JP2011060701A - 非水二次電池 - Google Patents

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宏 竹崎
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Abstract

【課題】高容量、高安全性で、充放電サイクル特性が良好な非水二次電池を提供する。
【解決手段】本発明の非水二次電池は、正極、負極および非水電解質を含み、前記正極は、リチウム含有遷移金属酸化物を含有する正極合剤層を含み、前記負極は、珪素と酸素とを構成元素に含み珪素に対する酸素の原子比xが0.5≦x≦1.5である負極材料と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダとを含む負極合剤層と、前記負極合剤層の上に形成され、エポキシ樹脂硬化物微粒子を含有する多孔質層とを含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、高容量、高安全性で、充放電サイクル特性の良好な非水二次電池に関するものである。
非水二次電池は高電圧・高容量であることから、その発展に対して大きな期待が寄せられている。非水二次電池の負極材料(負極活物質)には、Li(リチウム)やLi合金の他、Liイオンを挿入および脱離可能な、天然または人造の黒鉛系炭素材料などが適用されている。
ところが、最近では、小型化および多機能化した携帯機器用の電池について更なる高容量化が望まれており、これを受けて、低結晶性炭素、Si(シリコン)、Sn(錫)などのように、より多くのLiを収容可能な材料が負極材料(以下、「高容量負極材料」ともいう。)として注目を集めている。また、上記高容量化に加え、高安全性も望まれており、これを受けて、非水二次電池の熱暴走(異常発熱)を防ぐ機能を付与することが注目を集めている。
こうした非水二次電池用の高容量負極材料の一つとして、Siの超微粒子がSiO2中に分散した構造を持つ複合材料(SiOx)が注目されている。この複合材料を負極活物質として用いると、Liと反応するSiが超微粒子であるために充放電がスムーズに行われる一方で、上記構造を有するSiOx粒子自体は表面積が小さいため、負極合剤層を形成するための塗料とした際の塗料性や、負極合剤層とした際の集電体に対する接着性も良好である。
ただし、SiOxは導電性の低い酸化物であるため、これを用いて負極を構成する際には、導電助剤との混合・分散を十分に行う必要がある。例えば、特許文献1〜3には、SiOxの表面を炭素で被覆して、その導電性を高めた上で負極を構成する技術が開示されている。
特開2004−47404号公報 特開2005−259697号公報 特開2007−242590号公報
例えば、特許文献3に記載されているように、SiOxの表面を炭素で被覆して用いることで、負極内に導電ネットワークを良好に形成できることから、高容量で、しかも優れた電池特性を有する非水二次電池を得ることができる。
しかし、SiOxの表面を被覆する炭素や、負極合剤層に別途使用される導電助剤は、それ自体負極の容量向上にはあまり寄与しないことから、こうした負極の導電性を高めるための成分の使用量を減らし、負極合剤層中のSiOxの充填量を増やすことが、SiOxを負極材料に使用する非水二次電池の更なる高容量化を図る上で有効であると考えられる。
ところが、負極合剤層における上記負極の導電性を高めるための成分の使用量を減らすことでSiOxの充填量を高めた非水二次電池では、充放電を繰り返すと、容量低下が大きいことが本発明者らの検討により明らかとなった。
すなわち、SiOxは充放電による体積変化が大きいため、電池の充放電を繰り返すと、SiOxと、これを被覆している炭素や、その他の導電助剤などの導電性成分との接触が悪くなり、これにより電池の容量が低下すると考えられる。負極合剤層中の導電性材料(SiOxを被覆する炭素を含む。)の割合を多くし、SiOxの割合が比較的少ない場合には、SiOxの体積変化による影響は小さいが、負極合剤層中のSiOx量が多くなると、上記問題が顕著に発現するようになる。
特許文献3では、無機材料を用いた多孔質層を負極上に形成することで電極の膨張を抑制しているが、安全性向上などの更なる付加機能は得られないと考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高容量、高安全性で、充放電サイクル特性が良好な非水二次電池を提供することにある。
本発明の非水二次電池は、正極、負極および非水電解質を含む非水二次電池であって、前記正極は、リチウム含有遷移金属酸化物を含有する正極合剤層を含み、前記負極は、珪素と酸素とを構成元素に含み珪素に対する酸素の原子比xが0.5≦x≦1.5である負極材料と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダとを含む負極合剤層と、前記負極合剤層の上に形成され、エポキシ樹脂硬化物微粒子を含有する多孔質層とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、高容量、高安全性で、充放電サイクル特性が良好な非水二次電池を提供することができる。また、本発明の非水二次電池では、充放電に伴う負極の湾曲を抑制して、これによる電池膨れの発生を防止できる。
本発明の非水二次電池に係る負極の一例を示す断面模式図である。 実施例1、比較例1および比較例2の非水二次電池の充放電サイクル特性を示す図である。 実施例1の非水二次電池の横断面のX線CT画像である。 比較例3の非水二次電池の横断面のX線CT画像である。
本発明の非水二次電池は、正極、負極および非水電解質を備えている。また、上記正極は、リチウム含有遷移金属酸化物を含有する正極合剤層を備えている。更に、上記負極は、珪素と酸素とを構成元素に含み珪素に対する酸素の原子比xが0.5≦x≦1.5である負極材料(以下、当該材料を「SiOx」と略記する場合がある。)と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダとを含む負極合剤層と、上記負極合剤層の上に形成され、エポキシ樹脂硬化物微粒子を含有する多孔質層とを備えている。
本発明では、負極合剤層に、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダを使用することにより、電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。これは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドは、負極合剤層中において、SiOx同士あるいはSiOxと導電性成分とをより強固に接着できることから、充放電によってSiOxの体積変化が生じても、負極合剤層の導電性を良好に維持できるためと考えられる。
一方、負極合剤層に上記バインダを使用した場合、SiOxの割合が多くなると、負極全体がSiOxの体積変化による応力に耐えられず、電池内で湾曲し、特に幅方向に対して厚みの小さな角形の電池の場合に、その厚みが増大して電池膨れが生じてしまうおそれがある。
しかしながら、本発明では、負極合剤層上に、エポキシ樹脂硬化物微粒子を含有する多孔質層(以下、「コート層」という場合がある。)を形成しており、これにより、充放電時におけるSiOxの体積変化に伴う負極の湾曲や、負極を含む電極体(負極、正極およびセパレータにより構成される巻回構造の電極体や積層構造の電極体など)の厚み方向の膨れを抑制できるため、電池膨れの発生を防止できる。
以下、本発明の非水二次電池に用いる負極の実施形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の非水二次電池に係る負極の一例を示す断面模式図である。
図1において、負極1は、集電体4と、集電体4の両主面の上に形成された負極合剤層3と、負極合剤層3の上に形成された多孔質層(コート層)2とを備えている。
<集電体4>
負極1に用いる集電体4としては、通常、金属の箔が用いられ、例えば、厚み6〜16μmの銅箔、より好ましくは8〜14μmの銅箔などを用いることができる。
<負極合剤層3>
負極合剤層3は、負極材料(SiOx)と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダとを含んでいる。負極合剤層3の厚みは、特に限定されないが、例えば10〜100μmとすることができる。
上記負極材料、すなわち、Si(シリコン)とO(酸素)とを構成元素に含みSiに対するOの原子比xが0.5≦x≦1.5であるSiOxには、単純なSiの酸化物だけではなく、SiOxマトリックス中にSiの微結晶または非晶質相を含んでいてもよく、この場合、SiとOの原子比は、Siの微結晶または非晶質相を構成するSiを含めた材料全体での比率となる。
