JP5520539B2 - 茹で麺装置用酸性洗浄剤及び茹で麺装置の洗浄方法 - Google Patents
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このため、定期的に茹で麺装置10の洗浄を行うことが必要である。例えば、この茹で麺装置10は、次に示すような方法により、洗浄される。
特許文献1には、このような洗浄組成物を用いることによって麺類調理装置に付着する汚れを除去することができることが記載されている。
除去対象となる汚れの成分としては、麺類自体の炭水化物やタンパク質等と、ゆで調理に利用する水の硬度成分に由来する無機物のスケール分とが複合的に混じり合ったものが想定されている。
しかしながら、特許文献2には、このような酸性洗浄剤が茹で麺装置に付着する汚れやスケール汚れの洗浄に適していることについては一切記載されていない。
塩酸ミストによる腐食の問題は、容量の小さい(例えば20〜40リットル)茹で槽を使用する小規模な飲食店等では茹で槽の直上に排気フード等を設けることによって軽減することができるため、大きな問題となることは少ない。
しかしながら、大容量(例えば4トン)の茹で槽を用いる製麺工場において塩酸を用いた場合には塩酸ミストによる腐食の問題を避けることが困難となっていた。
また、茹で槽の洗浄にスルファミン酸を用いた場合にもミストによるステンレスの腐食が生じることがあった。
従って、ミストによるステンレスの腐食が生じることがなく、製麺工場で用いる大容量の茹で麺槽の洗浄に適した洗浄剤が望まれていた。
スケール汚れを除去できる場合、できない場合の差異について本発明者らが詳細に検討したところ、中華麺の茹で麺の製造に使用した茹で槽に付着したスケール汚れの除去が困難となることが多いことが判明した。この理由について本発明者らがさらに詳細に検討したところ、中華麺の茹で麺の製造に用いた茹で槽に付着したスケール汚れには、中華麺に含まれるリンに由来するリン酸カルシウムやリン酸マグネシウム等のリン酸塩が含まれており、通常、水の硬度成分に由来するスケール汚れとして想定される炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムとはスケール汚れの成分が異なることが判明した。
また、うどんやそば等の茹で麺の製造に用いた茹で槽においても、リン酸塩を含むスケールが付着していることがあった。
そのため、クエン酸を用いた場合には除去できない、リン酸塩を含むスケール汚れを除去することのできる洗浄剤が望まれていた。
その結果、リン酸及び硝酸を含む酸性洗浄剤を用いるとリン酸塩を含むスケール汚れを除去することができることを見出した。
しかしながら、リン酸及び硝酸を含む酸性洗浄剤を用いた場合には、硝酸の含有割合が20重量%以下であるとリン酸塩を含むスケール汚れの除去性が低下することが判明した。
しかしながら、酸性洗浄剤に含まれる硝酸の含有割合が20重量%を超えると、酸性洗浄剤から発煙することがある。また、酸性洗浄剤の希釈時(酸性洗浄剤を茹で槽に投入する時)に発煙することもある。
このことから、製麺工場等で使用する酸性洗浄剤の組成として、硝酸の含有割合が20重量%を超えて高い組成は不適当であると考えられた。
その結果、リン酸及び硝酸に加えてメタンスルホン酸をさらに配合することによって、硝酸の含有割合を20重量%以下とした場合であってもリン酸塩を含むスケール汚れを好適に除去することができることを初めて見出し、本発明に想到した。
メタンスルホン酸と、硝酸と、リン酸とを含み、上記硝酸の含有割合が1〜20重量%であることを特徴とする。
本発明の茹で麺装置用酸性洗浄剤がリン酸塩からなるスケール汚れを除去することができる機構は明確ではないが、硝酸やメタンスルホン酸等の強酸とリン酸をともに含むことがリン酸塩からなるスケール汚れの除去に対して有効ではないかと考えられる。
