以下、本発明の一実施形態を、図1〜図15に基づいて説明する。図1及び図2には、本発明の薄形搬送物送給装置10の全体が示されている。同図に示すように、薄形搬送物送給装置10は、複数の薄形搬送物W(例えば、カット紙、封書、冊子など)を上下に積み重ねた状態で載置することが可能な積層載置部80と、その前方上方に配置された送給装置本体11とを備えている。なお、以下の説明では、積層載置部80と送給装置本体11の並び方向を「送給方向D1」といい、送給方向D1と直交する水平方向を「送給直交方向D2」という。また、送給方向D1における送給装置本体11側を、適宜、「前方」といい、送給方向D1における積層載置部80側を、適宜、「後方」という。
積層載置部80のうち送給装置本体11から離れた後寄り部分には、送給方向D1の前方に向かって下り傾斜したローラコンベヤ90が備えられている。図2に示すように、ローラコンベヤ90は、送給直交方向D2で対向した1対のサイドフレーム91間に複数のフリーローラ92を架け渡してなり、積層載置部80の上面両側部に固定された1対の支持フレーム81に対して傾動可能に取り付けられている。
具体的には、ローラコンベヤ90のうち、両サイドフレーム91の前端部は、両支持フレーム81の前端部に回動可能に軸支されている。また、両サイドフレーム91の軸方向の中間部には、リンクアーム93の一端部が回転可能に連結されており、それら1対のリンクアーム93の他端部が、1対の各支持フレーム81に形成された長孔82(図1参照)に対して移動可能に連結されている。リンクアーム93の他端部を長孔82の前側に移動させると、ローラコンベヤ90の傾斜角度が大きくなり、リンクアーム93の他端部を長孔82の後側に移動させると、ローラコンベヤ90の傾斜角度が小さくなる。そして、リンクアーム93に取り付けられたクランプレバー94を締め付けることで、リンクアーム93を長孔82の任意の位置に固定して、ローラコンベヤ90を任意の傾斜角度で固定することができる。そして、薄形搬送物Wは、自重とローラコンベヤ90の傾斜によってフリーローラ92を回転させながら送給装置本体11に向かって滑走する。なお、本実施形態では、ローラコンベヤ90の傾斜角度を、例えば、2〜18[度]の範囲で変更することが可能である。
図2に示すように、積層載置部80の前端部からその前方位置に亘る範囲には、複数の回転駆動ベルト83が設けられている。具体的には、積層載置部80の前方位置には、例えば、6つの回転駆動ベルト83が送給直交方向D2に並べて配置されており、それら回転駆動ベルト83群の後方位置(積層載置部80の前端部)には、例えば、2つの回転駆動ベルト83が送給直交方向D2に並べて配置されている。これら複数の各回転駆動ベルト83は、送給方向D1で対をなしたプーリー84間に架け渡されており(図1参照)、それら1対のプーリー84の一方が共通の駆動源(例えば、モータ)によって回転駆動される。そして、これら複数の回転駆動ベルト83の上面(搬送面)が薄形搬送物Wと摩擦接触する。
図1及び図2に示すように、積層載置部80の前方かつ上方位置には、複数の装置支持梁H1,H2,H3が設けられている。これら装置支持梁H1,H2,H3は、送給直交方向D2に延びた断面矩形の角柱状をなしている。装置支持梁H1,H2は上下方向に並べて配置され、装置支持梁H2,H3は送給方向D1に並べて配置されている。これら装置支持梁H1,H2,H3によって送給装置本体11が支持されている。
図1に示すように、送給装置本体11には、高摩擦重送規制部材20及び前方捌き部材30と、その後方に配置された後方捌き機構40等が備えられている。以下、これらについて詳説する。
高摩擦重送規制部材20は、積層載置部80の前方位置に配置された回転駆動ベルト83の上方に配置されており、第1直動支持機構100によって上下動可能に支持されている。回転駆動ベルト83によって積層載置部80の下端側から抜き出された薄形搬送物Wは、高摩擦重送規制部材20と接触し、最下部の薄形搬送物Wだけが、高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間を通過して前方に送給されるようになっている。
高摩擦重送規制部材20は、送給直交方向D2(回転駆動ベルト83の幅方向)に延びた金属製の円柱ボディ21の外周面に、複数の環状溝(図示せず)を形成して、それら各環状溝に摺接リング23を嵌合させた構造になっている(図5参照)。複数の各摺接リング23は、それぞれ円柱ボディ21の外周面からはみ出している。そして、各摺接リング23のうち、高摩擦重送規制部材20を送給直交方向D2から見て、回転駆動ベルト83に向かって膨らんだ円弧状の摺接円弧部23A(図11参照)が、回転駆動ベルト83との間を通過する薄形搬送物Wと摺接するように構成されている。摺接リング23は、所定の摩擦係数(例えば、約0.5〜0.7)を有するエラストマー(例えば、ウレタンゴム)で構成されている。
円柱ボディ21の両端面からは円柱形の係合ボス24が突出している。また、円柱ボディ21の軸方向の両側位置には、係合フック109が対をなして備えられており、それら1対の係合フック109に形成されたU字溝109Aに、1対の係合ボス24がそれぞれ係合している。なお、係合フック109は、後述する第1固定ベース101(図4参照)に固定されている。
図6に示すように、円柱ボディ21の軸方向の中間部からは、角柱形の連結突部25が前方に向かって突出しており、その連結突部25の前端部に、第1直動支持機構100が連結されている。
第1直動支持機構100は、第1固定ベース101(図4参照。本発明の「固定ベース」に相当する)によって第1直動シャフト110(本発明の「直動シャフト」に相当する)を上下動可能に支持した構造になっている。
図3に示すように、第1固定ベース101は、装置支持梁H1,H2の前面に固定された前面壁102と、前面壁102から前方に張り出した第1シャフト支持盤103とを備えている。また、前面壁102における送給直交方向D2の両端部を、1対の固定ボルトB1(図3には一方の固定ボルトB1のみが示されている)が前後方向に貫通しており、それら1対の固定ボルトB1の先端が、装置支持梁H1,H2の後面に係止されたクランプ部材104と螺合している。即ち、装置支持梁H1,H2を、クランプ部材104と前面壁102との間に挟み込むことで第1固定ベース101が固定されている。
