以下、本発明の物品搬送設備の実施形態を、物品Qを搬送する搬送装置としてのスタッカクレーン3が物品収納棚1に対する物品Qの入庫作業及び出庫作業を搬送作業として行うように備えられた自動倉庫設備SUを例に、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、物品収納棚1は、物品出し入れ方向が互いに対向するように間隔を隔てて一対設置されている。各物品収納棚1は、前後一対の支柱1aが左右方向に間隔を隔てて床面に立設され、前後一対の支柱1aの夫々には、左右方向に延びる載置支持部1bを上下方向に間隔を隔てて複数配設されている。そして、前後一対の支柱1aと左右一対の載置支持部1bとにより一つの収納部4が形成され、この収納部4が縦横に複数並べて設けられている。
一対の物品収納棚1における複数の収納部4の位置は、物品収納棚1の何れであるかを示すバンク値、物品収納棚1における棚横幅方向(左右方向)の位置を示すベイ値、物品収納棚1における上下方向の位置を示すレベル値を組み合わせた収納部位置情報により特定される。
各物品収納棚1の間にはスタッカクレーン3の直線状の走行経路2が形成されている。走行経路2の床面側には走行レール5が、また、天井側にはガイドレール6が物品収納棚1の長手方向に沿って設置されている。そして、走行レール5の一端側には、スタッカクレーン3の運転を管理する地上側コントローラ7と、走行レール5を挟んで一対の荷載置台8とが設けられている。荷載置台8の高さは、物品収納棚1における最下段に位置する収納部4のレベルに合わせられている(図15(c)及び図16(c)参照)。
スタッカクレーン3は、走行レール5上を走行経路2に沿って走行自在な走行台車10と、この走行台車10に立設された走行台車10の走行方向で前後一対の四角柱状の昇降マスト11a,11bと、これらの昇降マスト11a,11bに沿って形成された昇降経路を昇降自在な昇降台12とを備えて構成されている。
そして、走行台車10が走行経路2の地上側の走行レール5に走行案内され、かつ、昇降マスト11a,11bの上端部を連結する上部フレーム15が走行経路2の天井側のガイドレール6に案内された状態で走行台車10が自走することにより、物品収納棚1の横幅方向に沿って走行自在としてある。
図2に示すように、走行台車10には、走行レール5上を走行自在な前後一対の走行車輪23が設けられ、これら一対の走行車輪23うちの車体前後方向の一端側の車輪が、走行用モータM1にて駆動される推進用の駆動輪23aとして構成され、車体前後方向の他端側の車輪が、遊転自在な従動輪23bとして構成されている。
また、走行台車10には、走行経路2におけるスタッカクレーン3の走行位置を検出するための、走行用レーザ距離計25が設けられている。走行用レーザ距離計25は、走行経路における基準位置として走行経路2の地上側コントローラ7側の端部付近の位置に設けられた反射板26に測距用のレーザ光を投射してその反射光を受光することで、反射板26までの距離、すなわち、地上側の基準位置までの距離を計測する。
さらに、走行台車10には、昇降台12の昇降位置を検出するための、昇降用レーザ距離計20が設けられている。昇降用レーザ距離計20は、レーザ光の光路を水平方向から鉛直上方に屈曲させるために走行台車10に設けられたミラー22を介して測距用のレーザ光を昇降台12の下面に設置された反射板21に照射して、レーザ光の屈曲した光路に沿った反射板21までの距離を計測する。
昇降台12は、巻取りドラム18に巻回された一対の昇降ワイヤ14にて吊り下げ支持された状態で設けられている。一対の昇降ワイヤ14は、上部フレーム15に設けられた上部シーブ16及び前方側マスト11a(スタッカクレーン3が地上側コントローラ7から遠ざかる方向に走行する場合の進行方向(以下前進方向という。)で前方に位置する側のマストをいう。)の下部に設けられた中間シーブ17にて案内されている。そして、昇降用モータM2が巻取りドラム18を回転駆動することで、一対の昇降ワイヤ14を送り出し操作及び巻き取り操作して昇降台12を昇降させることができるようになっている。
なお、図示は省略するが、昇降台12には、前方側マスト11aに沿って昇降自在で空荷状態の昇降台12と略同じ重量のカウンタウェイトが上記一対の昇降ワイヤ14とは異なる連結ワイヤにより接続されている。これにより、昇降台12を上昇させるときの操作力の低減による省電力を図っている。
昇降台12には、スライドフォーク9を出退させることで移載対象箇所としての収納部4や荷載置台8との間で物品Q(具体的には、パレットP及びこのパレットPに載置された荷W)を移載自在な移載装置13が設けられている。昇降台12には、移載装置13の他、スライドフォーク9を出退駆動させる出退用モータM3が設けられている。出退用モータM3を駆動する電力は、前方側マスト11aの下部側から図外の電力ケーブルにより供給される。
このように、搬送装置としてのスタッカクレーン3の搬送作動を駆動する電動モータとして、走行台車10の走行作動を駆動する走行用モータM1及び昇降台12の昇降作動を駆動する昇降用モータM2が設けられており、搬送装置としてのスタッカクレーン3は、走行台車10の走行作動及び昇降台12の昇降作動により移載装置13を複数の移載対象箇所の間で移動させて物品Qを搬送する搬送作動を行う。
前方側マスト11aの下部には、制御盤24が設置されている。制御盤24には、図3に示す、走行用モータM1の回転作動を制御する走行駆動制御手段としての走行用インバータINV1、昇降用モータM2の回転作動を制御する昇降駆動制御手段としての昇降用インバータINV2、出退用モータM3の回転作動を制御する出退駆動制御手段としての出退用インバータINV3、これらのインバータにモータ駆動用の電力を供給する電源回生共通コンバータCNV、及び、マイクロコンピュータを用いて構成されたクレーンコントローラ27等が収容されている。
図3に示すように、クレーンコントローラ27は、地上側コントローラ7との間で各種の制御情報を赤外線通信装置28により通信可能に設けられており、詳しくは後述するが、地上側コントローラ7からの搬送指令に基づいて、搬送制御用プログラムを実行することで、スタッカクレーン3を搬送作動させるべく走行駆動制御手段としての走行用インバータINV1及び昇降駆動制御手段としての昇降用インバータINV2に駆動指令を指令して、走行用モータM1及び昇降用モータM2の回転作動を制御する。つまり、クレーンコントローラ27は本発明の制御手段として機能する。
クレーンコントローラ27には、走行用レーザ距離計25及び昇降用レーザ距離計20が接続されている。また、走行用インバータINV1を介して走行用モータM1が接続され、昇降用インバータINV2を介して昇降用モータM2が接続され、出退用インバータINV3を介して出退用モータM3が接続されている。走行用モータM1、昇降用モータM2及び出退用モータM3は、いずれもカゴ形誘導交流電動機であり、回転軸の回転作動量を検出するインクリメンタル式のロータリエンコーダRE1〜RE3が夫々に設けられている。
走行用モータM1の回転作動を制動する制動状態と走行用モータM1の回転作動の制動を解除する解除状態とに切換自在で、かつ、図外のブレーキ開放用電源からの電力が供給されているときには解除状態に切り換え、且つ、その電力供給が停止されるに伴って制動状態に切り換えるネガティブ式に構成された制動手段としての走行用メカニカルブレーキB1(以下、走行用ブレーキB1という。)が、走行用モータM1に設けられている。
走行用ブレーキB1に対してブレーキ開放用の電力を供給する供給状態と供給遮断状態とに切り換え自在なリレー等で構成された切り換え手段(図示せず。)が設けられており、走行制御部27Hがブレーキ解除信号を切り換え手段に出力している間は、走行用ブレーキB1にブレーキ開放用の電力が供給されて、走行用ブレーキB1が解除状態に維持され、走行制御部27Hがブレーキ解除信号を切り換え手段に出力していない間は、走行用ブレーキB1にブレーキ開放用電力が供給されず、走行用ブレーキB1が制動状態に維持されるようになっている。このように、走行制御部27Hは、走行用ブレーキB1のオン/オフを制御自在に構成されている。
