JP7313002B2 - 二酸化炭素の固定化方法 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 (1)平成30年9月26日にウェブサイトで公開された、IEAGHG学会GHGT-14国際会議の発表の要旨 (2)上記国際会議の発表の要旨の翻訳文 (3)平成30年10月24日にIEAGHG学会GHGT-14国際会議で発表したポスター (4)平成31年2月7日に行われた2018年度修士論文発表会(早稲田大学)の論文概要書
本発明は、アルカリ土類金属への二酸化炭素の固定化方法に関する。
地球温暖化の深刻化に伴い気温上昇を抑制することが求められており、その評価モデルとして人為的二酸化炭素(CO)排出量をゼロにすることが目標となっている。上記目標を達成するための手段として、例えば収利益のあるCO固定化方法が挙げられる。
CO固定化方法の有効な手段として、アルカリ土類金属であるMgやCaを利用して、これらアルカリ土類金属とCOを結合させて固定化する方法が挙げられる。しかし、アルカリ土類金属を含む鉱石を利用する従来の方法は、高温高圧や薬品添加といったCO排出と結びつく処理を必要とするため、プロセス全体でCO排出となるケースが多い。
またMgやCaは、海水及び海水の淡水化プラントからの廃液かん水等にも含まれており、例えば海水を利用したCO固定化方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開2005-21870号公報 特開2010-125354号公報
かん水利用のCO固定化方法では、かん水へのCO吹込みによる方法が多く検討されてきたが、イオン径の小さな2価の陽イオンであるMg2+イオン周りに形成される強固な水和殻と、炭酸塩化を競合するカチオン(Na+、K+)の存在が原因で、液相内でのCO固定化の効率が低下するといった問題がある。その解決策として、Ca(OH)等のリサイクルが困難なアルカリ添加によるpHを上昇させる手段を用いることが主流であった。しかし、COとの反応を促進させるためのこれらの手段は、エネルギー消費やライフサイクルアセスメントとしての添加物生産に起因するCO排出を考慮すると、プロセス全体でCO排出がプラスとなってしまう。
特許文献1及び2の技術でも、pH調整や廃水処理等が必要となりプロセス全体としてCOの排出量をマイナスとすることは困難である。
上述のようにかん水を利用したCO固定化方法の問題点として、MgやCa以外の分子やイオンの存在によるCOとの反応の阻害が挙げられる。したがって、かん水からMgやCaを分離するプロセスにおいて、単位操作ごとに由来するCO排出も考慮して、CO削減能力が評価されなければならない。
そこで本発明は、二酸化炭素の排出量を考慮しつつ二酸化炭素削減能力を高める、アルカリ土類金属への二酸化炭素の固定化方法を提供する。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明を想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]アルカリ土類金属を含むかん水からアルカリ土類金属酸化物を得る工程、及び
前記アルカリ土類金属酸化物に二酸化炭素を含む気体を反応させる二酸化炭素反応工程、
を含む二酸化炭素の固定化方法。
[2]前記アルカリ土類金属酸化物を得る工程が、濃縮工程、アルカリ金属除去工程、塩化水素回収工程、並びに乾燥及び熱分解工程を含む、前記[1]に記載の二酸化炭素の固定化方法。
[3]前記アルカリ金属除去工程が、前記濃縮工程を経たかん水に塩化水素を含む気体を添加してアルカリ金属塩化物を除去する工程である、前記[2]に記載の二酸化炭素の固定化方法。
[4]前記塩化水素回収工程が、前記アルカリ金属分離工程を経たかん水にアルカリ土類金属塩化物の水和物を添加して塩化水素を回収する工程である、前記[2]又は[3]に記載の二酸化炭素の固定化方法。
[5]前記塩化水素回収工程によって回収した塩化水素の少なくとも一部を前記アルカリ金属除去工程に用いる塩化水素の再利用工程をさらに有する、前記[2]~[4]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定化方法。
