JP5519897B2 - Vegf産生促進剤 - Google Patents

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本発明は、血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor;VEGF)の産生を促進し得るVEGF産生促進剤に関する。
VEGFは、血管透過性因子として知られているが、最近の研究により、ヒト皮膚における主要な血管新生因子であることが報告され、創傷治癒、肌色改善の研究分野で注目されている分子である。
正常な皮膚において、VEGFは、表皮角化細胞により少量分泌され、真皮の微小血管内皮細胞上の特異的なレセプターに結合し、それによって内皮細胞の生存能力を確保することにより、上部の網状構造の血管を維持している。
炎症あるいは創傷治癒時の肥厚した表皮におけるVEGFは、非常に高く発現していて、それゆえ、血管が無い表皮のために真皮での血管の増加と栄養供給を導いていることが報告されている(非特許文献1)。
このことから、真皮での血管の増加と栄養供給に関与しているVEGFの産生を促進することは、創傷の回復・治癒に非常に有効であるばかりでなく、皮膚の新陳代謝の低下等によって生じるクスミや肌の透明感の低下といった肌色改善にも有効であると考えられている。
このため、様々なVEGF産生促進剤がこれまでに開発されている。例えば、大豆由来の調製物(特許文献1)、アミハナイグチ、シロヌメリイグチ、ハナイグチ、ウツロベニハナイグチ、アミタケ、キノボリイグチ、エゾウコギ、黄精、ゲンチアナ、センナ、トチュウ、ダイオウ、メリロート、ヨクイニン、クコの実、当帰、地黄、サンシシ、甘草、ニンジン、紅参、紫根、シンビジュームの各抽出物(特許文献2)、タコノキ属(Pandanus L.f.)植物抽出物(特許文献3)、シイタケ、エチナシ、プルーン、モヤシ、アマチャヅルの各抽出物(特許文献4)等に、VEGF産生促進作用があることが報告されている。しかし、これらのVEGF産生促進剤は、副作用の点から配合が制限される場合があり、また有効量を配合すると着色や不快臭が発生する等の問題が生じる場合もあった。
一方、ユーカリノキ(Eucalyptus globulus)は、オーストラリアを原産とするフトモモ科の常緑高木であり、多くの精油を含み、古くから抗菌作用、抗ウィルス作用等があることが知られ、最近ではセラミド産生促進作用(特許文献5、特許文献6)があることが報告されている。
しかしながら、ユーカリノキ又はその抽出物にVEGFの産生促進作用があることは全く知られていない。
特開平11−286432号公報 特開2000−212059号公報 特開2004−43393号公報 特開2004−35443号公報 特開2000−169359号公報 特開2002−370998号公報 Detmar M. The role of VEGF and thrombospondins in skin angiogenesis, J Dermatol Sci. 24(Suppl 1), S78-84, 2000
本発明は、創傷治癒、肌色改善等の効果を発揮し、医薬品、医薬部外品、化粧料、食品等に応用可能なVEGF産生促進剤を提供することに関する。
本発明者らは、VEGFの産生を促進する物質について、研究を重ねた結果、ユーカリノキ又はその抽出物に優れたVEGF産生促進作用があることを見出した。
すなわち、本発明は、ユーカリノキ又はその抽出物を有効成分とするVEGF産生促進剤に係るものである。
本発明のVEGF産生促進剤は、優れたVEGF産生促進作用を有し、内皮細胞の生存能力を向上させ、血管新生促進効果を発揮することから、例えば創傷治癒、肌色改善等の効果を発揮する医療品、医薬部外品、化粧料、食品等として有用である。
本発明において、ユーカリノキとは、フトモモ科(Myrtaceae)のユーカリノキ(Eucalyptus globulus Labillardiere)又はフトモモ科に属するその近縁種を意味する。ユーカリノキの使用部位は、花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草を用いることができるが、主としてその葉、小枝、花又は果実を用いるのが好ましい。これらは、そのまま又は乾燥粉砕して用いることができる。
ユーカリノキの抽出物としては、前記の用部、好ましくは葉を、そのままあるいは乾燥した後に適当な大きさに切断したり、粉砕加工したりしたものを抽出して得られる抽出エキスの他、さらに分離精製して得られるより活性の高い画分(成分)が包含される。
抽出は、室温又は加熱した状態で溶剤に含浸させるか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて行われる溶剤抽出の他に、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出法、あるいは圧搾して抽出物を得る圧搾法等を用いることができる。
