を促進することが可能となる。
ここで、メジアン径d50は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置などを用いて測定することができる。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置としては、日機装社製マイクロトラックUPA−EX150などを用いることできる。
本実施形態における水分散性樹脂微粒子の軟化点とは、現象的には樹脂が軟化し樹脂同士が融着し始める温度を指すが、より具体的には、結晶性高分子の場合は融点とし、非晶性高分子の場合はガラス転移点とする。
ここで、結晶性高分子の融点は、DSC(示差走査熱量分析)を用いて測定することができ、昇温速度10℃/分で測定した時のピークトップの温度を融点とする。非晶性高分子のガラス転移点も、DSC(示差走査熱量分析)を用いて測定することができ、昇温速度10℃/分で測定した時のベースラインとの変極点をガラス転移点とする。モノマー組成が分かっている非晶性高分子は、ガラス転移点は計算で求めることもでき、これで代用しても良い。
まず、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子について説明する。
本実施形態における水分散性樹脂微粒子を構成するポリオレフィン系末端分岐型共重合体は、下記の一般式(1)で表される構造を有する。
本実施形態においては、これらのオレフィンの単独重合体または共重合体であってもよく、特性を損なわない範囲で他の重合性の不飽和化合物と共重合したものであってもよい。これらのオレフィンの中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500μL
検出器:示差屈折計。
なお、Aで表されるポリオレフィン鎖の分子量は、後述の、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
例えば、主骨格の他に2つ以上の窒素原子または酸素原子または硫黄原子に結合した炭化水素基による分岐や、主骨格の他に2つのアルキレン基と結合した窒素原子による分岐などが挙げられる。
l+m+oは3以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す。
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体は、次の方法によって製造することができる。
(1)特開2000−239312号公報、特開2001−2731号公報、特開2003−73412号公報などに示されているようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
(2)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(3)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(4)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
(1)過ギ酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸による酸化
(2)チタノシリケートおよび過酸化水素による酸化
(3)メチルトリオキソレニウムなどのレニウム酸化物触媒と過酸化水素による酸化
(4)マンガンポルフィリンまたは鉄ポルフィリンなどのポルフィリン錯体触媒と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(5)マンガンSalenなどのSalen錯体と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(6)マンガン−トリアザシクロノナン(TACN)錯体などのTACN錯体と過酸化水素による酸化
(7)タングステン化合物などのVI族遷移金属触媒と相間移動触媒存在下、過酸化水素による酸化
このようなポリオレフィン系末端分岐型共重合体からなる本実施形態の重合体粒子は、上記一般式(1)のAで表されるポリオレフィン鎖部分が、内方向に配向した構造を有し、このポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するリジットな粒子である。
本実施形態の重合体粒子は、溶媒などに分散させたとしても、希釈濃度によらず粒子径が一定である。つまり、再分散性および均一な分散粒子径を有することから、液体中に分散しているミセル粒子とは異なるものである。
本実施形態の分散液は上記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を分散質に含み、該分散質を水および/または水と親和性を有する有機溶媒に粒子として分散している。
(1)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を製造する際に得られた、該重合体粒子を含む分散液、
(2)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を製造する際に得られた該重合体粒子を含む分散液に、さらに他の分散質や添加剤などを分散または溶解してなる分散液、
(3)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を水および/または水と親和性を有する有機溶媒に分散させるとともに、他の分散質や添加剤などを分散または溶解してなる分散液、の何れをも含んでいる。
また、上記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を水以外の溶媒に予め溶解した後、水および/または水と親和性を有する有機溶媒とを混合して高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサーなどにより分散化する方法も可能である。この際、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の溶解に使用する溶媒は、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が溶解するのであれば特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサンや上記の水と親和性を有する有機溶媒などが挙げられる。水以外の有機溶媒が分散液に混入することが好ましくない場合には、蒸留などの操作により除去することが可能である。
