以下、本実施形態に係る車両用荷室内構造について、図1ないし図11を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る車両用荷室内構造が適用される車両1は、左右一対のフロントシート20,20、左右一対のリアシート30,30、荷室40、隔壁50を備えている。なお、図1では、リアシート30,30のヘッドレストを取り外した状態、また、ブラケット60の樹脂カバー80(図5参照)を取り外した状態を図示している。また、本実施形態では、「前」は車両のフロント側、「後」は車両のリア側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
車両1は、乗員スペースと荷物スペースとがひとつの空間により形成されている、いわゆるワンボックスタイプの車両であり、リアシート30,30の後方に荷室40を備え、荷室40の後端部に形成された開口2を開閉可能なテールゲート(図示省略)を備えている。このテールゲートは、例えば、跳ね上げ式のものであり、その上端部が車両1のルーフ側に図示しないヒンジおよびダンパを介して回動自在(開閉自在)に取り付けられている。なお、テールゲートは、跳ね上げ式のものに限定されず、左右の一方にヒンジを備えて、テールゲートを左開きまたは右開きとする構成であってもよい。
左右一対のフロントシート20,20は、運転席および助手席であり、それぞれ、座面を構成するシートクッション21と、背もたれを構成するシートバック22と、シートバック22の上端に着脱可能なヘッドレスト23と、を備えている。また、フロントシート20,20は、脚部20a,20aを介してフロア10にボルトによって締結されている。
また、フロントシート20は、シートバック22の下端がシートクッション21の後端に対して回動可能に連結されるとともに、シートバック22の傾斜角度を段階的に調整可能に構成されている。また、フロントシート20は、シートバック22の表面(図1では前面)22aが上向きとなるようにフルリクライニング可能(図11参照)に構成されている。フロントシート20をフルリクライニングすることにより、シートクッション21の表面21aと、シートバック22の表面22aとで、略平らな面にすることができる(図11参照)。
また、右側のシートクッション21は、左側のシートクッション21よりも車幅方向に長く形成されており、左側のシートクッション21の側面と右側のシートクッション21の側面とが接して、左右のシートクッション21,21の表面21a,21aが面一になるように形成されている。また、左右のシートバック22,22の間には、アームレスト24が回動可能に設けられるとともに、左側のシートバック22の表面22aと右側のシートバック22の表面22aとアームレスト24の表面とが面一になるように形成されている。
左右一対のリアシート30,30は、それぞれ、座面を構成するシートクッション31と、背もたれを構成するシートバック32と、シートバック32の上端に着脱可能なヘッドレスト(図示省略)と、シートクッション31の下部に取り付けられた前脚部33と、シートバック32の下部に取り付けられた後脚部34,35と、を備えている。なお、図1のリアシート30は、着座位置(着座状態)を図示している。
前脚部33は、例えば、左右一対の棒状の脚部33a,33aと、脚部33a,33a間において左右方向(車幅方向)に延びる補強部33bとで略H型に組み合わされて構成されている。脚部33a,33aの上端は、シートクッション31の下面に回動可能に連結されるとともに、脚部33aの下端は、フロア10上に固定された固定部33c,33cに回動可能に連結されている。
後脚部34は、細長板状に形成され、上部がシートバック32の左側面の下部に固定され、下部がフロア10上に固定された固定部34aに回動可能に連結されている。後脚部35は、シートバック32の右側面の下部に固定され、後脚部35の下部がフロア10上に設けられた固定部(不図示)に回動可能に連結されている。また、右側のリアシート30についても、シートバック32の右側面の下部に後脚部34、左側面の下部に後脚部35を備えて、左側のリアシート30と同様に後脚部34,35が各固定部(不図示)に回動可能に連結されている。
また、リアシート30は、シートクッション31の後端とシートバック32の下端とがアーム30aを介して回動可能に連結されており、着座位置(図1参照)と収納位置(図2参照)との間で移動可能に構成されている。
