JP5516529B2 - リチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法、リチウムイオン二次電池用炭素材、リチウムイオン二次電池用負極合剤、リチウムイオン二次電池用負極、及びリチウムイオン二次電池。 - Google Patents
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Description
(1)フェノール樹脂とシリカ粒子とを含む樹脂組成物を混合して混合物を得る混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を噴霧して液滴を形成する噴霧工程と、前記噴霧工程で得られた液滴に第一の熱処理を施して炭素前駆体を生成する第一の熱処理工程と、前記第一の熱処理工程で得られた炭素前駆体に、第一の熱処理工程よりも高温である第二の熱処理を施して炭素とSiOx(0<X<2)で示される酸化ケイ素を含有する炭素材生成する第二の熱処理工程を含み、
前記第一の熱処理工程における熱処理温度が、150℃以上、800℃以下であり、
前記第二の熱処理工程における熱処理温度が、900℃以上、1200℃以下であり、
前記シリカ粒子の粒径は、1nm以上、50nm以下であり、
前記樹脂組成物はさらに空隙形成剤を含み、前記空隙形成剤が、平均粒径1nm以上、500nm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
(2)前記混合物を噴霧する方法が、超音波噴霧法、と二流体ノズルの少なくともいずれか一方を用いた噴霧方法である、上記(1)に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
(3)液滴に第一の熱処理を施して炭素前駆体を生成する第一の熱処理工程と、炭素前駆体に第二の熱処理を施して炭素とSiOx(0<X<2)を含有する炭素材を生成する第二の熱処理工程が、同一系内で連続して実施される上記(1)または(2)に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
(4)前記フェノール樹脂が、水溶性フェノール樹脂である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
(5)前記シリカ粒子が、コロイダルシリカである、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
(6)前記炭素とSiOx(0<X<2)で示される酸化ケイ素を含有する炭素材の平均粒径が、1μm以上、50μm以下である上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
(7)前記空隙形成剤が、スチレンブタジエンゴム粒子である、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法により製造されたリチウムイオン二次電池用炭素材。
(9)上記(8)に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材とバインダーとを含むリチウムイオン二次電池用負極合剤。
(10)上記(9)に記載のリチウムイオン二次電池用負極合剤を含むリチウムイオン二次電池用負極。
(11)上記(10)に記載のリチウムイオン二次電池用負極を含むリチウムイオン二次電池。
まず、本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法について説明する。
前記混合工程では、フェノール樹脂とシリカ粒子とを含む樹脂組成物を混合して混合物を得る。これにより、前記噴霧工程において、フェノール樹脂とシリカ粒子が均一に分散された液滴を形成することができる。
フェノール樹脂、シリカ粒子の混合方法は、特に制限されるものではないが、例えば、フェノール樹脂とシリカ粒子と分散溶媒を混合し撹拌することにより得られる。それぞれ固体で混合する場合は、シリカ粒子の分散性を向上させるために、ビーズミルなどの強力な撹拌エネルギーを有する撹拌装置を用いる必要がある。より簡便に、シリカ粒子の分散性が良好な樹脂組成物を得るためには、フェノール樹脂が分散したフェノール樹脂溶液とシリカ粒子が分散したシリカ粒子分散溶液を別々に作製または用意し、それらを混合し撹拌することが好ましい。これにより強力な撹拌エネルギーを有する撹拌装置を用いることなく、簡便に混合工程を行うことができる。
前記噴霧工程では、前記混合工程で得られた混合物を噴霧して液滴を形成する。これにより、粒径のバラつきの少ない液滴を形成することができる。
