JP5509310B2 - カイナイト混合塩及びアンモニアから、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、水酸化マグネシウム、及び/又は酸化マグネシウムを同時生産するための方法 - Google Patents

カイナイト混合塩及びアンモニアから、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、水酸化マグネシウム、及び/又は酸化マグネシウムを同時生産するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、硫酸カリ(SOP)、硫酸アンモニウム、表面修飾(surface modified)水酸化マグネシウム、及び/又は酸化マグネシウムを同時生産するための方法であって、カイナイト混合塩及びアンモニアを唯一の消費可能な(consumable)原料として使用して、前記産物を同時生成することを特徴とする方法を提供する。
カイナイト混合塩は、塩にがりから得られる。純粋な形態では、カイナイト混合塩は、KCl.MgSO.3HOの複塩であるが、塩にがりから得られるため、典型的にはNaCl及びMgCl.6HOといった不純物を含有する。
硫酸カリウムは、50%のKO及び18%の硫黄を含有する二元化合物肥料である。硫酸カリウムは、従来技術に記載されているような他の用途も有する。
水酸化マグネシウムは、パルプ及び製紙工業において商業的に使用されており、制酸剤、難燃剤、穏やかな塩基として、並びに肥料、マグネシア、及び多様なマグネシウム化学薬品の生産における中間体としても使用されている。
硫酸アンモニウムは、21.5%のN及び24.6%のSを含有する二元化合物肥料として使用されている。硫酸アンモニウムは、種々の化学薬品を生産するための原料としても使用されている。
2006年5月9日発行のGhoshらによる特許文献1を参照することができ、そこには、にがり供給源から硫酸カリウム(硫酸カリ又はSOPとも呼ばれる)を生産することに関する従来技術が広範に包含されている。
同じ特許文献を再び参照すると、カイナイト混合塩及び石灰から硫酸カリウム及びマグネシアを合成した方法で調製することが開示されている。石膏が、副産物として得られる。天日乾燥により塩にがりから得られた加工されていないカイナイト塩を、水及び処理工程の廃流で処理して、シェーナイト(schoenite)(KSO.MgSO.6HO)に変換し、同時に、加工されていないカイナイトに存在する不要な不純物を浸出させる。K、Na、Mg2+、Cl、及びSO 2−を含有する浸出液をCaClで脱硫酸化し、更に蒸発させてカーナライト複塩(KCl.MgCl.6HO)を回収し、それを水で分解し、加熱浸出して純粋な形態のKClを得、Mg2+を多く含む母液を石灰で処理してMg(OH)を生産し、脱硫酸化に必要なCaClを同時に生産する。シェーナイト及びKClを水で処理して、KSOを固体形態で回収し、母液をカイナイト分解ステップで再利用する。このプロセスの主な欠点は、石灰の品質が様々であり、それと共に水酸化マグネシウムの品質も変動する場合があるということである。別の欠点は、副産物石膏の廃棄であり、その市場を見出すのが難しいことがある。
Knudsenによる1985年3月12日発行の特許文献2を参照することができ、そこには、酸性条件下において陰イオン交換体(クロリド形態)で石膏の水性スラリーをさらすことにより、石膏を硫酸カリウム又は硫酸ナトリウムに変換し、塩化カルシウム溶液及び硫酸塩形態の樹脂がもたらされるプロセスが開示されている。その後、陰イオン交換樹脂を塩化カリウム又は塩化ナトリウム溶液と接触させ、それにより硫酸負荷樹脂を再生して、クロリド負荷樹脂及び硫酸カリウム又は硫酸ナトリウム溶液を形成する。
E.Sacherによる非特許文献1を参照することができ、そこには、天然石膏から硫酸アンモニウムを製造するためのMersebergプロセスが記載されている。
