JP5511287B2 - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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本発明は、注型重合によるプラスチックレンズの製造方法に関するものであり、詳しくは研磨加工を施すことなく作製された成形面(機械加工面)を有するモールドを使用する注型重合によって、優れた光学特性を有するプラスチックレンズを製造することができるプラスチックレンズの製造方法に関するものである。
プラスチックをレンズ形状に成形してプラスチックレンズを得る方法としては、成形型内でプラスチックレンズ原料液の重合を行う注型重合法が挙げられる。注型重合法では、モールド成形面形状が転写されることにより、レンズ光学面が形成される。
プラスチックレンズ、特に眼鏡レンズには高い面精度が要求されるため、レンズ光学面を形成するためのモールド成形面にも高い面精度が求められる。そこで、モールド成形面に研磨加工を施し鏡面に仕上げることが行われている(例えば特許文献1参照)。
特開2004−299290号公報
しかし、成形型の成形面は研削および/または切削(機械加工)により所望形状に形成されるため、機械加工後の成形面に研磨を施すことは面精度低下の原因となる。成形面が転写されたレンズ表面に対して研磨処理を施すことも考えられるが、この場合も同様に研磨による面精度低下の問題がある。他方、機械加工面をそのまま成形面として使用すると、成形面上の機械加工痕が転写されることにより、得られたレンズに螺旋状やうずまき状のうねりが発生する。光学的には、このうねりの凹凸はそれぞれ凹レンズまたは凸レンズとして作用するため、透過像において、歪みや明暗の差として認識される。この歪みや明暗の差が目視でも確認できるほど鮮明になると、眼鏡レンズとして使用することは困難となる。このうねりは、粗さ成分より長波長成分であるため、レンズ表面を研磨することにより除去しようとすると、研磨量が多くなり面精度を大きく低下させる要因となる。
そこで本発明の目的は、注型重合により光学特性に優れたプラスチックレンズを製造するための手段を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、機械加工面であるモールド成形面を転写することにより成形されたレンズ表面に被膜を形成し、この被膜に研磨処理を施すことにより、上記目的を達成できることを新たに見出した。機械加工面を転写することにより成形されたレンズ表面には、機械加工面に対応するうねりと粗さが存在する。このレンズ表面上に被膜を形成することにより、被膜のマスキング効果によって粗さを低減することはできるが、粗さより長波長成分であるうねりを十分解消することは困難である。これに対し、上記被膜に対して研磨処理を施すことにより、うねりを低減ないしは消去することができる。更に、上記の通りマスキング効果によって粗さ成分を低減することができるため、レンズ表面そのものを研磨する場合と比べて研磨量を低減することができ、研磨に起因する面精度低下を抑制することができる。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、
上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、
上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、
を含むプラスチックレンズの製造方法であって、
上記モールド成形面は機械加工面であり、
上記被転写面上に被膜を形成し、形成された被膜表面に研磨処理を施すことを更に含むことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
[2]前記機械加工面は研削により形成された面である[1]に記載の製造方法。
[3]前記機械加工面の最大表面粗さRtは、2〜5μmの範囲である[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記被膜表面は、波長0.05〜5mmのうねりを有し、かつ前記研磨処理により該うねりを低減する[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記被膜の厚さを、前記被転写面の表面状態に基づき決定し、決定された厚さを有する被膜を形成する[4]に記載の製造方法。
[6]前記被膜の厚さは2〜50μmの範囲である[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記被膜の研磨量は、1〜5μmの範囲である[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記被膜はハードコート被膜である[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記被膜の硬度は、前記プラスチックレンズ基材の硬度より大きい[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]上記モールド成形面は、表面欠陥を含む機械加工面である[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]前記プラスチックレンズ基材は、ウレタン系またはアリル系樹脂からなる[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、優れた光学特性を有する眼鏡レンズを提供することができる。
本発明において使用可能な成形型の一例を示す概略断面図である。 切削装置の一例を示す。 注型重合による光学レンズの製造手順の一例の説明図である。 ディップ法の説明図である。 スピンコート法の説明図である。 投影検査の説明図である。 機械加工面に被膜形成した状態(研磨なし)での外観検査結果である。