前記噴霧工程においては、超音波噴霧や2流体ノズルを用いた噴霧、静電噴霧などの手法を用いることができる。量産性の観点から、超音波噴霧や2流体ノズルを用いた噴霧が好ましく、さらに好ましくは、2流体ノズルを用いた噴霧が好ましい。これにより粒径のバラつきが比較的少ない液滴を多量に生成させることができる。
超音波噴霧は、例えば、本多電子株式会社製超音波霧化ユニット(HM−2412、HM−1630)を、プラスチック容器の底に接続し、そのプラスチック容器の中に所定量の前記混合工程で得られた混合物を投入し、動作させることにより、噴霧が開始する。2流体ノズルによる噴霧は、例えば、ビュッヒ社製ミニスプレードライヤー(B−290)などに用いられている2流体ノズルを用いて、噴霧することにより達成される。これらにより噴霧された液滴の平均粒径は、0.1μm以上、50μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.5μm以上、10μm以下である。前記下限値以上であることにより、液滴内の成分比バラつきが低減され、また前記上限値以下であることで、熱処理において、液滴が十分に加熱される。
前記第一の熱処理工程では、前記噴霧工程で得られた液滴に一度目の熱処理を施して、炭素前駆体を形成する。前記第二の熱処理工程よりも低温である第一の熱処理工程を行うことにより、炭素材の形状及び分散性を制御することができる。
前記第一の熱処理工程は、前記噴霧工程により形成した液滴に熱処理を施す。このとき、前記噴霧工程で形成した液滴は、空気や窒素などの不活性ガス気流によって、第一の熱処理工程に運ぶことが好ましい。これにより、液滴を崩すことなく、また液滴同士が連結してしまうことなく、熱処理を実施することができる。第一の熱処理工程は、例えば、150℃以上800℃以下で加熱したセラミック管中を通すことにより達成される。セラミック管の温度は、150℃以上、800℃以下が好ましく、より好ましくは、300℃以上、750℃以下、さらに好ましくは、400℃以上700℃以下である。前記下限値以上であることで、液滴への加熱が十分となる。これにより、十分乾燥した炭素前駆体が得られ、次の第二の熱処理工程への炭素前駆体の搬送が容易となる。また、前記上限値以下であることで、フェノール樹脂の分解が一気に進むことにより、ガス化した有機成分が炭化され、カーボンブラックなどのナノオーダーの炭素粒子とシリカ粒子が分離した状態となることを防ぐことができる。
前記第二の熱処理工程では、前記第一の熱処理工程で得られた炭素前駆体に二度目の熱処理を施して、炭素とSiOX(0<X<2)で示される酸化ケイ素を含有する炭素材を生成する。これにより、炭素前駆体のフェノール樹脂由来の成分が十分に炭化し、シリカ粒子におけるSiO2の一部が還元され、炭素とSiOX(0<X<2)で示される酸化ケイ素を含有する炭素材を得ることができる。
前記第二の熱処理工程は、第一の熱処理工程と同様な各種管を用いて実施することができる。また、前記炭素前駆体を、市販のバッチ式加熱炉や連続式加熱炉を使用して熱処理を実施することも可能である。前記第二の熱処理における加熱温度は、800℃以上1200℃以下が好ましく、さらに好ましくは、900℃以上、1100℃以下が好ましい。前記下限値以上であることで、シリカ粒子におけるSiO2が十分に還元され、SiOXのXの値が小さくなり、高い充放電容量密度を示すリチウムイオン二次電池を得ることができる。また、前記上限値以下であることで、前記シリカ粒子におけるSiO2の結晶化が進む前に、SiO2が十分に還元され、高い充放電容量密度を示すリチウムイオン二次電池を得ることができる。
ここで、炭素材の平均粒子径は、両面テープを貼り付けた板に前記炭素材を0.5g広げてSEM観察を行い、SEM画像中に見える粒子30個をランダムに観察し粒子径を求め、それらの平均値を平均粒子径とした。
前記空隙形成剤としては、揮発して空隙を形成できるものであれば、特に制限されないが、熱可塑性樹脂やエラストマーが用いられる。熱可塑性樹脂の具体例としてはポリカルボシラン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、エラストマーの具体例としては、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリル酸エステル、酢酸ビニル、メチルメタクリレートブタジエンゴム、クロロプレンゴム、カルボキシ変性スチレンブタジエンゴムや、これらを水等に分散させたラテックスなどが挙げられる。