N.D.Gopinathによる非特許文献2を参照することもでき、そこでは、石膏を、炭酸アンモニウムと反応させることにより、硫酸アンモニウムに変換することが考察されている。詳細なプロセスパラメーターは記載されておらず、又は副産物炭酸カルシウムの有用性に対する言及も一切されていない。
ほとんどのリン酸肥料がそれから作られる基本原料であるリン酸の、湿式処理製造中に、濃縮リン鉱石は、硫酸と反応して、「リン酸石膏」として知られる相当量の副産物石膏の生産がもたらされる。リン酸石膏及び石膏を化学的手段により有用で経済的な産物に変換するための種々の提案がなされている。全ての場合において、技術的には実現可能であるが、変換を実施するのに必要な化学薬品の費用は、その結果生じる産物の価値より大きかった。1つの例は、石膏をアンモニア及び二酸化炭素と反応させて、硫酸アンモニウム及び炭酸カルシウムを形成することである。リン酸石膏は、天然石膏と比較して純度が低いため、リン酸石膏の使用は、この方法では非経済的であることが判明している。
M.Chouらによる非特許文献3を参照することができる。
この文献には、石膏から硫酸アンモニウム及び炭酸カルシウムを生産することが教示されている。この反応により、不溶性炭酸カルシウム及び硫酸アンモニウム溶液が生産される。著者らによると、この技術は、原理的には魅力的であるが、天然石膏のコスト及び品質に関して問題があるため、及び二酸化炭素の経済的な供給源の入手可能性が欠如しているため、商業的には実行可能ではないと記述されている。
NHClが同時に生成される、NaCl、NH、及びCOからのソーダ灰の調製を教示するSolvayプロセスを参照することができる。COは石灰石(CaCO)のか焼により得られ、得られた石灰をNHClと反応させてアンモニアを再利用し、流出液として排出されるCaCl廃棄物が同時に生産される。
酸化マグネシウムは、種々の産業に用途が見出される重要な化合物である。酸化マグネシウムは、手頃な価格の酸化物の中で最も高い融点を有しており、したがって、耐火煉瓦及び他の材料の重要な原料である。酸化マグネシウムは、ZrOを別にすれば、2000℃を超える長期加熱に耐えることができる唯一の材料である。
Ghoshらによる特許文献3を参照することができ、そこでは、マグネシウム塩と苛性ソーダ又は石灰との反応からMgOを調製するためのプロセスが開示されている。粗Mg(OH)を直接か焼し、その後水で処理して、塊を自然に崩壊させてスラリーを得、溶解させて可溶性塩にする。このスラリーは、元々のMg(OH)スラリーより、ろ過及び洗浄がはるかに容易である。Mg(OH)スラリー自体のろ過速度を上げるプロセスは、一切言及されていない。
米国特許第7,041,268号 米国特許第4,504,458号 米国特許出願第20007019121号
E.Sacher、ISMA Tech.Conf.1968年 N.D.Gopinathによる論文「Disposal or use of gypsum in production of ammonium sulfate」、Phosphoric Acid、1巻、パートII、(A.V.Slack編)、Marcel Dekker、New York、541〜566頁(1968年) www.anl,gov/PCS/acsfuel/preprint%20archive/Files/40_4_CHICAGO_08−95_0896.pdfのM.Chouらによる論文
本発明の目的
本発明の主な目的は、カイナイト混合塩及びアンモニアから、硫酸カリ、硫酸アンモニウム、水酸化マグネシウム、及び/又は酸化マグネシウムを同時生産するための合成プロセスを考案することである。
別の目的は、特許文献1のSOP/MgOプロセスで生成された副産物石膏を、公知の従来技術であるMersebergプロセスにより、統合プロセス自体の副産物である炭酸カルシウムを使用して、より価値のある硫酸アンモニウム肥料に変換することである。
別の目的は、炭酸カルシウムをか焼に供し、硫酸アンモニウムの生産に二酸化炭素を使用することである。
