JP5525895B2 - 有機薄膜太陽電池材料及びそれを用いた有機薄膜太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、有機薄膜太陽電池用材料に用いることのできるキノキサリン化合物及びそれを用いた有機薄膜太陽電池に関する。
有機薄膜太陽電池は、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードや撮像素子、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池に代表されるように、光入力に対して電気出力を示す装置であり、電気入力に対して光出力を示すエレクトロルミネッセンス(EL)素子とは逆の応答を示す装置である。中でも太陽電池は、化石燃料の枯渇問題や地球温暖化問題を背景に、クリーンエネルギー源として近年大変注目されてきており、研究開発が盛んに行なわれるようになってきた。従来、実用化されてきたのは、単結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi等に代表されるシリコン系太陽電池であるが、高価であることや原料Siの不足問題等が表面化するにつれて、次世代太陽電池への要求が高まりつつある。このような背景の中で、有機太陽電池は、安価で毒性が低く、原材料不足の懸念もないことから、シリコン系太陽電池に次ぐ次世代の太陽電池として大変注目を集めている。
有機太陽電池は、基本的には電子を輸送するn層と正孔を輸送するp層からなっており、各層を構成する材料によって大きく2種類に分類される。
n層としてチタニア等の無機半導体表面にルテニウム色素等の増感色素を単分子吸着させ、p層として電解質溶液を用いたものは、色素増感太陽電池(所謂グレッツエルセル)と呼ばれ、変換効率の高さから、1991年以降精力的に研究されてきたが、溶液を用いるため、長時間の使用に際して液漏れする等の欠点を有していた。そこでこのような欠点を克服するため、電解質溶液を固体化して全固体型の色素増感太陽電池を模索する研究も最近なされているが、多孔質チタニアの細孔に有機物をしみ込ませる技術は難易度が高く、再現性よく高変換効率が発現できるセルは完成していないのが現状である。
一方、n層、p層ともに有機薄膜からなる有機薄膜太陽電池は、全固体型のため液漏れ等の欠点がなく、作製が容易であり、稀少金属であるルテニウム等を用いないこと等から最近注目を集め、精力的に研究がなされている。
有機薄膜太陽電池は、最初メロシアニン色素等を用いた単層膜で研究が進められてきたが、p層/n層の多層膜にすることで変換効率が向上することが見出され、それ以降多層膜が主流になってきている。このとき用いられた材料はp層として銅フタロシアニン(CuPc)、n層としてペリレンイミド類(PTCBI)であった。
その後、p層とn層の間にi層(p材料とn材料の混合層)を挿入して積層を増やすことにより、変換効率が向上することが見出された。しかしこのとき用いられた材料は、依然としてフタロシアニン類とペリレンイミド類であった。またその後、p/i/n層を何層も積層するというスタックセル構成によりさらに変換効率が向上することが見出されたが、このときの材料系はフタロシアニン類とC60であった。
高分子を用いた有機薄膜太陽電池では、p材料として導電性高分子を用い、n材料としてC60誘導体を用いてそれらを混合し、熱処理することによりミクロ層分離を誘起してヘテロ界面を増やし、変換効率を向上させるという、所謂バルクヘテロ構造の研究が主に行なわれてきた。ここで用いられてきた材料系はおもに、p材料としてP3HTと呼ばれる可溶性ポリチオフェン誘導体、n材料としてPCBMと呼ばれる可溶性C60誘導体であった。
このように、有機薄膜太陽電池では、セル構成及びモルフォロジーの最適化により変換効率の向上がもたらされてきたが、そこで用いられる材料系は初期の頃からあまり進展がなく、依然としてフタロシアニン類、ペリレンイミド類、C60類が用いられてきた。従って、それらに代わる新たな材料系の開発が熱望されていた。
一般に有機太陽電池の動作過程は、(1)光吸収及び励起子生成、(2)励起子拡散、(3)電荷分離、(4)キャリア移動、(5)起電力発生の素過程からなっており、有機物は概して太陽光スペクトルに合致する吸収特性を示すものが多くないため、高い変換効率は達成できないことが多かった。
一方、有機EL素子の開発が近年精力的に行なわれるようになり、その中から優れた正孔輸送材料及び正孔注入材料であるアミン化合物が見出された。このようなアミン化合物は優れた正孔輸送特性を有するため、有機薄膜太陽電池用のp材料として使用できる可能性を有しているものの、可視光領域に光吸収を示さないため、太陽光スペクトルに対する吸収特性が不十分であり、光電変換効率が十分ではないという欠点を有していた。
ところで有機化合物では一般に、可視光領域に吸収を持たせるためには、π電子共役系を拡大して吸収極大波長を長波長化すればよいことが知られている。ただし、あまりに共役系を拡張して分子量が大きくなりすぎると、溶媒に対する溶解性が低下して精製が困難になったり、昇華温度が上昇して昇華精製できなくなる等の難点が顕在化してくる。そこで、ある程度分子量を抑えながら効率的に吸収波長を長波長に持たせる手法の一例としてポリアセン類が知られている。例えば、特許文献1及び2にはポリアセン化合物を太陽電池材料に適用する技術が開示されている。しかし一般にポリアセン類は可視吸収領域を広げるために縮環数を増やすと、光や酸素に対して不安定になるため、精製や取り扱いが困難になり、高純度化も困難である等の欠点を有しており、実用的な太陽電池材料とは言いがたい。
特開2008−091380号公報 特開2008−135540号公報
本発明の目的は、有機エレクトロニクス材料として有用なキノキサリン化合物を提供することであり、特に有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す化合物を提供することである。
本発明によれば、以下のキノキサリン化合物等が提供される。
1.式(A1)で表されるキノキサリン化合物。
