まず、本発明が用いられるシステムの一例として、PON方式の通信システムについて説明する。図1(a)は、PON方式のブロック図である。局舎80内の局側通信装置82は、複数の家庭70aから70c内の各家庭側通信装置72と光ファイバである通信経路L1およびL2を介し接続されている。局側通信装置82とオプティカルスプリッタ74とは1本の通信経路L1で接続されている。オプティカルスプリッタ74と各家庭側通信装置72との間は各通信経路L2を介し接続されている。オプティカルスプリッタ74は、各家庭側通信装置72から各通信経路L2を介し入出力された信号を通信経路L1に結合する。通信経路L1の信号は局側通信装置82に入出力される。局側通信装置82は制御回路84、送信部86および受信部88を有している。送信部86は、各家庭側通信装置72に光信号を送信する送信回路である。受信部88は、各家庭側通信装置72からの光信号を受信する受信回路である。制御回路84は送信部86および受信部88を制御する回路である。
図1(b)は、受信部88の受光素子(図2のフォトダイオード2参照)に入力される光信号を時間に対し示す模式図である。期間Ton1の間は家庭70aの家庭側通信装置72からの光信号が入力される。期間Toff1の間には光信号は入力されず、期間Ton2において家庭70bの家庭側通信装置(不図示)からの光信号が入力される。さらに、期間Toff2の間には光信号は入力されず、期間Ton3において家庭70cの家庭側通信装置(不図示)からの光信号が入力される。各家庭側通信装置72の出力信号の振幅および各通信経路L2での光信号の損失はそれぞれ異なる。このため、期間Ton1、Ton2およびTon3(入力信号期間)の光信号の振幅はそれぞれ振幅A1、A2およびA3と異なる。このように、PON用の受信部88には、異なる家庭から光信号が異なる振幅で不定期に入力される。なお、期間Toff1およびToff2は通信経路L2を切り換える期間(インターバル期間)である。受信部88に用いられる増幅回路においては、入力する光信号の振幅が異なるため、自動利得制御回路が用いられる。
次に比較例について説明する。図2は比較例に係る増幅回路100を例示する回路図である。なお、比較例においては制御回路20の時定数をτ1と表す。
図2に示すように、増幅回路100は、増幅器10、差動回路14、制御回路20、時定数制御回路30、及びバイパス回路40を備える。入力端子Tinにはフォトダイオード2のアノードが接続されている。フォトダイオード2のカソードは電源Vpdに接続されている。入力端子Tinに入力した通信信号である入力信号(入力電流)Iinは、増幅器10の入力信号(入力電流)Itiaとなる。
増幅器10は、アンプ12と帰還抵抗R0とを備え、電流を電圧に変換するトランスインピーダンスアンプとして機能する。増幅器10は、入力信号を増幅し、ノードNtia1に出力信号(出力電圧)Vtiaを出力する。差動回路14は、出力信号Vtiaと参照端子Tref1に印加された参照信号(参照電圧)Vref1とを差動増幅する。例えば差動回路14は、出力信号Vtiaが参照信号Vref1より大きければ、出力端子Toutに正の出力信号(出力電圧)Voutを、出力端子Toutbに負の出力信号Voutbを、それぞれ出力する。また差動回路14は、出力信号Vtiaが参照信号Vref1より小さければ、出力端子Toutに負の出力信号Voutを、出力端子Toutbに正の出力信号Voutbを出力する。出力信号VoutとVoutbとは、互いに相補信号である。差動回路14をリミットアンプとすることにより、出力信号Vout及びVoutbを矩形信号とすることができる。
制御回路20は、抵抗R1、R2及びR3、スイッチ回路200、容量C1、並びに差動増幅器22を備える。抵抗R1及びR2、スイッチ回路200、並びに容量C1は保持回路25を形成する。すなわち制御回路20は保持回路25を含む。保持回路25は増幅器10の出力に接続されている。抵抗R1及び抵抗R2は、ノードNtia1とバイパス回路40との間に接続されている。ノードNtia1と抵抗R1との間にはスイッチ回路200が接続されている。なお、抵抗R1は抵抗R2より小さい抵抗である。抵抗R1及びR2には、増幅器10から出力された出力信号Vtiaが入力する。容量C1は、ノードNtia2(第2ノード)を介して、抵抗R1及び抵抗R2のバイパス回路40側とグランドとの間に接続されており、抵抗R1の出力及び抵抗R2の出力を充電する。スイッチ回路200がオンである場合、抵抗R1及び抵抗R2は並列接続され、抵抗R1及びR2は容量C1と直列接続される。スイッチ回路200がオフである場合、抵抗R2と容量C1とが直列接続される。
保持回路25は、出力信号Vtiaを抵抗R1,R2及び容量C1により規定される時定数を用いて平均化し、出力信号(出力電圧)Vtia2を生成する。出力信号Vtia2はノードNtia2に出力され、さらに差動増幅器22の一方の入力端子に出力される。
差動増幅器22は、ノードNtia2を介して保持回路25に接続され、抵抗R3を介してノードNref1に接続されている。差動増幅器22は、保持回路25の出力信号Vtia2と参照信号Vref1とを差動増幅し、制御信号(制御電圧)VagcをノードNagcに出力する。すなわち、制御回路20は、出力信号Vtiaを平均化し出力信号Vtia2を生成する。さらに制御回路20は、出力信号Vtia2に基づいて、制御信号Vagcを生成する。差動増幅器22が接続されているノードNagcは、バイパス回路40が備えるバッファ回路43を介してトランジスタ44のベースに接続され、また時定数制御回路30に接続されている。
