JP5498674B2 - 有機薄膜太陽電池用材料及びそれを用いた有機薄膜太陽電池 - Google Patents
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Description
さらにその後、「p層/i層/n層」を何層も繰り返し積層するというスタックセル構成により、さらに光電変換効率が向上することが見出された。この時に使用された材料は、p層としてはフタロシアニン類、n層としてはC60フラーレンであった。
このように、有機薄膜太陽電池では、各層の材料は初期の頃からあまり進展がなく、依然としてフタロシアニン誘導体、ペリレンイミド誘導体、C60誘導体が用いられている。従って、光電変換効率を高めるべく、これら従来の材料に代わる新規な材料の開発が熱望されている。
一般に、有機化合物において可視光領域に吸収を持たせるためには、π電子共役構造を拡大して吸収極大波長を長波長化すればよいことが知られている。ただし、あまりに共役系を拡張して分子量が大きくなり過ぎると、溶媒に対する溶解性が低下して精製が困難になり、且つ昇華温度が上昇して昇華精製できなくなる等の難点がある。そこで、ある程度分子量を抑えながら効率的に吸収波長を長波長化した材料として、ポリアセン類が開発されてきた(例えば、特許文献1参照)。
そこで、本発明は、光や酸素、熱に対して安定であり、有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す有機薄膜太陽電池用材料を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、下記の有機薄膜太陽電池用材料及びそれを用いた有機薄膜太陽電池を提供する。
2.上記一般式(I)中、R1〜R14が、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基である、上記1記載の有機薄膜太陽電池用材料。
3.下記一般式(II)で表わされる有機薄膜太陽電池用材料。
4.上記一般式(II)中、R15〜R28が、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基である、上記3記載の有機薄膜太陽電池用材料。
5.上記一般式(II)中、R23及びR28が、それぞれ独立して、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基である、上記3又は4記載の有機薄膜太陽電池用材料。
6.下記一般式(III)で表わされる有機薄膜太陽電池用材料。
7.上記一般式(III)中、R29〜R44が、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基である、上記6記載の有機薄膜太陽電池用材料。
8.一対の電極の間に少なくともp層(電子輸送層)を有し、該p層が上記1〜7のいずれか記載の有機薄膜太陽電池用材料を含有する、有機薄膜太陽電池。
本発明の有機薄膜太陽電池材料は、下記一般式(I)で表される。
上記一般式(I)において、R1〜R14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。
また、本発明の有機薄膜太陽電池材料は、下記一般式(II)で表される化合物であってもよい。
上記一般式(II)において、R15〜R28は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。さらに、上記一般式(II)において、R23及びR28が、それぞれ独立して、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。
また、本発明の有機薄膜太陽電池材料は、下記一般式(III)で表される化合物であってもよい。
上記一般式(III)において、R29〜R44は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。
本発明の有機薄膜太陽電池用材料を合成する方法としては種々の方法があり、特に制限はない。例えば、アントラキノン誘導体を出発原料とする合成経路は、原料が入手し易いこと、反応条件が温和なこと、及び高収率で目的物を与えること等から好ましい。アントラキノン誘導体を出発原料とする合成経路による製造方法の一例を以下に示す。
工程1は、アントラキノン誘導体と有機金属試薬とを反応させてジオールを合成する工程である。有機金属試薬としては、例えばアリールマグネシウムブロミドに代表されるGrignard試薬やアリールリチウムに代表される有機リチウム試薬を挙げることができる。これらのうち、良好な収率を与えることから、有機リチウム試薬が好ましい。
(工程2)
工程2は、ジオールを還元して芳香族化させる工程である。還元する際に用いることのできる還元剤としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等に代表されるヨウ化物、塩化第一スズ(SnCl2)に代表されるスズ試薬等を挙げることができる。これらのうち、有害な廃棄物を発生しないことや反応条件が温和なことからヨウ化物が好ましい。
本発明の有機薄膜太陽電池用材料(以下、単に「材料」ともいう。)を含む有機薄膜太陽電池は、電極以外の層が本発明の材料単独から形成されていてもよいし、本発明の材料と他の成分の混合物から形成されていてもよい。
本発明の材料を用いる有機薄膜太陽電池は、高効率の光電変換特性を示す。
本発明の有機薄膜太陽電池のセル構造は、一対の電極の間に本発明の有機薄膜太陽電池用材料を含有する構造であれば特に限定はない。具体的には、安定な絶縁性基板上に下記の構成を有する構造が挙げられる。
(1)下部電極/本発明の材料の単独層/上部電極