図6に示すように、第1直動シャフト110は、第1シャフト支持盤103を上下に貫通して延びている。即ち、シャフト挿通孔103Aが第1シャフト支持盤103を上下方向に貫通しており、そのシャフト挿通孔103Aの内側に第1直動シャフト110が直動可能に挿通されている。第1シャフト支持盤103のうち、シャフト挿通孔103Aの上端開口縁からは、支持スリーブ105が起立しており、シャフト挿通孔103Aの下端開口縁からは、支持円筒部107が垂下している。支持スリーブ105の上端部には、ヘッドキャップ106が固定されており、支持円筒部107の外周面にはボトムキャップ108が螺合している。
第1直動シャフト110は、上から順に、小径雄螺子部112、大径軸部111、小径軸部113となっており、大径軸部111が、小径雄螺子部112及び小径軸部113よりも段付き状に太くなっている。大径軸部111は、シャフト挿通孔103A及び支持スリーブ105の内側で直動可能となっており、大径軸部111の外周面と、支持スリーブ105の内周面との間には、図示しないボールスプライン機構が設けられている。これにより、第1直動シャフト110が第1固定ベース101に対して回転不能かつ上下動可能に支持されている。
小径雄螺子部112は、ヘッドキャップ106を貫通して上方に突出しており、小径軸部113は、ボトムキャップ108を貫通して下方に突出している。
高摩擦重送規制部材20から前方に突出した連結突部25の前端部上面には、ボルト挿通孔25Aが貫通形成されている。ボルト挿通孔25Aの上端部はザグリ孔になっており、そのザグリ孔に第1直動シャフト110(詳細には、小径軸部113)の下端部が遊嵌され、連結突部25の下方からボルト挿通孔25Aに通した固定ボルトB2が小径軸部113の軸心部に螺合している。これにより、高摩擦重送規制部材20と第1直動シャフト110とが一体に固定されている。
ここで、高摩擦重送規制部材20は、ボトムキャップ108の下面と連結突部25の上面との間に設けられた隙間の分だけ上下動可能であり、ボトムキャップ108が、高摩擦重送規制部材20を直動範囲の上端限界位置に位置決めする。また、上端限界位置は、支持円筒部107に対するボトムキャップ108の螺合操作によって変更することができる。なお、ボトムキャップ108は、本発明の「上端ストッパ」に相当し、支持円筒部107とボトムキャップ108との間の螺合構造が、本発明の「上端ストッパ調整機構」に相当する。
第1直動シャフト110の小径雄螺子部112には、バネ調整ノブ114が螺合している。また、小径雄螺子部112には、上側圧縮コイルバネ115が挿通されており、その上側圧縮コイルバネ115がバネ調整ノブ114とヘッドキャップ106との間で突っ張り状態になっている。なお、バネ調整ノブ114は、本発明の「第1位置調整機構」に設けられた「上側バネ受部」に相当する。また、小径雄螺子部112とバネ調整ノブ114との間の螺合構造が、本発明の「第1位置調整機構」に設けられた「圧縮量調整螺合機構」に相当する。なお、本実施形態のバネ調整ノブ114は、例えば、2つのミニノブを積み重ねた構造をなしているが、1つミニノブで構成してもよい。
一方、小径軸部113には、下側圧縮コイルバネ116が挿通されており、その下側圧縮コイルバネ116が連結突部25と支持円筒部107との間で突っ張り状態になっている。なお、下側圧縮コイルバネ116の両端部は、連結突部25のザグリ孔と、支持円筒部107の下端部に形成されたザグリ孔とに受容されている。ここで、連結突部25は、本発明の「第1位置調整機構」に設けられた「下側バネ受部」に相当する。
下側圧縮コイルバネ116は、高摩擦重送規制部材20を回転駆動ベルト83の搬送面に近づける方向(下方)を向いた弾発力(以下、適宜「下向弾発力」という)を第1直動シャフト110に付与している。一方、上側圧縮コイルバネ115は、高摩擦重送規制部材20を回転駆動ベルト83の搬送面から離す方向(上方)を向いた弾発力(以下、適宜「上向弾発力」という)を第1直動シャフト110に付与している。
ここで、第1直動支持機構100の作用を説明する。高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間に薄形搬送物Wが進入して高摩擦重送規制部材20を押し上げた場合には、下側圧縮コイルバネ116の下向弾発力から、上側圧縮コイルバネ115の上向弾発力を差し引いた差分の弾発力(以下、適宜「合成弾発力」という)が薄形搬送物Wにかかる。その合成弾発力が、高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間を薄形搬送物Wが一度に複数通過することを規制する抵抗力として作用して、薄形搬送物Wの1つのみの通過を許容する。
詳細には、積層載置部80の下端側から回転駆動ベルト83との摩擦接触によって薄形搬送物Wを抜き出す場合、複数の薄形搬送物Wが重なった状態で高摩擦重送規制部材20に向かう。これら複数の薄形搬送物Wが、高摩擦重送規制部材20を持ち上げつつ回転駆動ベルト83との間に進入しとしても、薄形搬送物W同士の摩擦力は、高摩擦重送規制部材20と薄形搬送物Wとの間の摩擦力や、回転駆動ベルト83と薄形搬送物Wとの間の摩擦力に比べて小さいので、回転駆動ベルト83と摩擦接触している最下部の薄形搬送物Wと、その上に重なった薄形搬送物Wとが分離される。即ち、最下部の薄形搬送物Wは、回転駆動ベルト83の回転によって高摩擦重送規制部材20の前方に抜き出されるのに対し、最下部の薄形搬送物Wに重なった薄形搬送物Wは、高摩擦重送規制部材20(摺接リング23)との摩擦力によって引き止められる。これにより、高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間を通過する薄形搬送物Wを最下部の1つだけに絞る(1つずつ捌いて送給する)ことができる。
また、合成弾発力に抗して、予め定められた所定複数以上の薄形搬送物Wが同時に高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間に進入しようとすると、高摩擦重送規制部材20と一体の連結突部25がボトムキャップ108と当接し、高摩擦重送規制部材20が、その直動範囲の上端限界位置に位置決めされる。これにより、所定複数以上の薄形搬送物Wが一度に高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間に進入して重送されることを禁止することができる。