[6]前記塩化水素回収工程を経たかん水が、アルカリ土類金属塩化物のスラリーを含む、前記[2]~[5]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定化方法。
[7]前記乾燥及び熱分解工程が、前記塩化水素回収工程を経たかん水を乾燥した後、さらに加熱してアルカリ土類金属酸化物を得る工程である、前記[2]~[6]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定化方法。
[8]前記塩化水素回収工程を経たかん水を乾燥した後、得られたアルカリ土類金属塩化物の水和物の少なくとも一部を前記塩化水素回収工程に用いるアルカリ土類金属塩化物の水和物の再利用工程をさらに有する、前記[2]~[7]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定化方法。
[9]前記アルカリ土類金属として少なくともマグネシウムを含む、前記[1]~[8]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定化方法。
[10]前記かん水が、海水、塩湖、及び工業廃水から選ばれる少なくとも1種から得られるかん水である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定化方法。
[11]前記かん水が、海水を用いた造水装置から得られるかん水、海水から塩を造るプロセスから得られるかん水、及び塩湖からリチウムを回収するプロセスから得られるかん水から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定化方法。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定化方法を用いた、アルカリ土類金属炭酸塩の製造方法。
本発明によれば、二酸化炭素の排出量を考慮しつつ二酸化炭素削減能力を高める、アルカリ土類金属への二酸化炭素の固定化方法を提供することができる。
本発明の実施形態の一例を説明するフロー図である。
本発明の二酸化炭素の固定化方法は、アルカリ土類金属を含むかん水からアルカリ土類金属酸化物を得る工程、及び前記アルカリ土類金属酸化物に二酸化炭素を含む気体を反応させる二酸化炭素反応工程を含む。
また、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称すことがある。)において、上記アルカリ土類金属酸化物を得る工程は、濃縮工程、アルカリ金属除去工程、塩化水素回収工程、並びに乾燥及び熱分解工程を含むことが好ましい。
本実施形態において「アルカリ土類金属」は、Ca、Sr、Ba、Raの他に、周期表第2族の元素であるMgとBeを含む広義の範囲を意味する。特にCOとの反応のし易さや、該反応により得られる炭酸塩を様々な用途へ利用することが期待できる観点から、アルカリ土類金属として少なくともMgを含むことが好ましい。
また「かん水」とは、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)等のアルカリ土類金属のイオン以外に、塩化イオン(Cl)、硫酸イオン(SO 2-)、ナトリウムイオン(Na)、カリウム(K)から選ばれる少なくとも1種のイオンを含んでいてもよい水溶液である。
上記かん水としては、海水、塩湖、及び工業廃水から選ばれる少なくとも1種から得られるものを用いることができる。また、アルカリ土類金属が含まれていれば海水、塩湖、及び工業廃水の他に、河川水、雨水、下水処理水等も用いることができる。かん水としてより具体的には、海水及び塩湖等を用いた造水、淡水化や造塩のプロセスにより排出される廃液かん水や、海水及び塩湖等を用いた有価物の回収、化学工場等からの工業廃水等が挙げられる。