同様に、昇降用モータM2には昇降用メカニカルブレーキB2(以下、昇降用ブレーキB2という。)が設けられ、昇降制御部27Vは、昇降用ブレーキB2のオン/オフを制御自在に構成されている。また、出退用モータM3には出退用メカニカルブレーキB3(以下、出退ブレーキB3という。)が設けられ、出退制御部27Fは、出退ブレーキB3のオン/オフを制御自在に構成されている。
走行用インバータINV1は、速度制御モードにより、走行用ロータリエンコーダRE1が検出する走行用モータM1の回転量情報をフィードバック情報として、走行用モータM1の回転作動速度をサーボ制御する。
具体的には、速度制御モードで動作する走行用インバータINV1は、クレーンコントローラ27の走行制御部27Hが出力する走行駆動指令にて与えられる回転作動速度にて走行用モータM1が回転作動するように、走行用ロータリエンコーダRE1が検出する回転量情報に基づいて、走行用モータM1の回転作動をフィードバック制御する。すなわち、走行用インバータINV1は、クレーンコントローラ27の走行制御部27Hから走行用モータM1についての回転作動速度による走行駆動指令が指令されると、走行用ロータリエンコーダRE1が検出する走行用モータM1の回転量情報から算出される現在の回転作動速度と、当該走行駆動指令にて指令された回転作動速度との偏差から、走行用モータM1の回転作動速度が当該走行駆動指令にて指令された回転作動速度となるように出力電圧及び出力周波数を制御する。
同様に、昇降用インバータINV2は、速度制御モードにより、昇降用ロータリエンコーダRE2が検出する昇降用モータM2の回転量情報をフィードバック情報として、昇降用モータM2の回転作動速度をサーボ制御する。
具体的には、速度制御モードで動作する昇降用インバータINV2は、クレーンコントローラ27の昇降制御部27Vが出力する昇降駆動指令にて与えられる回転作動速度にて昇降用モータM2が回転作動するように、昇降用ロータリエンコーダRE2が検出する回転量情報に基づいて、昇降用モータM2の回転作動をフィードバック制御する。すなわち、昇降用インバータINV2は、クレーンコントローラ27の昇降制御部27Vから昇降用モータM2についての回転作動速度による昇降駆動指令が指令されると、昇降用ロータリエンコーダRE2が検出する昇降用モータM2の回転量情報から算出される現在の回転作動速度と、当該昇降駆動指令にて指令された目標とする回転作動速度との偏差から、昇降用モータM2の回転作動速度が当該昇降駆動指令にて指令された回転作動速度となるように出力電圧及び出力周波数を制御する。
出退用インバータINV3は、位置制御モードにより、出退用ロータリエンコーダRE3が検出する出退用モータM3の回転量情報をフィードバック情報として、出退用モータM3の回転作動速度をサーボ制御する。
具体的には、位置制御モードで動作する出退用インバータINV3は、クレーンコントローラ27の出退制御部27Fが出力する出退駆動指令にて与えられる回転操作量だけ出退用モータM3が回転作動するように、出退用ロータリエンコーダRE3が検出する回転量情報に基づいて、出退用モータM3の回転作動をフィードバック制御する。すなわち、出退用インバータINV3は、クレーンコントローラ27の出退制御部27Fから出退用モータM3についての回転作動量による出退駆動指令が指令されると、出退用ロータリエンコーダRE3が検出する出退用モータM3の回転量情報から算出される累積の回転作動量と、当該出退駆動指令にて指令された目標とする回転作動量との偏差から、出退用モータM3の累積の回転作動量が当該出退駆動指令にて指令された回転作動量となるように出力電圧及び出力周波数を制御する。
クレーンコントローラ27は、上記の走行制御部27H、昇降制御部27V、出退制御部27Fのほか、パターン生成部27P、走行位置判定部27DH、昇降位置判定部27DVを備えている。これらの各部はいずれも、マイクロコンピュータが実行するソフトウェアを主体として、周辺の入出力回路等のハードウェアと協働してそれぞれの機能を実現している。
走行位置判定部27DHは、走行用レーザ距離計25が検出する距離情報に基づいて、走行経路2の地上側コントローラ7側の端部付近に設定された走行原点位置からの走行台車10までの距離を求め、走行経路2における走行台車10の走行位置を判定する。同様に、昇降位置判定部27DVは、昇降用レーザ距離計20が検出する距離情報に基づいて、昇降経路の下方側端部付近に設定された昇降原点位置から昇降台12までの距離を求め、昇降経路における昇降台12の昇降位置を判定する。
パターン生成部27Pは、走行方向及び昇降方向のそれぞれについて、移動元から移動先までの移動距離と、予め設定されている加速度α、上限速度V_max、減速度β、及び、微速度V_minとから、移動開始から加速度αで移動する加速期間P1、加速期間P1の後に続く上限速度V_maxで移動する定速期間P2、定速期間P2の後に続く減速度βで移動する減速期間P3、及び、減速期間P3の後に続く微速度V_minで移動する微速期間P4を規定するいわゆる台形速度パターンを生成する。そして、この台形速度パターンの時間積分値が移動元から移動先までの移動距離となっている。つまり、移動距離に応じて、定速期間P2を長短に調整することで移動元と移動先との距離だけ移動できる速度パターンが生成される。移動距離が極短い場合には、定速期間P2が規定されない場合がある。そのような場合には、上限速度V_maxに達するまでに加速度αの加速を終了するため、加速期間P1が短くなりこれにより減速期間P3も短くなる。
図4に、走行台車10を前進させるための走行速度パターンの一例を実線で、走行台車10を後退させるための走行速度パターンの一例を点線で示している。図4の例では、前進と後退とで走行距離が同じものを例示している。図4に示すように、走行速度パターンでは、前進する速度が正の値で、後退する速度が負の値で与えられる。走行用加速度αh、走行用上限速度Vh_max、走行用減速度βh、及び、走行用微速度Vh_minが予め設定されており、パターン生成部27Pは、移動元(走行開始位置)と移動先(目標走行位置)との走行方向の距離から、走行開始から走行用加速度αhで走行する走行加速期間Ph1、走行加速期間Ph1の後に続く走行用上限速度Vh_maxで走行する走行定速期間Ph2、走行定速期間Ph2の後に続く走行用減速度βhで走行する走行減速期間Ph3、及び、走行減速期間Ph3の後に続く走行用微速度Vh_minで走行する走行微速期間Ph4を規定する走行速度パターンを生成する。
走行台車10が前進するときとしては、例えば、荷載置台8で掬った入庫対象の物品Qを収納部4のいずれかに入庫するために当該収納部4まで積荷状態で移動するときのように、入庫のための搬送作業において搬送元の移載対象箇所から搬送先の移載対象箇所に移動するときや、入庫作業が完了した位置で次の搬送作業についての搬送指令が発生するのを待機している状態における移載装置13の位置よりも前進側にある収納部4から出庫対象の物品Qを掬うために当該収納部4まで空荷状態で移動するときのように、出庫のための搬送作業において待機状態の移載装置13から前進側に位置する搬送元の移載対象箇所に移動するときである。
また、走行台車10が後退するときとしては、例えば、入庫作業が完了した位置で次の搬送作業についての搬送指令が発生するのを待機している状態での移載装置13の位置から入庫対象の物品Qを掬うために荷載置台8まで空荷状態で移動するときのように、入庫のための搬送作業において待機状態での移載装置13の位置から搬送元の移載対象箇所に移動するときや、収納部4で掬った出庫対象の物品Qを出庫するために荷載置台8まで積荷状態で移動するときのように、出庫のための搬送作業において搬送元の移載対象箇所から搬送先の移載対象箇所に移動するときである。
