JP5587682B2 - 抗アレルゲン性を有する木質板 - Google Patents

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Description

本発明は、ダニ、花粉やペット由来のアレルゲン物質を抑制することのできる、住宅用建材等に適用可能な木質板に関するものである。
近年、我が国では3人に1人がアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等のアレルギー疾患を患っていると言われている。アレルギー疾患の原因としては、ダニ、花粉、カビ、ペットの毛等が挙げられる。
特に、室内から検出されるダニの70%以上を占めるチリダニのアレルゲン(以下「ダニアレルゲン」という。)が問題となっている。このチリダニは、虫体、死骸、抜け殻、フン等の全てがアレルゲンになると言われている。中でもフン由来のダニアレルゲンはアレルゲン活性が高く、しかも粒子が非常に小さく舞い上がり易いため人体に接触することが多いことから、最も問題とされている。
一般に、室内のフローリング床はカーペットや畳に比べて、ダニアレルゲンはほとんど存在しないと考えられている。しかし近年、フローリング床においても厚生労働省が示すガイドラインを大きく上回るダニアレルゲンが存在することが報告されている。また、フローリング床に存在するダニアレルゲンは、非常に舞い上がり易いことから、微量でもダニで汚染されたカーペットと同じぐらい人体にとって危険であることが報告されており、フローリング床からアレルゲン粒子を除去することは、アレルギー疾患予防に大変有効である。
また、室内の壁面にも、非常に小さく舞い易いダニアレルゲンやペット由来のアレルゲン物質が付着しており、掃除時等に非常に舞い上がり易いことから問題視されている。
フローリング床や壁面に集積、付着したダニアレルゲンを低減、駆除する方法としては、掃除機やモップ等でダニアレルゲンを除去する方法が挙げられる。しかし、ダニアレルゲンは非常に小さくかつ舞い上がり易いため、完全に除去することは事実上不可能であった。
一方、室内に存在するアレルゲンを抑制する方法として、建築材料にジルコニウム塩等の抗アレルゲン剤を塗布する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、室内のフローリング床に存在するアレルゲンを抑制する方法として、抗アレルゲン剤を含有する床用艶出し剤を塗布する方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法によれば、抗アレルゲン剤を含有する床用艶出し剤を定期的に塗布することでアレルゲンを抑制することができる。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、床用艶出し剤自体の耐傷性と耐磨耗性、あるいは耐薬品性や耐アルカリ性等の耐汚染性に乏しく、ペットのし尿、アルコール、酢等の調味料、洗剤、漂白剤等が付着した場合、容易に剥離、溶出、白化現象等を起こしてしまい、必ずしもアレルゲン抑制に対する十分な対策とは成り得なかった。
この問題点を解決するために、抗アレルゲン剤としてフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子を用いて、これを含有する紫外線、電子線等の活性エネルギー線による硬化性樹脂組成物を木質基材に塗布し硬化することにより、抗アレルゲン剤を含有する塗膜を表面に形成した床材が提案されている(特許文献3)。この床材によれば、抗アレルゲン剤を含有する塗膜に耐傷性と耐磨耗性、および耐薬品性等の耐汚染性を付与することができる。
特開2001−212806号公報 特開2001−214130号公報 特開2008−239721号公報
しかしながら、特許文献3に記載の床材によれば、抗アレルゲン性と耐汚染性は満足できるレベルに達しているが、耐傷性と耐磨耗性は必ずしも満足できるレベルには達していなかった。
具体的には、人の歩行や椅子の移動等の各種日常生活における不織布、ケイ砂、スチールウール等の摺動物の接触により細かい擦傷や艶変化等が生じてしまう。
通常の木質建材等の木質板であれば、上記のような日常の細かい擦傷や艶変化等の劣化に対してワックスをかけて捕修することができる。ところが、抗アレルゲン剤を含有する塗膜を表面に形成した木質板の場合、細かい擦傷や艶変化等の劣化に対してワックスを塗布すると抗アレルゲン性が損なわれてしまうため、ワックスをかけることができないという問題点があった。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化に優れ、ワックスによる補修をほとんど必要としない抗アレルゲン性を有する木質板を提供することを課題としている。
本発明の木質板は、板状の木質基材と、この木質基材の最表面に配設され単一層または複数層から形成された機能層とを備え、機能層の表面を構成する層が抗アレルゲン剤を含有している抗アレルゲン性を有する木質板であって、機能層の表面を構成する層が、抗アレルゲン剤および平均分子量(Mw)が500〜2000で3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族ウレタンアクリレート樹脂と内部硬化型の光重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された厚さ5μm以上の塗膜であり、JIS K5400の標準方法による塗膜面の鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする。
この木質板において、硬化性樹脂組成物は、1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーを含有することが好ましい。
