JP5148844B2 - 眼鏡レンズの製造方法および眼鏡レンズ - Google Patents

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Description

本発明は、光学面が機械加工面からなる眼鏡レンズの製造方法および眼鏡レンズに関するものである。
眼鏡レンズの光学面は高い面精度が要求されるため、従来は光学面を荒摺り、砂掛けおよび研磨の3工程によって創成していた。
しかしながら、このような従来の光学面創成工程は、製造に長時間を要するため生産性が低く、製造コストが高くなる。そこで、近年では加工機の急速な進歩に伴い高い表面精度の機械加工面が得られるようになってきたことから、例えば特許文献1〜3に見られるように光学面を旋盤加工等による切削加工面とした眼鏡レンズが実用化されつつある。なお、本発明においては、「切削加工された面」と「研削加工された面」を総称する用語として「機械加工面」を用いる。
前記特許文献1に記載されているレンズ製造方法は、レンズ基材の表面を超精密旋盤で切削加工し、得られた切削加工面に透明な薄膜(ハードコート膜)を形成し、最大高さP-v を0.04μm以下に改善するようにしている。レンズ基材としては、メタクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂等を用い、薄膜の材料としては、有機珪素化合物またはその加水分解組成物と金属酸化物微粒子を用いている。
前記特許文献2に記載されている眼鏡レンズの表面の作製方法は、切削加工工具を達成されるべき表面エンベロープ中の連続経路に沿って移動させ、材料を除去することにより表面を機械加工して0.01mm〜3mmの一定ピッチをおいて位置する2つの隣り合う溝を形成し、それにより算術平均粗さRaが1.1μm〜約0.7μmの表面を得る工程と、平滑化工具を達成されるべき表面エンベロープ中に設けられていて、0.2mm〜3mmの一定ピッチをおいて位置する2つの隣り合うパスで形成された連続経路に沿って移動させ、機械加工済み表面を平滑化して達成されるべき前記表面エンベロープに対応する低周波とバックグラウンド粗さに対応する高周波との間における前記表面の起伏のバンドパスフィルタリングを生じさせ、それにより算術平均粗さ(Ra)が1.1μm未満の平滑化表面を得る工程と、この平滑化された表面上にワニスを被膜し研磨表面状態にする工程とを備えている。ワニスとしては、眼鏡レンズの屈折率と等しい屈折率(許容誤差±0.01以内)の材料で、例えばポリアクリレートモノマー、ジアクリレートモノマーとトリアクリレートモノマーの混合物、ハロゲン化、好ましくは臭素含有エポキシアクリレートオリゴマーを含んだものが用いられる。
前記特許文献3に記載されている眼鏡レンズの製造方法は、眼鏡レンズの物体側の面または眼球側の面の削り出し加工を数値制御加工用データに基づいて行うNC形状創成工程と、削り出し加工が行われた面の研磨を、研磨する面形状を規定した数値制御加工用データに基づいて行うNC研磨工程とを備えている。NC形状創成工程では、荒加工と仕上げ加工の2工程とし、仕上げ加工では加工後の表面粗さを最大表面粗さRmaxで0.01〜10μm以下に仕上げている。また、最大表面粗さRmaxを0.05μm以下にすれば、プラスチック製の眼鏡レンズの場合、研磨工程を省略しても、形状創成工程に続くハードコート工程で表面処理を施すことで所望の光学面を得ることができる。
特開2002−182011号公報 特表2003−525760号公報 特開平10−175149号公報
上記した通り、数値制御加工機により高い面精度が得られるようになると、光学面での光の散乱、反射等の発生が少なく、また生産性の向上とコスト低減を図ることができることから、光学面を機械加工面とする眼鏡レンズの実用化が進んでいる。
しかしながら、光学面を機械加工面とし、その表面にハードコート処理を施したプラスチックレンズの検査工程において、目視による外観検査では視認することはできないが、JIS規格で推奨している検査方法(超高圧水銀灯を用いた投影検査方法や室内での蛍光灯の光がレンズ面を反射する反射光チェックによる検査方法)によって検査を行うと、機械加工面の表面粗さ(Rt)が0.05μm以下のものであっても機械加工による加工痕跡が視認されてしまい、この加工痕跡がJIS規格で規定している欠陥に相当するという問題があった。
