JP5517861B2 - 変速機のシフトアンドセレクトシャフトアッセンブリ - Google Patents

変速機のシフトアンドセレクトシャフトアッセンブリ Download PDF

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Description

本発明は、車両用の変速機のケースに組付・固定されるシフトアンドセレクトシャフトアッセンブリに関する。以下、「シフトアンドセレクトシャフト」を「S&Sシャフト」と呼ぶこともある。
従来より、車両用の手動変速機のケースに組付・固定されるS&Sシャフトアッセンブリが広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。係るS&Sシャフトアッセンブリの一例として、本出願人は、図1に示すS&Sシャフトアッセンブリを製造している。
図1に示すS&Sシャフトアッセンブリでは、S&Sシャフト20は、変速機のケースに固定される固定部材10に対して、シフトレバーのセレクト操作により軸方向に移動可能に、且つ、シフトレバーのシフト操作により軸周りに回転可能に、固定部材10に支持されている。「セレクト操作」、及び「シフト操作」とはそれぞれ、図2に示すようなシフトパターンにおいて、シフトレバーの横方向(車両左右方向)の操作、及びシフトレバーの縦方向(車両前後方向)の操作を指す。以下、「軸方向」を「セレクト方向」と呼び、「軸方向と直角の方向」を「シフト方向」と呼ぶこともある。
S&Sシャフト20には、径方向外側に突出するインナーレバー21(図1では、2本)が固設されている。シフトレバーがシフト中立位置(図2を参照)にある状態において、セレクト操作によりインナーレバー21が固定部材10に対して軸方向に移動し、インナーレバー21と係合する対象となる1つのシフトヘッドが選択される。そして、シフト操作によりシフトレバーがシフト中立位置から対応する変速段のシフト完了位置まで移動することにより、インナーレバー21が固定部材10に対して軸周りに回転し、選択された1つのヘッドが中立位置からシフト方向に沿って移動する。この結果、対応する変速段が達成される。
このS&Sシャフト20の側面には、シフトカムプレート30が固定されている。シフトカムプレート30の外側面には、S&Sシャフト20の周方向の位置に応じてS&Sシャフトの軸心からの距離が変化するカム面Prが形成されている。S&Sシャフトアッセンブリが手動変速機のケースに組付・固定された組み付け完了状態では、カム面Prは、ケース内においてS&Sシャフト20の径方向にのみ移動可能に配置され且つ弾性力により径方向の内側に向けて付勢される押圧部材(ボール等)により、径方向の内側に向けて常時押圧される(後述する図6を参照)。
この押圧力とカム面Prの傾斜とに起因して、S&Sシャフト20には、S&Sシャフト20の固定部材10に対する回転位置に応じて軸周りに回転駆動するモーメントが作用する。以下、このモーメントを「ディテントモーメント」と呼ぶ。このディテントモーメントは、シフト操作の操作力(以下、「シフト荷重」と呼ぶ)に影響を与える。即ち、カム面Prの輪郭形状を調整することにより、シフト中立位置からシフト完了位置までにおけるシフト荷重の変化特性が調整され得る。本発明者は、シフト中立位置からシフト完了位置までにおける適切なシフト荷重の変化特性を得ることができるカム面の輪郭形状を見出した。
特開2009−121656号公報
本発明の目的は、S&Sシャフトアッセンブリにおいて、ディテントモーメントによってシフト中立位置からシフト完了位置までにおける適切なシフト荷重の変化特性を得ることができるものを提供することにある。
本発明に係るS&Sシャフトアッセンブリは、変速機のケース(ハウジング)に固定される固定部材と、S&Sシャフトと、シフトカムプレートとを備える。S&Sシャフトは、シフトレバーのセレクト操作に応じて前記固定部材に対して軸方向(セレクト方向)に移動するとともにシフトレバーのシフト操作に応じて前記固定部材に対して軸周りに回動するように配設される。S&Sシャフトには、径方向外側に突出するインナーレバーが固設されている。