Figure 0005525895
(式中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルケニル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキニル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルコキシ基、置換もしくは無置換のC〜C40のアリールオキシ基、又は下記構造のアミノ基であり、R〜R10のうち少なくとも1つは下記構造のアミノ基であり、RとR又はRとR10は互いに連結してベンゼン環を形成してもよい。
Figure 0005525895
(式中、R、Rは置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基又は置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基である。))
2.式(B1)で表される1に記載のキノキサリン化合物。
Figure 0005525895
(式中、R21〜R29はそれぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルケニル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキニル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換のC〜C40のアリールオキシ基であり、R、Rは置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基、又は置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基であり、R24とR25又はR28とR29は互いに連結してベンゼン環を形成してもよい。)
3.式(C1)で表される2に記載のキノキサリン化合物。
Figure 0005525895
(式中、R101〜R119はそれぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のヘテロアリール基、又は置換もしくは無置換のC〜C40のアルコキシ基であり、R104とR105又はR108とR109は互いに連結してベンゼン環を形成してもよい。)
4.1〜3のいずれかに記載のキノキサリン化合物からなる有機薄膜太陽電池材料。
5.1〜3のいずれかに記載のキノキサリン化合物を含有する有機薄膜太陽電池。
6.1〜3のいずれかに記載のキノキサリン化合物を用いたp層を有する5に記載の有機薄膜太陽電池。
7.フラーレン誘導体を用いたn層を有する6に記載の有機薄膜太陽電池。
本発明によれば、有機エレクトロニクス材料として有用なキノキサリン化合物を提供でき、特に有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す化合物が提供できる。
本発明のキノキサリン化合物は下記式(A1)で表される。
Figure 0005525895
式中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルケニル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキニル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルコキシ基、置換もしくは無置換のC〜C40のアリールオキシ基、又は下記構造のアミノ基である。
〜R10のうち少なくとも1つ、好ましくは1つが下記構造のアミノ基である。例えばR〜R及びR〜Rのいずれか1つ、好ましくはR又はRが下記構造のアミノ基である。下記構造のアミノ基ではないR〜R10は、好ましくは水素である。
とR又はRとR10は互いに連結してベンゼン環を形成してもよい。
Figure 0005525895
式中、R、Rは置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基又は置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基である。
本発明のキノキサリン化合物は、好ましくは下記式(B1)で表される。
Figure 0005525895
式中、R21〜R29はそれぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルケニル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキニル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換のC〜C40のアリールオキシ基である。好ましくは水素である。
24とR25又はR28とR29が連結してベンゼン環を形成してもよい。
、Rは式(A1)と同じである。
また、本発明のキノキサリン化合物は下記式(C1)で表される。
Figure 0005525895
式中、R101〜R119はそれぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基、置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基、置換もしくは無置換のC〜C40のヘテロアリール基、又は置換もしくは無置換のC〜C40のアルコキシ基である。好ましくは水素である。
104とR105、R108とR109が連結してベンゼン環を形成してもよい。
置換もしくは無置換のC〜C40のアルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、2−エチルヘキシル、3,7−ジメチルオクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ノルボルニル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、α,α−ジメチルベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル等が好ましい。