時定数制御回路30は、ヒステリシス・コンパレータからなる。時定数制御回路30の参照信号であるVref2の値は、時定数制御回路30の出力に応じて切り換えがなされることで、入力信号である制御信号Vagcに対するヒステリシス出力をなしている。遅延回路35は、抵抗R4、及び容量C2を備える。時定数制御回路30と遅延回路35とはノードNhyを介して接続されている。時定数制御回路30は、制御信号Vagcと、参照端子Tref2に印加された参照信号(参照電圧)Vref2とを比較する。時定数制御回路30を構成するヒステリシス・コンパレータの時定数は、遅延回路35の時定数より小さい。制御信号Vagcが参照信号Vref2より小さくなると、時定数制御回路30の出力信号(出力電圧)Vsw0はローとなる。制御信号Vagcが参照信号Vref2より大きくなると信号Vsw0はハイとなる。時定数制御回路30の出力信号Vsw0を時定数制御信号とする。
遅延回路35は、信号Vsw0を遅延させ、信号Vsw1を出力する。すなわち時定数制御回路30は、制御信号Vagcに基づいて時定数制御信号を生成する。遅延回路35は時定数制御信号Vsw0を遅延させた信号である信号Vsw1を出力する。つまり遅延回路35の出力信号Vsw1は、遅延された時定数制御信号である。
スイッチ回路200には、ノードNdel1を介して、遅延回路35の出力信号Vsw1が入力する。スイッチ回路200に、遅延回路35により遅延された、ハイのVsw1が入力することで、スイッチ回路200はオンになる。スイッチ回路200がオンの場合、保持回路25の抵抗は小さくなり、時定数も小さくなる。これに対し、ローのVsw1が入力するとスイッチ回路200はオフとなる。スイッチ回路200がオフの場合、保持回路25の抵抗は大きくなり、時定数も大きくなる。すなわち、制御回路20の時定数τ1は、保持回路25の抵抗の値が変化することに応じて、τs1(第1の時定数)と、τs1より長いτl1(第2の時定数)との間で切り換え可能である。また時定数制御回路30は、制御回路20の時定数τ1を切り換える。
入力端子Tinとグランドとの間に、ダイオード41及び電流源42が接続されている。ダイオード41のアノードは入力端子Tinに、カソードは電流源42に接続されている。バイパス回路40はバッファ回路43とトランジスタ44とを備える。トランジスタ44のコレクタは電源Vdに接続され、エミッタはダイオード41と電流源42との間に接続されている。ベースには、バッファ回路43を介して制御信号Vagcが入力される。制御信号Vagcの電圧が低下すると、バイパス回路40はダイオード41と電流源42との間のノードの電位を低くして、入力信号Iinの一部をバイパス電流Ibとしてバイパスする。このように、バイパス回路40は、制御信号Vagcに基づいて、入力信号をバイパスする。入力信号がバイパスされることで、増幅器10に入力する信号Itiaが減少する。よって、増幅回路100の利得が減少する。すなわち、バイパス回路40は、出力信号Vtiaが大きくなるとバイパス電流Ibを大きくし、増幅器10に入力する信号Itiaが減少するような制御を行う。
図3は比較例に係る増幅回路のタイミングチャートを例示する模式図である。各チャートは上から順に、入力信号Iin、制御信号Vagc、信号Vsw1、スイッチ回路200(SWと表記)、及び制御回路20の時定数τ1を時間に対して示している。また信号Vsw1の破線は、遅延回路35を用いない場合の信号を仮想的に示している。スイッチ回路200は、実線が上にある場合にオンであり、実線が下にある場合にオフである。
図3に示すように、入力信号はプリアンブル信号とペイロード信号とを有している。プリアンブル信号は、制御信号Vagcを安定化させる(出力信号Vtiaを平均化する)ための信号である。ペイロード信号は、データの送受信のための信号である。プリアンブル信号が入力し始める時間をt0、プリアンブル信号が終了しペイロード信号が始まる時間をt2、ペイロード信号が終了する時間をt3、次のプリアンブル信号が入力し始める時間をt5とする。また、制御回路20の時定数τ1がτs1からτl1へ切り換わる時間をt1、τl1からτs1へ切り換わる時間をt4とする。
時間t0において、時定数制御回路30からは、信号Vsw1が出力されている。このときの平均化の時定数τ1は短い時定数であるτs1である。プリアンブル信号が入力し始めると、保持回路25の出力信号Vtia2は、時定数τs1で出力信号Vtiaの平均値に近づいていく。出力信号Vtia2が参照信号Vref1(閾値Vth)より小さくなると、バイパス回路40はバイパス電流Ibを流し始め、自動利得制御が開始される(AGCオン)。
一方、制御信号Vagcは出力信号Vtia2と同相で、出力信号Vtia2とVtia1との差分を、差動増幅器22のゲインに応じて変化させた信号である。時定数制御回路30は、遅延回路35を含むため、信号Vsw1は制御信号Vagcに対して遅延される。遅延回路35により遅延された後の時間t1において、信号Vsw1はローになる。すなわちスイッチ回路200がオフになり、制御回路20の時定数τ1はτs1からτl1に切り換わる。
時間t3において、ペイロード信号が終了すると、出力信号Vtia2及び制御信号Vagcは大きくなり始め、時定数τl1で、初期状態に戻る。出力信号Vtia2が参照信号Vref1(閾値Vth)より大きくなると、バイパス回路40はバイパス電流Ibを遮断し、自動利得制御が終了する(AGCオフ)。遅延回路35による遅延の後の時間t4において、信号Vsw1はハイになる。すなわちスイッチ回路200がオンになり、制御回路20の時定数τ1はτl1からτs1に切り換わる。時間t5において、次の信号が入力する。
