JP5378688B2 - フッ素化試薬組成物およびgem−ジフルオロ化合物の製造方法 - Google Patents

フッ素化試薬組成物およびgem−ジフルオロ化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フルオロアルキルアミン試薬とアミンとのフッ素化試薬組成物に関する。さらにそのフッ素化試薬組成物を用いて、医農薬中間体や液晶材料の原料等として極めて有用なgem−ジフルオロ化合物を製造する方法に関する。
N−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)ジエチルアミン(以下「CTT」と略す場合がある)及びその類縁体であるフルオロアルキルアミン試薬は、主にヒドロキシル基のフッ素化剤として幅広く使用されている。
また、gem−ジフルオロ化合物は、抗HIV薬、抗精神薬、糖尿病薬など、多くの医薬品の製造中間体として用いられている(例えば非特許文献1、非特許文献2、特許文献1、特許文献2)。また液晶材料の中間体としても用いられている(例えば特許文献3)。
CTT及びその類縁体などのフルオロアルキルアミン試薬は主にヒドロキシル基のフッ素化剤として幅広く使用されているが、これらのフッ素化剤は安定性に問題が有り、長期貯蔵安定でないことが一般的に知られている。
また、CTTはフッ素化試薬として使用され、主にヒドロキシル基のフッ素化剤として一般的に知られている。また、ヒドロキシル基以外にも、カルボン酸のフッ素化の例として非特許文献3が挙げられる。さらにアルデヒドのフッ素化の例として非特許文献4が挙げられる。しかしながら、アルデヒド官能基のジフルオロ化は反応収率が著しく悪い。CTTの類縁体であるN−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)ジエチルアミン(いわゆるPPDA)も、ヒドロキシル基のフッ素化剤として一般的に知られている。また、ヒドロキシル基以外にも、カルボン酸のフッ素化の例として非特許文献5が挙げられる。しかしながら、CTT及びその類縁体などのフルオロアルキルアミン試薬はアルデヒドやケトンと反応しにくいことが一般的に知られている。(非特許文献6)。
国際公開WO2005019168号パンフレット 国際公開WO03074500号パンフレット 特開2004-155755号公報 Tetrahedron Letters,46(30),5005-7;2005 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,15(17),3957-3961;2005 Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas,108(1),20-7;1989 Chemische Berichte,118(7),3004-10;1985 Journal of Fluorine Chemistry,23(4),383-8;1983 Org.React.,21,160(1974) しかしながら、gem−ジフルオロ化合物の要望が増してきたために、安価で安全に製造可能で、貯蔵安定なフッ素化剤を用いて、この種の高収率な製造技術が待望されている。
従って、本発明の目的は、安価で容易に製造可能なCTT及びその類縁体であるフルオロアルキルアミン試薬の貯蔵安定性を改善し、カルボニル官能基を高選択率、高収率でジフルオロ化する技術を提供することである。
前記課題に鑑み本発明者らは鋭意検討した結果、CTT及びその類縁体であるフルオロアルキルアミン試薬とフルオロアルキルアミン試薬以外のアミンを混合することにより、貯蔵安定性が改善することを発明した。またそのフッ素化試薬組成物もしくはそのフッ素化試薬組成物から誘導されたフッ素化剤を用いたgem−ジフルオロ化合物を高選択率、高収率で得る手段を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の概要は以下のとおりである。
(1) 一般式(1)
Figure 0005378688
(ただし、式中R、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数が1から4の低級アルキル基であり、Rは炭素数が1から3の低級アルキル基である。RとRは結合して環を構成してもよく、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で表されるフルオロアルキルアミン試薬および該フルオロアルキルアミン試薬以外のアミンからなるフッ素化試薬組成物。
(2) 一般式(1)で表されるフルオロアルキルアミン試薬が、N−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)ジエチルアミン、N−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)ジエチルアミンまたはN−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)ジメチルアミンである(1)に記載のフッ素化試薬組成物。
(3) 一般式(2)
Figure 0005378688
(ただし、式中Rは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、R、Rはヘテロ原子を含んでもよく、RとRが結合して環を構成してもよい。)
で表されるカルボニル化合物と、(1)または(2)に記載されたフッ素化試薬組成物を反応させて、一般式(3)
Figure 0005378688
(ただし、式中のR、Rは前記定義に同じ)
で表されるgem−ジフルオロ化合物を製造する方法であって、中性または酸性条件下で反応させることを特徴とするgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
(4) (1)または(2)に記載されたフッ素化試薬組成物からフルオロアルキルアミン試薬以外のアミンを除去して得たフッ素化剤と、一般式(2)
Figure 0005378688
(ただし、式中Rは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、R、Rはヘテロ原子を含んでもよく、RとRが結合して環を構成してもよい。)