すなわち、上記材料には、非晶質のSiO2マトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造の材料が含まれ、この非晶質のSiO2と、その中に分散しているSiを合わせて、上記原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO2とSiのモル比が1:1の材料の場合、x=1であるので、この材料の組成式としては、材料の平均組成としてSiOで表記される。このような構造の材料の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。また、上記負極材料は、複数のSiOx粒子からなる複合粒子であってもよい。
上記負極材料であるSiOxは、その表面が炭素で被覆されていることが望ましい。前述の通り、SiOxは導電性が乏しいため、これを負極活物質として用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、導電助剤を使用し、負極内におけるSiOxと導電助剤との混合・分散を良好にして、優れた導電ネットワークを形成することが望ましく、中でも、SiOxの表面を炭素で被覆することにより、例えば、単にSiOxと、炭素材料の粉末からなる導電助剤とを混合する場合よりも、負極における導電ネットワークが良好に形成される。
また、炭素で被覆されたSiOxを、さらに導電助剤として機能する炭素材料の粉末とを共存させることにより負極において更に良好な導電ネットワークの形成が可能となり、より高容量で、電池特性(例えば、充放電サイクル特性)に優れた非水二次電池の実現が可能となる。例えば、炭素で被覆されたSiOxと炭素材料の粉末とを混合して用いるか、この混合物を更に造粒して造粒体として用いることができる。
また、上記炭素で被覆されたSiOxとしては、SiOxとそれよりも比抵抗値が小さい導電性材料との造粒体の表面を更に炭素で被覆したものも、好ましく用いることができる。上記造粒体内部においてSiOxと導電性材料とが分散した状態であると、より良好な導電ネットワークを形成できるため、これを負極材料として含有する負極を有する非水二次電池において、重負荷放電特性などの電池特性を更に向上させることができる。
上記導電性材料としては、繊維状またはコイル状の炭素材料、繊維状またはコイル状の金属、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む。)、人造黒鉛、易黒鉛化炭素および難黒鉛化炭素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の材料が好ましい。繊維状またはコイル状の炭素材料や、繊維状またはコイル状の金属は、導電ネットワークを形成し易く、かつ表面積が大きい点において好ましい。カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む。)、人造黒鉛、易黒鉛化炭素および難黒鉛化炭素は、高い電気伝導性、高い保液性を有しており、更に、電池の充放電によりSiOx粒子が膨張収縮しても、その粒子との接触を保持し易い性質を有している点において好ましい。
上記導電性材料の中でも、繊維状の炭素材料が特に好ましい。繊維状の炭素材料は、その形状が細い糸状であり柔軟性が高いために電池の充放電に伴うSiOxの膨張収縮に追従でき、また、嵩密度が大きいために、SiOx粒子と多くの接合点を持つことができるからである。繊維状の炭素としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられ、これらの何れを用いてもよい。
また、繊維状の炭素材料や繊維状の金属は、例えば、気相法にてSiOx粒子の表面に形成することもできる。
SiOxの比抵抗値が、通常、103〜107kΩcmであるのに対して、上記例示の導電性材料の比抵抗値は、通常、10-5〜10kΩcmであるので、負極材料の導電性を効率的に向上できる。
また、上記例示の導電性材料のうち、各種炭素材料は、前述の炭素で被覆されたSiOxとの造粒体を構成するための炭素材料としても使用できる。
また、炭素で被覆された上記負極材料は、その粒子表面の炭素被覆層を覆う材料層として、例えば難黒鉛化炭素を含む材料層を更に有していてもよい。
上記負極材料において、SiOxと、その表面を覆う炭素との比率は、炭素による被覆の作用を良好に発揮させる観点から、SiOx:100質量部に対して、炭素が5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、上記負極材料において、SiOxの表面を覆う炭素の比率が多すぎると、負極合剤層3中のSiOx量の低下に繋がり、高容量化の効果が小さくなるおそれがあることから、SiOx:100質量部に対して、炭素は、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
次に、上記負極材料の製造方法について説明する。上記負極材料は、例えば下記の方法によって得ることができる。
SiOx粒子を複合化して複合粒子を作製する場合は、先ず、SiOxが分散媒に分散した分散液を用意し、その分散液を噴霧し乾燥して、複数のSiOx粒子を含む複合粒子を作製する。分散媒としては、例えば、エタノールなどを用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。上記方法以外にも、振動型や遊星型のボールミルやロッドミルなどを用いた機械的な方法による造粒方法においても、同様の複合粒子を作製することができる。
また、SiOxと、SiOxよりも比抵抗値の小さい導電性材料との造粒体を作製する場合には、先ず、SiOxが分散媒に分散した分散液を作製し、その分散液中に上記導電性材料を添加し、その分散液を用いて、SiOx粒子を複合化する場合と同様の手法によって造粒体を作製すればよい。また、上記と同様の機械的な方法による造粒方法によっても、SiOxと導電性材料との造粒体を作製することができる。
次に、上記のように作製したSiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと導電性材料との造粒体)と炭化水素系ガスとを気相中にて加熱して、炭化水素系ガスの熱分解により生じた炭素を、SiOx粒子の表面上に堆積させる。このように、気相成長(CVD)法によれば、炭化水素系ガスがSiOx粒子の隅々にまで行き渡り、SiOx粒子の表面や表面の空孔内に、導電性を有する炭素を含む薄くて均一な皮膜(炭素被覆層)を形成できることから、少量の炭素によってSiOx粒子に均一性よく導電性を付与できる。
上記CVD法の処理温度(雰囲気温度)については、炭化水素系ガスの種類によっても異なるが、通常、600〜1200℃が適当であり、中でも、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い炭素を含む被覆層を形成できるからである。
上記炭化水素系ガスの液体ソースとしては、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレンなどを用いることができるが、取り扱い易いトルエンが特に好ましい。これらの液体ソースを、例えば、窒素ガスでバブリングさせて気化させることにより炭化水素系ガスを得ることができる。また、メタンガスやアセチレンガスなどを用いることもできる。
また、CVD法にて上記SiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと導電性材料との造粒体)の表面を炭素で覆った後に、石油系ピッチ、石炭系のピッチ、熱硬化性樹脂、およびナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物を、炭素の被覆層に付着させた後、上記有機化合物が付着した粒子を焼成してもよい。
具体的には、炭素で被覆されたSiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと導電性材料との造粒体)と、上記有機化合物とが分散媒に分散した分散液を用意し、この分散液を噴霧し乾燥して、有機化合物によって被覆された粒子を形成し、その有機化合物によって被覆された粒子を焼成する。
上記ピッチとしては等方性ピッチを用いることができ、上記熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂などを用いることができる。また、上記ナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を用いることができる。
