JP5521527B2 - 防水シートの敷設方法及び防水構造 - Google Patents

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Description

本発明は、ビル等の屋上等の構造物に、シート接合部材を介する等して防水シートを敷設する防水シートの敷設方法、及び、そのような方法により防水シートが敷設された防水構造の改良に関し、特に、防水シートに亀裂、破損等が生じた場合にも構造物への漏水を防止することに関するものである。
例えば、オフィスビルや学校等の屋上、バルコニー、ベランダ等の風雨に曝される構造物に防水施工する場合には、防水シートを下地となる構造物の躯体には直接は接着しないことにより、躯体の亀裂や振動、目地の挙動等の影響を受けることが少なく、地震等の際にも防水性を確保することができる、いわゆる絶縁工法(機械式固定工法)が採用されることがある。
この工法においては、表面に防水シートと同質の合成樹脂が被覆された鋼板等から成るシート接合部材を使用し、構造物の躯体のうち、床面から壁面にかけての立ち上がり部や入隅部、出隅部等には、例えば帯状の形状を有するシート接合部材を設置し、これらの入隅部等以外の箇所においては、例えばディスク状の形状を有するシート接合部材を所定のピッチで設置して、これらのシート接合部材を釘等の固定具で躯体に取付け、その後、これらのシート接合部材上から防水シートを敷設して、所要のシート接合部材に防水シートを溶着させて接合することにより、防水シートを、シート接合部材を介して構造物の躯体に固定する(例えば、特許文献1、2等参照)。
しかし、防水シートをシート接合部材に接合しても、長期間が経過すると、経年劣化や外気温の変化、風圧による伸縮等を原因とする疲労により、防水シートに亀裂や破損が生じる場合がある。この場合、従来は、防水シートが、シート接合部材に接合されている箇所を除いては、構造物の躯体や、構造物上に設置された断熱材の上に直接敷設されていたため、亀裂や破損が生じた箇所から構造物の躯体や断熱材、更には場合によっては室内にまで漏水するおそれがあった。
この問題を解決するためには、防水シートを上記シート接合部材に接合した構造を二重に設置することが考えられる。しかし、これでは、従来の2倍の量の作業や部材を必要とするため、手間を要するとともに、コストが嵩む問題がある。
この点、防水シートの下において断熱材を挟んで雨水を排出する樋を二重構造として一次樋と二次樋の各々を排水管に直接接続して、防水シートに亀裂等が生じても二次樋によって排水することも提案されている(例えば、特許文献3、4等参照)。しかし、この構造は、複雑であるが故に、設置の手間とコストが嵩むことには変わりがなく、また、断熱材への浸水は回避することができない問題がある。
特開平8−246609号公報 特開2004−44158号公報 特開2007−224563号公報 特開2007−231561号公報
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、防水シートに亀裂や破損が生じても、手間やコストを要することなく、構造物や床材、室内への漏水を防止することができる防水シートの敷設方法及びそのような方法により設置された防水構造を提供することにある。
(1.防水シートの敷設方法)
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、屋上、バルコニー等の構造物に防水シートを敷設する防水シートの敷設方法において、防水シートの下に更に保護シートを敷設し、この保護シートを構造物の床面から壁面にわたって連続して立ち上げて設置し、保護シートと構造物に設置されたドレイン部材とに跨って防水性部材を設置することにより、保護シートをドレイン部材に連結させることを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、保護シートを防水シートを敷設すべき構造物に箱状に設置することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第の手段として、上記第1又はのいずれかの解決手段において、保護シートの端部を床面に敷設すべき防水シートよりも上方にまで達するように設置し、床面に敷設すべき防水シートを保護シート内に敷設することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第の手段として、上記第1乃至第のいずれかの解決手段において、防水シートを、床材を介さずに保護シートの上に敷設することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第の手段として、上記第1乃至第のいずれかの解決手段において、裏面にシール材が取り付けられたシート接合部材又はドレイン部材のフランジ部を保護シート上に設置し、このシート接合部材又はドレイン部材のフランジ部に固定具を貫通させてシート接合部材又はドレイン部材のフランジ部をシール材を介して構造物に押しつけることにより、保護シートを構造物に固定することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第の手段として、上記第の解決手段において、防水シートを、シート接合部材の表面に溶着、融着又は接着することによりシート接合部材に接合することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第の手段として、上記第1乃至第のいずれかの解決手段において、保護シートとして、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な防水性を有するシート又は接着剤若しくはテープにより相互に連結できるシートを使用することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第の手段として、上記第1乃至第のいずれかの解決手段において、保護シートの少なくとも保護シート同士の重畳部分となる片面を、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質で被覆又は形成することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第の手段として、上記第1乃至第のいずれかの解決手段において、保護シートとして、厚みが0.1mm以上2.0mm以下のものを使用することを特徴とする防水シートの敷設方法を提供するものである。
(2.防水構造)
また、本発明は、上記第1乃至第のいずれかの解決手段により設置された下記の防水構造をも提供するものである。すなわち、本発明は、上記の課題を解決するための第10の手段として、屋上、バルコニー等の構造物に防水シートを敷設した防水構造において、防水シートの下に更に敷設された保護シートを備え、この保護シートは、構造物の床面から壁面にわたって連続して立ち上げて設置され、保護シートと構造物に設置されたドレイン部材とに跨って設置された防水性部材により、保護シートとドレイン部材とが連結されていることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第11の手段として、上記第10の解決手段において、保護シートは防水シートを敷設すべき構造物に箱状に設置されていることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第12の手段として、上記第10又は11のいずれかの解決手段において、保護シートの端部は防水シートよりも上方にまで達するように設置され、防水シートは保護シート内に敷設されていることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第13の手段として、上記第10乃至第12のいずれかの解決手段において、防水シートは、床材を介さずに保護シートの上に敷設されていることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第14の手段として、上記第10乃至第13のいずれかの解決手段において、防水構造は、保護シート上に設置されるシート接合部材又はドレイン部材のフランジ部も備え、シート接合部材又はドレイン部材のフランジ部は、裏面にシール材が取り付けられ、シート接合部材又はドレイン部材のフランジ部がシート接合部材又はドレイン部材のフランジ部を貫通する固定具によりシール材を介して構造物に押しつけられることにより、保護シートが構造物に固定されていることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第15の手段として、上記第14の解決手段において、防水シートは、シート接合部材の表面に溶着、融着又は接着されてシート接合部材に接合されていることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第16の手段として、上記第10乃至第15のいずれかの解決手段において、保護シートは、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な防水性を有するシート又は接着剤若しくはテープにより相互に連結できる防水性シートであることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第17の手段として、上記第10乃至第16のいずれかの解決手段において、保護シートの少なくとも保護シート同士の重畳部分となる片面が、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質で被覆又は形成されていることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するための第18の手段として、上記第10乃至第17のいずれかの解決手段において、保護シートは、厚みが0.1mm以上2.0mm以下であることを特徴とする防水構造を提供するものである。