で表されるカルボニル化合物とを反応させることを特徴とする一般式(3)
Figure 0005378688
(ただし、式中のR、Rは前記定義に同じ)
で表されるgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
(5) フッ化水素の存在下で反応を行うことを特徴とする(4)記載のgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
(6) 酸を添加して反応を行うことを特徴とする、(3)記載のgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
(7) 酸がフッ化水素であることを特徴とする、(6)記載のgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
(8) 一般式(2)および一般式(3)において、Rが置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、Rが置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、R、Rはヘテロ原子を含んでもよく、RとRが結合して環を構成してもよいものである(3)ないし(7)のいずれか1項に記載のgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
本発明により、安価で容易に製造可能なフッ素化剤であるCTTもしくはその類縁体の貯蔵安定性が向上し、またそのフッ素化試薬を用いてカルボニル化合物のジフルオロ化が高選択率、高収率で進行することが可能になり、高純度のジフルオロ化合物を低コストで製造することができる。
以下にさらに詳細に本発明を説明する。
本発明のフッ素化試薬組成物におけるフルオロアルキルアミン試薬は下記一般式(1)で表される化合物である。
Figure 0005378688
(ただし、式中R、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数が1から4の低級アルキル基であり、Rは炭素数が1から3の低級アルキル基である。RとRは結合して環を構成してもよく、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい。)
一般式(1)の式中のR、Rは炭素数が1から4の低級アルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。またこれらはヘテロ原子を含んでもよく、R、Rが結合して環を構成しても良い。例えばモルホリルなどが挙げられる。Rは炭素数が1から3の低級アルキル基であり、該アルキル基は場合によりフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子に置換されても良い。
一般式(1)で表されるフルオロアルキルアミン試薬としては、N−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)ジエチルアミン、N−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)ジエチルアミンまたはN−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)ジメチルアミンを挙げることができる。
一般式(1)で表されるフルオロアルキルアミン試薬に混合するフルオロアルキルアミン試薬以外のアミンは、特に制限されることはないが、好ましくはジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、コリジン、ジメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジイソプロピルアミン、トリプロピルアミンなどが挙げられる。特にジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンが好ましい。
一般式(1)で表されるフルオロアルキルアミン試薬に混合するフルオロアルキルアミン試薬以外のアミンの混合比は、特に制限されることはないが、好ましくは一般式(1)で表されるフルオロアルキルアミン試薬1モルに対してアミン量が0.01〜30モルである。特に好ましくは0.5〜5モルが好ましい。
本発明で用いられるカルボニル化合物は一般式(2)
Figure 0005378688
(ただし、式中Rは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、R、Rはヘテロ原子を含んでもよく、RとRが結合して環を構成してもよい。)
一般式(2)中のアルキル基とは、炭素数が1から20のアルキル基を意味し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ビシクロヘキシル、n−ノニル、n−デシルおよびn−ドデシルなどを挙げることができる。該アルキル基は場合によりハロゲン原子、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などの置換基により置換されていてもよい。
また、一般式(2)中のアリール基としては炭素数が6から20の芳香族基を意味し、例えばフェニル、メシチル、フェネチル、トリル、トリチル、ナフチル、アントラセニル、インドリル、およびビフェニル等を挙げることができる。アリール基は場合によりアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などの置換基により置換されていてもよい。また、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素を意味する。
一般式(2)で表されるカルボニル誘導体として好ましい化合物は、例えば4−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル、ベンズアルデヒド、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ヘプタノン、メチル−3−オキソペンタノエイト、アセトフェノン、シクロヘキサノン、1−アセチル−4−ピペリドンが挙げられるが、本発明はここに示した例に制限されるものではない。
