JP5491631B2 - 肛門性器路の癌の早期診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、肛門性器路の癌、好ましくは、子宮頸癌及びその前段階の早期診断方法に関する。本方法は、ASTN1(アストロタクチン1)及びZNF671(転写因子であるジンクフィンガータンパク質671)の遺伝子領域のセグメントのメチル化状態を決定することに基づくものである。これらの遺伝子の少なくとも1つ又は両方の遺伝子のプロモータ領域及び/又は5’領域内のグアニン/シトシンが豊富な領域(いわゆるCpGアイランド)におけるDNAメチル化は、肛門性器路の癌又は当該癌の前段階に特徴的である。対応するように修飾されたDNAの検出は、診断に利用される。本発明はまた、本発明の診断方法の実施を可能にするキットに関する。
子宮頸部の癌(子宮頸癌)は、世界中の女性において2番目に最も頻度の高い悪性の癌疾患である。この癌は、いわゆる高リスクのヒトパピローマウイルス(hr−HPV)による感染の過程で、子宮頸部上皮内癌(CIN)と呼ばれる前段階を経て発症する。CIN1:(軽度異形成)は、上皮の基底から多くて3分の1の高さに及ぶ;CIN2:(中等度異形成)は、最大3分の2の上皮に及ぶ;CIN3:(高度異形成)は、上皮のほぼ全体に達する。CIN2及びCIN3は、重度の異形成と呼ばれる。後者の異形成に関しては、それらが子宮頸癌に変化するリスクが高い。本願において、CIN2、CIN3及び子宮頸癌は、CIN2+という名称で包含される。hr−HPV感染に加えて、さらなる因子も子宮頸部の発癌に関与する。
子宮頸癌及びその前段階(CIN)を検出するための既存の予防的な試験は、細胞形態学的な方法(パップテスト)に基づく。このパップテストは、顕微鏡を用いて、癌又はCINと疑われるいくつかの細胞を何千個もの正常細胞のバックグラウンドにおいて認識しなければならないので、非常に誤りがおきやすい。さらに、細胞の形態の評価は、きわめて主観的である。これらの欠点の結果として、パップテストの感度は、CIN2+の検出について53%であり、その特異度は、96.3%である(Cuzick et al.,2006;Int J Cancer,119:1095−1101)。
この癌検査は、分子試験法によって、かなり改善することができた。いくつかの例外は別として、すべての子宮頸癌及びそれらの前段階は、hr−HPVのDNAを含み、HPV−DNAは、癌検査のためのモデルマーカーであるとみられる。公開された様々な研究において、HPV−DNA試験(PCR法)が、CIN2+の検出について96.1%の感度及び90.7%の特異度を有すると示すことができた。しかしながら、多くの女性は、単にHPVに感染しているだけで癌の前段階ではないので、たった20.3%という、CIN2+に対するHPV−DNA試験の陽性予測値は予想どおり悪い(Cuzick et al.,2006;Int J Cancer,119:1095−1101)。したがって、肛門性器路の癌腫、特に、子宮頸癌の改善された診断法が必要とされる。
したがって、子宮頸癌などの肛門性器路の癌腫及び上記のそれらのすべての前段階の信頼できる早期診断をもたらす方法を提供することが、本発明の目的である。
本発明によれば、これは、請求項における主題によって達成される。
Cuzick et al.,2006;Int J Cancer 119:1095−1101 Esteller,2007,Hum.Mol.Genet.,16:R50−R59 Jacobs et al.,1995,J Clin Mircobiol 33:901−905 Shames et al.,2007,Cancer Lett.251:187−98 Yu et al.,2007,Clin Cancer Res 13:7296−7304 Wentzensen et al.,2009;Gynecologic Oncology 112,293−299 Huang et al.,Abstract ♯50,99th AACR Annual Meeting,April 12−16,2008,San Diego