シフトカムプレートは、S&Sシャフトの側面に固定される。シフトカムプレートの外側面は、S&Sシャフトの周方向の位置に応じてS&Sシャフトの軸心からの距離が変化するカム面を含む。このカム面は、前記ケース内においてS&Sシャフトの径方向にのみ移動可能に配置され且つ弾性力(弾性部材)により前記径方向の内側に向けて付勢される押圧部材により、前記径方向の内側に向けて常時押圧される。これにより、S&Sシャフトの固定部材に対する回転位置に応じて上述したディテントモーメントが発生する。
このS&Sシャフトアッセンブリでは、シフトレバーが前記シフト操作における中立位置(シフト中立位置)にある状態において前記セレクト操作に応じて、前記軸方向(セレクト方向)に沿って並列に複数配置されたシフトヘッドのうち前記インナーレバーと係合する1つのシフトヘッドが選択され得る。前記シフト操作により前記シフトレバーが前記シフト中立位置から対応する変速段のシフト完了位置まで移動することにより、前記インナーレバーが前記選択された1つのシフトヘッド(の凹部)を前記軸方向と直角のシフト方向に押して、前記シフトヘッドが前記シフト方向に沿って移動し、対応する変速段が達成される。
このS&Sシャフトアッセンブリの特徴は、以下の点にある。即ち、前記カム面は、前記径方向の外側に向けて突出する突出部を備える。この突出部は、前記軸方向に沿う第1平面部と、前記軸方向に沿う第2平面部と、前記第1、第2平面部を結ぶ前記軸方向に沿う曲面部、とから構成される。
前記シフトレバーが前記シフト中立位置から前記シフト完了位置まで移動するにつれて、前記カム面上における前記押圧部材の押圧位置(押圧点)が前記第1平面部から前記曲面部を経由して前記第2平面部まで移動する。
前記曲面部上の前記周方向の位置が「前記曲面部と前記第1平面部との境界」から「前記曲面部と前記第2平面部との境界」まで移動するにつれて、前記軸方向に垂直な平面内における前記曲面部の輪郭の曲率半径が徐々に増大する。前記曲面部の輪郭は、楕円の輪郭における長軸と短軸とで挟まれた部分の一部又は全部により構成され得る。この場合、前記曲面部と前記第1平面部との境界が前記部分における前記長軸に近い側に位置し、前記曲面部と前記第2平面部との境界が前記部分における前記短軸に近い側に位置する。
後に詳述するように、カム面における突出部を上記のように構成することにより、ディテントモーメントによってシフト中立位置からシフト完了位置までにおける適切なシフト荷重の変化特性を得ることができる。
本発明の実施形態に係るS&Sシャフトアッセンブリを示した斜視図である。 シフトレバーのシフトパターンの一例を示した図である。 図1に示したシフトカムプレートを示した側面図及び平面図である。 セレクト操作によって、インナーレバーが軸方向に移動して係合すべきシフトヘッドが選択される様子を示した図である。 シフト操作によって、インナーレバーが軸周りに回転して選択されたシフトヘッドがシフト方向に移動する様子を示した図である。 シフトカムプレートのカム面がボールにより押圧される様子を示した図である。 比較例におけるカム面の詳細な輪郭形状を示した図である。 図7に示した比較例が採用された場合における、シフトストロークに対するシフト荷重の変化特性を示したグラフである。 図7に示した比較例が採用された場合のシフト中立位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 図7に示した比較例が採用された場合のシフト荷重(戻し荷重)が最大となる位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 図7に示した比較例が採用された場合のシフト荷重がゼロとなる位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 図7に示した比較例が採用された場合のシフト荷重(助勢荷重)が最大となる位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 図7に示した比較例が採用された場合のシフト完了位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 本発明の実施形態におけるカム面の詳細な輪郭形状を示した図である。 