ここで、バネ調整ノブ114の螺合操作によって、下側圧縮コイルバネ116と上側圧縮コイルバネ115(以下、両圧縮コイルバネ115,116」という)の弾性変形量は共に変更されるが、下向弾発力と上向弾発力は互いに逆向きなので、上向弾発力の増減分と下向弾発力の増減分とが相殺される。従って、薄形搬送物Wが高摩擦重送規制部材20を押し上げながら回転駆動ベルト83との間に入り込んだときに受ける合成弾発力は、両圧縮コイルバネ115,116の弾性変形量に拘わらず同一になる。
一方、バネ調整ノブ114の螺合操作により、両圧縮コイルバネ115,116の弾性変形量が変更されれば、下向弾発力と上向弾発力とが同一になって釣り合った状態における高摩擦重送規制部材20の位置(以下、「弾発力均衡位置」という)は上下に変化する。具体的には、バネ調整ノブ114の螺合操作によって、両圧縮コイルバネ115,116の弾性変形量を大きくすると、弾発力均衡位置が上昇し(高摩擦重送規制部材20が回転駆動ベルト83から離れ)、両圧縮コイルバネ115,116の弾性変形量を小さくすると、弾発力均衡位置が下降する(高摩擦重送規制部材20が回転駆動ベルト83に接近する)。このとき、下向弾発力の増減分と上向弾発力の増減分とが相殺されるから、バネ調整ノブ114の螺合操作により変更される高摩擦重送規制部材20の弾発力均衡位置に拘わらず、弾発力均衡位置から高摩擦重送規制部材20が押し上げられたときの合成弾発力の変化を一定にすることができる。
これにより、比較的薄い薄形搬送物W(例えば、カット紙)用に高摩擦重送規制部材20の弾発力均衡位置を、比較的低い位置(回転駆動ベルト83に近い位置)に配置した場合も、比較的厚い薄形搬送物W(例えば、冊子)用に高摩擦重送規制部材20の弾発力均衡位置を、比較的高い位置(回転駆動ベルト83から離れた位置)に移動した場合も、薄形搬送物Wが高摩擦重送規制部材20を押し上げながら回転駆動ベルト83との間に入り込んだときに受ける合成弾発力が変わらないように調整することが可能になる。また、同じ厚さの薄形搬送物Wに対し、バネ調整ノブ114の螺合操作にて、上側圧縮コイルバネ115及び下側圧縮コイルバネ116の弾性変形量を変更することで、その薄形搬送物Wが高摩擦重送規制部材20を押し上げながら回転駆動ベルト83との間に入り込んだときに受ける合成弾発力を適宜変更することもできる。なお、第1直動支持機構100は、本発明の「第1位置調整機構」に相当する。
ここで、本実施形態では、薄形搬送物Wが高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間に狭持されていない未挟持状態において、高摩擦重送規制部材20のうち、回転駆動ベルト83に向かって膨らんだ摺接円弧部23Aの最下点P1が、回転駆動ベルト83の搬送面と丁度接するように弾発力均衡位置が調整されている(図11参照)。以上が、第1直動支持機構100の作用である。
第1固定ベース101のうち、第1シャフト支持盤103は、送給方向D1と平行かつ第1直動シャフト110と直交する回転軸J1(図6参照)回りで、前面壁102に対して傾動可能となっている。具体的には、前面壁102と第1シャフト支持盤103との間には、一方から他方に向かって突出した軸体(図示せず)と、その軸体を回転可能に支持した軸受部(図示せず)とが備えられており、その軸体を中心にして第1シャフト支持盤103が傾動可能となっている。
図4に示すように、前面壁102のうち送給直交方向D2の一端側には、固定突出盤120が設けられている。固定突出盤120は、前面壁102から前方に突出しており、第1シャフト支持盤103における送給直交方向D2の一端寄り部分に上方から対向している。図5に示すように、第1シャフト支持盤103と固定突出盤120には、それぞれボルト挿通孔103B,120Aが貫通形成されており、第1シャフト支持盤103の下方から両ボルト挿通孔103B,120Aに挿通されたボルトB3が、固定突出盤120の上方に突出している。そのボルトB3における固定突出盤120の上方部分には、上述したバネ調整ノブ114と同一構造の角度調整ノブ121が螺合している。また、ボルトB3には、圧縮コイルバネ122が挿通されており、その圧縮コイルバネ122が、第1シャフト支持盤103の上面と固定突出盤120の下面(詳細には、ボルト挿通孔120Aを段付き状に拡径してなるザグリ孔)との間で突っ張り状態になっている。そして、角度調整ノブ121を螺合操作すると、回転軸J1(図6参照)を中心にして第1シャフト支持盤103の一側部が固定突出盤120に対して接離するように傾動して、回転駆動ベルト83の搬送面に対する高摩擦重送規制部材20の中心軸の傾斜角度を変更することができる。この機構は、送給直交方向D2の一端から他端に向かって厚みが徐変している薄形搬送物Wを送給する場合に有効である。
図3に示すように、送給装置本体11のうち、第1直動支持機構100の後方位置には、第2直動支持機構200が設けられている。第2直動支持機構200は、第2固定ベース201(図4参照。本発明の「固定ベース」に相当する)によって第2直動シャフト210(本発明の「直動シャフト」に相当する)を上下動可能に支持した構造になっている。そして、第2直動シャフト210の下端部に、1対の低摩擦重送規制部材32を備えた前方捌き部材30が固定されている。
第2固定ベース201は、送給直交方向D2で対向した1対の支持側壁202(図4参照)と、1対の支持側壁202を跨いでそれらの上面に固定された第2シャフト支持盤203とを備えている。第2シャフト支持盤203の下方には、1対のナットブロック204(図4参照)が配置されている。ナットブロック204は、第2シャフト支持盤203を上方から貫通したボルトB4(図8参照)の下端部にそれぞれ螺合している。
図5に示すように、1対の各支持側壁202は、上下方向に延びた垂直部202Aと、垂直部202Aの上端から前方に突出した水平部202Bとを有しており、それら、水平部202Bの前端部と、垂直部202Aの下端部とが装置支持梁H1,H3にそれぞれ係止されている。詳細には、垂直部202Aの下端部と水平部202Bの前端部とには、それぞれ直角切欠部202Cが形成されており、それら直角切欠部202Cが、装置支持梁H1,H3の角部と凹凸係合している。
また、図8に示すように、ナットブロック204の対角位置にも、1対の直角切欠部204Aが形成されており、それら直角切欠部204Aが上述した装置支持梁H1,H3の角部にそれぞれ凹凸係合している。即ち、装置支持梁H1を、支持側壁202の水平部202Bとナットブロック204との間で挟み込むことで、第2固定ベース201が装置支持梁H1に固定されている。