溶剤抽出に用いられる抽出溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができ、これらを混合して用いることもできる。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他オイル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、溶剤を変えて繰り返し行うことも可能である。このうち、水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等を用いるのが好ましく、特に水・エタノール混液及び/又はブチレングリコールを用いるのが好ましい。
抽出は、例えばユーカリノキ1重量部に対して1〜50重量部の溶剤を用い、3〜100℃で数時間〜数週間浸漬又は加熱還流するのが好ましい。
また、抽出物の分離精製手段としては、例えば、抽出物を活性炭処理、液液分配、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲル濾過、精密蒸留等を挙げることができる。
本発明のユーカリノキ抽出物は、斯くして得られる抽出液や画分をそのまま用いてもよく、適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、或いは濃縮エキスや乾燥粉末としたり、ペースト状に調製したものでもよい。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、水・エタノール混液、水・プロピレングリコール混液、水・ブチレングリコール混液等の溶剤で希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
ユーカリノキ又はその抽出物は、後記実施例に示すように、ヒト表皮角化細胞におけるVEGFの遺伝子発現量を増加し、VEGFの産生を促進する作用を有することから、内皮細胞の生存能力の向上、血管新生促進等の効果を発揮することが期待される(Heidemarie Rossiter, Caterina Barresi, Johannes Pammer, Michael Rendl, Jody Haigh, ErwinF. Wagner, and Erwin Tschachler. Loss of Vascular Endothelial Growth Factor A Activity in Murine Epidermal Keratinocytes Delays Wound Healing and Inhibits Tumor Formation, Cancer research 64, 3508-3516, 2004)。
従って、ユーカリノキ又はその抽出物は、これを有効成分とするVEGF産生促進剤として使用することができ、また、VEGF産生促進剤を製造するために使用することができる。当該VEGF産生促進剤は、創傷治癒、肌色改善等の効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品として使用可能である。また、当該VEGF産生促進剤は、VEGFの産生促進、肌色改善等をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した化粧品、美容食品、病者用食品若しくは特定保健用食品等の機能性食品として、或いはVEGF産生能を判定するための検査薬や試薬等としても使用することができる。
本発明のVEGF産生促進剤を医薬として用いる場合の投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与又は静脈内注射、筋肉注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、点眼剤、点鼻剤等による非経口投与が挙げられる。また、このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、ユーカリノキ又はその抽出物を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与であり、経口投与用製剤として用いる場合の該製剤中のユーカリノキ(植物)の含有量は、一般的に0.01〜100重量%とすることが好ましく、特に0.05〜70重量%とすることが好ましい。一方、ユーカリノキの抽出物の含有量は、一般的に固形分換算で0.00001%〜100重量%とすることが好ましく、特に0.0001〜70重量%とすることが好ましい。
尚、本発明のVEGF産生促進剤を医薬として使用する場合、成人1人当たりの1日の投与量は、本発明のユーカリノキ又はその抽出物(固形分換算)として、例えば0.0003〜3000mgとすることが好ましく、特に0.003〜300mgであることが好ましい。
本発明のVEGF産生促進剤を食品として用いる場合の形態としては、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。
