JP5486149B2 - 質量分析装置及び方法 - Google Patents

質量分析装置及び方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5486149B2
JP5486149B2 JP2007028153A JP2007028153A JP5486149B2 JP 5486149 B2 JP5486149 B2 JP 5486149B2 JP 2007028153 A JP2007028153 A JP 2007028153A JP 2007028153 A JP2007028153 A JP 2007028153A JP 5486149 B2 JP5486149 B2 JP 5486149B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ions
ion
ion trap
excitation
dissociation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007028153A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008192557A (ja
Inventor
治 古橋
高宏 原田
潔 小河
耕一 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimadzu Corp
Original Assignee
Shimadzu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimadzu Corp filed Critical Shimadzu Corp
Priority to JP2007028153A priority Critical patent/JP5486149B2/ja
Priority to US12/026,626 priority patent/US20110168883A1/en
Publication of JP2008192557A publication Critical patent/JP2008192557A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5486149B2 publication Critical patent/JP5486149B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/004Combinations of spectrometers, tandem spectrometers, e.g. MS/MS, MSn
    • H01J49/0045Combinations of spectrometers, tandem spectrometers, e.g. MS/MS, MSn characterised by the fragmentation or other specific reaction
    • H01J49/0059Combinations of spectrometers, tandem spectrometers, e.g. MS/MS, MSn characterised by the fragmentation or other specific reaction by a photon beam, photo-dissociation

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Electron Tubes For Measurement (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Description