炭素で被覆されたSiOx粒子と上記有機化合物とを分散させるための分散媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノールなど)を用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。焼成温度は、通常、600〜1200℃が適当であるが、中でも700℃以上が好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い良質な炭素材料を含む被覆層を形成できるからである。ただし、処理温度はSiOxの融点以下であることを要する。
上記負極合剤層3は、上記負極材料と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドのうちの少なくとも1種のバインダ(結着剤)とを含む混合物(負極合剤)に、適当な溶媒(分散媒)を加えて十分に混練して得たペースト状やスラリー状の組成物(塗料)を、集電体4に塗布し、乾燥などにより溶媒を除去して、所定の厚みおよび密度で形成することができる。負極合剤層3は、上記以外の方法で形成してもよい。
負極合剤層3には、バインダとして、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドのうちの少なくとも1種を使用する。これらのバインダは、SiOx同士や、SiOxと混合される導電性材料(負極合剤層3中において、SiOxを被覆する炭素以外の導電性向上に寄与する成分を意味し、上記表面が炭素で被覆されたSiOxと導電性材料との混合体に係る導電性材料、SiOxと導電性材料との造粒体の表面を炭素で被覆した粒子における導電性材料、負極材料の表面を被覆する炭素を更に覆う難黒鉛化炭素を含む材料層における難黒鉛化炭素および後述する導電助剤を含む。)とを結着する力が強いため、電池の充放電の繰り返しによってSiOxの膨張収縮が生じても、これらの接触を維持して、負極合剤層3内の導電ネットワークを良好に保持することができる。
上記ポリイミドとしては、各種ポリイミドを用いることができ、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミドの何れも使用することができる。また、熱硬化性ポリイミドとしては、縮合型のポリイミド、付加型のポリイミドの何れも用いることができる。より具体的には、例えば、東レ社製「セミコファイン(商品名)」、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製「PIXシリーズ(商品名)」、日立化成社製「HCIシリーズ(商品名)」、宇部興産社製「U−ワニス(商品名)」などの市販品を使用することができる。また、電子の移動性が良好であるなどの理由から、分子鎖中に芳香環を有するもの、すなわち芳香族ポリイミドがより好ましい。ポリイミドは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリアミドイミドとしては、各種ポリアミドイミドを用いることができる。より具体的には、例えば、日立化成社製「HPCシリーズ(商品名)」、東洋紡績社製「バイロマックス(商品名)」などの市販品を使用することができる。また、ポリアミドイミドにおいても、ポリイミドと同じ理由から、分子鎖中に芳香環を有するもの、すなわち芳香族ポリアミドイミドがより好ましい。ポリアミドイミドは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリアミドとしては、例えば、ナイロン66、ナイロン6、芳香族ポリアミド(ナイロンMXD6など)などの各種ポリアミドが使用できる。また、ポリアミドにおいても、ポリイミドなどと同じ理由から、分子鎖中に芳香環を有するもの、すなわち芳香族ポリアミドがより好ましい。ポリアミドは、1種のみを使用してもよく、2種以上のポリアミドを併用してもよい。
負極合剤層3のバインダには、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドの少なくとも1種を使用すればよいが、これらの2種以上を併用してもよい。
また、負極合剤層3には、ポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリアミドと共に、これら以外のバインダを併用してもよい。ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド以外のバインダとしては、通常、でんぷん、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロースなどの多糖類やそれらの変成体;ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂やそれらの変成体;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシドなどのゴム状弾性を有するポリマーやそれらの変成体;などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
上記負極合剤には、更に導電助剤を添加してもよい。導電助剤としては、非水二次電池内において化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に限定されない。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの粉末)、金属繊維、ポリフェニレン誘導体(特開昭59−20971号公報に記載のもの)などの材料を、1種または2種以上用いることができる。
上記負極合剤層3においては、電池の容量を高める観点から、上記負極材料の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。ただし、負極合剤層3中における上記負極材料の量が多すぎると、例えばバインダの量が少なくなって、SiOxの体積変化による問題を回避する作用が小さくなるおそれがあることから、上記負極材料の含有量は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。
また、負極合剤層3中におけるバインダの含有量は、バインダの使用による作用をより有効に発揮させる観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。ただし、負極合剤層3中におけるバインダの量が多すぎると、例えば上記負極材料の量が少なくなって、高容量化の効果が小さくなるおそれがあることから、バインダの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
負極合剤層3のバインダとして、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミド以外のバインダを併用する場合には、負極合剤層3中のポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリアミドの含有量を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上としつつ、上記好適なバインダ量を満足するように調整することが望ましい。負極合剤層3中におけるポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリアミドの量を上記のように設定することで、これらの使用による作用をより有効に発揮させることができるようになる。
更に、負極合剤層3においては、電池をより高容量化する観点から、上記負極材料におけるSiOxを被覆している炭素、および必要に応じて使用される上記炭素以外の導電性材料(上記表面が炭素で被覆されたSiOxと導電性材料との混合体に係る導電性材料、SiOxと導電性材料との造粒体の表面を炭素で被覆した粒子における導電性材料、負極材料の表面を被覆する炭素を更に覆う難黒鉛化炭素を含む材料層における難黒鉛化炭素および前述の導電助剤)の合計量が、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、負極合剤層3において導電ネットワークを良好に形成する観点からは、負極合剤層3中における上記SiOxを被覆している炭素とその他の導電性材料との合計量が、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
<多孔質層(コート層)2>
