以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化粧シートは、基材シートの表面に単一層または複数層からなる機能層を備えており、機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された厚さ5μm以上15μm以下の硬化物塗膜である。そして、硬化性樹脂組成物は、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤と、平均粒径3μm以上10μm以下のシリカ微粒子とを含有する。さらに、平均粒径3μm以上15μm以下の樹脂ビーズおよび平均粒径3μm以上15μm以下のガラスビーズのうち少なくとも一方のビーズをも含有する。
抗アレルゲン剤の含有量は、シリカ微粒子とビーズの合計量に対して質量比で0.2以上3.0以下である。
化粧シートに用いられる基材シートとしては、環境問題の観点から、分子中に塩素原子などのハロゲン原子を含まない各種の熱可塑性樹脂からなるシートが用いられることが好ましい。特に、柔軟性、耐候性等を有するオレフィン系樹脂からなるシートが用いられることが好ましい。
オレフィン系樹脂は、具体的には、ポリエチレン(低密度、中密度又は高密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、シンジオタクチック型、又はこれらの混合型)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレンープロピレンーブテン共重合体、アイオノマー等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン系樹脂、あるいは下記に記載した各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、主原料がハードセグメントである高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンのいずれかからなり、これにソフトセグメントとしてのエラストマー、必要に応じて充填剤を添加してなるものが挙げられる。高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重0.94〜0.96のポリエチレンであり、低圧法で得られる結晶化度が高く分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。ポリプロピレンとしては、好ましくは、アイソタクチック型ポリプロピレンが用いられる。
基材シートは、カレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により、厚さ50μm〜200μm程度に製膜して得られる。
基材シートを構成する熱可塑性樹脂には、必要に応じて、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が添加される。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリレート系、サリシレート系、オキザニリド系の有機系紫外線吸収剤、微粒子状の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの紫外線吸収剤を適用する割合は、添加する対象の層の樹脂分に対し、好ましくは、0.1〜2質量%の範囲である。0.1質量%以上とすることで添加効果が向上するので好ましい。2質量%以下とすることで、効果の更なる向上が見られ、特に有機系紫外線吸収剤の場合、経時的に、あるいは熱加工時に表面にブリード(滲出)し難くなるので好ましい。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤が用いられる。光安定剤を添加する割合は、添加する対象の層の樹脂分に対し、好ましくは、0.1〜2質量%の範囲である。0.1質量%以上とすることで添加効果が向上するので好ましい。また、2質量%以下とすることで、効果の向上が見られるので好ましい。
なお、紫外線吸収剤と光安定剤は、それぞれを単独で使用した場合でも効果はあるが、併用した方が、相乗的に効果が向上するため、併用することが望ましい。また紫外線吸収剤と光安定剤は、単に混合しただけでは使用中のブリードが避けがたいために、上記のヒンダードアミン系の光安定剤に代えて、下記の化合物を使用して、ブリードを防止することが望ましい。ヒンダードアミン系の光安定剤に代わる化合物としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルビペリジン、または4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ブチル2,2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の(メタ)アクリロイルオキシ基を持つ化合物、もしくは4−クロトノイルオキシ−2,2,6.8−テトラメチルピペリジン、または4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のクロトノイルオキシ基を持つ化合物をグラフト共重合させた樹脂等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂には、顔料等の着色剤が添加されていてもよい。これによって、基材シートは不透明(隠蔽性)に形成される。