前述のMgを多く含むこと、環境負荷の低減及びCO排出量削減のし易さの観点から、かん水は海水を用いた造水装置から得られるかん水、海水から塩を造るプロセスから得られるかん水、及び塩湖からリチウムを回収するプロセスから得られるかん水から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本実施形態の概要は、かん水を用いて上記アルカリ土類金属酸化物を得る工程によりCO排出量を抑えつつアルカリ土類金属を塩酸化物として分離して酸化物に変換してから、二酸化炭素反応工程によりアルカリ土類金属酸化物に二酸化炭素を固定化して、ライフサイクル全体をとおしてCO削減となるプロセスである。
以下、本実施形態の一例において含むことのできる各工程を、図1を用いて具体的に説明する。なお、図1において、S1,S2,S3等のS系統は沈殿析出、G1,G2,G3等のG系統は気相、L1,L2,L3等のL系統は液相を意味する。
<アルカリ土類金属酸化物を得る工程>
アルカリ土類金属を含むかん水からアルカリ土類金属酸化物を得る工程は、濃縮工程(硫酸塩除去工程)、アルカリ金属除去工程、塩化水素回収工程、並びに乾燥及び熱分解工程を含む。アルカリ土類金属酸化物を得る工程では、COの排出量を考慮しつつ、アルカリ土類金属とCOとの反応を阻害するアルカリ土類金属以外の硫酸イオンや陽イオンを除去する。また、添加剤であるHClを回収及び再利用することでHCl生産によるCO排出を回避することができる。
以下、本実施形態の一例において、図1に示すかん水Lとして、海水の淡水化プラントから得られる廃液かん水を用いた例について説明する。
また、上記かん水Lには、Mg2+以外にCl、SO 2-、Na、Ca2+、Kといったイオン等が含まれ、その濃度は海水の約2倍である。
[濃縮工程]
濃縮工程は、アルカリ土類金属とCOの反応の妨げとなるアルカリ土類金属以外の分子及びイオンを分離し、以後の工程を効率化する工程である。
図1に示すかん水Lを用いた濃縮工程は、アルカリ土類金属とCOの反応の妨げとなるSO 2-を分離する硫酸塩除去工程でもある。濃縮工程は、これらアルカリ土類金属以外のSO 2-や陽イオンを分離することができる濃縮率及び温度等の濃縮条件を適宜調整して実施することができる。
図1では、かん水Lを蒸発濃縮1’により濃縮してHOを水蒸気G1として除去し、CaSO・2HOの石膏沈殿S1を沈殿回収する。本発明の効果を損なわない限りにおいて、蒸発濃縮1’の際の温度に制限はないが、好ましくは75~120℃、より好ましくは80~110℃であり、さらに好ましくは80~90℃である。
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、蒸発濃縮1’の際の圧力に制限はなく、常圧(1atm)で行うことができ、例えば0.8~1.2atmであってもよい。
続いて、蒸発濃縮1’を経たかん水L1を、Ca2+とSO 2-の析出分離を目的として蒸発濃縮1’’により濃縮し、HOを水蒸気G2として除去し、NaCl及び石膏沈殿S2を沈殿回収する。Ca2+とSO 2-の析出分離ができれば、蒸発濃縮1’’の際の温度に制限はないが、好ましくは20~75℃、より好ましくは40~70℃である。また、Ca2+とSO 2-の析出分離ができれば、蒸発濃縮1’’の際の圧力に制限はなく、常圧(1atm)で行うことができ、例えば0.8~1.2atmであってもよい。
続いて、蒸発濃縮1’’を経たかん水L2において残存するSO 2-の析出分離を目的として、かん水L2を冷却沈殿1’’’し、NaCl及びNaSO・10HO(硫酸ナトリウム)S3を沈殿回収する。残存するSO 2-の析出分離ができれば、かん水L2が凍らない程度の温度範囲内において冷却沈殿1’’’の際の温度に制限はなく、通常0℃以下であるが、-5~5℃であってもよく、好ましくは-5~0℃である。また、残存するSO 2-の析出分離ができれば、かん水L2が凍らない程度の圧力範囲内において冷却濃縮1’’’の際の圧力に制限はなく、常圧(1atm)で行うことができ、例えば0.8~1.2atmであってもよい。
また、SO 2-の沈殿除去は、SO 2-がCaSO・2HOやNaSO・10HOとして沈殿析出することから、Ca2+やNaのアルカリ金属イオンの量に依存する。したがって、SO 2-を全て沈殿除去するために、必要に応じてNa、K及びCaの塩化物を添加してもよい。