本発明は、下でより詳細に記載される、ある特定の遺伝子のメチル化状態と肛門性器路の癌腫の発症との相関に関する本出願人の知見に基づく。癌腫及びその前段階では、遺伝子の上流、プロモータ及びプロモータ付近のエキソン領域におけるシトシン/グアニンが豊富なCpGアイランドが、対応する正常組織と比べて頻繁にメチル化される。この遺伝子のメチル化は、任意ではなく、それぞれの腫瘍の存在に依存する(Esteller,2007,Hum.Mol.Genet.,16:R50−R59)。したがって、本発明に基づくと、メチル化についての解析は、組織病理学的にCIN3と確認された女性患者及び子宮頸癌を有する女性患者の頸管スミアのDNAにおいてメチル化されていることが特に多い遺伝子を同定する目的で行われた。さらに、細胞学的に注意を引かないがhr−HPV陽性の女性の子宮頸部の頸管スミアのDNAにおけるそれらの遺伝子は、非常に稀にしかメチル化されていないか又は全くメチル化されていないはずである。本明細書中に列挙される解析は、遺伝子ASTN1及び/又はZNF671のある特定の領域のメチル化が、サンプル中の肛門性器路の癌腫(好ましくは:CIN2+)を検出するための価値あるマーカーであることを初めて示す(図2を参照のこと)。したがって、本発明は、サンプル(例えば、子宮頸部の細胞頸管スミア、子宮頸部洗浄液)中の子宮頸癌及びその重篤な前段階(CIN2+)を解析するための改善された方法を提供する。本発明者らによって示されるように、上で述べた2つの遺伝子のメチル化状態の判定が、すでに高度に有意であるにもかかわらず、1つ以上のさらなる遺伝子(例えば、DLX1(転写因子である遠位欠失ホメオボックス1)、EDIL3(EGF様リピート及びジスコイジンI様ドメイン3)、ITGA4(α4−インテグリン)及び/又はRXFP3(レラキシン/インスリン様ファミリーペプチド受容体3))のメチル化状態を判定することも、医学的に例外な場合における診断を保護するために役立つことがある。
本発明は、ASTN1及びZNF671のメチル化状態の(直接的又は間接的な)検出に基づく。好ましくは、遺伝子ASTN1及びZNF671のプロモータ領域が過剰メチル化されているか否かが検出される。メチル化は、通常、遺伝子のプロモータ領域に起こるので、関連性のある遺伝子のメチル化を検出するための方法は、通常、これらの領域に焦点が当てられる。しかしながら、GCが豊富なCpGアイランドは、そこだけに見られるわけではないので、遺伝子は、プロモータ領域以外の領域でもメチル化され得る。そのようなさらなる領域におけるメチル化の検出も、診断上有用である可能性があり、ゆえにそれも本発明の主題である。
本発明において、遺伝子ASTN1及びZNF671のメチル化状態は、好ましくは、プロモータ領域において検出される。これに関連して、ある特定のシトシンが、修飾される(すなわちメチル化される)ことにより5−メチルシトシンになっているか否かが調べられる。検出可能な臨床上の変化がなくhr−HPVに感染している女性に由来するサンプルからのDNAでは、メチル化は、そのDNAの対応する位置においてほとんど検出可能でないか、又は全く検出可能でない。しかしながら、CIN2+である女性では、選択されたシトシン残基におけるメチル化の確率は高い。
したがって、正常組織と比べて発癌中に生じている遺伝子のメチル化の特異的な検出は、パップテストに取って代わるように、HPV−DNA検出を補完することができる。CIN2+を検出するためのHPV試験の特異度は、平行して行われるメチル化解析によって、かなり改善され得る(図1及び2を参照のこと)。パップテスト及びHPV検出のために以前使用された試験される人由来の頸管スミア材料と同じ頸管スミア材料が、DNAメチル化を検出するための出発物質として役立つ。
