しかしながら、上述の従来の給紙装置にあっては、当接部材101aおよびロックレバー101bが、ともにサイドフェンス101の底面から上方に向けて突出した類似の形状であるため、使用者からすると、いずれが操作用のロックレバーであるか不明確であり、その判断が困難であった。このため、特に、操作に関して不慣れな使用者にあっては、そのような判断が困難となるばかりか、当接部材101aを操作用のロックレバー101bと勘違いして誤って操作してしまうおそれがあった。
また、当接部材101aは、使用者による操作を想定して強度が設定されていないため、ロックレバー101bと比べて強度が不十分である。したがって、上述のように、使用者により誤って当接部材101aが操作された場合には、当接部材101aの塑性変形や酷い場合には破損に至るおそれがあるという問題があった。
さらに、従来の給紙装置にあっては、当接部材101aとロックレバー101bとを別に構成しているため、給紙装置の小型化を図ることができないという問題があった。また、このような問題に起因して、サイドフェンス101の体積が増加し、必要な樹脂材料が増えることにより、コストアップを避けることができないという問題があった。
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、使用者が、給紙トレイ内に積載されたシートの幅方向の端部の位置を補正する当接部材を、サイドフェンスの位置を固定可能なロック部材と誤って操作してしまうことを防止することができるとともに、給紙装置の小型化および低コスト化を図ることができる給紙装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明に係る給紙装置は、上記目的を達成するため、積層された複数枚のシートを収容する給紙カセットと、前記給紙カセットに収容されたシートの給紙方向端部に接触して前記シートを一枚ずつ給送する給送手段と、前記給送手段に対して前記給紙カセットに収容されたシートの給紙方向端部を押し上げて接触させるシート上昇機構と、前記給紙カセットに収容されたシートの給紙方向と直交する幅方向にスライド可能に前記給紙カセットに設けられ、前記シートの幅方向の端面に当接されるサイドフェンスと、を備えた給紙装置であって、前記サイドフェンスの前記シートの幅方向の端面に当接する側面側に設けられ、前記サイドフェンスを前記幅方向における任意の位置で固定可能なロック部材を備え、前記ロック部材が、前記シートの幅方向の端面に当接して前記シートの幅方向の位置を補正する当接部材としての機能を兼ねる構成を有する。
この構成により、本発明は、ロック部材が、シートの幅方向の端面に当接してシートの幅方向の位置を補正する当接部材としての機能を兼ねるので、使用者がロック部材と当接部材とを従来のように誤認識する余地がなくなり、当接部材をロック部材と勘違いして誤って操作してしまうことを防止することができる。このため、上述のような誤操作による当接部材の塑性変形や破損などを防止することができる。
また、ロック部材が当接部材の機能を兼ねることにより、従来単独で設けられていた当接部材を廃止することができ、給紙装置の小型化を図ることができる。このため、サイドフェンス自体の体積も減少し、必要な樹脂材料が減ることにより、低コスト化を図ることができる。
さらに、ロック部材が、サイドフェンスのシートの幅方向の端面に当接する側面側に設けられているので、ロック部材の操作スペースをシートの収容スペース側に確保することができ、これによっても給紙装置の小型化に寄与することができる。
また、本発明に係る給紙装置において、前記ロック部材は、前記給紙カセットに収容されたシートの幅方向の端面に対向する側面に一体形成された当接部を有し、前記当接部は、前記シート上昇機構によりシートが上昇したときのみ、前記シートの幅方向の端面に当接する形状に形成されている構成を有する。
この構成により、本発明は、ロック部材に一体形成された当接部が、シート上昇機構によりシートが上昇したときのみ、シートの幅方向の端面に当接する形状に形成されているので、シートが上昇した際、最上位のシートから順に当接部に当接することになる。
このため、従来、積層されたシートの全てあるいは上位部の数十枚を押圧していた当接部材に比べて、積層されたシート間に作用する紙間密着力そのものを小さくすることができる。その結果、当接部によるシートへの押圧力が小さい場合であってもシートを移動させることができ、また押圧力が大きい場合であっても折れたり傷つけたりすることなくシートの位置補正を行うことができる。
したがって、かかる当接部によれば、シートの幅方向の位置を安定して補正することができる。
また、本発明に係る給紙装置において、前記当接部は、前記シート上昇機構により上昇されて当接した前記シートの幅方向の端面の位置を、前記シートの上昇とともに給紙カセットの内側へ徐々に変位させるスロープ部を有している。