基材シートを構成する熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂を用いた場合には、基材シートの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことが好ましい。この易接着処理は、この種の基材シートにおいて通常使用される方法を用いることができる。このような易接着処理を行うことによって、オレフィン系樹脂で構成される基材シートの表面に、水酸基、カルボキシル基等の活性水素原子含有官能基を生成することができる。なお、基材シートを熔融押し出し法で製膜する場合には、基材シートの表面に極性官能基がある程度生成されるので、極性官能基の生成が十分であれば、易接着処理は省いてもよい。
本発明においては、上記のとおり、機能層の最外表面を構成する層の形成に用いられる硬化性樹脂組成物には、抗アレルゲン剤、シリカ微粒子、樹脂ビーズおよびガラスビーズのうち少なくとも一方のビーズが配合されている。
抗アレルゲン剤を構成するフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子は、そのフェノール性水酸基によりアレルゲン物質を吸着捕捉し、そのエネルギー活性を不活化(抑制)する。また、非水溶性高分子であるため、水の存在下や高湿度条件におけるブリードや溶け出しを防止できる。
フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子は、一価のフェノール性水酸基を有する単量体を重合または共重合させたものである。例えば、ポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)、ポリ(4−ビニルフェノール)等のポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシアントラセン)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリビニルフェノールは、モノフェノールであるため着色レベルが低く、素地の外観を損ねることがなく、加工性が高く、市販品として容易に入手できる点から好ましく用いられる。
抗アレルゲン剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全量に対して好ましくは、3質量%以上15質量%以下である。3質量%以上とすることで、十分な抗アレルゲン性を発現することができるので好ましい。15質量%以下とすることで、耐ブロッキング性を確保することができるので好ましい。
硬化性樹脂組成物に配合されるシリカ微粒子は、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上10μm以下のものである。また、硬化性樹脂組成物に配合されるビーズは、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上15μm以下のものである。このような平均粒径を有するシリカ微粒子とビーズを抗アレルゲン剤に組み合わせて配合することで、耐ブロッキング性と耐傷性が効果的に確保されるだけではなく、抗アレルゲン性能が向上する。抗アレルゲン性能が向上する理由は、定かではないが、シリカ微粒子とビーズを組み合わせることで、抗アレルゲン剤の分散性が向上し、抗アレルゲン剤の性能の効率化に寄与していると考えられる。なお、シリカ微粒子およびビーズのうちどちらか一方だけを用いて抗アレルゲン剤に組み合わせても、抗アレルゲン性能、耐ブロッキング性と耐傷性をすべて満足させることができない。
シリカ微粒子は、硬化性樹脂組成物の抗アレルゲン性能を低下させずに、主に耐ブロッキング性を付与する目的で配合される。
このようなシリカ微粒子は、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上10μm以下のものが使用されるが、好ましくは、平均粒径4μm以上8μm以下のものが使用される。平均粒径が3μm以上10μm以下の範囲内であると、抗アレルゲン性能を低下させずに、耐ブロッキング性を付与することができる。平均粒径が3μmより小さい場合は、十分な抗アレルゲン性能と耐ブロッキング性能を発現することができない。また、平均粒径が10μmより大きい場合は、アレルゲンのシリカ微粒子への可逆的な吸着が大きくなり、安定した抗アレルゲン性能が発現しない。また、耐傷性も著しく低下する。
樹脂ビーズ(樹脂を材質とするビーズ)は、例えば、従来知られている方法、すなわちホモポリマーを重合して製造する方法や、高分子量ポリマーを分解して製造する方法等により得ることができる。例えば、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ポリスチレン樹脂系、およびシリコン樹脂系の樹脂ビーズ等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、安価で耐汚染性が高いアクリル樹脂系の樹脂ビーズや、感触を重視する用途の場合には触感が優れるウレタン樹脂系の樹脂ビーズが好ましい。
ガラスビーズ(ガラスを材質とするビーズ)は、内部が均質で透明度が高く、真球に近くしかも表面が平滑な球状粒子が好適である。具体例としては、プリズマライト社製ミクロスフィアP2011SL(平均粒径5μm)、プリズマライト社製ミクロスフィアP2015SL(平均粒径9μm)、ポッターズ社製EMB−10(平均粒径5μm)、ポッターズ社製EMB−20(平均粒径10μm)等が挙げられる。