[アルカリ金属除去工程]
アルカリ金属除去工程は、濃縮工程を経たかん水に塩化水素(HCl)を含む気体を添加してアルカリ金属塩化物を除去する工程である。
アルカリ金属除去工程において、アルカリ土類金属とCOの反応の妨げとなるLi、Na及びK等のアルカリ金属イオンを、アルカリ金属塩化物として析出分離する。
HClを含む気体は、超共沸状態(水-塩酸2元系で共沸点よりも濃い塩酸ガス濃度)の無水塩酸であることが好ましく、気体の共沸点よりも塩素ガスリッチ側の組成を構成する気体であれば水蒸気を含んでいてもよい。またHClを含む気体として、後述する塩化水素回収工程によって回収されたHClを再利用することが、HClを生産する際に生じるCOの排出を回避することできる観点から好ましい。
図1では、アルカリ金属除去工程2は、冷却濃縮1’’’を経た濃縮かん水L3に、HClガスGl4を添加し、NaCl及びKCl固体S4を析出分離させる。添加する際のHClガスGl4の温度は、HClガスの凝縮温度よりもわずかに高い最低温度でよく、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃である。上記温度範囲内であれば、塩化アルカリ金属をエネルギー的に効率よく析出除去できる。また、上記温度範囲内にてHClガスGl4をかん水L3に添加し、直ちに系内を冷却(好ましくは0℃以下)することが、塩化アルカリ金属を析出除去するのに好適である。
また、NaClとKClの析出分離ができれば、アルカリ金属除去工程2における圧力に制限はなく、常圧(1atm)で行うことができ、例えば0.8~1.2atmであってもよい。
HClガスGl4の添加量は、原料となる廃かん水からこの段階で残存しているアルカリ金属イオンの量で決定することができる。例えば原料廃かん水1トンあたり0.086kmolのNa、0.020kmolのKが残っていた場合では、アルカリ金属イオン量は0.626kmolと計算される。HClガスG14がアルカリ金属イオン量より少ないとNaやKがMgに混在してMgの濃度が下がる。一方、HClガスG14がアルカリ金属イオン量より多すぎると物質バランスが崩れ、次の工程に影響する。
HClガスGl4のHCl濃度は、本発明の効果を損なわない限りにおいて制限はないが、超共沸状態(水-塩酸2元系で共沸点よりも濃い塩酸ガス濃度)であることが好適であるため、質量分率で40%程度以上が望ましい。また、HClガスGl4の流速は、化学工業プロセスでの常識的な設計範囲内であって、本発明の効果を損なわない限りにおいて制限はない。
[塩化水素回収工程]
塩化水素回収工程は、アルカリ金属分離工程を経たかん水にアルカリ土類金属塩化物の水和物を添加して塩化水素を回収する工程である。
アルカリ金属分離工程を経たかん水は、HClが高濃度で溶解したかん水であり、この高濃度HClかん水にアルカリ土類金属塩化物の水和物を添加することでHClガスを回収する。
このように回収したHClを前述のアルカリ金属除去工程に再利用することにより、アルカリ金属除去工程に新たに製造したHClの添加量を減らすことができる。そのため、新たに製造したHClの生産に起因するCO排出を回避することが可能となる。
図1では、塩化水素回収工程3は、アルカリ金属分離工程2を経た高濃度HClかん水L4に塩化マグネシウム二水和物(MgCl・2HO)Sl5を添加し、加温することでHClガスG5を回収する。そして回収したHClガスG5を前述のアルカリ金属除去工程に添加するHClガスGl4として再利用することができる。塩化水素の回収は塩化マグネシウムの無水又は一水和物でも可能であるが、エネルギー効率の観点から塩化マグネシウム二水和物が好適である。また、アルカリ土類金属塩化物の水和物としては、塩化マグネシウム二水和物の他に、例えば塩化マグネシウム四水和物及び塩化マグネシウム六水和物から選ばれる1種以上を併用することもできる。
高濃度HClかん水L4に添加する塩化マグネシウム二水和物Sl5の添加量は、かん水L4に存在するHCl濃度の量で決定することができる。