様々な頸管スミアにおけるDNAメチル化を示す。HPV陰性、目立つ程度ではない女性患者(n=77)、HPV陽性、組織病理学的に目立つ程度ではない女性患者(n=90)、組織病理学的にCIN3と確認された女性患者(n=48)、及び子宮頸癌を有する女性患者(n=65)の頸管スミアから得られたDNAにおける、ASTN1遺伝子、DLX1遺伝子、EDIL3遺伝子、ITGA4遺伝子、RXFP3遺伝子及びZNF671遺伝子のメチル化頻度、並びにこれらの遺伝子の少なくとも1つの遺伝子のメチル化の頻度を示すグラフである。 様々な頸管スミアにおけるDNAメチル化を示す。HPV陰性、目立つ程度ではない女性患者(n=77)、HPV陽性、組織病理学的に目立つ程度ではない女性患者(n=90)、組織病理学的にCIN3と確認された女性患者(n=48)及び子宮頸癌を有する女性患者(n=65)の頸管スミアから得られたDNAにおける、ASTN1遺伝子及びZNF671遺伝子のメチル化頻度、並びにこれらの遺伝子の少なくとも1つの遺伝子のメチル化の頻度を示すグラフである。
したがって、本発明は、サンプル中の肛門生殖器癌又はその前段階を検出するための方法に関し、その方法は、ASTN1(アストロタクチン1)及びZNF671(ジンクフィンガータンパク質671)のメチル化状態の判定を包含し、ここで、一方又は両方の遺伝子の検出可能なメチル化は、肛門生殖器癌又はその前段階を示唆する。
所見が不確定の場合は、遺伝子DLX1(転写因子である遠位欠失ホメオボックス1)、EDI13(EGF様リピート及びジスコイジンI様ドメイン3)、ITGA4(α4−インテグリン)又はRXFP3(レラキシン/インスリン様ファミリーペプチド受容体3)のうちの1つ以上のメチル化状態を追加で判定することも必要に応じて可能である。
ASTN1(アストロタクチン1;アクセッション番号NM_004319.1、NM_207108、NC_000001.9に含まれる)は、神経細胞の遊走において重要な役割を果たす接着タンパク質である。ZNF671(アクセッション番号NM_024883、NC_000019.9に含まれる)は、典型的なジンクフィンガーモチーフを有する転写因子である。DLX1(遠位欠失ホメオボックス1;アクセッション番号NM_178120、NM_001038493、NC_000002.11に含まれる)は、転写因子であり、細胞分化に影響する。EDIL3(EGF様リピート及びジスコイジンI様ドメイン3;アクセッション番号NM_005711、NC_000005.8に含まれる)は、インテグリンリガンドであり、血管新生において重要な役割を果たす。それは、血管壁の再構築及び発生にとって重要であり得る。さらに、EDIL3は、内皮細胞の接着を促進する。ITGA4(α−4インテグリン;アクセッション番号NM_000885、NC_000002.10に含まれる)は、1つのβ−インテグリンとともに内在性膜タンパク質として存在するα−インテグリンのファミリーに属する。それらは、フィブロネクチンに対する受容体として役立ち、ゆえに細胞接着において重要な役割を果たす。RXFP3(レラキシン/インスリン様ファミリーペプチド受容体3;アクセッション番号NM_016568、NC_000005.8に含まれる)は、レラキシン3に対するGタンパク質共役型受容体として役立つ。
本明細書中で使用される表現「肛門生殖器癌」は、肛門性器路の癌のタイプ、すなわち、生殖器、会陰、肛門及び肛門周囲の領域における癌のタイプのすべてを包含する。これらのタイプは、好ましくは、子宮頸癌、外陰癌、卵巣癌及び子宮内膜癌である。
本明細書中で使用される表現「前段階」は、重篤な前段階のことを指し、それには、CIN2及びCIN3が含まれる。
本明細書中で使用される用語「サンプル」は、DNAメチル化を検出することができる任意の身体サンプルを包含する。そのような身体サンプルの例は、血液、頸管スミア、痰、尿、便、体液、胆汁、胃腸管分泌物、リンパ液、骨髄、器官吸引液及び生検材料である。特に、頸管スミア及び生検材料は、肛門生殖器の癌腫、例えば、子宮頸癌の検出が関係するときに有用である。当業者は、検体採取に適した方法及び補助剤を承知している。当業者はまた、サンプルからのDNA単離、例えば、フェノール/クロロホルムを用いるか又は市販のキットを用いた抽出の方法及び試薬も承知している。
本明細書中で使用される表現「メチル化状態」は、対応する遺伝子のプライマー結合部位の領域、好ましくは、5’−領域及びプロモータ領域におけるGCが豊富なCpGアイランドにおけるゲノムDNAの過剰メチル化のことを指す。