図5に、昇降台12を上昇させるための昇降速度パターンの一例を実線で、昇降台12を下降させるための昇降速度パターンの一例を点線で示している。図5の例では、上昇と下降とで昇降距離が同じものを例示している。図4に示すように、昇降速度パターンでは、上昇する速度が正の値で、下降する速度が負の値で与えられる。昇降用加速度αv、昇降用上限速度Vv_max、昇降用減速度βv、及び、昇降用微速度Vv_minが予め設定されており、パターン生成部27Pは、移動元(昇降開始位置)と移動先(目標昇降位置)との昇降方向の距離から、昇降開始から昇降用加速度αvで昇降する昇降加速期間Pv1、昇降加速期間Pv1の後に続く昇降用上限速度Vv_maxで昇降する昇降定速期間Pv2、昇降定速期間Pv2の後に続く昇降用減速度βvで昇降する昇降減速期間Pv3、及び、昇降減速期間Pv3の後に続く昇降用微速度Vv_minで昇降する昇降微速期間Pv4を規定する昇降速度パターンを生成する。
昇降台12が上昇するときとしては、例えば、荷載置台8で掬った入庫対象の物品Qを収納部4のいずれかに入庫するために当該収納部4まで積荷状態で移動するときのように、入庫のための搬送作業において搬送元の移載対象箇所から搬送先の移載対象箇所に移動するときや、入庫作業が完了した位置で次の搬送作業についての搬送指令が発生するのを待機している状態における移載装置13の位置よりも上昇側にある収納部4から出庫対象の物品Qを掬うために当該収納部4まで空荷状態で移動するときのように、出庫のための搬送作業において待機状態の移載装置13から上昇側に位置する搬送元の移載対象箇所に移動するときである。
また、昇降台12が下降するときとしては、例えば、入庫作業が完了した位置で次の搬送作業についての搬送指令が発生するのを待機している状態での移載装置13の位置から入庫対象の物品Qを掬うために荷載置台8まで空荷状態で移動するときのように、入庫のための搬送作業において待機状態での移載装置13の位置から搬送元の移載対象箇所に移動するときや、収納部4で掬った出庫対象の物品Qを出庫するために荷載置台8まで積荷状態で移動するときのように、出庫のための搬送作業において搬送元の移載対象箇所から搬送先の移載対象箇所に移動するときである。
電源回生共通コンバータCNVは、給電線29から受電した三相交流電力を直流電力に変換して各インバータに直流電力を供給する電力供給手段として機能するとともに、走行用モータM1、昇降用モータM2、出退用モータM3の少なくとも一つが回生運転されて回生電力が発生した場合に、回生運転されているモータについてのインバータに返還された回生電力を直流電力にて回収し、その直流電力を他のモータを力行運転させているインバータに供給する回生電力回収供給手段として機能する。なお、回生電力がモータを力行運転させているインバータが必要とする電力より小さく、モータの力行運転に必要な電力が不足する場合は、給電線29から受電する電源の電力で補う。電源回生共通コンバータCNVを設けることで、電源から受電する電力を極力低く抑えて、スタッカクレーン3のランニングコストを極力低下させるようにしている。
また、図示は省略するが、電源回生共通コンバータCNVは、回生電力のうち走行用モータM1又は昇降用モータM2により消費されない余剰電力を蓄電する蓄電手段としての電気二重層キャパシタを内装している。蓄電手段としては、電気二重層キャパシタ以外のコンデンサや充電可能な二次電池などでも良い。回生運転されるモータで回生電力が発生してもモータを力行運転させているインバータがない場合や、供給先のインバータでの消費電力が回生電力を下回る場合には、余剰な回生電力による電気エネルギーが電気二重層キャパシタに蓄電される。電気二重層キャパシタに蓄電された電気エネルギーは、その後のモータの力行運転により消費される。このように、電源回生共通コンバータCNVに蓄電手段を設けることで、回生運転されるモータが出力する回生電力を極力無駄のない状態で有効に活用できるようにしている。
次に、クレーンコントローラ27の制御動作について説明する。クレーンコントローラ27は、地上側コントローラ7が指令する入庫指令又は出庫指令の搬送指令を赤外線通信装置28を介して受信すると搬送制御用プログラムを実行して、当該搬送指令にて指定された搬送元の移載対象箇所(入庫指令であれば荷載置台8であり、出庫指令であれば出庫元の収納部4である。)から搬送先の移載対象箇所(入庫指令であれば入庫先の収納部4であり、出庫指令であれば荷載置台8である。)まで物品Qを搬送するために走行台車10の走行作動、及び、昇降台12の昇降作動により移載装置13を移動させるべく、走行用モータM1及び昇降用モータM2の回転作動を制御する。以下、クレーンコントローラ27が搬送指令に基づいて実行する搬送制御について説明する。
まず、地上側コントローラ7が指令する搬送指令について説明する。地上側コントローラ7は、上位コンピュータ30から物品Qの入庫要求があると、当該入庫対象の物品Qを入庫する空き収納部4を選択する。選択した収納部4のバンク値、ベイ値、レベル値に基づいて、予め記憶部(図示せず)に記憶させてある収納部位置情報データベースから当該収納部4の位置を取得して、入庫作業の搬送先の目標停止位置として設定する。また、予め記憶部に記憶させてある荷載置台8の位置情報を取得して、入庫作業の搬送元の目標停止位置として設定する。こうして、荷載置台8を搬送元とし、選択した収納部4を搬送先とする搬送指令(入庫指令)を生成し、クレーンコントローラ27に指令する。
また、地上側コントローラ7は、上位コンピュータ30から物品Qの出庫要求があると、当該出庫対象の物品Qが収納された収納部4を在庫データベースから検索し、当該収納部4のバンク値、ベイ値、レベル値に基づいて、予め記憶部(図示せず)に記憶させてある収納部位置情報データベースから当該収納部4の位置を取得して、出庫作業の搬送元の目標停止位置として設定する。また、地上側コントローラ7は、予め記憶部に記憶させてある荷載置台8の位置情報を取得して、出庫作業の搬送先の目標停止位置として設定する。こうして、選択した収納部4を搬送元とし、荷載置台8を搬送先とする搬送指令(出庫指令)を生成し、クレーンコントローラ27に指令する。なお、在庫データベースは、入庫指令や出庫指令に基づく搬送作業を完了した旨の完了報告をクレーンコントローラ27から受信する毎に更新される。
クレーンコントローラ27が上記搬送指令に基づいて搬送制御を実行すると、まず、パターン生成部27Pにて、搬送元の移載対象箇所に移載装置13を移動させるための走行作動及び昇降作動に必要な走行速度パターン及び昇降速度パターンが生成される。
そして、走行制御部27Hが、走行台車10の走行作動を開始させた後、走行位置判定部27DHが判定する走行台車10の走行位置情報をフィードバック情報として、走行台車10の走行速度をフィードバック制御する。
具体的には、走行台車10の走行作動を開始させた後、走行速度パターンにて与えられる走行速度Vhで走行台車10が走行作動するように、走行位置判定部27DHが判定する走行台車10の走行位置情報に基づいて、走行台車10の走行速度をPID制御する。すなわち、走行制御部27Hは、走行位置判定部27DHによる走行台車10の走行位置情報の時間変化率から算出される現在の走行速度と、走行開始から現在までの経過時間に基づき走行速度パターンにて与えられる現在の目標走行速度との偏差から、PID制御方式により走行用モータM1についての目標回転作動速度を算出し、その目標回転作動速度情報を走行用インバータINV1に対して走行駆動指令として出力する。
また、昇降制御部27Vが、昇降台12の昇降作動を開始させた後、昇降位置判定部27DVが判定する昇降台12の昇降位置情報をフィードバック情報として、昇降台12の昇降速度をフィードバック制御する。