別の目的は、シェーナイト最終液(schoenite end liquor)の脱硫酸化に必要なCaCl副産物と共にMg(OH)を調製するために、炭酸カルシウムのか焼で得られた石灰を使用することである。
本発明の別の目的は、プロセス自体において一貫して高品質の石灰を生成することであり、したがってそこから得られるMg(OH)も一貫して高品質となることである。
別の目的は、Mg(OH)を表面修飾して、プロセス中のろ過性を向上させることである。
別の目的は、そのような修飾が望ましい用途において、そのような表面修飾Mg(OH)を使用することである。
別の目的は、表面修飾Mg(OH)をか焼に供し、表面改質剤を含まず、97%以上の純度を有するMgOを生産することである。
別の目的は、特許文献1の従来技術のプロセスのシェーナイト最終液をろ過して、該液体の脱硫酸化で得られ、その後Mersebergプロセスで使用される石膏が、不溶物を含んでいないことを保証することである。
別の目的は、石膏を水で洗浄して可溶性塩を除去し、硫酸アンモニウム液及び炭酸カルシウムが、そのような不純物を含んでいないこと保証することである。
別の目的は、Mersebergプロセスにおいて、95%を超える石膏の変換を保証することである。
別の目的は、Mersebergプロセスのろ過液中の残留アンモニアを硫酸で中和して、アンモニア回収の必要性をなくし、同時に該液体中の硫酸アンモニウムの濃度を上昇させることである。
別の目的は、硫酸アンモニウム水溶液を蒸発結晶化に供し、固形硫酸アンモニウムを回収し、硫酸アンモニウム生産のその後のバッチで硫酸アンモニウム母液を再利用することである。
別の目的は、石膏の水溶解度が比較的より高いことを利用して、炭酸カルシウム中の残留石膏を洗い流し、98%を超える純度にその品質を向上させることである。
別の目的は、高純度のCaCOを使用して統合プロセスを開始することである。
別の目的は、プロセスにおける淡水の必要性を最小限に抑えることである。
したがって、本発明は、硫酸カリ(SOP)、硫酸アンモニウム、表面修飾水酸化マグネシウム、及び/又は酸化マグネシウムを同時生産するための方法であって、カイナイト混合塩及びアンモニアを唯一の消費可能な(consumable)原料として使用して、前記産物を同時生成することを特徴とし、以下のステップを含む方法を提供する:
a)第1の反応域において、カイナイト混合塩を水性浸出プロセスによりシェーナイトに変換し、水性浸出プロセスが、カイナイト混合塩を水及びステップ(e)のSOP最終液と反応させ、その後純粋なシェーナイトとシェーナイト最終液(SEL)とを分離することを含むステップ、
b)ステップ(a)で得られた清澄シェーナイト最終液をCaCl水溶液で処理して、石膏形態の硫酸塩を分離し、その後その塊をろ過して、石膏及び脱硫酸化シェーナイト最終液を回収するステップ、
c)ステップ(b)で得られた脱硫酸化シェーナイト最終液を蒸発に供し、固形カーナライト(carnallite)、及びMgClを多く含む液体を得るステップ、
d)ステップ(c)で得られたカーナライトを水で分解して、KCl、並びにMgCl及び残留KClを含有するカーナライト分解液(CDL)を回収するステップ、
e)ステップ(a)の純粋なシェーナイトをステップ(d)で得られたKClで処理して硫酸カリ(SOP)を生産し、ステップ(a)のプロセスでSOP最終液を再利用するステップ、
f)ステップ(b)で回収された石膏を洗浄して、付着不純物を最小限に抑えるステップ、
g)ステップ(f)で得られた石膏を、第2の反応域において、液体アンモニア、又はステップ(i)で得られた再利用硫酸アンモニウム母液、及びステップ(k)で得られた二酸化炭素と接触させて、Merseberg反応により硫酸アンモニウム溶液及び副産物CaCOを生産するステップ、
h)ステップ(g)の産物からCaCOをろ過し、その後ろ過液を硫酸で中和して、残留アンモニアを硫酸アンモニウムに変換するステップ、
i)ステップ(h)で得られた中和ろ過液を蒸発させて硫酸アンモニウムを回収し、ステップ(g)において硫酸アンモニウム母液を再利用するステップ、