第2固定ベース201の後面には、後方捌き機構40が取り付けられている。図4に示すように、後方捌き機構40は、送給装置本体11における送給直交方向D2の両端側に対をなして設けられている。詳細には、第2固定ベース201における1対の支持側壁202には、横長矩形状をなした1対の機構支持板206が、片持ち状態で取り付けられている。これら機構支持板206は、各支持側壁202の後面から直角に張り出して、送給直交方向D2で対向している。これら1対の機構支持板206に、それぞれ後方捌き機構40が取り付けられている。
後方捌き機構40は、固定補助ガイド41を備えている。図5に示すように、固定補助ガイド41は、全体として送給方向D1の前方に向かって下り傾斜した帯板状をなしている。固定補助ガイド41の下面は、比較的急峻な角度で前下がりに傾斜した第1補助傾斜ガイド面41Aと、第1補助傾斜ガイド面41Aの前端部から、比較的緩い角度で前下がりに傾斜した第2補助傾斜ガイド面41Bとを有している。
図7に示すように、固定補助ガイド41のうち、送給直交方向D2における内側の側縁部からは、直立板43が起立している。直立板43は、固定補助ガイド41に対して直角に起立した縦長の矩形板状をなしている。図9に示すように、直立板43の上部には、その長手方向に延びた1対の長孔43Aが形成されており、これら長孔43Aに挿通された1対のボルトB7によって、機構支持板206と直立板43とが共締めされている。また、後方捌き機構40は、機構支持板206に対する固定位置を、長孔43Aの範囲で変更させることができる。即ち、固定補助ガイド41の上下方向の位置及び、第2補助傾斜ガイド面41Bの傾斜角度を、長孔43Aの範囲で任意に変更することが可能となっている。なお、上記した固定補助ガイド41及び直立板43は、所定の形状に打ち抜いた板金を曲げ加工して形成されている。
固定補助ガイド41の前方には、ヒンジ50を介して回動部材60が取り付けられている。図7に示すように、ヒンジ50は、送給直交方向D2で対向した1対のヒンジ対向壁51と、それらヒンジ対向壁51の後端縁同士を連絡した後端連絡壁52とを有している。1対のヒンジ対向壁51のうちの一方が直立板43に重ねられており、それらヒンジ対向壁51と直立板43とが上下1対のボルトB8(図9参照)によって共締めされている。ここで、図9に示すように、一方のヒンジ対向壁51には、第2補助傾斜ガイド面41Bと平行な方向に長くなった上下1対の長孔51Aが形成されており、ボルトB8がそれら長孔51Aに挿通されている。これにより、直立板43に対するヒンジ50の取り付け位置を、長孔51Aの範囲で前後に変更することができる。
ヒンジ50における後端連絡壁52の後面には、溶接ナット53が固定されており、後端連絡壁52を貫通して延びた調整ボルト54が、その溶接ナット53と螺合している。調整ボルト54は、軸心部にボルト挿通孔541Aを有するアウタボルト541と、ボルト挿通孔541Aに直動可能に挿通されたインナボルト542とを有し、アウタボルト541が溶接ナット53と螺合し、インナボルト542がアウタボルト541の両端部から突出している。また、ボルト挿通孔541Aの基端部内面には雌螺子部541Bが形成されており、この雌螺子部541Bに対するインナボルト542の螺合操作によって、インナボルト542がアウタボルト541に対して直動可能となっている。また、溶接ナット53に対するアウタボルト541の螺合操作によって、調整ボルト54全体がヒンジ50に対して直動可能となっている。
1対のヒンジ対向壁51は、送給直交方向D2から見てL字形をなしており、そのL字の横辺前端部が直立板43の前方に突出している。また、ヒンジ対向壁51の前端部にはそれぞれヒンジ軸56が取り付けられており、これら1対のヒンジ軸56によって回動部材60が回動可能に軸支されている(図3参照)。なお、上述したヒンジ50及び、次述する回動部材60は、所定の形状に打ち抜いた板金を曲げ加工してなる板金加工品である。
図7に示すように、回動部材60は、送給直交方向D2で対向した1対の側部対向壁61と、それら側部対向壁61の後端縁同士を連絡した後端連絡壁62とを有し、後端連絡壁62の下端縁から前方に向かって帯板状の回動補助ガイド63が延びている。回動部材60は、1対のヒンジ対向壁51の間に挟まれており、1対の側部対向壁61の下端寄り位置がヒンジ軸56によって軸支されて、送給直交方向D2と平行な軸回りで回動可能となっている。
回動補助ガイド63は、固定補助ガイド41の前方延長線上に延びており、その固定補助ガイド41と、後述する低摩擦重送規制部材32との間に配置されている。回動補助ガイド63の下面は、第2補助傾斜ガイド面41Bの前端部から、前方(低摩擦重送規制部材32)に向かうに従って回転駆動ベルト83に接近するように(前下がりに)傾斜した中継傾斜ガイド面63Aとなっている。
回動部材60の後端連絡壁62には、長孔62A(図10参照)が形成されており、その長孔62Aに調整ボルト54におけるインナボルト542が挿通されている。また、インナボルト542の先端部に固定されたダブルナット55により、長孔62Aに対するインナボルト542の抜け止めがなされている。
図9に示すように、インナボルト542の外側には圧縮コイルバネ57が挿通されている。アウタボルト541の先端部にはバネ受座金58が取り付けられており、そのバネ受座金58と回動部材60の後端連絡壁62との間で圧縮コイルバネ57が突っ張り状態になっている。この圧縮コイルバネ57の弾発力により、中継傾斜ガイド面63Aが前下がりになるように、回動部材60(回動補助ガイド63)がその回動範囲の下端位置に付勢されている。ここで、図9に示す状態では、回動補助ガイド63が固定補助ガイド41の前端縁に当接することで、回動部材60がその回動範囲の下端位置に位置決めされている。
インナボルト542を固定した状態でアウタボルト541を螺合操作することで、圧縮コイルバネ57の弾性変形量、即ち、回動部材60に対する付勢力を調整することができる。また、アウタボルト541を固定した状態でインナボルト542を螺合操作することで、回動部材60の回動範囲の下端位置、換言すれば、回転駆動ベルト83との間に薄形搬送物Wを挟持していない未挟持状態における中継傾斜ガイド面63Aの傾斜角度を調整することができる。以上が、後方捌き機構40の説明である。