本発明によれば、上記のように、防水シートの下に更に保護シートを敷設し、この保護シートを構造物の床面から壁面にわたって連続して立ち上げて敷設しているため、例えば、防水シートに亀裂や破損等が生じても、その下に敷設された保護シートにより構造物や室内への漏水を防止することができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、保護シートを防水シートを敷設すべき構造物に箱状に設置しているため、防水シートのうち、防水シート同士の接着、溶着部分等に亀裂や破損等が生じても、また特に、構造物の床面から壁面にかけての立ち上がり部や入隅部、出隅部に亀裂や破損等が生じても、保護シートが受け皿となって構造物や室内への漏水を防止することができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、保護シートを構造物に設置されたドレイン部材に連結させているため、何らかの原因で防水シートの下側に漏洩した雨水も保護シートを介して排水管へ排水することができ、特に、この保護シートを、保護シートとドレイン部材とに跨って防水テープ等の防水性部材を設置することによりドレイン部材に連結しているため、構造物内に雨水を浸入させることなく確実にドレイン部材に排出することができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、保護シートの端部を床面に敷設すべき防水シートよりも上方にまで達するように設置し、床面に敷設すべき防水シートを保護シート内に敷設しているため、防水シートのいずれの箇所から雨水が漏洩しても、保護シートが受け皿となって構造物等への漏水を確実に防止することができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、防水シートを、床材を介さずに保護シートの上に、すなわち、防水シートを保護シートの上に直接敷設している(シート接合部材に接合した箇所を除き、防水シートの直下に保護シートを敷設している)ため、構造物のみならず、例えば、断熱材等の床材への漏水も防止することができ、これらの床材への影響も抑制することができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、裏面にシール材が取り付けられたシート接合部材等を保護シート上に設置し、このシート接合部材等に固定具を貫通させてシート接合部材等をシール材を介して構造物に押しつけているため、シール材によって固定具が貫通する穿孔部からの漏水も防止することができ、防水性をより高めることができるとともに、従来からの機械式固定工法とほぼ変わらぬ工程数、部材数で防水性を高めることができ、手間とコストを嵩張らせることなく簡易に防水性を高めることができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、防水シートを、シート接合部材の表面に溶着、融着又は接着することによりシート接合部材に接合しているため、躯体の亀裂や振動、目地の挙動等の影響を受けることが少なく、地震等の際にも防水性を確保することができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、保護シートとして、防水性を有するシートを使用しているため、構造物等への漏水を防止することができるのはもちろんのこと、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能で、接着剤、テープ又は熱により相互に連結できるシートを使用しているため、設置現場での保護シートの敷設作業を、従来と同様の作業で簡易に行うことができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、保護シートの少なくとも保護シート同士の重畳部分となる片面を、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質で被覆又は形成しているため、保護シート同士の融着、溶着を簡易に行うことができるのは勿論のこと、設置現場での折り曲げや切断等の加工も容易になるとともに、床面から壁面のかけての立ち上がり部や入隅部、出隅部への追従性にも優れるため、表面の防水シートに皺や弛みが生ずるのを防止して、防水性を高めつつ良好な外観を維持することができる実益がある。
本発明によれば、上記のように、保護シートとして、厚みが0.1mm以上2.0mm以下のものを使用しているため、取扱い性や、仕上げ寸法、外観に大きな影響を与えることがない一方で、容易に破損等することがなく、確実に防水性を高めることができる実益がある。
本発明の防水構造の概略断面図である。 本発明に用いられるドレイン部材のフランジ部の拡大断面図である。 本発明に用いられるシート接合部材の拡大断面図である。
本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1乃至図3は、本発明の防水構造10及びこの防水構造10を設置するための防水シート12の敷設方法を実施する状態を示し、この防水構造10は、図1乃至図3に示すように、構造物1に防水シート12を敷設して設置される。