本発明は、電場によりイオンを捕捉するイオントラップを備えた質量分析装置に関し、さらに詳しくは、イオントラップ内に捕捉したイオンを開裂させるために光解離を利用した質量分析装置に関する。
質量分析では、特定の質量を有するイオンをプリカーサイオンとして選別した後に、そのプリカーサイオンの開裂(断片化)を促進し、それによって生じた各種のプロダクトイオン(フラグメントイオン)を質量分析するMS/MS分析(タンデム分析ともいう)の手法がよく知られている。プリカーサイオンを開裂させるために最も広く利用されている方法の1つは、プリカーサイオンを気体原子分子に衝突させる衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation:CID)である。
一方、イオンに励起光を照射して内部エネルギーを高めることで、イオンを開裂させる光解離と呼ばれる方法もある。光解離としては、励起光として紫外光をイオンに照射し、そのイオンの電子状態を励起させて開裂を促す紫外光解離や、励起光として強い赤外光をイオンに照射し、連続して多数の光子をイオンに吸収させてイオンの振動状態を励起することで開裂を促す赤外多光子解離(InfraRed Multiphoton Dissociation:IRMPD)などが知られている(非特許文献1など参照)。3次元四重極型イオントラップ等を用いた質量分析装置では、イオンを比較的狭い空間に閉じ込めて保持することが可能であるため、同一イオンに比較的長い時間、励起光を照射することが容易である。そのため、イオントラップ型質量分析装置におけるMS/MS分析(又は多段階に開裂を生じさせるMS分析)では光解離(主として赤外多光子解離)が利用されることも多い。
イオントラップの内部で衝突誘起解離を行う場合、一般に、イオントラップにおける共鳴励振信号の周波数を分析目的であるプリカーサイオンの質量に合わせ、プリカーサイオンのみを選択的に励振させて気体原子分子に衝突させることで開裂(1次解離)を促す。この場合、1次解離により生じた、質量がより小さなフラグメントイオンは励振されないため勢い良く気体原子分子と衝突することはなく、フラグメントイオンがさらに開裂する2次的な解離の現象は起こらない。
これに対し、イオントラップの内部で光解離を行う場合、光吸収によってプリカーサイオンが解離(1次解離)して発生したフラグメントイオンはプリカーサイオンと同様に励起光の照射を受ける。そのため、フラグメントイオンがさらに光解離する2次解離が起こり易い。こうした2次解離が起こると、図9に示すようにMS/MSスペクトル上では、1次解離によるフラグメントイオン(1次フラグメントイオン)の信号強度が減少してしまうため、マススペクトルのS/Nが著しく低下するという問題がある。
スレノ(L.Sleno)ほか1名、「イオン・アクティベイション・メソッズ・フォー・タンデム・マス・スペクトロメトリー(Ion activation methods for tandem mass spectrometry)」、ジャーナル・オブ・マス・スペクトロメトリー(Journal of Mass Spectrometry)、39 (2004)、pp.1091-1112
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、イオンを捕捉するイオントラップの内部で光解離を行う場合に、2次解離をできるだけ抑えながらプリカーサイオンの1次解離の効率を向上させることで、MS/MSスペクトルのS/Nの向上を図ることができる質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された発明は、複数の電極で囲まれる空間にイオンを捕捉するイオントラップを具備し、該イオントラップ内でイオンを解離させ、それにより生成したイオンを質量分析する質量分析装置において、
a)前記イオントラップの捕捉領域の中央に光解離を起こすための励起光を照射する励起光照射手段と、
b)前記イオントラップ内で目的のプリカーサイオンを共鳴振動させず、光解離により生成したフラグメントイオンを選択的に共鳴振動させるように、所定の周波数成分を有する励振信号を生成して該イオントラップを構成する少なくとも1つの電極に印加する励振信号生成手段と、
c)プリカーサイオンの解離により生成されたフラグメントイオンの2次的な解離を抑制するために、前記励起光照射手段により励起光を照射するときに、イオンとの衝突により該イオンの内部エネルギーを奪う所定のガスを前記イオントラップ内に導入するガス導入手段と、
を備えることを特徴としている。
発明に係る質量分析装置では、まずイオントラップに分析目的であるイオンをプリカーサイオンとして捕捉する。プリカーサイオンの選別はイオントラップ内部又は外部のいずれで行ってもよい。いずれにしてもプリカーサイオンはイオントラップの捕捉領域の中央付近に集中的に(つまり高い確率で)存在する。励起光照射手段はこの捕捉領域の中央に励起光を照射するが、それと並行して、励振信号生成手段は、このプリカーサイオンを励振させずに、これよりも小さな質量を持つフラグメントイオンを励振させるような周波数成分を持つ励振信号を生成してイオントラップを構成する少なくとも1つの電極に印加する。例えばイオントラップが1個のリング電極と2個のエンドキャップ電極とから成る三次元四重極型イオントラップである場合には、通常、リング電極にイオン捕捉用の高周波電圧を印加して捕捉電場を形成するから、両エンドキャップ電極間に励振信号を印加すればよい。