これら界面活性剤は、単独または2種以上を併用することができる。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体はアクリル酸エステルおよび/またはメタアクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する単独重合体または共重合体である。ポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子の水分散液は一般的にアクリルエマルジョンと呼ばれ、公知の乳化重合法により得ることができる。例えば、不飽和単量体(不飽和ビニルモノマーなど)を重合開始剤、および界面活性剤を存在させた水中において乳化重合することによって得ることができる。
滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサーおよび攪拌機を備えた反応容器に、蒸留水を仕込み、窒素ガスで置換した後、窒素雰囲気下にて80℃に昇温する。次いで重合開始剤を添加してから、予め調製したビニル単量体乳化物を3時間かけて連続的に添加し、更に4時間保持して重合を完結させ、重合反応物を得る。該重合反応物はそのまま用いても良いし、中和剤で中和してpHを調整しても良い。その後フィルターでろ過し粗大粒子を除去して、樹脂粒子を分散質とするアクリルエマルションを得る。
つぎに、上記調製工程で得られた上記原料液をスプレードライする工程について説明する。
原料液は、瞬間的に乾燥させることで、水分散樹脂微粒子と、リチウム化合物や周期律表第7族および8族から選ばれる金属を含む金属化合物、リン酸化合物を含む無機化合物とが分離せず、均一なコンポジットを構成した前駆体を調製することが可能である。
このような均一な有機−無機コンポジットを構成させることができる手段として、本実施形態ではスプレードライ法(噴霧乾燥)を用いる。瞬間的に乾燥させて得られた粉体には、数%の水分が含まれていることが多いので、さらに、オーブンなどで乾燥させてから、次の焼成工程に移っても良い。
つぎに、上記スプレードライする工程で得られた粉体を焼成する焼成工程について説明する。
乾燥工程で得られた前駆体を、酸素濃度200ppm未満の不活性雰囲気中にて、焼成する。不活性雰囲気としては、窒素(N2)雰囲気、アルゴン(Ar)雰囲気、ヘリウム(He)雰囲気などが好ましい。酸素濃度が200ppm未満では、例えばFe(III)を含む不純物が生成しにくく、結晶欠陥が生じにくいので、電池として評価した時の充放電容量が低下しないため好ましい。
つぎに、本実施形態により得られた正極材料を用いたリチウムイオン電池について説明する。
本実施形態のリチウムイオン電池は、一般的に公知の方法で作製することができる。例えば、正極および負極をセパレーター中心に重ねたものを、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成し非水電解液を封入することにより作製される。
<ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の合成>
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、上述した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSCを用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。
1H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)を合成した。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(t, 3H, J = 6.92 Hz), 1.18 - 1.66 (m), 2.38 (dd,1H, J = 2.64, 5.28 Hz), 2.66 (dd, 1H, J = 4.29, 5.28 Hz), 2.80-2.87 (m, 1H)
融点(Tm):121℃
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 3H, J = 6.6 Hz), 0.95-1.92 (m), 2.38-2.85 (m, 6H), 3.54-3.71 (m, 5H)
融点(Tm):121℃
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J= 6.8 Hz), 1.06 - 1.50 (m), 2.80 - 3.20 (m)
, 3.33 - 3.72 (m)
融点(Tm):−16℃(ポリアルキレングリコール部分の融点)、
融点(Tm):116℃(ポリオレフィン部分の融点)
(10質量%ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液の調製)
上記合成例で得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)10質量部と蒸留水40質量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系のメジアン径d50(体積50%平均粒子径)は18nmであった。(体積10%平均粒子径14nm、体積90%平均粒子径22nm)得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は15〜30nmであった。さらに、この(T)水性分散液(固形分20質量%)75質量部に対して蒸留水75質量部を加えることで10質量%ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液を得た。