図4は入力信号を例示する図である。横軸は時間、縦軸は振幅を表す。図4に示すように、入力信号はプリアンブル期間と、プリアンブル期間の後に続くペイロード期間とを含み構成されたデータ列を有している。プリアンブル信号は、制御信号Vagcを安定させるための信号であり、ハイ及びローが交互に一定周期で表われる。図1(b)に示したように、各家庭から入力される入力信号の振幅は様々である。このため図4に示したように、プリアンブル信号が入力する期間に制御信号Vagcは安定する。ペイロード信号は、送受信すべき信号であり、プリアンブル信号の後に入力される。ペイロード信号のハイおよびローは不定期であり、入力信号において同じビットが連続することがある。この場合、図4の領域70のようにハイまたはローの期間が長く続く。
ペイロード信号において、ハイまたはローの期間が長く続いた場合、制御信号Vagcが変動してしまうと増幅回路100の利得が変わってしまい、増幅回路100が不安定になってしまう。そこで、制御回路20の抵抗を大きくして、時定数τ1を長くすることがある。しかし、時定数が長いと、制御信号Vagcが安定するまでの時間が長くなり、プリアンブル信号が終了する時間t2以降に自動利得制御が開始される結果となる。
図3に示すように比較例では、プリアンブル信号期間中は、スイッチ回路200をオンにして、制御回路20の抵抗を小さくし、時定数τ1を短いτs1としている。その一方で、ペイロード信号期間中は、SWをオフにして、制御回路20の抵抗を大きくし、時定数τ1を長いτl1としている。これにより、入力信号に応じて時定数の制御がなされる。
また、遅延回路35により信号Vsw0が遅延して信号Vsw1が出力される。つまり図3の実線で示す信号Vsw1が破線で示す場合より遅延する。これにより、スイッチ回路200がオフになる時間が遅くなる。この結果、制御回路20が短い時定数τs1で十分に動作した後、制御回路20の時定数が長いτl1に切り換わる。また、時定数がτs1からτl1に切り換わる時間t1は、自動利得制御が開始される時点よりも後である。言い換えれば、自動利得制御が開始される時点では、制御回路20の時定数はτs1であるため、制御信号Vagcは早期に安定化する。
信号を受信した後に次の信号を受信するためには、制御回路20の時定数τ1を長い時定数であるτl1から短い時定数であるτs1に切り換えることが求められる。そのためには、制御回路20の時定数τl1を、短い時定数であるτs1に、より早く切り換える必要がある。しかしながら、上述のように、ペイロード信号を受信するためにτl1は長くすることが求められている。従って、増幅回路100の次の信号への応答速度が遅くなる可能性があった。
図2に示すように、増幅回路100は遅延回路35を備える。このため、図3の信号Vsw及びSWに示すように、制御回路20の時定数が、長いτl1から短いτs1に切り換わる時間が、遅延回路35が設けられていない場合よりも遅くなる。すなわち、制御回路20の初期化が遅くなり、増幅回路100の次の信号への応答速度が遅くなる。つまり、遅延回路35により、τs1からτl1への切り換えを遅くして、自動利得制御を安定して行える反面、τl1からτs1への切り換えが遅くなり、制御回路20の初期化が遅くなる。特にトランジスタを用いてスイッチ回路200を構成している場合、スイッチ回路200の切り換えが適切に行われず、時定数の制御が困難になる場合がある。スイッチ回路200の切り換えについての問題について説明する。
図5は比較例に係る増幅回路が備えるスイッチ回路を例示する図である。図5に示すように、スイッチ回路200は、差動回路50及び差動回路60、抵抗R16、抵抗R17、抵抗R21及び抵抗R22、トランジスタ202、トランジスタ204、トランジスタ206、トランジスタ208、トランジスタTr1(第1トランジスタ)、トランジスタTr2(第2トランジスタ)、及びトランジスタTr3(第3トランジスタ)、電流源210、電流源212、電流源214及び電流源216、並びに容量C3を備える。
差動回路50及び差動回路60、トランジスタ202のコレクタ、並びにトランジスタ204のコレクタ、トランジスタ206のコレクタ、及びトランジスタ208のコレクタには、第1電源電圧Vccが印加される。電流源210、電流源212、電流源214及び電流源216には、第2電源電圧Veeが印加される。例えば第2電源電圧Veeは、第1電源電圧Vccよりも低い電圧である。
スイッチ回路200には、ノードNtiaを介して、出力信号Vtiaが入力される。抵抗R16の一端はノードNtiaに接続されている。抵抗R16の他端は、容量C3の一端、及びトランジスタ52のベースに接続されている。容量C3の他端は、第2電源Veeに接続されている。
差動回路50は、抵抗R5、抵抗R6、抵抗R7、抵抗R8、抵抗R9、トランジスタ52(第4トランジスタ)、トランジスタ54(第5トランジスタ)、及びトランジスタ56(第6トランジスタ)を有する。抵抗R5の一端、及び抵抗R6の一端は第1電源Vccに接続されている。抵抗R5の他端はトランジスタ52のコレクタ、及び抵抗R11の一端に接続されている。抵抗R6の他端はトランジスタ54のコレクタ、及び抵抗R10の一端に接続されている。トランジスタ52のエミッタは抵抗R7の一端に接続されている。トランジスタ54のエミッタは抵抗R8の一端に接続されている。抵抗R7の他端及び抵抗R8の他端は、トランジスタ56のコレクタに接続されている。トランジスタ56のエミッタは抵抗R9の一端に接続されている。つまりトランジスタ52とトランジスタ54とは並列接続されている。トランジスタ56のコレクタは、抵抗R7を介してトランジスタ52のエミッタと接続され、抵抗R8を介してトランジスタ54のエミッタと接続されている。抵抗R9の他端は、電流源210の一端に接続されている。
上述のように、トランジスタ52のベースは抵抗R16の他端、及び容量C3の一端に接続されている。つまり、トランジスタ52のベースには、増幅器10から出力される出力信号Vtiaが、ノードNtia及び抵抗R16を介して入力される。トランジスタ54のベースは、差動回路60が備えるトランジスタ62のベースに接続されている。トランジスタ54のベースとトランジスタ62のベースとの間にはノードNinが設けられている。トランジスタ56のベースには抵抗R17の一端が接続されている。また抵抗R17の他端はノードNdel1+が接続されている。つまり、トランジスタ56のベースには、遅延回路35の出力信号Vsw1+が、ノードNdel1+及び抵抗R17を介して入力される。