なかでも、空隙の大きさの制御や形状を制御し易い、スチレンブタジエンゴムラテックスなどのスチレンブタジエンゴム粒子が分散したラテックスを用いることが好ましい。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材について説明する。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池用負極合剤について説明する。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池用負極について説明する。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池について説明する。
1)混合工程
フラスコ内で、フェノール樹脂として水溶性フェノール樹脂(住友ベークライト(株)製、PR55743、50wt%水溶液)12gと、シリカ粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、スノーテックスOS、平均粒径8~11nm、20wt%水溶液)30gと、空隙形成剤としてスチレンブタジエンゴムラテックス(JSR株式会社、TRD2001、平均粒径150nm、48wt%水溶液)1gとイオン交換水541gを混合撹拌し、混合物を得た。
2)噴霧工程
超音波霧化装置(超音波霧化ユニット:本多電子株式会社製 HM−2412を用いて自作)を用いて混合物を噴霧し、液滴を発生させた。
3)第一の熱処理工程
窒素気流下、300℃の炉に液滴を搬送し、3秒間第一の熱処理工程を行った。これにより液滴を乾燥、硬化、熱分解させ、150℃、−10kVに調整した静電捕集器(高圧電源:松定プレシジョン株式会社製 HARb−15N2を用いて作製したもの)により、炭素前駆体を捕集した。
4)第二の熱処理工程
捕集した炭素前駆体を、セラミック管に入れ、窒素気流下、1000℃の炉内で6時間熱処理し、炭素とSiOX(0<X<2)で示される酸化ケイ素を含有する炭素材を得た。走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製 JSM-7401F)により、得られた炭素材を観察した結果、概球形で、平均粒子径は約1μmであることを確認した。なお、平均粒径の測定方法は、作製した炭素粉末の母体をよく混合した後、約0.3gずつ5か所ランダムにサンプリングして再度混合し、両面テープを貼り付けた板にサンプルを0.5g広げてSEM観察を行い、SEM画像中に見える粒子30個をランダムに観察し粒子径を求め、それらの平均値を平均粒径とした。また、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)(セイコーインスツルメンツ(株)製、TG/DTA6200)を用い、昇温速度10℃/分で室温から800℃まで昇温し、その重量減少から、炭素とSiOX(0<X<1)で示される酸化ケイ素の重量比を算出した結果、炭素:SiOX=17:83であった。
5)リチウムイオン二次電池用電極合剤の作製
上記の炭素材、市販のバインダーであるカルボキシメチルセルロース(CMC)(ダイセルファインケム株式会社製CMCダイセル2200)、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業製デンカブラック)を質量比100:7:4で混合し、必要に応じ濃縮し粘度を調整し、リチウムイオン二次電池用電極合剤を得た。具体的には、まずCMCを所定量の水に溶解して2質量%水溶液を調製した。次いで、そのCMC水溶液に、炭素材、導電助剤を上記質量比になるように所定量添加し、自転・公転ミキサーで攪拌混合した。攪拌混合に際して、最終粘度が5000mPa・secとなるように、自転・公転ミキサーに水を少量ずつ添加した。
6)リチウムイオン二次電池用電極(負極)の作製
上記のリチウムイオン二次電池用電極合剤を20μm厚の銅箔に塗布し、その後、110℃で1時間真空乾燥した。真空乾燥後、ロールプレスによって加圧成形し、φ13mmの径で打ち抜き、リチウムイオン二次電池用電極を得た。
7)リチウムイオン二次電池の作製
上記で作製したリチウムイオン二次電池用電極(負極)、セパレータ(ポリプロピレン製多孔質フィルム:直径φ16、厚さ25μm)、作用極としてリチウム金属(直径φ12、厚さ1mm)の順で、宝泉製2032型コインセル内の所定の位置に配置した。さらに、電解液としてエチレンカーボネートとジエチレンカーボネートの混合液(体積比が1:1)に、過塩素酸リチウムを1[モル/リットル]の濃度で溶解させたものを注液し、リチウムイオン二次電池を作製した。
第一の熱処理工程における熱処理温度を800℃とした以外は、全て実施例1と同じとして炭素材を得、リチウムイオン二次電池を作製した。
第二の熱処理工程における熱処理温度を1200℃とした以外は、全て実施例1と同じとして炭素材を得、リチウムイオン二次電池を作製した。
第一の熱処理工程における熱処理温度を700℃、第二の熱処理工程における熱処理温度を1200℃とした以外は、全て実施例1と同じとして炭素材を得、リチウムイオン二次電池を作製した。