多孔質層(コート層)2は、エポキシ樹脂硬化物微粒子を含んでいる。多孔質層(コート層)2は、負極合剤層3中の上記負極材料の充放電に伴って生じる大きな膨張収縮に起因する負極1の膨張や湾曲を防止し、電池の充放電サイクル特性を向上させ、更に電池の熱暴走を防ぐシャットダウン機能を有する層である。
コート層2を形成するエポキシ樹脂硬化物微粒子の粒径は、小さすぎると粒子同士の隙間が小さくなり、イオンの伝導パスが長くなって電池特性が低下することがある。また、上記粒径が大きすぎると、隙間が大きくなってリチウムデンドライトなどに起因する短絡が生じたり、コート層2の厚みが厚くなって電池容量が低下するおそれが生じる。よって、エポキシ樹脂硬化物微粒子の粒径を、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.2〜0.8μmに制御する必要がある。
上記エポキシ樹脂硬化物微粒子は、ポリオレフィン系の樹脂微粒子などに比べ、粒径の制御、ガラス転移点や融点などに起因する材質の軟化点の制御が容易であり、粒子表面に接着層を設けるなどの修飾が可能であるなどの特徴を有している。このため、多孔質層形成材料としてエポキシ樹脂硬化物微粒子を用いることにより、粒子同士の隙間を最適化することができ、厚みが薄くともリチウムデンドライトの発生を充分に抑制することのできるコート層2の形成が可能となる。
本発明におけるエポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基を有する熱硬化性樹脂のことである。エポキシ樹脂としては、例えば、分子内に水酸基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に二重結合を有する化合物を酸化することから得られる脂環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプの基が分子内に混在するエポキシ樹脂などが用いられる。
上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、およびこれらの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類、アミノフェノールのグリシジル化合物類、グリシジルアニリン類、およびキシレンジアミンのグリシジル化合物などが挙げられる。
上記グリシジルエステル型エポキシ樹脂の具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステルや、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルやそれぞれの各種異性体が挙げられる。
上記脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパンなどが挙げられる。
上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、芳香族アミン、脂肪族アミン、ポリアミドアミン、カルボン酸無水物、ルイス酸錯体、酸系硬化触媒、塩基系硬化触媒などが挙げられる。
上記芳香族アミンの具体的な例としては、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタンなどが用いられる。
上記脂肪族アミンの具体例としては、ピペラジン、ヒドラジン、ヘキサンニ酸ジヒドラジド、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミン、ピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ポリアミドアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ココアルキルアミン、牛脂アルキルアミン、オレイルアミン、硬化牛脂アルキルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン、ジシアンジアミドなどが挙げられる。
上記ポリアミドアミンの具体例としては、“トーマイド”210、“トーマイド”235、“トーマイド”245、“トーマイド”2151(富士化成工業(株)製)などが挙げられる。
上記カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、エチレングリコールビストリメリテート、テトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
上記ルイス酸錯体としては、三フッ化ホウ素またはそのアミン錯体、塩化亜鉛、塩化錫、塩化鉄、塩化アルミニウムなどが挙げられる。
上記酸系硬化触媒としては、オクタン酸、ラウリル酸、ステアリン酸、コハク酸、グルタル酸などの脂肪族カルボン酸;安息香酸、ナフトエ酸、フタル酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸;フェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物などが挙げられる。
上記塩基系硬化触媒としては、ピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7またはその有機酸塩、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5またはその有機酸塩などが挙げられる。
中でも、好ましくは、ピペラジン、ヒドラジン、ヘキサン二酸ジヒドラジド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジフェニルスルホンまたはジアミノジフェニルメタンなどが挙げられ、特に好ましくは、ピペラジン、ヒドラジンである。
また、これらの硬化剤は、硬化活性を高めるために適当な硬化助剤を組み合わせて用いることができる。エポキシ樹脂に硬化助剤を組み合わせる場合の好ましい例としては、ジシアンジアミド(脂肪族アミン)に、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)などの尿素誘導体を硬化助剤として組み合わせる例、芳香族アミンに三フッ化ホウ素エチルアミン錯体を硬化助剤として組み合わせる例、およびカルボン酸無水物やノボラック樹脂に3級アミンを硬化助剤として組み合わせる例などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂硬化物微粒子とは、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤とを反応させたエポキシ樹脂硬化物の微粒子であり、その平均粒径が50〜400nmの微粒子である。この微粒子の形状は、真球状、楕円球状、扁平状、岩状、金平糖状、不定形などいずれの形態でもよい。また、本は発明における平均粒子は、レーザー回折・光散乱式の粒度分布計で測定した平均粒径を意味する。
上記エポキシ樹脂硬化物微粒子の製造方法は特に限定されず、例えば、攪拌、ホモジナイザー、超音波分散、転相乳化などにより、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂と非相溶な媒体とのエマルジョンを形成した後に、硬化させることにより製造することができる。
上記エポキシ樹脂と非相溶な媒体としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂肪族アルキル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族アルキル系溶剤;酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶媒;クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエンなどのハロゲン化アルキル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トリメチルリン酸、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;および水などが挙げられる。これらは、1種単独で用いることができ、また2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも芳香族アルキル系溶剤、脂肪族アルキル系溶剤、ハロゲン化アルキル溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、極性溶媒、水が好ましく、最も好ましいのは水である。
上記エマルジョンを形成する際、界面活性剤を用いてもよい。この際、用いられる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられる。