そこで、本発明者らは光学面の表面粗さと光学面に形成される被膜との関係について鋭意検討し、光学基材および被膜の材料と光学面の表面粗さとを変えて各種実験を行ったところ、光学面の表面粗さ(Rt)を5μm程度以下とし、被膜の材料を眼鏡レンズの材料と異ならせた場合は、屈折率の違いにより加工痕跡の存在を完全には打ち消すことができず、このため加工痕跡の面で散乱、反射が生じて明るい眼鏡レンズを得られなかった。
一方、被膜の材料を眼鏡レンズの材料と同じにした場合は、屈折率が同じであるため表面粗さ(Rt)が1〜5μm程度であっても光学基材によっては加工痕跡をほぼ完全に打ち消すことができ、加工痕跡の面で散乱、反射が生じない明るい眼鏡レンズを得ることができることが判明した。具体的には、アリル系光学基材に適用した場合は、光学面の表面粗さ(Rt)を7μm程度以下にすると、加工痕跡を視認する頻度が減少する。より好ましくは1〜5μmである。1μm以下であると、加工時間が長時間になり生産性が低下するため好ましくない。また、1μm〜5μmの範囲であれば、加工痕跡をほぼ消去できるため、敢えて1μm以下にする必要もない。5μm以上であると加工痕跡が視認される割合が増加するため好ましくない。
ウレタン系光学基材の場合は、好ましい光学面の表面粗さ(Rt)が1〜2μmであり、この範囲であれば加工痕跡をほぼ消去することができた。
本発明は上記した従来の問題および実験結果に基づいてなされたもので、その目的とするところは、光学面が機械加工面であっても加工痕跡を消去することができ、検査時に加工痕跡が目視されることがない眼鏡レンズの製造方法および眼鏡レンズを提供することにある。
上記目的を達成するために、第1の発明に係る眼鏡レンズの製造方法は、光学面が機械加工面からなるプラスチック製の眼鏡レンズを、レンズ基材と同一の材料からなる被膜溶液に浸漬する工程と、前記眼鏡レンズを前記被膜溶液中で一定時間保持する工程と、前記一定時間が経過した後に前記眼鏡レンズを被膜溶液から引き上げる工程と、前記眼鏡レンズを高速で回転させ、前記光学面に付着している余分な被膜溶液を遠心力で吹き飛ばす工程と、前記光学面に塗布された被膜を加熱硬化させる工程とを備えているものである。
第2の発明に係る眼鏡レンズの製造方法は、上記第1の発明において、眼鏡レンズの光学面に被膜を形成する工程の後に、さらにハードコート被膜を形成する工程を備えているものである。
第3の発明に係る眼鏡レンズの製造方法は、上記第2の発明において、眼鏡レンズにハードコート被膜を形成する工程の後に、さらに反射防止用被膜を形成する工程を備えているものである。
第4の発明に係る眼鏡レンズの製造方法は、上記第1、第2または第3の発明において、眼鏡レンズと被膜の材料がアリル系合成樹脂基材であって、光学面の表面粗さ(Rt)を1〜5μmとしたものである。
第5の発明に係る眼鏡レンズの製造方法は、上記第1、第2または第3の発明において、眼鏡レンズと被膜の材料がウレタン系合成樹脂基材であって、光学面の表面粗さ(Rt)を1〜2μmとしたものである。
第6の発明に係る眼鏡レンズは、上記第1〜第5の発明のうちのいずれか1つによって形成されているものである。
本発明においては、眼鏡レンズの機械加工面からなる光学面に形成される被膜の材料を眼鏡レンズと同一材料としているので、眼鏡レンズと被膜の光学的特性を完全に一致させることができる。このため、超高圧水銀灯を用いた投影検査方法や室内での蛍光灯の光がレンズ面を反射する反射光チェックによる検査方法によって光学面を検査しても光学面の加工痕跡が視認されることがなく、散乱、反射等が生じるようなことがなく、眼鏡レンズの光学特性および品質を向上させることができる。被膜の材料が眼鏡レンズの材料と同一であるということは、眼鏡レンズの成形に用いられるモノマー(または主成分とする)を、被膜形成時に被膜材料として用いることを意味する。
本発明においては、ハードコート被膜によって光学面を保護しているので、眼鏡レンズの耐擦傷性を向上させることができる。
本発明においては、ハードコート被膜の上にさらに反射防止用被膜を形成しているので、光吸収が少なく、反射を防止する。