また、高濃度HClかん水L4に塩化マグネシウム二水和物Sl5を添加した後、HClガスG5を回収する際の温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50~100℃、さらに好ましくは60~90℃である。HClガスG5を回収する際の圧力は、上記回収温度を低温化し、HClガスを高濃度で回収できる観点から、好ましくは0.25~1.0atmであり、COの発生を考慮しながら調整することが好ましい。
[塩化水素の再利用工程]
塩化水素回収工程によって回収した塩化水素の少なくとも一部を前記アルカリ金属除去工程に用いる塩化水素の再利用工程をさらに有することが好ましい。前述したように、本工程を有することにより、新たに製造したHClの生産に起因するCO排出を回避することが可能となる。
図1では、塩化水素回収工程によって回収したHClガスG5を、HClガスGl4としてアルカリ金属除去工程2へ再利用することが示されている。
[乾燥及び熱分解工程]
乾燥及び熱分解工程は、塩化水素回収工程を経たかん水を乾燥した後、さらに加熱してアルカリ土類金属酸化物を得る工程である。
塩化水素回収工程を経たかん水には、アルカリ土類金属塩化物のスラリーが含まれる。
図1では、乾燥及び熱分解工程は乾燥4’及び熱分解4’’で示される。塩化水素回収工程3を経たかん水は塩化マグネシウム(MgCl)水和物のスラリーL5であり、これが乾燥4’を経て、塩化マグネシウム二水和物S6となる。そして、塩化マグネシウム二水和物S6の少なくとも一部S6bは熱分解4’’を経てヒドロキシ塩化マグネシウム(MgOHCl)S7となる。その後ヒドロキシ塩化マグネシウムS7は熱分解4’’により脱塩酸化され、酸化マグネシウム(MgO)S8となる。
上記乾燥4’の際の温度は、MgCl・2HOの生成に対しては、大気圧下において好ましくは130℃以下であり、より好ましくは100~129℃である。上記温度範囲とすることにより、効率よく塩化マグネシウム二水和物S6とすることができる。
上記熱分解4’’の際の温度は、MgOHClの生成に対しては、大気圧下において好ましくは235℃以下であり、より好ましくは160~235℃である。圧力を大気圧よりも低くすればさらに温度を下げることができる。また、MgOの生成に対しては、大気圧下において好ましくは300~500℃、より好ましくは350~450℃である。圧力を大気圧よりも低くすればさらに温度を下げることができる。上記温度範囲とすることにより、効率よくヒドロキシ塩化マグネシウムS7又は酸化マグネシウムS8とすることができる。
また、MgOを生成する上記熱分解4’’の際にHClガスG8aが排出されるため、HClガスG8aを回収、再利用してもよい。したがって、本実施形態において、乾燥及び熱分解工程によって回収した塩化水素の少なくとも一部を前記アルカリ金属除去工程に用いる塩化水素の再利用工程をさらに有することが好ましい。本工程を有することにより、新たに製造したHClの生産に起因するCO排出を回避することが可能となる。
図1では、MgOを生成する熱分解4’’の際に回収したHClガスG8aを、HClガスGl4としてアルカリ金属除去工程2へ再利用することが示されている。
[アルカリ土類金属塩化物の水和物の再利用工程]
また上記乾燥及び熱分解工程において、塩化水素回収工程を経たかん水を乾燥することによって回収したアルカリ土類金属塩化物の水和物の少なくとも一部を前記塩化水素回収工程に用いるアルカリ土類金属塩化物の水和物の再利用工程をさらに有することが好ましい。本工程を有することにより、塩化水素回収に必要なエネルギー源を限りなくゼロに近づけることが期待でき、環境負荷の削減において好適なものとなる。
図1では、乾燥4’の際に回収した塩化マグネシウム二水和物S6の少なくとも一部S6aを、塩化マグネシウム二水和物Sl5として塩化水素回収工程3へ再利用することが示されている。
<二酸化炭素反応工程>
二酸化炭素反応工程は、アルカリ土類金属酸化物に二酸化炭素を含む気体を反応させる工程である。アルカリ土類金属酸化物と二酸化炭素を含む気体との固気反応により、アルカリ土類金属酸化物に二酸化炭素を固定化する。