上記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、モノアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルナトリウム、脂肪酸エステルスルホン酸ナトリウム、脂肪酸エステル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アルキロースアミド硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アミドスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルピリジニウムなどが挙げられる。
上記両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノカルボン酸塩、カルボキシベタイン、アルキルベタイン、スルホベタイン、ホスホベタインなどが挙げられる。
上記非イオン系界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸トリエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、イソプロパノールアミド、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアミンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
ここでいうアルキルとは、例示するならば炭素数2から30までの直鎖型飽和炭化水素基、直鎖型不飽和炭化水素基、または分岐型飽和炭化水素基、分岐型不飽和炭化水素基が該当する。
また、エポキシ樹脂硬化物微粒子の軟化点を80〜200℃に制御することにより、電池の熱暴走の発生温度領域(130℃以上)に到達する前に、もしくは、各種セパレータの熱収縮温度に到達する前に、エポキシ樹脂の軟化により多孔質層3の空孔が閉塞されて導電が遮断され、熱暴走を防ぐことができる。エポキシ樹脂硬化物微粒子の軟化点の制御は、エポキシ樹脂の種類または硬化剤の種類を適宜選択することにより行うことができる。
また、上記エポキシ樹脂硬化物微粒子の表面に層厚10〜100nmの接着層を設けることにより、粒子同士が強固に密着し、より耐久性に優れたコート層2を形成できるため、電池の充放電サイクル特性を向上できる。
上記接着層は、ガラス転移点が50℃以下のエラストマー(以下、熱可塑性エラストマーともいう。)から形成することができる。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエン、炭素数4〜20のアルキル基からなるポリアルキルアクリレート、グリシジル基を有するポリアクリル酸エステル、脂肪族ポリエステル、不飽和ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、ポリアミドなどを用いることができる。
上記接着層の形成は、上記エポキシ樹脂硬化物微粒子の表面を上記熱可塑性エラストマーで被覆することにより行うことができる。具体的には、上記エポキシ樹脂硬化物微粒子の分散液に対し、二重結合を有するモノマーを反応させて、分散液中で重合反応を行うことにより、上記エポキシ樹脂硬化物微粒子の表面を上記熱可塑性エラストマーで被覆することができる。
上記二重結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸2−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−へキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレンなどの芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)マレイミドなどのマレイミド系単量体;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセンなどの共役ジエン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。
また、上記二重結合を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸などの不飽和カルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコールなどの不飽和アルコールまたはエチレングリコール、ブタンジオールなどのグリコールとのエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸などのジカルボン酸と上記不飽和アルコールとのエステルなどの多官能ビニル系モノマーを用いてもよい。具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどを用いてもよい。
また、上記重合反応を行わせる分散液にはラジカル開始剤を加える。ラジカル開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどの有機ハイドロパーオキサイド類と、遷移金属塩などの還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤などを使用することができる。
上記重合反応を実施する雰囲気としては、窒素、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましく、また上記重合反応を実施する温度としては、20〜200℃であり、好ましくは、30〜100℃、より好ましくは、40〜90℃である。
コート層2を形成するにあたっては、上記エポキシ樹脂硬化物微粒子を結着する目的で、バインダを用いることが好ましい。バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシエチルセルロースナトリウム塩、カルボキシプロピルセルロースナトリウム塩などを用いることができる。コート層2の形成にバインダを用いる場合、コート層2中のバインダの含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であって、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
コート層2には電子伝導性の材料を含ませてもよい。電子伝導性の材料はコート層2の必須成分ではないが、後述するように、負極材料であるSiOxに予めLiを導入する場合には、電子伝導性の材料をコート層2に含有させる。
コート層2に使用可能な電子伝導性の材料としては、例えば、炭素粒子、炭素繊維などの炭素材料;金属粒子、金属繊維などの金属材料;金属酸化物などが挙げられる。
上記炭素材料としては、例えば、電池を構成する電極において、導電助剤として用いられている炭素材料を用いることができる。具体的には、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなど)、黒鉛(燐片状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛や人造黒鉛)などの炭素粒子や、炭素繊維が挙げられる。
上記炭素材料の中でも、カーボンブラックと黒鉛とを併用することが、後述するバインダとの分散性の観点から特に好ましい。また、カーボンブラックとしては、ケッチェンブラックやアセチレンブラックが特に好ましい。
これらの中でも、Liとの反応性が低い炭素粒子が好ましい。炭素粒子の粒径は、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
コート層2を構成する電子伝導性の材料のうち、金属粒子や金属繊維としては、Liとの反応性が低くLiと合金を形成し難い金属元素で構成されているものが好ましい。金属粒子や金属繊維を構成する具体的な金属元素としては、例えば、Ti、Fe、Ni、Cu、Mo、Ta、Wなどが挙げられる。また、金属粒子や金属繊維は、その表面があまり酸化されていないものが好ましく、過度に酸化されているものについては、予め還元雰囲気中で熱処理するなどした後に、コート層2の形成に供することが望ましい。
これらの中でも、Liとの反応性が低い金属粒子が好ましい。金属粒子の形状は特に制限はなく、塊状、針状、柱状、板状など、いずれの形状であってもよい。金属粒子の粒径としては、例えば、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