差動回路60は、抵抗R10,抵抗R11、抵抗R12、抵抗R13、抵抗R14、トランジスタ62、トランジスタ64、及びトランジスタ66を有する。抵抗R10の一端は抵抗R6の他端に接続されている。抵抗R11の一端は抵抗R5の他端に接続されている。つまり抵抗R10の一端及び抵抗R11の一端の各々は、抵抗R6及び抵抗R5の各々を介して、第1電源Vccに接続されている。抵抗R10の他端は、トランジスタ62のコレクタ、トランジスタ204のベース、及びトランジスタTr1のベースに接続されている。抵抗R11の他端は、トランジスタ64のコレクタ、トランジスタ202のベースに接続されている。トランジスタ62のエミッタは、抵抗R12の一端に接続されている。トランジスタ64のエミッタは抵抗R13の一端に接続されている。抵抗R12の他端及び抵抗R13の他端は、トランジスタ66のコレクタに接続されている。トランジスタ66のエミッタは抵抗R14の一端に接続されている。抵抗R14の他端は、電流源210の一端に接続されている。トランジスタ62のベースは、差動回路50が備えるトランジスタ54のベースに接続されている。トランジスタ64のベースには、信号Vbが入力されている。トランジスタ66のベースには抵抗R21の一端が接続されている。抵抗R21の他端にはノードNdel1−及びトランジスタTr3のベースが接続されている。トランジスタ66のベースには、時定数制御回路30から出力され、かつ遅延回路35の出力信号Vsw1−が、ノードNdel1−及び抵抗R21を介して入力される。トランジスタ56のベースに入力するVsw1+と、トランジスタ66のベースに入力するVsw1−とは、差動信号である。
トランジスタ202、トランジスタ204、及びトランジスタ206、及びトランジスタ208各々のコレクタは、第1電源Vccに接続されている。トランジスタ202のエミッタは電流源212の一端に接続されている。トランジスタ202のベースは、抵抗R11の他端及びトランジスタ64のコレクタに接続されている。トランジスタ204のエミッタは、ノードNoutを介して、差動回路50が備えるトランジスタ54のベース、及び差動回路60が備えるトランジスタ62のベースに接続されている。またトランジスタ204のエミッタは電流源214の一端に接続されている。トランジスタ206のベースはトランジスタ206のコレクタに接続されている。トランジスタ206のエミッタはトランジスタTr1のコレクタに接続されている。トランジスタ208のベースはトランジスタ208のコレクタに接続されている。トランジスタ208のエミッタはトランジスタTr3のコレクタに接続されている。
差動回路50から出力される信号は、トランジスタ204及びノードNinを介して、差動回路50が備えるトランジスタ54のベースに入力される。また差動回路60から出力される信号は、トランジスタ204及びノードNinを介して、差動回路60が備えるトランジスタ62のベースに入力される。つまり、差動回路50及び差動回路60は、それぞれボルテージフォロワ回路として機能する。差動回路50及び差動回路60の各々は、入力される信号の電位を参照して生成されるコピー電位を、ノードNoutに出力する。差動回路50を例に、コピー電位について説明する。差動回路50がノードNoutに出力するコピー電位Vtiacは、差動回路50が理想的な差動回路である場合に出力信号Vtiaの電位と同じになる。しかし実際には、差動回路50が理想的な差動回路でないため、コピー電位Vtiacは出力信号Vtiaの電位と同等な電位となる。差動回路60については、信号Vbの電位のコピー電位を出力する。
トランジスタTr1のベースは、抵抗R22の他端に接続され、抵抗R22を介してトランジスタ62のコレクタ及びトランジスタ204のベースに接続され、さらに抵抗R11を介してトランジスタ54のコレクタに接続されている。トランジスタTr1のエミッタは、ノードN1(第1ノード)を介して、トランジスタTr2のコレクタ、及び保持回路25が備える抵抗R1の一端に接続されている。トランジスタTr1のエミッタとトランジスタTr2のコレクタとの間には、ノードN1が設けられている。
トランジスタTr2のベースは、ノードNdel1+及び抵抗R17の他端に接続されている。このためトランジスタTr2のベースには、遅延回路35の出力信号Vsw1+が、ノードNdel1+を介して入力される。トランジスタTr2のエミッタは、トランジスタTr3のエミッタ及び電流源216(第1電流源)の一端に接続されている。トランジスタTr2のコレクタは、ノードN1を介して、トランジスタTr1のエミッタ及び抵抗R1の一端に接続されている。
トランジスタTr3のベースは、ノードNdel1−及び抵抗R21の他端に接続されている。このためトランジスタTr3のベースには、遅延回路35の出力信号Vsw1−が、ノードNdel1−を介して入力される。トランジスタTr3のエミッタは、トランジスタTr2のエミッタ及び電流源216の一端に接続されている。上述のように、トランジスタTr3のコレクタは、トランジスタ208のエミッタに接続されている。トランジスタTr2及びトランジスタTr3は、差動対として機能する。また電流源210、電流源212、電流源214及び電流源216の各々の他端は第2電源Veeに接続されている。