具体的には、昇降台12の昇降作動を開始させた後、昇降速度パターンにて与えられる昇降速度Vvで昇降台12が昇降作動するように、昇降位置判定部27DVが判定する昇降台12の昇降位置情報に基づいて、昇降台12の昇降速度をPID制御する。すなわち、昇降制御部27Vは、昇降位置判定部27DVによる昇降台12の昇降位置情報の時間変化率から算出される現在の昇降速度と、昇降開始から現在までの経過時間に基づき昇降速度パターンにて与えられる現在の目標昇降速度との偏差から、PID制御方式により昇降用モータM2についての目標回転作動速度を算出し、その目標回転作動速度情報を昇降用インバータINV2に対して昇降駆動指令として出力する。
このようにして、走行制御部27Hが、走行台車10の走行速度がパターン生成部27Pにて生成される走行速度パターンにより与えられる速度変化をするように現在の走行速度をフィードバック情報としてフィードバック制御し、また、昇降制御部27Vが、昇降台12の昇降速度がパターン生成部27Pにて生成される昇降速度パターンにより与えられる速度変化をするように現在の昇降速度をフィードバック情報としてフィードバック制御することで、移載装置13を搬送元の移載対象箇所に位置させる。
そして、クレーンコントローラ27が掬い処理を実行して、搬送元の移載対象箇所から搬送対象の物品Qを掬い、その後、パターン生成部27Pにて生成される搬送先の移載対象箇所まで移動するための走行速度パターン及び昇降速度パターンに基づいて、走行制御部27H及び昇降制御部27Vが走行台車10の走行速度及び昇降台12の昇降速度を制御することで、移載装置13を搬送先の移載対象箇所に位置させる。そして、クレーンコントローラ27が卸し処理を実行して、搬送先の移載対象箇所に搬送対象の物品Qを卸して、当該搬送指令(入庫指令や出庫指令)についての搬送制御を終了する。このようにして、搬送制御が1回実行されると一つの搬送作業(入庫作業や出庫作業)が完了する。
クレーンコントローラ27は、走行台車10が定格走行速度で走行し、かつ、昇降台12が定格昇降速度で昇降するように搬送制御を実行する定格運転モードと、走行台車10が、走行作動に関して省電力に適した省電力運転用走行速度で走行し、かつ、昇降台12が、昇降作動に関して省電力に適した省電力運転用昇降速度で昇降するように、搬送制御を実行する省電力運転モードとに切り換え自在に構成されている。
クレーンコントローラ27は、搬送制御を実行する度に図11に示す省電力モード判定処理を実行して、スタッカクレーン3が処理すべき搬送作業量が設定量以上である高負荷状態であるか、設定量未満である低負荷状態であるかを判別している。つまり、クレーンコントローラ27が省電力モード判定処理を実行することで、本発明の負荷状態判定手段の機能を実現している。そして、図11のフローチャートに示すように、クレーンコントローラ27は、省電力モード判定処理において、未処理の搬送指令の有無をチェックし、処理待ちの搬送指令があれば高負荷状態であると判別して省電力モードフラグをリセットすることで通常運転モードに切り換え、処理待ちの搬送指令がなければ低負荷状態であると判別して省電力モードフラグをセットすることで省電力運転モードに切り換えるように構成されている。
クレーンコントローラ27は、省電力運転モードにおいて、走行台車10の定格走行速度(本実施形態では、例えば、前進・後退ともに160[m/分]としている。)と停止状態との中間である中間走行速度(本実施形態では、例えば、前進・後退ともに80[m/分]としている。)を省電力運転用走行速度とし、昇降台12の定格昇降速度(本実施形態では、例えば、上昇・下降ともに100[m/分]としている。)と同じ昇降速度を省電力運転用昇降速度とする形態で搬送制御を実行する。
具体的には、クレーンコントローラ27は、図6及び図7に示すように、走行台車10の走行作動及び昇降台12車の昇降作動を同時に開始する形態で搬送制御を実行するように構成され、かつ、省電力運転モードにおいて、移載装置13を移動元から移動先に移動させるときに、図6(b)に示すように、昇降台12の昇降作動期間Tvが走行台車10の走行作動期間Thよりも長いと見込まれる場合には、図6(b)において実線にて示すように中間走行速度を省電力運転用走行速度とし、図6(a)に示すように、昇降台12の昇降作動期間Tvが走行台車10の走行作動期間Th以下と見込まれる場合には、走行台車10の定格走行速度を省電力運転用走行速度とする。
このように、搬送処理を実行して搬送作業を開始する時点で次の搬送作業を指令する搬送指令がない場合は必ずしも定格の搬送処理能力は必要ないとして、省電力モードにて搬送制御を実行することで、スタッカクレーン3の消費電力を抑制するようにしている。スタッカクレーン3の消費電力を抑制するに当って、発明者らは、走行作動と昇降作動との重力に対する作動方向の違いから、慣性力により運動状態を維持し易い走行作動と運動状態を維持し難い昇降作動とで、作動速度を定格から変化させた場合の省電力に対する影響が異なると考えられる点に着目し、上記のように、省電力を行う場合に異なる態様で省電力運転用の作動速度を定めるようにした。
図14及び図15の表は、走行作動(図14)及び昇降作動(図15)の夫々について作動速度の違いが消費電力へ与える影響を示すものである。表におけるデータは、発明者らがスタッカクレーン3の実機を使って行った実験により得られたものである。図14に示す走行作動の消費電力データについては、走行速度パターン(図4参照)における走行用加速度αh及び走行用減速度βh並びに走行用上限速度Vh_maxを種々の値に変更して、スタッカクレーン3を前進(a)及び後退(b)させて消費電力を計測した。図15に示す昇降作動の消費電力データについては、昇降速度パターン(図5参照)における昇降用加速度αv及び昇降用減速度βv並びに昇降用上限速度Vv_maxを種々の値に変更して、スタッカクレーン3を前進(a)及び後退(b)させて消費電力を計測した。なお、表中のデータは、複数回の実験による計測データの平均値を採用した。
図14に示すように、走行作動に関しては、図中丸で囲んだαh=0.05[G],Vh_max=80,βh=-0.05[G]のときが最も消費電力が小さくなっている。つまり、省電力に適した走行速度は、前進・後退のいずれについても、図中四角で囲んだ定格に対して50%となるαh=0.05[G],Vh_max=120,βh=-0.05[G]である。
図15に示すように、昇降作動に関しては、図中四角で囲んだ定格(αv=0.05[G],Vv_max=120,βv=-0.05[G])のときが最も消費電力が小さくなっている。つまり、省電力に適した昇降速度は、上昇・下降のいずれについても、定格と同じ昇降速度である。
クレーンコントローラ12のパターン生成部27Pは、搬送制御において、省電力走行速度パターン及び省電力昇降速度パターンを次のように決定する。まず、昇降速度パターンとして定格昇降速度を昇降用上限速度Vv_maxとする定格昇降速度パターンを生成するとともに、走行速度パターンとして定格走行速度を走行用上限速度Vh_maxとする定格走行速度パターン(図6(a)や図7で示す走行速度パターン及び図6(b)において仮想線で示す走行速度パターン)を生成する。そして、昇降開始位置から目標昇降位置まで昇降台12を昇降させるのに必要な昇降作動時間Tvを定格昇降速度パターンに基づいて算出するとともに、走行開始位置から目標走行位置まで走行台車10を走行させるのに必要な走行作動時間Thを定格走行速度パターンに基づいて算出し、図6(b)に示すように、走行作動時間Thが昇降作動時間Tv未満の場合には、中間作動速度(本実施形態では、定格走行速度の50%としている。)を走行用上限速度Vh_maxとする省電力走行速度パターン(図6(b)において実線で示す速度パターン)に定格走行速度パターンから変更して決定し、定格昇降速度パターンについてはそのまま省電力昇降速度パターンとして決定する。
このように省電力走行速度パターンを決定すると、クレーンコントローラ27は、昇降台12の昇降作動と走行台車10の走行作動を同時に開始させ、その後は、省電力走行速度パターンにより与えられる走行速度Vhにて走行台車10を走行作動させる。