本発明は、所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、を含むプラスチックレンズの製造方法に関する。本発明の製造方法において、上記モールド成形面は機械加工面であり、そして上記機械加工面が転写された被転写面上に被膜を形成し、形成された被膜表面に研磨処理を施す。
本発明において「機械加工面」とは、研削および/または切削後に研磨を施されていない面をいう。「研削」とは、固定砥粒を使って部材を削って除去する加工方法をいうものとし、「切削」とは、刃物を使って部材を切り削る加工方法をいうものとし、両者とも面形状を創成(形成)する加工方法である。一方、「研磨」とは、部材表面の凹凸を低減し表面を滑らかにする加工方法である。通常、研磨後の成形面の表面粗さは、表面粗さRtまたはRzとして2μm未満となる。
本発明の製造方法では、レンズ表面に転写するモールド成形面として、機械加工面、即ち研磨を施されていない面を使用する。このように機械加工面を成形面として使用することにより、機械加工により創成した面形状をレンズ表面(被転写面)に精度よく再現することができる。これに対し、研磨を施した研磨面では研磨により面精度が低下するため、機械加工面を転写する場合と比べて形成されるレンズ表面の面精度は劣ることとなる。
但し、前述のように機械加工面を転写したレンズ表面には、モールド成形面(機械加工面)の粗さに起因する凹凸や機械加工痕に起因するうねりが存在するため、そのまま製品レンズとして使用することは困難である。そこで本発明では、上記被転写面上に被膜を形成する。ここで、「被転写面」とは、離型後に研磨加工および機械加工が施されていない面をいうものとする。被転写面に存在する凹凸は、上記被膜により凹凸をマスキングすることができるため、レンズ最表面の表面平滑性を高めることができる。但し、上記被膜によるマスキング効果により粗さに起因する凹凸は低減できるものの、加工痕に起因するうねりを、光学特性に影響を及ぼさないほど解消することは困難である。これは、粗さ成分とうねり成分の波長が異なるためである。うねり成分は長波長成分、具体的には例えば波長0.05〜5mmの成分であるため、被膜によってもマスキングすることは困難である。そこで本発明では、上記被膜に対して研磨処理を施す。これにより被膜表面のうねりを低減することができ、その結果、うねりによる光学特性の低下が抑制された高品質なプラスチックレンズを得ることができる。また、前述のように、被膜を研磨することは、モールド成形面やレンズ表面を研磨する場合と比べて研磨量を低減できるという効果もある。研磨量が多いほど面精度は低下するため、このように研磨量を低減できることは、面精度を高める上でも有効である。
本発明の製造方法は、(1)重合工程、(2)離型工程、(3)被膜形成工程、(4)被膜研磨工程、を含む。以下、各工程について順次説明する。
重合工程、離型工程
本工程では、注型重合によりレンズ形状の成形体を得るため、成形型内へプラスチックレンズ原料液を注入し、次いで成形型内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行う。
本発明において使用される成形型は、所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型であればよく、成形面として機械加工面を有するモールドを使用する点を除き、通常の注型重合で使用される成形型を何ら制限なく使用することができる。上記間隔は、円筒状のガスケットによって閉塞してもよく、ガスケットの代わりに粘着テープを2つのモールドの側面に巻きつけることによって閉塞してもよい。以下、図1に基づいて本発明において使用可能な成形型について説明するが、本発明において使用される成形型は図1に示す態様に限定されるものではない。
(i)成形型
図1中、成形型10は、レンズの前面(凸面)を形成すべく凹面側に成形面を有する凹面型である第一モールド11、レンズの後面(凹面)を形成すべく凸面側に成形面を有する第二モールド12、および円筒状のガスケット13が両モールドの端面を取り囲むことによって内部にキャビティ14が形成されている。プラスチックレンズ原料液は、注入口部15からキャビティ14内へ注入される。ガスケット13は、ガスケットの外周ホルダーとして機能し、レンズの厚さを決める役割を果たす。
第一モールドおよび第二モールドは、製造治具にて取り扱い可能な非転写面(非使用面17)とレンズの光学表面を転写させるための転写面(使用面16)を有する。使用面16はレンズの光学面形状および表面状態を転写する面である。
前述の通り、上記使用面は機械加工面である。機械加工面とは、好ましくは研削および/または切削が施された面であり、より好ましくは研削により最終面形状が形成された面である。最終面形状とは、レンズ表面へ転写される面形状をいう。
以下に、上記モールドの製造方法について説明する。
上型モールド11および下型モールド12は、例えば、プレス加工した厚いガラスブランクスの両面を加工することにより得ることができる。そこで、モールド製造に際し、まずこのガラスブランクスを用意する。
このガラスブランクスを加工することで、ガラスブランクスのプレス面の表面欠陥層を除去し、使用面16および非使用面17を所定精度の曲率半径にすると同時に、微細で均一粗さの高精度な使用面16および非使用面17を得る。使用面の加工は、前述の通り機械加工により実施する。非使用面も同様に機械加工により形成することができる。
研削工程は、例えば、NC制御を行う自由曲面研削機においてダイヤモンドホイールを使用し、ガラスブランクスの両面(使用面16および非使用面17)を所定の曲率半径に研削する。この研削により、ガラスブランクスから上型モールド11および下型モールド12が形成される。また、研削工程の加工装置としては、上記加工装置に加え、例えば回転および直線移動が可能な加工砥石(移動方向Z軸、ツール回転軸Y軸)の2軸に加えYZ平面に直行して成形型を平行移動させるX軸の3軸の構成からなる加工機を用いることも好適である。なお加工砥石の表面形状は通常、砥石断面形状が円弧または楕円となる。加工条件としては、例えば下記表1に示す条件を採用できるが、これに限定されるものではない。