j)ステップ(h)で得られたCaCOを水で洗浄して、未反応石膏及び付着可溶性不純物を最小限に抑え、その後800〜1000℃で1〜3時間か焼して、CO及び高純度の生石灰を得るステップ、
k)COをボンベに充填し、ステップ(g)において再利用するステップ、
l)ステップ(j)で生成された石灰を脱炭酸水で消和し、ステップ(d)で生成されたCDL及び/又はステップ(c)で得られたMgClを多く含む液で処理して、Mg(OH)の分散液及びCaCl水溶液を生産するステップ、
m)表面改質剤を添加してMg(OH)のろ過を容易にし、同時に、特別な配合用途に必要な表面修飾Mg(OH)を得るステップ、
n)表面修飾Mg(OH)を、ステップ(m)で得られたスラリーから任意の公知プロセスにより分離して、CaCl含有ろ過液を回収し、その後ステップb)の脱硫酸化プロセスにそれを再利用するステップ、
o)ステップ(n)で得られたMg(OH)をか焼して、高純度のMgOを回収し、それにより同時に表面改質剤を焼き落とすステップ。
本発明の実施形態では、カイナイト混合塩は、15〜22%のKCl、15〜22%のNaCl、28〜40%のMgSO、及び5〜10%のMgClで構成される。
本発明の別の実施形態では、水性浸出の操作は、再利用SOP最終液と共に、淡水又は汽水地下水を使用して、又は海水さえも使用して実施される。
本発明の別の実施形態では、ステップ(a)の純粋なシェーナイト形態のKとSELとの比率は、添加された水の量に応じて0.8〜1.2であり、SELの硫酸含有量は、5〜12%(重量/容積)の範囲にあった。
本発明の別の実施形態では、上記のステップ(b)で得られた石膏は、純度が96〜99%(重量/重量)の範囲にあった。
本発明の別の実施形態では、ステップ(h)で得られたろ過液中の残留アンモニアを硫酸で中和して、それを硫酸アンモニウムに変換した。
本発明の別の実施形態では、上記のステップ(h)で得られたCaCOは、95〜97%の範囲の純度を有していた。
本発明の別の実施形態では、ステップ(h)で得られたCaCOを水で洗浄して、未反応石膏及び付着可溶性不純物を最小限に抑えた。
本発明の別の実施形態では、ステップ(j)におけるCaCOのか焼を、800〜1000℃の温度範囲で、1〜3時間実施した。
本発明の別の実施形態では、ステップ(l)の石灰スラリー(消石灰)の調製に使用された脱炭酸水は、水を石灰で処理し、懸濁物を除去することにより得た。
本発明の別の実施形態では、カーナライト分解液中の塩化マグネシウムは、ステップ(l)のプロセスによりCaCl及びMg(OH)を調製するために、必要に応じて、ステップ(e)のMgClを多く含む液で補完した。
本発明の別の実施形態では、MgClに対する石灰のモル比は、ステップ(1)の反応では、0.8:1〜0.95:1の範囲にあった。
本発明の別の実施形態では、表面改質剤は、遊離脂肪酸、より詳しくはステアリン酸であり、ステップ(m)でのMg(OH)に対する表面改質剤の比率は、0.01:1〜0.05:1(重量/重量)の範囲にあった。
本発明の別の実施形態では、Mg(OH)のろ過速度は、フィルタープレスにおいて2〜3倍速く、Mg(OH)湿固塊は、表面改質剤を使用しない場合よりも8〜15%低い水分含有量を有していた。
本発明の別の実施形態では、ステップ(o)で得られたMgOの純度は、95〜99.5%(乾燥重量に基づく)の範囲にあった。
スキーム1(処理の全体の流れを示す図)。
特許文献1のSOP/MgOプロセスで得られたシェーナイト最終液を、脱硫酸化の前にまずろ過し、その結果生じた石膏を水で洗浄した後、アンモニア水及びCOと反応させて、硫酸アンモニウム及び炭酸カルシウムを生産する。その後、炭酸カルシウムを水で洗浄して、未反応石膏不純物を最小限に抑え、その後か焼してCaO及びCOを得る。その後、脱炭酸水中で消和することによりCaOを石灰スラリーに変換する。消石灰をカーナライト分解液(CDL)及び/又は適切なMgClを多く含む流動と反応させて、CaCl水溶液中のMg(OH)スラリーを生産する。これに表面改質剤を添加してろ過性を向上させ、特定の用途に必要な表面修飾Mg(OH)も生産し、残りのMg(OH)をか焼して表面改質剤を焼き落とし、同時に高純度のMgOを生産する。ろ過で得られたCaCl溶液を脱硫酸化プロセスで使用して、脱硫酸化シェーナイト最終液を得、それからKClを取得し、純粋なシェーナイトと更に反応させてSOPを得、このようにして全合成サイクルを完了する。