なおトランジスタTr1〜Tr3は、バイポーラトランジスタである。FET(Field Effect Transistor:電界効果型トランジスタ)等を用いてスイッチ回路を構成することもできる。FETを用いる場合、1つのFETにより電流の遮断が可能となる。しかしながらスイッチ回路を、増幅器10等と同じプロセスで形成し、かつスイッチ回路を含めた1チップとして構成する場合、スイッチ回路にはバイポーラトランジスタを採用することが好ましい。バイポーラトランジスタを採用した場合、1つのバイポーラトランジスタで電流の遮断をすることが難しくなる。スイッチ回路のオンとオフとの切り換えを良好に行うため、スイッチ回路200を図5に示したような構成とすることがある。
次にスイッチ回路200のオンとオフとの切り換えについて説明する。スイッチ回路200は、トランジスタTr1及びトランジスタTr2の両方がオフである場合にオフになる。トランジスタTr1及びトランジスタTr2がオフである場合、ノードN1はフローティングとなる。このためノードN1のインピーダンスが高くなる。ノードN1のインピーダンスが高くなることにより、出力信号Vtiaが抵抗R1に流れにくくなる。つまりスイッチ回路200はオフとなる。スイッチ回路200がオフとなることで、制御回路20の時定数はτs1からτl1に切り換わる。
これに対し、スイッチ回路200は、トランジスタTr1及びトランジスタTr2の両方がオンである場合にオンになる。差動回路50はボルテージフォロワ回路として機能するため、トランジスタTr1及びトランジスタTr2がオンである場合、スイッチ回路200はノードN1に出力信号Vtiaの電位のコピー電位Vtiacを出力する。この場合、ノードNtiaに接続された抵抗R2に信号Vtiaが入力され、ノードN1に接続された抵抗R1に信号Vtiacが入力される。つまり抵抗R1に出力信号Vtiaと同程度の電位の信号が入力される。これにより、スイッチ回路200がオンになる。スイッチ回路200がオンとなることで、制御回路20の時定数はτl1からτs1に切り換わる。
次にトランジスタTr1及びトランジスタTr2のオンとオフとの切り換えについて説明する。ノードNdel1+から入力される信号Vsw1+がハイである場合、差動回路50が動作する。この場合、ノードNdel1−から入力される信号Vsw1−はローであり、差動回路60は動作しない。差動回路50は、ノードNoutに、出力信号Vtiaの電位のコピー電位Vtiacを出力する。この場合、トランジスタTr1のベース電位は、コピー電位Vtiac及びトランジスタ204のベース−エミッタ間電圧Vbeを用いて、Vtiac+Vbeと表される。これによりトランジスタTr1はオンになる。トランジスタTr1のエミッタ電位は、Vtiac+Vbe−Vbe、つまりVtiacとなる。すなわちノードN1にはコピー電位Vtiacが出力される。また信号Vsw1+の電位を便宜的にVsw1+とすると、トランジスタTr2のベース電位はVsw1+と表される。信号Vsw1+はハイであるため、トランジスタTr2はオンになる。また、トランジスタTr3のベース電位は、信号Vsw1−の電位を便宜的にVsw1−とすると、Vsw1−と表される。信号Vsw1−がローであるためトランジスタTr3はオフとなる。
つまり、信号Vsw1+がハイである場合、トランジスタTr1は、差動回路50の出力信号によりオフからオンに切り換わる。トランジスタTr2は信号Vsw1+によりオフからオンに切り換わる。このとき、トランジスタTr1のコレクタ電流Ic1、及びトランジスタTr2のコレクタ電流Ic2が立ち上がる。ノードN1にはコピー電位Vtiacが出力される。
ノードNdel1+から入力される信号Vsw1+がローである場合、差動回路50は動作しない。この場合、ノードNdel1−から入力される信号Vsw1−はハイであり、差動回路60が動作する。差動回路60は、ノードNoutにVbの電位のコピー電位Vbcを出力する。またトランジスタTr1はオフである。トランジスタTr1のベース電位は、Vbc+Vbeと表される。信号Vsw1+はローであるため、信号Vsw1+の電位Vsw1+は低い。このため、トランジスタTr2のベース電位も低くなり、トランジスタTr2はオフになる。つまり、トランジスタTr1及びトランジスタTr2は、遅延回路35により遅延された信号Vswに基づく信号がベースに入力されることに応じて、オンとオフとの切り換えを行う。また、信号Vsw1−がハイであるため、トランジスタTr3のベース電位は高くなり、トランジスタTr3はオンとなる。
次にトランジスタTr1及びトランジスタTr2のオンへの切り換えの速さについて説明する。図6は比較例に係る増幅回路のタイミングチャートを例示する模式図である。チャートは上から順に、信号Vsw1+の電位、並びに電流Ic1及びIc2を示す。なお下段のチャートにおいて、電流Ic1は実線で、電流Ic2は破線で図示した。
図6に示すように、信号Vsw1+は、時間とともに立ち上がる。信号Vsw1+は図3に示した遅延回路35により遅延されるため、立ち上がりは緩やかである。また図中に示すV1はトランジスタTr1がオフからオンに切り換わる場合の信号Vsw1+の電位であり、V2はトランジスタTr2がオフからオンに切り換わる場合の信号Vsw1+の電位である。トランジスタTr1をオフにするためのベース−エミッタ間電圧は、トランジスタTr2をオフにするためのベース−エミッタ間電圧よりも深い。このためV2<V1の関係が成立する。信号Vsw1+の電位は、時間t6においてV2に達し、時間t6より遅い時間t7においてV1に達する。つまり図6の下段に示すように、トランジスタTr1のオフからオンへの切り換えは、トランジスタTr2のオフからオンへの切り換えよりも遅延する。トランジスタの切り換えの時間に差異が生じる理由について説明する。