本発明によれば、耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化に優れ、ワックスによる補修をほとんど必要としない抗アレルゲン性を有する木質板が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の木質板は、板状の木質基材と、この木質基材の最表面に配設され単一層または複数層から形成された機能層とを備え、機能層の表面を構成する層が抗アレルゲン剤を含有している抗アレルゲン性を有する木質板である。そして、機能層の表面を構成する層が、抗アレルゲン剤および平均分子量(Mw)が500〜2000で3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された厚さ5μm以上の塗膜であり、JIS K5400の標準方法による塗膜面の鉛筆硬度が2H以上である。
本発明によれば、機能層の表面を構成する層の塗膜を形成する硬化性樹脂組成物が平均分子量(Mw)が500〜2000で3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を含有することで、形成される塗膜に耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化を付与するとともに、適度な可とう性も付与することができる。
また、抗アレルゲン剤は通常、アレルゲン物質を抑制する極性部位を官能基等の化学構造として有しており、このような極性部位は水素結合能が高いため、カルボニル基やエーテル基を有するポリマーとの間に水素結合による相互作用が働く。しかし、このような水素結合による相互作用が働くと、十分な抗アレルゲン性が発現しにくくなる。これに対して、上記の脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は、このような抗アレルゲン剤との相互作用が小さく、抗アレルゲン性を低下することなく耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化に優れた塗膜を有する木質板を製造することができる。さらに、上記の脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は抗アレルゲン剤の分散性も良好であることから、抗アレルゲン剤の配合量が少量であっても塗膜に高い抗アレルゲン性を付与することができる。
また、上記の脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は、光や熱に対して安定であるため、これを用いた塗膜を有する本発明の木質板は、耐候性にも優れている。
そして機能層の表面を構成する層の塗膜の厚さが5μm以上であることで、木質基材の硬さによる影響を受けずに塗膜面の硬度を高めることができる。また、木質基材からのブリード等の影響を受けずに良好な抗アレルゲン性を発現することができる。
さらに、JIS K5400の標準方法による塗膜面の鉛筆硬度が2H以上であるため、長期的な摺動物の接触に対する耐傷性と耐磨耗性に優れており、ワックスによる補修をほとんど必要とせず、安定的に持続して抗アレルゲン性を発現することが可能となる。
また、1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーを含有することが好ましい。これにより、ウレタンアクリレート樹脂による強靭で伸びが小さい塗膜に良好な可とう性を付与することができ、塗膜の密着性や耐クラック性も向上させることができる。
また、抗アレルゲン剤は通常、アレルゲン物質を抑制する極性部位を官能基等の化学構造として有しており、このような極性部位は水素結合能が高いため、カルボニル基やエーテル基を有するポリマーとの間に水素結合による相互作用が働く。しかし、このような水素結合による相互作用が働くと、十分な抗アレルゲン性が発現しにくくなる。これに対して、1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーは、このような抗アレルゲン剤との相互作用が小さく、これを硬化性樹脂組成物に配合することで、抗アレルゲン性を低下することなく硬化性樹脂組成物を低粘度化することができる。
また、内部硬化型の光重合開始剤を含有することが好ましい。これにより、抗アレルゲン剤を表面に配向させることが可能となる。
本発明において、機能層の表面を構成する層の形成に用いられる硬化性樹脂組成物には、抗アレルゲン剤が配合される。抗アレルゲン剤としては、例えば、アレルゲン物質を抑制する極性部位を化学構造として有するものを用いることができる。
このような抗アレルゲン剤としては、例えば、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子が挙げられる。フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子は、そのフェノール性水酸基によりアレルゲン物質を吸着捕捉し、そのエネルギー活性を不活化(抑制)する。また、非水溶性高分子であるため、水の存在下や高湿度条件におけるブリードや溶け出しを防止できる。
フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子としては、例えば、ポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)、ポリ(4−ビニルフェノール)等のポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシアントラセン)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリビニルフェノールは、モノフェノールであるため着色レベルが低く、素地の外観を損ねることがなく、加工性が高く、市販品として容易に入手できる点から好ましく用いられる。
また本発明では、抗アレルゲン剤として、アニオン系界面活性剤、水酸基を有する化合物または高分子、金属塩等を無機担体に担持して用いることもできる。
抗アレルゲン剤としてのアニオン系界面活性剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、塩化ヘキサデシルピリジニウム、臭化ヘキサデシルピリジニウム、臭化オクタデシルピリジニウム、臭化ドデシルピコリニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化ベンジルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、アンモニウム塩、トリエタノールアミンやオクタデシルトリメチルアミン等のアミン、アミン塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
