JP5506914B2 - フルオロアルカンスルフィン酸エステルの製造方法 - Google Patents

フルオロアルカンスルフィン酸エステルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明の主題は、フルオロアルカンスルフィン酸エステルの製造方法である。
本発明は、特に、一般に「トリフリン酸」と呼ばれているトリフルオロメタンスルフィン酸のエステルの製造方法に関するものである。
「トリフリネート」と呼ばれる場合が多いトリフリン酸のアルキル又は芳香族エステルは、文献に記載されている物質である。
該エステルの様々な合成方法が提案されている。
一つは、アルコールとトリフリン酸の活性化形(塩化物、フッ化物)とを反応させることからなる。
例えば、Dennis T.Sauer及びJeanne M.Shreeveの[Inorganic Chemistry(1971),10(2),358−362]には、フッ化トリフルオロメタンスルフィニルにメタノールを付加することが記載されている。
同様に、塩基性媒体中でエタノールを塩化トリフリニルに付加させることがJames B.Hendrickson及びPaul L.Skipperの[Tetrahedron(1976),32(14),1627−35]に記載されている。
これら2つの例では、トリフルオロメタンスルフィニル単位は求電子剤の役割を果たし、この求電子剤は、その場で生成され得る。
T.Billard、A.Greiner及びB.Langloisの[Tetrahedron(1999),55,7243−50]には、酢酸エチル中においてトリフリン酸ナトリウムをオキシ塩化リンで活性化させることが記載されている。フェノールの添加により、トリフリン酸のフェニルエステルF3C−SO−OPhが73%の収率で得られる。
別のアクセス手段は、アルキル化剤へのトリフリン酸イオンの求核攻撃の原理に基づくものである。
トリフリン酸カリウムと塩化エチルとの反応[James B.Hendrickson、Aziz Giga、James Wareing,J.Amer.Chem.Soc.(1974),96,2275]では、トリフリン酸エチルF3C−SO−OC25は得られず、主としてS−アルキル化生成物、すなわち式F3C−SOO−C25のスルホンが得られる。
トリフリン酸アルキルを得るために、トリフリン酸カリウムとp−ニトロベンゼンスルホン酸イソプロピルとを反応させることが提案されている[James Hendrickson外,loc.cit.]。さほど一般的ではない反応剤を使用することに加えて、得られるトリフリン酸イソプロピルの収率は、23〜66%の範囲である。
また、トリフリン酸アルキルを得る際の困難さは、次の反応によって示されるように、トリフリン酸アルキルがスルホンに異性化される能力を有するという点にもある[James Hendrickson外,loc.cit.]:
Figure 0005506914
Dennis T.Sauer及びJeanne M.Shreeve,Inorganic Chemistry(1971),10(2),358−362 James B.Hendrickson及びPaul L.Skipperの[Tetrahedron(1976),32(14),1627−35] T.Billard、A.Greiner及びB.Langloisの[Tetrahedron(1999),55,7243−50] James B.Hendrickson、Aziz Giga、James Wareing,J.Amer.Chem.Soc.(1974),96,2275
本出願人は、トリフリン酸エステルを得るのを可能にすると同時に、上記欠点を克服する方法を提供することを提案する。
フルオロアルカンスルフィン酸エステルの製造方法であって、フルオロアルカンスルフィン酸と有機カーボネートとを反応させてフルオロアルカンスルフィン酸エステルと二酸化炭素とを形成させ、該二酸化炭素を該反応の間に除去することを含むことを特徴とする前記製造方法を見出した。これは本発明の主題を構成する。
本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、トリフリン酸エステルは、トリフリン酸と炭酸ジアルキルとを反応させることによって製造される。
本発明の理解を容易にするために本発明の方法の反応スキームを以下に与えるが、ただし、これは、本発明の範囲を該スキームに結びつけるものではない:(Rはアルキル基を示す)。
Figure 0005506914
本発明の方法によれば、エステル交換反応を実施し、トリフリン酸アルキルと、二酸化炭素と、有機カーボネートに由来するアルコールとが生成される。
本発明の方法の好ましい変形例の一つによれば、二酸化炭素が形成されたときに該二酸化炭素を除去することで、フルオロアルカンスルフィン酸エステルの生成が促進される。
より詳しくは、本発明の方法は、次式に相当するフルオロアルカンスルフィン酸に適用される:
Figure 0005506914
式中、
・Xは水素原子又は弗素原子を表し、
・nは1〜8の数を表す。
特に、本発明は、式(I)(式中、Xは弗素原子である。)に相当するペルフルオロアルカンスルフィン酸に関するものである。
式(I)において、xは1〜8の範囲にあるが、ただし好ましくは1に等しい。
フルオロアルカンスルフィン酸の好ましい例としては、次のものが挙げられる:
・ジフルオロメタンスルフィン酸、
・トリフルオロメタンスルフィン酸、
・ペルフルオロブタンスルフィン酸、
・ペルフルオロオクタンスルフィン酸。
本発明は、トリフルオロメタンスルフィン酸又はトリフリン酸のエステルの製造に完全に適している。
本発明の方法によれば、フルオロアルカンスルフィン酸と有機カーボネートとを反応させる。
本発明の方法に関与する有機カーボネートは、特に次の一般式に相当する:
1−O−CO−O−R2 (II)
式中、
・R1は次のものを表す:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、
5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基及び/又は1個又は2個のハロゲン原子で置換された、5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
フェニル基、