図5に示したスイッチ回路200では、トランジスタTr2とトランジスタTr3とは、差動対を形成する。つまりトランジスタTr2がオンの場合、トランジスタTr3はオフになる。トランジスタTr2がオフの場合、トランジスタTr3はオンになる。トランジスタTr2とトランジスタTr3とは差動対を形成するため、トランジスタTr2がオフの場合でも電流源216には電流が流れ続けることが可能となる。トランジスタTr2とトランジスタTr3とが差動対を形成するため、トランジスタTr2の動作のバラつきは抑制される。これに対して、トランジスタTr1は差動対を形成しない。温度変化、及び製造のバラつき等に対してトランジスタTr1の動作を安定させるために、トランジスタTr1をオフにするためのベース−エミッタ間電圧を深くすることがある。例えばトランジスタTr1がnpn型トランジスタである場合、トランジスタTr1がオンに切り換わるベース−エミッタ間電圧が、トランジスタTr2がオンに切り換わるベース−エミッタ間電圧より大きくなる。このためトランジスタTr1のオフからオンへの切り換えは、トランジスタTr2のオフからオンへの切り換えよりも遅延する。特に、信号Vsw1は遅延回路35により遅延された信号であるため、トランジスタTr1のオフからオンへの切り換えは、遅延回路35がない場合よりも、さらに遅延する。
次に、トランジスタTr1の切り換わりの遅延によって生じる問題について説明する。図7は比較例に係る増幅回路のタイミングチャートのシミュレーション結果を例示する図である。チャートは上から順に、電流Ic1及びIc2、信号Vsw1+の電位、並びにトランジスタTr1のベース電位Tr1_B、を示す。電流Ic1は実線で、電流Ic2は破線で図示した。
図7に示すように、トランジスタTr1の切り換えの遅れにより、制御回路20の時定数の制御が困難になることがある。このことについて詳しく説明する。上段のチャートに示すように、時間t8において電流Ic2が立ち上がる。時間t8より遅い時間t9において電流Ic1が立ち上がる。電流Ic1の立ち上がりは電流Ic2の立ち上がりよりも遅くなる。このことは図6と同様である。電流Ic2が立ち上がることにより、図2に示した保持回路25が備える容量C1からトランジスタTr2へと電流が流れることがある。この場合、ノードNtia2において電圧降下が発生する。ノードNtia2において電圧降下が発生すると、差動増幅器22に入力する信号Vtia2の電圧が低下する。信号Vtia2の電圧が下がることにより、差動増幅器22が出力し、時定数制御回路30に入力する制御信号Vagcの電圧も低下する。制御信号Vagcの電圧降下の大きさが、時定数制御回路30が備えるヒステリシス・コンパレータのヒステリシス幅より大きい場合、時定数制御回路30の出力信号はハイにならず、ローに戻ることがある。この結果、図7の中段に示すように、遅延回路35の出力信号Vsw1+がハイからローに戻る。このため、図7の下段に示すようにトランジスタTr1のベース電位Tr1_bも、大きくなった後に小さな値に戻る。トランジスタTr1のコレクタ電流Ic1は、ベース電位Tr1_bの上昇に伴い立ち上がった後、ベース電位Tr1_bの低下に伴い減少する。つまり、比較例に係る増幅回路100では、発振が起こる。発振が発生した場合、制御回路20の時定数の制御が困難になり、信号の受信及び利得制御が適切に行われない可能性がある。
図2に示す遅延回路35を取り外すことにより、信号Vsw1+の立ち上がりを速くすることができる。これにより、トランジスタTr2がオンになる時間t6とトランジスタTr1がオンになる時間t12との差を小さくすることができる。しかしながら図3において説明したように、自動利得制御を安定して行うためには、遅延回路35を設けることが好ましい。以下、このような課題を解決する実施例について説明する。
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。実施例1は信号の立ち上がりを急峻にする回路を用いる例である。図8は、実施例1に係る増幅回路100aを例示する回路図である。
図8に示すように、実施例1に係る増幅回路100aは、遅延回路35とスイッチ回路200との間にアンプ300を備える。アンプ300には、遅延回路35から出力された信号Vsw1がノードNdel1を介して入力する。アンプ300は信号Vsw1を増幅して信号Vsw2を生成し、ノードNdel2を介してスイッチ回路200に出力する。アンプ300のゲインは1より大きい。他の構成は図2と同じである。
図9は、実施例1に係る増幅回路100aを例示する回路図であり、遅延回路35、及びアンプ300を詳細に例示したものである。
図9に示すように、遅延回路35は抵抗R23、抵抗R24、及び容量C2を備える。アンプ300は、トランジスタ302、トランジスタ304、トランジスタ306及びトランジスタ308、抵抗R25、抵抗R26、抵抗R27、抵抗R28及び抵抗R29、並びに電流源310、電流源312及び電流源314を備える。なお図2では時定数制御回路30は不平衡出力端子を備えているが、図9のように時定数制御回路30は平衡出力端子を備えるとしてもよい。
遅延回路35が備える抵抗R23の一端には、ノードNhy+を介して、時定数制御回路30の一方の出力端子が接続されている。抵抗R24の一端には、ノードNhy−を介して時定数制御回路30の他方の出力端子が接続されている。抵抗R23の他端には容量C2の一端、及びノードNdel1+が接続されている。ノードNdel1+には、アンプ300が備えるトランジスタ302のベースが接続されている。抵抗R24の他端には、容量C2の他端及びノードNdel1−が接続されている。ノードNdel1−は、アンプ300が備えるトランジスタ304のベースと接続されている。遅延回路35には、ノードNhy+を介して時定数制御回路30の出力信号Vsw0+、及びノードNhy−を介して時定数制御回路30の出力信号Vsw−が入力する。また遅延回路35は、ノードNdel1+を介して出力信号Vsw1+、及びノードNdel1−を介して出力信号Vsw1−をアンプ300に出力する。