クレーンコントローラ27は、搬送制御において、走行用モータM1及び昇降用モータM2を回転作動させるときは、走行用モータM1の走行用ブレーキB1及び昇降用モータM2の昇降用ブレーキB2を解除状態に維持して、走行用モータM1及び昇降用モータM2の回転作動をサーボ制御する。高負荷状態においては、搬送制御を定格運転モードで実行することで、走行用電動モータM1や昇降電動モータM2を停止状態に維持するときに、対応するメカニカルブレーキを解除状態にし、かつ対応するインバータによるサーボロックにて当該電動モータの回転作動を制動する。一方、低負荷状態においては、搬送制御を省電力運転モードで実行することで、走行用電動モータM1や昇降電動モータM2を停止状態に維持するときに、インバータによる電動モータのサーボ制御を中断しかつ対応するメカニカルブレーキを制動状態に切り換えることで当該電動モータの回転作動を制動する。
また、クレーンコントローラ27は、高負荷状態において走行用モータM1及び昇降用モータM2のうちの一方を停止状態に維持し他方を回転作動させてスタッカクレーン3を搬送作動させるときは、走行用インバータINV1及び昇降用インバータINV2のうち停止状態に維持するモータに対応するものによるサーボロックにて当該モータの回転作動を制動し、低負荷状態において走行用モータM1及び昇降用モータM2のうちの一方を停止状態に維持し他方を回転作動させてスタッカクレーン3を搬送作動させるときは、走行用インバータINV1及び昇降用インバータINV2のうち回転作動させるモータに対応するものにより当該モータをサーボ制御しかつ走行用ブレーキB1及び昇降用ブレーキB2のうち停止状態に維持するモータに対応するものを制動状態に切り換えて当該モータの回転作動を制動する。
駆動指令に基づき位置保持されるサーボロックとは違いメカニカルブレーキは制動状態から解除状態に切り換えるに当って電磁式のアクチュエータを作動させるため、解除操作に比較的時間が掛かる。そのため、一つ一つの搬送作業の所要時間を極力短くしたい繁忙期等の高負荷運転状態では、搬送制御を定格運転モードにて実行することで、走行台車10や昇降台12を停止状態に維持する場合にメカニカルブレーキを極力用いず、走行作動や昇降作動の開始を迅速に行うことができるようにサーボロックを用いているようにしている。
ただし、高負荷状態につき定格運転モードで搬送制御が実行されるときでも、昇降台12の昇降作動及び走行台車10の走行作動のうち一方が先に完了する時点における他方の残作動時間Twが設定時間よりも長い場合(図7(a)及び(c)に示す場合)は、昇降用モータM2及び走行用モータM1のうち当該先に作動が完了して停止状態となっているものに対応するメカニカルブレーキを制動状態に切り換えるようにしている。クレーンコントローラ27が、定格運転モードにおいて昇降用モータM2及び走行用モータM1のうち先に作動が完了した一方についてのメカニカルブレーキを制動状態に切り換えた場合は、図7(a)及び(c)に示すように、他方の作動が完了する時点で解除状態に切り換えるようにしている。これにより、定格運転モードにおいては、メカニカルブレーキの解除状態への切り換えによる搬送作動時間への影響を極力排除している。
残作動時間Twが設定時間よりも短い場合(図7(b)及び(d)に示す場合)は、メカニカルブレーキを制動状態に切り換えることなく、サーボロックにより停止状態を維持するようにしている。なお、設定時間は、メカニカルブレーキを解除状態から制動状態に切り換えるための切換操作時間と制動状態から解除状態に切り換えるための切換操作時間の和である往復切換操作時間と同じ時間又はそれより僅かに長い時間を設定している。切換操作時間としては、単に電磁式のアクチュエータを切換操作する時間だけでなく対応するインバータとの間で行われるインターロックの処理時間も考慮する。
クレーンコントローラ27は、移動元の移載対象箇所から移動先の移載対象箇所まで移載装置13を移動させるとき、図7(a)及び(b)に示すように、昇降台12の昇降作動が先に完了した場合は、昇降制御部27Vが、移載装置13の移動開始からの経過時間と走行速度パターンとに基づき、走行作動の残作動時間Twを算出する。図7(c)及び(d)に示すように、走行台車10の走行作動が先に完了した場合は、走行制御部27Hが、移載装置13の移動開始からの経過時間と昇降速度パターンとに基づき、昇降作動の残作動時間Twを算出する。
一方、搬送作業時間に若干の余裕のある閑散期等の低負荷状態では、搬送制御を省電力運転モードにて実行する。省電力運転モードにおいては、走行用モータM1の回転作動をサーボ制御により停止させた後は、走行用モータM1についてのサーボ制御を中止して走行用モータM1の走行用ブレーキB1を制動状態に切り換える。同様に、昇降用モータM2の回転作動をサーボ制御により停止させた後は、昇降用モータM2についてのサーボ制御を中止して昇降用モータM2の昇降用ブレーキB2を制動状態に切り換える。
このように、省電力モードにおいては、走行用インバータINV1がサーボ制御により走行用モータM1を回転作動させない間は、走行用ブレーキB1を制動状態に維持することで、走行用モータM1をサーボ制御により停止状態に維持する場合のサーボロックに必要な消費電力を削減し、加えて、走行用ブレーキB1を解除状態に維持するためのブレーキ開放用電源から供給される電力も削減できる。同様に、省電力モードにおいては、昇降用インバータINV2がサーボ制御により昇降用モータM2を回転作動させない間は、昇降用ブレーキB2を制動状態に維持することで、昇降用モータM2をサーボ制御により停止状態に維持する場合のサーボロックに必要な消費電力を削減し、加えて、昇降用ブレーキB2を解除状態に維持するためのブレーキ開放用電源から供給される電力も削減できる。したがって、スタッカクレーン3の消費電力を削減することができる。
次に、図8〜図12のフローチャートを参照しながら、クレーンコントローラ27が実行する搬送制御の制御動作について説明する。クレーンコントローラ27は、地上側コントローラ7から搬送指令を受信すると搬送制御の実行を開始する。なお、後述するように搬送制御が定格運転モードで実行されると、搬送制御の実行が終了した時点で、走行制御部27H、昇降制御部27V、出退制御部27Fの全てがブレーキ解除信号を出力しているため、走行用ブレーキB1、昇降用ブレーキB2、出退ブレーキB3の全てが解除状態になっているが、搬送指令の待機状態が30秒継続すると、クレーンコントローラ27の走行用ブレーキB1、昇降用ブレーキB2、出退ブレーキB3の全てがブレーキ解除信号の出力を停止して、各メカニカルブレーキを制動状態に切り換える。このようにして、各メカニカルブレーキが解除状態であっても、搬送指令の待機状態が設定時間(例えば、30秒)以上経過すると、制動状態に切り換えられることで、各メカニカルブレーキを解除状態に維持しておくための電力を削減するようにしている。
クレーンコントローラ27は、搬送指令を実行を開始するとまず、ステップ#1(以下「ステップ」という語を省略する。)の省電力モード判定処理(図11参照)を実行して、当該搬送指令を実行する時点で次の搬送指令がすでに存在しているかどうかをチェックし、次の搬送指令が存在しない場合は、搬送制御の実行モードを省電力運転モードか定格運転モードかの何れかに決定する状態フラグである省電力モードフラグがセットされ、次の搬送指令が存在する場合は省電力モードフラグがリセットされる。
#2で、パターン生成部27Pが、搬送指令にて指定された搬送元の移載対象箇所まで移載装置13を移動させるための走行速度パターン及び昇降速度パターンを生成する。#2では定格走行速度パターンおよび定格昇降速度パターンが生成される。#3で省電力モードフラグがチェックされ、フラグがセットされていれば省電力運転モードであるとして#4以下に移行し、フラグがセットされていなければ定格運転モードであるとして図10の#30以下に移行する。