1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基及び/又は1個又は2個のハロゲン原子で置換されたフェニル基、
・R2は次のものを表す:
1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、
5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基及び/又は1個又は2個のハロゲン原子で置換された、5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
フェニル基、
1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基及び/又は1個又は2個のハロゲン原子で置換されたフェニル基、
・R1及びR2は、一緒になって2〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を形成することができる。
1はR2とは異なっていてよいが、単純化のために、R1はR2と同一であることが望ましい。
1及びR2基の例としては、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル;シクロヘキシル基;フェニル基;又はハロゲン原子、好ましくは塩素若しくは臭素又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基でオルト及びオルト’置換されたフェニル基が挙げられる。
式(II)において、R1及びR2は、アルキレン基、好ましくはエチレン又はプロピレン基を形成することができる。
有機カーボネートの例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸t−ブチルフェニル、炭酸エチレン及び炭酸プロピレンが挙げられる。
上記リストにおいては、炭酸ジメチル又は炭酸ジエチルが優先的に選択される。
フルオロアルカンスルフィン酸に対して表される有機カーボネートの使用量は、通常は少なくとも化学両論量に等しい。
すなわち、有機カーボネートのモル数対フルオロアルカンスルフィン酸のモル数の比は、有利には1〜2の範囲にあり、好ましくは1〜1.2の範囲にある。
反応媒体中における水の存在は、反応収率に影響を及ぼす。すなわち、本発明の方法は無水条件下で実施することが好ましい。反応体が無水であることを確保するよう注意すべきである。媒体中に約1重量%までの範囲の水の量が許容できる。
反応温度は、エステル交換反応を達成し、かつ、競合する異性化反応を阻害するのに十分であるように選択される。
反応温度は、好ましくは0〜100℃、好ましくは60〜95℃の間で選択される。
反応は、有利には大気圧下で実施される。
また、それよりもわずかに低い又は高い圧力を使用することもできる。
反応は、好ましくは窒素又は希ガス、好ましくはアルゴンであることができる不活性ガスの雰囲気下で実施される:特に、低コストのため窒素が好ましい。
実用的観点から言えば、本発明に従う方法は、実施するのが簡単である。
様々な反応体を任意の順序で導入できる。
好ましくは、酸を有機カーボネートにまとめて又は連続的に導入する。
反応媒体を所望の温度にすると同時に、該反応媒体を撹拌した状態に保持する。
この反応の間に二酸化炭素が形成するので、該反応の間にこれを除去する。
本発明の好ましい一実施形態によれば、二酸化炭素は、形成したときに除去される。
放出された二酸化炭素は、随意に、塩基性溶液を使用して、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む吸収カラムに導入することによって捕捉することもできる。
反応時間は、2〜20時間の範囲、好ましくは5〜10時間の範囲である。
反応の終了時に、フルオロアルカンスルフィン酸エステルと、出発カーボネートに相当するアルコールとが得られる。
フルオロアルカンスルフィン酸エステルは、従来の分離技術に従って、特に好ましくは5〜200mbarの範囲の減圧下での蒸留によって、或いは結晶化によって、この媒体から回収される。
本発明の方法は、有利には反応媒体による腐食に耐えることのできる装置で実施される。
この目的のために、反応媒体と接触する部分については、HASTELLOYという商標で販売されているモリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素及びタングステンを主成分とする合金や、INCONEL(商標)という商品名で販売されている銅及び/又はモリブデンが添加されたニッケル、クロム、鉄、マンガンの合金、特にHASTELLOY C276又はINCONEL 600、625若しくは718合金などの耐食材料が選択される。
また、オーステナイト鋼[Robert H.Perry外,Perry’s Chemical Engineers’ Handbook,第6版(1984),23−44頁]、特に304、304L、316又は316Lステンレス鋼などステンレス鋼も選択できる。多くとも22重量%、好ましくは6〜20重量%、より好ましくは8〜14重量%のニッケル含有量を有するステンレス鋼が使用される。
この304及び304L鋼は8〜12%の範囲のニッケル含有量を有し、316及び316L鋼は、10〜14%の範囲のニッケル含有量を有する。316L鋼が特に使用される。
また、随意に腐食防止剤、例えばシリカやホウ酸が添加されたガラス状の鋼も使用できる。
本発明の方法の様々な工程の全ては、連続的に又はバッチ式で実施できる。
本発明の方法は、多くの利点を有するため特に興味深いものである。
この方法は、スルホンの形成を生じない、単純でかつ経済的な方法である。
以下に本発明の例示的具体例を与える。これらの例は、単なる例示であって、事実上限定ではない。
これらの例において、得られる転化率及び収率を定義する。
転化率(DC)は、転化した基質(トリフルオロメタンスルフィン酸)のモル数対使用した基質(トリフルオロメタンスルフィン酸)のモル数の比率に相当する。
収率(RY)は、形成した生成物(トリフルオロメタンスルフィン酸エステル)のモル数対使用した基質(トリフルオロメタンスルフィン酸)のモル数の比率に相当する。

13.4gのトリフルオロメタンスルフィン酸(0.1モル)を20mLのガラス反応容器に装入する。
5.9gの炭酸ジエチル(0.05モル)を添加し、そしてこの混合物を10時間にわたって90℃にする。
反応の終了時に、全体を周囲温度(20℃)に戻す。