本発明の茹で麺装置の洗浄方法では、ステンレス製茹で麺装置を腐食させることなく茹で麺装置に付着した汚れの洗浄を行うことができる。
本発明の茹で麺装置用酸性洗浄剤を用いて洗浄することによって、リン酸塩を含むスケール汚れを好適に除去することができる。
アルカリ性洗剤を用いてさらに洗浄を行うと、茹で麺装置に付着した炭水化物やタンパク質等の有機物汚れも好適に除去することができる。
また、酸性洗浄剤からの発煙が起こらず、酸性洗浄剤の投入時に発煙が生じることもないため、製麺工場等で茹で麺装置の洗浄に好適に使用することができる。
また、本発明の茹で麺装置の洗浄方法によると、ステンレス製茹で麺装置を腐食させることなく茹で麺装置に付着した汚れの洗浄を行うことができる。
本発明の茹で麺装置用酸性洗浄剤は、製麺工場で用いられるステンレス製茹で麺装置に付着したスケール汚れを除去するための茹で麺装置用酸性洗浄剤であって、
メタンスルホン酸と、硝酸と、リン酸とを含み、上記硝酸の含有割合が1〜20重量%であることを特徴とする。
また、リン酸の含有割合は特に限定されるものではないが、1〜80重量%であることが望ましく、5〜50重量%であることが特に望ましい。
硝酸の含有割合は、5〜15重量%であることが特に望ましい。
また、塩酸やスルファミン酸が含まれていないため、ミストによりステンレス製茹で麺装置を腐食させることがない。
なお、ステンレスの種類は特に限定されるものではないが、SUS304、SUS316、SUS430等に好適に使用することができる。
本発明の茹で麺装置の洗浄方法は、製麺工場で用いられるステンレス製茹で麺装置を、本発明の茹で麺装置用酸性洗浄剤を用いて洗浄することを特徴とする。
最初に、茹で槽13内に水を張り、スチーム加熱する(お湯張り工程)。
次に、茹で槽13内のお湯に本発明の茹で麺装置用酸性洗浄剤を投入する。
茹で麺装置用酸性洗浄剤の投入量は、お湯の量1リットルあたり10〜50ml程度が好ましい(酸性洗浄剤投入工程)。
続いて、スチーム加熱により煮沸し、コンベア12によりバケットを移送させながら30分〜2時間煮沸洗浄を行う(酸洗浄工程)。
アルカリ剤としては、48%水酸化ナトリウム水溶液を好適に使用することができる。
その後、コンベア12によりバケットを移送させながら茹で槽13をすすぐ工程(すすぎ工程)を行うことによって本発明の茹で麺装置の洗浄方法を終了する。
アルカリ性洗剤による洗浄方法としては、例えば上記した中和、排水工程及び高圧水によるすすぎ工程を行った後に、茹で槽13内に水を張り、アルカリ性洗剤を所定量投入し、スチーム加熱により所定時間煮沸洗浄する方法を用いることができる。
アルカリ性洗剤としてサニプラン ゆで麺槽洗浄剤EXを用いる場合、お湯の量1リットルあたり5〜20g程度を投入して、30分〜2時間程度煮沸洗浄することが望ましい。
また、酸性洗浄剤による洗浄によりリン酸塩を含むスケール汚れを良好に除去することができる。さらにアルカリ性洗剤を用いてさらに洗浄を行うと、茹で麺装置に付着した炭水化物やタンパク質等の有機物汚れも好適に除去することができる。
(実施例1)
純分67.5%の硝酸を14.67重量%、純分85%のリン酸を23.53重量%、純分100%のクエン酸を7.50重量%、純分70%のメタンスルホン酸を14.29重量%と、合計が100重量%となる水(40.01重量%)を混合して酸性洗浄剤を調製した。
この酸性洗浄剤における硝酸の含有割合は、14.67(重量%)×0.675(純分)=9.90重量%である。
酸性洗浄剤の組成は表1にまとめて示した。なお、合計が100重量%となる水の量は「バランス」と示した。
酸性洗浄剤の組成をそれぞれ表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして酸性洗浄剤を調製した。
なお、実施例4における硝酸の含有割合は、26.67(重量%)×0.675(純分)=18.00重量%である。