主な進歩性は、公知のSOP/MgOプロセスとMersebergプロセスを統合して複数の利益を実現することである。
別の進歩性は、SOP/MgOプロセスにおける副産物として生成された石膏を使用することにより、そのような統合を達成することである。
別の進歩性は、Mersebergプロセスで生成された副産物炭酸カルシウムの完全利用である。
別の進歩性は、その成分、すなわち石灰及び二酸化炭素の形態の炭酸カルシウムを使用することであり、それらは両方とも統合プロセスに不可欠であり、炭酸カルシウムのか焼により容易に得られる。
別の進歩性は、統合SOP/MgOプロセスにおいて石灰品質からの独立を達成し、その代わりプロセス自体において一貫して高品質の石灰を生成することであり、したがってそこから得られるMg(OH)も一貫して高品質であることである。
別の進歩性は、高品質の炭酸カルシウムを選び、炭酸カルシウム中の唯一の不純物である未反応石膏を洗い流すことによってそのような高品質の炭酸カルシウムを得ることにより、及びMersebergプロセス用に高品質の石膏を選び、脱硫酸化の前にシェーナイト最終液をろ過し、その後石膏を水で洗浄することにより、そのような高品質の石灰を達成することである。
別の進歩性は、表面改質剤を使用して、プロセスで生成されるMg(OH)のろ過性を向上させ、同時にある特定の用途に必要な表面修飾Mg(OH)を得ることである。
別の進歩性は、必要とされる産物がMgOである場合、そのような産物は、Mg(OH)のか焼により得られることになり、表面改質剤もこのプロセスで焼き落とされることになるという論拠である。
別の進歩性は、カイナイト混合塩を海水で分解して、淡水の使用を最小限に抑えることである。
別の進歩性は、Mersebergプロセスのろ過液中の残留アンモニアを硫酸で中和して、アンモニア回収の必要性をなくし、同時に液中の硫酸アンモニウムの濃度を上昇させることである。
以下の例は、例示のために示されており、本発明の範囲を制限するとは解釈されるべきではない。
実施例1
2.5M濃度のMgCl(合計=500モル)を含有する200Lの溶液(カーナライトを水で分解して得られた)を、周囲条件下にて、91.3%の有効石灰及び12.25%(重量/容積)のCaO(合計=438モル)を有する200Lの精製石灰スラリーで処理した。内容物を30分間撹拌し、その後フィルタープレスでろ過した。ろ過液の容積は、11.1%のCaClを有する290Lだった。固塊を水で洗浄し、洗浄の全容積は130Lだった。洗浄した固塊の重量は47kgであり、それを110℃で乾燥させて20.8kgのMg(OH)を得た。乾燥減量は、55.7%(重量/重量)だった。Mg(OH)の一部をか焼して、95.7%の純度及び2.9%のCaO含有量を有するMgOを得た。
実施例2
4.4M濃度のMgCl(合計=440モル)を含有する脱硫酸化シェーナイト最終液を蒸発させてカーナライトを回収した後で得られた100Lの溶液(図1を参照)を70℃に加熱し、90.6%の有効石灰及び9.1%(重量/容積)のCaO(合計=353モル)を有する240Lの精製石灰スラリーで処理した。内容物を30分間70℃で撹拌した。459gのステアリン酸を、1Lの水中に取り、加熱して溶解し、その後撹拌しながら反応槽に添加した。撹拌しながら温度を40℃に低下させ、その後内容物をフィルタープレスでろ過した。ろ過液の容積は、14.8%のCaClを有する230Lだった。固塊を水で洗浄し、洗浄の全容積は165Lだった。洗浄した固塊の重量は38.3kgであり、それを110℃で乾燥させて18.5kgのMg(OH)を得た。乾燥減量は、51.6%(重量/重量)だった。Mg(OH)の一部をか焼して、96.7%の純度及び2.5%のCaO含有量を有するMgOを得た。