また本発明で得られるgem−ジフルオロ化合物は一般式(3)
Figure 0005378688
(ただし、式中のR、Rは前記定義に同じ)
で表される。
このようなgem−ジフルオロ化合物の一例としては、4,4−ジフルオロシクロヘキシルカルボン酸エチル、α,α−ジフルオロトルエン、4,4’−ジクロロ−ジフェニル−ジフルオロメタン、4,4−ジフルオロヘプタン、メチル−3,3−ジフルオロペンタノエイト、1,1−ジフルオロ−1−フェニルエタン、1,1−ジフルオロシクロヘキサン、1−アセチル−4,4−ジフルオロピペリジン等を挙げることが出来るが、本発明はここに示した例に制限されるものではない。
本発明において、使用する代表的なフルオロアルキルアミン試薬の製造方法を下記に示す。
CTTは、Org.React.,21,158(1974)に記載の方法で製造することができる。
PPDAは、Bull.Chem.Soc.Jpn.,52,3377(1979)に記載の方法で製造することができる。
TFEDMAは、Z. Obsh. Khim 29 (1959) 158 に記載の方法で製造することができる。
本発明の反応では、溶媒を用いることができる。使用できる溶媒は、非プロトン性溶媒でフッ素化反応に不活性ならば、限定されるものではないが、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒等が好ましい。またこれらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、特にクロロホルム、ジクロロメタン、もしくはアセトニトリルが溶媒の極性、経済性、蒸留時に除去しやすい点で好ましい。
本発明のフッ素化試薬組成物の使用方法としては、(a)上記フッ素化試薬組成物中のフルオロアルキルアミン試薬以外のアミンを除去し、カルボニル化合物と反応させてgem−ジフルオロ化合物を製造する方法と、(b)上記フッ素化試薬組成物とカルボニル化合物を反応させる際に、酸を添加しgem−ジフルオロ化合物を製造する方法が挙げられる。
(a)のフッ素化反応の方法としては、通常一般式(2)のカルボニル誘導体を、必要ならば溶媒と共に反応器に仕込み、撹拌する。次にフッ素化試薬組成物からフルオロアルキルアミン試薬以外のアミンを除去したて得たフッ素化剤(以下、「フッ素化剤」と略することがある)を、または該フッ素化剤を溶剤に溶解した溶液を添加し、撹拌する。ここでフッ化水素を添加すると収率がさらに向上する。仕込む順序は特に限定されるものではなく、使用する薬剤をどの順序で仕込んでも良い。
(b)のフッ素化反応の方法としては、通常一般式(2)のカルボニル誘導体を、必要ならば溶媒と共に反応器に仕込み、撹拌する。次にフッ素化試薬組成物を、または溶剤に溶解したフッ素化試薬組成物を添加し、撹拌する。次に酸を添加して攪拌する。使用できる酸は、特に限定されるものではなく、フッ化水素、リン酸、硫酸が挙げられるが、これらの酸は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特にHFが、余分な不純物が混入しない点で好ましい。
仕込む順序は特に限定されるものではなく、使用する薬剤をどの順序で仕込んでも良く、またフッ素化試薬組成物は系中で発生させても良い。
フルオロアルキルアミン試薬の使用量としては、一般式(2)のカルボニル置換基に対して理論量以上であればよい。好ましくは一般式(2)のカルボニル置換基に対して、2当量以上、10当量以下であり、さらには2当量以上、3当量以下が好ましい。
フッ素化剤もしくはフッ素化試薬組成物を添加する際の温度は、−100〜100℃であればよいが、好ましくは−100〜50℃である。
フッ素化のための熟成温度は、−100〜200℃であればよいが、好ましくは−30〜100℃である。
この反応液から、蒸留などの常套手段により所望の反応生成物を分離取得することができる。
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。以下に、実施例、比較例に用いた化合物の名称とその略号を示す。
CTT:N−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)ジエチルアミン
PPDA:N−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)ジエチルアミン
TFEDMA:N−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)ジメチルアミン
CTTまたはその類縁体の分解率は19FNMRにて測定を実施し、また、反応液はガスクロマトグラフィー(GL Sciences社製TC-1、30m及びVARIAN社製CP-Sil 8CB、50m)を用いて分析した。
CTT加熱分解試験(ジエチルアミン添加)
CTT9.97g(53mmol)にジエチルアミンを0.389g(5.3mmol)加えてテフロン(登録商標)の容器に入れ、70℃で20時間分解加速試験を行った。19FNMRで分解率を測定したところ、分解率8%であった。
CTT加熱分解試験(ジイソプロピルアミン添加)
CTT10.14g(53mmol)にジイソプロピルアミンを0.549g(5.4mmol)加えてテフロン(登録商標)の容器に入れ、70℃で20時間分解加速試験を行った。19FNMRで分解率を測定したところ、分解率5%であった。
CTT加熱分解試験(トリプロピルアミン添加)
CTT9.76g(51mmol)にトリプロピルアミンを0.736g(5.1mmol)加えてテフロン(登録商標)の容器に入れ、70℃で20時間分解加速試験を行った。19FNMRで分解率を測定したところ、分解率5%であった。
CTT加熱分解試験(ピリジン添加)
CTT9.89g(52mmol)にピリジンを0.41g(5.2mmol)加えてテフロン(登録商標)の容器に入れ、70℃で20時間分解加速試験を行った。19FNMRで分解率を測定したところ、分解率5%であった。
CTT加熱分解試験(ピリジン添加)
CTT9.89g(52mmol)にピリジンを2.11g(27mmol)加えてテフロン(登録商標)の容器に入れ、70℃で20時間分解加速試験を行った。19FNMRで分解率を測定したところ、分解率2%であった。