抗アレルゲン剤としての水酸基を有する化合物または高分子としては、例えば、没食子酸、ポリビニルアルコール、ポリ(4−ビニルフェノール)、ポリチロシン、リグノフェノール誘導体、セルロース、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、イヌリン、キトサン、クラスターデキストリン、グアーガム、タンニン酸、カテキン、キチン、キトサン、植物抽出物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
抗アレルゲン剤としての金属塩としては、例えば、銅、亜鉛、ジルコニウム、錫、鉛、アルミニウム等の2〜4価の金属の硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩や、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のアルカリ金属の炭酸塩、およびこれらを含む複塩等を挙げることができ、例えば、硫酸亜鉛、明礬、酢酸鉛等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記した抗アレルゲン剤としてのアニオン系界面活性剤、水酸基を有する化合物または高分子、および金属塩としては、着色レベルが低く、素地の外観を損ねることがなく、市販され容易に入手可能であり、安全性が高いものが好ましく用いられる。そしてこれらの抗アレルゲン剤は、無機担体に担持して無機粒子として用いられる。
無機担体としては、従来より知られている無機担体を特に制限なく用いることができ、通常は表面積の大きいものが好ましい。具体的には、無機酸化物、すなわちAl、La、Ce、Si、Ti、Zr、Th、V、Nb、Ta、Cr等の酸化物や、これらを2種以上複合させたもの、例えば、シリカ、シリカゲル、シリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカチタニア、アルミナチタニア、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、燐酸ジルコニウム、多孔質セラミックス等を用いることができ、あるいはモンモリロナイト、カオリン等の粘土鉱物や珪藻土等の天然物を用いることもできる。中でも、物理的、化学的に長期間安定なものが好ましく、特にシリカ、シリカゲル、燐酸ジルコニウム等が好ましい。
そして無機担体としては、上記に例示したような無機担体に銀イオンまたは銅イオンを担持させたものが好ましく用いられる。
無機担体に抗アレルゲン剤を担持させる方法は、特に制限はなく、例えば、従来より知られている方法を用いることができる。例えば、粉末状、ペレット状等に成型した無機担体に、所望の抗アレルゲン剤の水溶液を含浸させ、余分な水分を濾過または蒸発により除去し、乾燥した後、必要に応じて焼成することにより無機担体に抗アレルゲン剤を担持させることができる。あるいは、無機担体のヒドロゾルまたはスラリーに所望の抗アレルゲン剤の水溶液を加え、混練した後乾燥し、必要に応じて焼成することにより無機担体に抗アレルゲン剤を担持させることができる。
無機担体への抗アレルゲン剤の担持量は、特に制限はなく、無機担体や抗アレルゲン剤の種類によって異なるが、余り多過ぎると無機担体の長期安定性が発揮されず、少な過ぎると抗アレルゲン剤の性能が発揮されない。無機担体への抗アレルゲン剤の担持量は、通常は無機担体に対して0.1〜80質量%、好ましくは1〜60質量%である。
抗アレルゲン剤の含有量は、上記に例示したフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子、アニオン系界面活性剤、水酸基を有する化合物または高分子、および金属塩等のいずれの抗アレルゲン剤を用いた場合においても、硬化性樹脂組成物の全量に対して好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。当該含有量が少な過ぎると抗アレルゲン性が十分に発揮されない場合がある。一方、当該含有量が多過ぎると塗膜の耐久性が不十分となる場合がある。
また、機能層の表面を構成する層の形成に用いられる硬化性樹脂組成物には、平均分子量Mwが500〜2000で3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族ウレタンアクリレート樹脂が配合される。このような脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を配合することで、抗アレルゲン剤の極性部位を変性することなく、短時間で容易に耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化に優れた塗膜を有する木質板を製造することができる。
本発明に用いられる脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は、形成される塗膜に耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化を付与し、さらに適度な可とう性も付与するための成分であり、硬化性樹脂の主成分としてウレタン結合を有しないオリゴマーを用いた場合には、良好な耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化が得られず、可とう性にも不足が生じる。
また、脂肪族ウレタンアクリレート樹脂の平均分子量Mwが500〜2000の範囲外である場合や、あるいは(メタ)アクリロイル基が3個未満である場合には、良好な耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化が得られず、あるいは耐汚染性、耐クラック性等の木質板として必要な他の塗膜物性が得られなくなる。