次に、リアシート30の収納方法の詳細について図1および図2を参照して説明する。まず、フロア10は、車室内の床面を構成するものであって、前方から後方に向けて順に、フロントフロア11、ミッドフロア12、リアフロア13を備えている。
フロントフロア11の前部には、左右一対のフロントシート20,20が配置されている。フロントフロア11の後部およびミッドフロア12には、左右一対のリアシート30,30が配置されている。リアフロア13の上方は、リアシート30を着座位置に設定したときに、荷室40(荷物スペース)として機能する。これら、フロントフロア11、ミッドフロア12およびリアフロア13は、ボルト、溶接などによって互いに固定されている。
フロントフロア11の後部には、リアシート30の前脚部33を回動可能に連結する固定部33cが配置されるとともに、その上方にリアシート30のシートクッション31の一部が位置している。
ミッドフロア12は、フロントフロア11の後端から上方へ傾斜して延びる傾斜面12aと、傾斜面12aの上端から後方へ水平に延びる水平面12bと、を有している。この傾斜面12aおよび水平面12bには、リアシート30を回動可能に連結するための固定部34aがボルト(不図示)によって締結されている。このように、ミッドフロア12の水平面12bは、フロントフロア11よりも上方に位置している。
また、リアシート30のシートバック32に固定された後脚部34は、シートクッション31から下方に延びて配置され、固定部34aに回動可能に連結されている。また、リアシート30のシートクッション31の表面31aは、フロントシート20のシートクッション21の表面21aと略同じ高さになるように構成されている(図1参照)。
リアフロア13は、車両後方に向けて下がる傾斜面13aを有している。なお、傾斜面13aの後端部には、傾斜面13a上に収納された荷物が車外に落ちるのを防止するためのストッパ43が設けられている。このストッパ43は、車幅方向に延びる略板形状を呈し、図2に示す側面視においてL字状に形成されている。
このように構成されたフロア10上に配置されたリアシート30は、図1に示す着座位置から前方且つ下方に移動させることで、収納位置に設定(いわゆる、ダイブイン)可能に構成されている。
すなわち、図1に示すリアシート30の着座位置において、例えばリアシート30の着座状態を解除する図示しないレバーを操作して、シートバック32を前方へ傾動させることにより、前脚部33の上端部がシートクッション31の下部に対して回動するとともに前脚部33が固定部34aに対して回動し、さらに後脚部34が固定部34aに対して回動する。
このとき、シートバック32が、シートクッション31上に向けて倒れ込みながら、シートクッション31が前方へ移動するとともに降下する。そして、図2に示すように、シートバック32の背面32aが上向きの状態で、シートクッション31上にシートバック32が接するようにして重なり、前脚部33が略水平に倒れ込んで、シートクッション31がフロア10上に接する状態になる。
これにより、リアシート30は、図1に示す着座位置(着座状態)から図2に示す収納位置(収納状態)に至り、リアシート30のシートバック32の背面32aの高さ位置がフロントシート20のシートクッション21の表面21aよりも低い位置、換言すると、フロントシート20をフルリクライニングしたときにフロントシート20のシートバック22の背面22bがリアシート30(シートバック32の背面32a)と接触しない位置になり、フロントシート20がフルリクライニング可能な状態になる。
図1に戻って、荷室40は、リアシート30,30と図示しないテールゲートとの間の車両後部の空間であり、左右の側面に樹脂製のサイドライニング40aが配設されている。このサイドライニング40aは、車両1のボディの一部を構成するサイドパネル1a(図5参照)の内側(荷室40側)に配設され、内側(車室内)の壁面を構成する部材である。なお、図1では、右側のサイドライニング40aのみを図示しているが、左側についても同様にサイドパネルの内側にサイドライニングが配設されている。また、以下では、車室内の右側のみを図示して説明し、左側については同様に構成されているとして、重複した説明を省略する。
また、荷室40内には、フロアボード41が設けられている。このフロアボード41は、略四角板状を呈し、その左右の側縁部がサイドライニング40aに形成された支持部42a(図2参照)によって、フロアボード41が水平に支持されるように構成されている。また、サイドライニング40aには、支持部42a(図2参照)よりも上方に支持部42b,42cが形成され、フロアボード41を図1に示す状態よりも上方で水平に支持できるように構成されている(図2参照)。