(比較例1)
CTT加熱分解試験(無添加)
CTT9.96g(53mmol)をテフロン(登録商標)の容器にいれ、70℃で20時間加熱分解加速試験を行った。19FNMRで分解率を測定したところ、分解率80%であった。
CTTとジエチルアミンの混合物の蒸留
CTT180g(0.95mol)とジエチルアミン20g(0.27mol)の混合物を、マクマホンパッキンを充填した理論段数3段相当の蒸留塔缶内に仕込み蒸留を行った。釜温度32℃、圧力1.5kPaで蒸留を行った結果、純度99%のCTT150gを得ることができた。
CTTとピリジンの混合物の蒸留
CTT180g(0.95mol)とピリジン20g(0.25mol)の混合物を、マクマホンパッキンを充填した理論段数3段相当の蒸留塔缶内に仕込み蒸留を行った。釜温度32℃、圧力1.5kPaで蒸留を行った結果、純度96%のCTT142gを得ることができた。
PPDAとピリジンの混合物の蒸留
PPDA212g(0.95mol)とピリジン20g(0.25mol)の混合物を、マクマホンパッキンを充填した理論段数3段相当の蒸留塔缶内に仕込み蒸留を行った。釜温度43℃、圧力1.5kPaで蒸留を行った結果、純度94%のPPDA165gを得ることができた。
1,1−ジフルオロヘキサンの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管にシクロヘキサノン1.96g(20mmol)、CTT(実施例2で蒸留したもの) 9.10g(48mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、48時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率92%、選択率60%で1,1−ジフルオロヘキサンが得られた。
4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管に4−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル3.40g(20mmol)、PPDA(実施例4で蒸留したもの)10.71g(48mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、24時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率91%、選択率63%で4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルが得られた。
1,1−ジフルオロヘキサンの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管にシクロヘキサノン1.96g(20mmol)、CTT(実施例2で蒸留したもの) 9.10g(48mmol)、フッ化水素2.00g(100mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、48時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率100%、選択率83%で1,1−ジフルオロヘキサンが得られた。
4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管に4−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル3.40g(20mmol)、CTT(実施例3で蒸留したもの) 9.10g(48mmol)、フッ化水素を2.00g(100mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、24時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率100%、選択率85%で4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルが得られた。
4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管に4−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル3.40g(20mmol)、CTT9.10g(48mmol)にジエチルアミンを0.36g(5mmol)添加した組成物、60%発煙硫酸1.00gを仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、24時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率90%、選択率65%で4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルが得られた。
α,α−ジフルオロトルエンの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管にベンズアルデヒド2.12g(20mmol)、CTT9.10g(48mmol)にトリエチルアミンを0.51g(5mmol)添加した組成物、フッ化水素を0.50g(25mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、12時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率100%、選択率98%でα,α−ジフルオロトルエンが得られた。
4,4−ジフルオロヘプタンの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管に4−ヘプタノン2.28g(20mmol)、PPDA13.39g(60mmol) にピリジンを1.58g(20mmol)添加した組成物、フッ化水素3.60g(180mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、72時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率75%、選択率91%で4,4−ジフルオロヘプタンが得られた。