第2固定ベース201のうち、1対のナットブロック204で挟まれた位置には、シャフト支持筒205が設けられている。図6に示すように、シャフト支持筒205は、第2シャフト支持盤203の送給直交方向D2の中央位置から垂下しており、そのシャフト支持筒205の軸心部と第2シャフト支持盤203とを、シャフト挿通孔201Aが貫通している。
第2直動シャフト210は、シャフト挿通孔201Aに上下動可能に挿通されており、第2シャフト支持盤203の上方及びシャフト支持筒205の下方に突出している。
第2直動シャフト210は、軸方向の中間部より下側の大径軸部211と、軸方向の中間部より上側の小径雄螺子部212とから構成されている。大径軸部211の外周面とシャフト挿通孔201Aの内周面との間には、図示しないボールスプライン機構が設けられており、第2直動シャフト210が第2固定ベース201に対して回転不能かつ上下動可能に支持されている。
小径雄螺子部212の軸方向中間部には、バネ調整ノブ213が取り付けられている。バネ調整ノブ213は、上記したバネ調整ノブ114と同一構造をなしており、第2直動シャフト210と一体に直動すると共に、螺合操作によって小径雄螺子部212の軸方向に移動可能となっている。そして、小径雄螺子部212に挿通された上側圧縮コイルバネ214が、バネ調整ノブ213と第2シャフト支持盤203(シャフト挿通孔201Aの上端開口縁)との間で突っ張り状態になっている。バネ調整ノブ213は、本発明の「第2位置調整機構」に設けられた「上側バネ受部」に相当する。また、小径雄螺子部212とバネ調整ノブ213との間の螺合構造が、本発明の「第2位置調整機構」に設けられた「圧縮量調整螺合機構」に相当する。
小径雄螺子部212の上端部には、下端ストッパ216が取り付けられている。下端ストッパ216は、バネ調整ノブ213と同一構造をなしており、第2直動シャフト210と一体に直動すると共に、螺合操作によって小径雄螺子部212の軸方向に移動可能となっている。下端ストッパ216は、第2固定ベース201に固定されたストッパ受部220と当接することで、第2直動シャフト210を直動範囲の下端限界位置に位置決めする。なお、小径雄螺子部212と下端ストッパ216との間の螺合構造が、本発明の「下端ストッパ調整機構」に相当する。
ストッパ受部220は、帯状板金の一端寄り部分を直角曲げした構造をなしている。ストッパ受部220のうち、上下方向に延びた長板部221の下端部が第2シャフト支持盤203の後面に螺子止めされており、長板部221の上端部から前方に突出した短板部222には、前方に開放した切欠部222Aが形成されている。その切欠部222Aには小径雄螺子部212が直動可能に挿通されており、下端ストッパ216が短板部222の上面に突き当てられている。
第2直動シャフト210の下端部には、前方捌き部材30を取り付けるためのブラケット217が固定されている。図11に示すように、ブラケット217は、送給直交方向D2に延びた帯板217Aを有し、その帯板217Aに第2直動シャフト210の下端面が突き当てられている。この帯板217Aを下方から貫通したボルトB6が、第2直動シャフト210の軸心部に螺合することで、ブラケット217が第2直動シャフト210に固定されている。
帯板217Aの後端縁のうち、送給直交方向D2の両端部からは摺接板217Cが垂直に起立している。これら摺接板217Cは、第2固定ベース201における1対の支持側壁202(より詳細には、垂直部202Aの前面)に宛がわれており、第2直動シャフト210の上下動に伴い、垂直部202Aの前面と摺接可能となっている。
帯板217Aの後端縁のうち、送給直交方向D2の中央部からは、取付板217Bが垂下しており、その取付板217Bには、前方捌き部材30が取り付けられている。
図6に示すように、第2直動シャフト210の大径軸部211には下側圧縮コイルバネ215が挿通されており、その下側圧縮コイルバネ215がブラケット217(帯板217A)とシャフト挿通孔201Aの下端開口縁との間で突っ張り状態になっている。ブラケット217は、本発明の「第2位置調整機構」に設けられた「下側バネ受部」に相当する。
下側圧縮コイルバネ215は、前方捌き部材30を回転駆動ベルト83の搬送面に近づける方向(下方)を向いた弾発力(以下、適宜「下向弾発力」という)を第2直動シャフト210に付与している。一方、上述した上側圧縮コイルバネ214は、前方捌き部材30を回転駆動ベルト83の搬送面から離す方向(上方)を向いた弾発力(以下、適宜「上向弾発力」という)を第2直動シャフト210に付与している。また、前方捌き部材30と回転駆動ベルト83との間に薄形搬送物Wが挟持されていない未挟持状態では、下端ストッパ216がストッパ受部220に当接して、第2直動シャフト210が直動範囲の下端位置に位置決めされている。本実施形態では、未挟持状態において、前方捌き部材30と回転駆動ベルト83との間に、初期隙間Sが形成されるように調整されている。この初期隙間Sは、下端ストッパ216の螺合操作によって任意に調整することができる。また、未挟持状態で、前方捌き部材30が回転駆動ベルト83に接するように配置することも可能である。
前方捌き部材30は、所定の形状に打ち抜かれた板金を曲げ加工してなる板金加工品である。具体的には、前方捌き部材30は、送給直交方向D2に延びた連絡板31(図7参照)の両端部から、回転駆動ベルト83に向かって1対の低摩擦重送規制部材32が垂れた門形構造をなしている。連絡板31は、ブラケット217における取付板217Bの後面に重ねられて螺子止めされている。ここで、低摩擦重送規制部材32(前方捌き部材30)の材質は金属に限定するものではなく、高摩擦重送規制部材20(摺接リング23)より小さい摩擦係数で薄形搬送物Wに摩擦接触するものであればよく、低摩擦係数の樹脂(例えば、フッ素樹脂)で構成してもよい。また、例えば、低摩擦重送規制部材32のうち、薄形搬送物Wと摺接し得る下面(後述するベルト平行面36A及び傾斜ガイド面35A)を、高摩擦重送規制部材20より小さい摩擦係数となるように表面処理加工したものでもよい。
図7に示すように、1対の低摩擦重送規制部材32は、高摩擦重送規制部材20の両側方でかつ回転駆動ベルト83の上方に配置されている。また、図8に示すように、各低摩擦重送規制部材32は、高摩擦重送規制部材20の側方から見たときに、略L字形をなすように屈曲した帯板状をなしている。詳細には、低摩擦重送規制部材32は、連絡板31から回転駆動ベルト83に向かって垂下した垂直板部33と、垂直板部33の下端部から前側斜め下方に延びた急傾斜板部34と、急傾斜板部34の下端部から前側斜め下方に延びた緩傾斜板部35と、緩傾斜板部35の下端部から回転駆動ベルト83と平行に延びた平行板部36とから構成されている。平行板部36の下面は、回転駆動ベルト83の搬送面と平行なベルト平行面36Aとなっている。緩傾斜板部35の下面は、ベルト平行面36Aの後端から斜め上方に延びた傾斜ガイド面35Aとなっている。なお、急傾斜板部34の後面34Aは、傾斜ガイド面35Aの後端部から傾斜ガイド面35Aよりも急峻な角度で斜め上方に延びて、垂直板部33の後面33Aと連絡している。