アンプ300が備える抵抗R25の一端は、電源Vcc、トランジスタ306のコレクタ、及びトランジスタ308のコレクタに接続されている。抵抗R25の他端は、抵抗R26の一端及び抵抗R27の一端に接続されている。抵抗R26の他端は、トランジスタ302のコレクタ及びトランジスタ308のベースに接続されている。トランジスタ302のエミッタは抵抗R28の一端に接続されている。抵抗R27の他端は、トランジスタ304のコレクタ及びトランジスタ306のベースに接続されている。トランジスタ304のエミッタは抵抗R29の一端に接続されている。抵抗R28の他端、及び抵抗R29の他端は電流源310の一端に接続されている。トランジスタ306のエミッタは電流源312の一端に接続されている。トランジスタ308のエミッタは電流源314の一端に接続されている。電流源310、電流源312、及び電流源314の各々の他端は電源Veeに接続されている。トランジスタ306のエミッタと電流源312の一端との間にはノードNdel2+が設けられている。トランジスタ308のエミッタと電流源314の一端との間にはノードNdel2−が設けられている。
つまりアンプ300には、ノードNdel1+から信号Vsw1+が入力し、ノードNdel1−から信号Vsw1−が入力する。またアンプ300は、ノードNdel2+から信号Vsw2+を、またノードNdel2−から信号Vsw2−を、それぞれスイッチ回路200に出力する。実施例1におけるスイッチ回路200のノードNdel2+とノードNdel2−との各々は、比較例におけるスイッチ回路200のノードNdel1+とノードNdel1−との各々に対応する。すなわち、スイッチ回路200が備えるトランジスタTr1とトランジスタTr2とは、信号Vsw2+に基づく信号がベースに入力されることに応じて、オフからオンへの切り換えを行う。
次に実施例1における増幅回路の動作について説明する。図10は実施例1に係る増幅回路のタイミングチャートを例示する模式図である。チャートは上から順に、信号Vsw1+の電位及びVsw2+の電位、電流Ic1及び電流Ic2、並びに信号Vagc及びVref2を表す。上段のチャートではVs1+を破線で、Vsw2+を実線で図示した。中段のチャートでは、Ic1を実線で、Ic2を破線で図示した。また下段のチャートではVagcを実線で、Vref2を破線で図示した。
図10の下段に示すように、時間t10において、時定数制御回路30を構成するヒステリシス・コンパレータの参照信号Vref2の切り換えにより、参照信号Vref2の電位が低下する。図10の上段に示すように、実施例1における信号Vsw2+は、比較例における信号Vsw1+よりも立ち上がりが急峻である。つまりアンプ300は遅延回路35の出力信号Vsw1+を増幅し、立ち上がりを急峻にした信号Vsw2+を出力する。信号Vsw2+は、時間t11において電圧V2に達した後、時間t7よりも早い時間である時間t12おいてに電圧V1に達する。つまり、時間t11においてトランジスタTr2はオフからオンに切り換わり、時間t12においてトランジスタTr1はオフからオンに切り換わる。なお時間の関係は、t6<t11<t12<t7である。つまり実施例1においては、トランジスタTr1がオフからオンに切り換わる時間が、トランジスタTr2がオフからオンに切り換わる時間に近づく。言い換えれば、トランジスタTr2のオフからオンへの切り換えの後、トランジスタTr1のオフからオンへの切り換えまでの遅延時間t12−t11が、比較例における遅延時間t7−t6よりも短くなる。
つまりアンプ300により、信号Vsw2+の立ち上がりは、信号Vsw1+よりも急峻になる。このため、図10の中段に示すようにトランジスタTr1がオフからオンに切り換わる時間が、トランジスタTr2がオフからオンに切り換わる時間に近づく。上述のように、トランジスタTr1及びトランジスタTr2がオンになることで、スイッチ回路200はオンになる。つまり、信号Vsw2+の立ち上がりが急峻であることにより、スイッチ回路200が速やかにオンになる。言い換えれば、アンプ300により、スイッチ回路200がノードN1にコピー電位Vtiacを出力するまでの時間が速まる。このことにより、保持回路25からトランジスタTr2に電流が流れることが抑制される。つまりノードNtia2における電圧降下も抑制される。電圧降下が抑制されることで、差動増幅器22に入力する信号Vtia2の電圧が比較例の場合よりも大きくなり、さらに時定数制御回路30に入力する制御信号Vagcの電圧も大きくなる。結果的に、制御信号Vagcと参照信号Vref2との差が大きくなり、図中に矢印で示すように、発振に対するマージンが大きくなる。この結果、時定数制御回路30の出力信号Vsw0はハイを維持する。Vsw0がハイであることに伴い、信号Vsw1及びVsw2もハイを維持する。つまり、電圧降下による増幅回路の発振が抑制される。
実施例1によれば、アンプ300が信号Vsw2+の立ち上がりを急峻にすることにより、トランジスタTr1がオフからオンに切り換わる時間を、トランジスタTr2がオフからオンに切り換わる時間に近づけることができる。この結果、発振を抑制し、かつ制御回路20の時定数の制御を行うことで、信号の受信及び利得制御を適切に行う増幅回路を実現することができる。
トランジスタTr1のオフからオンへの切り換えを速めるためには、信号Vsw2+の立ち上がりを急峻にして、信号Vsw1+よりも立ち上がりを速めることが好ましい。信号Vsw2+の立ち上がりを急峻にするためには、アンプ300のゲインは1より大きいことが好ましい。またアンプ300は差動増幅回路としたが、差動増幅回路以外の増幅回路を用いてもよい。
実施例2は、分流回路を用いる例である。図11は実施例2に係る増幅回路が備えるスイッチ回路を例示する回路図である。