好ましい実施形態において、本発明に係る診断方法は、子宮頸部の癌(子宮頸癌)及びその前段階(CIN2+を含む)の診断に使用される。
本発明に係る方法は、遺伝子ASTN1及びZNF671のメチル化を判定する。本明細書中で使用される用語「メチル化」は、分子生物学において通常の用語「過剰メチル化」と同義である。これは、一般にグアニン及びシトシン、ならびに特にCG−ジヌクレオチドが豊富なDNAセグメント(いわゆるCpGアイランド)内の通常の状態とは異なるメチル化のことを指す。
本発明に係る方法のために使用されるサンプルは、好ましくは、非常に信頼できる結果を提供する子宮頸部の頸管スミアである。
ある遺伝子のプロモータ領域ならびに5’−エキソン領域及びプロモータ付近のエキソン領域のメチル化状態は、本発明に係る方法の別の好ましい実施形態において判定される。これらの領域は、特に情報価値がある。
DNAのメチル化は、好ましくは、好適なプライマー対を使用したメチル化特異的PCR(MSP)と呼ばれるものを用いる亜硫酸水素塩法によって、メチル化されていないシトシンを先に修飾した後に検出される。亜硫酸水素塩法では、メチル化されていないシトシンをウラシルに変換し、メチル化されているシトシン(5−メチルシトシン)をこの変換から保護する。ウラシルは、通常、シトシンとは異なる対形成特性を有し、すなわち、ウラシルは、チミンのように振舞う。MSPは、DNAメチル化を検出するための確立された手法である。MSPは、メチル化されているDNAとメチル化されていないDNAとの区別を可能にするプライマー及び場合によりプローブに基づき、すなわち、増幅産物の形成が、陽性の所見に対応するメチル化を示す。
メチル化状態を検出するためのプライマーの設計は、ASTN1及びZNF671のメチル化領域の所在及び配列に依存し、ならびにDLX1、EDIL3、ITGA4及び/又はRXFP3のメチル化状態が必要に応じて判定される場合は、これらの遺伝子のメチル化領域にも依存する。
本発明において使用可能なASTN1及びZNF671に対するメチル化特異的プライマーは、試験方法中に、プライマー結合部位内のある特定のシトシンがメチル化されている場合に亜硫酸水素塩で改変されたサンプルDNAだけに結合する。亜硫酸水素塩処理の前にこれらの領域がメチル化されていない場合、プライマーは結合せず、反応産物も形成されない。例えば、反応産物の存在は、特定の遺伝子のDNA領域のメチル化を指し、子宮頸部の頸管スミアのDNAの場合、例えば、CIN2+の存在の可能性を指す。
メチル化の定性的な検出だけでなく、メチル化されたDNAセグメントの定量も可能にする、リアルタイムPCR法(QMSP)が特に好ましい。このMSPは、蛍光に基づいたリアルタイム法において行うことができ、ここで、メチル化特異的産物の形成は、蛍光色素、例えば、SYBR−Greenの取り込みによって追跡される。マーカー遺伝子のメチル化は、メチル化されていないDNAが多いバックグラウンドにおいてこれらの2つの方法(MS及びQMSP)によって検出され得る(Shames et al.,2007,Cancer Lett.251:187−98)。PCRに基づいた方法は、ハイスループット法においても使用することができるので、これも癌検査に特に適している。
「MethyLight」法に基づくQMSPがなおもより好ましく、メチル化について試験されるそれぞれの遺伝子セグメントに対して蛍光プローブが使用される。そのプローブは、5’末端に蛍光色素を有し、3’末端にクエンチャーを有する。そのプローブは、2つの特異的プライマーの間のPCR反応産物に結合する。そのプローブは、標的配列に結合した後、DNAポリメラーゼの5’−3’−エキソヌクレアーゼ活性によって分解されるとすぐに、蛍光色素が放出される。測定される蛍光は、形成された産物の量を反映する。行われる反応の数は、いくつかのオリゴヌクレオチド及びプローブを使用することによってこの方法において調べられるサンプルに対応して減少し得る(Shames et al.,2007,Cancer Lett.251:187−98)。好適な蛍光色素及びクエンチャー(例えば、フルオロフォアとしてFAM、HEXTM、NEDTM、ROXTM、Texas RedTMなど、及びクエンチャーとしてTAMRA又はBHQ)は、当業者に公知である。