一方、切削工程には、例えば、NC制御のカーブジェネレータを用いることができる。このNC制御のカーブジェネレータは、加工目的たる曲面の特定点を通る回転軸を中心に円形のモールドを回転させながら切削刃のレンズ素材に対する距離および回転軸に対する距離をコンピュータ制御で形成目的の曲面形状にしたがって制御することにより加工目的の曲面形状を創成するものである。すなわち、このカーブジェネレータは、モールドをその幾何学中心で回転させてダイヤモンド切削刃の刃先を光学面形状をトレースするようにレンズ外周から中心まで直線的に移動させることにより加工痕跡がスパイラル形状を描くように加工する。
図2において、モールド表面の切削加工に用いられるNC制御カーブジェネレータ11は、モールド成形されたモールドAの表面を切削加工する場合、焼結された多結晶ダイヤモンドや単結晶の天然ダイヤモンドを切削ツールの切削刃Bとして使用している。切削加工では、下軸CにモールドAを取付け、下軸Cを軸回転させる(1軸制御)。上軸DのバイトFまたはHは、モールドAの外周から半径方向と上下方向の2軸制御される。したがって、カーブジェネレータ11は、合計3軸の制御によってモールドAの表面を切削加工する。カーブジェネレータ11の下軸Cは1つで、X、Y方向に移動不能で、その位置で回転する。上軸Dは荒削り用の第1のバイトFが取付けられた第1の上軸部Gと、仕上げ切削用の第2のバイトHが取付けられた第2の上軸部Iとを備え、下軸Cに対して上軸Dが水平方向にスライドして第1、第2の上軸部G、Iを切り替える構造となっている。モールドAの凸側の成形面を創成するためには、マトリックスで表された凸面の設計形状高さデータをNC制御部に転送することにより加工が自動的に行われる。
前述の研削および/または切削による機械加工の加工精度は、3μm以内(モールド径50mm)、最大表面粗さ(RtまたはRz)は、通常2〜5μmである。また、その表面に存在するうねり成分の波長は0.05〜5mmである。したがって、上記表面性を有する成形面が転写されたレンズ基材の被転写面も同様に、最大表面粗さ(RtまたはRz)は2〜5μm程度、うねり成分の波長は0.05〜5mm程度となる。本発明では、上記表面性を改善するため、後述するように被膜形成および被膜研磨を行う。
(ii)プラスチックレンズ原料液
前記成形型のキャビティへ注入されるプラスチックレンズ原料液は、通常プラスチックレンズ基材を構成する各種ポリマーの原料モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーを含むことができ、共重合体を形成するために2種以上のモノマーの混合物を含むことができる。レンズ原料液には、必要があればモノマーの種類に応じて選択した触媒を添加することもできる。また、レンズ原料液には、通常使用される各種添加剤を含むこともできる。
前記プラスチックレンズ原料液の具体例としては、例えば、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリウレタンとポリウレアの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン−チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等を重合可能な原料液が挙げられる。上記中、ウレタン系およびアリル系が好適であるが、これらに限定されるものではない。キャビティへのプラスチックレンズ原料液の注入は、通常の注型重合と同様に行うことができる。また、重合条件(加熱温度、加熱プログラム、加熱時間等)は、プラスチックレンズ原料液の種類に応じて適切な条件を選択すればよい。
次いで、重合工程により得られたレンズ形状の重合体(プラスチックレンズ基材)を成形型から離型する。離型は、注型重合によってプラスチックレンズを製造する際、通常行われる方法で行うことができる。
上述の成形型10を用いた重合工程および離型工程を含む光学レンズの製造手順の一例を、図3を参照して説明する。
まず、光学レンズの原料であるモノマーを用意する(S1)。このモノマーは、好ましくは熱硬化樹脂であり、この樹脂に触媒と紫外線吸収剤などを加えて調合し、フィルタで濾過する(S2)。
次に、ガスケット13に上型モールド11および下型モールド12を組み付けて成形型10を完成する(S3)。そして、この成形型10のキャビティ14内に、上述の如く調合されたモノマーを注入し、電気炉内で加熱重合させて硬化させる(S4)。成形型10内でモノマーの重合が完了することでプラスチック製光学レンズが成形され、この光学レンズを成形型10から離型する(S5)。
光学レンズの離型後に、重合より生じたレンズ内部の歪みを除去すべく、アニールと呼ばれる加熱処理を実施する(S6)。その後、中間検査として外観検査および投影検査を光学レンズに対し実施する。光学レンズは、この段階で完成品と半製品(セミ品)に区分けされる。
被膜形成工程
次いで、上記離型工程後のレンズの被転写面上に被膜を形成する。上記完成品については、その両面に被膜を形成することが好ましく、セミ品については、少なくとも光学機能面に被膜を形成することが好ましい。
被膜が形成されるレンズ表面は、前記モールド機械加工面が転写された被転写面である。なお本発明において「被転写面」とは、前述の通り、離型後に研磨加工および機械加工が施されていない面である。被膜形成に先立ち、前記被転写面に対して洗浄および乾燥工程、汚れ除去工程、静電気除去工程等の前処理を施すこともできる。前処理としては、例えば溶剤による洗浄、イオン化エアの吹き付けによる静電気除去および汚れ除去が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、研磨対象となる被膜を被転写面上に直接形成することは必須ではなく、他の層を介して間接的に形成された被膜を研磨対象被膜とすることもできる。また、研磨対象被膜は一層に限られるものではなく、被転写面上に複数の被膜を形成し、そのうちの二層以上を研磨対象被膜とすることも可能である。但し、生産性の点からは、研磨対象被膜は一層とすることが好ましい。