まず、省電力運転モードである場合について説明する。#4で定格走行速度パターンから走行作動時間Thを取得するとともに、定格昇降速度パターンから昇降作動時間Tvを取得する。そして両者を比較して走行作動と昇降作動を同時に開始した場合に走行作動の完了が昇降作動の完了より早いか遅いかを予測する。昇降作動時間Tvが長く走行作動時間Thが短いために走行作動が昇降作動よりも先に完了することが見込まれる場合は、#5でパターン生成部27Pが、走行速度パターンのパラメータである走行用上限速度Vh_maxを定格走行速度の50%である中間走行速度に設定して、新たに走行速度パターンを生成し、この走行速度パターンを省電力走行速度パターンとして採用する。昇降作動時間Tvが短く走行作動時間Thが長いために昇降作動が走行作動よりも先に完了することが見込まれる場合は、定格走行速度パターンをそのまま走行速度パターンとして採用する。昇降速度パターンについては、定格昇降速度パターンによる昇降作動の完了と走行作動の完了との先後によらず、定格昇降速度パターンをそのまま採用する。
こうして、パターン生成部27Pにより走行速度パターン及び昇降速度パターンが決定されると、#8で走行制御部27Hが走行台車10の走行作動を開始させ、同時に#12で昇降制御部27Vが昇降台12の昇降作動を開始させることにより移載装置13の移動が開始される。走行台車10の走行作動が継続している間は#8のループが繰り返され、昇降台12の昇降作動が継続している間は#12のループが繰り返される。
#8のループでは、走行制御部27Hが、走行開始からの現在までの経過時間から走行台車10の現在の目標走行速度を走行速度パターンから取得し、走行用レーザ距離計25の距離情報の時間変化により得られる実際の走行速度との偏差に基づき走行駆動指令を走行用モータM1の回転速度値により生成して、走行用インバータINV1に指令する。走行用インバータINV1は指令された回転速度値で走行用モータM1が回転作動するように、走行用ロータリエンコーダRE1の出力パルスに基づく回転速度情報をフィードバック情報として走行用モータM1の回転作動をサーボ制御する。
#12のループでは、昇降制御部27Vが、昇降開始からの現在までの経過時間から昇降台12の現在の目標昇降速度を昇降速度パターンから取得し、昇降用レーザ距離計20の距離情報の時間変化により得られる実際の昇降速度との偏差に基づき昇降駆動指令を昇降用モータM2の回転速度値により生成して、昇降用インバータINV2に指令する。昇降用インバータINV2は指令された回転速度値で昇降用モータM2が回転作動するように、昇降用ロータリエンコーダRE2の出力パルスに基づく回転速度情報をフィードバック情報として昇降用モータM2の回転作動をサーボ制御する。
走行作動が昇降作動よりも先に完了した場合は、#8のループから#9に移行して、走行制御部27Hがブレーキ解除信号の出力を中止して走行用モータM1の走行用ブレーキB1を解除状態から制動状態に切り換える。このとき、走行用インバータINV1とのインターロックを行って走行用モータM1の回転作動のサーボ制御が中止される。そして、走行作動が昇降作動よりも先に完了していることから、#10から#12へ移行する。その後、昇降制御部27Vによる昇降作動が完了すると#13へ移行し、この時点では既に走行作動が完了していることから、直後に行われる掬い用の移載作動に備えて昇降制御部27Hがブレーキ解除信号の出力を維持したまま昇降用ブレーキB2は解除状態のまま昇降作動がサーボロックにより停止状態が維持された状態で#13から#15へ移行する。
昇降作動が走行作動よりも先に完了した場合は、走行作動が行われている状態で#12のループから#13に移行するので、さらに#14へ移行する。#14では、昇降制御部27Vがブレーキ解除信号の出力を中止して昇降用モータM1の昇降用ブレーキB2を解除状態から制動状態に切り換える。このとき、昇降用インバータINV2とのインターロックを行って昇降用モータM2の回転作動のサーボ制御が中止される。そして、#8へ移行し、その後、走行制御部27Hによる走行作動が完了すると#9へ移行し、走行制御部27Hがブレーキ解除信号の出力を中止して走行用モータM1の走行用ブレーキB1を解除状態から制動状態に切り換える。このとき、走行用インバータINV1とのインターロックを行って走行用モータM1の回転作動のサーボ制御が中止される。この時点では既に昇降作動が完了していることから、#11へ移行して、直後に行われる掬い用の移載作動に備えて昇降制御部27Hが#14で出力を中止したブレーキ解除信号の出力を再開して昇降用ブレーキB2を制動状態から解除状態へ切り換えた後#15へ移行する。このとき、昇降用インバータINV2とのインターロックを行って昇降用モータM2の回転作動のサーボ制御が再開される。
以上は、クレーンコントローラ27が省電力運転モードにおいて搬送制御を実行して移載装置13を搬送元の移載対象箇所まで移動させるまでの走行作動及び昇降作動について説明した。次に、クレーンコントローラ27が定格運転モードにおいて搬送制御を実行して、#3で図10の#30へ移行する場合について、図10のフローチャートを参照しながら説明する。
定格運転モードであると図9の#17から図10の#30へ移行し、走行制御部27H、昇降制御部27V、出退制御部27Fの全てがブレーキ解除信号を出力して、走行用ブレーキB1、昇降用ブレーキB2、出退ブレーキB3の全てを解除状態にする。なお、前回の搬送制御が定格運転モードで実行され、かつ、その搬送制御の完了から30秒が経過していなければ、各ブレーキは解除状態に維持されているため、その場合はブレーキの解除操作の時間は不要となる。
#31で走行制御部27Hが走行用インバータINV1に走行駆動指令の指令を開始することで走行用モータM1のサーボ制御が開始されて走行台車10の走行作動が開始され、同時に、昇降制御部27Vが昇降用インバータINV2に昇降駆動指令の指令を開始することで昇降用モータM2のサーボ制御が開始されて昇降台12の昇降作動が開始され、移載装置13の移動が開始される。走行台車10の走行作動が継続している間は#32のループが繰り返され、昇降台12の昇降作動が継続している間は#37のループが繰り返される。各ループにおける制御動作は省電力運転モードにおけるものと同じであるからここでの説明は省略する。
走行作動が昇降作動よりも先に完了した場合は昇降作動が未だ完了していないため、走行作動が完了すると、#32のループから#33、#34へと移行する。#34では、走行制御部27Hにより移載装置13の移動を開始してからの経過時間と昇降速度パターンとから昇降作動の残作動時間Twが算出され、その残作動時間Twがメカニカルブレーキの往復切換操作時間を考慮した設定時間以上であるかチェックされる。昇降作動の残作動時間Twが設定時間以上であれば、#35へ移行して、走行制御部27Hがブレーキ解除信号の出力を中止して走行用モータM1の走行用ブレーキB1を解除状態から制動状態に切り換える。このとき、走行用インバータINV1とのインターロックを行って走行用モータM1の回転作動のサーボ制御が中止される。走行用ブレーキB1を制動状態に切り換えたら#37へ移行して昇降作動の完了待ちとなる。昇降作動の残作動時間Twが設定時間未満であれば、走行用ブレーキB1の切換操作は行わずに解除状態に維持したまま#37へ移行して昇降作動の完了待ちとなる。
その後、昇降制御部27Vによる昇降作動が完了すると#38へ移行し、この時点では既に走行作動が完了していることから、#41へ移行する。#41では、次の走行作動に備えて走行制御部27Hが#35で中止したブレーキ解除信号の出力を再開し走行用ブレーキB1を制動状態から解除状態に切り換える。このとき、走行用インバータINV1とのインターロックを行って走行用モータM1の回転作動のサーボ制御が再開され、サーボロックにより走行台車10が停止状態で維持される。