図11に示すように、ベルト平行面36Aは、側方(送給直交方向D2)から見ると、高摩擦重送規制部材20と重なる位置から高摩擦重送規制部材20の後方(積層載置部80側)に突出した位置まで、回転駆動ベルト83と平行かつ摺接円弧部23Aと交差して延びており、そのベルト平行面36Aの後端から斜め上方に向かって傾斜ガイド面35Aが延びている。傾斜ガイド面35Aは、全体が高摩擦重送規制部材20より後方(積層載置部80側)に位置しており、高摩擦重送規制部材20よりも先に、回転駆動ベルト83によって抜き出された薄形搬送物Wと当接するように配置されている。ここで、水平面に対する急傾斜板部34の後面34Aの傾斜角度は、例えば、60度となっており、水平面に対する傾斜ガイド面35Aの傾斜角度は、例えば、20度となっている。
前方捌き部材30を支持した第2直動支持機構200の作用について説明する。前方捌き部材30の低摩擦重送規制部材32と回転駆動ベルト83との間に薄形搬送物Wとしてが進入して前方捌き部材30を押し上げた場合には、下側圧縮コイルバネ215の下向弾発力から、上側圧縮コイルバネ214の上向弾発力を差し引いた差分の合成弾発力がその薄形搬送物Wにかかる。
ここで、バネ調整ノブ213の螺合操作によって、上側圧縮コイルバネ214及び下側圧縮コイルバネ215(以下、「両圧縮コイルバネ214,215」という)の弾性変形量は共に変更される。即ち、バネ調整ノブ213を締め付ける方向に螺合操作すると、両圧縮コイルバネ214,215の弾性変形量は共に大きくなり、バネ調整ノブ213を緩める方向に螺合操作すると、両圧縮コイルバネ214,215の弾性変形量は、共に小さくなる。このとき、上側圧縮コイルバネ214の弾発力の増減分と、下側圧縮コイルバネ215の弾発力の増減分とが相殺されるから、圧縮コイルバネ214,215の合成弾発力は、両圧縮コイルバネ214,215の弾性変形量に拘わらず同一になる。
一方、バネ調整ノブ213の螺合操作によって、両圧縮コイルバネ214,215の弾性変形量が変更されれば、それらの弾発力が同一になって釣り合った状態における低摩擦重送規制部材32の位置(以下、「弾発力均衡位置」という)は変化する。具体的には、両圧縮コイルバネ214,215の弾性変形量が大きくなれば、弾発力均衡位置は上昇し(低摩擦重送規制部材32が回転駆動ベルト83から離れ)、両圧縮コイルバネ214,215の弾性変形量が小さくなれば、弾発力均衡位置は下降する(低摩擦重送規制部材32が回転駆動ベルト83に接近する)。このとき、両圧縮コイルバネ214,215の合成弾発力は、両圧縮コイルバネ214,215の弾性変形量に拘わらず同一であるから、バネ調整ノブ213の螺合操作により変更される低摩擦重送規制部材32の弾発力均衡位置に拘わらず、弾発力均衡位置から低摩擦重送規制部材32が押し上げられたときの両圧縮コイルバネ214,215の合成弾発力の変化を一定にすることができる。
これにより、比較的薄い薄形搬送物W(例えば、カット紙)用に低摩擦重送規制部材32の弾発力均衡位置を、バネ調整ノブ213の螺合操作によって比較的低い位置(回転駆動ベルト83に近い位置)に配置した場合も、比較的厚い薄形搬送物W(例えば、冊子)用に低摩擦重送規制部材32の弾発力均衡位置を、バネ調整ノブ213の螺合操作によって比較的高い位置(回転駆動ベルト83から離れた位置)に移動した場合も、薄形搬送物Wが低摩擦重送規制部材32を押し上げながら回転駆動ベルト83との間に入り込んだときに受ける合成弾発力が変わらないように調整することが可能になる。また、同じ厚さの薄形搬送物Wに対し、バネ調整ノブ213の螺合操作にて、両圧縮コイルバネ214,215の弾性変形量を変更することで、その薄形搬送物Wが低摩擦重送規制部材32を押し上げながら回転駆動ベルト83との間に入り込んだときに受ける合成弾発力を適宜変更することもできる。なお、第2直動支持機構200は、本発明の「第2位置調整機構」に相当する。
ここで、低摩擦重送規制部材32を弾発力均衡位置にした状態から、下端ストッパ216を螺合操作して第2直動シャフト210を上方に直動させると、低摩擦重送規制部材32が上方に移動すると共に、上側圧縮コイルバネ214の上向弾発力が減少し、下側圧縮コイルバネ215の下向弾発力が増加する。即ち、回転駆動ベルト83との間に薄形搬送物Wを挟んでいない未挟持状態で、低摩擦重送規制部材32を弾発力均衡位置より上方位置に配置することができると共に、その低摩擦重送規制部材32と回転駆動ベルト83との間に進入した薄形搬送物Wが、低摩擦重送規制部材32を押し上げた場合に、薄形搬送物Wが受ける合成弾発力を、弾発力均衡位置に配置したときよりも大きくすることができる。このときの第2直動シャフト210とこれに螺合した下端ストッパ21は、本発明の「第2位置調整機構」に相当する。
本実施形態の構成は以上である。次に、本実施形態の薄形搬送物送給装置10の動作説明を行う。まずは、薄形搬送物Wとして、冊子Waのようにブッキングされたものではなく、1枚ずつバラバラなカット紙Wbを送給する場合の動作説明を行う。
複数のカット紙Wbを重ねた状態で積層載置部80のローラコンベヤ90に載置すると、それら複数のカット紙Wbがローラコンベヤ90上を滑走して前方に移動し、回転駆動ベルト83の上に載る。
図1に示すように、積み重なったカット紙Wbの上層部分は、固定補助ガイド41の第1補助傾斜ガイド面41Aに突き当たり、その第1補助傾斜ガイド面41Aに沿って前端部がずらされる。また、積み重なったカット紙Wbの中層部分は、固定補助ガイド41の第2補助傾斜ガイド面41B及び、回動補助ガイド63の中継傾斜ガイド面63Aに突き当たり、それら第2補助傾斜ガイド面41B及び中継傾斜ガイド面63Aに沿って前端部がずらされる。ここで、第2補助傾斜ガイド面41B及び中継傾斜ガイド面63Aは、第1補助傾斜ガイド面41Aより緩い傾斜角で前下がりに傾斜しているから、中層部分では、上層部分よりもカット紙Wbの前端部を大きくずらすことができる。