硝酸鉄(III)九水和物、酢酸リチウム、リン酸をそれぞれ0.09mol秤量し、174mLの水に溶かした。そこにアクリルエマルジョン(固形分:46wt%、メジアン径d50:160.0nm、Tg:80.4℃)を30.9g添加し、鉄、リチウム、リンの濃度がそれぞれ0.5Mの原料液を作成した。アクリルエマルジョンの樹脂成分のガラス転移点(Tg)は、アクリルエマルジョンを乾燥機にて乾燥させ樹脂成分を取り出した後、この樹脂成分を「示差走査熱量測定装置 RDS2200 (エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)」を用いて、50℃/分で昇温し熱履歴を取り除いた後、10℃/分で降温し、再度10℃/分で昇温したときに観測される吸熱変異点の接線の交点から求めた。アクリルエマルジョンを添加しても凝集は起きず、「マイクロトラックUPA-EX150(日機装社製)」にて粒径を測定したところ、粒子のメジアン径d50は161.5nmであり、添加前の粒径と変化無いことを確認した。なお、正極活物質の原料である硝酸鉄(III)九水和物、酢酸リチウム、リン酸はすべて溶解しているため、上記(I)のメジアン径d50はゼロである。
得られた黒色粉体を、乳鉢で解砕した後、XRDを測定し、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、パーキンエルマー社製 CHN元素分析装置 2400II型を用いて測定し、9.8質量%であった。比表面積は、カンタクローム社製オートサーブ3を用いて、窒素ガス吸着法により測定し、26.9m2/gであった。
そして、この3極式セルにおいて、2.5〜4.0V(vs.Li/Li+)の電位範囲で所望の定電流密度[mA/g]にて充放電測定をした。
LiFePO4の理論容量は、170mAh/gであるので、4.7μA/gの定電流で充放電した時の容量、つまり、0.1Cでの容量は156.3mAh/gであった。また、47μA/gの定電流で充放電した時の容量、つまり、1Cでの容量は141.0mAh/gであった。また、470μA/gの定電流で充放電した時の容量、つまり、10Cでの容量は78.3mAh/gであった。
実施例1の硝酸鉄(III)九水和物に替えて、塩酸鉄(II)を用いた以外は、実施例1と同様にして実験した。アクリルエマルジョンを添加しても凝集は起きず、良好な分散状態を保った。焼成時の酸素濃度は、30ppmであった。
焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、9.7質量%であった。比表面積は、32.6m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は145.1mAh/gであり、1Cでの容量は129.4mAh/gであり、10Cでの容量は89.9mAh/gであった。
実施例1のアクリルエマルジョンに換えて、上記合成例で得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液(固形分:10wt%、粒径:18nm、融点:116℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして実験した。ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液を添加しても凝集は起きず、「マイクロトラックUPA-EX150(日機装株式会社製)」にて粒径を測定したところ、21.5nmであり、添加前の粒径と大きな変化が無いことを確認した。焼成時の酸素濃度は、30ppmであった。得られた黒色粉体を、「走査型電子顕微鏡JSM−6701F(日本電子株式会社製)」にて観察したところ、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の粒径に相当する空隙を有する網目構造ができていることを確認した(図2)。
焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、4.0質量%であった。比表面積は、15.1m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は138.9mAh/gであり、1Cでの容量は110.8mAh/gであり、10Cでの容量は53.5mAh/gであった。
実施例3の硝酸鉄(III)九水和物に替えて、塩酸鉄(II)を用いた以外は、実施例3と同様にして実験した。ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液を添加しても凝集は起き無いことを確認した。焼成時の酸素濃度は、30ppmであった。
焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、8.6質量%であった。比表面積は、26.5m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は153.0mAh/gであり、1Cでの容量は135.9mAh/gであり、10Cでの容量は80.6mAh/gであった。
実施例1の原料液の鉄、リチウム、リンの濃度をそれぞれ2.0Mに変更した以外は、実施例1と同様にして実験した。アクリルエマルジョンを添加しても凝集は起きず、良好な分散状態を保った。焼成時の酸素濃度は、30ppmであった。
焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、8.0質量%であった。比表面積は、18.6m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は153.0mAh/gであり、1Cでの容量は140.8mAh/gであり、10Cでの容量は79.0mAh/gであった。
実施例3で実施した焼成を、置換炉の替わりに、管状炉を用い減圧置換せずにアルゴン気流下で、2℃/分の昇温速度で700℃,16時間保持の条件で焼成させたこと以外は、実施例3と同様に実験した。焼成時の酸素濃度は、100ppmであった。