なお、抗アレルゲン剤を含有する機能層の表面を構成する層は、JIS K5400の標準方法による塗膜面の鉛筆硬度が2H以上の層であることが重要である。平均分子量Mwが500〜2000の範囲でかつ3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を用いると、このような鉛筆硬度を持った塗膜を容易に形成することができ好ましい。
本発明に用いられる脂肪族ウレタンアクリレート樹脂としては、例えば、脂肪族イソシアネート化合物と多官能アクリレート化合物との反応生成物等が挙げられる。脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。多官能アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタグリセロールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
また、抗アレルゲン剤は通常、アレルゲン物質を抑制する極性部位を官能基等の化学構造として有しており、このような極性部位は水素結合能が高いため、カルボニル基やエーテル基を有するポリマーとの間に水素結合による相互作用が働く。しかし、このような水素結合による相互作用が働くと、十分な抗アレルゲン性が発現しにくくなる。これに対して、上記の脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は、このような抗アレルゲン剤との相互作用が小さく、抗アレルゲン性を低下することなく耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化に優れた塗膜を有する木質板を製造することができる。さらに、上記の脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は抗アレルゲン剤の分散性も良好であることから、抗アレルゲン剤の配合量が少量であっても塗膜に高い抗アレルゲン性を付与することができる。
また、上記の脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は、光や熱に対して安定であるため、これを用いた塗膜を有する本発明の木質板は、耐候性にも優れている。
硬化性樹脂組成物における脂肪族ウレタンアクリレート樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。当該含有量が少な過ぎると、塗膜の耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化が不十分となる場合があり、また抗アレルゲン性が不十分となる場合がある。当該含有量が多過ぎると、塗膜が硬過ぎて密着性が低下する場合があり、またクラックが発生し易くなる。
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、脂肪族ウレタンアクリレート樹脂に加えて、さらに他の硬化性樹脂を配合することができる。このような硬化性樹脂としては、活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が挙げられる。なお、硬化性樹脂組成物の架橋成分(抗アレルゲン剤が架橋性を有するものであっても、抗アレルゲン剤は除く)全量に占める平均分子量Mwが500〜2000の範囲でかつ3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレート樹脂の含有量は、平均分子量Mwが500〜2000の範囲でかつ3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレート樹脂およびこのウレタンアクリレート樹脂と架橋性を有する反応性モノマーとの合計量が、架橋成分全量に対して70質量%以上となるよう配合するのが好ましい。
上記活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリブタジエン(メタ)アクリレート樹脂、シリコーン(メタ)アクリレート樹脂、アクリル酸エステル共重合体の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した共重合系(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。また、フッ素含有オレフィンから誘導されるユニット、重合性不飽和基含有シリコーンから誘導されるユニット、または水酸基含有不飽和エーテルから誘導されるユニットを含有する共重合体であってもよい。
熱硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化型樹脂は、必要に応じて硬化性樹脂組成物の塗膜物性を害さない程度に配合することができる。
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、反応性モノマーとして1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーが好ましく配合される。1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーを配合することで、脂肪族ウレタンアクリレート樹脂による強靭で伸びが小さい塗膜に良好な可とう性を付与することができ、塗膜の密着性や耐クラック性も向上させることができる。
また、抗アレルゲン剤は通常、アレルゲン物質を抑制する極性部位を官能基等の化学構造として有しており、このような極性部位は水素結合能が高いため、カルボニル基やエーテル基を有するポリマーとの間に水素結合による相互作用が働く。しかし、このような水素結合による相互作用が働くと、十分な抗アレルゲン性が発現しにくくなる。これに対して、1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーは、このような抗アレルゲン剤との相互作用が小さく、これを硬化性樹脂組成物に配合することで、抗アレルゲン性を低下することなく硬化性樹脂組成物を低粘度化することができる。
1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーとしては、次のような化合物が挙げられる。