このような樹脂ビーズおよびガラスビーズは、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上15μm以下のものが使用されるが、好ましくは、平均粒径4μm以上8μm以下のものが使用される。平均粒径が3μmより小さい場合は、ビーズが塗膜中に埋没するため、耐ブロッキング性や耐傷性に寄与しない。また、平均粒径が15μmより大きい場合は、耐ブロッキング性を確保することはできるが、ビーズの欠けが生じるなど耐傷性が発現しにくい。
なお、シリカ微粒子やビーズは、平均粒径が上記した範囲内であれば、異なる平均粒径を持つものを組み合わせて用いてもよい。ビーズの平均粒径がシリカ微粒子の平均粒径と比較して小さいと、抗アレルゲン性能がより向上する傾向にある。逆に、ビーズの平均粒径がシリカ微粒子の平均粒径と比較して大きいと、耐ブロッキング性と耐傷性がより向上する傾向にある。このため、ビーズの平均粒径が、シリカ微粒子の平均粒径に対して大きなものと小さなものを組み合わせて用いることが好ましい。
本発明においては、上記のとおり、抗アレルゲン剤の含有量は、シリカ微粒子とビーズの合計量に対して質量比で0.2以上3.0以下としている。樹脂ビーズとガラスビーズの両方を含む場合は、シリカ微粒子と樹脂ビーズとガラスビーズの合計量に対して、抗アレルゲン剤の含有量を、質量比で0.2以上3.0以下としている。抗アレルゲン剤の含有量がこの質量比よりも小さいと体質顔料へのアレルゲンの可逆的吸着が起こり、抗アレルゲン性能の発現が不安定になる。また、抗アレルゲン剤の含有量がこの質量比より大きいと耐ブロッキング性と耐傷性を十分に確保することができない。
機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を架橋により硬化させて厚さ5μm以上15μm以下の塗膜で形成される。塗膜厚さは、好ましくは、7μm以上14μm以下である。塗膜厚さが5μm以上15μm以下であることにより、特に耐ブロッキング性と耐傷性が向上する。塗膜厚さが5μm未満では、抗アレルゲン剤、シリカ微粒子およびビーズを効率よく分散させることができず、また、安定に塗布することが困難となり、抗アレルゲン性能、耐ブロッキング性、耐傷性が低下する。塗膜厚さが15μmを超える場合には、塗膜割れを起こすなど耐ブロッキング性、耐傷性が低下する。
硬化性樹脂組成物としては、例えば、硬化性樹脂として活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等を用いたものが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。
熱硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
本発明では、短時間で容易に耐久性を有する緻密な硬化物塗膜が得られるので、活性エネルギー線硬化型樹脂が好ましく用いられる。
以下、活性エネルギー線硬化型樹脂を用いた硬化性樹脂組成物について説明する。この硬化性樹脂組成物は、上記した抗アレルゲン剤、シリカ微粒子、およびビーズとともに、活性エネルギー線硬化型樹脂として反応性オリゴマーおよび反応性モノマーから選ばれる少なくとも1種を含有する。
上記の反応性オリゴマーは、これを硬化性樹脂組成物に配合することで、耐汚染性や耐擦傷性等の塗膜強度を向上させることができる。反応性オリゴマーは、好ましくは1分子中に2個以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する光硬化性(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる樹脂である。反応性オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル共重合体の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した共重合系(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、フッ素含有オレフィンから誘導されるユニット、重合性不飽和基含有シリコーンから誘導されるユニット、または水酸基含有不飽和エーテルから誘導されるユニットを含有する共重合体であってもよい。
上記の反応性オリゴマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートまたはエステル変性されたエポキシアクリレートが用いられる。
反応性オリゴマーの分子量(Mw)は、好ましくは500〜4000の範囲内である。分子量(Mw)を500以上とすることで、十分な塗膜強度とすることができるので好ましい。分子量(Mw)を4000以下とすることで、硬化性樹脂組成物の粘度と、耐汚染性と、抗アレルゲン性能との良好なバランスを得ることが容易となるので好ましい。
反応性オリゴマーの配合量は、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。配合量を10質量%以上とすることで、十分な塗膜強度とすることができるので好ましい。配合量を70質量%以下とすることで、塗膜が硬くなり過ぎず、脆くなりにくくなるので好ましい。