図14に示した実施形態が採用された場合における、シフトストロークに対するシフト荷重の変化特性を示したグラフである。 図14に示した実施形態が採用された場合のシフト中立位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 図14に示した実施形態が採用された場合のシフト荷重(戻し荷重)が最大となる位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 図14に示した実施形態が採用された場合のシフト荷重がゼロとなる位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 図14に示した実施形態が採用された場合のシフト荷重(助勢荷重)が最大となる位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。 図14に示した実施形態が採用された場合のシフト完了位置における、カム面とボールとの位置関係を示した図である。
以下、本発明の実施形態に係るS&Sシャフトアッセンブリ、並びに、このS&Sシャフトアッセンブリが組み付けられた手動変速機について図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係るS&Sシャフトアッセンブリは、手動変速機のケース(ハウジング、図示せず)に固定される固定部材10と、S&Sシャフト20と、シフトカムプレート30と、を備えている。
この実施形態は、例えば、図2に示すようなパターンでシフトレバーが操作される車両に適用される。図2に示すように、シフトレバーの横方向(車両左右方向)の操作を「セレクト操作」と呼び、シフトレバーの縦方向(車両前後方向)の操作を「シフト操作」と呼ぶ。
再び、図1を参照すると、固定部材10は、ボルト及びナット等の周知の締結手段の一つを用いて、図示しない手動変速機のケースに固定される。
S&Sシャフト20は、突起部11,12と接続されたそれぞれの動力伝達部材(ワイヤ等)を介して、シフトレバー側のリンク機構と接続されている。S&Sシャフト20は、シフトレバーのセレクト操作に応じて、突起部11と接続された動力伝達部材から受ける駆動力により、固定部材10に対して軸方向に移動するように、固定部材10に支持されている。また、S&Sシャフト20は、シフトレバーのシフト操作に応じて、突起部12と接続された動力伝達部材から受ける駆動力により、固定部材10に対して軸周りに回動するように、固定部材10に支持されている。この支持態様は、S&Sシャフト20が固定部材10に対して軸方向に移動可能且つ軸周りに回動可能である限りにおいて如何なる態様であってもよい。以下、「軸方向」を「セレクト方向」と呼び、「軸方向と直角の方向」を「シフト方向」と呼ぶこともある。
S&Sシャフト20には、径方向外側に突出する2本のインナーレバー21,21が固設されている。インナーレバー21,21は、インナーレバーが形成された「S&Sシャフト本体とは別の部材」をS&Sシャフト本体に組み付けることにより、S&Sシャフト20に固設されてもよいし、1つの部材を削りだし等により加工してS&Sシャフト20に形成されてもよい。
シフトカムプレート30は、S&Sシャフト20の側面に固定されている。シフトカムプレート30は、シャフト本体に組み付けられる「S&Sシャフト本体とは別の部材」に取り付けられてもよいし、シャフト本体に直接取り付けられてもよい。
図3に示すように、シフトカムプレート30の外側面には、S&Sシャフト20の周方向の位置に応じてS&Sシャフトの軸心からの距離が変化するカム面Prが形成されている。カム面Prは、S&Sシャフト20の軸線に対して(図3において)左右対称の輪郭形状を有している。以下、説明の便宜上、図3において、前記軸線に対して左側の輪郭形状のみについて説明する。
カム面Prは、径方向の外側に向けて突出する前記軸線に沿う突出部を備えている。この突出部は、前記軸線に沿う第1平面部P1と、前記軸線に沿う第2平面部P2と、前記第1、第2平面部P1,P2を結ぶとともに前記軸線に沿う曲面部Cとからなる。