1個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基の残基が炭素数4〜12の1価の飽和脂肪族炭化水素基である化合物が挙げられる。具体的には、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基の残基が炭素数4〜12の2価の飽和脂肪族炭化水素基である化合物が挙げられる。具体的には、例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の化合物の中でも、2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーが好ましい。
硬化性樹脂組成物における1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーの含有量は、抗アレルゲン性を低下することなく硬化性樹脂組成物の低粘度化を実現するとともに、他の塗膜物性も確保する点からは、硬化性樹脂組成物の固形分に対して好ましくは3〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%である。
また、本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマー以外の反応性モノマーを、反応性希釈剤や架橋剤として配合することができる。このような反応性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、イソボルニルアクリレート、3−メトキシジブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(ヘキサ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の反応性モノマーの中でも、1〜3個の(メタ)アクリロイル基を有するTg(ガラス転移温度)100℃以上のモノマーは、これを硬化性樹脂組成物に配合することで、塗膜の耐傷性と耐摩耗性、耐汚染性、および耐クラック性を共に向上させることができる。このようなTg100℃以上のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
抗アレルゲン剤を含有する層の形成に用いられる硬化性樹脂組成物には、補強充填材を配合することができる。補強充填材を配合することで、硬化性樹脂組成物による塗膜に耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を容易に付与することができる。
補強充填材としては、例えば、減摩剤を用いることができる。減摩剤としては、例えば、アルミナ粉末、シリカ粉末、炭化ケイ素粉末等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、アルミナ粉末が好ましい。
アルミナ粉末は、気相法、液相法、固相法のいずれの製法で合成されたものであってもよい。また、板状、針状、粒状等のいずれの形状であってもよく、結晶形も、α、β、γ等のいずれであってもよい。特にαアルミナ粉末は、硬化性樹脂組成物との親和性が高く硬度も高いため、良好な分散性で硬化性樹脂組成物に混合され、抗アレルゲン性を低下させることなしに、容易に耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を発現することができる。
αアルミナ粉末は、平均粒径(体積基準メジアン径:d50)が好ましくは1〜10μmであり、その含有量は、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは1〜10質量%である。平均粒径と含有量を適切に制御することにより、上記したような鉛筆硬度を持った塗膜を、確実に形成することができるため、抗アレルゲン性を低下させることなく、耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を良好なものとすることができ、さらに、硬化性樹脂組成物による塗膜の仕上がり外観および肌触り感を良好なものとすることができる。
補強充填材は、上記のように硬化性樹脂組成物に配合して、本発明の木質板における機能層の表面を構成する層に含有させることで、硬化性樹脂組成物による塗膜に容易に良好な耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を付与することができる。一方、本発明の木質板における機能層が複数層から形成される場合、補強充填材としてαアルミナ粉末等の減摩剤を用いた場合には、機能層を構成する複数層のうち機能層の表面を構成する層以外の層に含有させることもできる。この場合にも、硬化性樹脂組成物による塗膜に耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を容易に付与することができる。
また、補強充填材として、樹脂ビーズを配合することができる。樹脂ビーズは、例えば、従来より知られている方法、すなわちホモポリマーを重合して製造する方法や、高分子量ポリマーを分解して製造する方法等により得ることができる。
樹脂ビーズとしては、例えば、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ポリスチレン樹脂系、およびシリコン樹脂系等の樹脂ビーズが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、摩擦係数が小さいシリコン樹脂系の樹脂ビーズが好ましいが、硬化性樹脂組成物との親和性と価格の点からは、アクリル樹脂系の樹脂ビーズがより好ましい。ただし、アクリル樹脂系の樹脂ビーズの場合、摩擦係数が大きいため、スリップ止め効果により逆に傷が付き易くなる可能性がある。そのため、アクリル樹脂系の樹脂ビーズを用いる場合には、適宜、シリカやワックス添加剤等を加え、塗膜表面の摩擦係数を小さくすることが好ましい。
本発明に用いられる樹脂ビーズは、平均粒径(体積基準メジアン径:d50)が好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μmである。なお、樹脂ビーズの平均粒径がこの範囲内であれば、異なる平均粒径を持つ樹脂ビーズを組み合せて用いてもよい。