捕捉領域の中央付近に集中的に存在するプリカーサイオンは上記励起光の照射を受け、光解離(1次解離)により開裂してフラグメントイオンを生じる。プリカーサイオンは上記励振信号により形成される電場の影響を受けないので、大きくは振動せず、効率よく励起光を受けて光解離を起こす。一方、これにより発生したフラグメントイオンは励振電場の作用を受けるから、即座に大きく振動し始め、捕捉領域の中央から外れる。これにより、励起光の照射を受けにくくなり、フラグメントイオンが励起光の照射を受けて2次解離することを抑制することができる。なお、フラグメントイオンが振動する際に励起光照射領域を通過することはあるが、その時間は短いので励起されにくく、解離は起こりにくい。
但し、光解離の反応速度はイオン種により異なり、発生したフラグメントイオンの種類によっては、励起光照射領域から外れるほど大きな振動振幅を持つ状態まで励振される前に2次解離が生じるおそれがある。そこで、発明に係る質量分析装置では、光解離の反応速度を調整するために、前記イオントラップ内に所定のガスを導入するガス導入手段を備えている
この構成において、光解離の際にイオントラップ内にバッファガスを導入すると、例えば光子を吸収することで増加したイオンの内部エネルギーがバッファガスに接触することで奪われるため、イオンの光解離反応が遅くなる。そのため、上述のように1次解離により発生したフラグメントイオンに励起光が当たっても、2次解離を起こすまでの時間が長くなり、2次解離を生じる前に大きな振動振幅をフラグメントイオンに付与して励起光照射領域から逸脱させることができる。これにより、フラグメントイオンの2次解離をより一層抑制することができる。
発明に係る質量分析装置によれば、励起光の照射を受け光解離によってプリカーサイオンが開裂して生成されたフラグメントイオンが2次解離を生じてさらに開裂してしまうことを抑制することができる。したがって、MS/MSスペクトルを作成したときにフラグメントイオンのピークの信号強度が低くならずに済み、高いS/Nを確保することができる。
以下、本発明に係る質量分析装置の実施例について図面を参照して説明する。
[第1実施例]
図1は発明の一実施例(第1実施例)によるイオントラップ飛行時間型質量分析装置(IT−TOFMS)の概略構成図である。
真空排気される図示しない真空室の内部には、内側面が回転1葉双曲面形状を有する1個の環状のリング電極11と、それを挟むように(図1では左右に)対向して設けられた、内側面が回転2葉双曲面形状を有する一対のエンドキャップ電極12、13により構成される三次元四重極型のイオントラップ1が配設されている。これら電極11、12、23で囲まれる空間に捕捉電場によりイオンを捕捉する捕捉領域Aが形成される。
このイオントラップ1の入口側エンドキャップ電極12に穿設された入射口14の外側には、例えばMALDIなどによるイオン源2が配設されており、一方、出口側エンドキャップ電極13に穿設された出射口15の外側には、質量電荷比に応じてイオンを分離する飛行空間4とイオン検出器5とを備える飛行時間型質量分析計3が配設されている。但し、イオン源2はMALDIに限るものではなく、周知の各種の形態のイオン源に代えることができる。一方、飛行時間型質量分析計3に代えて他の形態の質量分析計を用いてもよく、イオントラップ1自体を質量分析器として出射口15の外側にイオン検出器のみを配置した構成とすることもできる。
リング電極11の軸(R軸)方向に沿ったリング電極11の中心にはレーザ照射孔16が穿設されており、このレーザ照射孔16を通して励起レーザ照射源22から発した励起光としてのレーザ光がイオントラップ1の中心部(捕捉領域Aの中央)を通過するように照射されるようになっている。また、イオントラップ1の内部にはガス導入部23からバッファガスが供給されるようになっている。
リング電極11には高周波電圧発生部20が接続され、両エンドキャップ電極12、13には励振信号発生部21が接続されている。高周波電圧発生部20及び励振信号発生部21は制御部24から与えられる制御信号により、それぞれ所定周波数及び所定振幅の交流電圧を発生するように制御される。但し、必要に応じて交流電圧に直流電圧を重畳して印加するようにしてもよい。制御部24はCPU、ROM、RAMなどを含んで構成されており、予め設定された制御プログラムに従って、高周波電圧発生部20及び励振信号発生部21を制御するほか、イオン源2、励起レーザ照射源22、ガス導入部23などの動作も制御する。
このIT−TOFMSにおいて、特定の質量を有するイオンのMS/MSスペクトルを取得する際の動作を説明する。