(2)下部電極/p層/n層/上部電極
(3)下部電極/p層/i層(p層の材料とn層の材料の混合層)/n層/上部電極
(4)下部電極/p層の材料とn層の材料の混合層/上部電極
(5)下部電極/[p層/(i層/)n層の繰り返し層]/上部電極
及び上記(2)、(3)の構成のp層とn層を置換した構造が挙げられる。
(6)下部電極/バッファー層/p層/i層/n層/上部電極
(7)下部電極/p層/i層/n層/バッファー層/上部電極
(8)下部電極/バッファー層/p層/i層/n層/バッファー層/上部電極
(9)下部電極/バッファー層/[p層/(i層/)n層の繰り返し層]/上部電極
(10)下部電極/[p層/(i層/)n層の繰り返し層]/バッファー層/上部電極
(11)下部電極/バッファー層/[p層/(i層/)n層の繰り返し層]/バッファー層/上部電極
本発明の有機薄膜太陽電池用材料を含まない層の材料や、本発明の有機薄膜太陽電池用材料と混合する層の材料としては、有機薄膜太陽電池で使用される公知の材料を使用することができる。
次に、上記構成において使用し得る各層の材料について説明する。
下部電極、上部電極の材料に特に制限はなく、公知の導電性材料を使用できる。
例えば、p層と接続する電極としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や金(Au)、オスミウム(Os)、及びパラジウム(Pd)等の金属が使用できる。また、n層と接続する電極としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、カルシウム(Ca)、白金(Pt)、及びリチウム(Li)等の一成分金属や、マグネシウム(Mg)−Ag、Mg−In、及びAl−Li等の二成分金属、さらには、上記のp層と接続する電極として例示した金属が使用できる。
なお、一対の電極構成の好ましい構成は、電極部の一方が仕事関数の大きな金属を含み、他方は仕事関数の小さな金属を含む構成である。仕事関数の大きな電極材料としては、ITO、Os、及びPd等であり、仕事関数の小さな電極材料としては、Al、In、Mg−Agの合金、Ca、Li、及びMg等である。
膜厚は材料により適宜選択可能であるが、好ましくは1nm〜10μmであり、より好ましくは5nm〜1μmである。
p層に使用し得る材料としては、正孔受容体としての機能を有する公知の材料を使用することができる。
p層の材料としては、N,N’−ビス(3−トリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(mTPD)、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)、及び4,4’,4’’−トリス(フェニル−3−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等のアミン化合物;フタロシアニン(Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、及びチタニルフタロシアニン(TiOPc)等のフタロシアニン類;オクタエチルポルフィリン(OEP)、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)、及び亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)等のポルフィリン類;ポリヘキシルチオフェン(P3HT)、及びメトキシエチルヘキシロキシフェニレンビニレン(MEHPPV)等の主鎖型共役高分子類やポリビニルカルバゾール等の側鎖型高分子類等の高分子化合物等が挙げられる。
p層の膜厚は、好ましくは5nm〜5μmであり、より好ましくは10nm〜1μmである。
n層に使用し得る材料としては、電子受容体としての機能を有する公知の材料を使用できる。
n層の材料としては、有機化合物であれば、C60、C70、C76、C78、及びC84等のフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、及びキナクリドン等や、ビニル基の水素原子がシアノ基に置換したCN−ポリ(フェニレン−ビニレン)[CN−PPV]又はMEH−CN−PPV、シアノ基又はトリフルオロメチル基含有ポリマー、及びポリ(フルオレン)誘導体等を挙げることができる。これらの中でも、電子の移動度が高い材料、さらには、電子親和力が小さい材料が好ましい。このように、電子親和力の小さい材料をn層として組み合わせることで、充分な開放端電圧を実現することができる。
また、n層の材料としては、無機化合物であれば、n型シリコン(n−Si)、GaAs、CdS、PbS、CdSe、InP、Nb2O5、WO3、Fe2O3等のドーピング半導体及び化合物半導体や、二酸化チタン(TiO2)、一酸化チタン(TiO)、及び三酸化二チタン(Ti2O3)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、及び酸化スズ(SnO2)等の導電性酸化物が挙げられる。これらの中でも、酸化チタンが好ましく、二酸化チタンがより好ましい。n層の材料として無機化合物を用いる場合、無機化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、n層には上記公知の材料を使用し、p層に本発明の有機薄膜太陽電池用材料を用いて得られる有機薄膜太陽電池が、光電変換効率の観点から好ましい。この場合、n層の公知材料としては、フラーレン誘導体が好ましく、C60フラーレンがより好ましい。
n層の膜厚は、好ましくは5nm〜5μmであり、より好ましくは10nm〜1μmである。