上記の反応性モノマーは、反応性希釈剤や架橋剤として用いられる。反応性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボニルアクリレート、3−メトキシジブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,4ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(ヘキサ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の反応性モノマーの中でも、1〜3個の(メタ)アクリロイル基を有するTg(ガラス転移温度)100℃以上のモノマーは、これを硬化性樹脂組成物に配合することで、硬化性樹脂塗膜の耐汚染性、耐擦傷性、耐クラック性をともに向上させることができる。このようなTg100℃以上のモノマーとしては、例えば、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記の反応性モノマーの中でも、1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素系モノマーは、これを配合することで、抗アレルゲン性能を低下することなく硬化性樹脂組成物を低粘度化することができる。
抗アレルゲン剤は、通常、水素結合能力の高い官能基を持つため、カルボニル基やエーテル基を有するポリマーとの間に相互作用が働く。しかし、アレルゲン物質を不活化する活性点である水素結合能力の高い官能基とポリマーとの間に水素結合による相互作用が働くと、十分な抗アレルゲン性能が発現しにくくなる場合がある。これに対して、抗アレルゲン剤を分散可能な脂肪族炭化水素系モノマーを用いることにより、抗アレルゲン性能を低下することなく硬化性樹脂組成物を低粘度化することができる。
脂肪族炭化水素系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
反応性モノマーの配合量は、抗アレルゲン性能を低下することなく硬化性樹脂組成物の低粘度化を実現するとともに、他の塗膜物性も確保する点からは、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは3〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%である。
硬化性樹脂組成物には、抗アレルゲン剤、シリカ微粒子、ビーズ、反応性オリゴマー、および反応性モノマーに加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において光重合開始剤を配合することができる。
光重合開始剤としては、水素引き抜き型あるいは分子内開裂型のものを用いることができる。
水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン/アミン系、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン系、チオキサントン/アミン系の光重合開始剤等が挙げられる。
分子内開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン型、アセトフェノン型、ベンゾフェノン型、チオキサントン型、アシルフォスフィンオキサイド型の光重合開始剤等が挙げられる。中でも、反応性が高いアセトフェノン型の2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、長波長まで吸収端が伸びているアシルフォスフィンオキサイド型のモノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイドが好ましい。
光重合開始剤の配合量は、反応性を高め、かつ塗膜物性等も損なわないようにする点からは、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜6質量%である。
硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、反応性オリゴマー、反応性モノマー、および光重合開始剤以外の他の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、ワックス、抗菌剤、防黴剤、非反応性希釈剤、重合禁止剤、艶消し材、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
機能層の最外表面を構成する層の形成は、硬化性樹脂組成物を適宜手段で塗工し、紫外線もしくは電子線を照射して硬化させる。硬化性樹脂組成物には、粘度を調整するために、樹脂の成分を溶解可能であり常圧における沸点が70℃〜150℃の溶剤を、硬化性樹脂組成物中に30質量%以下の範囲で用いることができる。溶剤の添加量が30質量%以下の範囲であれば、乾燥がスムーズであり、生産スピードの大きな低下がない。上記の溶剤としては、塗料、インキ等に通常使用されるものが使用できる。具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどの酢酸エステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。なかでも、ケトン類、酢酸エステル類などの電子供与性の高い溶剤は、より溶解しやすく好適である。
硬化性樹脂組成物の塗工は、グラビア(ロール)コート、グラビアリバース(ロール)コート、グラビアオフセットコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等を用いることができる。好ましいのはリバースロールコートである。
また、機能層の最外表面を構成する層の形成は、転写コーティング法を用いてもよい。これは、基材シートの表面に直接塗工せず、一旦、剥離性を有する薄いシート(フィルム)基材等に硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する。次いでこのシート基材を、塗膜を間に挟んで基材シートの表面に積層してこれを被覆、紫外線照射・電子線照射により塗膜を架橋硬化せしめ、しかる後にシート基材を剥離する方法である。なお、薄いシート基材に硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する手段は、上記の直接コーティング法と同じ各種のコーティング手段を用いることができる。