まず、制御部24の制御の下で、ガス導入部23からHeなどのバッファガスをイオントラップ1内にパルス的に導入して満たし、高周波電圧発生部20からリング電極11に所定の高周波電圧を印加することによりイオントラップ1内の空間にイオン捕捉用の四重極電場を形成する。この状態で、イオン源2において分析対象の試料から生成された各種イオンを入射口14を通してイオントラップ1内に導入すると、イオンはバッファガスと衝突して運動エネルギーを奪われ、つまりはクーリングされ、上記四重極電場に捕捉されて捕捉領域Aの中央付近に集まる。
こうした各種イオンをイオントラップ1内の捕捉領域Aに捕捉した後、目的とするプリカーサイオンのみをイオントラップ1内に残すために、プリカーサイオン以外のイオンを大きく励振させるような励振信号を励振信号発生部21で発生させてエンドキャップ電極12、13に印加する。これにより、目的のプリカーサイオン以外の不所望のイオンは入射口14、出射口15を経てイオントラップ1の外部に排出される。
こうしてプリカーサイオンの選別を行った後、該イオンを光解離させるために、励起レーザ照射源22を駆動し、イオントラップ1内の捕捉領域Aの中央(励起光照射領域B)に励起レーザ光を照射する。また、このとき同時に、プリカーサイオンを励振させず、そのプリカーサイオンの1次解離により発生したフラグメントイオンを励振させるような周波数成分を有する励振信号を励振信号発生部21で発生させて、エンドキャップ電極12、13に印加する。この励振信号については後で具体的に説明する。
図2(a)はイオントラップ内でのイオンの捕捉領域Aと励起光照射領域Bとの関係を空間的に示す概略図、図2(b)はイオンの存在確率の上でイオンの捕捉領域Aと励起光照射領域Bとの関係を示す図である。図2(b)に示すように、励振されないイオンは捕捉領域A内にその殆どが存在し、特にその中央に高い確率で存在する。この領域に励起レーザ光が照射されるため、励振されないプリカーサイオンには効率良くレーザ光が当たり光解離が促進される。これにより、プリカーサイオンは開裂し、より小さな質量を持つフラグメントイオンが発生する。
フラグメントイオンも捕捉電場により捕捉されるものの、それ以外に、励振信号により形成される電場の影響を受けてZ軸方向に大きく振動し始める。したがって、図2(a)に示すように、フラグメントイオンは励起光照射領域Bを外れている時間が長くなり、光解離による2次解離は起こりにくい。即ち、プリカーサイオンは高い効率で光解離させ、これにより生成された1次フラグメントイオンがさらに光解離することは抑制することができる。
但し、プリカーサイオンの光解離は励起光照射領域で起こるため、生成されたフラグメントイオンが励起光照射領域を外れるほど大きな振幅で振動させるまでに時間が掛かると、2次解離が起こってしまうことがある。光解離の反応速度はイオン種によって相違し、特に反応速度が速いフラグメントイオンでは2次解離が起こり易い。そこで、一般的には、励起レーザ光を照射して光解離を促進させる際にはイオントラップ1内を高真空状態にしておくことが望ましいものの、意図的にフラグメントイオンの2次解離を抑えるために、レーザ光を照射するときに少量のバッファガスをイオントラップ1内に導入するようにしてもよい。
イオントラップ1内にバッファガスが導入されると、光子を吸収して内部エネルギーが増加したイオンがバッファガスに衝突して励起状態の緩和が起こり易くなるため、光解離の反応速度が遅くなる。したがって、プリカーサイオン自体の1次解離の効率は下がるものの、1次フラグメントイオンが2次解離することも一層抑制されることになる。このような効果は紫外光解離でも発揮されるが、赤外多光子解離ではより顕著であるため特に有効である。
以上のようにして所定時間、光解離を起こしてプリカーサイオンを開裂させた後、イオントラップ1内に捕捉していたフラグメントイオンを排出させるような電圧をエンドキャップ電極12、13に印加することで初期運動エネルギーを付与し、出射口15から一斉に出射させて飛行時間型質量分析計3に導入して質量分析を行う。そうして、イオン検出器5による検出信号を図示しないデータ処理部で処理することにより、MS/MSスペクトルを作成する。
光解離の際にエンドキャップ電極12、13に印加する励振信号としては、例えば次のようにすることができる。プリカーサイオンの開裂により生成されるフラグメントイオンの質量が予め分かっている場合、そのフラグメントイオンのみを選択的に励振させるように該フラグメントイオンの共鳴周波数に対応した周波数成分のみを有する正弦波信号を励振信号とすればよい。例えばフラグメントイオンが1種類である場合、図3(a)に示すように、単一周波数成分を持つ正弦波信号(又は矩形波信号等でもよい)を励振信号とすればよく、フラグメントイオンが複数種である場合には、異なる単一周波数の正弦波信号を合成して励振信号とすればよい。
一方、フラグメントイオンの質量が不明である場合やその数が多い場合には、図3(b)に示すように、プリカーサイオンの共鳴周波数に対応した周波数成分(実際にはその上下の所定周波数幅)を持たない広帯域信号を励振信号とするとよい。こうした広帯域信号の生成は、例えば特許第3470671号公報などに開示された公知の方法を利用して行うことができる。