図11に示すように、スイッチ回路200aは、スイッチ回路200に分流回路400を追加したものである。分流回路400は、抵抗R30、抵抗R31及びトランジスタ402(第7トランジスタ)を備える。抵抗R30の一端は第1電源Vccに接続されている。抵抗R30の他端はトランジスタ402のコレクタに接続されている。トランジスタ402のエミッタは抵抗R31の一端に接続されている。抵抗R31の他端は、抵抗R9の他端、抵抗R14の他端、及び電流源210(第2電流源)の一端に接続されている。他の構成は、図5の構成と同じである。
トランジスタ402のベースは、抵抗R17の一端が接続されている。つまり、トランジスタ56のベース、及びトランジスタ402のベースには、時定数制御回路30から出力され、かつ遅延回路35の出力信号Vsw1+が、ノードNdel1+及び抵抗R17を介して入力される。
信号Vsw1+がハイになると、トランジスタ56及びトランジスタ402はオンになる。トランジスタ56に電流Iaが、トランジスタ402に電流Ibがそれぞれ流れる。分流回路400に電流Ibが流れるため、スイッチ回路200aにおいてトランジスタ56に流れる電流Iaは、図5に示したスイッチ回路200の場合よりも小さくなる。つまり図5のスイッチ回路200と図10のスイッチ回路200aとで、信号Vsw1+の電位が同じであっても、電流Iaは小さくなる。また、抵抗R6、トランジスタ54、及び抵抗R8に流れる電流Idも小さくなる。
トランジスタTr1のベース電位Tr1_bは、第1電源電圧Vccから電流Idによる電圧降下を引いた、Vcc−Id×R6に大きく依存する(R6は抵抗R6の抵抗値)。電流Idが小さくなることで、電圧降下も小さくなる。この結果、ベース電位Tr1_bは大きくなる。次に、ベース電位Tr1_b、電流Ia、及び電流Ibのそれぞれの計算したシミュレーションの結果について説明する。
図11に示したスイッチ回路200aにおいて、抵抗R30の大きさを変化させ、ベース電位Tr1_b、電流Ia、及び電流Ibを計算したものである。図12(a)から図12(c)は信号Vsw1+の電位を変動させた際のシミュレーションの結果である。図12(a)は信号Vsw1+と電流Iaとの関係を例示する図であり、図12(b)は信号Vsw1+と電流Ibとの関係を例示する図であり、図12(c)は信号Vsw1+とトランジスタTr1のベース電位との関係を例示する図である。
図12(a)から図12(c)それぞれの横軸は信号Vsw1+の電位を表す。図12(a)の縦軸は電流Iaを表す。図12(b)の縦軸は電流Ibを表す。図12(c)の縦軸はトランジスタTr1のベース電位Tr1_bを表す。また各図において、抵抗R30の大きさが1000Ωである場合の計算結果を破線、抵抗R30の大きさが250Ωである場合の計算結果を実線で示した。
図12(a)及び図12(b)に示すように、信号Vsw1+の電位の上昇に伴い、電流Ia及び電流Ibは大きくなった。また、分流回路400が備える抵抗R30の大きさが250Ωである場合(図中の実線)は、抵抗R30の大きさが1000Ωの場合(図中の破線)よりも、電流Ibは大きくなり、かつ電流Iaは小さくなった。
図12(c)に示すように、信号Vsw1+の電位の上昇に伴い、トランジスタTr1のベース電位Tr1_bは上昇し、約2.8Vまで上昇した。前述のように、信号Vsw1+がローの場合、トランジスタTr1のベース電位Tr1_bはVb+Vbeと表される。この場合、トランジスタTr1はオフである。一方、信号Vsw1+がハイの場合、Tr1_bはVtiaとなり、トランジスタTr1はオンに切り換わる。つまり、信号Vsw1+の電位の上昇により、トランジスタTr1はオンに切り換わる。抵抗R30の大きさが250Ωである場合、抵抗R30の大きさが1000Ωの場合よりも、より小さい電位の信号Vsw1+において、ベース電位Tr1_bは急峻に立ち上がった。これは上述のように、電流Iaが小さくなり、抵抗R6における電圧降下が小さくなったためである。つまり、抵抗R30を小さな抵抗として、電流Iaと電流Ibとの分流比Ib/Iaを大きくすることで、ベース電位Tr1_bの増加は速くなる。言い換えれば、トランジスタTr1がオフからオンに切り換わる時間が速くなる。
次にトランジスタTr1及びトランジスタTr2それぞれの切り換わりについて説明する。図13は実施例2に係る増幅回路のタイミングチャートのシミュレーション結果を例示する図である。トランジスタTr1のコレクタ電流Ic1は実線、トランジスタTr2のコレクタ電流Ic2は破線で図示する。下段のチャートは、上段のチャートよりも、分流比Ib/Iaを大きくしたものである。
図13の上段に示すように、分流比Ib/Iaが小さい場合、時間t13において電流Ic2が立ち上がる。時間t13より遅い時間である時間t14において電流Ic1が立ち上がる。これに対し図13の下段に示すように、分流比Ib/Iaが大きい場合、時間t13より遅くかつ時間t14より早い時間である時間t15において電流Ic1が立ち上がる。つまり、分流比Ib/Iaを大きくすることで、トランジスタTr1がオフからオンに切り換わる時間を、トランジスタTr2がオフからオンに切り換わる時間に近づけることができる。
実施例2によれば、分流回路400を設け、分流回路400に電流Ibが流れ、電流Iaが小さくなることにより、トランジスタTr1のオフからオンへの切り換えが速くなる。この結果、発振を抑制し、かつ制御回路20の時定数の制御を行うことで、信号の受信及び利得制御を適切に行う増幅回路を実現することができる。特に図13に示すように、電流Iaと電流Ibとの分流比Ib/Iaを大きくすることで、トランジスタTr1のオフからオンへの切り換えを、より速めることができる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。