n層とp層の間にi層を設ける場合、i層の材料としては、通常、n層に使用する材料とp層に使用する材料の混合物を使用する。つまり、本発明の有機薄膜太陽電池用材料をn層に用いるときは、本発明の有機薄膜太陽電池用材料と上記p層の公知材料との混合物であり、本発明の有機薄膜太陽電池用材料をp層に用いるときは、本発明の有機薄膜太陽電池用材料と上記n層の公知材料との混合物である。また、本発明の有機薄膜太陽電池用材料を単独でi層として用い、p層、n層の材料として上記公知材料を使用することもできる。
n層の材料とp層の材料との混合比は、体積比で1:5〜5:1が好ましく、1:2〜2:1がより好ましく、0.9:1.1〜1.1:0.9がさらに好ましい。
i層を設ける場合、その膜厚は、好ましくは1nm〜2μmであり、より好ましくは5nm〜1μmである。
一般に、有機薄膜太陽電池はその総膜厚が薄いため、上部電極と下部電極が短絡し、セル作製の歩留まりが低下することが多い。このような場合には、バッファー層を積層することによってこれを防止することが好ましい。
バッファー層に好ましい化合物としては、膜厚を厚くしても短絡電流が低下しないようにキャリア移動度が充分に高い化合物が好ましい。例えば、低分子化合物であれば下記のNTCDAに代表される芳香族環状酸無水物等が挙げられ、高分子化合物であればポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン;下記のポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリアニリン;カンファースルホン酸(PANI:CSA)等に代表される公知の導電性高分子等が挙げられる。
バッファー層の膜厚は、好ましくは1nm〜3μmであり、より好ましくは5nm〜1μmである。
基板は、通常、有機薄膜太陽電池に用いられる基板でよい。機械的、熱的強度を有し、透明性を有するガラス基板や透明性樹脂フィルムを使用することが好ましい。
透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及びポリプロピレン等が挙げられる。
本発明の有機薄膜太陽電池の各層の形成方法に特に制限はなく、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、及びイオンプレーティング等の乾式成膜法や、スピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、及びインクジェット等の湿式成膜法を適用することができる。この方法により、各層を前記した各層の膜厚に調整することが好ましい。一般に有機薄膜の励起子拡散長は短いことが知られているため、膜厚が厚すぎると励起子がヘテロ界面に到達する前に失活してしまい、光電変換効率が低くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生してしまうため、充分なダイオード特性が得られず、変換効率が低下する。
上記湿式成膜法を適用する場合、材料を適切な溶媒に溶解又は分散させて有機溶液を調製してから薄膜を形成する。かかる溶媒としては任意の溶媒を使用でき、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びクロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びアニソール等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、及びエチレングリコール等のアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、及びテトラリン等の炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び酢酸アミル等のエステル系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、炭化水素系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は、単独で使用しても複数混合して用いてもよい。なお、溶媒は特にこれらに限定されるものではない。
また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
なお、各例において、ソーラーシミュレーター(装置名「SS−50XIL」、英弘精機株式会社製)を用いて、AM1.5条件(光強度100mW/cm2)下で、I−V特性を測定し、開放端電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)、光電変換効率(η)を求めた。同じPin(光強度)において、Voc、Jsc及びFFがいずれも大きな化合物ほど優れた光電変換効率を示す。なお、光電変換効率は下記式によって導出した。
以下の合成経路で、下記化合物Aを製造した。
無水フタル酸(5g,34mmol)と塩化アルミニウム(9g,68mmol,2eq.)を1,2−ジクロロエタン(45ml)に懸濁し、室温で20分撹拌した。これにピレン(8.2g,41mmol,1.2eq.)を加え、室温で10分撹拌した後、40℃で2時間撹拌した。反応混合物を氷水(100g)に投入し、5質量%塩酸(15ml)を加え、固体をろ別、水、ジクロロメタン(200ml)で洗浄して黄色固体(9.8g,82%)を得た。1,2−ジクロロメタン洗浄液を飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去、トルエン(50ml)で洗浄して黄色固体の中間体A1(1.8g,15%)を得た。合わせて収量11.6g(97%)であった。