次に、発明に係る質量分析装置の効果を実証するために行った実験結果について説明する。
この実験では、レセルピン(分子量608)をサンプルとし、イオン源としてESI(エレクトロスプレー)イオン源を用いた。このイオン源で生成されるプロトン付加イオン(m/z609)をプリカーサイオンとしてイオントラップ内に残し、これに励起レーザ光として赤外レーザ光を照射して赤外多光子解離を起こす。レセルピンを衝突誘起解離で開裂させた場合、質量電荷比m/zが236、397、448であるフラグメントイオンが生成されることが知られている。赤外多光子解離ではこのほかに、m/z363にもピークが観測される。
図4は、赤外レーザ光の照射時間を変化させた場合のプリカーサイオン(m/z609)及び4種類のフラグメントイオン(m/z236、363、397、448)のピーク強度変化を測定した結果を示す図であって、(a)は赤外多光子解離時に励振信号がない場合、即ち従来の手法の場合である。レーザ照射時間を長くしていくと、それに伴いプリカーサイオンの内部エネルギーが高まり、赤外多光子解離が起こり始めるためにピーク強度は減少する。この減少とは反対に、1次解離で生じたフラグメントイオン(m/z236、397、448)のピーク強度はレーザ照射時間が或る程度以下の範囲では増加するが、それよりもさらにレーザ照射時間を長くすると、2次解離の影響により1次フラグメントイオンのピーク強度は減少する。一方、m/z363であるフラグメントイオンのピーク強度は、他のフラグメントイオンのピーク強度が減少に転じた後に、これに代わるように増加していることが分かる。したがって、これは2次解離により生じた2次フラグメントイオンであると推測できる。
1次解離によるフラグメントイオンのピーク強度を最大にするには、この例の場合、レーザ照射時間を8ms程度にする必要があることが分かる。しかしながら、このとき、プリカーサイオンは未だ半分程度が残っており、プリカーサイオンの解離効率はあまり高いとは言えない状態である。
図4(b)は、質量電荷比m/z448のフラグメントイオンが選択的に励振されるように励振信号として周波数74kHzの正弦波信号をエンドキャップ電極間に印加しながら赤外レーザ光を照射した場合の結果である。m/z448以外のフラグメントイオン(m/z236、397)のピーク強度変化は信号強度のふらつきの範囲内とみなせ、図4(a)と同じ程度である。これに対し、m/z448であるフラグメントイオンは選択的に励振されて赤外照射領域から外れるため、2次解離の影響を受けにくい。そのため、レーザ照射時間が長くなってもピーク強度はほぼ単調に増加し、レーザ照射時間が10msよりも長くなると強度飽和が見られる。したがって、m/z448のフラグメントイオンは、2次解離によるピーク強度の減少が生じていないと言える。
図4(c)は、質量電荷比m/z236のフラグメントイオンが選択的に励振されるように励振信号として周波数149kHzの正弦波信号をエンドキャップ電極間に印加しながら赤外レーザ光を照射した場合の結果である。この場合には、m/z236であるフラグメントイオンのみが2次解離の影響を受けず、レーザ照射時間が長くなっても単調に信号強度が増加していることが分かる。
以上の結果より、赤外多光子解離時に選択的に励振させたフラグメントイオンは2次解離の影響を受けず、高いピーク強度を確保できることが分かる。この実験では、本発明の原理的な効果をより明確に示すために、励振信号として単一周波数の正弦波信号をエンドキャップ電極に印加し、或る特定のフラグメントイオンの2次解離を抑制するようにしていたが、複数の又は多数のフラグメントイオンについて2次解離の影響を抑えて信号強度を増加させるには、上述したような広帯域信号(プリカーサイオンの共鳴周波数成分を除去した広帯域の離散的な周波数の合成波形)を励振信号としてエンドキャップ電極に印加すればよいことは明らかである。
[第2実施例]
図5は本発明には包含されないが本発明に関連する一実施例(第2実施例)によるイオントラップ飛行時間型質量分析装置(IT−TOFMS)の概略構成図である。上記第1実施例と同一又は相当する構成要素には同一符号を付している。
この第2実施例において第1実施例と根本的に相違する点の1つは、励起レーザ光がイオントラップ1の捕捉領域Aの中央ではなく、これを意図的に外した位置に照射されるようにレーザ照射孔17がリング電極11の中心軸からずれた位置に設けられていることである。また、励振信号発生部25は、レーザ光の照射により光解離を起こす際に、エンドキャップ電極12、13間には目的とするプリカーサイオンを選択的に励振させる(フラグメントイオンは励振させない)ような周波数成分を持つ励振信号を印加するように構成されている。この場合、励振信号は単一周波数の正弦波信号又は矩形波信号でよいので、励振信号の生成は第1実施例の場合よりも容易である。