また、回動補助ガイド63は、送給直交方向D2と平行な軸回りで上下方向に回動可能であると共に、圧縮コイルバネ57によって回動範囲の下端位置に付勢されているので、比較的狭くなった回動補助ガイド63と回転駆動ベルト83との間で、カット紙Wbの詰まりを発生させることなく、カット紙Wbの前端部をずらすことができる。また、回動補助ガイド63と回転駆動ベルト83との間に進入したカット紙Wbが、回動補助ガイド63を押し上げた場合に、圧縮コイルバネ57の弾発力がカット紙Wbに付与される。これにより、カット紙Wbを回転駆動ベルト83側に押さえ付けることができる。
積み重なったカット紙Wbのうち、回動補助ガイド63の下方を通過して前方に抜き出された下層部分は、図12に示すように、低摩擦重送規制部材32における急傾斜板部34の後面34A及び緩傾斜板部35の傾斜ガイド面35Aに当接して、それらの傾斜に沿って前端部同士がずらされる。また、低摩擦重送規制部材32のベルト平行面36Aと回転駆動ベルト83の搬送面との間に形成された初期隙間S(図11参照)に、複数枚のカット紙Wbが進入する。
図13に示すように、初期隙間Sに進入した複数枚のカット紙Wbの一部は、高摩擦重送規制部材20を押し上げながら、その高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間に進入する。このとき、カット紙Wbには、下側圧縮コイルバネ116の下向弾発力から上側圧縮コイルバネ115の上向弾発力を差し引いた差分の合成弾発力がかかり、その合成弾発力が、高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間を一度に複数のカット紙Wbが通過することを規制する抵抗力となる。
詳細には、回転駆動ベルト83と摩擦接触した最下部のカット紙Wbが、回転駆動ベルト83の回転によって前方に抜き出され、最下部のカット紙Wbの上に重なったカット紙Wbが、高摩擦重送規制部材20(摺接リング23)との摩擦接触によって引き止められる。即ち、高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間に重なった状態で進入した複数枚のカット紙Wbから、最下部のカット紙Wbだけが分離して、高摩擦重送規制部材20の前方に引き抜かれ、カット紙Wbが一度に複数、高摩擦重送規制部材20と回転駆動ベルト83との間を通過することが禁止される。
ここで、低摩擦重送規制部材32と回転駆動ベルト83との間に進入した複数枚のカット紙Wbによって、前方捌き部材30の全体が押し上げられる場合がある。この場合には、下側圧縮コイルバネ215の下向弾発力から、上側圧縮コイルバネ214の上向弾発力を差し引いた合成弾発力が、高摩擦重送規制部材20(摺接円弧部23A)の最下点P1の手前でカット紙Wbに付与される。これにより、回転駆動ベルト83上で重なり合ったカット紙Wbの数が少なくなって、それらカット紙Wbの自重による回転駆動ベルト83への押し付け力が弱まった場合でも、最下部のカット紙Wbと回転駆動ベルト83とを確実に摩擦接触させることができ、回転駆動ベルト83上でカット紙Wbが滑る「空送り現象」を防止することができる。
最下部のカット紙Wbが、高摩擦重送規制部材20の前方に引き抜かれると、そのカット紙Wbの上に重なっていた次のカット紙Wbが、回転駆動ベルト83と摩擦接触して高摩擦重送規制部材20の前方に抜き出されると共に、その上に重なった次のカット紙Wbが、高摩擦重送規制部材20によって引き止められる。この動作の繰り返しによって、積層載置部80に積み上げられたカット紙Wbが、下端側から順次に1つずつ捌かれて前方に送給される。以上が、カット紙Wbを送給する場合の動作説明である。なお、カット紙Wbだけでなく、冊子Wa以外の薄形搬送物Wは、同様にして送給することができる。
ここで、上記した例では、高摩擦重送規制部材20によって薄形搬送物W(カット紙Wb)を1枚ずつ捌いて抜き出す前に、低摩擦重送規制部材32が、複数の薄形搬送物Wの前端部をずらしたり、回転駆動ベルト83に押し付けたりしており、高摩擦重送規制部材20と低摩擦重送規制部材32とが協働しているが、低摩擦重送規制部材32を薄形搬送物Wと接触不可能な位置まで上方に引き上げて、低摩擦重送規制部材32が薄形搬送物Wの送給に関与しないようにしてもよい。
次に、薄形搬送物Wとして、冊子Waを送給する場合の動作説明を行う。冊子Waを送給する場合には、高摩擦重送規制部材20と低摩擦重送規制部材32とのうち、低摩擦重送規制部材32だけを冊子Waに摩擦接触させ、高摩擦重送規制部材20が冊子Waと接触しないようにする。その理由は、高摩擦重送規制部材20が冊子Waと接触すると、その摩擦係数の大きさのために、冊子Waの内部で紙同士がズレてしまい、冊子Waの前端部が反り上がったり、冊子Waの表紙が捲れることがあるからである。
具体的には、図14に示すように、バネ調整ノブ114の螺合操作によって高摩擦重送規制部材20の弾発力均衡位置を引き上げて、回転駆動ベルト83との間に冊子Waの1冊分の厚さ以上の隙間を形成しておき、高摩擦重送規制部材20が、低摩擦重送規制部材32と回転駆動ベルト83との間に挟まれた冊子Waと接触不可能な状態にしておく。
次に、冊子Waの背部(綴じ部)が送給装置本体11側を向くように揃えて積み重ねて、積層載置部80に載置する。すると、積み重なった冊子Waがローラコンベヤ90上を滑走して前方に移動し、回転駆動ベルト83の上に載る。
図1に示すように、積み重なった冊子Waの上層部分は、固定補助ガイド41の第1補助傾斜ガイド面41Aに突き当たり、その第1補助傾斜ガイド面41Aに沿って前端部がずらされる。また、積み重なった冊子Waの中層部分は、固定補助ガイド41の第2補助傾斜ガイド面41B及び、回動補助ガイド63の中継傾斜ガイド面63Aに突き当たり、それら第2補助傾斜ガイド面41B及び中継傾斜ガイド面63Aに沿って前端部がずらされる。ここで、第2補助傾斜ガイド面41B及び中継傾斜ガイド面63Aは、第1補助傾斜ガイド面41Aより緩い傾斜角で前下がりに傾斜しているから、中層部分では、上層部分よりも冊子Waの前端部を大きくずらすことができる。
また、回動補助ガイド63は、送給直交方向D2(回転駆動ベルト83の幅方向)と平行な軸回りで上下方向に回動可能であると共に、圧縮コイルバネ57によって回動範囲の下端位置に付勢されているので、比較的狭くなった回動補助ガイド63と回転駆動ベルト83との間で、冊子Waの詰まりを発生させることなく、冊子Waの前端部をずらすことができる。また、回動補助ガイド63と回転駆動ベルト83との間に進入した冊子Waが、回動補助ガイド63を押し上げた場合に、圧縮コイルバネ57の弾発力が冊子Waに付与される。これにより、冊子Waを回転駆動ベルト83に押し付けることができると共に、冊子Waの前端部(綴じ部)の膨らみを押し潰して平坦化することができる。