また、樹脂ビーズの含有量は、硬化性樹脂組成物全量に対して好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%である。平均粒径と含有量を適切に制御することにより、上記したような鉛筆硬度を持った塗膜を、確実に形成することができるため、抗アレルゲン性を低下させることなく、耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を付与することができ、さらに、硬化性樹脂組成物による塗膜の仕上がり外観および肌触り感を良好なものとすることができる。
本発明の木質板における機能層が複数層から形成される場合、補強充填材として樹脂ビーズを用いた場合には、硬化性樹脂組成物に樹脂ビーズを配合することにより、機能層を構成する複数層のうち機能層の表面を構成する層に樹脂ビーズを含有させることが特に好ましい。このようにすることで、機能層を構成する複数層のうち機能層の表面を構成する層以外の層に樹脂ビーズを含有させた場合に比べて、硬化性樹脂組成物による塗膜の耐傷性と耐摩耗性、および耐艶変化を特に高めることができる。
なお、減摩剤や樹脂ビーズ等の補強充填材は、球状であることが好ましい。補強充填材として角が尖った多角形状のものを用いた場合、ロールコーターやドクターブレードを摩耗させたり、傷つけたりして、製造上問題が生じる場合がある。さらに、補強充填材として硬質で角の尖った多角形状の粉末を添加した硬化性樹脂組成物による塗膜は、手触り感が悪く、感触を重視する用途には利用できない可能性がある。また、床材に用いた場合、履物等のように床材に直接接触する物を摩耗させる可能性も考えられる。
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、上記に例示した成分に加えて、光重合開始剤を配合することができる。
光重合開始剤としては、塗膜表面と比較して内部の硬化速度が優れた内部硬化型、あるいは塗膜内部と比較して表面の硬化速度が優れた表面硬化型のものを用いることができ、特に、内部硬化型の光重合開始剤を用いることが好ましい。この内部硬化型の光重合開始剤を用いることで、抗アレルゲン剤を表面に配向させることが可能となる。なお、平均分子量Mwが500〜2000で3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族ウレタンアクリレート樹脂は酸素阻害を受けにくいため、内部硬化型の光重合開始剤を用い、表面硬化型の光重合開始剤は用いない、または少ししか用いなくても、形成される塗膜に耐傷性と耐磨耗性、および耐艶変化を付与することができる。そのため、内部硬化型の光重合開始剤を、光重合開始剤全体の8割以上とすることが好ましい。
内部硬化型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル、ベンジルメチルケタール、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルなどが挙げられる。なかでも、UV硬化後の残存臭気が少ないフェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルが好ましい。
表面硬化型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン型、アセトフェノン型、ベンゾフェノン型、チオキサントン型、アシルフォスフィンオキサイド型等の光重合開始剤が挙げられる。中でも、反応性が高いアセトフェノン型の2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、長波長まで吸収端が伸びているアシルフォスフィンオキサイド型のモノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイドが好ましい。
硬化性樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、反応性を高め、かつ塗膜物性等も損なわないようにする点からは、硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜6質量%である。
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、上記に例示した成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において、さらに他の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、ワックス、抗菌剤、防黴剤、非反応性希釈剤、重合禁止剤、艶消し材、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、有機溶剤等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、アルコール、ケトン、エステル類、アミン等が挙げられる。中でも、アルコール、ケトン、エステル類等の電子供与性の高い溶剤は、溶解し易く好適である。
本発明では、以上に説明したような硬化性樹脂組成物を板状の木質基材またはこの木質基材面に予め形成した機能層を構成する層に塗布し、次いで塗膜を硬化することで、木質板を得ることができる。木質板としては、例えば、フローリング床等の床材、室内の壁材、階段、框、ドア、カウンター、家具の側面板・前面板等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物を塗布する木質基材は、突き板貼りであってもよく、印刷シート貼りであってもよく、無垢材であってもよい。また、木質基材は、必要に応じて従来より知られている目止処理、着色処理等を予め表面に施すことができる。また、汎用の下塗り塗料、さらには中塗り塗料を塗装することもできる。