種々の形態の食品を調製するには、ユーカリノキ又はその抽出物を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。当該食品中のユーカリノキ(植物)の含有量は、一般的に0.01〜100重量%とすることが好ましく、特に0.05〜70重量%とすることが好ましい。一方、ユーカリノキ抽出物の含有量は、一般的に固形分換算で0.00001%〜100重量%とすることが好ましく、特に0.0001〜70重量%とすることが好ましい。
また、本発明のVEGF産生促進剤を医薬部外品や化粧料として用いる場合は、皮膚外用剤、洗浄剤、メイクアップ化粧料、頭皮用化粧料とすることができ、使用方法に応じて、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末、顆粒等の種々の剤型で提供することができる。このような種々の剤型の医薬部外品や化粧料は、ユーカリノキ又はその抽出物を単独で、又は医薬部外品、皮膚化粧料、頭皮用化粧料及び洗浄料に配合される、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、樹脂、防菌防黴剤、植物抽出物、アルコール類等を適宜組み合わせることにより調製することができる。当該医薬部外品、化粧料中のユーカリノキ(植物)の含有量は、一般的に0.01〜100重量%とすることが好ましく、特に0.05〜70重量%とすることが好ましい。一方、ユーカリノキ抽出物の含有量は、一般的に固形分換算で0.00001%〜100重量%とすることが好ましく、特に0.0001〜70重量%とすることが好ましい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
〔ユーカリノキ抽出物の製造方法〕
ユーカリノキ(Eucalyptus globulus Labillardiere)の葉の乾燥粉砕物1kgに50重量%エタノール水溶液を10リットル加え、室温で7日間浸漬した。抽出液をろ過して回収し、溶媒を除去した後、80容量%1、3−ブタンジオール水溶液を加え、ユーカリノキ抽出物を得た(固形分0.6重量%)。
実施例1 VEGFの遺伝子発現に及ぼす作用
(1)材料及び方法
評価は以下の手順で行った。試験には正常ヒト新生児包皮由来表皮角化細胞(クラボウ:凍結NHEK(F)、Lot.4C0891)を用いた。1穴あたり2×104cells/ml になるように細胞を6穴マイクロプレート3枚に播種した。培養にはDefined keratinocyte-SFM(SFM培地、ギブコ)を用い、5%CO2、37℃の条件下で培養した。細胞密度が50〜60%コンフルエントに達した後、培地を添加剤不含のDefined keratinocyte-SFM培地(SFM(−)培地)に交換した。細胞をSFM(−)培地に24時間馴化させた後、培地を、上記製造方法で製造したユーカリノキ抽出物を任意の濃度で添加したSFM(−)培地に交換し試験を開始した。なお、陰性コントロールとしてはユーカリノキ抽出物無添加のSFM(−)培地を用いた。試験開始から8時間後、培地を吸引除去し、細胞をPBS(ギブコ)で2回洗浄した。洗浄後、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて細胞からtotal RNAを抽出した。得られたtotal RNAから定量的RT-PCR法によってVEGFの遺伝子発現量を定量した。
(2)結果
これらの評価結果を、陰性コントロールのVEGFの遺伝子発現量を1とした場合の相対値にて図1に示す。図1より、ユーカリノキ抽出物濃度依存的にVEGFの遺伝子発現量の増加が認められた。
実施例2 VEGFの産生に及ぼす作用
(1)材料及び方法
評価は以下の手順で行った。試験には正常ヒト新生児包皮由来表皮角化細胞(クラボウ:凍結NHEK(F)、Lot.4C0891)を用いた。1穴あたり2×104cells/ml になるように細胞を6穴マイクロプレート3枚に播種した。培養にはDefined keratinocyte-SFM(SFM培地、ギブコ)を用い、5%CO2、37℃の条件下で培養した。細胞密度が50〜60%コンフルエントに達した後、培地を添加剤不含のDefined keratinocyte-SFM培地(SFM(−)培地)に交換した。細胞をSFM(−)培地に24時間馴化させた後、培地を、上記製造方法で製造したユーカリノキ抽出物を任意の濃度で添加したSFM(−)培地に交換し試験を開始した。なお、陰性コントロールとしてはユーカリノキ抽出物無添加のSFM(−)培地を用いた。試験開始から16時間後、培地を回収し、培養上清中に分泌されたVEGFの量をELISAキット(R&Dシステムズ)により定量した。
(2)結果
これらの評価結果を図2に示す。図2より、ユーカリノキ抽出物のVEGFの産生促進作用が認められた。
実施例1及び実施例2より、ユーカリノキ抽出物は優れたVEGF産生促進効果を有することが明らかとなった。
VEGF遺伝子発現量を示した図である。 VEGF産生量を示した図である。

Claims (1)

  1. ユーカリノキ又はその抽出物を有効成分とするVEGF産生促進剤。
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