このようにして得られる本発明の化粧シートは、基材シートの表面に単一層または複数層からなる機能層を備え、機能層の最外表面を構成する層は、硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された塗膜である。機能層はこの塗膜の単一層であってもよいが、この塗膜を含む複数層から機能層を構成することもできる。例えば、図1に一例を示すように、基材シート1上に、ベタ層2と絵柄印刷層3からなるインキ絵柄層4、接着剤層5、透明樹脂層6、透明なプライマー層7、そして最外表面を構成する層8として上記した硬化性樹脂組成物の塗膜が順次積層され、これらが機能層10を構成していてもよい。
インキ絵柄層4として用いられるベタ層2は、隠蔽性を有しプライマーとしての特性も持つ着色インキにて全面にベタ印刷して形成したものであり、ベタ印刷層であるとともに基材シート1と透明樹脂層6との接着性を改良するためのプライマーとしての機能を有する。ベタ層2は、基材シート1表面の全面を覆うように全面ベタに形成しても、あるいは部分的ベタに形成してもいずれでもよい。ベタ層2の厚みは、例えば、1μm〜5μmとされる。
インキ絵柄層4として用いられる絵柄印刷層3は、木目模様、石目模様、各種抽象模様の絵柄を印刷形成したものである。絵柄印刷層3は、一般的な絵柄印刷用のインキを用いて印刷あるいは塗工することで形成できる。インキは、バインダーと着色剤とからなる。絵柄印刷層3の厚みは、例えば、1μm〜3μmとされる。
インキ絵柄層4は、図1に示すようにベタ層2と絵柄印刷層3の両者から構成されていてもよいが、ベタ層2のみ、あるいは絵柄印刷層3のみから構成されていてもよい。ベタ層2および絵柄印刷層3の形成は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷等の既知の手段を用いて形成することができる。インキ絵柄層4の形成は、基材シート1の表面に、ベタ層2、絵柄印刷層3の順に設けられる。
接着剤層5は、透明樹脂層6を積層するのに用いられる。接着剤層5としては、2液硬化型のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などのドライラミネート接着剤が好ましく用いられる。また上記方法以外にも、特に接着剤を用いずに、インキ絵柄層4の表面に、透明樹脂層6を構成する樹脂を熔融押し出し塗工により、透明樹脂層6をシート製膜と同時に積層する方法を用いてもよい。
透明樹脂層6を構成する樹脂は、基材シート1を構成する樹脂と同種または異種の熱可塑性樹脂であり、透明樹脂層6は、基材シート1と同様、カレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により形成される。透明樹脂層6の厚みは、例えば、50μm〜200μmとされる。
透明樹脂層6を構成する熱可塑性樹脂には、基材シート1を構成する熱可塑性樹脂と同様、必要に応じて、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が添加される。透明樹脂層6は、非着色の透明に形成されるが、必要に応じて着色剤を添加して着色透明に形成することもできる。透明樹脂層6を構成する樹脂としてオレフィン系樹脂を用いた場合には、基材シート1としてオレフィン系樹脂を用いた場合と同様、表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことができる。また、透明樹脂層6の表面に、樹脂溶液を塗布してプライマー層7を形成することもできる。プライマー層7の樹脂としては、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
そして、プライマー層7の表面には、上記したように、カレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により最外表面を構成する層8である硬化性樹脂組成物の塗膜が形成される。
本発明の化粧シートは、表面に、エンボス加工が施されていてもよい。エンボス加工は、常用の方法により形成される。例えば、最外表面を構成する層8を加熱軟化させた後、所望の凹凸形状を有するエンボス板で加圧・賦形し、冷却固定することによりエンボスを施すものである。エンボスの凹凸形状は、木目導管溝、石板表面凹凸、梨目、砂目、ヘアライン等である。
さらに、図1の化粧シートは、基材シート1の裏面側に硬質のバッカー層9が積層されている。バッカー層9は、樹脂層の単独層、発泡樹脂からなる発泡層の単独層、樹脂層または発泡層に繊維層を積層したものが用いられる。バッカー層9の厚みは1〜5mm程度である。バッカー層9を備えることで、耐キャスター性・耐凹み性を化粧シートに容易に付与することができる。
バッカー層9の樹脂層に用いられる樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらは塩素原子等のハロゲン原子を含まない樹脂である。また、上記樹脂中にシリカ、ガラスビーズ等の充填剤を添加しても良い。バッカー層9は、図1に示すように基材シート1の裏面に直接積層してもよいが、接着剤層を介して積層してもよい。接着剤層は、上記した接着剤層5と同様のものを用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた配合成分は以下の通りである。(配合表1、2参照)