回転駆動ベルト83上で積み重なった冊子Waのうち、回動補助ガイド63の下方を通過して前方に抜き出された下層部分は、図14に示すように、低摩擦重送規制部材32における急傾斜板部34の後面34A及び緩傾斜板部35の傾斜ガイド面35Aに当接して、それらの傾斜に沿って前端部同士がずらされる。また、低摩擦重送規制部材32のベルト平行面36Aと回転駆動ベルト83の搬送面との間に形成された初期隙間S(図11参照)に、最下部の冊子Waが進入する。
このとき、最下部の冊子Waは、前方捌き部材30の全体を押し上げながら初期隙間Sに進入する。すると、冊子Waには、下側圧縮コイルバネ215の下向弾発力から、上側圧縮コイルバネ214の上向弾発力を差し引いた合成弾発力がかかる。この合成弾発力は、ベルト平行面36Aと回転駆動ベルト83との間に複数の冊子Waが重なった状態で進入することを規制する抵抗力として作用すると共に、低摩擦重送規制部材32と回転駆動ベルト83との間に進入した冊子Waを回転駆動ベルト83側に押し付ける押圧力として作用する。
これにより、最下部の冊子Waが回転駆動ベルト83と確実に摩擦接触して前方に送り出されると共に、その最下部の冊子Waの上に重なった次の冊子Waが、ベルト平行面36Aと回転駆動ベルト83との間に進入することが禁止され、傾斜ガイド面35Aに突き当たって停止する。即ち、回転駆動ベルト83上で積み重なった複数の冊子Waの中から、回転駆動ベルト83と摩擦接触した最下部の冊子Waだけが分離して、低摩擦重送規制部材32の前方に引き抜かれる(図15参照)。また、傾斜ガイド面35Aに突き当たって停止した次の冊子Waの前端部(綴じ部)は、高摩擦重送規制部材(摺接円弧部23A)の最下点P1の手前で、低摩擦重送規制部材32(傾斜ガイド面35A)によって押し潰されて平坦化される。
最下部の冊子Waが、低摩擦重送規制部材32の前方に引き抜かれると、その冊子Waに重なっていた次の冊子Waが、回転駆動ベルト83と摩擦接触して初期隙間Sに進入し、低摩擦重送規制部材32の前方に抜き出されると共に、その上に重なった次の冊子Waが、傾斜ガイド面35Aに突き当たって停止する。この動作の繰り返しによって、積層載置部80に積み上げられた冊子Wa群が、下端側から順次に1冊ずつ捌かれて前方に送給される。
ここで、低摩擦重送規制部材32のベルト平行面36A及び傾斜ガイド面35Aは共に金属面で構成されており、エラストマーで構成された高摩擦重送規制部材20の摺接円弧部23Aよりも小さい摩擦係数で冊子Waと摩擦接触するから、その摩擦接触によって、冊子Waの内部で紙同士がズレることはない。これにより、低摩擦重送規制部材32の前方に抜き出された冊子Waの前端部が反り上がったり、冊子Waの表紙が捲れるといったことを防止することができる。
また、低摩擦重送規制部材32は、ベルト平行面36Aの後端から斜め上方に延びた傾斜ガイド面35Aを備えており、その傾斜ガイド面35Aによって、最下部の冊子Waの上に重なった次の冊子Waの前端部の膨らみを押し潰すことができるから、最下部の冊子Waが引き抜かれたときに、ベルト平行面36Aと回転駆動ベルト83との間の初期隙間Sに、次の冊子Waをスムーズに進入させることができる。
また、低摩擦重送規制部材32は、下側圧縮コイルバネ215と上側圧縮コイルバネ214の合成弾発力によって最下部の冊子Waを回転駆動ベルト83に押し付けるから、回転駆動ベルト83上で重なり合った冊子Waの数が少なくなって、それら冊子Waの自重による回転駆動ベルト83への押し付け力が弱まった場合でも、最下部の冊子Waと回転駆動ベルト83とを確実に摩擦接触させることができる。これにより、回転駆動ベルト83上で冊子Waが滑る「空送り現象」を防止して、最後の1冊まで確実に送り出すことができる。以上が、冊子Waを送給する場合の動作説明である。
このように、本実施形態の薄形搬送物送給装置10によれば、回転駆動ベルト83より小さい摩擦係数で薄形搬送物Wに摩擦接触して、回転駆動ベルト83との間を通過する薄形搬送物Wを1つに絞る高摩擦重送規制部材20と、高摩擦重送規制部材20より小さい摩擦係数で薄形搬送物Wに摩擦接触して、回転駆動ベルト83との間を通過する薄形搬送物Wを1つに絞る1対の低摩擦重送規制部材32とを備え、それら高摩擦重送規制部材20と低摩擦重送規制部材32は、それぞれ別個に、上下方向の任意の位置に調整することが可能になっている。
そして、薄形搬送物Wの種類や厚みの違いに応じて、高摩擦重送規制部材20及び低摩擦重送規制部材32の上下方向の位置をそれぞれ任意に調整して、高摩擦重送規制部材20と低摩擦重送規制部材32の何れか一方だけを薄形搬送物Wに摩擦接触させたり、両者を協働させて捌くことが可能になる。これにより、薄形搬送物Wの種類や厚さの違いに柔軟に対応することが可能になり、従来より多種多様な薄形搬送物Wを送給することが可能になる。
また、低摩擦重送規制部材32が、送給直交方向D2における高摩擦重送規制部材20の両側方に配置されているので、薄形搬送物送給装置10の送給方向D1における大型化を抑制することができる。
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態において、低摩擦重送規制部材32のうち、垂直板部33の後面33Aとベルト平行面36Aとを連絡した屈曲面(後面34A及び傾斜ガイド面35A)を、回転駆動ベルト83に向かって膨らんだ円弧面に変更してもよい。
(2)上記実施形態では、低摩擦重送規制部材32は、高摩擦重送規制部材20の両側方位置に対をなして設けられていたが、回転駆動ベルト83の幅方向(送給直交方向D2)で対をなすように高摩擦重送規制部材を配置して、それら1対の高摩擦重送規制部材の間に低摩擦重送規制部材を配置してもよい。
(3)上記実施形態では、高摩擦重送規制部材20と、前方捌き部材30(低摩擦重送規制部材32)と、後方捌き機構40とを備えていたが、後方捌き機構40を設けずに、高摩擦重送規制部材20と前方捌き部材30(低摩擦重送規制部材32)だけを備えた構成にしてもよい。
(4)回転駆動ベルト83に吸引孔を設けておき、ポンプの吸引力で薄形搬送物Wを回転駆動ベルト83の上面に吸着させるようにしてもよい。