1−アセチル−4,4−ジフルオロピペリジンの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管に1−アセチル−4−ピペリドン2.82g(20mmol)、TFEDMA8.71g(60mmol) にピリジンを1.58g(20mmol)添加した組成物、フッ化水素3.60g(180mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、24時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率100%、選択率88%で1−アセチル−4,4−ジフルオロピペリジンが得られた。
4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管に4−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル3.40g(20mmol)、CTT9.10g(48mmol)にピリジンを1.58g(20mmol)を添加した組成物、フッ化水素3.60g(180mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、36時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率100%、選択率98%で4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルが得られた。
(比較例2)
4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルの合成
200mlのテフロン(登録商標)製試験管に4−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル3.40g(20mmol)、CTT9.10g(48mmol)、トリエチルアミンを0.51g(5mmol)を仕込んだ。試験管の温度を60℃に設定、スターラーで攪拌し、24時間反応させた。反応終了後の反応液を水洗後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルは未検出であった。
従来、CTT及びその類縁体であるフルオロアルキルアミン試薬は、貯蔵安定性が悪く、取り扱いが困難な側面があった。また主にヒドロキシル基のフッ素化に使用され、カルボニル官能基のジフルオロ化は困難であった。しかしながら本発明により、これらの安価で製造可能なフッ素化剤であるCTT及びその類縁体であるフルオロアルキルアミン試薬の貯蔵安定性が向上し、またそのフッ素化試薬組成物、もしくはそのフッ素化試薬組成物から誘導されたフッ素化剤を用いたカルボニル官能基のジフルオロ化が可能となった。これにより医薬中間体、液晶材料等で要望の増してきたgem−ジフルオロ化合物を低コストで製造可能となり、その経済効果は大きいものである。

Claims (6)

  1. 一般式(1)
    Figure 0005378688
    (ただし、式中R、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数が1から4の低級アルキル基であり、Rは炭素数が1から3の低級アルキル基である。RとRは結合して環を構成してもよく、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい。)
    で表されるフルオロアルキルアミン試薬および該フルオロアルキルアミン試薬以外のアミンであってジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、コリジン、ジメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジイソプロピルアミンおよびトリプロピルアミンからなる群から選ばれる1以上のアミンからなるフッ素化試薬組成物。
  2. 一般式(1)で表されるフルオロアルキルアミン試薬が、N−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)ジエチルアミン、N−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)ジエチルアミンまたはN−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)ジメチルアミンである請求項1に記載のフッ素化試薬組成物。
  3. 一般式(2)
    Figure 0005378688
    (ただし、式中Rは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、R、Rはヘテロ原子を含んでもよく、RとRが結合して環を構成してもよい。)
    で表されるカルボニル化合物と、請求項1または2に記載されたフッ素化試薬組成物を反応させて、一般式(3)
    Figure 0005378688
    (ただし、式中のR、Rは前記定義に同じ)
    で表されるgem−ジフルオロ化合物を製造する方法であって、中性または酸性条件下で反応させることを特徴とするgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
  4. 酸を添加して反応を行うことを特徴とする、請求項3記載のgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
  5. 酸がフッ化水素であることを特徴とする、請求項記載のgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
  6. 一般式(2)および一般式(3)において、Rが置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、Rが置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、R、Rはヘテロ原子を含んでもよく、RとRが結合して環を構成してもよいものである請求項3ないしのいずれか1項に記載のgem−ジフルオロ化合物の製造方法。
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