昇降作動が走行作動よりも先に完了した場合は走行作動が未だ完了していないため、昇降作動が完了すると、#357ループから#38、#39へと移行する。#39では、昇降制御部27Vにより移載装置13の移動を開始してからの経過時間と走行速度パターンとから走行作動の残作動時間Twが算出され、その残作動時間Twがメカニカルブレーキの往復切換操作時間を考慮した設定時間以上であるかチェックされる。走行作動の残作動時間Twが設定時間以上であれば、#40へ移行して、昇降制御部27Hがブレーキ解除信号の出力を中止して昇降用モータM2の昇降用ブレーキB2を解除状態から制動状態に切り換える。このとき、昇降用インバータINV2とのインターロックを行って昇降用モータM2の回転作動のサーボ制御が中止される。昇降用ブレーキB2を制動状態に切り換えたら#32へ移行して走行作動の完了待ちとなる。走行作動の残作動時間Twが設定時間未満であれば、昇降用ブレーキB2の切換操作は行わずに解除状態に維持したまま#32へ移行して走行作動の完了待ちとなる。
その後、走行制御部27Hによる走行作動が完了すると#33へ移行し、この時点では既に昇降作動が完了していることから、#36へ移行する。#36では、この直後に行われる掬い用の移載作動に備えて昇降制御部27Hが#40で中止したブレーキ解除信号の出力を再開し昇降用ブレーキB2を制動状態から解除状態に切り換える、このとき、昇降用インバータINV2とのインターロックを行って昇降用モータM2の回転作動のサーボ制御が再開され、サーボロックにより昇降台12が停止状態で維持される。
以上で図8及び図10を参照しながらクレーンコントローラ27が搬送制御を省電力運転モード及び定格運転モードで実行した場合のそれぞれについて、移載装置13を搬送元の移載対象箇所まで移動させるときの制御動作について説明した。次に、図9及び図10を参照しながら、クレーンコントローラ27が搬送制御を省電力運転モード及び定格運転モードで実行した場合のそれぞれについて、移載装置13を搬送元の移載対象箇所から搬送先の移載対象箇所まで移動させるときの制御動作について説明する。
図8の#15で掬い処理が完了すると図9の#16に移行して、パターン生成部27Pが、搬送指令にて指令された搬送先の移載対象箇所まで移載装置13を移動させるための走行速度パターン及び昇降速度パターンを生成する。#16では、#2同様に定格走行速度パターンおよび定格昇降速度パターンが生成される。#17以下で分岐する省電力運転モードでの#28までの処理及び定格運転モードでの処理により移載装置13を搬送元の移載対象箇所から搬送先の移載対象箇所まで移動させるときの制御動作は、図8における#3〜#14及び図10で示した、搬送元の移載対象箇所まで移載装置13を移動させるときの制御動作と同じである。したがって、再度の説明は省略する。
次に、移載装置13を搬送元の移載対象箇所に移動させた後に実行される図8の#15の掬い処理と移載装置13を搬送先の移載対象箇所に移動させた後に実行される図9の#29の卸し処理との制御動作について図12のフローチャートを参照しながら説明する。
図12に示すように、掬い処理では、まず#U1で出退用モータM3の出退ブレーキB3が制動状態か否かチェックし、掬い処理の開始時点で制動状態になっている場合は、#U2で解除状態に切り換える。掬い処理の開始時点で制動状態になっていない場合は、解除操作の必要はないため#U3へ移行する。なお、掬い処理の開始時点で出退ブレーキB3が制動状態になっている場合としては、前回の搬送制御が省電力運転モードで実行された場合や、前回の搬送制御が定格運転モードで実行された後、待機状態が30秒以上継続してから今回の搬送指令が指令されて搬送制御が実行された場合である。
#U3で出退制御部27Fが出退インバータINV3に出退駆動指令を指令して、出退モータM3を回転作動させて、移載装置13のスライドフォーク9を突出作動させる。出退制御部27Fは、スライドフォーク9の引退位置から突出位置に位置させるための出退操作量を出退モータM3の回転作動量にて出退駆動指令として出退用インバータINV3に指令する。出退用インバータINV3は指令された回転作動量だけ出退用モータM3が回転作動するように、出退用ロータリエンコーダRE3の出力パルスに基づく回転量情報をフィードバック情報として出退用モータM1の回転作動をサーボ制御する。
#U3でスライドフォーク9の突出位置までの突出作動が完了すると、#U4で昇降制御部27Vが昇降台12を移載用の昇降量だけ上昇作動させて物品Qをスライドフォーク9にて載置支持させる。このとき昇降用インバータINV2は位置制御モードで昇降モータM3の回転作動をサーボ制御する。上昇作動が完了した後、#U5で省電力運転モードであるか否かをチェックする。省電力モードフラグがセットされており省電力運転モードであれば、#U6へ移行して昇降制御部27Vがブレーキ解除信号の出力を中止して昇降用ブレーキB2を解除状態から制動状態に切り換えてから#U7へ移行する。省電力モードフラグがセットされておらず定格運転モードであれば、昇降用ブレーキB2を制動状態に切換操作せずに解除状態に維持し、昇降台12をサーボロックにより停止状態で維持したまま#U5から#U7へ移行する。
#U7で出退制御部27Fが出退インバータINV3に出退駆動指令を指令して、出退モータM3を回転作動させて、移載装置13のスライドフォーク9を引退作動させる。移載装置13にはスライドフォーク9が引退位置に位置していることを確認するための引退位置検出センサが設けられている。出退用インバータINV3は、引退作動についても突出作動と同様に位置制御モードで出退用モータM3の回転作動をフィードバック制御するが、出退用インバータINV3が出退用モータM3の回転作動を停止させたときに引退位置検出センサにより引退位置が検出されることで引退作動が正常に完了する。
スライドフォーク9の引退作動が正常に完了すると#U8で省電力運転モードであるか否かをチェックする。省電力モードフラグがセットされており省電力運転モードであれば#U9へ移行して出退制御部27Fがブレーキ解除信号の出力を中止して出退ブレーキB3を解除状態から制動状態に切り換えてから掬い処理を終了する。省電力モードフラグがセットされておらず定格運転モードであれば、出退ブレーキB3を制動状態に切換操作せずに解除状態に維持し、スライドフォーク9をサーボロックにより停止状態で維持したまま掬い処理を終了する。
次に、卸し処理を説明するが、卸し処理は、掬い処理における#U4で昇降台12を移載用の昇降量だけ上昇させるところを下降させる点が異なるだけでその他の制御動作は同じであるので詳しい説明は省略する。
以上、本実施形態によれば、搬送作業負荷が低い場合に省電力モードとなり、省電力モードであると、各モータを停止状態で維持する場合にメカニカルブレーキを積極的に使用することで、サーボロックのための消費電力及びメカニカルブレーキを解除状態に維持するために必要な電力を削減することができる。これにより搬送能力を極力維持しながら省電力を図ることができる。定格運転モードであっても、昇降作動と走行作動の完了タイミングが異なるために一方の作動が完了してから他方の作動が完了するまでの時間がメカニカルブレーキの往復操作時間より長い場合は、積極的にメカニカルブレーキを使用して定格運転モードにおける省電力を図っている。さらに、省電力モードにおいて昇降作動及び走行作動の作動速度を省電力用の作動速度にする場合に、走行作動については定格での作動速度に対して十分低い走行速度とし、昇降作動については定格での昇降速度を維持することで、走行作動と昇降作動のそれぞれの作動形態にとってより適切な省電力効果を得ることができる。
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、第1実施形態で説明したクレーンコントローラ27が実行する搬送制御のうち、定格運転モードにおいて移載装置13の移動を開始する場合に、走行台車10の走行作動及び昇降台12の昇降作動を同時に開始させない点が異なり、その他の構成は第1実施形態と同様であるので、搬送制御の当該部分についてのみ説明し、他の部分の説明は省略する。