実施例1と比較して、実施例2で得られた湿固塊の水分含有量がより低いことに加えて、実施例2では、ろ過速度がほとんど2倍速かったことが観察された。
実施例3
上記の実施例1及び2の手順より調製されたMg(OH)を、PALSゼータ電位アナライザーバージョン3.41を備えたゼータ電位アナライザー(Brookhaven Corporation社製)によるゼータ電位測定に供した。値は下記の表に示されている。ゼータ電位が著しく異なっていることがわかるが、これはステアリン酸によるMg(OH)の表面修飾を示しており、このプロセスは物質を疎水性にすることが予想される。
Figure 0005509310
Mg(OH)試料
洗浄された産物のゼータ電位、mV
A:洗浄時にその場でステアリン酸処理した
10.55
B:ステアリン酸処理をしなかった
33.39
実施例1〜3は、Mg(OH)のろ過時にステアリン酸をその場で組み込むことにより、ろ過時間の低減がもたらされ、湿固塊の水分含有量が低下し、その結果生じるMgOの純度もわずかに増強されることを教示する。
実施例4
シェーナイト最終液(図1を参照)を、特許文献1の従来技術に報告されているカイナイト混合塩のシェーナイトへの変換から得た。それをろ過して不溶物質を全て除去し、その後、MgCl水溶液を石灰スラリーと反応させて得られたCaCl含有溶液で処理した(同様に図1を参照)。その結果生じた石膏を分離し、水で洗浄し、45℃で乾燥して、98%の純度の石膏を有する産物を得た(CaSO.2HO)。200gの石膏(1.14モル)を、1L高圧反応器中でアンモニア溶液[400mL;NHOH=2.53モル]に懸濁し、スラリーを500rpmで撹拌した。GOガスを、ガス注入弁から導入した。最初は、COは、アンモニアとの酸塩基反応で消費された。反応が平衡状態に近づくと共に、圧力が上昇し始め、圧力が20psiに上昇した時、供給弁を閉じた。反応を50℃で2時間継続させた。その後、加圧ガスを放出することにより反応を停止させた。反応生成物からの固形物を、ろ過により分離し、洗浄し、110℃で乾燥して、純度が94.2%の114gのCaCOを得た(CaCO=1.07モル;使用した石膏に対して93.9%の変換)。硫酸アンモニウムを、公知の手順に従ってろ過液から別々に回収した。
実施例5
実施例4の実験を、10L高圧反応器中で3.0kgの石膏を用いて繰り返した。92.7%の純度を有する1.68kgのCaCOを、1.98kgの硫酸アンモニウムと共に得た。CaCOを水で更に洗浄して、未反応石膏及び残留可溶性不純物を優先的に溶解させ、97.2%の純度のCaCO(重量/重量)を有する産物を得た。
実施例6
実施例5で調製された150gの炭酸カルシウム(1.46モル)を、マッフル炉で2時間900℃にてか焼した。か焼及び冷却の後、96.6%(重量/重量)のCaO純度[(1.46モルのCaO)]を有する84.5gの生石灰を得た。75gの石灰(1.3モル)を水で消和して0.5Lの石灰スラリーを得、それをその後、1.50モルのMgCl水溶液を含有する0.340Lの溶液[この溶液は、2.0%(重量/容積)のCa2+、0.23%(重量/容積)のKC1、及び0.87%(重量/容積)のNaClを更に含有しており、1.3394の比重を有していた(Be'=36.74)]と反応させたが、この溶液は、KClのためにカーナライトを回収するために脱硫酸化シェーナイト最終液を蒸発させて得られるものである(図1を参照)。反応は、バッチ式反応器中で30分間75℃にて実施した。ステアリン酸[Mg(OH)に対して2%(重量/重量)]を、表面改質剤として実施例2の記載のように添加した。その後、その結果生じたMg(OH)スラリーを、実施例2に記載のように処理して、MgO=96.8%(重量/重量)、CaO=1.2%(重量/重量)、CaSO=0.40%(重量/重量)の化学的組成を有する29.5gのMgOを得た。
実施例7