二酸化炭素を含む気体は大気でもよい。また、該気体中に含まれる二酸化炭素濃度に制限はないが、上記固気反応の進行のし易さの観点から、気体中に含まれる二酸化炭素濃度は大気~100体積%程度である。
図1では、二酸化炭素反応工程5は、熱分解4’’により得られた酸化マグネシウムS8に二酸化炭素を含む気体が流され、炭酸マグネシウム三水和物(MgCO・3HO)S9となって、二酸化炭素は固定化される。
本実施形態によれば、かん水は上述のとおり複数イオンを含む水溶液であることから、上記各工程において水(純水)、塩、石膏、塩化カリウム等を副産物として得ることができる。そのため、CO固定化の他に、様々な副産物が生産され、これらをより環境に配慮した製品に利用することが期待できる。また、本実施形態は、かん水として上述のとおり廃液を用いることができるため、廃液処理として利用でき、廃液処理費の削減にも貢献することが考えられる。
さらに、二酸化炭素を固定化した炭酸マグネシウムは建築材料としても利用可能である。したがって本発明は、前述の二酸化炭素の固定化方法を用いた、アルカリ土類金属炭酸塩の製造方法をも提供することがきる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例は、図1に示すように、[濃縮工程1]、[アルカリ金属除去工程2]、[塩化水素回収工程3]、[乾燥及び熱分解工程4]、[二酸化炭素反応工程5]の各固定を順次施行し、二酸化炭素を固定化した。図1における、S1,S2,S3等のS系統の沈殿析出成分及びその量、G1,G2,G3等のG系統の気相成分及びその量、L1,L2,L3等の液相成分及びその量については、表1及び表2に示した。
[濃縮工程1]
表1に示す組成のかん水Lを、蒸発濃縮1’(90℃、常圧)により濃縮してHOを水蒸気G1として除去し、CaSO・2HOの石膏沈殿S1を沈殿回収した。
続いて、蒸発濃縮1’を経たかん水L1を、蒸発濃縮1’’(60℃、常圧)により濃縮し、HOを水蒸気G2として除去し、NaCl及び石膏沈殿S2を沈殿回収した。
続いて、蒸発濃縮1’’を経たかん水L2を冷却沈殿1’’’ (0℃、常圧)し、NaCl及びNaSO・10HO(硫酸ナトリウム)S3を沈殿回収した。
[アルカリ金属除去工程2]
上記冷却濃縮1’’’を経た濃縮かん水L3に、HClガス(水蒸気を含む)Gl4を添加(80℃、常圧)し、容器内を0℃、常圧に冷却することでNaCl及びKClの固体S4を析出分離させた。
[塩化水素回収工程3][塩化水素の再利用工程]
上記アルカリ金属分離工程2を経た高濃度HClかん水L4に、塩化マグネシウム二水和物(MgCl・2HO)Sl5を添加し、80℃に加温することでHClガス(水蒸気を含む)G5を回収した。
また、上記塩化水素回収工程3によって回収したHClガスG5を、HClガスGl4としてアルカリ金属除去工程2へ再利用した。
[乾燥及び熱分解工程4][アルカリ土類金属塩化物の水和物の再利用工程]
上記塩化水素回収工程3を経たかん水は、塩化マグネシウム(MgCl)水和物のスラリーL5であり、これを110℃にて乾燥4’し、塩化マグネシウム二水和物(MgCl・2HO)S6とした。該塩化マグネシウム二水和物S6の少なくとも一部S6bを、230℃にて熱分解4’’し、ヒドロキシ塩化マグネシウム(MgOHCl)S7とした。その後ヒドロキシ塩化マグネシウムS7を、400℃にて熱分解4’’して脱塩酸化し、酸化マグネシウム(MgO)S8とした。
また、乾燥4’の際に回収した塩化マグネシウム二水和物S6の残部S6aを、塩化マグネシウム二水和物Sl5として塩化水素回収工程3へ再利用した。さらに、上記熱分解4’’においてHClガスG8aを回収し、HClガスGl4としてアルカリ金属除去工程2へ再利用した。
[二酸化炭素反応工程5]
上記熱分解4’’により得られた酸化マグネシウムS8に、二酸化炭素G5mol%を含む空気を流し、30℃、大気圧、90%湿度環境下で炭酸マグネシウム三水和物(MgCO・3HO)S9(0.102mol)とすることで、0.102molの二酸化炭素を固定化した。