また、コート層2に電子伝導性の材料を含有させる場合には、エポキシ樹脂硬化物微粒子と、電子伝導性を有する材料との合計を100質量%としたとき、電子伝導性を有する材料の比率は、例えば、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上であって、96質量%以下、より好ましくは95質量%以下であり、すなわち、エポキシ樹脂硬化物微粒子の比率は、例えば、好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上であって、97.5質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
コート層2の厚みは、例えば、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下である。コート層2がこのような厚みであれば、負極合剤層3の膨張や湾曲をより効率的に抑制でき、電池の高容量化と電池特性の向上をより確実に達成することができる。すなわち、コート層2の厚みが、例えば、負極合剤層3の表面粗さに対して薄くなりすぎると、ピンホールなしに負極合剤層3の全面を覆うことが困難となり、コート層2を形成することによる効果が小さくなるおそれがあり、一方、コート層2が厚すぎると、電池の容量低下に繋がるので、できる限り薄く形成することが好ましい。
また、コート層2を設けることで、負極1と非水電解質との親和性が向上するため、非水電解質の電池への導入が容易となる効果もある。
コート層2は、例えば、上記エポキシ樹脂硬化物微粒子や、必要に応じて使用される電子伝導性を有する材料およびバインダなどを含む混合物に、適当な溶媒(分散媒)を加えて十分に混練して得たペースト状やスラリー状のコート層形成用組成物(塗料)を、負極合剤層3上に塗布し、乾燥などにより溶媒を除去して、所定の厚みで形成することができる。より具体的には、負極合剤層形成用組成物を集電体4の上に塗布した後、この塗膜が完全に乾燥する前に、その上にコート層形成用組成物を塗布し、乾燥して、負極合剤層3とコート層2とを同時に形成してもよい。また、負極合剤層形成用組成物を集電体4に塗布した後、直ちに(実質的には略同時に)その上にコート層形成用組成物を塗布して乾燥する同時重層塗布方式により、負極合剤層3とコート層2とを同時に形成してもよい。更に、負極合剤層形成用組成物を集電体4に塗布して乾燥させた後、その上にコート層形成用組成物を塗布して乾燥する逐次重層塗布方式により、負極合剤層3を形成した後に、コート層2を順次形成してもよい。
<負極1へのLiの導入>
本発明で用いる負極材料であるSiOxは不可逆容量が比較的大きいため、負極1に予めLiを導入しておくことも好ましく、この場合には更なる高容量化が可能となる。
負極1へのLiの導入方法としては、例えば、上記電子伝導性を有する材料を含有させたコート層2の負極合剤層3側とは反対側の表面にLi含有層(図示せず。)を更に形成しておき、このLi含有層から負極合剤層3内のSiOxへLiを導入する方法が好ましい。
SiOxにLiを導入するとSiOxの体積変化によって負極1の湾曲が生じるおそれがある。しかし、本発明に係る負極1では、コート層2を有しているため、電池の有する非水電解質(電解液)が存在する環境下、例えば電池内部では、負極合剤層3中のSiOxにLi含有層中のLiが電気化学的に導入されるが、非水電解質の存在しない環境下では、SiOx中へのLiの導入反応は殆ど生じない。このように、上記Li導入法を採用する場合、コート層2は、非水電解質を介してLi含有層中のLiを負極合剤層3へ供給する機能も有しており、これにより、SiOxとLiとの反応性を制御して、Liの導入に伴う負極1の湾曲などを抑制することができる。
負極1にLiを導入するためのLi含有層は、抵抗加熱やスパッタリングなどの一般的な気相法(気相堆積法)で形成した蒸着膜であることが好ましい。気相法により、蒸着膜としてコート層2上に直接Li含有層を形成する方法であれば、コート層2の全面にわたって均一な層を、所望の厚みで形成することが容易であるため、LiをSiOxの不可逆容量分に対して過不足なく導入することができる。
気相法によってLi含有層を形成する場合には、真空チャンバ内で蒸着源と、負極に係るコート層2とを対向させ、所定の厚みの層になるまで蒸着すればよい。
上記Li含有層は、Liのみで構成されていてもよく、例えば、Li−Al、Li−Al−Mn、Li−Al−Mg、Li−Al−Sn、Li−Al−In、Li−Al−CdなどのLi合金により構成されていてもよい。Li含有層がLi合金で構成されている場合には、Li含有層中におけるLiの含有比率は、例えば、50〜90mol%であることが好ましい。
上記Li含有層の厚みは、例えば、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下である。Li含有層をこのような厚みで形成することで、LiをSiOxの不可逆容量分に対して、より過不足なく導入することができる。すなわち、Li含有層が薄すぎると、負極合剤層3に存在するSiOx量に対するLi量が少なくなって、容量向上効果が小さくなることがある。また、Li含有層が厚すぎると、Li量が過剰となるおそれがあり、また、蒸着量が多くなるため生産性も低下する。
次に、本発明の非水二次電池に用いる正極の実施形態について説明する。本発明の非水二次電池に係る正極には、正極材料(正極活物質)として、Li含有遷移金属酸化物を使用する。Li含有遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixCoy1-y2、LixNi1-yy2、LixMnyNizCo1-y-z2、LixMn24、LixMn2-yy4(上記各構造式中、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ti、GeおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、0≦x≦1.1、0<y<1.0、2.0<z<1.0である。)などが挙げられる。
上記正極は、上記正極材料と導電助剤とバインダとを含む混合物(正極合剤)に、適当な溶媒(分散媒)を加えて十分に混練して得たペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を、集電体に塗布し、所定の厚みおよび密度を有する正極合剤層を形成することによって得ることができる。また、正極は、上記製法により得られたものに限られず、他の製法で得たものであってもよい。
上記正極合剤に用いるバインダとしては、負極用として例示した前述の各バインダを用いることができる。また、上記正極合剤に用いる導電助剤についても、負極用のものとして例示した前述の各導電助剤を使用できる。
上記正極に係る正極合剤層においては、正極材料(正極活物質)の含有量が、例えば、79.5〜99質量%であり、バインダの含有量が、例えば、0.5〜20質量%であり、導電助剤の含有量が、例えば、0.5〜20質量%であることが好ましい。
正極に用いる集電体としては、通常、金属の箔が用いられ、例えば、厚み5〜30μmのアルミニウム箔、より好ましくは10〜20μmのアルミニウム箔などを用いることができる。
続いて、本発明の非水二次電池に用いる非水電解質の実施形態について説明する。本発明の非水二次電池に係る非水電解質としては、溶媒の中に無機イオン塩を溶解させることによって調製した電解液を用いることができる。
上記溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒を、1種または2種以上用いることができる。
上記無機イオン塩としては、Li塩、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸Li、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランLi、四フェニルホウ酸Liなどを、1種または2種以上用いることができる。
上記溶媒中に上記無機イオン塩が溶解された電解液の中でも、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルカーボネートおよびメチルエチルカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートとを含む溶媒に、LiClO4、LiBF4、LiPF6およびLiCF3SO3よりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機イオン塩を溶解した電解液が好ましい。電解液中の無機イオン塩の濃度は、例えば、0.2〜3.0mol/Lが適当である。