クレーンコントローラ27は、搬送制御において、パターン生成部27Pにて定格運転用走行速度パターン及び定格運転用昇降速度パターンを生成した後、移動開始タイミングになると移載装置13の移動を開始するが、その際、走行台車10の走行速度Vhを減速させる期間に、昇降台12を上昇させる期間を極力長く重複させるために、昇降台12の上昇開始タイミングを移載装置13の移動開始タイミングよりも遅延時間Tdだけ遅らせるようにしている。これにより、走行速度Vhを減速させる期間に走行用モータM1が回生運転された場合に発生する回生電力を極力効率よく昇降用モータM2の力行運転で消費できるようにしている。
具体的には、図15(a)及び(b)に示すように、クレーンコントローラ27は、定格運転モードにおいて、移載装置13を移動元の移載対象箇所から当該移載対象箇所よりも高い位置にある移動先の移載対象箇所に移動させる場合は、走行台車10の走行作動を開始して移載装置13の移動を開始させ、走行速度パターン(図4)の走行減速期間Ph3により与えられる速度変化に従って走行台車10の走行速度Vhを減速させる時刻t2〜時刻t3の期間と、昇降速度パターン(図5)により与えられる速度変化に従って昇降台12を上昇させる時刻t5〜t6の期間とが重複するように、昇降速度パターンを決定するとともに移載装置13の移動を開始させた移動開始タイミング(時刻t0)よりも遅延時間Tdだけ遅い上昇開始タイミング(時刻t5)に昇降台12の上昇作動を開始させる形態で搬送制御を実行するように構成されている。
図15(a)及び(b)に示すように、昇降制御部27Vは、走行制御部27Hが走行速度パターンに基づいて走行台車10の走行速度の減速を開始する時刻t2に、昇降速度パターンに基づく昇降台12の上昇を開始させるように遅延時間Tdを設定する。これにより、昇降台12の上昇のために回転作動する昇降用モータM1の力行運転に必要な電力の一部又は全部が、走行台車10の走行速度Vhを減速させる時刻t2〜時刻t3の期間に発生する走行用モータM1の回生電力にて賄われる。このように昇降台12の上昇開始タイミングを移載装置13の移動開始タイミングよりも遅延時間Tdだけ遅らせたときの移載装置13の移動態様を示すと、例えば図15(c)のようになる。なお、図15では、移動元の移載対象箇所から当該移載対象箇所よりも高い位置にある移動先の移載対象箇所に移動させる場合のうち、走行台車10を前進させるときを例示している。
また、図16(a)及び(b)に示すように、昇降制御部27Vは、移載装置13を移動元の移載対象箇所から当該移載対象箇所よりも低い位置にある移動先の移載対象箇所に移動させる場合は、走行制御部27Hが走行台車10の走行作動を開始すると同時に、移載装置13の下降を開始させる。つまり、図16で下降開始タイミングを示す時刻t5は、走行開始タイミングを示す時刻t0と同じ時刻である。このように昇降台12の下降開始タイミングを移載装置13の移動開始タイミングと同時としたときの移載装置13の移動態様を示すと、例えば図16(c)のようになる。なお、図16では、移動元の移載対象箇所から当該移載対象箇所よりも低い位置にある移動先の移載対象箇所に移動させる場合のうち、走行台車10を後退させる場合を例示している。
第1実施形態において、搬送制御が定格運転モードで実行されたときに移載装置13の移動が開始されるのは、掬い処理実行前の空荷状態で移載装置13の移動が開始されるときと、掬い処理実行後の実荷状態で移載装置13の移動が開始されるときの2回あるが、いずれも図10のフローチャートにおける#31の箇所である。第2実施形態では、図10の#31の処理に代えて、図17のフローチャートに示す処理が実行される。
以下、図17のフローチャートに示す処理について説明する。図10の#30で走行速度パターン及び昇降速度パターンが生成されて図17の#D1に移行すると移動元の移載装置13が位置している移載対象箇所の高さと移動先の移載対象箇所が位置している高さを比較する。各移載対象箇所にはバンク値、ベイ値、レベル値が設定されているので、移動元のレベルと移動先のレベルを比較する。なお、荷載置台8のレベル値は1であり最下段の収納部4と同一レベルである。
#D1で移動先のレベルが移動元のレベルより低い場合や両者の高さが同じ場合は、上昇作動はないとして、#D2へ移行して、昇降作動と走行作動とが移動開始タイミングに同時に開始される。#D1で移動先のレベルが移動元のレベルより高い場合は、#D3へ移行して、移載装置13の移動を開始する移動開始タイミングになると、まず、走行台車10の走行作動を開始させる。その後、走行速度パターンに基づいて走行台車10の走行速度が制御され、#D4で走行減速タイミング(図15(a)における時刻t2)の到来を監視し、走行減速タイミングになると、#D5へ移行して、図15の時刻t2(時刻t5)で昇降台12の昇降作動を開始させる。その後、昇降速度パターンに基づいて昇降台12の上昇速度が制御される。こうして、走行台車10の走行速度Vhを減速させる期間と昇降台12を上昇作動させる期間が重複する状態で、走行台車10の走行作動と昇降台12の昇降作動が併行して行われ、図10の#32及び#37の処理に移行する。
このようにして、走行台車10の走行速度Vhを減速させる期間に昇降台12を上昇作動させることで、走行台車10の走行作動により発生する走行用モータM1の回生電力を走行用インバータINV1から電源回生共通コンバータCNVが回収して昇降用モータM1の力行運転を行う昇降用インバータINVに供給することができる。したがって、走行台車10の走行作動の減速期間に発生する回生電力を利用して昇降台12を上昇作動させることができ、スタッカクレーンの消費電力を削減することができる。
〔別の実施形態〕
以上、発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。以下、本発明の別実施形態について説明する。
(1)上記実施形態では、物品を搬送する搬送装置をスタッカクレーンにて構成したものを例示したが、これに限らず、搬送装置としては、例えば、搬送装置が移動自在なものとしては有軌道又は無軌道の物品搬送台車でもよく、また、ベルトコンベヤやコーラコンベヤなど搬送装置が設置箇所に固定されたものでもよい。
(2)上記実施形態では、昇降台の昇降作動及び走行台車の走行作動のうち一方が先に完了する時点における他方の残作動時間を一方の搬送作動が完了してから算出するものを例示したが、残作動時間の算出タイミングは適宜変更可能である。例えば、一方の搬送作動が完了する直前や、双方の搬送作動が開始される前に残作動時間を算出してもよい。
(3)上記実施形態では、省電力運転モード判定処理を搬送制御を実行するタイミングで実行するものを例示したが、省電力運転モード判定処理の実行タイミングは、これに限らず、適宜変更が可能である。例えば、一定時間経過の度に周期的に実行してもよい。
(4)上記実施形態では、負荷状態判別手段が、現在の未処理の搬送作業の数量を基準に高負荷状態であるか低付加状態であるかを判定するものを例示したが、これに限らず、負荷の判断基準は適宜変更可能である。例えば、搬送作業の発生頻度を基準にしたり、過去の搬送作業履歴から予測される現在の搬送作業量に基づいて負荷状態を判定してもよい。また現在の実際の又は予測される搬送作業量を基準にせずに、現在が属する所定期間の搬送作業量を基準に負荷状態を判定してもよい。また制御手段の上位のコンピュータに負荷状態判別手段を備えて、その判別結果に基づいて制御手段が高負荷状態であるか低付加状態であるかを判定してもよい。
(5)上記実施形態では、走行用モータや昇降用モータをインバータに接続してサーボ制御するものを例示したが、これに代えて、走行用モータや昇降用モータをサーボアンプに接続してサーボ制御するものでもよい。
(6)上記第1実施形態では、回生電力回収供給手段としての電源回生共通コンバータCNVを設けたものを例示したが、これを備えないものであってもよい。
(7)上記第2実施施形態では、定格運転モードにおいて、昇降開始タイミングを移動開始タイミングから遅らせるようにしているが、省電力運転モードにおいても同様の制御が可能である。その場合、図8のフローチャートにおける#7や図9のフローチャートにおける#21の処理において図17のフローチャートに示す処理が実行される。