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液を添加しても凝集は起き無いことを確認した。焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、6.8質量%であった。比表面積は、24.7m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は147.0mAh/gであり、1Cでの容量は123.0mAh/gであり、10Cでの容量は80.0mAh/gであった。
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液に替えて、アクリルエマルジョン(固形分:46wt%、メジアン径d50:140.0nm、Tg:−1.2℃)を用いた以外は、実施例6と同様にして実験した。焼成時の酸素濃度は、100ppmであった。
アクリルエマルジョンを添加しても凝集していないことを確認した。スプレードライ法により乾燥した後、粒子表面をSEMにて観察したところ、アクリルエマルジョンが、合一せずにマトリックス化していることを確認した(図3)。焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、6.9質量%であった。比表面積は、25.3m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は146.0mAh/gであり、1Cでの容量は131.0mAh/gであり、10Cでの容量は102.0mAh/gであった。
実施例1と同様にして原料液をスプレードライにより乾燥して得られた粉体を、100℃に調整した減圧乾燥器に入れ残存水分を取り除く工程を加え、さらにこの乾燥粉体を置換炉に入れ、減圧置換を3回おこないアルゴンに置換した後、アルゴン気流下で、2.5℃/分で昇温し、700℃、16時間焼成したこと以外は、実施例1と同様に実験した。焼成時の酸素濃度は、30ppmであった。焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、9.8質量%であった。比表面積は、53.1m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は158.0mAh/gであり、1Cでの容量は146.0mAh/gであり、10Cでの容量118.0mAh/gであった。
実施例6の乾燥方法を、スプレードライ法の替わりに、原料液をシャーレに入れ送風乾燥器を用いて乾燥させた以外は、実施例6と同様に実験した。焼成時の酸素濃度は、100ppmであった。
焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、6.8質量%であった。比表面積は、26.5m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は92.0mAh/gであり、1Cでの容量は85.0mAh/gであり、10Cでの容量は低く測定できなかった。
比較例1の原料液に、スクロース(和光純薬製)を0.045mol添加したこと以外は、比較例1と同様に実験した。焼成時の酸素濃度は、100ppmであった。
焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、19.1質量%であった。比表面積は、125.4m2/gであった。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は39.0mAh/gであり、1Cでの容量は28.0mAh/gであり、10Cでの容量は低く測定できなかった。
実施例1のアクリルエマルジョンに換えて、スクロースを0.029mol用いた以外は、実施例1と同様にして実験した。焼成時の酸素濃度は、100ppmであった。
焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、7.3質量%であった。比表面積は、43.0m2/gであった。走査型電子顕微鏡にて観察してみたところ、断面は多孔質になっているようであるが、表面は凹凸が少なく平滑であることが分かった(図4)。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は79.8mAh/gであり、1Cでの容量は29.5mAh/gであり、10Cでの容量は低く測定できなかった。
比較例1のポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液に替えて、アクリルエマルジョン(固形分:46wt%、メジアン径d50:140.0nm、Tg:−1.2℃)を用いた以外は、比較例1と同様にして実験した。焼成時の酸素濃度は、100ppmであった。
アクリルエマルジョンを添加しても凝集は起きず、「マイクロトラックUPA-EX150(日機装社製)」にて粒径を測定したところ、粒子のメジアン径d50は150.5nmであり、分散状態を保っていることを確認した。
焼成後、XRDを測定したところ、オリビン型結晶構造であることを確認した。炭素含有量は、8.2質量%であった。比表面積は、11.1m2/gであった。走査型電子顕微鏡にて観察してみたところ、(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子由来の多孔質構造を確認することはできなかった。時間を掛けて乾燥したので、アクリルエマルジョン粒子が溶融し、鋳型としての機能を発揮することができなかったためであると考えられる。
電池特性評価では、0.1Cでの容量は88.5mAh/gであり、1Cでの容量は32.6mAh/gであり、10Cでの容量は低く測定できなかった。
[1]
(1)リチウム化合物、
(2)周期律表第7族および8族から選ばれる金属を含む金属化合物、
(3)リン酸化合物、
(4)レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置による体積基準粒度分布におけるメジアン径d50が10〜400nmである水分散性樹脂微粒子、
および水系媒体を含有し、上記水系媒体に上記(1)、上記(2)および上記(3)が溶解し、上記(4)が分散している原料液を調製する調製工程と、
上記調製工程で得られた上記原料液をスプレードライ法により乾燥して前駆体を得る乾燥工程と、
上記乾燥工程で得られた上記前駆体を焼成する焼成工程と、