粗反応媒体の19F NMR分析から、49%のトリフリン酸の転化率及び49%のトリフリン酸エチルの収率が示された。
反応器をVigreuxカラムに載せ、そして175mbarの圧力下で全体を58℃の温度にする。
蒸留画分(9g)を38℃で回収した。これは、トリフルオロメタンスルフィン酸エチルを89重量%含有する無色の液体の画分であった。

Claims (15)

  1. フルオロアルカンスルフィン酸エステルの製造方法であって、フルオロアルカンスルフィン酸と有機カーボネートとを反応させてフルオロアルカンスルフィン酸エステルと二酸化炭素とを形成させ、該二酸化炭素を該反応の間に除去することを含むことを特徴とする、前記製造方法。
  2. 前記フルオロアルカンスルフィン酸が次式に相当することを特徴とする、請求項1に記載の方法:
    Figure 0005506914
    式中、
    ・Xは水素原子又は弗素原子を表し、
    ・nは1〜8の数を表す。
  3. 前記フルオロアルカンスルフィン酸がジフルオロメタンスルフィン酸、ペルフルオロアルカンスルフィン酸、ペルフルオロブタンスルフィン酸又はペルフルオロオクタンスルフィン酸であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記フルオロアルカンスルフィン酸がトリフルオロメタンスルフィン酸であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  5. 前記有機カーボネートが次の一般式:
    1−O−CO−O−R2 (II)
    に相当することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法:
    式中、
    ・R1は次のものを表す:
    1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、
    5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
    1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基及び/又は1個又は2個のハロゲン原子で置換された、5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
    フェニル基、
    1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基及び/又は1個又は2個のハロゲン原子で置換されたフェニル基、
    ・R2は次のものを表す:
    1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、
    5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
    1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基及び/又は1個又は2個のハロゲン原子で置換された、5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
    フェニル基、
    1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基及び/又は1個又は2個のハロゲン原子で置換されたフェニル基、
    ・R1及びR2は、一緒になって2〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を形成することができる。
  6. 前記有機カーボネートが式(II)(式中、R1及びR2基は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基;シクロヘキシル基;フェニル基;又はハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基でオルト及びオルト’置換されたフェニル基を表し、或いは、R1及びR2基は、アルキレン基を形成する。)に相当することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 前記有機カーボネートが炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸t−ブチルフェニル、炭酸エチレン又は炭酸プロピレンであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記有機カーボネートが炭酸ジメチル又は炭酸ジエチルであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 前記フルオロアルカンスルフィン酸に対して表される前記有機カーボネートの使用量は、該有機カーボネートのモル数対該フルオロアルカンスルフィン酸のモル数の比が1〜2の範囲となる量であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記反応を無水条件下で実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記反応温度が0〜100℃の間で選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記反応を大気圧下及び不活性ガス雰囲気下で実施することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記二酸化炭素が形成したときに該二酸化炭素を除去することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 前記フルオロアルカンスルフィン酸エステルを、フルオロアルカンスルフィン酸エステル及びアルコールを含む得られた媒体から蒸留又は結晶化によって回収することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 前記ペルフルオロアルカンスルフィン酸がトリフルオロメタンスルフィン酸であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
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