本発明の非水二次電池は、上記正極、上記負極および上記非水電解質などを用いて電池を組み立てることにより得ることができる。非水二次電池の組み立ての際には、電池の形態に応じて、複数の正極と複数の負極とをセパレータを介して積層した積層構造の電極体、または正極と負極とをセパレータを介して積層し、更にこれを渦巻状に巻回した巻回構造の電極体を作製し、その後、この電極体を電池缶に挿入すればよい。
本発明の非水二次電池は、上記負極、上記正極および上記非水電解質を備えていればよく、その他の構成要素や構造については特に制限はなく、従来の非水二次電池で採用されている各種構成要素、構造を適用することができる。
例えば、セパレータとしては、強度が十分で、かつ電解液を多く保持できるものがよく、そのような観点から、厚みが10〜50μmで開口率が30〜70%の、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはエチレン−プロピレン共重合体を含む微多孔フィルムや不織布などが好ましい。
また、本発明の非水二次電池では、その形状などについても特に制限はない。例えば、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車などに用いる大型のものなど、いずれであってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。また、以下の実施例において、各種粒子の平均粒径は、マイクロトラック社製「MICROTRAC HRA(Model:9320−X100)」を用いて、レーザー回折式粒度分布測定法により測定した体積平均値である。
(実施例1)
<負極の作製>
先ず、SiO粒子(平均粒径5.0μm)を沸騰床反応器中で約1000℃に加熱し、加熱された粒子にメタンと窒素ガスとからなる25℃の混合ガスを接触させ、1000℃で60分間CVD処理を行った。このようにして上記混合ガスが熱分解して生じた炭素(以下、「CVD炭素」ともいう。)をSiO粒子の表面に堆積させて被覆層を形成し、本実施例の負極材料を得た。被覆層形成前後の質量変化から上記負極材料の組成を算出したところ、SiO:CVD炭素=90:10(質量比)であった。
次に、上記負極材料80質量%(固形分全量中の含有量、以下同じ。)と、黒鉛10質量%と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリアミドイミド8質量%と、脱水N−メチルピロリドン(NMP)とを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。
また、その表面に厚み0.02μmのポリブチルアクリレートからなる接着層を形成したエポキシ樹脂硬化物微粒子(平均粒径0.2μm、軟化点140℃)を準備した。次に、上記エポキシ樹脂硬化物微粒子30質量%(固形分全量中の含有量、以下同じ。)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1質量%と、水とを混合してコート層形成用スラリーを調製した。
続いて、ブレードコーターを用いて、上記負極合剤含有スラリーを厚みが8μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布し、100℃で乾燥した後にローラープレス機により圧縮成形して、集電体の両面に厚み35μmの負極合剤層を形成して積層体とした。
その後、上記積層体について、遠赤外線ヒーターを用いて160℃で15時間熱処理を施した。熱処理後、上記積層体の両面に上記コート層形成用スラリーを塗布し、厚み5μmのコート層を形成した。コート層を形成した積層体を、更に真空中100℃で15時間乾燥させた。最後に、上記積層体を幅37mmに裁断して短冊状の負極を得た。
上記負極では、負極合剤層と集電体との接着、および負極合剤層とコート層との接着は強固であり、裁断や折り曲げによっても、負極合剤層が集電体から剥離することはなく、またコート層が負極合剤層から剥離することもなかった。
<正極の作製>
先ず、正極材料としてLiCoO2を96質量%(固形分全量中の含有量、以下同じ。)と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリ弗化ビニリデン(PVDF)2質量%と、脱水NMPとを混合して正極合剤含有スラリーを調製した。
次に、ブレードコーターを用いて、上記正極合剤含有スラリーを厚みが15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、120℃で乾燥した後にローラープレス機により圧縮成形して、集電体の両面に厚み85μmの正極合剤層を形成して積層体とした。最後に、上記積層体を幅36mmに裁断して短冊状の正極を得た。
<非水二次電池の作製>
先ず、厚み16μmの微孔性ポリエチレンフィルム製のセパレータを準備した。次に、上記負極と上記正極とを上記セパレータを介して重ね合わせた後、ロール状に巻回して電極体を形成した。続いて、上記電極体に正端子および負極端子を溶接して、厚み4mm、幅34mm、高さ43mm(463443型)のアルミニウム製の電池缶に上記電極体を挿入し、蓋を溶接して取り付けた。その後、蓋の注液口よりEC:DEC=3:7(体積比)の溶媒に1mol/LのLiPF6を溶解させて調製した電解液(非水電解質)2.5gを、電池缶内に注入し、密閉して本実施例の角形非水二次電池を得た。
(実施例2)
先ず、SiO粒子(平均粒径1μm)と、繊維状炭素(平均長さ2μm、平均直径0.08μm)と、ポリビニルピロリドン10gとを、エタノール1L中にて混合し、これらを更に湿式のジェットミルにて混合してスラリーを得た。このスラリーの調製に用いたSiO粒子と繊維状炭素(CF)との質量比は、SiO:CF=89:11とした。
次に、上記スラリーを用いてスプレードライ法(雰囲気温度200℃)にてSiO粒子とCFとの造粒体粒子を作製した。この造粒体粒子の平均粒径は10μmであった。続いて、上記造粒体粒子を沸騰床反応器中で約1000℃に加熱し、加熱された造粒体粒子にベンゼンと窒素ガスとからなる25℃の混合ガスを接触させ、1000℃で60分間CVD処理を行った。このようにして、上記混合ガスが熱分解して生じた炭素を上記造粒体粒子の表面に堆積させて被覆層を形成し、本実施例の負極材料を得た。被覆層形成前後の質量変化から上記負極材料の組成を算出したところ、SiO:CF:CVD炭素=80:10:10(質量比)であった。
次に、上記負極材料90質量%(固形分全量中の含有量、以下同じ。)と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリアミドイミド8質量%と、脱水NMPとを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを負極合剤層の形成に用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
(実施例3)
先ず、SiO粒子(平均粒径1μm)と、黒鉛(平均粒径2μm)と、ポリビニルピロリドン10gとを、エタノール1L中にて混合し、これらを更に湿式のジェットミルにて混合してスラリーを得た。このスラリーの調製に用いたSiO粒子と黒鉛との質量比は、SiO:黒鉛=90:10とした。
次に、上記スラリーを用いてスプレードライ法(雰囲気温度200℃)にてSiO粒子と黒鉛との造粒体粒子を作製した。この造粒体粒子の平均粒径は15μmであった。続いて、上記造粒体粒子を沸騰床反応器中で約1000℃に加熱し、加熱された造粒体粒子にベンゼンと窒素ガスとからなる25℃の混合ガスを接触させ、1000℃で60分間CVD処理を行った。このようにして、上記混合ガスが熱分解して生じた炭素を上記造粒体粒子の表面に堆積させて被覆層を形成し、炭素被覆層によって覆われた造粒体粒子を得た。
続いて、炭素被覆層によって覆われた上記造粒体粒子100gと、フェノール樹脂40gとをエタノール1L中に分散し、その分散液を噴霧して乾燥して(雰囲気温度200℃)、炭素被覆層によって覆われた造粒体粒子の表面を更にフェノール樹脂にてコーティングした。その後、フェノール樹脂にてコーティングされた造粒体粒子を1000℃で焼成して、炭素被覆層の表面を覆う難黒鉛化炭素を含む材料層を形成し、本実施例の負極材料を得た。炭素被覆層形成前後および難黒鉛化炭素を含む材料層形成前後の質量変化から、上記負極材料の組成を算出したところ、SiO:黒鉛:CVD炭素:難黒鉛化炭素=75:7:10:8(質量比)であった。
次に、上記負極材料90質量%(固形分全量中の含有量、以下同じ。)と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリアミドイミド8質量%と、脱水NMPとを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを負極合剤層の形成に用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