この防水構造10が設置される構造物1としては、特に限定はないが、例えば、オフィスビルや学校の校舎等の事業用の建造物や、マンション等の居住用の建造物の屋根やベランダ、バルコニー等を挙げることができ、本発明は、これらの防水性が要求される構造物1に適用することができる。
図示の実施の形態では、この防水シート12は、構造物1の躯体上に敷設された断熱材2を介して構造物1に固定されたシート接合部材14に接合されて敷設されており、防水シート12を、構造物1の躯体や断熱材2に直に固定することなく、シート接合部材14を介して固定することにより、躯体や断熱材2の亀裂や振動、目地の挙動(目地とは、構造物1の躯体や断熱材2同士の継ぎ目であり、この目地が地震や振動等で動くことをいう。)等の影響を受けることが少ない方法で敷設している。但し、この断熱材2やシート接合部材14の有無や敷設方法には特に限定はなく、他の方法により防水シート12を敷設することもできる。
(1.保護シートの敷設)
本発明においては、図1乃至図3に示すように、防水シート12の下に更に保護シート16を敷設する。この保護シート16は、図1に示すように、構造物1の躯体上に設置された断熱材2上に敷設され、仮に何らかの原因で防水シート12の亀裂や破損等が生じるようなことがあった場合でも、防水シート12から漏洩した雨水が断熱材2や構造物1に雨水が浸入するのを防止している。従って、この保護シート16は、防水性を備えていることが望ましい。
また、この保護シート16として使用されるシートは、一般に、長尺の帯状に形成されているため、敷設箇所に合わせて複数用意し、これらの複数の保護シート16を、端部を部分的に重畳させながら、構造物1の床面(図示の実施の形態では、断熱材2)上に敷き詰めていく。従って、この保護シート16は、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能なシート、又は、接着剤若しくはテープにより相互に連結できるシートを使用することが望ましい。これにより、保護シート16同士の重畳部分を、敷設後に、あるいは、敷設と同時並行で、溶剤、熱、超音波等によって溶着、融着したり、又は、接着剤、テープにより相互に連結することにより、複数の保護シート16を防水性を確保しながら敷設することができるとともに、特に、この作業が、防水シート12一般の敷設作業とほぼ同様の作業であるため、設置現場での保護シート16の敷設作業を、従来と同様の作業で簡易に行うことができる点でメリットがある。
また、特に、この場合、保護シート16の少なくとも保護シート16同士の重畳部分となる片面を、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質で被覆又は形成することが望ましい。これにより、保護シート16同士の重畳部分の融着、溶着を簡易に行うことができるのは勿論のこと、設置現場での折り曲げや切断等の加工も容易に行うことができるとともに、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等は床面から壁面1bのかけての立ち上がり部や入隅部、出隅部への追従性にも優れるため、表面の防水シート12に皺や弛みが生ずるのを防止して、防水性を高めつつ良好な外観を維持することができる。この保護シート16同士の重畳部分となる面を被覆又は形成する材質としては、具体的には、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル系ホットメルト系接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤が好適なものとして挙げられる。なお、施工時の作業性を考慮すると、これらの溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質は、保護シート16の両面に被覆又は形成することが好ましい。
上記の保護シート16としては、具体的には、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の防水性シート又は不織布から構成されたシート、また、これらシート内部又は表面にポリエステル等の繊維基材が介在されたクロスシート等を挙げることができる。また、住宅の床等のコンクリート養生時や、建物改修時等の床面マスキングのために使用されている養生シートも、軽量で、折曲げや切り取り加工も容易であり、防水性にも優れるため、特に好適なものとして挙げられる。これらの養生シートとしてはポリエチレン製のものを挙げることができる。なお、保護シート16自体が、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質以外の材質で形成されているときは、表面に上述したポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質を被覆することにより、相互に連結可能とすることができる。
また、この保護シート16の厚みは、0.1mm以上2.0mm以下の厚みに、より望ましくは、0.5mm以上1.5mm以下とすることが好適である。これにより、取扱い性や、仕上げ寸法、外観に大きな影響を与えることがない一方で、容易に破損等することがなく、確実に防水性を高めることができるためである。