実施例5の100gの沈殿炭酸カルシウムを、上記の実施例6に記載のようにか焼し、水で消和した。実施例6と唯一異なっていたのは、消和に使用した水を、まず消石灰及び活性炭で処理し、その後ろ過して不溶性物質を除去したことだった。その後、それを実施例6に記載のようにMgCl水溶液で処理した。得られたMgOは、化学的組成:MgO=97.9%(重量/重量)、CaO=2.0%(重量/重量)、CaSO=0.4%(重量/重量)を有していた。
実施例8
実施例7の実験を繰り返し、得られたMgOは、化学的組成物:MgO=98.2%(重量/重量)、CaO=1.7%(重量/重量)、CaSO=0.4%(重量/重量)を有していた。
実施例4〜8は、SOP/MgOプロセスでの副産物として得られた石膏から高純度の炭酸カルシウムを生産することができることを教示しており、それを、石灰石のか焼から得られる従来の石灰の代りに使用して、純度が98%(重量/重量)を超えるMgOを得ることができることを更に教示する。炭酸カルシウムから石灰を得るためのか焼プロセスが、実施例4〜5のMersebergプロセスで再利用することができる副産物として二酸化炭素を産出することは、更に明白であろう。
本発明の利点
本発明の主な利点は以下の通りである:
(i)シェーナイト最終液の脱硫酸化から得られる石膏の価値付加を達成し、同じプロセスの一部として、2つの二元栄養素肥料、すなわち硫酸カリウム及び硫酸アンモニウムがもたらされる。
(ii)プロセス自体において高純度の炭酸カルシウムを生成し、それを、高純度の硫酸アンモニウム及び水酸化マグネシウム/酸化マグネシウムの調製に完全使用する。
(iii)Mg(OH)/CaCl及び硫酸アンモニウムの生産にそれぞれ必要な高純度石灰及び二酸化炭素の外部調達の必要性を不要にし、CaClは、次いでシェーナイト最終液からKClを生産するため必要である。
(iv)その結果として、操業を簡単にするために使用される少量の硫酸及び表面改質剤を除けば、カイナイト混合塩及びアンモニアが、唯一の原料投入である。
(v)本プロセスは、廃棄物が、プロセス内で使用される価値のある産物(硫酸アンモニウム)及び原料(炭酸カルシウム)に変換されるため、環境保全技術の範疇に入る。
(vi)表面改質剤を粗Mg(OH)スラリーに組み込むことにより、水酸化マグネシウムのろ過が容易になり、それにより水分含有量のより低い湿固塊が同時に得られる。
(vii)海水又はプロセスでもたらされる洗浄水を用いて多くの操業を実施することができるため、淡水の需要が低減される。

Claims (13)

  1. 硫酸カリ(SOP)、硫酸アンモニウム、表面修飾水酸化マグネシウム、及び/又は酸化マグネシウムを同時生産するためのプロセスであって、カイナイト混合塩及びアンモニアを唯一の消費可能な原料として使用して、前記産物を同時生成することを特徴とし、カイナイトが、結晶化の水を有するKCl及びMgSO の複塩であり、不純物としてNaCl及びMgCl2.6H2Oを更に含有し、
    a)第1の反応域において、カイナイト混合塩を水性浸出プロセスによりシェーナイトに変換し、前記水性浸出プロセスが、カイナイト混合塩を水及びステップ(e)のSOP最終液と反応させ、その後前記純粋なシェーナイトとシェーナイト最終液(SEL)とを分離することを含むステップと、
    b)ステップ(a)で得られた清澄シェーナイト最終液をCaCl水溶液で処理して、石膏形態の硫酸塩を分離し、その後前記塊をろ過して、石膏及び脱硫酸化シェーナイト最終液を回収するステップと、
    c)ステップ(b)で得られた脱硫酸化シェーナイト最終液を蒸発に供し、固形カーナライト、及びMgClを多く含む液体を得るステップと、
    d)ステップ(c)で得られたカーナライトを水で分解して、KCl、並びにMgCl及び残留KClを含有するカーナライト分解液(CDL)を回収するステップと、
    e)ステップ(a)の純粋なシェーナイトをステップ(d)で得られたKClで処理して硫酸カリ(SOP)を生産し、ステップ(a)のプロセスで母液を再利用するステップと、
    f)ステップ(b)で回収された石膏を洗浄して、付着不純物を最小限に抑えるステップと、