中間体A1(9.8g,28mmol)とポリリン酸(70g)を混合し、140℃で2時間撹拌した。反応混合物を氷水(100g)に投入し、生じた固体をろ別、メタノールで洗浄して黒色固体(10.4g)を得た。これをジクロロメタン(1000ml)に溶かし、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタン)で精製して褐色固体の中間体A2(3.4g,37%)を得た。
中間体A2の1H−NMR(核磁気共鳴分光法、溶媒:CDCl3, TMS)データを以下に示す。
窒素雰囲気下、4−プロピルブロモベンゼン(6.1g,31mmol,3eq.)を無水テトラヒドロフラン(THF)(35ml)と無水トルエン(35ml)の混合溶媒に溶かし、ドライアイス/メタノール浴で−56℃に冷却した。これにn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.6mol/L,19ml,30mmol,1eq.)を徐々に滴下し、−67℃で1時間撹拌した。反応混合物に中間体A2(3.4g,10mmol)を加え、室温で10時間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加えて失活させ、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して赤色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてジクロロメタン、最後にジクロロメタン+3%メタノール)で精製して淡褐色固体の中間体A3(4.4g,77%)を得た。
中間体A3の1H−NMR(核磁気共鳴分光法、溶媒:CDCl3, TMS)データを以下に示す。
中間体A3(4.4g,7.7mmol)、ヨウ化カリウム(3.8g,23mmol,3eq.)、ホスフィン酸ナトリウム1水和物(1.2g,11mmol,0.5eq.対 KI)を酢酸(40ml)に溶かし、2時間還流した。反応混合物を水(50ml)で希釈し、生じた固体をろ別、水、少量のメタノールで洗浄して橙色固体(4.0g)を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン、続いてヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(4.1g,98%)を得た。得られた個体をエタノール(30ml)+トルエン(170ml)で再結晶して橙色板状晶の化合物A(2.2g)を得た。
得られた化合物Aの1H−NMR(核磁気共鳴分光法、溶媒:CDCl3, TMS)データ、及び物性を以下に示す。
・FDMS:計算値C42H34=538、実測値m/z=538 (M+, 100).
・HPLC:98.0% (UV254, 面積%)
・HPLC:96.4% (UV254, 面積%)
・吸収極大波長:480nm (CH2Cl2)
以下の合成経路で、下記化合物Bを製造した。
窒素雰囲気下、1,4−クリセンキノン(5.0g,19mmol)、1,2−ビス・ジブロモメチル・ベンゼン(8.2g,19mmol)、ヨウ化ナトリウム(19g,0.13mol,6.7eq.)を無水ジメチルホルムアミド(DMF)(100ml)に溶かし、70℃で11時間撹拌した。反応混合物をろ別し、メタノールで洗浄して黄色固体の中間体B1(3.7g,54%)を得た。
中間体B1の1H−NMR(核磁気共鳴分光法、溶媒:CDCl3, TMS)データを以下に示す。
1H−NMR(400MHz):d 7.70-7.80 (4H, m), 7.98-8.13 (4H, m), 8.70-8.88 (4H, m), 9.20 (1H, d, J=9Hz), 9.70 (1H, d, J=9Hz).
窒素雰囲気下、4−プロピルブロモベンゼン(6.2g,31mmol,3eq.)を無水THF(40ml)と無水トルエン(40ml)の混合溶媒に溶かし、ドライアイス/メタノール浴で−63℃に冷却した。これにn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.6mol/L,19ml,30mmol,1eq.)を徐々に滴下し、−67℃で1時間撹拌した。反応混合物に中間体B1(3.7g,10mmol)を加え、室温で10時間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加えて失活させ、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して赤色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてジクロロメタン、最後にジクロロメタン+3%メタノール)で精製して淡褐色アモルファス固体の中間体B2(3.0g,50%)を得た。
中間体B2の1H−NMR(核磁気共鳴分光法、溶媒:CDCl3, TMS)データを以下に示す。
中間体B2(3.0g,5.0mmol)、ヨウ化カリウム(2.5g,15mmol,3eq.)、ホスフィン酸ナトリウム1水和物(0.8g,7.5mmol,0.5eq.対 KI)を酢酸(25ml)に溶かし、2時間還流した。反応混合物を水(50ml)で希釈し、生じた固体をろ別、水、少量のメタノールで洗浄して橙色固体(2.7g)を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して橙色固体(2.3g,82%)を得た。得られた個体をエタノール(20ml)+トルエン(90ml)で再結晶して橙色針状晶の化合物B(1.8g)を得た。
得られた化合物Bの1H−NMR(核磁気共鳴分光法、溶媒:CDCl3, TMS)データ、及び物性を以下に示す。
・FDMS:計算値C44H36=564、実測値m/z=564 (M+, 100).