(実施例4)
先ず、SiO粒子(平均粒径1μm)200gと、黒鉛(平均粒径3μm)60gと、バインダとしてポリエチレン樹脂粒子30gとを、4Lのステンレス鋼製容器に入れ、更にステンレス鋼製のボールを入れて振動ミルにて3時間混合、粉砕、造粒を行った。その結果、平均粒径20μmの造粒体粒子を作製した。続いて、上記造粒体粒子を沸騰床反応器中で約950℃に加熱し、加熱された造粒体粒子にトルエンと窒素ガスとからなる25℃の混合ガスを接触させ、950℃で60分間CVD処理を行った。このようにして、上記混合ガスが熱分解して生じた炭素を上記造粒体粒子の表面に堆積させて被覆層を形成し、本実施例の負極材料を得た。
炭素被覆層形成前後の質量変化から、上記負極材料の組成を算出したところ、SiO:黒鉛:CVD炭素=80:10:10(質量比)であった。
次に、上記負極材料90質量%(固形分全量中の含有量、以下同じ。)と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリアミドイミド8質量%と、脱水NMPとを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを負極合剤層の形成に用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
(実施例5)
負極合剤含有スラリーに用いたバインダをポリイミドに変更した以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
(実施例6)
接着層付きのエポキシ樹脂硬化物微粒子の軟化点を120℃に変更した以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。この負極を用い、更にセパレータを厚み16μmの微孔性ポリプロピレンフィルム製に変更した以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
(実施例7)
エポキシ樹脂硬化物微粒子を、表面に接着層を形成していないエポキシ樹脂硬化物微粒子(平均粒径0.2μm、軟化点140℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
(比較例1)
コート層形成用スラリーをα−アルミナ(平均粒径1μm)96質量%(固形分全量中の含有量、以下同じ。)と、PVDF6質量%と、脱水NMPとを混合して調製した以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
(比較例2)
負極合剤含有スラリーに用いたバインダをPVDFに変更した以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
(比較例3)
コート層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水二次電池を作製した。
実施例1〜7および比較例1〜3の電池について、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。また、表1ではエポキシ樹脂硬化物微粒子(エポキシ材料)の接着層の有無についても示した。
<電池特性の評価>
作製した電池について、次の条件により充放電を行った。充電は、電流を900mAとして定電流で行い、充電電圧が4.2Vに達した後、電流が1/10となるまで定電圧で行った。放電は、電流を900mAとして定電流で行い、放電終止電圧は2.5Vとした。以上の充電と放電の一連の操作を1サイクルとした。そして、電池の放電容量は、充放電2サイクル目の放電容量(C1)で評価した。また、上記C1と200サイクル目の放電容量(C2)とから、200サイクル目の容量維持率を下記式により算出した。
容量維持率(%)=(C2/C1)×100
上記放電容量(C1)および容量維持率により電池特性を評価した。
また、実施例1、比較例1および比較例2の電池の充放電サイクル特性を図2に示した。図2では、横軸に充放電サイクル数を、縦軸に充放電2サイクル目の放電容量(C1)に対する各サイクル数での容量維持率を上記式により算出した値を、それぞれ示している。
<電池膨れの評価>
作製した電池について、次の条件により充電時の電池の厚みの変化量を測定した。上記電池特性の評価と同じ充放電条件で1サイクル目の充電終了後の各電池の厚みを測定し、充電前の厚み(4mm)との差を求めることにより、電池膨れを評価した。
また、上記厚み測定時における実施例1の電池の横断面のX線CT(Computed Tomography)画像を図3に示し、上記厚み測定時における比較例3の電池の横断面のX線CT画像を図4に示した。
<シャットダウン特性の評価>
作製した電池について、電池温度が30℃の時の正極と負極との間の内部抵抗値を測定して、その値をR30とした。同様にして、電池温度80℃の内部抵抗値(R80)、電池温度130℃の内部抵抗値(R130)および電池温度150℃の内部抵抗値(R150)を測定した。
各電池につて、R80/R30、R130/R30、R150/R30をそれぞれ計算してシャットダウン特性を評価した。
表1および図2に示すように、実施例1〜7の電池は、高容量であり、電池の厚み変化量が小さく、充放電後の容量維持率も高く、130℃以上の内部抵抗値が大きいことから、高容量、高安全性で、充放電サイクル特性が良好で、更に電池膨れも防止できることが分かる。
また、エポキシ樹脂硬化物微粒子(エポキシ材料)に接着層を設けた実施例1〜6と、その接着層を設けなかった実施例7との比較から、上記接着層を設けることにより、容量維持率(充放電サイクル特性)をより向上できることが分かる。
一方、コート層にエポキシ樹脂硬化物粒子を含有していない比較例1では130℃以上の内部抵抗値が大きく、負極合剤層にポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドを含有しない比較例2では容量維持率が低く、負極にコート層を設けなかった比較例3では電池の厚み変化量が大きく、かつ130℃以上の内部抵抗値が大きいことが分かる。
また、図3および図4から明らかなように、負極にコート層を設けなかった比較例3の電池では、巻回構造の電極体において、図中上下方向に変形が認められるのに対し、負極にコート層を設けた実施例1の電池では、こうした電極体の変形が抑制されている。
本発明の非水二次電池は、高容量、高安全性であり、かつ充放電サイクル特性を始めとする各種電池特性が良好であり、これらの特性を生かして、小型で多機能な携帯機器の電源を始めとして、従来の非水二次電池が適用されている各種用途に好ましく用いることができる。
1 負極
2 多孔質層(コート層)
3 負極合剤層
4 集電体

Claims (7)

  1. 正極、負極および非水電解質を含む非水二次電池であって、
    前記正極は、リチウム含有遷移金属酸化物を含有する正極合剤層を含み、
    前記負極は、
    珪素と酸素とを構成元素に含み珪素に対する酸素の原子比xが0.5≦x≦1.5である負極材料と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダとを含む負極合剤層と、
    前記負極合剤層の上に形成され、エポキシ樹脂硬化物微粒子を含有する多孔質層とを含むことを特徴とする非水二次電池。
  2. 前記エポキシ樹脂硬化物微粒子は、その表面に接着層を更に備えた請求項1に記載の非水二次電池。
  3. 前記接着層の厚みが、10〜100nmである請求項1または2に記載の非水二次電池。
  4. 前記エポキシ樹脂硬化物微粒子の軟化点が、80〜200℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水二次電池。
  5. 前記多孔質層の厚みが、2〜10μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水二次電池。
  6. 前記バインダは、分子鎖中に芳香環を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水二次電池。
  7. 前記負極材料は、その表面が炭素により被覆されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水二次電池。
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