を含む、リチウムイオン電池用の多孔質正極材料の製造方法。
上記[1]に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
上記金属化合物が、鉄化合物またはマンガン化合物である、多孔質正極材料の製造方法。
上記[1]または[2]に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
上記水分散性樹脂微粒子のメジアン径d50の上記調製工程前後の変化率が50%以下である、多孔質正極材料の製造方法。
上記[1]乃至[3]いずれかに記載の多孔質正極材料の製造方法において、
上記水分散性樹脂微粒子は、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量が2.5×104以下であり、
下記一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子である、多孔質正極材料の製造方法。
上記[4]に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
上記一般式(1)で表される上記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子において、上記X1および上記X2は同一または異なっており、下記一般式(2)または下記一般式(4)で表される基を表す、多孔質正極材料の製造方法。
上記[4]または[5]に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
上記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子が下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表される、多孔質正極材料の製造方法。
上記[1]乃至[3]いずれかに記載の多孔質正極材料の製造方法において、
上記水分散性樹脂微粒子が(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子である、多孔質正極材料の製造方法。
上記[1]乃至[7]いずれかに記載の多孔質正極材料の製造方法において、
当該多孔質正極材料の炭素含有量が1〜20質量%である、多孔質正極材料の製造方法。
上記[1]乃至[8]いずれかに記載の多孔質正極材料の製造方法において、
当該多孔質正極材料がLiFePO4を含む、多孔質正極材料の製造方法。
上記[1]乃至[9]いずれかに記載の多孔質正極材料の製造方法で得られた多孔質正極材料を用いた、リチウムイオン電池。
Claims (11)
- (I)リチウムを吸蔵および放出可能な正極活物質、その製造中間体及びその原料から選ばれる1種以上の物質であって、メジアン径d50が下記(II)のメジアン径d50の1.0倍以下である物質、
(II)メジアン径d50が10〜400nmである水分散性樹脂微粒子、
および水系媒体を含有する原料液を調製する調製工程と、
前記調製工程で得られた前記原料液をスプレードライする工程と、
を含む、リチウムイオン電池用の多孔質正極材料の製造方法であって、
前記正極活物質がリチウム金属リン酸塩である多孔質正極材料の製造方法。
(ここで、メジアン径d50とは、前記原料液を調整する前にレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準粒度分布におけるメジアン径d50を意味する。) - 請求項1に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
前記正極活物質の前記原料が(1)リチウム化合物、(2)周期律表第7族および8族から選ばれる金属を含む金属化合物および(3)リン酸化合物を含む、多孔質正極材料の製造方法。 - 請求項2に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
前記金属化合物が、鉄化合物またはマンガン化合物である、多孔質正極材料の製造方法。 - 請求項1乃至3いずれか一項に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
前記(I)の前記メジアン径d50が前記(II)の前記メジアン径d50の0.5倍以下である、多孔質正極材料の製造方法。 - 請求項1乃至4いずれか一項に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
前記水分散性樹脂微粒子のメジアン径d50の前記調製工程前後の変化率が50%以下である、多孔質正極材料の製造方法。 - 請求項6に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
前記一般式(1)で表される前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子において、
前記X1および前記X2は同一または異なっており、下記一般式(2)または下記一般式(4)で表される基を表す、多孔質正極材料の製造方法。
- 請求項6または7に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子が下記一般式(1a)または下記一般式(1b)で表される、多孔質正極材料の製造方法。
- 請求項1乃至5いずれか一項に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
前記水分散性樹脂微粒子が(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子である、多孔質正極材料の製造方法。 - 請求項1乃至9いずれか一項に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
当該多孔質正極材料の炭素含有量が1〜20質量%である、多孔質正極材料の製造方法。 - 請求項1乃至10いずれか一項に記載の多孔質正極材料の製造方法において、
当該多孔質正極材料がLiFePO4を含む、多孔質正極材料の製造方法。
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