このようにして得られる本発明の木質板は、板状の木質基材と、この木質基材の最表面に配設され単一層または複数層から形成された機能層とを備え、機能層の表面を構成する層が抗アレルゲン剤を含有している。ここで、機能層の表面を構成する層は、抗アレルゲン剤および脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された塗膜であり、機能層はこの塗膜の単一層であってもよいが、この塗膜を含む複数層から機能層を構成することもできる。この場合、機能層におけるこの塗膜以外のその下の層としては、例えば、下塗り塗料による塗装層や、下塗り塗料による塗装層の上に形成される中塗り塗料による塗装層、あるいはシート材による層等が挙げられる。
上記の下塗り塗料および中塗り塗料は、一般に塗料を塗布する際に適用されている手段、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、ロールコーター、およびフローコーター等により塗布することができる。
下塗り塗料および中塗り塗料としては、例えば、水系塗料、アクリルラッカー、ポリウレタン塗料、ポリエステル塗料、紫外線硬化型のエポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂等が挙げられる。
下塗り塗料および中塗り塗料の塗布量は、木質基材の種類およびその処理方法等により適宜に調節されるが、素材感や風合い感(外観、肌触り感)を損なわない点からは、固形分換算で好ましくは合計20〜80g/m2、より好ましくは30〜60g/m2である。当該塗布量が少な過ぎると、製造した木質板の耐久性が低下する場合がある。一方、当該塗布量が多過ぎると、導管が埋まる等により素材感や風合い感を損ねてしまう場合がある。
一方、機能層の表面を構成する層を形成するための抗アレルゲン剤および脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は、例えば、ロールコーター、フローコーター、吹き付け法、エアレススプレー法、エアスプレー法、刷毛塗り、コテ塗り、浸漬法、引き上げ法、ノズル法、巻き取り法、流し法、盛り付け、パッチング法、グラビアコート法等により木質基材またはこの木質基材面に予め形成した機能層を構成する層に塗布することができる。塗布は、自動化により、あるいは手動により行うことができる。また、塗布回数は特に制限はなく、1回でも2回以上でもよい。
硬化性樹脂組成物を塗布した後、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することにより塗膜を硬化することができる。経済的観点からは、紫外線を用いることが好ましい。例えば高圧水銀ランプを用いた場合、照射量250〜400mJ/cm2で塗膜を硬化することができる。また、電子線を用いる場合には、例えば窒素雰囲気下、加速電圧200kV、電子線量30kGyの条件で電子線を照射し塗膜を硬化することができる。
このようにして形成される抗アレルゲン剤を含有する機能層の表面を構成する塗膜の厚みは、硬化後において5μm以上であることが重要であり、好ましくは5〜100μmである。塗膜の厚みを5μm以上とすることで、木質基材の硬さによる影響を受けずに塗膜面の硬度を高めることができる。また、木質基材からのブリード等の影響を受けずに良好な抗アレルゲン性を発現することができる。
そして塗膜は、JIS K5400の標準方法による塗膜面の鉛筆硬度が2H以上である。そのため、長期的な摺動物の接触に対する耐傷性と耐摩耗性に優れており、ワックスによる補修をほとんど必要とせず、安定的に持続して抗アレルゲン性を発現することが可能となる。
また、本発明の木質板は、以上において説明した硬化性樹脂組成物を用いることで、上述したように塗膜が優れた耐艶変化を有しており、例えば、スチールウール#0000を荷重1kgで塗膜面において10往復摺動した前後の測定角60°での光沢度の変化が±5以内である耐艶変化を有している。但し、本発明の木質板は、木質建材等として許容される程度であれば、光沢度の変化がこの範囲内にあるものに限定されない。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた配合成分は以下の通りである。
1) 抗アレルゲン剤
・マルカリンカーS−2P、丸善石油化学(株)製、ポリ(4−ビニルフェノール)
2) 脂肪族ウレタンアクリレート樹脂(官能数は、(メタ)アクリロイル基の官能数)
・UA−6LPA、新中村化学工業(株)製、平均分子量(Mw)818、6官能
・EBECRYL1290、ダイセル・サイテック(株)製、平均分子量(Mw)1000、6官能・U−4HA、新中村化学工業(株)製、平均分子量(Mw)600、4官能
・テスラック2321、日立化成ポリマー(株)製、平均分子量(Mw)1600、3官能
・UV−7550B、日本合成化学(株)製、平均分子量(Mw)2400、3官能
3) 反応性モノマー
・L−C9A、第一工業製薬(株)製、脂肪族炭化水素モノマー
・アロニックスM−215、東亞合成(株)製、Tg100℃以上のモノマー
・ACMO、(株)興人製、Tg100℃以上のモノマー
・アロニックスM−309、東亞合成(株)製
・アロニックスM−220、東亞合成(株)製
・4−HBA、大阪有機化学工業(株)製
4) 補強充填材
・ホワイトアルミナ#4000、αアルミナ、平均粒径3μm
・ガンツパールGM−1001、ガンツ化成(株)製、アクリル樹脂系の樹脂ビーズ、平均粒径10μm
5) 艶消し材
・サイリシア440、富士シリシア化学(株)製、平均粒径6.2μm
・サイロホービック702、富士シリシア化学(株)製、平均粒径4.1μm
・CERAFLOUR991、BYK社製、平均粒径3μm
6) 光重合開始剤
・DAROCUR754、Ciba社製 内部硬化型の光重合開始剤
・DAROCUR1173、Ciba社製 表面硬化性の光重合開始剤
上記の配合成分を表1に示す配合量(質量部)で配合し、均一に混合することにより硬化性樹脂組成物を調製した。
この硬化性樹脂組成物を用いて、次の方法により木質板を作製した。木質基材として厚さ12mmのラワン合板の表面に厚さ0.3mmのナラ材の突き板を貼着した突き板貼り合板を用い、この突き板表面に着色ステインをロールコーターで塗布し、80℃で1分乾燥後、汎用の下塗り塗料および中塗り塗料を固形分換算で合計70g/m2塗布してUV硬化させた。