置換もしくは無置換のC〜C40のアルケニル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、オレイル、エイコサペンタエニル、ドコサヘキサエニル、スチリル、2,2−ジフェニルビニル、1,2,2−トリフェニルビニル、2−フェニル−2−プロペニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ビニル、スチリル、2,2−ジフェニルビニル等が好ましい。
置換もしくは無置換のC〜C40のアルキニル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、エテニル、プロピニル、2−フェニルエテニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、エテニル、2−フェニルエテニル等が好ましい。
置換もしくは無置換のC〜C40のアリール基の具体例としては、フェニル、2−トリル、4−トリル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−シアノフェニル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、ターフェニリル、3,5−ジフェニルフェニル、3,4−ジフェニルフェニル、ペンタフェニルフェニル、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル、フルオレニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントリル、2−アントリル、9−フェナントリル、1−ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、コロニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フェニル、4−ビフェニリル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−フェナントリル等が好ましい。
置換もしくは無置換のC〜C40のヘテロアリール基の具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ベンズピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フラン、チオフェン、ピリジン、カルバゾール等が好ましい。含窒素アゾール系へテロ環の場合の結合位置は、炭素だけでなく窒素で結合することができる。
置換もしくは無置換のC〜C40のアルコキシ基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メトキシ、エトキシ、1−プロピルオキシ、2−プロピルオキシ、1−ブチルオキシ、2−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1−アダマンチルオキシ、2−アダマンチルオキシ、ノルボルニルオキシ、トリフルオロメトキシ、ベンジロキシ、α,α−ジメチルベンジロキシ、2−フェニルエトキシ、1−フェニルエトキシ等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、メトキシ、エトキシ、ter−ブチルオキシ等が好ましい。
置換もしくは無置換のC〜C40のアリールオキシ基の具体例としては、前記アリール基に酸素が結合した基が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フェノキシ、ナフトキシ、フェナントリルオキシ等が好ましい。
本発明で用いることのできる化合物としては、例えば以下の構造の化合物を挙げることができる。
Figure 0005525895
Figure 0005525895
本発明の化合物を合成する方法としては種々のものがあるが、合成経路の一例を以下に示す。一般にキノキサリン誘導体の合成経路は、原料が入手し易く、反応条件が温和で、高収率で目的物を与える。
Figure 0005525895
式中、Xはハロゲン原子であり、R21〜R29、R、Rは式(B1)と同じである。
工程1では、芳香族オルトジアミンと芳香族ジケトンを縮合し、キノキサリン骨格を構築する。
工程2では、ニッケルやパラジウム、銅等の遷移金属を用いてキノキサリン母核にC−N結合生成反応を行なうもので、ニッケルやパラジウムを用いる反応をBuchwald−Hartwig反応、銅を用いるものをUllmann反応と呼ばれるが、いずれの反応も用いることができる。上記反応の中では、反応条件が温和であり、種々の官能基選択性に優れていることから、Buchwald−Hartwig反応が好ましい。また、R21〜R23を異なる置換基にするときはアミンとハライドの量論比を調整して段階的にアミノ基を導入すればよい。
上記のキノキサリン化合物は有機薄膜太陽電池に用いることができる。これら化合物を用いた有機薄膜太陽電池は、高効率の変換特性を示す。
本発明の有機薄膜太陽電池のセル構造は、一対の電極の間に上記化合物を含有する構造であれば特に限定されるものでない。具体的には、安定な絶縁性基板上に下記の構成を有する構造が挙げられる。
(1)下部電極/有機化合物層/上部電極
(2)下部電極/p層/n層/上部電極
(3)下部電極/p層/i層(又はp材料とn材料の混合層)/n層/上部電極
(4)下部電極/p材料とn材料の混合層/上部電極
及び上記(2)、(3)の構成のp層とn層を置換した構造が挙げられる。
また、必要に応じて、電極と有機層の間にバッファー層を設けてもよい。例えば具体例として、上記構成(1)にバッファー層を設けた場合、下記構成を有する構造が挙げられる。
(5)下部電極/バッファー層/p層/n層/上部電極
(6)下部電極/p層/n層/バッファー層/上部電極
(7)下部電極/バッファー層/p層/n層/バッファー層/上部電極