図6はイオントラップ内でのイオンの捕捉領域Aと励起光照射領域Bとの関係を空間的に示す概略図である。上記励振信号がエンドキャップ電極12、13に印加されるとき、イオントラップ1内に形成される励振電場の影響で、プリカーサイオンはZ軸方向に大きく振動する。励振信号がないとするとプリカーサイオンは励起光照射領域Bには入らないが、励振されることでプリカーサイオンは励起光照射領域Bを横切り、その間に光子を吸収してやがて光解離を生じる。これによりフラグメントイオンが発生するが、そうしたフラグメントイオンはリング電極11に印加されている高周波電圧による捕捉電場の影響は受けるものの、上記励振電場の影響を受けず大きく振動しない。そのため、フラグメントイオンはイオントラップ1の捕捉領域Aの中央付近に集まる。つまり、フラグメントイオンは励起光照射領域Bを外れ励起レーザ光の照射を受けないので2次解離を生じにくい。そのため、レーザ照射時間を長くするほど1次フラグメントイオンの量は増加することになり、MS/MSスペクトルのS/Nを高くすることができる。
本発明者らのシミュレーション計算によると、エンドキャップ電極12、13間の距離が20mmである場合、バッファガスとの衝突により十分にクーリングされたイオン雲の広がりの大きさはイオントラップ1の中心から±0.5mm程度以下の範囲であることが判明した。したがって、励起レーザ光の照射位置をイオントラップ1の中心部から0.5mm以上離すことにより、フラグメントイオンに励起レーザ光が当たって2次解離を生じることを効率良く回避することができる。イオントラップ1のサイズが異なる場合にも同様のモデルが成り立つと考えられるから、励起光照射領域Bをイオントラップ1の中心から、エンドキャップ電極間の間隔の2.5%以上離すことにより、2次解離の抑制の効果を十分に発揮させることができる。
但し、図5、図6に示した構成の場合、大きな振幅で振動するプリカーサイオンが励起光照射領域Bに入っている時間を十分に長くすることが難しく、レーザ照射時間を長くしないと解離効率が上がらない。そこで、励振されたプリカーサイオンがより長い時間、励起光照射領域Bに入ることを保証するために、イオントラップ1の構成を図7に示すように変形してもよい。即ち、この構成では、励起レーザ照射源26はその照射範囲の断面形状が円環形状であるようなレーザ光を出射し、リング電極11に例えば円柱形状に大きく設けたレーザ照射孔18を通して、イオントラップ1内に、その中央が非照射領域でそれを取り囲む周囲が照射領域となるような形状の励起光照射領域Bを形成する。なお、こうした特殊な形状のレーザ光は、例えば実開昭62−47959号公報に開示されているような方法によって生成することができる。
この構成では、励起光照射領域Bが広くなるので、励起電場により大きく振動するプリカーサイオンが励起レーザ光の照射を受ける機会が増加する。そのため、それだけプリカーサイオンの解離効率が向上する。一方、捕捉領域Aの中央付近に集まるフラグメントイオンには励起レーザ光が当たらないので2次解離は防止できる。
なお、上記実施例ではリング電極11に穿設されたレーザ照射孔16、17、18を通してイオントラップ1内に励起レーザ光を照射していたが、図8に示すように、リング電極11とエンドキャップ電極12(又は13)との間の間隙を通して斜め方向から励起レーザ光を照射するようにしてもよい。この場合、リング電極11にレーザ照射孔を設ける必要がないので構成が簡単であるとともに、リング電極11にレーザ照射孔を設けることによる捕捉電場の乱れも生じないので、イオンの捕捉効率を高めることができる。
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。例えば上記実施例はいずれもイオントラップとして三次元四重極型イオントラップを利用していたが、例えば内面が双曲面又は円筒曲面である4本(又はそれ以上)のロッド電極を平行に配置し、それらロッド電極で囲まれる空間に捕捉領域を形成する線形イオントラップにおいても、本発明を適用することができる。
発明の一実施例(第1実施例)によるイオントラップ飛行時間型質量分析装置の概略構成図。 第1実施例の質量分析装置においてイオントラップ内でのイオンの捕捉領域と励起光照射領域との関係を空間的に示す概略図(a)及び、イオンの存在確率の上でイオンの捕捉領域と励起光照射領域との関係を示す図(b)。 第1実施例の質量分析装置において励振信号の周波数特性の一例を示す図。 励起レーザ光として赤外レーザ光の照射時間を変化させた場合のプリカーサイオン及び4種類のフラグメントイオンのピーク強度変化を測定した結果を示す図。 本発明に関連する一実施例(第2実施例)によるイオントラップ飛行時間型質量分析装置の概略構成図。 第2実施例の質量分析装置においてイオントラップ内でのイオンの捕捉領域と励起光照射領域との関係を空間的に示す概略図。 本発明に関連する他の実施例による質量分析装置のイオントラップの概略構成図。 本発明に関連する他の実施例による質量分析装置のイオントラップの概略構成図。 2次解離による信号強度の低下を説明するための図。
符号の説明
1…イオントラップ
11…リング電極
12、13…エンドキャップ電極
14…入射口
15…出射口
16、17、18…レーザ照射孔
2…イオン源
20…高周波電圧発生部
21、25…励振信号発生部
22、26…励起レーザ照射源
23…ガス導入部
24…制御部
3…飛行時間型質量分析計
4…飛行空間
5…イオン検出器