次いで、上塗り塗料として、上記のようにして得られた硬化性樹脂組成物をロールコーターにて固形分換算で実施例4と比較例1以外は10g/m2塗布し、実施例4のみフローコーターにて固形分換算で75g/m2塗布し、比較例1のみロールコーターにて固形分換算で3g/m2塗布した。
その後、比較例1以外は無電極紫外線照射ランプ(出力 120mW/cm、照射線量350mJ/cm2)により硬化させ、硬化性樹脂組成物による塗膜が形成された木質板を得た。比較例1のみ、窒素パージ中で同様に紫外線照射して硬化させた。
このようにして得られた実施例および比較例の木質板について下記のとおり塗膜物性の測定と評価を行った。
1.塗膜物性
[塗膜厚さ]
木質板の断面を切断し、木質基材の最表面に配設された層の塗膜厚さを走査線電子顕微鏡(SEM)により測定した。
[鉛筆硬度]
木質板の塗膜面の鉛筆硬度をJIS K5400の標準方法により測定した。
2.評価
[抗アレルゲン性]
予め調製したダニ抗原(アサヒビール(株)製、精製ダニ抗原Derf 2)の水溶液0.4mlを木質板の塗膜に滴下した(初期のダニ抗原濃度 C=T、C:コントロールラインのダニ抗原濃度、T:テストラインのダニ抗原濃度)。24時間後、木質板上のダニ抗原液を回収し、ダニ抗原濃度Tを免疫クロマトグラフィー(ダニスキャン、アサヒフードアンドヘルスケア社製)により、抗体とアレルゲン不活化処理した抗原との抗原抗体反応に基づき測定した。測定結果に基づき下記の基準により抗アレルゲン性を評価した。
◎: C>>T (初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の低下が見られた。)
○: C>T (初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にはダニ抗原濃度の低下が見られなかったが、24時間後にダニ抗原濃度の低下が見られた。)
×: C=T (初期のダニ抗原濃度に比較して、24時間後にダニ抗原濃度の低下は見られなかった。)
[耐傷性]
上記において測定した塗膜面の鉛筆硬度に基づき、下記の基準により耐傷性を評価した。
○:鉛筆硬度2H以上
×:鉛筆硬度2H未満
[耐艶変化]
スチールウール#0000を荷重1kgで木質板の塗膜面において10往復摺動した前後の測定角60°での光沢度の変化を市販の光沢計で測定し、下記の基準により耐艶変化を評価した。光沢度の測定は、JIS K5600の方法に準拠して測定した。
◎:光沢度の変化が±3以内
○:光沢度の変化が±5以内
×:光沢度の変化が±5超
[耐汚染性]
(耐アルカリ性試験)
木質板の塗膜に5%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により耐汚染性を評価した。
○:外観異常なし
×:塗膜に白化あり
(マジック除去試験)
木質板の塗膜に市販されている青マジックを用いて幅10mmの線を引き、24時間保持した。24時間後、消しゴムで線を消し、外観状態より下記の基準により耐汚染性を評価した。
○:外観異常なし
×:塗膜に痕跡あり
[耐クラック性]
木質板についてJASの寒熱繰り返しA試験を行い、試験後の木質板の塗膜を観察してクラックの有無を確認し、下記の基準により耐クラック性を評価した。
○:クラックなし
×:クラックあり
評価結果を表1に示す。
Figure 0005587682
表1より、実施例1〜7の木質板は、抗アレルゲン剤および平均分子量(Mw)が500〜2000で3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された厚さ5μm以上の塗膜を有し、塗膜面の鉛筆硬度が2H以上であった。この塗膜は抗アレルゲン性を有すると共に、優れた耐傷性および耐艶変化を有していた。さらに塗膜は適度な耐クラック性も有しており、塗膜の耐汚染性も良好であった。すなわち、ワックスによる補修を必要としない程度の耐傷性および耐艶変化等を有するものであり、かつ安定的に持続して抗アレルゲン性を発現することができる木質板を得ることができた。
一方、比較例1の木質板は、硬化性樹脂組成物に抗アレルゲン剤を配合しなかったため、塗膜が抗アレルゲン性を有していなかった。また、塗膜の耐クラック性も低下した。
比較例2の木質板は、抗アレルゲン剤および脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を硬化性樹脂組成物に配合したが、塗膜の厚さが5μm未満であるため、耐傷性が低下した。
比較例3の木質板は、硬化性樹脂組成物に脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を配合しなかったため、塗膜の耐傷性、耐艶変化等が低下した。また抗アレルゲン性も不十分であった。
比較例4の木質板は、抗アレルゲン剤およびウレタンアクリレート樹脂を硬化性樹脂組成物に配合したが、ウレタンアクリレート樹脂の平均分子量Mwが500〜2000の範囲から外れるものであるため、耐傷性、耐汚染性が不十分であった。
また、内部硬化型の光重合開始剤を用いた実施例1〜6の木質板は、表面硬化型の光重合開始剤を用いた実施例7の木質板と比較して、特に抗アレルゲン性が優れることが確認できた。

Claims (2)

  1. 板状の木質基材と、この木質基材の最表面に配設され単一層または複数層から形成された機能層とを備え、機能層の表面を構成する層が抗アレルゲン剤を含有している抗アレルゲン性を有する木質板であって、機能層の表面を構成する層が、抗アレルゲン剤および平均分子量Mwが500〜2000で3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族ウレタンアクリレート樹脂と内部硬化型の光重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された厚さ5μm以上の塗膜であり、JIS K5400の標準方法による塗膜面の鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする木質板。
  2. 硬化性樹脂組成物は、1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の木質板。
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