混合工程においてシリカ粒子を含まなかった以外は、全て実施例1と同じとして炭素粒子を得、リチウムイオン二次電池を作製した。
(初期充放電特性評価)
充放電特性については、放電時の電流密度を25mA/gとして定電流充電を行い、電位が2.5Vに達した時点から、2.5Vで定電圧放電を行い、電流密度が1.25mA/gになるまでに放電した電気量を放電容量として評価した。なお、放電特性の評価は、充放電特性評価装置(北斗電工(株)製:HJR−1010mSM8)を用いて行った。
(充放電サイクル特性評価)
初期充放電特性評価条件を50回繰り返し測定した後に得られた放電容量を50サイクル目の放電容量とした。また、以下の式により充放電サイクル特性(50サイクル容量維持率)を定義した。
サイクル性(%、50サイクル容量維持率)=50サイクル目の放電容量(mAh/g)/初回放電容量(mAh/g)×100
◎:放電容量が600mAh/g以上
○:放電容量が400mAh/g以上、600mAh/g未満
△:放電容量が200mAh/g以上、400mAh/g未満
×:放電容量が0mAh/g以上、200mAh/g未満
◎:50サイクル容量維持率が95%以上
○:50サイクル容量維持率が90%以上、95%未満
△:50サイクル容量維持率が80%以上、90%未満
×:50サイクル容量維持率が80%未満
以上のことから、本発明は、充放電容量密度と、充放電サイクル特性を一層向上させたリチウムイオン二次電池を提供し得るリチウムイオン二次電池用炭素材、リチウムイオン二次電池用負極合剤、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池を提供することが確認された。
Claims (11)
- フェノール樹脂とシリカ粒子とを含む樹脂組成物を混合して混合物を得る混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を噴霧して液滴を形成する噴霧工程と、前記噴霧工程で得られた液滴に第一の熱処理を施して炭素前駆体を生成する第一の熱処理工程と、前記第一の熱処理工程で得られた炭素前駆体に、第一の熱処理工程よりも高温である第二の熱処理を施して炭素とSiOx(0<X<2)で示される酸化ケイ素を含有する炭素材生成する第二の熱処理工程を含み、
前記第一の熱処理工程における熱処理温度が、150℃以上、800℃以下であり、
前記第二の熱処理工程における熱処理温度が、900℃以上、1200℃以下であり、
前記シリカ粒子の粒径は、1nm以上、50nm以下であり、
前記樹脂組成物はさらに空隙形成剤を含み、前記空隙形成剤が、平均粒径1nm以上、500nm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。 - 前記混合物を噴霧する方法が、超音波噴霧法、と二流体ノズルの少なくともいずれか一方を用いた噴霧方法である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
- 液滴に第一の熱処理を施して炭素前駆体を生成する第一の熱処理工程と、炭素前駆体に第二の熱処理を施して炭素とSiOx(0<X<2)を含有する炭素材を生成する第二の熱処理工程が、同一系内で連続して実施される請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
- 前記フェノール樹脂が、水溶性フェノール樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
- 前記シリカ粒子が、コロイダルシリカである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
- 前記炭素とSiOx(0<X<2)で示される酸化ケイ素を含有する炭素材の平均粒径が、1μm以上、50μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
- 前記空隙形成剤が、スチレンブタジエンゴム粒子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材の製造方法により製造されたリチウムイオン二次電池用炭素材。
- 請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用炭素材とバインダーとを含むリチウムイオン二次電池用負極合剤。
- 請求項9に記載のリチウムイオン二次電池用負極合剤を含むリチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項10に記載のリチウムイオン二次電池用負極を含むリチウムイオン二次電池。
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