本発明のキノキサリン化合物(有機薄膜太陽電池材料)は、例えば、有機化合物層、p層、n層、i層、p材料とn材料の混合層、バッファー層に使用できる。1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
本発明の有機薄膜太陽電池では、電池を構成するいずれかの部材に本発明の材料を含有していればよい。また、本発明の材料を含有する部材は、他の成分を併せて含んでいてもよい。本発明の材料を含まない部材や混合材料については、有機薄膜太陽電池で使用される公知の部材や材料を使用することができる。以下、各構成部材について簡単に説明する。
1.下部電極、上部電極
下部電極、上部電極の材料は特に制限はなく、公知の導電性材料を使用できる。例えば、p層と接続する電極としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や金(Au)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)等の金属が使用でき、n層と接続する電極としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、カルシウム(Ca)、白金(Pt)リチウム(Li)等の金属やMg:Ag、Mg:InやAl:Li等の二成分金属系,さらには上記P層と接続する電極例示材料が使用できる。
尚、高効率の光電変換特性を得るためには、例えば有機薄膜太陽電池が太陽電池の場合、太陽電池の少なくとも一方の面は太陽光スペクトルにおいて充分透明にすることが望ましい。透明電極は、公知の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように形成する。受光面の電極の光透過率は10%以上とすることが望ましい。一対の電極構成の好ましい構成では、電極部の一方が仕事関数の大きな金属を含み、他方は仕事関数の小さな金属を含む。
2.有機化合物層
p層、p材料とn材料の混合層又はn層のいずれかである。本発明の材料を有機化合物層に使用するとき、具体的には、下部電極/本発明の材料の単独層/上部電極や、下部電極/本発明の材料と、後述するn層材料又はp層材料の混合層/上部電極等の構成が挙げられる。
3.p層、n層、i層
本発明の材料をp層に用いるときは、n層は特に限定されないが、電子受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば有機化合物であれば、C60、C70、PCBM、PC70BM等のフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等、高分子系ではCN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基又はCF基含有ポリマー、それらの−CF置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体等を挙げることができる。電子の移動度が高い材料が好ましい。さらに、好ましくは、電子親和力が小さい材料が好ましい。このように電子親和力の小さい材料をn層として組み合わせることで充分な開放端電圧を実現することができる。
また、無機化合物であれば、n型特性の無機半導体化合物を挙げることができる。具体的には、n−Si、GaAs、CdS、PbS、CdSe、InP、Nb,WO,Fe等のドーピング半導体及び化合物半導体、また、二酸化チタン(TiO)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の導電性酸化物が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、酸化チタン、特に好ましくは、二酸化チタンを用いる。
本発明の材料をn層に用いるときは、p層は特に限定されないが、正孔受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば有機化合物であれば、N,N’−ビス(3−トリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(mTPD)、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)、4,4’,4’’−トリス(フェニル−3−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等に代表されるアミン化合物、フタロシアニン(Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、チタニルフタロシアニン(TiOPc)等のフタロシアニン類、オクタエチルポルフィリン(OEP)、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)、亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)等に代表されるポルフィリン類、高分子化合物であれば、ポリヘキシルチオフェン(P3HT)、メトキシエチルヘキシロキシフェニレンビニレン(MEHPPV)等の主鎖型共役高分子類、ポリビニルカルバゾール等に代表される側鎖型高分子類等が挙げられる。
本発明の材料をi層に用いるときは、上記p層化合物もしくはn層化合物と混合してi層を形成してもよいが、本発明の材料を単独でi層として用いることもできる。その場合のp層もしくはn層は、上記例示化合物のいずれも用いることができる。
4.バッファー層
一般に、有機薄膜太陽電池は総膜厚が薄いことが多く、そのため上部電極と下部電極が短絡し、セル作製の歩留まりが低下することが多い。このような場合には、バッファー層を積層することによってこれを防止することが好ましい。
バッファー層に好ましい化合物としては、膜厚を厚くしても短絡電流が低下しないようにキャリア移動度が充分に高い化合物が好ましい。例えば、低分子化合物であれば下記に示すNTCDAに代表される芳香族環状酸無水物等が挙げられ、高分子化合物であればポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリアニリン:カンファースルホン酸(PANI:CSA)等に代表される公知の導電性高分子等が挙げられる。