被膜形成は、例えば、ディップ法、スピンコート法等の公知の成膜法(塗布法)により行うことができる。ディップ法は、例えば図4に示すように、ディップ槽21内の被膜溶液22中にレンズ基材1を所定時間(例えば、約30秒)浸漬することにより行うことができる。一方、スピンコート法は、例えば図5に示すように、スピン処理部30にレンズ基材1を搬送し、スピナー31に装着する。スピナー31は、レンズ基材を所定の速度で回転させ、レンズ基材1表面に滴下した被膜溶液の余分な液を遠心力で吹き飛ばす。スピナー31の回転数は、自由に可変設定することができる。スピン条件(例えば、スピン回転数、立ち上がり、立ち下がり、停止など)は、プログラムで設定できるようになっており、レンズ基材の種類や洗浄状態によって適宜決定すればよい。
上記のように塗布した被膜に対し、必要に応じて、加熱硬化、紫外線等の光硬化、溶媒除去等によって硬化処理を施すことにより、被膜を形成することができる。また、上記被膜は、無機系または有機系材料を蒸着、スパッタ等の公知の成膜方法により堆積させることによって形成することもできる。
こうして形成される被膜が、レンズ基材とほぼ同じ屈折率となる被膜、またはアッベ数が略等しくなる被膜であることは、レンズ基材と被膜の光学性能の違いにより、界面において反射、散乱が起こることを回避するために好ましい。
被膜の厚さは、レンズ基材の被転写面の表面状態、即ち粗さおよびうねりの程度に基づき決定することが好ましい。レンズ基材表面の粗さを効果的にマスキングするためには、2μm以上とすることが好ましく、うねり成分も効果的に低減するためには、2〜50μmとすることがより好ましい。なお、1回の成膜では所望の厚さの被膜を形成することができない場合は成膜を複数回繰り返せばよい。
上記被膜としては、レンズ上に形成する機能性膜(ハードコート膜、フォトクロミック層、偏光膜等)を適用することが好ましい。被膜形成とともに、上記機能性膜の機能付与も併せて行うことができるためである。
研磨工程では、被膜の硬度が高いほど、形状を崩さずに研磨することができる。そこで面精度を高度に維持する観点からは、レンズ基材よりも硬度の大きな被膜を形成することが好ましい。上記硬度は、例えばインデンテーション硬さおよび/またはマルテンス硬さである。
上記の高硬度被膜としては、例えばインデンテーション硬さで56mgf/μm2以上の被膜を挙げることができる。そのような被膜の一例としては、一般にハードコート被膜と呼ばれる被膜が挙げられる。
ハードコート被膜としては、特に限定されるものではないが有機ケイ素化合物に微粒子状金属酸化物を添加した被膜が好適である。なお、有機ケイ素化合物に代えてアクリル化合物を使用することもできる。
有機ケイ素化合物としては、例えば、各種アルコキシシランが挙げられる。好ましいアルコキシシランとして、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシランが挙げられる。有機ケイ素化合物は、単体で、又は、二種以上を混合した状態で、用いられる。例えば、レンズ基材との接着性を高めるために、アルコキシシランにエポキシ基(グリシドキシ基)を導入したものを含有させてもよい。ただし本発明では、比較的表面粗度の高いレンズ基材上に被膜を形成するため、レンズ表面の粗さによるアンカー効果により、レンズ基材と被膜との良好な密着性を確保することができる。
微粒子状金属酸化物としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化タングステン、または、これらの複合体等を使用することができる。特に、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズが好ましい。
そして、微粒子状金属酸化物の種類や量によって、ハードコート層の屈折率を調整することが可能である。
また、上記被膜としては、一般にフォトクロミック膜と呼ばれる調光性能を有する被膜を使用することもできる。フォトクロミック膜は、例えば、塗布工程および回転工程に準じた工程によってレンズ基材表面上に塗布した後、紫外線照射等の硬化処理を施すことによって形成することができる。また、フォトクロミック液の塗布は、特開2005−218994号公報記載の方法により行ってもよい。
フォトクロミック液は、硬化性成分、フォトクロミック色素、重合開始剤、および任意に添加される添加剤から形成することができる。
フォトクロミック膜形成のために使用可能な硬化性成分は、特に限定されず、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の光重合性モノマーやオリゴマー、それらのプレポリマーを用いることができる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。なお、前記(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示す。
フォトクロミック液に添加し得るフォトクロミック色素としては、公知のものを使用することができ、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック化合物が挙げられ、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を特に制限なく使用することができる。
前記フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物としては、例えば、特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書などに記載されている化合物が好適に使用できる。
フォトクロミック液には、フォトクロミック色素の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。好ましい添加剤としては、ヒンダートアミン化合物およびヒンダートフェノール化合物が挙げられる。
上記被膜としては、一般に偏光膜と呼ばれる偏光性能を有する被膜を挙げることもできる。偏光膜は、一般に二色性色素の偏光性を利用するものであり、二色性色素の偏光性は、主に二色性色素が一軸配向することにより発現される。したがって、通常、色素膜(二色性色素膜)の下層には、二色性色素を一軸配向させるための配列膜が設けられる。本発明では、該配列膜を上記研磨対象の被膜とすることもできる。以下に、上記配列膜および色素膜について説明する。
上記配列膜は、蒸着、スパッタ等の公知の成膜法によって成膜材料を堆積させることにより形成してもよく、ディップ法、スピンコート法等の公知の塗布法によって形成してもよい。上記成膜材料として好適なものとしては、シリコン酸化物、金属酸化物、またはこれらの複合体もしくは化合物を挙げることができる。より好ましくは、Si、Al、Zr、Ti、Ge、Sn、In、Zn、Sb、Ta、Nb、V、Yから選ばれる材料の酸化物、またはこれら材料の複合体もしくは化合物を用いることができる。これらの中でも配列膜としての機能付与の容易性の観点からはSiO、SiO2が好ましい。
一方、上記塗布法によって形成される偏光膜としては、無機酸化物ゾルを含むゾル−ゲル膜を挙げることができる。上記ゾル−ゲル膜の形成に好適な塗布液としては、アルコキシシラン、ヘキサアルコキシジシロキサンの少なくとも一方を無機酸化物ゾルとともに含む塗布液を挙げることができる。配列膜としての機能付与の容易性の観点から、上記アルコキシシランは、好ましくは下記一般式(1)で表されるアルコキシシランであり、上記ヘキサアルコキシジシロキサンは、好ましくは下記一般式(2)で表されるヘキサアルコキシジシロキサンである。上記塗布液は、アルコキシシラン、ヘキサアルコキシジシロキサンのいずれか一方を含んでもよく、両方を含んでもよく、更に必要に応じて下記一般式(3)で表される官能基含有アルコキシシランを含むこともできる。
Si(OR1a(R24-a ・・・(1)
(R3O)3Si−O−Si(OR43 ・・・(2)
5−Si(OR6b(R73-b ・・・(3)
上記一般式(1)におけるR1ならびに上記一般式(2)におけるR3およびR4は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。上記アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。この中で、メチル基およびエチル基が好ましい。
上記一般式(1)におけるR2は、炭素数1〜10のアルキル基であり、具体例としては、上記で例示した炭素数1〜5のアルキル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、および2−エチルヘキシル基等が挙げられる。この中で、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。上記一般式(1)におけるaは、3または4である。
上記一般式(3)におけるR5は、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有する有機基であり、R6およびR7は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であり、bは2または3である。炭素数1〜5のアルキル基の具体例は、前述の通りである。
上記無機酸化物ゾルを構成する無機酸化物としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、In、Ge、Bi、Fe、Cu、Y、Zr、Ni、Ta、SiおよびTi等から選ばれる1種以上の元素からなる酸化物が挙げられる。これらの中で、安定性と微粒子ゾルの製造の容易さという観点から、SiO2、TiO2、ZrO2、CeO2、ZnO、SnO2および酸化インジウムスズ(ITO)が好ましい。この中でも特に化学的安定性および膜硬度増加効果の両立の観点からは、シリカ(SiO2)ゾルが好ましい。無機酸化物ゾルは、無機酸化物粒子を1種のみ含んでもよく2種以上含むこともできる。無機酸化物ゾルを構成する無機酸化物粒子のサイズは、膜硬度増加及び膜自身のヘイズ(曇り)抑制の観点から、好ましくは1〜100nm、より好ましくは5〜50nmである。
前記塗布液は、上記各成分を任意に溶媒、触媒等の各種添加剤と混合することにより調製することができる。上記塗布液において、無機酸化物ゾルの固形分としての含有量は、塗布液中の全固形分に対して0.1〜60mol%であることが好ましく、より好ましくは2〜55mol%、さらに好ましくは15〜50mol%、特に好ましくは25〜40mol%である。上記範囲内であれば、適度な硬さを有する配列膜を形成することができる。他の成分の含有量は、配列膜の硬さ、偏光膜等の他の膜との密着性等を考慮して適宜設定すればよい。例えば、無機酸化物ゾルを「成分(A)」、一般式(1)で表されるアルコキシシランと一般式(2)で表されるヘキサアルコキシジシロキサンとをあわせて「成分(B)」、一般式(3)で表される官能基含有アルコキシシランを「成分(C)」と記載すると、配列膜の硬さおよび他の膜との密着性の点からは、成分(B)の配合量は、成分(A)中の固形分と成分(B)との総モル量に対して、40〜99.9mol%であることが好ましく、より好ましくは45〜90mol%、さらに好ましくは50〜80mol%、特に好ましくは60〜75mol%である。成分(B)と成分(A)中の固形分とのモル比〔(B)/(A)(固形分)〕は、99.9/0.1〜40/60であることが好ましく、より好ましくは90/10〜45/55、さらに好ましくは80/20〜50/50、特に好ましくは75/25〜60/40である。また、成分(A)中の固形分および成分(B)の総量と成分(C)とのモル比〔[(A)(固形分)+(B)]/(C)〕は、好ましくは99.9/0.1〜85/15、より好ましくは98/2〜85/15である。
上記配列膜を研磨対象の被膜とする場合には、後述する被膜研磨工程後に、一定方向に溝を形成する工程を行う。この工程により溝が形成された配列膜表面に二色性色素を含む塗布液を塗布すると、二色性色素が溝に沿って、または溝と直交する方向に配向する。これにより、二色性色素を一軸配向させ、その偏光性を良好に発現させることができる。上記溝の形成は、例えば、液晶分子の配向処理のために行われるラビング工程によって行うことができる。ラビング工程は、被研磨面を布などで一定方向に擦る工程であり、その詳細は、例えば米国特許2400877号明細書や米国特許4865668号明細書等を参照できる。形成される溝の深さやピッチは、二色性色素を一軸配向させることができるように設定すればよい。なお、配列膜に形成される溝は、モールド成形面の機械加工痕に起因するうねりよりも短波長成分であり、その上に形成される偏光膜によりマスキング可能であるため、製品レンズの光学特性を低下させる要因とはなり得ないものである。
上記配列膜を研磨対象の被膜とする場合、その厚さについては先に説明した通りである。一方、配列膜以外の被膜を研磨対象とする場合、配列膜の厚さは、好ましくは0.02〜5μm、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
上記配列膜は、前記被転写面上に直接形成してもよく、他の層を介して間接に形成してもよい。被転写面と配列膜との間に形成され得る層としては、前記ハードコート被膜、密着性向上のためのプライマー等を挙げることができる。プライマーとしては、公知の接着層を何ら制限なく使用することができる。具体的には、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル、エチレンビニル共重合体であるオレフィン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系の樹脂溶液を塗布することにより形成した塗布膜を挙げることができる。プライマーの膜厚は適宜決定すればよい。
次に、上記配列膜上に形成される偏光膜(二色性色素膜)について説明する。
「二色性」とは、媒質が光に対して選択吸収の異方性を有するために、透過光の色が伝播方向によって異なる性質を意味し、二色性色素は、偏光光に対して色素分子のある特定の方向で光吸収が強くなり,これと直行する方向では光吸収が小さくなる性質を有する。また、二色性色素の中には、水を溶媒とした時、ある濃度・温度範囲で液晶状態を発現するものが知られている。このような液晶状態のことをリオトロピック液晶という。この二色性色素の液晶状態を利用して特定の一方向に色素分子を配列させることができれば、より強い二色性を発現することが可能となる。上記溝を形成した配列膜上に二色性色素を含有する塗布液を塗布することにより二色性色素を一軸配向させることができ、これにより良好な偏光性を有する偏光膜を形成することができる。
二色性色素としては、特に限定されるものではなく、偏光素子に通常使用される各種二色性色素を使用することができる。具体例としては、アゾ系、アントラキノン系、メロシアニン系、スチリル系、アゾメチン系、キノン系、キノフタロン系、ペリレン系、インジゴ系、テトラジン系、スチルベン系、ベンジジン系色素等が挙げられる。また、米国特許2400877号明細書、特表2002−527786号公報に記載されているもの等も使用することができる。
二色性色素を含有する塗布液は、溶液または懸濁液であり、好ましくは水を溶媒とする水溶液または水性懸濁液である。塗布液中の二色性色素の含有量は、例えば1〜50質量%程度であるが、所望の偏光性が得られればよく上記範囲に限定されるものではない。
塗布液は、二色性色素に加えて、他の成分を含むこともできる。他の成分としては、二色性色素以外の色素を挙げることができ、このような色素を配合することで所望の色相を有する偏光レンズを製造することができる。さらに塗布性等を向上させる観点から、必要に応じてレオロジー改質剤、接着性促進剤、可塑剤、レベリング剤等の添加剤を配合してもよい。
塗布液の塗布方法としては、特に限定はなく、前述のディップ法、スピンコート法等の公知の方法が挙げられる。偏光膜を研磨対象被膜とする場合、その厚さについては先に説明した通りである。一方、偏光膜以外の被膜を研磨対象とする場合、偏光膜の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば0.05〜5μm程度である。
二色性色素の多くは水溶性であるため、膜安定性を高めるために、塗布液を塗布乾燥した後に非水溶化処理を施すことが好ましい。非水溶化処理は、例えば色素分子の末端水酸基をイオン交換することや色素と金属塩との間でキレート状態を作り出すことにより行うことができる。そのためには、形成した偏光膜を金属塩水溶液に浸漬する方法を用いることが好ましい。使用できる金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えばAlCl3、BaCl2、CdCl2、ZnCl2、FeCl2およびSnCl3等を挙げることができる。この中で、安全性の観点から、AlCl3およびZnCl2が好ましい。非水溶化処理後、偏光膜の表面をさらに乾燥させてもよい。
更に偏光膜には、膜強度および安定性を高めるために、好ましくは前記非水溶化処理後、二色性色素の固定化処理を施すことが好ましい。固定化処理は、例えば偏光膜上にカップリング剤溶液を塗布することにより行うことができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤との公知のものを使用することができる。カップリング剤溶液の塗布後、カップリング剤を硬化するために熱処理(アニール)を行うこともできる。アニール温度は、使用するカップリング剤の種類に応じて決定することができる。
被膜研磨工程
研磨対象被膜を研磨する研磨工程では、例えばゴム製の中空皿にポリウレタンまたはフェルトを貼着した研磨皿を使用し、酸化セリウム・酸化ジルコニウム・酸化アルミニウム等の微細粒子を研磨剤として、上記被膜が形成されたレンズの両面または片面を研磨する。この研磨工程によって、被膜表面のうねり(モールド成形面の機械加工痕に起因するうねり)を低減し、光学機能面として十分な表面精度に仕上げることができる。
例えば上記のように波長0.05〜5mmのうねり成分を有するレンズ表面上に形成された被膜は、同様にその表面上に波長0.05〜5mmのうねり成分を有し得る。この被膜に研磨処理を施すことにより、上記うねりを低減することができる。被膜の研磨量は、うねりを効果的に低減するためには研磨量として1μm以上の研磨処理を施すことが好ましい。また、面形状を大きく損なうことなく鏡面を形成する上では研磨量は5μm以下とすることが好ましい。なお、上記研磨量は、二層以上の被膜を研磨対象被膜とする場合には、研磨対象被膜の研磨量の合計量を意味するものとする。
以上の工程により、モールド成形面の粗さに起因する凹凸および機械加工痕に起因するうねりが低減された高品質なプラスチックレンズを得ることができる。上記プラスチックレンズは、高い光学特性が求められる眼鏡レンズとして好適である。また、得られたプラスチックレンズには、上記被膜上に、更に反射防止膜、撥水膜等の機能性膜を形成することもできる。本発明により製造されるプラスチックレンズとしては、特に限定されるものではないが、被転写面からレンズ最表面に向かって以下の順で被膜を有するものを挙げることができる。
被転写面−ハードコート被膜(研磨対象被膜);
被転写面−ハードコート被膜(研磨対象被膜)−反射防止膜;
被転写面−ハードコート被膜(研磨対象被膜)−配列膜−偏光膜−撥水膜;
被転写面−ハードコート被膜(研磨対象被膜)−プライマー−配列膜−偏光膜−撥水膜;
被転写面−配列膜(研磨対象被膜)−偏光膜−撥水膜;
被転写面−配列膜−偏光膜(研磨対象被膜)−撥水膜。
なお鏡面加工された被膜上に形成された被膜は、通常、同様に鏡面となるため、更なる研磨加工することなく製品レンズとして使用することができる。
また、本発明では、モールド成形面上の表面欠陥に起因する欠陥がレンズ基材表面に存在する場合であっても、上記被膜形成および被膜研磨を行うことにより上記表面欠陥のレンズ光学特性への影響を抑制することができる。
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は下記具体例に示す態様に限定されるものではない。
[実施例]
(1)レンズモールドの作製
ガラス製の上下モールドの成形面を研削加工により作製した。研削加工は、表1に示す条件にてRough cutting→Fine cuttingの順に行った。研削後のモールド成形面について、JIS-T7313に示される視覚的な検査を行ったところ、上下モールドともうずまき状のうねり(波長0.5〜1mm)が確認された。また、上記モールド成形面の表面粗さは、Rt=2.4〜3.2μm程度であった。ここで、JIS-T7313に示される視覚的な検査とは、JIS-T7313附属書Aに示されている材料および表面の品質評価方法(光源と観察者の間に検査対象のレンズを配置してレンズ上の表面欠陥の有無を観察する検査方法)をいうものとする。
(2)成形型の組み立て
上記(1)で形成した成形面(機械加工面)がキャビティ内に配置されるように、図1に概略を示す成形型を組み立てた。
(3)レンズ基材の作製
上記(2)で組み立てた成形型のキャビティ内へウレタン系プラスチックレンズ原料液を注入し加熱重合を行い、硬化反応が終了した後にレンズ基材を成形型から取り出した。同様の工程を原料液を変更して行い、合計4種のレンズ基材を作製した。作製したレンズ基材の硬度を、超微小押し込み硬さ試験器によりISO14577に準じた方法で行った。結果を下記表2に示す。レンズ基材両面の表面状態をJIS-T7313に示される視覚的な検査で観察したところ、波長0.5〜1mmのうずまき状のうねりが観察された。
(4)被膜の形成
上記レンズ基材の表面状態に基づき、形成する被膜の厚さを片面6μmと決定した。その後、上記レンズ基材A〜Dの両面に直接、ディップ法により、片面厚さ6μmのハードコート膜を形成した。ハードコート液を変更することにより、硬度の異なる7種の被膜を形成した。後述する比較例に示すように、形成された被膜表面には波長0.5〜1mm程度のうねりが確認された。各被膜の硬度を、レンズ基材の硬度測定と同様の方法により測定した結果を表3に示す。
(5)被膜の研磨処理
上記各被膜を形成したレンズ基材の両面に研磨処理を施した。研磨は中空構造を有する弾性体(ゴム)の内部に気体を封入して膨らまし、表面に研磨パッド(不織布またはベロア)を装着した研磨ツールを被膜表面に押圧して行った。研磨ツールを被膜上で相対的に往復、または回転させて研磨を行った。加工条件はLHO社製toroXにて上軸圧力が300mbar、回転数500rpm、上軸揺動距離10mm、下軸角度5°、研磨時間1〜120分とした。なお研磨剤兼冷却剤として酸化セリウムまたは酸化アルミニウムを含む水性溶液を研磨加工面に供給した。各研磨処理における研磨量は、被膜表面のうねりの程度に基づき決定し、片面3μm程度とした。
表面欠陥の評価(1)