また、荷室40には、開口2の下部に、側面視(図10参照)L字状に形成されたストッパ43が設けられている。このストッパ43は、開口2の下部を閉塞するとともに開口2の下端部からフロアボード41の高さ位置まで延びる垂直板43aと、この垂直板43aの上端縁部から前方へ延びる水平板43bとで構成され、フロアボード41が下段の支持部42a(図2参照)に支持されているときに、水平板43bの前端縁部がフロアボード41の後端縁部と当接して、フロアボード41と水平板43bとが面一となるように構成されている。また、垂直板43aには、車両1の開口2と係合する図示しない係合手段が設けられ、図1に示すような状態を保持できるようになっている。
隔壁50は、左右のサイドライニング40a間の幅と略同一に形成され、横長四角形状を呈するように構成されている。また、隔壁50は、左右の側面51a,51b(図3参照)に一対のフック52,53が間隔を置いて突出するように構成されている。フック52,53は、それぞれサイドライニング40aに設けられたブラケット60に支持されるように構成されている。なお、図1では、後記する樹脂カバー80の図示を省略している。
一方(上側)のブラケット60は、リアシート30のシートバック32の後方近傍、かつ、背面32aの上部に配置され、車両1のサイドパネル(車両側面)1a(図5参照)に補強部材72を介して固定されている。他方(下側)のブラケット60は、シートバック32の後方、かつ、前記一方のブラケット60よりも下方および前方に配置され、サイドパネル(車両側面)1a(図5参照)に補強部材73を介して固定されている。なお、サイドパネル1aは、鋼板をプレス成形などで構成したものであり、剛性を有する部材である。
このように、隔壁50のフック52,53をブラケット60,60に支持させることにより、隔壁50がリアシート30,30のシートバック32,32の背面32aに沿って配置されるようになっている。
図3(a)は隔壁表面を示す平面図、(b)は隔壁裏面を示す平面図である。
図3(a)に示すように、隔壁50は、左右に細長い樹脂製の板部51を有し、この板部51の左右側面51a,51bにフック52,53を備えている。図3(a)に示す隔壁50は、表面を示しており、表面全体にわたって平坦に形成されている。また、フック52は、フック53よりも板部51の角部から離れた位置に配置されている。
フック52,53は、金属(鉄)など剛性を有する材料で形成され、円柱部52a,53a(図5参照)を有している。この円柱部52a,53aは、板部51の左側面51aから左側方に突出し、右側面51bから右側方に突出している。円柱部52a,53aの先端には、円盤形状を呈するフランジ52b,53bが形成されている。なお、板部51の左右側面51a,51bには、フック52,53の基端部の周囲を覆うフックカバー54a,54bが設けられ、フック52,53周辺の板部51の内部を覆うように構成されている。
図3(b)に示すように、隔壁50は、板部51の裏面に左右方向に延びる複数本の溝51c,51d,51e,51fが形成されている。これらの溝51c,51d,51e,51fは、板部51の左右側面51a,51bの近傍まで延びている。
また、隔壁50は、板部51内に鉄などで形成された補強用の四角筒材55,56を備えている。四角筒材55,56は、左右に直線状に延びて形成され、四角筒材55が左右のフック52,52間に配設され、四角筒材56が左右のフック53,53間に配設されている。四角筒材55,56は、左右方向の両端部において、ボルトBT,BTを介して板部51に固定されている。また、四角筒材55,56は、左右方向の中央部において、リベットRを介して板部51に固定されている。
図4(a)は図3(b)のA−A線断面図、(b)は図3(b)のB−B線断面図、(c)は図3(b)のC−C線断面図である。
図4(a)に示すように、溝51c,51d,51e,51fは、板部51の裏面51tから表面51sに向けて垂直に延びるとともに、板部51の内部が5つの中空部Q1,Q2,Q3,Q4,Q5に順に区画されている。上側の中空部Q1の幅が最も短く形成され、中空部Q2、Q5が最も長く形成され、中空部Q3,Q4が中空部Q1と中空部Q2,Q5の間の幅で形成されている。なお、板部51の左右両端部分は、中空部Q1〜Q5が幅方向(上下方向)に連通している。