Claims (2)

  1. 複数の電極で囲まれる空間にイオンを捕捉するイオントラップを具備し、該イオントラップ内でイオンを解離させ、それにより生成したイオンを質量分析する質量分析装置において、
    a)前記イオントラップの捕捉領域の中央に光解離を起こすための励起光を照射する励起光照射手段と、
    b)前記イオントラップ内で目的のプリカーサイオンを共鳴振動させず、光解離により生成したフラグメントイオンを選択的に共鳴振動させるように、所定の周波数成分を有する励振信号を生成して該イオントラップを構成する少なくとも1つの電極に印加する励振信号生成手段と、
    c)イオンとの衝突により該イオンの内部エネルギーを奪う所定のガスを前記イオントラップ内に導入するガス導入手段と、
    d) プリカーサイオンの解離により生成されたフラグメントイオンの2次的な解離を抑制するために、前記励起光照射手段により励起光を照射するときに、前記所定のガスを導入するように前記ガス導入手段を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
    観測対象のフラグメントイオンの2次的な解離の起こりやすさに応じて前記ガス導入手段による光照射時のガスの導入の有無を切り替えるように、前記制御手段を制御することを特徴とする質量分析方法。
JP2007028153A 2007-02-07 2007-02-07 質量分析装置及び方法 Expired - Fee Related JP5486149B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007028153A JP5486149B2 (ja) 2007-02-07 2007-02-07 質量分析装置及び方法
US12/026,626 US20110168883A1 (en) 2007-02-07 2008-02-06 Mass spectrometer