この保護シート16は、図1(の右側)に示すように、特に、構造物1の床面(図示の実施の形態では、構造物1の躯体上に設置された断熱材2の床面)から壁面1bにわたって連続して立ち上げて敷設する。この場合、特に、壁面1bが外部に向かって凹んでいる入隅部においては、保護シート16を折り曲げることにより、一方、壁面1bが内部に向かって突出している出隅部においては保護シート16の一部をV字状等に切り取って出隅部に跨らせた上で、露出した出隅部の角を、図示しない伸縮性を有する防水テープ等により覆って、敷設する。
また、このように、構造物1の躯体の床面を囲む周囲の壁面1bのほぼ全てにわたって(後述するドレイン等に連結される場所を除く)、保護シート16を床面から連続して立ち上げることにより、保護シート16を、防水シート12を敷設すべき構造物1に箱状(受け箱状)に設置することができ、これにより、防水シート12のうち、特に、構造物1の床面から壁面1bにかけての立ち上がり部や入隅部、出隅部に亀裂や破損等が生じても、保護シート16が受け皿となって構造物1や室内への漏水を防止することができる。
また、この箱状に設置された保護シート16内に、床面に敷設すべき防水シート12を敷設することにより、図1に示すように、保護シート16の端部を、床面に敷設すべき防水シート12よりも上方にまで達するように設置することができ、床面に敷設すべき防水シート12のいずれの箇所から雨水が漏洩しても、保護シート16が受け皿となって構造物等への漏水を確実に防止することができる。
(2.防水シートの敷設及び保護シートの固定)
上記のようにして、保護シート16を構造物1の躯体(図示の実施の形態では、断熱材2)上に敷設した後は、この保護シート16上に、防水シート12を敷設するが、この場合、上記のように、防水シート12を、シート接合部材14に接合して構造物1に固定するとともに、このシート接合部材14の設置により同時に上記の保護シート16をも構造物1に固定することが望ましい。
具体的には、まず、図1に示すように、構造物1の屋上等の躯体や断熱材2上に、保護シート16を設置した上で、端末(縁部)においては、帯状のシート接合部材14を設置し、端末以外の箇所には、ディスク状のシート接合部材14を、所定のピッチで設置する。
なお、これらのシート接合部材14は、その形状や大きさに特に限定はなく、その設置箇所に適合させて任意の形状や大きさとすることができる。例えば、構造物1の躯体の端末に設置する場合には略L字形状や帯型等の板状の形状に形成し、また、構造物1の躯体の端末を除いた箇所に設置する場合には円形等を有するディスク状の形状に形成して構造物委1の躯体(断熱材2)上に点在させて設置することができる。
また、特に、本発明においては、図1及び図2に示すように、特に断熱材2上に設置されるシート接合部材14については、その裏面にシール材18を取り付けた上で、当該シール材18が取り付けられたシート接合部材14を、保護シート16上の所定の箇所に設置する。その上で、特に図2に示すように、このシート接合部材14を、シート接合部材14、シール材18、保護シート16を貫通するビス、釘、ボルト等の固定具20により、構造物1の躯体上に敷設された断熱材2を介して構造物1に固定することにより、シート接合部材14を設置する。
この場合、固定具20の締め付けにより、シート接合部材14をシール材18を介して構造物1(上の断熱材2)に押しつけることにより、シート接合部材14と同時に、保護シート16も構造物1(上の断熱材2)に固定される。このため、シール材18によって固定具20が貫通する穿孔部からの漏水も防止することができ、防水性をより高めることができるとともに、特に、この固定具20の締め付けが、機械式固定工法においては、保護シート16の有無にかかわらず必要な作業であるため、保護シート16の固定のために特別な作業を付加する必要がなく、従来からの機械式固定工法とほぼ変わらぬ工程数、部材数で防水性を高めることができるので、手間とコストを嵩張らせることなく簡易に防水性を高めることができる。
この場合、シール材18は、定形シール材でも不定形シール材であっても良く、定形シール材としては発泡樹脂テープ、ブチルテープが好適なものとして挙げられ、不定形シール材としては変性シリコーン樹脂製シーリング材やウレタン樹脂製シーリング材が好適なものとして挙げられる。また、発泡樹脂テープとしてはスポンジテープが特に好適なものとして挙げられる。
一方、シート接合部材14は、その表面において、防水シート12と接合されるため、溶剤や高周波によって防水シート12と溶着することができるように形成する。即ち、シート接合部材14は、防水シート12と溶着することができる態様、具体的には、合成樹脂板や、鋼板を芯材としてその表面に合成樹脂を被覆した合成樹脂被覆鋼板等から形成することができる。この鋼板としては、例えば、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム等からなるものを好適に使用することができる。
また、このシート接合部材14やその表面の被覆材に使用する合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の軟質の合成樹脂や、合成ゴム系の材質を選択することができるが、その中でも、特に、ポリ塩化ビニル樹脂は、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため好適である。なお、このシート接合部材14は、合成樹脂被覆鋼板から形成する場合には、プレス成型加工機等によりプレス加工して形成することができ、合成樹脂板として形成する場合には射出成形等の適宜の樹脂加工方法により形成することができる。
なお、この防水シート12としては、防水性を有する樹脂製のシートであれば特に限定なく使用することができ、上述したシート接合部材14の表面と同じく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の軟質の合成樹脂や、合成ゴム系の材料等から形成されたものを使用することができるが、その中でも、特に、ポリ塩化ビニル樹脂が、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため好適である。
この防水シート12も、上述した保護シート16と同様に、長尺の帯状に形成されているため、敷設箇所に合わせて複数用意し、これらの複数の防水シート12を、端部を部分的に重畳させながら、構造物1の床面(図示の実施の形態では、断熱材2)上にテンションをかけながら敷き詰めていく。
この場合、防水シート12のうち、シート接合部材14に重畳する部分については、シート接合部材14に接合するが、その接合方法には、特に限定はなく、例えば、防水シート12の上からシート接合部材14内に溶剤を注入した後、押圧したり、あるいは、防水シート12を重ねる直前にシート接合部材14に溶剤を塗布した上で防水シート12をシート接合部材14上に展開して、押圧することにより、接合することができる。その他、熱による溶着、高周波による融着や、接着剤による接着等によって、接合することもできる。このように、防水シート12を、構造物1に直接ではなく、シート接合部材14の表面に接合しているため、構造物1の躯体の亀裂や振動、目地の挙動等の影響を受けることが少なく、地震等の際にも防水性を確保することができる。
一方、防水シート12同士の重畳部分については、保護シート16と同様に、敷設後に、あるいは、敷設と同時並行で、溶剤、熱、超音波等によって溶着、融着したり、又は、接着剤、テープにより相互に連結することにより、複数の防水シート12を防水性を確保しながら敷設することができる
この場合、特に、本発明では、図1及び図2に示すように、防水シート12を保護シート16の直上に(保護シート16を防水シート12の直下に)敷設する点にも特徴がある。すなわち、例えば、下から順に、保護シート16、断熱材2、防水シート12の配列ではなく、保護シート16及び防水シート12のいずれをも、断熱材2の上に敷設し、防水シート12を、断熱材2等の床材を介さずに保護シート16の上に敷設する。これにより、シート接合部材14に接合された箇所を除いては、保護シート16が防水シート12の直下に配置されており、構造物1のみならず、断熱材2等の床材への漏水も防止することができ、これらの床材への影響も抑制することができる点で有益である。
(3.ドレインへの連結)
また、本発明では、図1及び図3に示すように、防水シート12のみならず、保護シート16も、構造物1に設置されたドレイン部材22に連結させることが望ましい。これにより、何らかの原因で防水シート12の下側に漏洩した雨水も保護シート16を介して、ドレイン部材22に連結された排水管3へ排水することができる。
具体的には、図1及び図3に示すように、ドレイン部材22を、構造物1に固定されて保護シート16に連結される第1ドレイン部材22Aと、この第1ドレイン部材22内に挿入されて防水シート12に連結される第2ドレイン部材22Bとから構成し、通常は、防水シート12上の雨水を第2ドレイン部材22Bを介して排水管3へ排水し、万が一、防水シート12の亀裂、破損等を原因として保護シート16へ雨水が漏洩した場合であっても、その雨水を第1ドレイン部材22Aを介して排水管3に排出することができ、構造物1、断熱材2等への雨水の浸入を防止することができる。
この場合、保護シート16を介した第1ドレイン部材22Aによる排水を確保するため、図1及び図3に示すように、第1ドレイン部材22Aと第2ドレイン部材22Bとの間に、第2ドレイン部材22Bを第1ドレイン部材22Aよりも小径に形成する等して、排水路24を形成する。
また、この第1ドレイン部材22Aと保護シート16との連結は、特に、図3に示すように、保護シート16上に、裏面にシール材18が取り付けられた第1ドレイン部材22Aのフランジ部22aを配置し、シール接合部材14の設置の場合と同様に、この第1ドレイン部材22Aのフランジ部22aに固定具20を貫通させて第1ドレイン部材22Aのフランジ部22aをシール材18を介して構造物1に押しつけることにより、保護シート16を構造物1に固定した上で、更に、この保護シート16の端部と第1ドレイン部材22Aの第1フランジ部22aとに跨って、防水テープ等の防水性部材26を設置することにより、行うことができる。
これにより、例えば、防水シート12の亀裂や破損等の何らかの原因で防水シート12の下側に漏洩した雨水も、保護シート16を介して第1ドレイン部材22Aに案内して排水管24へ排水することができ、構造物1内に雨水が浸入することを防止することができるとともに、特に、シール材18により、固定具20が貫通する穿孔部を止水することもできる。なお、排水性を確保するために、構造物1の床面上に敷設される断熱材2は、その上面がドレイン部材22に向けて若干傾斜して形成される。
一方、第2ドレイン部材22Bと防水シート12との連結は、特に、図3に示すように、第2ドレイン部材22Bのフランジ部22bを、第1ドレイン部材22Aのフランジ部22aにリベット28により固定した上で、シート接合部材14への連結の場合と同様に、防水シート12を、第2ドレイン部材22Bのフランジ部22bに重ね合わせて、溶剤、熱、超音波等により溶着、融着、接着等することにより、行うことができる。この場合、構造物1への雨水の浸入を可及的に防止すべく、防水シート12は、図3に示すように、リベット28を覆うように敷設することが好ましい。これにより、防水シート12上に降り注ぐ等した雨水は、第2ドレイン部材22B内に流入し、排水管3へ排水される。
また、この場合、特に図3に示すように、第2ドレイン部材22Bと第1ドレイン部材22Aに固定するリベット28の周囲にもシール材30(シール材18と同質のものを使用することができる。)を配置することが望ましい。これにより、リベット28が貫通する穿孔部を止水することができるとともに、フランジ部22a、22b同士のすれや損傷をも防止することができ、更には、第2ドレイン部材22Bのフランジ部22bと第1ドレイン部材22Aの第1フランジ部22aとの間に間隙が形成され、第2ドレイン部材22Bと第1ドレイン部材22Aとの間から第1ドレイン部材22A内に雨水が流入することができ、保護シート16を介した第1ドレイン部材22Aによる排水も確保することができる。なお、このリベット28は、ドレイン部材22の位置ずれ等が防止できる程度の設置数を設定すれば足りる。
このようにドレイン部材22は、シート接合部材14と同様に、防水シート12や保護シート16と連結されるため、シート接合部材14と同様の材質から形成することが望ましい。すなわち、ドレイン部材22は、鋼板を芯材として加工されたものが好ましく、特に鋼板の表面に合成樹脂を被覆したいわゆる合成樹脂被覆鋼板からなるものであることが好ましい。さらに加工後にディッピング等により、ドレイン部材22の全面にわたり合成樹脂を被覆したものであってもよい。この合成樹脂としては、接合対象となる防水シート12や保護シート16と同種の樹脂を使用することが好ましい。このような合成樹脂とすることにより、第1ドレイン部材22Aと保護シート16との接合、第2ドレイン部材22Bと防水シート12との接合の際に、溶剤による溶着作業、熱による融着作業が容易となり、防水の長期の信頼性が向上するためである。
本発明は、特に風雨に曝されるオフィスビルや学校の校舎等の事業用の建造物やマンション等の居住用の建造物の屋根やベランダ、バルコニー等の防水性が要求される箇所に広く適用することができる。
1 構造物
1b 構造物の壁面
2 断熱材
3 排水管
10 防水構造
12 防水シート
14 シート接合部材
16 保護シート
18 シール材
20 固定具
22 ドレイン部材
22A 第1ドレイン部材
22a 第1ドレイン部材のフランジ部
22B 第2ドレイン部材
22b 第2ドレイン部材のフランジ部
24 排水路
26 防水部材
28 リベット
30 シール材

Claims (18)

  1. 屋上、バルコニー等の構造物に防水シートを敷設する防水シートの敷設方法において、前記防水シートの下に更に保護シートを敷設し、前記保護シートを前記構造物の床面から壁面にわたって連続して立ち上げて設置し、前記保護シートと前記構造物に設置されたドレイン部材とに跨って防水性部材を設置することにより、前記保護シートを前記ドレイン部材に連結させることを特徴とする防水シートの敷設方法。
  2. 請求項1に記載された防水シートの敷設方法であって、前記保護シートを前記防水シートを敷設すべき構造物に箱状に設置することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  3. 請求項1又は請求項のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記保護シートの端部を前記床面に敷設すべき防水シートよりも上方にまで達するように設置し、前記床面に敷設すべき防水シートを前記保護シート内に敷設することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  4. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートを、床材を介さずに前記保護シートの上に敷設することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  5. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、裏面にシール材が取り付けられたシート接合部材又は前記ドレイン部材のフランジ部を前記保護シート上に設置し、前記シート接合部材又は前記ドレイン部材のフランジ部に固定具を貫通させて前記シート接合部材又は前記ドレイン部材のフランジ部を前記シール材を介して前記構造物に押しつけることにより、前記保護シートを前記構造物に固定することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  6. 請求項に記載された防水シートの敷設方法であって、前記防水シートを、前記シート接合部材の表面に溶着、融着又は接着することにより前記シート接合部材に接合することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  7. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記保護シートとして、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な防水性を有するシート又は接着剤若しくはテープにより相互に連結できるシートを使用することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  8. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記保護シートの少なくとも保護シート同士の重畳部分となる片面を、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質で被覆又は形成することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  9. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載された防水シートの敷設方法であって、前記保護シートとして、厚みが0.1mm以上2.0mm以下のものを使用することを特徴とする防水シートの敷設方法。
  10. 屋上、バルコニー等の構造物に防水シートを敷設した防水構造において、前記防水シートの下に更に敷設された保護シートを備え、前記保護シートは、前記構造物の床面から壁面にわたって連続して立ち上げて設置され、前記保護シートと前記構造物に設置されたドレイン部材とに跨って設置された防水性部材により、前記保護シートと前記ドレイン部材とが連結されていることを特徴とする防水構造。
  11. 請求項10に記載された防水構造であって、前記保護シートは前記防水シートを敷設すべき構造物に箱状に設置されていることを特徴とする防水構造。
  12. 請求項10又は請求項11のいずれかに記載された防水構造であって、前記保護シートの端部は前記床面に敷設すべき防水シートよりも上方にまで達するように設置され、前記床面に敷設すべき防水シートは前記保護シート内に敷設されていることを特徴とする防水構造。
  13. 請求項10乃至請求項12のいずれかに記載された防水構造であって、前記防水シートは、床材を介さずに前記保護シートの上に敷設されていることを特徴とする防水構造。
  14. 請求項10乃至請求項13のいずれかに記載された防水構造であって、前記防水構造は、前記保護シート上に設置されるシート接合部材又は前記ドレイン部材のフランジ部も備え、前記シート接合部材又は前記ドレイン部材のフランジ部は、裏面にシール材が取り付けられ、前記シート接合部材又は前記ドレイン部材のフランジ部が前記シート接合部材又は前記ドレイン部材のフランジ部を貫通する固定具により前記シール材を介して前記構造物に押しつけられることにより、前記保護シートが前記構造物に固定されていることを特徴とする防水構造。
  15. 請求項14に記載された防水構造であって、前記防水シートは、前記シート接合部材の表面に溶着、融着又は接着されて前記シート接合部材に接合されていることを特徴とする防水構造。
  16. 請求項10乃至請求項15のいずれかに記載された防水構造であって、前記保護シートは、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な防水性を有するシート又は接着剤若しくはテープにより相互に連結できる防水性シートであることを特徴とする防水構造。
  17. 請求項10乃至請求項16のいずれかに記載された防水構造であって、前記保護シートの少なくとも保護シート同士の重畳部分となる片面が、溶剤、熱、超音波による溶着、融着が可能な材質で被覆又は形成されていることを特徴とする防水構造。
  18. 請求項10乃至請求項17のいずれかに記載された防水構造であって、前記保護シートは、厚みが0.1mm以上2.0mm以下であることを特徴とする防水構造。
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