以上、シフトレバーのセレクト操作又はシフト操作に応じて、インナーレバー21,21とシフトカムプレート30とは一体で、固定部材10に対してセレクト方向又はシフト方向に移動する。
(作動)
以上説明したS&Sシャフトアッセンブリが、手動変速機のケースに組付・固定される。手動変速機の組み付け完了状態では、図4に模式的に示すように、複数本のフォークシャフトにそれぞれ固定された複数のシフトヘッド(以下、「ヘッド」と呼ぶ。)が、セレクト方向に沿って並列に配置される。各ヘッド(各フォークシャフト)について、図4に示す位置を「中立位置」と呼ぶ。図4に示す状態は、シフトレバーがシフト中立位置(図2を参照)にある状態に対応する。図4に示す状態では、手動変速機はニュートラル状態にある。
シフトレバーがシフト中立位置(図2を参照)にある場合において、セレクト操作によりインナーレバー21が固定部材10に対して軸方向に移動し、インナーレバー21と係合する対象となるヘッドが選択される。そして、シフト操作によりシフトレバーがシフト中立位置から対応する変速段のシフト完了位置(図2を参照)まで移動することにより、図5に模式的に示すように、インナーレバー21が「選択された1つのヘッド」(斜線で示したヘッド)をシフト方向に押す。この結果、この選択されたヘッド(従って、選択されたフォークシャフト)が中立位置からシフト方向に移動する。これにより、図示しないシフトフォークを介して変速段切換用の対応するスリーブが移動する。この結果、対応する変速段のギヤ列からなる動力伝達経路が形成され、対応する変速段が達成される。
また、図6に示すように、手動変速機の組み付け完了状態では、シフトカムプレート30のカム面Prは、球形のボールBにより、径方向内側に向けて常時押圧される。具体的には、このボールBは、手動変速機のケース内において固定配置された弾性力付与機構M内において、固定部材10に対してセレクト方向及びシフト方向には移動不能に且つ径方向にのみ移動可能に収容されている。
ボールBは、弾性力付与機構M内に設けられた弾性部材(スプリング等、図示せず)によって径方向内側に向けた弾性力(図6における黒い矢印を参照)を常時受けている。この弾性力によってボールBは、カム面Prを径方向内側に向けて常時押圧する。この弾性力は、S&Sシャフト20の軸心0からのボールBの距離が増大するにつれて増大してもよいし略一定でもよい。この押圧力とカム面Prの傾斜とに起因して、S&Sシャフト20には、S&Sシャフト20の固定部材10に対する回転位置に応じて、S&Sシャフト20を軸周りに回転駆動するモーメント(上述したディテントモーメント)が作用し得る。
このディテントモーメントは、シフト操作の操作力(シフト荷重)に影響を与える。従って、カム面Prの輪郭形状を調整することにより、シフト中立位置からシフト完了位置までにおけるシフト荷重の変化特性が調整され得る。以下、本発明の実施形態に係るカム面Prの輪郭形状を説明するための準備として、先ず、比較例に係るカム面Prの輪郭形状について説明する。
(比較例に係るカム面の輪郭形状)
図7に示すように、比較例では、カム面Prの突出部の先端部分である曲面部Cの輪郭(軸方向に垂直な平面内の輪郭、図7にて示される曲線)が、第1、第2平面部P1,P2の輪郭(軸方向に垂直な平面内の輪郭、図7にて示される2つの直線)と接する円弧になっている。図7において、点aは、曲面部Cと第1平面部P1との境界点(第1平面部P1の輪郭である直線と曲面部Cの輪郭である円弧との接点)であり、点cは、曲面部Cと第2平面部P2との境界点(第2平面部P2の輪郭である直線と曲面部Cの輪郭である円弧との接点)である。点bは、カム面Prの突出部(曲面部C)の先端(S&Sシャフト20の軸心Oから最も離れた点)である。なお、上述したように、カム面Prは、S&Sシャフト20の軸線に対して(図7において)左右対称の輪郭形状を有していて、前記軸線に対して右側についても上記と同様の輪郭形状を有している。