本発明においては、眼鏡レンズと被膜の材料がアリル系光学基材とし、機械加工面の表面粗さ(Rt)を1〜5μmとしているので、超高圧水銀灯を用いた投影検査方法や蛍光灯を用いた検査方法によって光学面を検査しても加工痕跡が目視されることがなく、眼鏡レンズの光学特性および品質を向上させることができる。1μm以下であると、加工時間が長くなり、生産性を低下させるため好ましくない。また、1μmで加工痕跡を消去ことができるので、それ以上に高精度な加工を施す必要もない。5μm以上であると、加工痕跡の視認頻度が増加するため好ましくない。
本発明においては、眼鏡レンズと被膜の材料がウレタン系光学基材とし、機械加工面の表面粗さ(Rt)を1〜2μmとしているので、超高圧水銀灯を用いた投影検査方法や蛍光灯を用いた検査方法によって光学面を検査しても加工痕跡が目視されることがなく、眼鏡レンズの光学特性および品質を向上させることができる。1μm以下であると、加工時間が長くなり、生産性を低下させるため好ましくない。また、1μmで加工痕跡を消去ことができるので、それ以上に高精度な加工を施す必要もない。2μm以上であると、加工痕跡の視認頻度が増加するため好ましくない。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る眼鏡レンズの製造方法によって製作された眼鏡レンズの断面図、図2は図1のA部の拡大図である。これらの図において、1はプラスチック製の眼鏡レンズであって、その凸側の光学面2aと凹側の光学面2bは機械加工面からなり、三層からなる保護膜層3がそれぞれ形成されている。
前記眼鏡レンズ1の光学基材としては、例えば、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチルグリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリカーボネート、ウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン−チオール反応を利用したスルフィド、硫黄を含むビニル重合体等が挙げられ、中でもウレタン系光学基材とアリル系光学基材が好適であるが、これに限定されるものではない。また、本発明における光学基材としては、プラスチック光学基材であると好ましく、眼鏡用プラスチック光学基材であるとさらに好ましい。
本実施の形態においては、光学基材としてジエチルグリコールビスアリルカーボネート(商品名「CR−39」)によって眼鏡レンズ1を製造した例を示している。このような眼鏡レンズ1の製造に際しては、先ずガスケットと一対のモールドとからなる成形用鋳型のキャビティにモノマーを注入した後、電気炉に入れて一定時間加熱し重合することによりレンズ素材を形成する。このような成形用鋳型によるレンズ素材の成形は、例えば特許文献4(特開2005−141162号公報)等によって従来から広く知られているため、詳細な説明を省略する。
次に、成形用鋳型から取り出されたレンズ素材の両面を旋盤等の加工機によって切削(または研削)加工することにより所望の表面粗さの機械加工面とする。このため、眼鏡レンズ1の各光学面2a,2bには渦状の溝(以下、加工痕跡という)がそれぞれ形成されている。このような機械加工面からなる光学面2a,2bの表面粗さ(Rt)としては、1〜5μmであることが望ましい。
加工機による光学面2a,2bの機械加工は、加工目的たる曲面の特定点を通る回転軸を中心に円形のレンズ素材を回転させながら切削刃のレンズ素材に対する距離および回転軸に対する距離をコンピュータ制御で形成目的の曲面形状にしたがって制御することにより加工目的の曲面形状を創成するNC制御のカーブジェネレータを用いている。すなわち、このカーブジェネレータは、切削刃が回転せず、レンズをその幾何学中心で回転させてダイヤモンドの刃先を光学面形状をトレースするようにレンズ外周から中心までスパイラル形状を描きながら加工する。