Figure 0005525895
式中、n,mはくり返し数である。
また、バッファー層には、励起子が電極まで拡散して失活してしまうのを防止する役割を持たせることも可能である。このように励起子阻止層としてバッファー層を挿入することは、高効率化のために有効である。励起子阻止層は陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。この場合、励起子阻止層として好ましい材料としては、例えば有機EL用途で公知な正孔障壁層用材料又は電子障壁層用材料等が挙げられる。正孔障壁層として好ましい材料は、イオン化ポテンシャルが充分に大きい化合物であり、電子障壁層として好ましい材料は、電子親和力が充分に小さい化合物である。具体的には有機EL用途で公知な材料であるバソクプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)等が陰極側の正孔障壁層材料として挙げられる。
Figure 0005525895
さらに、バッファー層には、上記n層材料として例示した無機半導体化合物を用いてもよい。また、p型無機半導体化合物としてはCdTe、p−Si、SiC、GaAs、WO等を用いることができる。
5.基板
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものが好ましい。例えば、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムがある。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
有機薄膜太陽電池の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、インクジェット等の湿式成膜法を適用することができる。
各層の膜厚は特に限定されないが、適切な膜厚に設定する。一般に有機薄膜の励起子拡散長は短いことが知られているため、膜厚が厚すぎると励起子がヘテロ界面に到達する前に失活してしまうため光電変換効率が低くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生してしまうため、充分なダイオード特性が得られないため、変換効率が低下する。通常の膜厚は1nm〜10μmの範囲が適しているが、5nm〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。
乾式成膜法の場合、公知の抵抗加熱法が好ましく、混合層の形成には、例えば、複数の蒸発源からの同時蒸着による成膜方法が好ましい。さらに好ましくは、成膜時に基板温度を制御する。
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、適切な溶媒に溶解又は分散させて発光性有機溶液を調製し、薄膜を形成するが、任意の溶媒を使用できる。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。尚、使用可能な溶媒は、これらに限定されるものではない。
本発明においては、有機薄膜太陽電池のいずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。
また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
合成例1(化合物Aの合成)
Figure 0005525895
中間体Aの合成
窒素雰囲気下、アセナフテンキノン(1.8g,10mmol,1.0eq.)と4ブロモ−1,2−ジアミノベンゼン(3.7g,20mmol,2.0eq.)をエタノール(50ml)に溶かし、1時間還流した。生じた固体をろ別し、メタノールで洗浄して黄色固体(3.0g,91%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,テトラメチルシラン(TMS))、δ:7.82−7.89(3H,m),8.06−8.15(3H,m),8.39−8.44(3H,m)
化合物Aの合成
窒素雰囲気下、中間体A(3.0g,8.9mmol)、ジフェニルアミン(1.8g,10.7mmol,1.2eq.)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.12g,0.13mmol,3%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(1.0g,11mmol,1.2eq.)を無水トルエン(50ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(2.8M,0.08ml,0.21mmol,Pdに対して0.8eq.)を加えて7時間還流した。反応混合物をシリカゲルパッドを通してろ別し、トルエン(150ml)で洗浄した。ろ液を溶媒留去して得られた橙黄色固体をメタノールで洗浄後、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタンのみ)で精製して橙黄色固体(3.0g,80%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)、δ:7.15(2H,t,J=7Hz),7.22−7.25(4H,m),7.32−7.36(4H,m),7.53(1H,d,J=7Hz),7.66(1H,d,J=7Hz),7.81(2H,d,J=7Hz),8.01(1H,d,J=5Hz),8.07(2H,t,J=8Hz),8.35(2H,d,J=7Hz)、電界脱離質量分析法(FDMS):計算値C3019=421、実測値m/z=421(M,100)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC):99.9%(UV254面積%)、吸収極大波長:429nm(ジクロロメタン)、蛍光極大波長:556nm(ジクロロメタン)