酸性洗浄剤の組成をそれぞれ表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして酸性洗浄剤を調製した。
なお、これらの実施例では界面活性剤を添加した。Genaminox K−10(clariant社製)、EMULSOGEN COL 100(clariant社製)、プルラファックLF600(BASF社製)は、硝酸の存在下でも使用可能な界面活性剤として選択した。
酸性洗浄剤の組成をそれぞれ表2に示すように変更した他は実施例1と同様にして酸性洗浄剤を調製した。
酸性洗浄剤の組成をそれぞれ表2に示すように変更した他は実施例1と同様にして酸性洗浄剤を調製した。
なお、これらの比較例では腐食防止剤を添加した。Korantin PM(BASF社製)は、酸全般に用いられる腐食防止剤であり、イビットNo.155K(朝日化学社製)はスルファミン酸に用いられる腐食防止剤である。
各実施例及び各比較例で調製した各酸性洗浄剤を用いて、スケール汚れ溶解試験を以下のようにして行い、スケール汚れ除去性を評価した。
(1)内容積4トンの中華麺用茹で麺槽に付着した、リン酸塩を含むスケール汚れ(ほぼ球状、直径約1mm、大まかな組成比率はリン酸塩:炭酸カルシウム=4:1)を試験用汚れとした。
(2)200mlビーカーに水を150ml、酸性洗浄剤を2.25ml入れて、ウォーターバスを用いて加熱した。
(3)水温が90℃となったら、スケール汚れを5個入れて、煮沸し、スケール汚れが溶解するまでの時間を計測した。スケール汚れの溶解は目視観察にて判定した。
スケール汚れが90分以内で溶解した場合を評価結果が良好と判断し、表1及び表2には○で示した。スケール汚れが90分以内で溶解しなかった場合を表1及び表2には×で示した。なお、600分経過後もスケール汚れが溶解しなかった場合は「溶解せず」とした。
酸性洗浄剤のステンレス製茹で麺装置に対する腐食性を以下のようにして評価した。
(1)500mlのSUS304製ビーカーに水を300ml、酸性洗浄剤を4.5ml入れて、ウォーターバスを用いて3時間煮沸した。
(2)SUS304製ビーカーを水洗し、乾燥後に喫水面の光沢が変化していないか目視観察にて判定した。その結果、光沢が変わっていないものを評価結果が良好として表1及び表2には○で示した。光沢が落ちていたものを表1及び表2には×で示した。
また、比較例7〜9の酸性洗浄剤は、硝酸に代えてスルファミン酸、硫酸、塩酸といった酸を含んでいるため、腐食防止剤を配合したにも関わらずSUS304喫水面の腐食が生じていた。
11 バケット
12 コンベア
13 茹で槽
14 スチーム配管
Claims (6)
- 製麺工場で用いられるステンレス製茹で麺装置に付着したスケール汚れを除去するための茹で麺装置用酸性洗浄剤であって、
メタンスルホン酸と、硝酸と、リン酸とを含み、
塩酸、硫酸及びスルファミン酸を含まず、
前記硝酸の含有割合が1〜20重量%であることを特徴とする茹で麺装置用酸性洗浄剤。 - 前記メタンスルホン酸を1〜98重量%含む請求項1に記載の茹で麺装置用酸性洗浄剤。
- さらに強酸及び酸化剤に安定な界面活性剤としてアルキルアミンオキシド又はアルキルエーテルカルボン酸を含む請求項1又は2に記載の茹で麺装置用酸性洗浄剤。
- 製麺工場で用いられるステンレス製茹で麺装置を、請求項1〜3のいずれかに記載の茹で麺装置用酸性洗浄剤を用いて洗浄することを特徴とする茹で麺装置の洗浄方法。
- 前記茹で麺装置に付着したリン酸塩を含むスケール汚れを除去する請求項4に記載の茹で麺装置の洗浄方法。
- 前記茹で麺装置を請求項1〜3のいずれかに記載の茹で麺装置用酸性洗浄剤を用いて洗浄した後に、アルカリ性洗剤を用いてさらに前記茹で麺装置を洗浄する請求項4又は5に記載の茹で麺装置の洗浄方法。
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