特に好ましい実施形態において、本発明の方法は、多重実験として行われる。そのような多重実験は、サンプル1つあたり1つのアッセイにおいて、例えばCIN2+の存在と相関すると知られているいくつかの遺伝子のメチル化状態の解析によって、CIN2+の検出を可能にする。試験される遺伝子セットのメチル化状態は、サンプル1つあたり1つ又は2つの反応において判定することができるので、その多重方法はいくつかの利点を提供する。これにより、かなりの時間、サンプル材料及び材料コストが節約される。この多重実験では、試験される最大5つの遺伝子に対して、メチル化特異的プライマーが使用される。さらに、プローブと呼ばれる、1つのさらなる特異的なオリゴヌクレオチドの各々が、すべての遺伝子に対して使用される。このプローブは、一方の末端に蛍光色素を有し、そのプローブが実験中に形成される反応産物に特異的に結合するまで蛍光が生じないように修飾されている。それらのプローブは、異なる蛍光基を有するので、すべてを同時に検出することができる。本発明に係る方法は、「マイクロアレイ」技術を用いても行うことができる。
当業者は、メチル化状態を判定するためのさらなる方法、例えば、蛍光による特異的産物の量の直接的な測定に基づく方法を承知している。例えば、分子ビーコン技術を、本発明に係る診断方法のために使用することもできる。分子ビーコンは、レポーターフルオロフォアとクエンチャーの両方に連結されたオリゴヌクレオチドである。そのプローブの5’末端におけるヌクレオチドは、分子ビーコンに特有である二次構造を形成するように、3’末端におけるヌクレオチドと相補的である。ヘアピン構造と呼ばれるこの状態では、レポーターは、それがクエンチャーとの距離が近いので、蛍光を示さない。クエンチャーとレポーターとの距離は、PCRサイクル中にプライマー間の相補DNA配列にループ領域が結合した結果として長くなる。かくして、そのレポーターの蛍光を観察することができる。
本発明に係る方法を行うために適した別の手法は、「スコーピオン」技術である。スコーピオンプローブは、1つの分子(一スコーピオン)又は2つの分子(二スコーピオン)においてリアルタイムPCRプローブの特性とPCRプライマーの特性とが組み合わされた複合的なオリゴヌクレオチドである。それらは、分子ビーコンと同様に、末端がレポーターフルオロフォア及びクエンチャーで修飾された自己相補的なシャフト領域を有する特徴的な二次構造を含む。さらに、これらのプローブは、3’末端にPCRプライマーを有する。PCRサイクル中、相補DNA配列にループ領域が結合し、そしてDNA濃度が上昇するときにクエンチャー及びレポーターとの距離が長くなることによって、レポーター蛍光が観察され得る。種々のプローブの結合を検出するためには、後者が蛍光色素分子と結合される。
さらに、本発明に係る方法が行われるとき、ポジディブコントロール遺伝子及び/又はネガティブコントロール遺伝子、例えば、メチル化されていないコントロール遺伝子が、同時に増幅され得る。
遺伝子のメチル化は、転写が阻止されること、ひいては翻訳されないことと関連があることが多いと知られている。したがって、本発明に係る方法は、対応するRNA及び/又はタンパク質の濃度を測定することによる、メチル化状態の間接的な判定も包含する。その検出は、通常の方法、例えば(RNAの場合)ノーザンブロット解析、RT−PCRなど、及び(タンパク質の場合)抗体に基づく方法又はタンパク質の生物学的活性の測定に基づく方法によって、行うことができる。
本発明に係る方法は、以下の工程に基づき得、例えば:
(a)試験される人の細胞頸管スミアから、標準的な方法に従って、例えば、QiaAmp DNA−Miniキットを製造者(QIAGEN,Hilden,Germany)の指示書に従って、DNAを単離する;