・HPLC:97.2% (UV254, 面積%)
・HPLC:94.5% (UV254, 面積%)
・吸収極大波長:491nm (CH2Cl2)
以下の合成経路で、下記化合物Cを製造した。
・FDMS:計算値C52H32=656、実測値m/z=656 (M+, 100).
・HPLC:96.8% (UV254, 面積%)
・吸収極大波長:565nm (CH2Cl2)
25mm×75mm×0.7mm厚のITO透明電極付きガラス基板を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄した後、UVオゾン洗浄を30分間実施した。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず下部電極である透明電極ラインが形成されている側の面上に、前記透明電極を覆うようにして、膜厚30nmの有機薄膜太陽電池用材料Aを抵抗加熱蒸着により0.1nm/sで成膜(p層)した。
続けて、この材料A膜上に膜厚60nmのC60フラーレンを抵抗加熱蒸着により0.1nm/sで成膜(n層)し、その上に膜厚10nmのバソクプロイン(BCP)を抵抗加熱蒸着により0.1nm/sで成膜した。
最後に、連続して対向電極として金属Alを膜厚80nm蒸着させ、有機太陽電池を形成した。面積は0.5cm2であった。
このように作製された有機太陽電池のI−V特性を測定した。その結果を表1に示す。
有機薄膜太陽電池用材料Aを有機薄膜太陽電池用材料Bに変更した以外は実施例1と同様に有機太陽電池を作製した。このように作製された有機太陽電池のI−V特性を測定した。その結果を表1に示す。
有機薄膜太陽電池用材料Aを有機薄膜太陽電池用材料Cに変更した以外は実施例1と同様に有機太陽電池を作製した。このように作製された有機太陽電池のI−V特性を測定した。その結果を表1に示す。
C60をC70に変更した以外は実施例1と同様に有機太陽電池を作製した。このように作製された有機太陽電池のI−V特性を測定した。その結果を表1に示す。
有機薄膜太陽電池材料AをmTPDへ変更した以外は実施例1と同様に有機太陽電池を作製した。このように作製された有機太陽電池のI−V特性を測定した。その結果を表1に示す。
石英基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、特開2008−34764に記載されているルブレンを抵抗加熱蒸着により0.1nm/sで成膜し、膜厚30nmの薄膜を作製した。この薄膜の紫外・可視吸収スペクトルを測定したところ、可視領域に吸収がまったく観測されなかった。このことより、ルブレンは酸素や光に対する安定性が低く、実用に耐え得る有機薄膜太陽電池材料ではないことが確認された。
Claims (10)
- 下記一般式(I)で表わされる有機薄膜太陽電池用材料。
(式中、R1〜R5、R8、R10、R13は、水素原子を示し、R9及びR14は、それぞれ独立して、炭素数1〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数2〜40の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基を示し、R6、R7、R11、R12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数2〜40の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基を示す。R6とR7の示す基同士が互いに結合して環構造を形成してもよく、またR11とR12の示す基同士が互いに結合して環構造を形成してもよい。) - 上記一般式(I)中、R9及びR14が、それぞれ独立して、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基である、請求項1記載の有機薄膜太陽電池用材料。
- 上記一般式(I)中、R9及びR14が、それぞれ独立して、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基であり、R6とR7の示す基同士が互いに結合して環構造を形成し、またR11とR12の示す基同士が互いに結合して環構造を形成した、請求項1記載の有機薄膜太陽電池用材料。
- 上記一般式(II)中、R23及びR28が、それぞれ独立して、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基である、請求項4記載の有機薄膜太陽電池用材料。
- 上記一般式(II)中、R23及びR28が、それぞれ独立して、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基である、請求項4記載の有機薄膜太陽電池用材料。
- 上記一般式(III)中、R37及びR44が、それぞれ独立して、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又は炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基である、請求項7記載の有機薄膜太陽電池用材料。
- 上記一般式(III)中、R37及びR44が、それぞれ独立して、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基である、請求項7に記載の有機薄膜太陽電池用材料。
- 一対の電極の間に少なくともp層(正孔輸送層)を有し、該p層が請求項1〜9のいずれか記載の有機薄膜太陽電池用材料を含有する、有機薄膜太陽電池。
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