図8の実線は、この比較例が採用された場合における「シフト中立位置からシフト完了位置までにおけるシフト荷重の変化特性」の一例を示す。図8において、シフトストロークとは、シフト中立位置(図2を参照)からのシフトレバーの縦方向(車両前後方向)の移動量である。従って、シフトストロークは、シフト中立位置では「0」となり、シフト完了位置では最大値S4となる。
図8において、正の値のシフト荷重は、シフトレバーをシフト中立位置に戻す方向の力(シフトレバーがシフト中立位置からシフト完了位置に向けて操作される場合のシフトレバーの操作力に対抗する力。以下、「戻し荷重」と呼ぶ)を意味する。負の値のシフト荷重は、シフトレバーをシフト完了位置に移動させる方向の力(シフトレバーがシフト中立位置からシフト完了位置に向けて操作される場合のシフトレバーの操作力をアシストする力。以下、「助勢荷重」と呼ぶ)を意味する。以下、図9〜図13を参照しながら、図8に示すシフト荷重の変化特性について説明していく。
図9は、シフトストローク=0の場合(即ち、シフト中立位置の場合)におけるカム面PrとボールBとの位置関係を示す。この場合、ボールBは、カム面Prの左右一対の突出部の間に形成される凹部に入り込み、左右一対の第1平面部P1,P1とそれぞれ接触している。この結果、向きが反対で大きさが同じ2つのディテントモーメントがS&Sシャフト20に作用することにより、S&Sシャフト20の回転位置がその大きさのモーメントをもって図9に示す位置に保持される。即ち、シフトレバーがシフト中立位置に保持される。
図9に示す状態にてシフトストロークが「0」から僅かに増大すると、S&Sシャフト20が図9において反時計回りに回転し、ボールBは、左側の第1平面部P1のみと接触するようになる。即ち、S&Sシャフト20を時計回りに回転駆動するディテントモーメントのみが作用開始し、この結果、戻し荷重が発生開始する。シフトストロークが「0」から増大するにつれて、ボールBとカム面Prとの接点が点aに近づいていく。これに伴い、時計回りのディテントモーメントが増大していく。この結果、図8に示すように、戻し荷重が増大していく。
このようにシフトストロークの増大につれて時計回りのディテントモーメント(従って、戻し荷重)が増大する状態は、図10に示すように、ボールBとカム面Prとの接点が点a(或いは、点aから点bに向けて若干ずれた点)に到達するまで(シフトストロークがS1に達するまで)継続する。以降、シフトストロークがS1から増大するにつれて時計回りのディテントモーメント(従って、戻し荷重)が減少していく。即ち、シフトストローク=S1にて、戻し荷重は最大となる。なお、図10(後出する図においても同様)において白い矢印は、ディテントモーメントの向きを示す。
図11に示すように、ボールBとカム面Prとの接点が点bに到達すると(シフトストローク=S2)、時計回りのディテントモーメントが「0」に達し、戻し荷重(シフト荷重)が「0」になる。以降、シフトストロークがS2から増大するにつれて、時計回りのディテントモーメントに代えて反時計回りのディテントモーメント(従って、助勢荷重)が「0」から増大していく。
このようにシフトストロークの増大につれて反時計回りのディテントモーメント(従って、助勢荷重)が増大する状態は、図12に示すように、ボールBとカム面Prとの接点が点c近傍に到達するまで(シフトストロークがS3に達するまで)継続する。以降、シフトストロークがS3からS4に向けて増大するにつれて反時計回りのディテントモーメント(従って、助勢荷重)が減少していく。即ち、シフトストローク=S3にて、助勢荷重は最大となる。
そして、図13に示すように、シフトストロークがS4に達すると(シフト完了位置)、所定の大きさの反時計回りのディテントモーメント(従って、助勢荷重)が残存した状態でシフト操作が完了する。この残存するディテントモーメントによって、シフトレバーがシフト完了位置に保持される。以上、図9〜図13を参照しながら図8にて実線で示す特性について説明した。
(比較例における問題点)
ところで、一般には、シフトストロークに対するシフト荷重の変化において或る程度のメリハリがあった方がよいといわれる。このためには、例えば、図8に2点鎖線で示すように、シフトストロークがS1〜S3の間(特に、S1〜S2の間)においてシフト荷重の減少勾配(傾き)を出来るだけ大きくすることが好ましい。シフト荷重の変化特性を実線で示す特性から2点鎖線で示す特性に変更することは、カム面Prの突出部の曲面部Cの輪郭を構成する円弧の半径を小さくすることにより達成され得る。