四角筒材55は、中空部Q2に配置され、四角筒材56は、中空部Q5に配置されている。また、四角筒材55,56は、四角筒材55,56と板部51の表面51sおよび裏面51tとの間に不織布からなるシート材57,57が配設されている。このシート材57は、四角筒材55,56の長手方向(左右方向)に沿って帯状に配設されている。
図4(b)に示すように、フック52は、円柱部52aの基端に四角筒材55内に延びる四角柱形状を呈する固定部52cを有している。固定部52cは、その先端(内側端)が内側のボルトBTの位置よりも内方へ延びるように構成されている。また、固定部52cには、ボルトBT,BTが対応する位置に、ボルトBTが螺合されるねじ穴52d,52dが形成されている。
四角筒材55には、ボルトBTが挿通されるボルト挿通孔55aが形成されている。板部51の裏面51tには、ボルトBTが挿通されるとともにワッシャW2,W2が重ねて挿入される貫通孔51gが形成されている。この貫通孔51gは、ボルト挿通孔55aよりも大径に形成されている。
これにより、フック52のねじ穴52dと四角筒材55のボルト挿通孔55aと板部51の貫通孔51gとを位置決めした状態において、貫通孔51g内にワッシャW2,W2を重ねて配置し、ボルトBTを、貫通孔51gの内径よりも大径に形成されたワッシャW1、ワッシャW2,W2、ボルト挿通孔55aに挿通し、ねじ穴52dに螺合することで、フック52、四角筒材55および板部51が互いに固定される。
なお、本実施形態では、ボルトBTとワッシャW1,W2,W2を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、段付きボルトを使用してワッシャW1,W2,W2を省略するようにしてもよい。これにより、隔壁50の組立作業を簡略化できる。また、図4(b)では、フック52と四角筒材55との固定方法について説明したが、フック52と四角筒材56、フック53と四角筒材55、フック53と四角筒材56の固定についても同様に構成されている。
図4(c)に示すように、四角筒材56は、左右方向の中央部に挿通孔56aが形成され、この挿通孔56aと対応する板部51の裏面51tに挿通孔56aよりも若干大径の貫通孔51hが形成されている。これにより、挿通孔56aと貫通孔51hとを位置決めした状態において、リベットRを貫通孔51h、リベット挿通孔56aに順に挿通し、リベットRの先端をかしめることにより、四角筒材56と板部51とが互いに固定される。なお、図4(c)では、四角筒材56と板部51との固定方法について説明したが、四角筒材55と板部51との固定についても同様に構成されている。
図5は本実施形態に係る車両用荷室内構造の要部を示す斜視図である。
図5に示すように、隔壁50は、フック52,53がブラケット60,60に支持されるように構成されている。また、ブラケット60は、ブラケット本体62(63)と樹脂カバー80とで構成され、補強部材72,73を介して車両1の鋼板をプレス成形などによって形成したサイドパネル1a(車両側面)に固定されている。なお、図5では、サイドライニング40aの図示を省略している。
ブラケット本体62は、例えば鉄板を折り曲げて略四角箱型に形成したものであり、フック52が挿入される切欠部61が形成されている。この切欠部61は、フック52のフランジ52bが挿通される第1切欠部61aと、フック52の円柱部52aを上下方向に案内する第2切欠部61bと、フック52の円柱部52aを前方に移動可能に案内する第3切欠部61cと、を有している。また、第1切欠部61aないし第3切欠部61cは、連続して形成されている。
第1切欠部61aは、前後に細長い略四角形状を呈し、ブラケット本体62の上面60aに形成されている。第2切欠部61bは、上下方向に細長い形状を呈し、ブラケット本体62の内側面60bに形成されている。第3切欠部61cは、四角形を呈し、第2切欠部61bの下端から前方に延びて形成されている。また、第2切欠部61bおよび第3切欠部61cは、フック52の円柱部52aの直径よりも幅広に形成されている。また、第3切欠部61cの幅(上下方向の高さ)は、フランジ52bの径よりも短く(幅狭に)形成されている。
また、ブラケット本体62の内側面60bには、第2切欠部61bの後方と第3切欠部61cの前方に、後記する樹脂カバー80を固定するためのねじ穴60c,60dが形成されている。なお、図5では、フック52が挿入されるブラケット本体62について説明したが、フック53が挿入されるブラケット本体63についても同様に構成されている。
補強部材72は、ブラケット本体62を固定するものであり、例えば鉄製のパイプで形成され、サイドパネル1aの内面(車室側の面)に前後方向に沿って略直線状に延びて配置されている。また、補強部材72は、前端部72aおよび後端部72bにボルト締結用の孔72a1,72b1が形成され、図示しないボルトを介して、車両1のサイドパネル1aに固定されている。また、補強部材72には、フック52が挿入されるブラケット本体62が溶接などによって固定されている。
補強部材73は、ブラケット本体63を固定するものであり、例えば鉄製のパイプでクランク状に形成され、サイドパネル1aの内面に前部が後部よりも下方に位置するように配置されている。また、補強部材73は、前端部73aおよび後端部73bにボルト締結用の孔73a1,73b1が形成され、図示しないボルトを介して、車両1のサイドパネル1aに固定されている。また、補強部材73には、フック53が挿入されるブラケット本体63が溶接などによって固定されている。
図5に示すように、ブラケット本体62,63には、それぞれ樹脂カバー80が設けられている。この樹脂カバー80は、略L字状に形成されたものであり、ブラケット本体62の上面60aに配置される上面部80aと、内側面60bに配置される側面部80bとを有する。
また、樹脂カバー80には、ブラケット本体62の切欠部61に挿入される掛止部81が上面部80aおよび側面部80bに対して凹形状を呈するように一体に形成されている。この掛止部81は、樹脂カバー80の上面部80aから鉛直方向下方に延びる上面視矩形状の挿入部81aを有し、側面部80bに挿入部81aと連通する側面視矩形状の連通部81bが形成されて構成されている。これにより、フック52の円柱部52aおよびフランジ52bを上下方向に案内できるようになっている。
挿入部81aの底面81a1は、連通部81bの底面81b1よりも下方に位置し、円柱部52aの周面が底面81b1に位置したときに、フランジ52bの周面が底面81a1に当接するように構成されている。また、連通部81bの前後の側面81b2,81b3間の幅は、フック52の円柱部52aの周面が接して摺動可能となる寸法で形成されている。また、樹脂カバー80の側面部80bには、連通部81bの前後において前記ねじ穴60c、60dに対応する位置に、ねじ挿通孔80c,80dが形成されている。
このように構成された樹脂カバー80を掛止部81が第1切欠部61aおよび第2切欠部61b内に位置するように挿入し、図示しないねじをねじ挿通孔80c,80dに挿通し、ねじ穴60c,60dに螺合させることにより、樹脂カバー80がブラケット本体62の上面60aおよび内側面60bの表面を覆うようにして取り付けられる。なお、ブラケット本体63に樹脂カバー80を取り付ける構成についても前記と同様である。
図6はサイドライニングの外側から樹脂カバーを見たときの斜視図である。
図6に示すように、ブラケット60(樹脂カバー80が取り付けられたブラケット本体62)には、その表面にサイドライニング40aが配置される。サイドライニング40aには、樹脂カバー80の一部を露出させる切欠部40bが形成されている。この切欠部40bは、掛止部81の挿入部81aと、連通部81bと、前記連通部81bとねじ挿通孔80dとの間の側面部80bの一部(破断部)80b1と、をサイドライニング40aから露出させるようになっている。また、切欠部40bを図6に示す形状に設定することにより、樹脂カバー80とブラケット本体62(63)とのねじ止め部分をサイドライニング40aによって覆い隠すことができるようになっている。なお、図6の切欠部40bの形状は、挿入部81a、連通部81bおよび一部80b1を露出させることができるものであれば、本実施形態の形状に限定されるものではない。
なお、側面部80bの一部(破断部)80b1の前後方向の長さL1は、ブラケット本体62に形成された第3切欠部61cの前後方向の長さL2(図5参照)と略同じ寸法に設定されている。
図7は図6のD−D線断面図である。なお、図7は、フック52(53)の図示奥側に見える部分を省略し、概略的に図示している。図7に示すように、樹脂カバー80は、ブラケット本体62(63)と、サイドライニング40aとの間に挟み込まれるように配置されている。