(1)フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子よりなる抗アレルゲン剤
・丸善化学株式会社製「マルカリンカーS−2P」、(ポリ-4−ビニルフェノール)
(2)シリカ微粒子
・富士シリシア社製「サイロホービック702」(平均粒径4.1μm)
・富士シリシア社製「サイロホービック4004」(平均粒径8.0μm)
・富士シリシア社製「サイリシア430」(平均粒径4.1μm)
・水澤化学社製「P−527」(平均粒径2μm)
・水澤化学社製「P−78F」(平均粒径18μm)
(3)
樹脂ビーズ
・ガンツ化成社製「GM-0401S」(平均粒径4μm)
・ガンツ化成社製「GM-0801S」(平均粒径8μm)
・ガンツ化成社製「GM-0201S」(平均粒径2μm)
・ガンツ化成社製「GM-2001」(平均粒径20μm)
ガラスビーズ
・プリズマライト社製「ミクロスフィアP2011SL」(平均粒径5μm)
・プリズマライト社製「ミクロスフィアP2015SL」(平均粒径9μm)
・ユニチカ社製「SPL−30」(平均粒径30μm)
(4)オリゴマー樹脂
・日本合成化学社製「UV−7550B」ウレタンアクリレート
(5)反応性モノマー
・第一工業製薬社製「ME−3」メトキシトリエチレングリコールアクリレート
・第一工業製薬社製「L−C9A」2個のメタアクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマー
・東亞合成社製「M−220」トリプロピレングリコールジアクリレート
・東亞合成社製「M−310」トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート
(6)光重合開始剤
・Ciba社製「ダロキュアMBF」メチルベンゾイルホルマート
上記の配合成分を表1および表2に示す配合量(質量部)で配合し、均一に混合することにより硬化性樹脂組成物を調製した。
この硬化性樹脂組成物を用いて、次の方法により化粧シートを作製した。厚さ80μmのオレフィン樹脂系の基材シートに、木目柄のインキ絵柄層、接着剤層、透明樹脂層を順次設けた。次いで、最外表面にトップコート層として、上記を配合して調製した硬化性樹脂組成物をリバースロールコートにて塗工した。その後、紫外線照射もしくは電子線照射を行い硬化反応させた。
紫外線照射は、空気中、120mW/cm、350mj/cm2で行った。電子線照射は、上記配合より、光重合開始剤を添加せずに配合を実施し、窒素雰囲気下中、150kv、50kGyで行った。
このようにして得られた実施例および比較例の化粧シートについて、下記のとおり、塗膜厚さの測定と評価を行った。
[塗膜厚さ]
化粧シートの断面を切断し、化粧シートの最表面に配設された層の塗膜厚さを走査線電子顕微鏡(SEM)により測定した。
[抗アレルゲン性能]
予め調製したダニ抗原(アサヒビール(株)製、精製ダニ抗原Derf2)の水溶液0.4mlを化粧シートの塗膜に滴下した(初期濃度33.3ng/ml)。6時間後、化粧シート上のダニ抗原液を回収し、ELISAキット(INDOOR社製)でダニアレルゲン不活化率を測定した。測定結果に基づき下記の基準により抗アレルゲン性能を評価した。
○:初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の不活化率が80%以上低下した。
×:初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の不活化率が80%以上低下しなかった。
[耐傷性]
スチールウール#0000を荷重300g/cm2で20往復擦ったときの外観艶変化を評価した。
○:著しい艶変化なし
×:著しい艶変化あり
[耐ブロッキング性]
化粧シートを水平台上に複数枚を同じ向きで重ねた上から、5kg/cm2の荷重を40℃にて48時間加えた後、重ねた化粧シートを剥がしたときにブロッキングが起きたか否かで評価した。
○:ブロッキングが全くない場合
×:ブロッキングがある場合
[耐汚染性]
(耐アルカリ性試験)
化粧シートの塗膜に1%炭酸ナトリウム水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により評価した。
○:外観異常なし
×:塗膜に白化あり
(耐酸性試験)
化粧シートの塗膜に5%酢酸水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により評価した。
○:外観異常なし
×:塗膜に白化あり
評価結果を表1および表2に示す。
表1より、実施例1〜8の化粧シートは、抗アレルゲン性能、耐傷性、耐ブロッキング性、耐汚染性が優れることが確認された。一方、表2より、比較例1〜6、11の化粧シートは、平均粒径3μm以上10μm以下のシリカ微粒子、または平均粒径3μm以上15μm以下のビーズを含有していないので、抗アレルゲン性能、耐傷性、耐ブロッキング性すべてを満足するものではなかった。比較例7〜8の化粧シートは、抗アレルゲン剤の含有量が、シリカ微粒子とビーズの合計量に対して質量比で0.2以上3.0以下でないので、抗アレルゲン性能、耐傷性、耐ブロッキング性すべてを満足するものではなかった。また、比較例9〜10の化粧シートは、塗膜厚さが5μm以上15μm以下でないので、抗アレルゲン性能、耐傷性、耐ブロッキング性すべてを満足するものではなかった。なお、耐汚染性(耐アルカリ性試験、耐酸性試験)については、実施例1〜8および比較例1〜11の化粧シートのすべてにおいて、塗膜に白化が見られなかった。