しかしながら、シフト荷重の変化特性を実線で示す特性から2点鎖線で示す特性に変更ことは、以下の現象1〜3の発生に繋がる。
現象1:S1(戻し荷重が最大となるシフトストローク)が増大側(図8において右側)に移動する。
現象2:S3(助勢荷重が最大となるシフトストローク)が減少側(図8において左側)に移動する。
現象3:助勢荷重の最大値が増大(図8において下側に移動)する。
ここで、上記現象1の発生は以下の理由により好ましくない。即ち、一般に、S1は、ボーク位置近傍に設定されることが好ましいとされる。ボーク位置とは、変速機内のシンクロナイザの同期が完了するタイミングに対応するシフトストロークである。従って、S1をボーク位置から大きく増大側(図8において右側)に移動することは好ましくない。
また、上記現象2,3の発生も以下の理由により好ましくない。即ち、S3が減少側(図8において左側)に移動する、並びに、助勢荷重の最大値が増大(図8において下側に移動)すると、シフトレバーがシフト完了位置からシフト中立位置に向けて操作される際の操作フィーリングが悪化する(所謂、ぐずぐず感、シフト重い感が助長される)といわれている。従って、S3が減少側(図8において左側)に移動すること、並びに、助勢荷重の最大値が増大(図8において下側に移動)することも好ましくない。
以上のことから、カム面Prの突出部の曲面部Cの輪郭が円弧で構成される比較例が採用される限りにおいては、上記現象1〜3の発生を抑制しながらS1〜S3の間(特に、S1〜S2の間)においてシフト荷重の減少勾配(傾き)を大きくすることは非常に困難である。
(本発明の実施形態に係るカム面の輪郭形状)
これに対し、図14に示すように、本発明の実施形態では、曲面部Cの輪郭(軸方向に垂直な平面内の輪郭、図14にて示される曲線)が、第1、第2平面部P1,P2の輪郭(軸方向に垂直な平面内の輪郭、図14にて示される2つの直線)と接する楕円の輪郭の一部になっている。より具体的には、曲面部Cの輪郭は、楕円の輪郭における長軸と短軸とで挟まれた部分の一部又は全部により構成されている。図7と同様、図14において、点aは、曲面部Cと第1平面部P1との境界点(第1平面部P1の輪郭である直線と曲面部Cの輪郭である楕円との接点)であり、点cは、曲面部Cと第2平面部P2との境界点(第2平面部P2の輪郭である直線と曲面部Cの輪郭である楕円との接点)である。点bは、カム面Prの突出部(曲面部C)の先端(軸心Oから最も離れた点)である。
点aは、楕円の輪郭における長軸と短軸とで挟まれた部分における長軸に近い側に位置し、点cは、同部分における短軸に近い側に位置している。即ち、曲面部C上の周方向の位置が点aから点cまで移動するにつれて、曲面部Cの輪郭(軸方向に垂直な平面内の輪郭、図14にして示される曲線)の曲率半径が徐々に増大する。なお、上述した比較例と同様、カム面Prは、S&Sシャフト20の軸線に対して(図14において)左右対称の輪郭形状を有していて、前記軸線に対して右側についても上記と同様の輪郭形状を有している。
図15に示す実線は、この実施形態が採用された場合における「シフト中立位置からシフト完了位置までにおけるシフト荷重の変化特性」の一例を示す。なお、図15にて2点鎖線で示す特性は、図8にて実線で示す特性(即ち、比較例が採用された場合の特性)と同じである。図16〜図20はそれぞれ、この実施形態が採用された場合における図9〜図13に対応する図であり、これらのついての詳細な説明は省略する。
図15の実線と2点鎖線との比較から理解できるように、本発明の実施形態では、上記現象1〜3の発生を抑制しながらS1〜S3の間(特に、S1〜S2の間)においてシフト荷重の減少勾配(傾き)を大きくすることができる。これは、シフトストロークがS1〜S2の間では、ボールBとカム面Prとの接点における曲面部Cの曲率半径が比較例に対して小さくされ得、且つ、シフトストロークがS2〜S3の間では、ボールBとカム面Prとの接点における曲面部Cの曲率半径が比較例に対して大きくされ得ることに起因する。