図3に光学面2a,2bの切削加工に用いられるNC制御カーブジェネレータの概略構成を示す。このカーブジェネレータ10は、モールド成形されたレンズ素材Aの光学面を切削加工する場合、焼結された多結晶ダイヤモンドや単結晶の天然ダイヤモンドを切削ツールの切削刃Bとして使用している。切削加工では、下軸C側にレンズ素材Aを取付け、下軸Cを軸回転させる。上軸Dのバイトは、レンズ素材Aの外周から半径方向と上下方向の2軸制御を行い、合計3軸で制御を行って光学面を加工する。カーブジェネレータ10の下軸Cは1つで、上軸Dは荒削り用の第1のバイトFが取付けられた第1の上軸部Gと、仕上げ切削用の第2のバイトHが取付けられた第2の上軸部Iとを備え、固定された下軸Cに対して上軸Dが水平方向にスライドして第1、第2の上軸部G,Iを切り替える構造となっている。レンズ素材Aの凸側の光学面2aを創成するためには、マトリックスで表された凸面の設計形状高さデータをNC制御部に転送すれば加工が自動的に行われる。
このようなカーブジェネレータ10の加工精度は、3μm以内(レンズ径50mm)、最大表面粗さ(Rt)は0.2〜5μmである。一方加工時間は、例えば外径80mmのレンズ加工に要する一枚当たりの時間は仕上げ加工のみで最大表面粗さ(Rt)5μmの場合約1分、最大表面粗さ(Rt)1μmでは約5分、最大表面粗さ(Rt)0.1μmでは約50分、0.05μmでは100分程度である。
前記保護膜層3は、最下層の被膜4と、中間層のハードコート被膜5および最上層の反射防止用被膜6とで構成されている。最下層の被膜4は、光学面2a,2bの加工痕跡を解消し、眼鏡レンズ1の光学特性を改善するための被膜であって、眼鏡レンズ1の材料と同一材料からなるモノマーによって形成される。このため、眼鏡レンズ1と被膜4の屈折率、粘度等の材質的特性は全く同じである。
中間層のハードコート被膜5は、眼鏡レンズ1の硬度を高めるとともに耐擦傷性を向上させるために形成されるものであり、材料としては、例えば、シリコン系樹脂などの有機物質が用いられる。
最上層の反射防止用被膜6は、反射防止効果と耐擦傷効果を高めるために形成されるものであり、材料としては、例えば、Zr,Ti,Sn,Si,In,Al,si等の金属酸化物または珪素酸化物やMgF2 が用いられる。
次に、眼鏡レンズの製造方法を図4〜図6に基づいて説明する。
図4は眼鏡レンズの製造工程を説明するためのフローチャート、図5はスピン処理部に眼鏡レンズを搬送した様子を示す斜視図、図6は眼鏡レンズの光学検査を示す図である。
図4において、先ず、光学面2a,2bが所定の曲面に機械加工された眼鏡レンズ1を前処理する(ステップ100)。この前処理工程では、眼鏡レンズ1を洗浄する前に、光学面2a,2bをアセトン等の溶剤で手拭きした後、眼鏡レンズ1をスピナーに装着して低速回転させながら、イオン化エアを光学面2a,2bに一定時間(約15秒)同時に吹き付けて静電気を除去する。なお、光学面2a,2bをトリートメントするやり方は、光学面の状態を被膜4の溶液を塗布し易いように整える上で効果的なものであればよく、前述の前処理に限定されるものではない。
光学面2a,2bの前処理が終了すると、眼鏡レンズ1は搬送機構によって搬送され、洗浄槽の洗浄液によって洗浄される(ステップ101)。洗浄液としては、水(純水)または溶剤系液体、洗剤水溶液等が用いられる。洗浄液は、洗浄槽内でオーバーフローしながら備えられたリザーブタンクとの間でポンプにより濾過されながら循環している。洗浄槽は、超音波素子が設けられており、また、温度調整用装置、各種検出スイッチなど洗浄および洗浄液の循環に必要な構成要素を備えている。
洗浄が終了した眼鏡レンズ1は、スピナーに装着され、回転数を、例えば500→1000→2000rpmに段階的に上げながら一定時間(約3分)スピンされ、光学面2a,2bに付着している水滴を遠心力で吹き飛ばすことで乾燥される(ステップ102)。スピナーの回転数は、可変可能になっており、スピン条件(例えば、スピン回転数、立ち上がり、立ち下がり、停止など)をプログラムで設定できるようになっている。スピン条件は光学基材の種類や洗浄状態によって適宜決められるものとする。
乾燥が終了した眼鏡レンズ1はディップアームによってディップ処理部の上方に移送された後、下降されることによりディップ槽内の被膜溶液中に所定時間浸漬される(ステップ103)。被膜溶液は、眼鏡レンズ1の材料と同じ材料からなる溶液であり、光学面2a,2bに同時に塗布される。