表1及び表2において、測定方法A~Eは次のとおりである。
A:質量変化測定
B:イオンクロマトグラフィーにより測定
C:熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により測定
D:蛍光X線分析装置(XRF)及びX線回析装置(XRD)により測定
E:質量変化により算出
本実施形態によれば、プロセス全体でCOを削減することができるため、地球環境保全において有用である。
また、かん水は複数イオンを含む水溶液であることから、各工程において水(純水)、塩、石膏、塩化カリウム等を副産物として得ることができる。そのため、CO固定化の他に、様々な副産物が生産され、これらをより環境に配慮した製品として利用することが期待できる。また、かん水として廃液を用いることにより、廃液処理費の削減にも貢献することが考えられる。
さらに、二酸化炭素を固定化した炭酸マグネシウムは建築材料としても利用可能である。
上記から本実施形態は、副産物による歳入源と廃液処理費の削減の副次的な効果も期待することができる。
1’.1’’.1’’’.濃縮工程
2.アルカリ金属除去工程
3.塩化水素回収工程
4’.4’’.乾燥及び熱分解工程
5.二酸化炭素反応工程
L.かん水
G.二酸化炭素

Claims (8)

  1. アルカリ土類金属を含むかん水からアルカリ土類金属酸化物を得る工程、及び
    前記アルカリ土類金属酸化物に二酸化炭素を含む気体を反応させる二酸化炭素反応工程、を含む二酸化炭素の固定化方法であって、
    前記アルカリ土類金属酸化物を得る工程が、濃縮工程、アルカリ金属除去工程、塩化水素回収工程、並びに乾燥及び熱分解工程を含み、
    前記濃縮工程が、アルカリ土類金属と二酸化炭素の反応の妨げとなるアルカリ土類金属以外の分子及びイオンを分離する工程であり、
    前記アルカリ金属除去工程が、前記濃縮工程を経たかん水に塩化水素を含む気体を添加してアルカリ金属塩化物を除去する工程であり、
    前記塩化水素回収工程が、前記アルカリ金属除去工程を経たかん水にアルカリ土類金属塩化物の水和物を添加して塩化水素を回収する工程であり、
    前記乾燥及び熱分解工程が、前記塩化水素回収工程を経たかん水を乾燥した後、さらに加熱してアルカリ土類金属酸化物を得る工程である、二酸化炭素の固定化方法。
  2. 前記塩化水素回収工程によって回収した塩化水素の少なくとも一部を前記アルカリ金属除去工程に用いる塩化水素の再利用工程をさらに有する、請求項1に記載の二酸化炭素の固定化方法。
  3. 前記塩化水素回収工程を経たかん水が、アルカリ土類金属塩化物のスラリーを含む、請求項1または2に記載の二酸化炭素の固定化方法。
  4. 前記塩化水素回収工程を経たかん水を乾燥した後、得られたアルカリ土類金属塩化物の水和物の少なくとも一部を前記塩化水素回収工程に用いるアルカリ土類金属塩化物の水和物の再利用工程をさらに有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化方法。
  5. 前記アルカリ土類金属として少なくともマグネシウムを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化方法。
  6. 前記かん水が、海水、塩湖、及び工業廃水から選ばれる少なくとも1種から得られるかん水である、請求項1~のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化方法。
  7. 前記かん水が、海水を用いた造水装置から得られるかん水、海水から塩を造るプロセスから得られるかん水、及び塩湖からリチウムを回収するプロセスから得られるかん水から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化方法。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化方法を用いた、アルカリ土類金属炭酸塩の製造方法。
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