以上説明したように、上記実施形態によれば、カム面Prの突出部の曲面部Cの輪郭が円弧に代えて「楕円の輪郭の一部」で構成されることにより、ディテントモーメントによってシフト中立位置からシフト完了位置までにおける適切なシフト荷重の変化特性を得ることができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、押圧部材として、球形のボールBが使用されているが、先端が半球型のピン等が使用されてもよい。
また、上記実施形態では、カム面Prは、S&Sシャフト20の軸線に対して(図14において)左右対称の輪郭形状を有しているが、左右対称の輪郭形状を有していなくてもよい。また、S&Sシャフト20の軸線に対して左右の一方側の曲面部Cの輪郭として「楕円の輪郭の一部」が採用され、且つ、左右の他方側の曲面部Cの輪郭として「円弧」が採用されてもよい。
また、上記実施形態では、曲面部Cの輪郭として「楕円の輪郭の一部」が採用されているが、曲面部C上の周方向の位置が点aから点cまで移動するにつれて曲面部Cの輪郭の曲率半径が徐々に増大する限りにおいてその他の輪郭形状が採用されてもよい。
10…固定部材、20…S&Sシャフト、21…インナーレバー、30…シフトカムプレート、Pr…カム曲面、P1…第1の平面部、P2…第2の曲面部、C…曲面部

Claims (1)

  1. 変速機のケースに固定される固定部材と、
    シフトレバーのセレクト操作に応じて前記固定部材に対して軸方向に移動するとともに前記シフトレバーのシフト操作に応じて前記固定部材に対して軸周りに回動するように配設されたシフトアンドセレクトシャフトであって径方向外側に突出するインナーレバーが固設されたシフトアンドセレクトシャフトと、
    前記シフトアンドセレクトシャフトの側面に固定されるシフトカムプレートであって、外側面が前記シフトアンドセレクトシャフトの周方向の位置に応じて前記シフトアンドセレクトシャフトの軸心からの距離が変化するカム面を含み、前記ケース内において前記シフトアンドセレクトシャフトの径方向にのみ移動可能に配置され且つ弾性力により前記径方向の内側に向けて付勢される押圧部材により前記カム面が前記径方向の内側に向けて常時押圧されるシフトカムプレートと、
    を備えた、変速機のシフトアンドセレクトシャフトアッセンブリであって、
    前記シフトレバーが前記シフト操作における中立位置であるシフト中立位置にある状態において前記セレクト操作に応じて、前記軸方向に沿って並列に複数配置されたシフトヘッドのうち前記インナーレバーと係合する1つのシフトヘッドが選択され、前記シフト操作により前記シフトレバーが前記シフト中立位置から対応する変速段のシフト完了位置まで移動することにより、前記インナーレバーが前記選択された1つのシフトヘッドを前記軸方向と直角のシフト方向に押して前記シフトヘッドが前記シフト方向に沿って移動し、前記対応する変速段が達成されるように構成され、
    前記カム面は、前記径方向の外側に向けて突出する突出部であって前記軸方向に沿う第1平面部と前記軸方向に沿う第2平面部と前記第1、第2平面部を結ぶ前記軸方向に沿う曲面部とからなる突出部を備え、
    前記シフトレバーが前記シフト中立位置から前記シフト完了位置まで移動するにつれて、前記カム面上における前記押圧部材の押圧位置が前記第1平面部から前記曲面部を経由して前記第2平面部まで移動し、
    前記曲面部上の前記周方向の位置が前記曲面部と前記第1平面部との境界から前記曲面部と前記第2平面部との境界まで移動するにつれて、前記軸方向に垂直な平面内における前記曲面部の輪郭の曲率半径が徐々に増大するように構成され
    前記曲面部の輪郭は、楕円の輪郭における長軸と短軸とで挟まれた部分の一部又は全部により構成され、前記曲面部と前記第1平面部との境界が前記部分における前記長軸に近い側に位置し、前記曲面部と前記第2平面部との境界が前記部分における前記短軸に近い側に位置するように構成された、変速機のシフトアンドセレクトシャフトアッセンブリ。
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