この構成により、本発明は、当接部が、シート上昇機構により上昇されて当接したシートの幅方向の端面の位置を、シートの上昇とともに給紙カセットの内側へ徐々に変位させるスロープ部を有しているので、シート上昇機構によりシートが上昇する際、当接部に対してシートの幅方向の端面が滑らかに当接される。このため、シートの補正位置への移動をよりスムーズに行うことができる。
したがって、シート上昇機構によるシート上昇時に、例えばシートの幅方向の端面が当接部で引っ掛かることによって、上昇の妨げとなりシートの給紙不良となったり、シートが損傷してしまうなどの不具合を防止することができ、シートの幅方向の位置を安定して補正することができる。
また、本発明に係る給紙装置において、前記ロック部材は、前記当接部が形成された側面に凹部を有する。
この構成により、本発明は、ロック部材が、当接部の形成された側面に凹部を有しているので、使用者が凹部をロック部材の操作部として視覚的に容易に認識することができる。
また、凹部は、シートの幅方向の端面と当接しないため、シートの摺動によって経時的に削れ、表面が粗くなることを防止することができ、使用者が操作時に凹部に触れた際の不快感を解消することができる。
また、本発明に係る給紙装置において、前記ロック部材は、前記給紙カセットに収容されたシートの幅方向の端面に対向する側面において、前記当接部と前記凹部との接続部をR形状とした構成を有する。
この構成により、本発明は、当接部と凹部との接続部がR形状とされているので、シートの摺動時に接続部に対してシートが滑らかに当接することとなる。このため、シートの給紙中やシート補充作業時などにシートが当接部と凹部との接続部で引っ掛かることがなく、シートの給紙不良となったり、シートが損傷してしまうなどの不具合を防止することができる。
また、本発明に係る給紙装置において、前記当接部は、表面が低摩擦係数を有する部材で構成されている。
この構成により、本発明は、当接部が低摩擦係数を有する部材で構成されているので、当接部とシートとの間で生ずる摺動抵抗を低減することができ、シートの摺動をよりスムーズにすることができる。このため、シートの摺動による当接部の経時的な削れ量を低減することができる。
また、本発明に係る給紙装置において、前記ロック部材は、その上端部が、前記サイドフェンスの上端面より上方に突出している構成を有する。
この構成により、本発明は、ロック部材の上端部が、サイドフェンスの上端面より上方に突出しているので、使用者が突出したロック部材を操作部として視覚的に容易に認識することができる。
また、本発明に係る給紙装置は、前記ロック部材と前記サイドフェンスとの間に設けられ、第1の付勢力を有する付勢部材を備え、前記ロック部材が、前記シートの幅方向に弾性変形可能に構成され、前記弾性変形に応じて、前記給紙カセットに収容されたシートの幅方向の端面に当接するよう作用する第2の付勢力を有し、前記付勢部材は、前記シートの幅方向であって前記シートの幅方向の端面から離隔する離隔方向に前記ロック部材が弾性変形した際に、前記第2の付勢力より大きな前記第1の付勢力で前記ロック部材を前記シート側に付勢する構成を有する。
この構成により、本発明は、ロック部材が、シートの幅方向に弾性変形可能に構成され、弾性変形に応じて、給紙カセットに収容されたシートの幅方向の端面に当接するよう作用する第2の付勢力を有するので、この第2の付勢力によりシートの幅方向の位置を適正に補正することができる。
また、付勢部材が、シートの幅方向であってシートの幅方向の端面から離隔する離隔方向にロック部材が弾性変形した際に、第2の付勢力より大きな第1の付勢力でロック部材をシート側に付勢するので、シート給紙時や給紙カセットの操作時に給紙カセットに収容されたシートがずれてしまうことを防止することができる。
これにより、安定した給紙性能の確保や操作性の向上を図ることができる。
また、本発明に係る給紙装置において、前記ロック部材は、前記給紙カセットに対して前記サイドフェンスを前記幅方向における任意の位置で固定するための係止部を有し、前記給紙カセットは、前記係止部が係合することにより前記サイドフェンスを前記幅方向における任意の位置で固定する係合部を有し、前記係止部は、前記当接部が前記シートに対して前記サイドフェンスの前記シートの幅方向の端面に当接する側面より前記離隔方向に位置するよう、前記ロック部材が弾性変形することにより前記係合部との係合が解除される構成を有する。
この構成により、本発明は、当接部がシートに対してサイドフェンスのシートの幅方向の端面に当接する側面より離隔方向に位置するよう、ロック部材が弾性変形することにより係止部と係合部との係合が解除される。すなわち、当接部がシートに対してサイドフェンスのシートの幅方向の端面に当接する側面より離隔方向に位置するよう、ロック部材が弾性変形しない限り、係止部と係合部との係合が解除されない。
このため、例えば給紙カセットへのシート補充時などにシートによってロック部材が離隔方向に押圧された場合であっても、ロック部材が所定量弾性変形した時点で、シートがサイドフェンスに当接することとなる。したがって、ロック部材が係止部と係合部との係合を解除可能な位置まで弾性変形することを規制することができ、シート補充時などに使用者の意に反してサイドフェンスがスライドしてしまうことを防止することができる。
また、本発明に係る給紙装置は、前記ロック部材が、前記サイドフェンスに一体成形されている構成を有する。
この構成により、本発明は、ロック部材がサイドフェンスに一体成形されているので、部品位置精度を向上させることができる。また、部品点数が低減することにより、組立作業の効率化を可能とし、低コスト化を図ることができる。
また、本発明に係る画像形成装置は、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の給紙装置を具備する構成を有する。
この構成により、本発明は、使用者が、給紙トレイ内に積載されたシートの幅方向の端部の位置を補正する当接部材を、サイドフェンスの位置を固定可能なロック部材と誤って操作してしまうことを防止することができるとともに、小型化および低コスト化を図ることができる給紙装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
本発明では、使用者が、給紙トレイ内に積載されたシートの幅方向の端部の位置を補正する当接部材を、サイドフェンスの位置を固定可能なロック部材と誤って操作してしまうことを防止することができるとともに、給紙装置の小型化および低コスト化を図ることができる給紙装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る給紙装置を備えた画像形成装置の一実施の形態を示す図であり、画像形成装置を電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した例を示している。なお、上述のプリンタとしては、例えば、一般的な静電作像方法を用いて画像を形成するフルカラーのプリンタやモノクロ画像を形成するプリンタなどが挙げられる。また、作像方式としては、電子写真方式以外にも、例えばインクジェット方式等を用いることも可能である。
図1に示すように、プリンタ1は、給紙装置としての給紙部2と、光書込み部3と、作像部4と、定着部5と、排紙部6とを含んで構成されている。
給紙部2は、プリンタ本体に対して引き出しおよび挿入可能な給紙カセット20と、給送手段としての分離給紙部21と、を含んで構成されている。
給紙カセット20は、複数枚のシートを収容可能に構成されている。
また、分離給紙部21は、給紙カセット20の給紙方向先端側に設けられ、給紙ローラ21aと、捌きパッド21bとから構成されている。分離給紙部21は、給紙カセット20に収容されたシートを一枚ずつ分離して、搬送方向下流側へ給送するようになっている。
また、分離給紙部21の搬送方向下流側の搬送経路25上には、レジストローラ26が配設されており、分離給紙部21によって一枚ずつ分離されて給送されたシートは、その先端がレジストローラ26のニップに突き当たり、先端整合が行われる。さらに、レジストローラ26は、シートの搬送を一時停止し、トナー像とシートの先端との位置関係が所定の位置になるようタイミングをとって回転を開始するようになっている。
光書込み部3は、詳細には図示していないが、光源としてのLDユニットから各色毎にレーザ光を出射し、出射された各レーザ光をポリゴンミラーおよび複数の反射ミラーを介して作像部4の各作像ユニット40C、40M、40Y、40Kの感光体ドラム41C、41M、41Y、41Kに照射し、レーザ書込みを行うものである。
レーザ書込みは、書込みデータに基づいて作成された変調信号によって変調されたレーザ光を照射することにより行われ、上述のように各感光体ドラム41C、41M、41Y、41Kの表面に静電潜像を形成する。
作像部4は、プリンタ1の中央部に配置され、CMYK各色の作像ユニット40C、40M、40Y、40Kと、シートを静電吸着し搬送する転写ベルト45と、転写駆動ローラ46とを含んで構成されている。
作像ユニット40C、40M、40Y、40Kは、各色毎に設けられた感光体ドラム41C、41M、41Y、41Kを核として電子写真を作像するための各作像要素が感光体ドラム41C、41M、41Y、41Kの外周に沿って配置されている。また、これら作像ユニット40C、40M、40Y、40Kは、転写ベルト45の移動方向(図中、矢印Aで示す方向)に沿って、作像ユニット40C、40M、40Y、40Kの順で直列に配置されている。
なお、作像ユニット40C、40M、40Y、40Kは、各色毎に同一の構成であるため、本実施の形態においては、黒色(K)に対応する作像ユニット40Kについて説明を行うものとし、それ以外の作像ユニット40M、40Y、40Kの詳細については、その説明を省略する。
感光体ドラム41Kの外周には、図1中、時計方向に沿って感光体ドラム41K表面を帯電する図示しない帯電ローラと、トナーを含む現像剤を収容し、感光体ドラム41K上の静電潜像をトナー現像する現像器43Kと、感光体ドラム41K上のトナー画像を転写ベルト45上のシート(図示省略)に転写させる転写ローラ44Kと、転写後の残トナーを掻きとるクリーニングブレードを有する図示しないクリーニングユニットと、転写後に感光体ドラム41Kの表面に残留した電荷を除電する図示しない除電ユニットとが、作像要素として配置されている。
感光体ドラム41Kは、図示しない駆動手段によって回転させられるようになっており、その表面が帯電ローラにより一様に帯電させられるようになっている。そして、一様に帯電させられた感光体31Kの表面には、光書込み部3から照射されるレーザ光によって露光走査されることにより、K用の静電潜像が担持されるようになっている。
現像器43Kは、図示しない現像ローラを有しており、この現像ローラの芯金には、図示しないバイアス電源から交流と直流の重畳したマイナス電位のバイアス電圧が印加されるようになっている。
また、帯電ローラには、他のバイアス電源から直流のマイナス電位のバイアス電圧が印加されるようになっている。帯電ローラは、クリーニングユニットのクリーニングブレードにより残留するトナー汚れが清掃された感光体ドラム41Kの表面を一様な高電位に帯電させて初期化するようになっている。
転写ローラ44Kは、転写ベルト45を挟んで感光体ドラム41Kと対向した位置に設けられている。また、転写ベルト45の下方には、廃トナーを回収する廃トナー回収部47が設けられている。
このように構成されたプリンタ1においては、各色の作像ユニット40C、40M、40Y、40Kの感光体ドラム41C、41M、41Y、41Kにレーザ光がそれぞれ照射され、一様な高電位に帯電している各色の感光体ドラム41C、41M、41Y、41Kの表面が画像データに基づいて変調されたレーザ光により選択的に露光され、この露光により電位の減衰した低電位部と初期化による高電位部とからなる静電潜像が形成される。
そして、各色の現像器43C、43M、43Y、43Kは、静電潜像の低電位部(または高電位部)にトナーを転移させてトナー像を形成(現像)する。感光体ドラム41C、41M、41Y、41Kは、トナー像を回転搬送して転写ベルト45上に転写する。
この転写ベルト45上に転写されたトナー像は、感光体ドラム41C、41M、41Y、41Kとの当接部に達するタイミングに合わせて、各色の作像ユニット40C、40M、40Y、40Kが動作して現像器43C、43M、43Y、43Kによる現像、転写ローラ44C、44M、44Y、44Kによる転写が転写ベルト45の移動に応じて実行され、CMYK4色のトナー画像が重畳されて4色のフルカラー画像が形成される。
次いで、転写ベルト45上のシートに形成されたフルカラー画像は、転写ローラ44C、44M、44Y、44Kによって給紙部2から搬送路25に沿って搬送されてきたシートに転写され、定着部5で加熱および加圧により定着され、排紙部6の排紙ローラ6aによって排紙トレイ6bに排紙される。
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態に係る給紙部2のシート上昇機構について説明する。
図2および図3に示すように、給紙カセット20内には、上下方向に揺動自在に構成された底板27と、圧縮スプリング28とが設けられている。また、圧縮スプリング28は、給紙カセット20の底面と底板27との間に配置されている。給紙ローラ21aは、プリンタ本体に保持されている。なお、本実施の形態における底板27および圧縮スプリング28は、本発明に係るシート上昇機構を構成している。
図2に示すように、給紙カセット20がプリンタ本体に対して引き出されると、引き出し動作と連動して図示しない底板下降手段により底板27が下降し、図示しない底板ロック手段により給紙カセット20の底面に沿うようにロックされて保持される。
一方、図3に示すように、給紙カセット20がプリンタ本体に対して挿入されると、挿入動作と連動して底板ロック解除手段により底板27の保持が解除され、圧縮スプリング28の付勢力により底板27と底板27の上面に積載されたシートの最上位面の給紙方向先端部が給紙ローラ21aに接触し、所定の給紙圧で当接する。
なお、本実施の形態で示したシート上昇機構は、その一例を示したものであり、その他のシート上昇機構として、例えば底板27を引張スプリングで吊るした構成やリフトアップモータによる上昇機構などで構成することも可能である。
次いで、図4〜図7を参照して、サイドフェンス50のシートに対する位置、およびシートの位置補正について説明する。
図4に示すように、給紙カセット20(図1参照)内には、サイドフェンス50が設けられており、このサイドフェンス50は、給紙カセット20に収容されたシートの給紙方向と直交する幅方向にスライド可能に構成されている。また、サイドフェンス50は、サイドフェンス50をシートの幅方向における任意の位置で固定可能なロック部材としてのロックレバー51を有している。このロックレバー51の詳細については、後述する。
ここで、一般に、記録媒体として用いられるシートは、A3、A4、B4、B5等の定格サイズがあり、決められた大きさに予めカットされている。サイドフェンス50は、収容されるシートのサイズにより、若干量(通常1〜2mm)の幅広の位置に設定・固定される。これは、複数枚のシートの束を正確に端部揃えすることが困難なため、若干量の隙間がないと、シートの束が、給紙カセット20内のサイドフェンス50の間に収容できないためである。
このため、給紙カセット20内に収容されているシートは、上述の隙間の分だけ、給紙カセット20内で位置ずれを起こすことがある。このようなシートの位置ずれは、シートへの画像転写位置のずれに繋がる。したがって、良好な画像形成を行うためには、このシートの位置ずれを極力小さくすることが望ましい。
このようなシートの位置ずれを補正する方法としては、一般的には、図11および図12で示したように、サイドフェンス101に当接部材101aを一体成形して、この当接部材101aがシートの幅方向の端面に当接することにより、シートの幅方向の位置を補正している。また、サイドフェンス101のシートの幅方向の移動は、ロックレバー101bにより規制されている。
しかしながら、このような従来の方法では、前述した通り、当接部材101aを操作用のロックレバー101bと勘違いして誤って操作してしまうおそれや、給紙装置の小型化および低コススト化を図ることができないなど種々の問題があった。
そこで、本実施の形態においては、サイドフェンス50を以下のような構成とした。
図4に示すように、樹脂製のサイドフェンス50は、上述の通り、ロックレバー51を有しており、このロックレバー51によりシートの幅方向における任意の位置で固定されるようになっている。また、任意の位置で固定されたサイドフェンス50は、ロックレバー51が使用者により操作されることで、その固定が解除され、シートの幅方向にスライド可能となる。
ロックレバー51は、サイドフェンス50のシートの幅方向の端面に当接する側面側に設けられている。このロックレバー51は、サイドフェンス50に一体成形されている。さらに、ロックレバー51は、基端側でサイドフェンス50に接続されており、自由端側がシートの幅方向に揺動可能な構成である。
また、ロックレバー51のシートに対向する側の側面には、凹部51aが形成されている。この凹部51aは、ロックレバー51の操作時における使用者の操作箇所となる。
また、ロックレバー51は、シートの幅方向の端面に当接する当接部52を有している。この当接部52は、ロックレバー51のシートに対向する側の側面に一体形成されている。すなわち、ロックレバー51は、シートの幅方向の端面に当接してシートの幅方向の位置を補正する当接部材としての機能を兼ねている。
この当接部材としての機能を兼ね備えたロックレバー51は、樹脂の持つ弾性力により、当接部52をシートの幅方向の端面に当接させてシートを押圧するようになっている。
これにより、サイドフェンス50の間にセットされたシートは、その幅方向の端面に、当接部52が当接されることにより、その幅方向の端面が押圧されて位置補正される。
なお、本実施の形態においては、ロックレバー51をサイドフェンス50と一体成形することにより、樹脂の持つ弾性力でシートを押圧するよう構成したが、これに限らず、例えばスプリングなどの付勢部材を設けて、この付勢部材の付勢力によりシートを押圧する構成としてもよい。また、ロックレバー51は、サイドフェンス50に一体成形されたものに限らず、サイドフェンス50と別部材で構成してもよい。
また、本実施の形態においては、シートの幅方向を規制するサイドフェンス50について記載したが、給紙機構によってはシートの給紙方向上流側を規制しているエンドフェンスを搭載したものもあり、そのエンドフェンスに本発明を搭載することも可能であり、同等の効果を得ることが可能である。
また、当接部52は、上述したシート上昇機構により給紙カセット20(図1参照)に収容されたシートが上昇したときのみ、シートの幅方向の端面に当接する形状に形成されている。
すなわち、図5および図6に示すように、当接部52は、その下方側にスロープ部52aを有しており、このスロープ部52aは、下方から上方に向うに従い、徐々に給紙カセット20の内側に向かうよう傾斜した傾斜面で構成されている。
したがって、スロープ部52aは、シート上昇機構により上昇されて当接したシートの幅方向の端面の位置を、シートの上昇とともに給紙カセット20の内側へ徐々に変位させるようになっている。
このため、本実施の形態に係るサイドフェンス50においては、プリンタ本体に対して給紙カセット20を挿入(セット)したとき、底板27が上昇することにより、シートの幅方向の端面が当接部52に当接することとなる。その結果、給紙カセット20に積載された複数枚のシートのシート間密着力F=μ×M(μはシート間摩擦係数、Mはシートの自重)を小さくでき、シートに対して位置補正を確実に行える。
すなわち、図5に示すように、給紙カセット20にシートをセットする際の底板27が下降した状態においては、当接部52は、シートの幅方向の端面に当接していない。
一方で、図6に示すように、底板27が上昇すると、給紙カセット20に積載された複数枚のシートは、最上位のシートから順次、当接部52に当接することとなる。
このとき、最上位のシートと2枚目のシートとのシート間密着力F1=μ×M1は、シートの自重M1が、最上位のシート1枚分の重量となるので、非常に小さくなる。このため、最上位のシートが、底板27の上昇時に当接部52に問題なく押圧され、その理想位置に移動して位置補正される。
また、2枚目のシートにおいては、2枚目と3枚目とのシート間密着力が、F2=μ×M2となり、シートの自重M2が最上位のシートと2枚目のシートとの2枚分の重量となるが、このときには最上位のシートがF1の力で理想位置方向に移動しているので、2枚目のシートも、この最上位のシートと同じ力で理想位置方向に移動される。同様に、3枚目以降のシートも、この最上位のシートと同じ力で理想位置方向に移動される。
また、ロックレバーのシート積載方向の高さがサイドフェンスの高さと同等あるいはそれよりも低いと、ロックレバーの操作部の視認性が悪く、使用者が操作部を認識しづらいなどの問題や操作不良を起こしかねないなどの問題が生ずる。
そこで、本実施の形態においては、図5および図6に示すように、ロックレバー51は、その上端部がサイドフェンス50の上端面より上方に突出するよう構成されている。これにより、使用者が触れることが可能な操作部の面積を増やすことが可能になるとともに、ロックレバー51の操作部の視認性が向上する。すなわち、使用者が突出したロックレバー51を操作部として視覚的に容易に認識することができる。
また、本実施の形態においては、図7に示すように、ロックレバー51は、給紙カセット20に収容されたシートの幅方向の端面に対向する側面において、当接部52と凹部51aとの接続部53を所定のR形状としている。これにより、給紙カセット20内を移動するシートが当接部52に対して滑らかに接触することとなる。
さらに、本実施の形態においては、当接部52は、シートとの接触による経時的な削れによりその表面が粗くなることを防止するため、シートと接触する面に摩擦係数の低いフッ素系樹脂あるいはフッ素系コーティングなどを施した部材とすることも可能である。
以上のように、本実施の形態では、ロックレバー51が、シートの幅方向の端面に当接してシートの幅方向の位置を補正する当接部材としての機能を兼ねるので、使用者がロックレバーと当接部材とを従来のように誤認識する余地がなくなり、当接部材をロックレバーと勘違いして誤って操作してしまうことを防止することができる。このため、上述のような誤操作による当接部材の塑性変形や破損などを防止することができる。
また、ロックレバー51が当接部材の機能を兼ねることにより、従来単独で設けられていた当接部材を廃止することができ、給紙装置の小型化を図ることができる。このため、サイドフェンス50自体の体積も減少し、必要な樹脂材料が減ることにより、低コスト化を図ることができる。
さらに、ロックレバー51が、サイドフェンス50のシートの幅方向の端面に当接する側面側に設けられているので、ロックレバー51の操作スペースをシートの収容スペース側(給紙カセット20の内側)に確保することができ、これによっても給紙装置の小型化に寄与することができる。
また、本実施の形態では、ロックレバー51に一体形成された当接部52が、シート上昇機構によりシートが上昇したときのみ、シートの幅方向の端面に当接する形状に形成されているので、シートが上昇した際、最上位のシートから順に当接部52に当接することになる。
このため、従来、積層されたシートの全てあるいは上位部の数十枚を押圧していた当接部材に比べて、積層されたシート間に作用する紙間密着力そのものを小さくすることができる。その結果、当接部52によるシートへの押圧力が小さい場合であってもシートを移動させることができ、また押圧力が大きい場合であっても折れたり傷つけたりすることなくシートの位置補正を行うことができる。したがって、かかる当接部52によれば、シートの幅方向の位置を安定して補正することができる。
また、本実施の形態では、当接部52がスロープ部52aを有しているので、シート上昇機構によりシートが上昇する際、当接部52に対してシートの幅方向の端面が滑らかに当接される。このため、シートの補正位置への移動をよりスムーズに行うことができる。
したがって、シート上昇機構によるシート上昇時に、例えばシートの幅方向の端面が当接部52で引っ掛かることによって、上昇の妨げとなりシートの給紙不良となったり、シートが損傷してしまうなどの不具合を防止することができ、シートの幅方向の位置を安定して補正することができる。
また、本実施の形態では、ロックレバー51が、当接部52の形成された側面に凹部51aを有しているので、使用者が凹部51aをロックレバー51の操作部として視覚的に容易に認識することができる。また、凹部51aは、シートの幅方向の端面と当接しないため、シートの摺動によって経時的に削れ、表面が粗くなることを防止することができ、使用者が操作時に凹部51aに触れた際の不快感を解消することができる。
また、本実施の形態では、当接部52と凹部51aとの接続部53がR形状とされているので、シートの給紙中やシート補充作業時などにシートが接続部53で引っ掛かることがなく、シートの給紙不良となったり、シートが損傷してしまうなどの不具合を防止することができる。
また、本実施の形態では、当接部52が低摩擦係数を有する部材で構成されているので、当接部52とシートとの間で生ずる摺動抵抗を低減することができ、シートの摺動をよりスムーズにすることができる。このため、シートの摺動による当接部52の経時的な削れ量を低減することができる。
さらに、本実施の形態では、ロックレバー51がサイドフェンス50に一体成形されているので、部品位置精度を向上させることができる。また、部品点数が低減することにより、組立作業の効率化を可能とし、低コスト化を図ることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図8〜図10を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る給紙装置について説明する。
なお、本実施の形態に係る給紙装置においては、本発明の第1の実施の形態に係る給紙装置とは、特にサイドフェンス50とロックレバー51との間に圧縮スプリング60を設けた点で異なるが、他の構成は、略同様に構成されている。したがって、図1から図7に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
図8に示すように、給紙カセット20に収容されたシートの幅方向におけるサイドフェンス50とロックレバー51との間には、付勢部材としての圧縮スプリング60が設けられている。この圧縮スプリング60は、ロックレバー51の背面(シートに対向する側面と反対側の側面)に対向するサイドフェンス50の側面に、その一端が固定されている。
また、圧縮スプリング60は、ロックレバー51のシートの幅方向への揺動(弾性変形)に応じて、ロックレバー51によって圧縮されるよう構成されている。したがって、圧縮スプリング60は、ロックレバー51の揺動に応じて所定の付勢力FSをロックレバー51に作用させるようになっている。なお、本実施の形態における上述の付勢力FSは、本発明における第1の付勢力に対応する。
また、当接部材としての機能を兼ね備えたロックレバー51は、第1の実施の形態でも述べたように、樹脂の持つ弾性力Feにより、当接部52をシートの幅方向の端面に当接させてシートを押圧するようになっている。すなわち、ロックレバー51は、弾性変形可能に構成されており、この弾性変形により弾性力Feを発生させる。本実施の形態における上述の付勢力Feは、本発明における第2の付勢力に対応する。なお、弾性力Feを発生させる手段としては、第1の実施の形態でも説明したが、比較的小さい付勢力を発生させるスプリングを用いてもよい。
また、ロックレバー51は、その下面にロック爪51bを有しており、このロック爪51bが給紙カセット20に設けられた後述するロック受け部20aに係合することにより、給紙カセット20に対してサイドフェンス50をシートの幅方向における任意の位置で固定するようになっている。本実施の形態におけるロック爪51bは、本発明に係る係止部を構成している。
一方、給紙カセット20は、その上面であって上述のロック爪51bに対応する位置に、ロック受け部20aが設けられており、このロック受け部20aにロック爪51bが係合することにより、サイドフェンス50がシートの幅方向における任意の位置で固定されるようになっている。本実施の形態におけるロック受け部20aは、本発明に係る係合部を構成している。
他方、このように構成されたロック爪51bとロック受け部20aとの係合が解除されることにより、サイドフェンス50の任意の位置での固定が解除される。すなわち、サイドフェンス50の任意の位置での固定の解除は、使用者によるロックレバー51の操作に伴うロックレバー51の所定量の弾性変形に応じて、ロック爪51bがロック受け部20aから上方に離隔することにより、ロック爪51bとロック受け部20aとの係合が解除されることで達成される。
具体的には、図8に示すように、ロック爪51bとロック受け部20aとが係合した状態では、サイドフェンス50の任意の位置での固定されている。
次に、図9に示すように、使用者によりロックレバー51が操作される、すなわちロックレバー51が圧縮スプリング60側に押圧されると、ロックレバー51が弾性変形する。このとき、ロックレバー51の凹部51aがサイドフェンス50のシートに接する側面50a(以下、単にフェンス側面50aという)と略同平面となった状態においては、未だロック爪51bとロック受け部20aとの係合は、解除されていない。また、図9に示す状態においては、ロックレバー51に対して、ロックレバー51自体が有する弾性力Fe(図中、矢印Bで示す)のみが作用している。
次いで、図10に示すように、ロックレバー51の当接部52がフェンス側面50aより圧縮スプリング60側、すなわちシートに対して離隔する方向に位置するようになるまで、ロックレバー51が弾性変形すると、ロック爪51bとロック受け部20aとの係合が解除される。また、このとき、ロックレバー51は、圧縮スプリング60を圧縮する。これにより、圧縮スプリング60は、ロックレバー51を図8に示す状態に戻すようロックレバー51に対して付勢力FSを作用させる。したがって、図10に示す状態においては、ロックレバー51に対して、ロックレバー51自体が有する弾性力Feと上記付勢力FSとの双方(図中、矢印Cで示す)が作用することとなる。
このように、ロック爪51bとロック受け部20aとの係合は、当接部52がフェンス側面50aよりも圧縮スプリング60側に移動するまでロックレバー51が弾性変形しない限り、解除されない。これにより、給紙カセット20へのシート補充時などにシートによってロックレバー51が離隔方向に押圧された場合であっても、ロックレバー51が所定量弾性変形した時点(図9に示す状態)で、シートがサイドフェンス50に当接することとなる。したがって、ロックレバー51が、ロック爪51bとロック受け部20aとの係合を解除可能な位置まで弾性変形することを規制することができ、シート補充時などに使用者の意に反してサイドフェンス50がスライドしてしまうことを防止することができる。
なお、ロック爪51bおよびロック受け部20aについては、第1の実施の形態ではその説明を省略しているが、第1の実施の形態においても本実施の形態と同様にロック爪51bおよびロック受け部20aによってサイドフェンス50が任意の位置で固定される構成とするのが好ましい。
ここで、ロックレバー51が当接部52をシートの幅方向の端面に対して当接させる付勢力は、シートの幅方向の位置を補正するのに必要な力量以上で、かつシートが折れたり傷ついたりすることのない力量以下で設定する必要がある。
一方で、ロックレバー51が、給紙カセット20に対するサイドフェンス50の任意の位置での固定を維持する保持力は、シートの給紙中や給紙カセット20の操作時に収納したシートがずれないようにするために必要な力量以上で、かつ使用者がロックレバー51の操作部を押圧する際に重過ぎることによる不快感を感じない程度の力量以下に設定しなければならない。
一般的には、上述の付勢力と上述の保持力とを比較すると、付勢力に比べて保持力を比較的高く設定する必要がある。また、給紙カセット20の収容容量が多くなれば、必然的にシート重量が重くなるため、給紙中や給紙カセット20の操作時に収容したシートがずれないようにするために必要な力量は、給紙カセット20の収容容量に応じて高く設定する必要がある。
しかしながら、ロックレバー51のロック機構により、使用者がロックレバー51の操作部を押圧する力量は大きく変わるので、各力量のバランスをとることも可能であるが、ロックレバー51の周辺の自由度が少ないなどの各制約により、各力量のバランスが取れない場合、前述のような課題が発生する。
そこで、本実施の形態においては、前述の課題を解決するため、上述の説明の通り、当接部52がフェンス側面50aよりも圧縮スプリング60側に移動するまでロックレバー51が弾性変形しない限り、ロック爪51bとロック受け部20aとの係合が解除されない構成とした。また、圧縮スプリング60の付勢力FSは、ロックレバー51自体が有する弾性力Feに比べて、大きく設定されている。
これにより、図8および図9に示す状態において、ロックレバー51は、シートの幅方向の位置を補正するのに必要な力量以上で、かつシートが折れたり傷ついたりすることのない力量以下に設定された付勢力として弾性力Feのみをシートに対して作用させることができる。
これに対して、図9および図10に示すように、当接部52がフェンス側面50aよりも圧縮スプリング60側に位置するようロックレバー51が弾性変形すると、ロックレバー51が圧縮スプリング60を圧縮する。これにより、ロックレバー51は、弾性力Feに加えて付勢力FSが作用し、図8に示す状態に戻ろうとする。すなわち、ロックレバー51は、弾性力Feおよび付勢力FSによって、サイドフェンス50の任意の位置での固定を維持する保持力を得ることができる。
以上のように、本実施の形態では、ロックレバー51が、シートの幅方向に弾性変形可能に構成され、弾性変形に応じて、給紙カセット20に収容されたシートの幅方向の端面に当接するよう作用する弾性力Feを有するので、この弾性力Feによりシートの幅方向の位置を適正に補正することができる。
また、圧縮スプリング60が、シートの幅方向であってシートの幅方向の端面から離隔する離隔方向にロックレバー51が弾性変形した際に、弾性力Feより大きな付勢力FSでロックレバー51をシート側に付勢するので、シート給紙時や給紙カセット20の操作時に給紙カセット20に収容されたシートがずれてしまうことを防止することができる。これにより、安定した給紙性能の確保や操作性の向上を図ることができる。