(b)第2の工程では、好ましくは、解析されるサンプルがhr−HPV−DNAを含むか否かを調べる。この検出は、GP5+/6+PCR EIA法(Jacobs et al.,1995 J Clin Microbiol 33:901−905)などのすでに確立されている方法を用いて行われる。すべてのhr−HPVタイプ(HPV16、18、26、31、33、35、39、45、51、52、53、56、58、59、66、68、73、82)が網羅されるべきである。ハウスキーピング遺伝子、例えば、β−グロビン又はβ−アクチンの検出によって、増幅され得る十分な品質の十分な量のDNAが、そのサンプル中で利用可能であることが保証される;
(c)HPV陰性サンプルでは、CIN2+の存在は、ほぼ100%排除される(Cuzick et al.,2006;Int.J.Cancer,119:1095−1101)。それゆえ、これらのサンプルは、さらに調べられる必要はない。次いで、CIN2+であるか又はそうでないhr−HPV陽性の所見を有する女性の区別を、遺伝子ASTN1及びZNF671のメチル化状態の判定によって行う;
(d)この目的のために、hr−HPV陽性サンプルのDNAを、亜硫酸水素塩法に従って、例えば、市販のキット(例えば、Methylation Gold Kit,Zymo Research,Orange,CA,U.S.A.)を用いて、化学的に変換する。ここでは、DNAサンプルのメチル化されていないシトシンのすべてが、重亜硫酸ナトリウムでの処理及びそれに続くアルカリ加水分解によって、ウラシルに変換される;
(e)関連するDNAを、それぞれのゲノムセグメントのメチル化された形態に対する特異的プライマーを用いたPCRによって増幅し、解析する;
(f)メチル化特異的PCR又はQMSPにおいて遺伝子ASTN1及びZNF671のメチル化を検出するために、以下のメチル化特異的プライマーを使用することができる:
Figure 0005491631
しかしながら、本発明に係る診断方法は、遺伝子ASTN1及びZNF671のメチル化を検出するためにこれらのプライマーを使用することに限定されない。本発明はまた、両方の遺伝子のメチル化を検出するために役立ち得る他の配列のプライマーも含む。
(g)MethyLight解析法によって遺伝子ASTN1及びZNF671のメチル化を検出するために、上に記載されたプライマーに加えて蛍光プローブを使用する:
Figure 0005491631
適用法に応じて、上記プローブは、対応する蛍光色素に結合される。しかしながら、本発明は、遺伝子ASTN1及びZNF671のメチル化を検出するためにこれらのプローブを使用することに限定されない。本発明はまた、両方の遺伝子のメチル化を検出するために役立ち得る他の配列を有するプローブも含む。
マーカー遺伝子のメチル化の定量は、必須ではない。決定的に重要なことは、例えば、MSP又はQMSPによって、マーカー遺伝子がメチル化されている少なくとも1つの細胞を、マーカー遺伝子がメチル化されていない1000個の細胞のバックグラウンドにおいて検出することができることである。
本発明に係る方法のさらに特に好ましい実施形態において、サンプル中のHPV−DNAがさらに定量される。これにより、亜硫酸水素塩修飾に対応するように適合されたhr−HPV特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRによって、亜硫酸水素塩処理によって修飾されたDNAにおいてHPV陽性細胞の数を査定することができる。それらのプライマーは、好ましくは、HPVゲノムの保存されたL1領域の増幅を可能にするものであり、例えば以下の配列を含み得る:
Figure 0005491631
さらに好ましい実施形態において、遺伝子DLX1、EDIL3、ITGA4及び/又はRXFP3の1つ以上のメチル化が調べられる。この目的のために使用可能なプライマーは、以下のものである:
Figure 0005491631
MethyLight解析法によって遺伝子DLX1、EDIL3、ITGA4及びRXFP3のメチル化を検出するために、上に記載されたプライマーに加えて蛍光プローブが使用される:
Figure 0005491631
適用法に応じて、上記プローブは、対応する蛍光色素に結合される。
本発明のさらなる主題は、本発明に係る方法を行うためのキットである。そのようなキットは、ASTN1(アストロタクチン1)及びZNF671(転写因子であるジンクフィンガータンパク質)のメチル化状態を判定するための遺伝子特異的プライマー又はプライマー対、好ましくは、上でより詳細に定義されたプライマー及び/又はプライマー対を備える。さらなる実施形態において、そのキットはさらに、DLX1(遠位欠失ホメオボックス1)、EDIL3(EGF様リピート及びジスコイジンI様ドメイン3)、ITGA4(α4−インテグリン)及び/又はRXFP3(レラキシン/インスリン様ファミリーペプチド受容体3)のメチル化状態を判定する遺伝子特異的プライマー又はプライマー対、好ましくは、上でより詳細に定義されたプライマー及び/又はプライマー対を備え得る。
本キットはさらに、上でより詳細に記載されたようなプローブ、及び/又はHPV感染を検出するためのプライマー対も備え得る。
最後に、本キットはさらに、別個の容器において、以下の構成物のうちの少なくとも1つを備え得る:
(a)DNA単離用試薬;
(b)DNA増幅用酵素;
(c)亜硫酸水素ナトリウム;
(d)1又はそれ以上の緩衝液。
本キットの個別の構成要素の1つ以上の類似物が、入手可能であり得る。
したがって、本発明を用いて、肛門性器路の癌腫、特に子宮頸癌を初期の段階で診断することが可能である。特に、これらの癌腫の前段階を早期に検出することができる。臨床上関連性のある組織の改変、例えば、CIN2+であるか又はそうでないhr−HPV陽性の女性の識別を行うことができることが指摘されなければならない。別の特徴的な因子は、本発明に係る方法によって得られる結果が主観評価に供されず、それゆえ例えばパップテストの偽陰性又は偽陽性の結果を回避することができる点である。さらに、本発明に係る診断方法は、迅速かつ簡便な操作によって区別するので、大規模なスクリーニング測定、特に、第三世界諸国において適している。したがって、本発明は、肛門生殖器の癌、特に子宮頸癌又はそれらの前段階の現用の診断法に対して重要な寄与をもたらす。
この点において、ASTN1及びZNF671のメチル化状態を判定する本発明の組み合わせの結果として、CIN2+病変の検出に関する優れた確定診断を達成することができ、それは他の遺伝子の個別の判定を上回るものであることに注目されるべきである。例えば、RXFP3(Huang et al.)は、ASTN1及びZNF671よりも10%超劣るマーカーである(図1を参照のこと)。したがって、上で述べられたさらなるマーカー遺伝子のメチル化状態の追加の判定は、例外的な場合にのみ必要であり、診断を確認するためだけに本発明に従って使用される。
本発明は、以下の実施例によって説明される。
実施例1 頸管スミアにおけるDNAメチル化
(1)77人のHPV陰性女性の頸管スミア、(2)組織変化の徴候が(組織病理学的に)なかった90人のhr−HPV陽性女性の頸管スミア;(3)組織病理学的にCIN3と確認された48人のhr−HPV陽性女性の頸管スミア、及び(4)組織病理学的に子宮頸癌と確認された65人のhr−HPV陽性女性の頸管スミアを調べた。
結果を図2に示す。図2は、個別の群における遺伝子ASTN1及びZNF671のメチル化頻度を示している。これらの遺伝子の少なくとも1つのメチル化は、CIN3サンプルの87%及び子宮頸癌サンプルの90%に起きていたが、hr−HPV陰性の3%及び組織変化のないhr−HPV陽性の女性の5%でしか起きていなかった。したがって、これらの2つの遺伝子を組み合わせた結果として、ほぼ100%の確定診断を得ることが可能である。これは、本発明に係る方法の信頼性を示している。
HPV感染の検出とメチル化された遺伝子の検出の両方のためのPCRは、非常に感度が高い。本実施例は、HPV状態及びマーカー遺伝子のメチル化状態のそれぞれの定性的な測定に基づく。HPV DNAの定量的な測定によって、サンプル中のHPV陽性細胞の最小数に対応する限界値を定義することができる。結果として、メチル化特異的PCRの特異度は、CIN2+の検出に対してさらに高められ得る。