被膜研磨処理後に得られたプラスチックレンズの表面状態をJIS-T7313に示される視覚的な検査により観察したところ、加工痕等の表面欠陥は観察されなかった。この結果から、被膜研磨により、レンズ表面上のうねり成分の光学特性への影響を解消できることがわかる。なお、実施例で使用したモールド成形面の一部には他のモールドとの接触に起因する凹状のキズが存在していたため、このキズを含むモールドを使用し成形されたレンズ基材について被膜形成前に上記視覚的な検査に行ったところ、上記凹状のキズが転写された凸状のキズの存在が確認された。しかし、被膜研磨後のレンズでは上記の通り表面欠陥は観察されなかった。このことから、被膜形成および研磨により、レンズ表面上のキズの影響も解消できることがわかる。
表面欠陥の評価(2)
レンズの外観検査として、レンズに所定の光を入射させて出射側に配置したスクリーンに機械加工痕や傷等の表面欠陥の投影像が現れるか否かで良品、不良品を判定する投影検査がある。この投影検査は、シュレーリン法を応用した検査方法であり、例えば図6に示す超高圧水銀灯を用いた投影検査装置40によって表面性状が検査される。この投影検査では、投影検査装置40内の超高圧水銀灯を点灯して被検レンズ1に照射し、光学面2a、2bの投影画像をスクリーン41に投射する。そして、このスクリーン41上に映し出された光学面2a、2bの投影画像を作業者が肉眼で観察し、機械加工痕等の表面欠陥がスクリーン上に現れるか否かを目視で検査する。この方法によれば、表面欠陥をより鮮明に観察することができるため、比較的軽微な表面欠陥も投影像として観察される傾向がある。本発明では、被膜の形成および研磨を行うことにより、この投影検査によって表面欠陥の投影像が観察されないレンズを得ることが好ましい。実施例で作製したプラスチックレンズを上記投影検査により観察したところ、いずれのレンズにおいても表面欠陥は観察されなかった。
表面性の評価(1)
実施例で作製した各プラスチックレンズについて、テーラーホブソン(Taylor Hobson)社製のフォームタリサーフ装置(モデルFTS PGI 840)等を用いて表面粗さRtを求めた。Rt値の算出はJIS規格(B0601-2001、B0633-2001、B0651-2001等)に準じて行った。いずれのレンズにおいてもRtは0.1μm程度(原子間力顕微鏡により測定されるRaとして0.01μm程度)であった。
[比較例]
ハードコート被膜の研磨を行わない以外は実施例と同様の方法によりプラスチックレンズを得た。得られたレンズをJIS-T7313に示される視覚的な検査により観察したところ、いずれのレンズにおいても、波長0.5〜1mm程度のうずまき状の投影像が観察された。比較例のレンズの中からレンズを1枚抽出し、外観検査した写真を図7に示す。外観検査写真でも、うずまき状のうねりが確認された。以上の結果から、被膜形成のみではモールド表面の機械加工痕に起因する表面欠陥の影響を解消することは困難であること、および、実施例で実施したように被膜研磨を行うことによって被膜表面のうねりを低減できることがわかる。
上記実施例では、一例として波長0.5〜1mmのうねりを有するモールドを使用した例を提示したが、うずまき状のうねりの波長0.05〜5mmのモールドを使用した場合も、被膜形成および被膜研磨処理を行うことにより、優れた表面性を有するプラスチックレンズを得ることができることを確認した。
本発明は、高度な光学特性が求められる眼鏡レンズの製造に好適である。

Claims (11)

  1. 所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、
    上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、
    上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、
    を含むプラスチックレンズの製造方法であって、
    上記モールド成形面は機械加工面であり、
    上記被転写面上に被膜を形成し、形成された被膜表面に研磨処理を施すことを更に含むことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  2. 前記機械加工面は研削により形成された面である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記機械加工面の最大表面粗さRtは、2〜5μmの範囲である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記被膜表面は、波長0.05〜5mmのうねりを有し、かつ前記研磨処理により該うねりを低減する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記被膜の厚さを、前記被転写面の表面状態に基づき決定し、決定された厚さを有する被膜を形成する請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記被膜の厚さは2〜50μmの範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記被膜の研磨量は、1〜5μmの範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記被膜はハードコート被膜である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記被膜の硬度は、前記プラスチックレンズ基材の硬度より大きい請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 上記モールド成形面は、表面欠陥を含む機械加工面である請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記プラスチックレンズ基材は、ウレタン系またはアリル系樹脂からなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
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