すなわち、サイドライニング40aから露出する樹脂カバー80にフック52(53)が掛止される。フック52(53)は、円柱部52a(53a)が樹脂カバー80の連通部81b(図6参照)の底面81b1と接するとともに、フランジ52b(53b)が挿入部81aの底面81a1と接するように掛止部81内において支持される。
このように構成された隔壁50は、フック52がブラケット本体62の樹脂カバー80に形成された掛止部81に上方から挿入される。すなわち、フック52のフランジ52bが挿入部81aに挿入されるとともに、フック52の円柱部52aが連通部81bに挿通されることで、フック52が掛止部81において掛止される。また、フック53についても同様にして、ブラケット本体63の樹脂カバーに掛止される。これにより、隔壁50が若干傾斜したリアシート30の背面32aに沿うようにしてサイドライニング40a側に支持される。
次に、本実施形態に係る車両用荷室内構造の作用効果について図8ないし図11を参照して説明する。図8は荷物衝突時の状態を示す車両側面図を示し、(a)フロアボードが下段に位置するとき、(b)はフロアボードが上段に位置するとき、図9(a)は通常時の樹脂カバーとフックとの位置関係を示す平面図、(b)は車両衝突時の荷重受け構造を示す平面図、図10は車両衝突時の別の荷重受け構造を示す斜視図、図11は隔壁の別の使用形態を示す車室内を示す側面図である。なお、図9ではサイドライニング40aの図示を省略し、図10ではサイドライニング40aおよび樹脂カバー80の図示を省略している。また、図9はフック52(53)を軸方向内側から外側に向けて見た場合を示している。
図8(a)に示すように、荷室40のフロアボード41が下段に配置されている場合、例えば急ブレーキなどでフロアボード41上に収容された荷物C1が前方へ移動したとしても、荷物C1の荷重を隔壁50で受け止めることができ、荷物C1が荷室40よりも前方の乗員スペースに侵入するのを防止できる。
また、図8(b)に示すように、荷室40のフロアボード41が上段に配置されている場合、例えば急ブレーキなどでフロアボード41上に収容された荷物C1が前方へ移動したとしても、荷物C1の荷重を隔壁50で受け止めることができ、荷物C1が荷室40よりも前方の乗員スペースに侵入するのを防止できる。
このように、隔壁50をシートバック32の背面32aに沿って配置することにより、荷物C1が乗員スペースに侵入するのを防止することができる。ちなみに、シートバック32の固定点(本実施形態では、シートクッション31と連結点のみ)が少ない場合、荷物C1がリアシート30のシートバック32の背面32aの上部(シートクッション31とシートバック32との連結点から遠い側)に衝突する方が、背面32aの下部(シートクッション31とシートバック32との回動連結点に近い側)に衝突するよりもシートバック32に作用する荷重が大きくなるため、シートバック32をシートクッション31との連結点だけではなく、車体側(サイドパネル側)と支持させるロック機構が必要になる。しかし、本実施形態では、隔壁50をシートバック32の背面32aに沿って配置して、荷物C1がシートバック32に衝突するのを防止できるので、シートバック32と車体側とのロック機構を不要にできる。これにより、シートバック32の強度を弱めることができ、シートバック32を小型化(薄型化)することが可能になる。
図9(a)に示すように、荷物が衝突しない通常時には、隔壁50のフック52(53)の円柱部52a(53a)が樹脂カバー80の連通部81bの底面81b1と前後方向の側面81b2,81b3の3点で支持されることにより、走行時などに隔壁50ががたつくのを防止することができる。
図9(b)に示すように、側面部80bの一部(判断部)80b1とブラケット本体62の第3切欠部61cとが重なるようにして構成されているので、荷物が隔壁50に衝突したときには、フック52(53)の円柱部52a(53a)に力F1が作用することにより、樹脂カバー80の側面部80bの一部(破断部)80b1が前方に向けて破断する。そして、フック52(53)の円柱部52a(53a)が樹脂カバー80の内側に配置されたブラケット本体62(63)の第3切欠部61cの前端面61c1に突き当たることにより、フック52(53)の前方への移動が制限される。よって、隔壁50に荷物が衝突したとしても、フック52,53とブラケット本体62,63の剛体同士で係合することで、隔壁50がそれ以上前方へ移動するのが制限され、荷物が乗員スペースを越えて侵入するのを防止することができる。
なお、樹脂カバー80とブラケット本体62(63)とを備えたブラケット60は、図6に示したように、サイドライニング40aから掛止部81だけではなく、樹脂カバー80の側面部80bの一部(破断部)80b1が露出するように構成されているので、図9(b)に示すように、樹脂カバー80が破断したとしても、サイドライニング40aが破断することがなく、仮に部品交換する場合には、樹脂カバー80の交換だけで済ますことができる。
また、図10に示すように、隔壁50に対して図9(b)に示す場合よりもさらに大きな力F2が円柱部52a(53a)に作用した場合には、円柱部52a(53a)がブラケット本体62(63)の第3切欠部61cの前端面61c1(図9(b)参照)に突き当たった後、ブラケット本体62(63)を変形させるような力F2が作用する。このとき、フック52(53)に形成されたフランジ52b(53b)が第3切欠部61cの周縁部の側面部80bに引っ掛かることで、ブラケット本体62(63)とフック52(53)との係合状態が外れるのを防止することができる。図10に示すように、隔壁50に対して荷物が衝突して過大な荷重が作用したとしても、フック52(53)がブラケット本体62(63)から外れるのを防止できるので、荷物が隔壁50を越えて乗員スペースに侵入するのを防止することができる。
なお、図11に示すように、隔壁50のフック52,53をサイドライニング40aに設けられた支持部44(図2参照)と下段のブラケット60の支持部に掛止させて水平に支持させるとともにフロアボード41を支持部42b,42cに支持させ、リアシート30を図1に示す着座位置から収納位置に移動させてフロントシート20をフルリクライニングすることにより、フロントシート20のシートクッション21の表面21aおよびシートバック22の表面22aと、隔壁50の上面(表面)50aと、フロアボード41の上面41aとで略平らな面を構成することができる。
以上説明したように、本実施形態の車両用荷室内構造では、図1に示すように、リアシート30のシートバック32の背面32aに沿って隔壁50を配置するとともに、隔壁50の左右の側面51a,51b(図3参照)に設けたフック52,53を車両1の左右のサイドライニング40aに配置されたブラケット60,60(ブラケット本体62,63+樹脂カバー80)に掛止し、かつ、ブラケット60,60を車両1のサイドパネル1a(側面)に設けられた補強部材72,73に固定するように構成されている。これによれば、隔壁50のフック52,53がブラケット60,60に掛止されて保持されているので、隔壁50がブラケット60から外れるのを防止することができ、しかもブラケット60,60が車両1のサイドパネル1a(側面)に設けられた補強部材72,73に固定されているので、ブラケット60,60がサイドライニング40aから外れるのをより確実に防止できる。よって、急ブレーキなどで荷室40の荷物が隔壁50に衝突したときに、荷物が荷室40から前方(乗員スペース)へ移動するのを確実に防止することができる。
ところで、シートバック32自体で荷物からの衝撃を防ぐ構造にすると、シートバック32自体に強度を持たせる必要があり、シートバック32が大型化したり、また、シートバック32を支持するための固定点をシートクッション31との連結部とは別に設ける必要がある。しかし、本実施形態では、隔壁50を設けることにより、シートバック32を小型化でき、シートバック32を支持するための固定点をシートクッション31との連結部のみにすることができ、シートバック32の構成を簡略化することができる。
また、補強部材72,73をパイプで構成することにより、強度を確保しつつ軽量化することが可能になる。また、補強部材72,73をパイプ形状のものにすることで、サイドパネル1aとサイドライニング40aとの間に配置する際に、パイプを折り曲げて配置することで、他の部品を避けながら配置することが容易になる。
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、車両用荷室内構造を適用する車両のタイプとしてワンボックスタイプに限定されるものではなく、乗員スペースと荷物スペースとがひとつのスペースからなる車両であれば、ハッチバック、ステーションワゴン、ミニバン、SUVなど各種タイプの車両に適用することができる。
また、図1および図2に示す隔壁50の上下方向の長さは、本実施形態に限定されるおのではなくシートバック32の背面32aの全体を覆う形状であってもよい。