Claims (18)

  1. ASTN1(アストロタクチン1)及びZNF671(転写因子ジンクフィンガータンパク質671)のメチル化状態を決定することを備える、検体中の肛門性器路の癌又はその前段階を検出することを補助する方法であって、ASTN1及びZNF671が陽性サンプルにおいてメチル化されている方法であり、かつ、肛門性器路の癌が子宮頸癌である方法。
  2. 検体が頸管スミアである、請求項1に記載の方法。
  3. プロモータ領域のメチル化状態が決定される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 遺伝子のメチル化状態が、メチル化特異的PCR(MSP)により決定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. MSPが定量的MSP(QMSP)である、請求項4に記載の方法。
  6. 定量的MSPがMethyLight法に基づく、請求項5に記載の方法。
  7. 多重方式である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 以下の配列を含むプライマーペアを用いる、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法:
    (a)CGTAAGCGTTGTTAGCGTAGC(ASTN1_F) 及び
    CGCGAAATCGAAACGAAAACG(ASTN1_R);
    (b)CGGAGGACGTAGTATTTATTCGC(ZNF671_F)及び
    CTACGTCCCCGATCGAAACG(ZNF671_R)。
  9. プライマーペア又は請求項8で定義されたいくつかのプライマーペア、及び、以下の配列の1つを含む少なくとも一つの追加のプローブを用いる、請求項6又は7に記載の方法:
    (a)GTAATTCGTTTGTTTCGTAAGTTGTTCG(ASTN1);
    (b)CGTGGGCGCGGACAGTTGTCGGGAGCG(ZNF671)。
  10. 更に、HPV感染の検出を備える、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. HPVの検出がPCRにより行われる、請求項10に記載の方法。
  12. PCRにおいて以下の配列を備えるプライマーペアを用いる、請求項11に記載の方法:
    (a)GGTTATAATAATGGTATTTGTTGGG(HPV−F)、及び
    (b)TAAAAAATAAACTATAAATCATATTCC(HPV_R)。
  13. ASTN1(アストロタクチン1)及びZNF671(転写因子ジンクフィンガータンパク質671)のメチル化状態を決定するための、遺伝子特異的プライマー又はプライマーペアを備える、検体中における肛門性器路の癌又はその前段階を検出するためのキットであって、該プライマーは亜硫酸水素塩法で処理後のサンプルDNAのメチル化状態に特異的に結合し、かつ、肛門性器路の癌が子宮頸癌であるキット。
  14. 請求項8で定義されたプライマー又はプライマーペアを備える、請求項13に記載のキット。
  15. 請求項9で定義されたプローブを備える、請求項13又は14に記載のキット。
  16. 更に、HPV感染を検出するためのプライマーペアを備える、請求項13〜15のいずれか1項に記載のキット。
  17. プライマーペアが、請求項12で定義されるプライマーペアである、請求項16に記載のキット。
  18. 更に、別の容器に収納された少なくとも1つの以下の構成成分を含む、請求項13〜17のいずれか1項に記載のキット:
    (a)DNA単離用試薬;
    (b)DNA増幅用酵素;
    (c)亜硫酸水素ナトリウム;
    (d)1又はそれ以上の緩衝液。
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