ディッピングのプロセスとしては、ディップアームに保持された眼鏡レンズ1の径方向がディップ液面に対して略垂直になるように眼鏡レンズ1の向きを変えた後、ディップアームを降下させて眼鏡レンズ1をディップ槽内の被膜溶液に浸漬する。そして、眼鏡レンズ1はディップ槽内で被膜溶液に完全に浸漬された状態で一定時間(約30秒)保持される。所定時間浸漬すると、次にディップアームを上昇させて眼鏡レンズ1を被膜溶液中から引き上げる(引き上げ時間は1〜2秒)。
ディッピングのプロセス条件は、レンズ面状態、被膜溶液の特性などにより適宜決定されるものとする。被膜溶液は、ディップ槽内でオーバーフローしながら備えられたリザーブタンクとの間でポンプにより濾過されながら循環している。ディップ槽は、温度調整用装置、各種検出スイッチなどディッピングおよび被膜溶液の循環に必要な構成要素を備えている。
ディッピング処理が終了した眼鏡レンズ1は、ディップアームの上昇によってディップ槽から取り出されると、スピンアームに受け渡された後、図5に示すスピン処理部30に搬送され、スピナー31に装着される。スピナー31は、眼鏡レンズ1を高速回転(1750〜1780rpm)させ、光学面2a,2bに付着している被膜溶液の余分な液を遠心力で吹き飛ばす(ステップ104)。スピナー31の回転数は、可変可能になっており、スピン条件(例えば、スピン回転数、立ち上がり、立ち下がり、停止など)をプログラムで設定できるようになっており、スピン条件は光学基材の種類や洗浄状態によって適宜決められるものとする。
スピン処理が終了すると、眼鏡レンズ1は膜硬化処理部に搬送され、熱風が循環する第1の加熱炉で所定温度(80℃)で一定時間(約7分)加熱処理(第1の加熱処理)される(ステップ105)。第1の加熱処理の条件は、被膜溶液による硬化特性によって適宜決定されるものとする。また、レンズ洗浄から第1の加熱炉までは、クリーンな環境が整えられているものとする。
第1の加熱処理が終了すると、眼鏡レンズ1はさらに第2の加熱炉に搬送されて所定温度(80℃)で一定時間(20分)加熱処理され、さらにその後120℃で1時間加熱処理(第2の加熱処理)される。これにより、眼鏡レンズ1の各光学面2a,2bに塗布されていた被膜溶液は、硬化して図2に示す被膜4となる。このように、被膜4は、スピンコートされた被膜溶液の硬化によって形成されるものであるため、高い面精度が得られる。例えば、光学面2a,2bの表面粗さ(Rt)が5μmの場合、被膜4の表面粗さRは0.03μmであった。なお、第2の加熱処理の条件は、被膜溶液の硬化特性により適宜決定されるものとする。
被膜4の形成工程が終了すると、引き続きハードコート被膜5を被膜4の上に形成する(ステップ107)。このハードコート被膜5の形成は、上記した被膜4の形成と全く同様に、ディップ&スピンコート法によって行われ、加熱炉によって加熱硬化されることにより形成される。なお、ハードコート被膜5の形成は、従来周知であるため、その詳細については説明を省略する。
ハードコート被膜5の形成工程が終了すると、引き続き反射防止用被膜6をハードコート被膜5の上に形成する。反射防止用被膜6は、従来周知の真空蒸着法またはスパッタリング法によって行われるため、その詳細については説明を省略する。
このようにして製造された眼鏡レンズ1は、図6に示す超高圧水銀灯を用いた投影検査装置40によって表面性状が検査される。検査に際しては、投影検査装置40内の超高圧水銀灯を点灯して被検レンズである眼鏡レンズ1を照射し、光学面2a,2bの投影画像をスクリーン41に投射する。そして、このスクリーン41上に映し出された光学面2a,2bの投影画像を作業者が肉眼で観察し、機械加工による加工痕跡が目視されるか否かを検査する。検査の結果、本発明によって製造された眼鏡レンズにおいては、光学基材をジエチルグリコールビスアリルカーボネートとした眼鏡レンズ1の場合、光学面2a,2bの表面粗さ(Rt)を1〜5μmにすればいずれも加工痕跡が消去されて目視することができなかった。これは、眼鏡レンズ1と被膜4を同一材料で形成しているため、両者の屈折率が同じで光学面2a,2bと被膜4との界面において反射、散乱が生じないことによるものである。