得られた固体(2.3g)を280℃/8.5×10−1Paで昇華精製することにより橙黄色固体(1.9g)を得た(HPLC:97.8%(UV254面積%))。
合成例2(化合物Bの合成)
Figure 0005525895
中間体Bの合成
窒素雰囲気下、アセアンスレンキノン(2.4g,10mmol,1.0eq.)と4ブロモ−1,2−ジアミノベンゼン(1.9g,10mmol,1.0eq.)をエタノール(50ml)に溶かし、1時間還流した。生じた固体をろ別し、メタノールで洗浄して黄色固体(2.48g,90%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.67(1H,t,J=8Hz),7.82−7.87(3H,m),8.08−8.30(3H,m),8.40−8.50(2H,m),8.74(1H,s),9.62(1H,d,J=8Hz)
化合物Bの合成
窒素雰囲気下、中間体B(1.9g,5.0mmol)、ジフェニルアミン(1.0g,6.0mmol,1.2eq.)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.07g,0.08mmol,3%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(0.6g,6.0mmol,1.2eq.)を無水トルエン(50ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(2.8M,0.04ml,0.12mmol,Pdに対して0.8eq.)を加えて7時間還流した。反応混合物をシリカゲルパッドを通してろ別し、トルエン(150ml)で洗浄した。ろ液を溶媒留去して得られた橙黄色固体をメタノールで洗浄後、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタンのみ)で精製して橙黄色固体(0.8g,35%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.15(2H,t,J=7Hz),7.28−7.30(2H,m),7.34−7.41(5H,m),7.57(1H,dd,J=2Hz,4Hz),7.61(1H,t,J=7Hz),7.74−7.84(4H,m),8.04(1H,d,J=9Hz),8.20(2H,t,J=8Hz),8.42(1H,d,J=7Hz),8.68(1H,s),9.55(1H,d,J=8Hz)、FDMS:計算値C3421=471、実測値m/z=471(M,100)、HPLC:100.0%(UV254面積%)、吸収極大波長:451nm(ジクロロメタン)、蛍光極大波長:623nm(ジクロロメタン)
得られた固体(0.8g)を280℃/8.6×10−1Paで昇華精製することにより橙黄色固体(0.7g)を得た(HPLC:99.8%(UV254面積%))。
実施例1
25mm×75mm×0.7mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間実施した。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず下部電極である透明電極ラインが形成されている側の面上に、前記透明電極を覆うようにして膜厚30nmの化合物A(p型材料)を抵抗加熱蒸着により、1Å/sで成膜した。続けて、この化合物A膜上に膜厚60nmのC60(n型材料)を抵抗加熱蒸着により1Å/sで成膜した。さらに、バッファー層として10nmのバソクプロイン(BCP)を1Å/sで成膜した。最後に対向電極として金属Alを膜厚80nm蒸着させ、有機太陽電池を形成した。面積は0.5cmであった。このように作製された有機太陽電池をAM1.5条件下(光強度100mW/cm)でI−V特性を測定した。開放端電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)、変換効率(η)を表1に示す。
Figure 0005525895
実施例2
実施例1の化合物Aを化合物Bへ変更した以外は実施例1と同様に有機太陽電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1の化合物AをmTPDに変更した以外は実施例1と同様に有機太陽電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
Figure 0005525895
Figure 0005525895
一般に、太陽電池の光電変換効率(η)は次式によって表わされる。
Figure 0005525895
ここで、Vocは開放端電圧、Jscは短絡電流密度、FFは曲線因子、Pinは入射光エネルギーである。従って同じPinに対して、Voc、Jsc及びFFがいずれも大きな化合物ほど優れた変換効率を示す。
表1から、本発明化合物は従来のアミン化合物(比較例化合物)に比べ変換効率が向上しており、優れた太陽電池特性を示すことが明らかになった。
本発明の化合物は、有機薄膜太陽電池に使用でき、本発明の有機薄膜太陽電池は時計、携帯電話及びモバイルパソコン等の各種装置、電化製品の電源として使用できる。

Claims (4)

  1. 式(C1)で表されるキノキサリン化合物からなる有機薄膜太陽電池材料
    Figure 0005525895
    (式中、R101〜R 103 、R 106 〜R 107 、R 110 〜R 119 は水素であり 104 、R 105 、R 108 及びR 109 が水素である、又は104とR105 若しくは108とR109 の一方が互いに連結してベンゼン環を形成し、他方が水素である。)
  2. 請求項1に記載のキノキサリン化合物からなる有機薄膜太陽電池材料用いた有機薄膜太陽電池。
  3. 請求項1に記載のキノキサリン化合物からなる有機薄膜太陽電池材料を用いたp層を有する請求項に記載の有機薄膜太陽電池。
  4. フラーレン誘導体を用いたn層を有する請求項に記載の有機薄膜太陽電池。
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