    g)ステップ(f)で得られた石膏を、第2の反応域において、液体アンモニア、又はステップ(i)で得られた再利用硫酸アンモニウム母液、及びステップ(k)で得られた二酸化炭素と接触させて、Merseberg反応により硫酸アンモニウム溶液及び副産物CaCOを生産するステップと、
    h)ステップ(g)の産物からCaCOをろ過し、その後前記ろ過液を硫酸で中和して、残留アンモニアを硫酸アンモニウムに変換するステップと、
    i)ステップ(h)で得られた中和ろ過液を蒸発させて硫酸アンモニウムを回収し、ステップ(g)において母液を再利用するステップと、
    j)ステップ(h)で得られたCaCOを水で洗浄して、未反応石膏及び付着可溶性不純物を最小限に抑え、その後か焼して、CO及び高純度の生石灰を得るステップと、
    k)COをボンベに充填し、ステップ(g)において再利用するステップと、
    l)ステップ(j)で生成された石灰を脱炭酸水で消和し、ステップ(d)で生成されたCDL及び/又はステップ(c)で得られたMgClを多く含む液で処理して、Mg(OH)の分散物及びCaCl水溶液を生産するステップと、
    m)表面改質剤を添加してMg(OH)のろ過を容易にし、同時に、特別な配合用途に必要な表面修飾Mg(OH)を得るステップと、
    n)前記表面修飾Mg(OH)を、ステップ(m)で得られたスラリーから任意の公知プロセスにより分離して、CaCl含有ろ過液を回収し、その後ステップb)の脱硫酸化プロセスにそれを再利用するステップと、
    o)ステップ(n)で得られたMg(OH)をか焼して、高純度のMgOを回収し、それにより同時に前記表面改質剤を焼き落とすステップと
    を含む方法。
  2. 前記カイナイト混合塩が、15〜22%のKCl、15〜22%のNaCl、28〜40%のMgSO、及び5〜10%のMgCl という分析結果を示す、請求項1に記載の方法。
  3. ステップ(a)における水性浸出の操作が、前記再利用SOP最終液と共に、淡水又は汽水地下水を使用して、又は海水さえも使用して実施される、請求項1に記載の方法。
  4. ステップ(a)の純粋なシェーナイト形態のKとSELとの比率が、添加された水の量に応じて0.8〜1.2であり、SELの硫酸含有量が、5〜12%(重量/容積)の範囲にある、請求項1に記載の方法。
  5. 上記のステップ(b)で得られた石膏が、96〜99%(重量/重量)の範囲の純度である、請求項1に記載の方法。
  6. 上記のステップ(h)で得られたCaCOが、95〜97%の範囲の純度を有する、請求項1に記載の方法。
  7. ステップ(j)におけるCaCOのか焼が、800〜900℃の温度範囲で、1〜3時間実施される、請求項1に記載の方法。
  8. ステップ(l)の石灰スラリー(消石灰)の調製に使用された脱炭酸水が、前記水を石灰で処理し、懸濁物を除去することにより得られる、請求項1に記載の方法。
  9. カーナライト分解液中の前記塩化マグネシウムが、ステップ(l)のプロセスによりCaC1及びMg(OH)を調製するために、必要に応じて、ステップ(e)のMgC1を多く含む母液で補完される、請求項1に記載の方法。
  10. MgC1に対する石灰のモル比が、ステップ(l)の反応において、0.8:1〜0.95:1の範囲にある、請求項1に記載の方法。
  11. 前記表面改質剤がステアリン酸であり、ステップ(m)におけるMg(OH)に対する表面改質剤の比率が、0.01:1〜0.05:1(重量/重量)の範囲にある、請求項1に記載の方法。
  12. Mg(OH)のろ過速度が、フィルタープレスにおいて2〜3倍速く、前記Mg(OH) 湿塊が、表面改質剤を使用しない場合より、8〜15%低い水分含有量を有する、請求項1に記載の方法。
  13. ステップ(o)で得られたMgOの純度が、95〜99.5%(乾燥重量に基づく)の範囲にある、請求項1に記載の方法。
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