眼鏡レンズ1の面性状検査については、投影検査装置40による検査以外に、暗箱内に設置した蛍光灯による透過検査と室内の蛍光灯がレンズ表面を反射する反射光チェックによる検査を行なったが、いずれの検査においても投影検査装置40による検査と同様に、加工痕跡が消去されて目視することができなかった。なお、投影検査装置40による投影像の検査は、マイナス度数のレンズの検査に適し、蛍光灯による透過検査はプラス度数のレンズの検査に適している。
また、本発明においては、光学基材としてジエチルグリコールビスアリルカーボネートによって眼鏡レンズ1と被膜4を形成した場合、光学面2a,2bの表面粗さ(Rt)を最大で5μm程度までとすることができるので、機械加工に要する時間を短縮でき、眼鏡レンズの生産性を向上させることができる。
眼鏡レンズの光学基材が異なると、加工性が異なるので、光学面の表面粗さの上限も異なる。例えば、ウレタン系樹脂の場合は、光学面の表面粗さ(Rt)を1〜2μm程度に抑えると、加工痕跡を消去することができた。
また、上記した実施の形態においては、光学面2a,2bにそれぞれ1層からなる被膜4を形成した例を示したが、これに限らず2層以上形成してもよい。例えば、2層形成すると、機械加工面の表面粗さが5μmの場合、2層目の被膜の表面粗さ(Rt)を1層目の被膜の表面粗さよりも小さくすることができ(例えば、Rt=0.021μm)、被膜4を1層だけ形成したものに比べてより明るい眼鏡レンズを得ることができた。
さらに、上記した実施の形態においては、眼鏡レンズ1の各光学面2a,2bに保護膜層3を形成したが、これに限らずいずれか一方の光学面、例えば凸側の光学面2aのみに形成されるものであってもよい。またハードコート被膜5、および反射防止用被膜6は必ずしも必要ではない。
本発明に係る眼鏡レンズの製造方法によって製作された眼鏡レンズの断面図である。 図1のA部の拡大図である。 NC制御のカーブジェネレータの概略構成を示す図である。 眼鏡レンズの製造工程のフローチャートである。 スピン処理部に眼鏡レンズを搬送した様子を示す斜視図である。 眼鏡レンズの光学検査を示す図である。
符号の説明
1…眼鏡レンズ、2a,2b…光学面、3…保護膜層、4…被膜、5…ハードコート被膜、6…反射防止用被膜、10…カーブジェネレータ。

Claims (6)

  1. 光学面が機械加工面からなるプラスチック製の眼鏡レンズを、レンズ基材と同一の材料からなる被膜溶液に浸漬する工程と、
    前記眼鏡レンズを前記被膜溶液中で一定時間保持する工程と、
    前記一定時間が経過した後に前記眼鏡レンズを被膜溶液から引き上げる工程と、
    前記眼鏡レンズを高速で回転させ、前記光学面に付着している余分な被膜溶液を遠心力で吹き飛ばす工程と、
    前記光学面に塗布された被膜を加熱硬化させる工程とを備えたことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  2. 眼鏡レンズの光学面に被膜を形成する工程の後に、さらにハードコート被膜を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の眼鏡レンズの製造方法。
  3. 眼鏡レンズにハードコート被膜を形成する工程の後に、さらに反射防止用被膜を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項2記載の眼鏡レンズの製造方法。
  4. 眼鏡レンズと被膜の材料がアリル系光学基材であって、光学面の表面粗さ(Rt)が1〜5μmであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の眼鏡レンズの製造方法。
  5. 眼鏡レンズと被膜の材料がウレタン系光学基材であって、光学面の表面粗さ(Rt)が1〜2μmであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の眼鏡レンズの製造方法。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の眼鏡レンズの製造方法によって形成されたことを特徴とする眼鏡レンズ。
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