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007028153A JP5486149B2 (ja) 2007-02-07 2007-02-07 質量分析装置及び方法

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011160489A Division JP5360150B2 (ja) 2011-07-22 2011-07-22 質量分析装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008192557A JP2008192557A (ja) 2008-08-21
JP5486149B2 true JP5486149B2 (ja) 2014-05-07

Family

ID=39752444

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007028153A Expired - Fee Related JP5486149B2 (ja) 2007-02-07 2007-02-07 質量分析装置及び方法

Country Status (2)

Country Link
US (1) US20110168883A1 (ja)
JP (1) JP5486149B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010091512A1 (en) * 2009-02-13 2010-08-19 Dh Technologies Development Pte. Ltd. Apparatus and method of photo-fragmentation
GB201111560D0 (en) * 2011-07-06 2011-08-24 Micromass Ltd Photo-dissociation of proteins and peptides in a mass spectrometer
EP2555225A1 (fr) * 2011-08-05 2013-02-06 Institut National De La Recherche Agronomique (Inra) Spectromètre de masse tandem et procédé de spectrométrie de masse tandem
US9653278B2 (en) 2011-12-28 2017-05-16 DH Technologies Development Ptd. Ltd. Dynamic multipole Kingdon ion trap
WO2015107642A1 (ja) * 2014-01-16 2015-07-23 株式会社島津製作所 質量分析装置
US20160358766A1 (en) * 2015-06-03 2016-12-08 Thermo Finnigan Llc Reducing overfragmentation in ultraviolet photodissociation
US9711340B1 (en) * 2016-05-26 2017-07-18 Thermo Finnigan Llc Photo-dissociation beam alignment method
GB201615469D0 (en) * 2016-09-12 2016-10-26 Univ Of Warwick The Mass spectrometry
WO2023052966A1 (en) * 2021-09-30 2023-04-06 Dh Technologies Development Pte. Ltd. Laser induced fragmentation for mrm analysis

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5381007A (en) * 1991-02-28 1995-01-10 Teledyne Mec A Division Of Teledyne Industries, Inc. Mass spectrometry method with two applied trapping fields having same spatial form
JP3752458B2 (ja) * 2002-02-18 2006-03-08 株式会社日立ハイテクノロジーズ 質量分析装置
JP3971958B2 (ja) * 2002-05-28 2007-09-05 株式会社日立ハイテクノロジーズ 質量分析装置
US6642516B1 (en) * 2002-12-18 2003-11-04 Agilent Technologies, Inc. Apparatus and method of laser dissociation for mass spectrometry
JP3936908B2 (ja) * 2002-12-24 2007-06-27 株式会社日立ハイテクノロジーズ 質量分析装置及び質量分析方法
JP4052975B2 (ja) * 2003-05-23 2008-02-27 株式会社日立ハイテクノロジーズ 質量分析装置および質量分析方法
JP4275545B2 (ja) * 2004-02-17 2009-06-10 株式会社日立ハイテクノロジーズ 質量分析装置
JP4367336B2 (ja) * 2004-12-28 2009-11-18 株式会社島津製作所 質量分析装置
US7807963B1 (en) * 2006-09-20 2010-10-05 Carnegie Mellon University Method and apparatus for an improved mass spectrometer

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008192557A (ja) 2008-08-21
US20110168883A1 (en) 2011-07-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5486149B2 (ja) 質量分析装置及び方法
JP3020490B2 (ja) イオントラップを利用した質量分析方法
JP4709024B2 (ja) 反応装置及び質量分析装置
JP3010740B2 (ja) ノッチフィルタを用いる質量分析法
JP4687787B2 (ja) 質量分析方法及び質量分析装置
US8158934B2 (en) Electron capture dissociation apparatus and related methods
JP4894918B2 (ja) イオントラップ質量分析装置
EP3093871A1 (en) Ion analyzer
US6800851B1 (en) Electron-ion fragmentation reactions in multipolar radiofrequency fields
JP4463978B2 (ja) 四重極イオンガイド中でイオンを選択的に衝突誘発解離する方法および装置
JP3752458B2 (ja) 質量分析装置
JP2010520605A (ja) イオンを解離するための化学構造に敏感ではない方法および装置
JP2008282594A (ja) イオントラップ型質量分析装置
JP3084749B2 (ja) 濾波ノイズ信号式質量分析方法
US20160358766A1 (en) Reducing overfragmentation in ultraviolet photodissociation
CN108257846A (zh) 针对质谱的紫外光致解离的方法
WO2010116396A1 (ja) イオントラップ装置
US20070221862A1 (en) Coupled Electrostatic Ion and Electron Traps for Electron Capture Dissociation - Tandem Mass Spectrometry
JPH02103856A (ja) イオントラップ型質量分析計の操作方法
JP2003016991A (ja) イオントラップ型質量分析装置
US9997340B2 (en) RF-only detection scheme and simultaneous detection of multiple ions
JP3767317B2 (ja) 質量分析装置
CN105655226A (zh) 一种真空紫外光电离和化学电离复合电离源
JP5360150B2 (ja) 質量分析装置
JP2008282595A (ja) 質量分析方法及び質量分析装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091022

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20091022

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110525

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110531

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110722

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120124

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20121106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130206

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20130214

A912 Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912

Effective date: 20130329

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140116

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140221

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5486149

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees