JP3936908B2 - 質量分析装置及び質量分析方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、四重極型イオントラップ質量分析装置、四重極型イオントラップ飛行時間型質量分析装置、四重極型イオントラップフーリエ変換質量分析装置など四重極型イオントラップが適用されるすべての質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
種々の質量分析方法の一例として、イオントラップ質量分析法がある。四重極型イオントラップ質量分析法の基本的な原理は知られている(特許文献1)。イオントラップ方式では、リング電極に1MHz程度の周波数の高周波電圧を印加してイオンを蓄積する。イオントラップ内では、ある質量数以上のイオンが安定条件となり蓄積される。その後、リング電極に印加する電圧を低い方から高い方へ掃引する。この際、イオンは低マスから排出されマススペクトルが得られる。
【0003】
しかし、この方式では、質量数が同じ異種イオンを区別できない。これを改善するため、イオントラップにおけるタンデム質量分析が開発された。四重極型イオントラップにおけるタンデム質量分析の一例として、四重極イオントラップ内のバッファガスとの衝突解離法が知られている(特許文献2)。この方式では、イオン源で生成したイオンをイオントラップ内に蓄積し、検出対象とされる質量数をもつ前駆イオンを選択する。イオン選択の後、前駆イオンに共鳴する補助的な交流電界をエンドキャップ電極間に印加することにより、イオン軌道を拡大させ、イオントラップに満たされた中性ガスと衝突させることにより、イオンを解離(分解)させて検出する。分解物イオンは分子構造の違いにより特有なパターンを示すため、質量数が同じ異種イオンを判別できる。
【0004】
しかし、イオンを解離するためには、リング電極に印加する電圧により生じるイオンのトラッピングポテンシャルを大きくする必要がある。トラッピングポテンシャルを大きくするためには、リング電極に印加する電圧を高電圧に設定する必要があるが、これにより、低質量数の分解物イオンが安定軌道条件から外れ、トラップできなくなるという問題が生ずる。また、マトリックス支援レーザーイオン化法では、1価の高質量数イオン(分子量2000以上)が生成しやすい。これらは、構造が安定で通常の衝突解離法では分解が難しい。
【0005】
低質量数の分解物イオンが検出できない、また、高質量のイオンを分解できないという問題点を解決するための方法が知られている(非特許文献1)。この方法では、イオンのクーリングのために連続して導入されている連続導入バッファガス(通常Heが用いられる)のほかに、イオントラップ内でのイオンの衝突解離の促進のためにArなど分子量の大きなガスを、スイッチングが可能なソレノイドバルブを用いて、エンドキャップ電極とリング電極の間隙から、間欠的に導入している。これらの諸操作の後、リング電極に印加する交流電圧を増加させて、イオンをイオントラップから順次排出して検出を行なっている。これによりイオントラップ内でのイオンの励起効果が高まり、より低い質量数の分解物イオンを検出することが可能となった。この手法と同様の手法を、イオントラップハイブリッド飛行時間型質量分析装置に適用した方法が知られている(非特許文献2)。この方式においても、通常の連続導入バッファガス(通常Heが用いられる)のほかに、イオントラップ内でのイオンの衝突解離の促進のために、Arなど分子量の大きなガスを、高速にスイッチングが可能なソレノイドバルブを用いて、エンドキャップ電極とリング電極の間隙から、間欠的に導入している。これらの諸操作の後、エンドキャップ電極及びリング電極に直流電圧を印加してイオンを引き出し、同軸方向に加速を行ないイオンの飛行時間から質量分離を行なっている。これにより、より低い質量数の分解物イオンを高い質量数精度で検出することが可能となった。
【0006】
一方、低質量数の分解物イオンが検出できないことと、高質量数のイオンを分解できないという通常の衝突解離の問題点を解決するための方法が知られている(非特許文献3)。この方法によると、イオン選択の後、リング電極をくり貫いた穴からCO2レーザーを照射しトラップ中心部に照射する。イオンは、赤外光を吸収することにより、内部エネルギーの励起により分解が進行する。この方式により、四重極イオントラップ質量分析装置で低質量数の分解物イオンの検出が可能である。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第4,650,999号明細書
【特許文献2】
米国特許第4,736,101号明細書
【非特許文献1】
リチャード ダビュル. ベィチェット,グレイ エル. グリシュ、ジャーナル オブ アメリカンソ サイアティー フォー マスス ペクトロメトリー、1996年、7巻、p.1194−1202(Richard W. Vachet and Gray L. Glish, Journal of American Society for Mass Spectrometry, Vol. 7, pp. 1194-1202, 1996)
【非特許文献2】
リ デング他(Li Ding et al.)、「プロシーディング SPIE ザ インターナショナル ソサイアティー フォー オプティカル エンジニアリング(Proceeding SPIE the international Society for Optical Engineering)」、1999年、3777巻、P.114−155
【非特許文献3】
アーマンドコロラド他(Armando Colorado et al.)、「アナリティカル ケミストリー(Analytical Chemistry)」、1996年、68巻、p.4033−1043
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、イオントラップにイオンを蓄積する過程と、前駆イオンを選択的にイオントラップに保持する過程と、間欠導入バッファガスあるいは照射レーザーの助けを借りて前駆イオンを分解する過程と、分解されたイオンを検出する過程と、を計時的に実行し、且つ、これを繰り返して、高感度に質量分析を行うことが可能になっているが、それぞれの方式には問題点も残っている。
【0009】
非特許文献1及び非特許文献2に記載の例では、イオントラップ内でのイオンの衝突解離の促進のために、衝突解離過程の数10ms〜100msの間に、間欠導入バッファガスを1回または複数回1ms以下の短時間導入する操作を繰り返すものであり、衝突解離によって前駆イオンを分解する過程内でイオントラップ内部の圧力が変動する。このためガス圧力に大きく依存する衝突解離時における補助電圧条件を最適に設定することが困難である。
【0010】
また、実装上の問題として、非特許文献1に記載の例では、質量数精度を得るために、導入した間欠導入バッファガスがイオントラップから排出されるまでの数百msを検出前の時間待ち時間としている。これは装置全体のイオン利用効率(Duty Cycle)を著しく低下させ、感度が大幅に低下する原因となる。一方、非特許文献2に記載の例では、この待ち時間を少なくするためにイオントラップ内のガスを排気する専用のターボ分子ポンプを設け排気能力を高めている。しかし、これは装置に大幅なコストアップとなる。
【0011】
非特許文献3に記載の方式により、四重極イオントラップ質量分析装置で低質量数の分解物イオンの検出が可能であるが、50W程度の出力のCO2レーザーを用いる場合に必要なイオントラップ内のバッファーガスガス圧(0.01Pa以下)と、イオンの取り込みの効率、感度を維持するために最適な真空度(0.1Pa〜1Pa程度)とが一致しないため、従来のレーザー光を用いた分解方法では、イオントラップへのイオンの蓄積、分解を最適な真空度で行なうことができなかった。従って、従来のレーザーを利用したイオントラップ質量分析装置では、高い解離効率を得るためにはイオントラップ効率、感度が低下するという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、低質量数の分解物イオンを検出し、かつ高感度な測定を可能とするイオントラップを用いる質量分析装置及び質量分析方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の質量分析装置は、試料のイオンを生成するイオン源と、1対のエンドキャップ電極とリング電極とを具備しイオンを蓄積および分解して排出するイオントラップと、エンドキャップ電極又はリング電極に配置され間欠導入バッファガスを所定のタイミングでイオントラップの内部に導入するガス導入手段と、イオントラップから排出されたイオンを検出する検出系とを有しており、ガス導入孔の中心軸はイオントラップの重心領域を通るように配置されている。
【0014】
本発明に関わる質量分析装置では、イオントラップ内部のガス圧力を高速に切り替え可能であり、かつ、切り替えた各々の圧力をほぼ一定に保つことが可能である。具体的には、検出対象とされる質量数をもつ前駆イオンの衝突解離過程に重質量数のバッファガス(Ar、N2など)を間欠的に導入してCID(衝突誘起分解)を行なう。また、レーザー照射によりイオンの解離を行なうタイプの質量分析装置では、イオンため込み過程およびイオン検出過程にのみバッファガスを導入して、前駆イオンの解離過程ではガス導入を停止して、レーザー解離を行なう。本発明では、従来技術に比べ、結果的に質量分析装置の感度が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
本発明の四重極イオントラップの実施例を図1を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の四重極イオントラップの実施例を断面図の形で示す図である。四重極イオントラップは、向かい合った一対のおわん形状のエンドキャップ電極7a、7bと、ドーナツ状のリング電極9と、リング電極9とエンドキャップ電極7a、7bとを結合し、且つ、リング電極9とエンドキャップ電極7a、7bと電気的に絶縁するための円筒状の絶縁体28とにより両側端面がおわん形状に窪んだ円筒状のイオントラップ領域を構成している。エンドキャップ電極7aにはイオンが入射する開口部(イオン入射口)50aが形成され、エンドキャップ電極7bにはイオンが排出される開口部(イオン排出口)50bが形成されている。絶縁体28には適当な数の小孔29が分散して設けられている。リング電極9には内径がdの開口部が設けられこの開口部に1ms以下の高速スイッチングが可能なソレノイドを利用したパルスバルブ44が連通するように設けられる。後述するように、このパルスバルブ44を開閉して検出対象とされる質量数をもつ前駆イオンの衝突解離過程に重質量数の間欠導入バッファガス(Ar、N2など)を導入してCID(衝突誘起分解)を行なう。
【0017】
四重極イオントラップには、分析しようとする試料をイオン化するイオン源から、エンドキャップ電極7aの開口部50aを通してイオンが導入される。一方、四重極イオントラップで衝突解離等の処理がなされたイオンは、エンドキャップ電極7bの開口部50bから排出され、イオン検出系によって検出される。四重極イオントラップを利用した質量分析装置では、イオントラップ領域にイオンを蓄積する過程と、前駆イオンを選択的にイオントラップ領域に保持する過程と、間欠導入バッファガスあるいは照射レーザーの助けを借りて前駆イオンを分解する過程と、分解されたイオンを検出する過程と、を計時的に実行し、且つ、これを繰り返して、高感度に質量分析を行うものとされるが、この構成と動作は後述する。
【0018】
実施例1の四重極イオントラップの代表的な構成の数値例は次の通りであるが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。エンドキャップ電極7a、7bの間のもっとも近接している位置での距離は10mm程度、リング電極9の内側の半径は7mm程度である。これらの電極に挟まれた空間で3次元の四重極電場によるイオントラップ領域が形成され、これによりイオンを蓄積し、イオンを選択的にエンドキャップ電極7bの開口部50bから排出することができる。リング電極9に設けられた開口部の内径dは0.2mm〜2mm程度が望ましい。
【0019】
図1では表記を省略したが、四重極イオントラップには、導入されるイオンをクーリングするためのバッファガスを連続導入するのが一般的である。これについても四重極イオントラップを利用した質量分析装置の説明で補足する。
【0020】
四重極イオントラップに導入され、連続導入バッファガスとの衝突によりクーリングされたイオンは、ポテンシャルの最も低い四重極イオントラップの重心を中心とする比較的小さい球体(直径わずか1mm〜2mmの球体)の領域Oに収束される。すなわち、Oで示される領域にはイオンが高密度で集まっている。一方、リング電極9に設けられた開口部の内径dを2mmとするとこのOで示される領域とはほぼ同じ程度のものとなる。本発明は、この点に着目したものであり、リング電極9に設けられた開口部からパルスバルブ44を介して導入されるCID(衝突誘起分解)を行なうための間欠導入バッファガスの分子流がこのOで示される領域に直接ぶつかるようにして、間欠導入バッファガスとイオンとが効率的に相互作用するようにする。すなわち、イオンの分解過程で、高密度に収束されているイオンの領域に間欠導入バッファガスの分子流を直接ぶつけて効率よく分解を行うものである。
【0021】
一方、質量分析装置ではイオンの分解過程からイオンの検出過程へと続くが、この過程の切り替えが速やかに出来るためには、間欠導入バッファガスが速やかに排出されることが重要である。本発明では、エンドキャップ電極の開口部50a、50bおよび絶縁体28に設けられた小孔29からガスの排気が速やかになされる。四重極イオントラップの構造がシンプルでガスの移動に関するコンダクタンスが大きく出来ることも相まって、1ms以下の短時間で排気可能であり、イオンの分解過程からイオンの検出過程への切り替えが速やかに出来る。
【0022】
図2は、図1に示す実施例1に対応する従来方式の四重極イオントラップの構成を示す断面図である。この例では、間欠導入バッファガスの導入を制御するパルスバルブ44がリング電極9を避けた位置に設けられる。その他の構成は、図1と同じである。
【0023】
図2と図1とを対比して明らかなように、本発明によれば、パルスバルブ44を介して導入される間欠導入バッファガスの分子流は、イオンが高密度で集まっている領域Oに直接ぶつけられるのに対して、図2に示す従来技術では、イオントラップ内に導入された間欠導入バッファガスが、拡散によりイオンが高密度で集まっている領域Oに作用することになる。したがって、間欠導入バッファガスによるCID(衝突誘起分解)も、間接的となり、本発明によるような高効率な分解は期待できない。
【0024】
さらに、イオンの分解過程からイオンの検出過程への切り替えには間欠導入バッファガスが速やかに排出されることが重要であるが、図2の構造では、四重極イオントラップの構造が、本発明のようにシンプルでないため、ガスの移動に関するコンダクタンスが大きく出来ず、排気時間も長くなる。
【0025】
図3は、既設の質量分析装置のイオントラップを図1に示す本発明の実施例1の構造とした場合と、図2に示す従来の構造とした場合について、既知のサンプルの質量分析を行ない、イオンのトラッピング効率の間欠導入バッファガス量依存性を評価した結果を示す図である。いずれの場合も、パルスバルブ44の制御によるガス導入量の制御は同じとした。
【0026】
図3から容易に分かるように、いずれの場合も、ガス導入量が上昇するに従い信号強度は当初増加した後飽和する。実施例1では少ない導入ガス流量で高いトラッピング効率が得られるとともに、少ない導入ガス流量で飽和が起こる。これは、導入ガスのイオントラップ重心付近のガス密度が局在的に増加したため、ガスによる衝突誘起分解が効果的に起こり、トラッピングに有効に働くためと考えることができる。従来の構造では、信号強度の増加はゆっくりであり増加の程度も小さい。図3の結果から、本発明によれば、従来法に比べ、同じ導入ガス量において約5倍〜10倍、イオントラップ重心部の圧力を高められるものと考えられる。この現象について、以下に説明を行なう。
【0027】
一次圧(パルスバルブ44が開とされてイオントラップ内にガスが導入されるときのガス圧)をP1とすると、一般的に導入されるガス流量Qは式(1)で算出される。
【0028】
【数1】
Figure 0003936908
Cは圧力により決定する定数であり、分子流領域(0.1Pa以下)であれば、91m/sと計算される。パルスバルブ44の開口部の内径d及び一次圧P1を調整することにより、ガス流量Qは決定できる。また、イオントラップ内部の圧力を均一と見た場合、イオントラップの排気コンダクタンスをSとすると、トラップ内部の圧力PIT、ガス密度DITは式(2)、式(3)で与えられる。Rは気体定数、kはBoltzmann定数である。
【0029】
【数2】
Figure 0003936908
【数3】
Figure 0003936908
なお、排気速度Sはイオントラップの形状及びイオントラップを取り巻く真空室の排気ポンプの排気速度より決定されるため、これらから、PIT、DITは調整可能である。仮に、イオントラップから外部への排気速度Sが0.015m3/s程度(絶縁体28に設けられた小孔29の直径を3mmとしてこれが20個分散して配置されている場合)とすると、PITが1Pa(T=300KでDIT=2.4×1018個/m3)となるには、導入ガス量Q=7PaL/s、これより、DITとP1の関係が求められる。d=2mmとしてこれが20個分散して配置されている場合には、P1=56Paとなる。
【0030】
ガスは高圧部から低圧部へと流れる際、分子線を形成する。この分子線の中心方向は、ガス放出細孔部の開口面にほぼ垂直に形成される。マッハディスクの範囲内で、パルスバルブ44の一次側の圧力P1から、パルスバルブ44からイオントラップの内部にガスが導入される開口面から下流h、パルスバルブ44から放出されるジェットガスの、パルスバルブ44のガス流路の中心軸から角度θの範囲内におけるガス密度D(h,θ)は式(4)で表される。X(γ)、φはガスの自由度により経験的に求められた定数で、希ガスの場合はX(γ)=0.562、φ=1.37(rad)とされている。
【0031】
【数4】
Figure 0003936908
一例として、P1=56Pa、h=7mm、θ=0の場合、D(h,0)=4.7×1018個/m3となり、この計算結果はイオントラップ内で均一と考えたモデルよりも、ガス密度が約2倍であることを意味し、イオントラップの中心部(h,θ=0)は高い圧力となっていることがわかる。θ=20°の場合でも、D(h,20°)=4.0×1018個/m3であり、ガス密度は約1.7倍と計算され、イオントラップの中心部の近傍(h,θ=20°)の位置でもやはり高い圧力となっている。
【0032】
つまり、このようにイオントラップ内でガス圧力の高い領域ができるのは、イオントラップ重心部がパルスバルブ44の吹き出し孔からの分子線により占有されるからである。このような選択的にガス圧力の高い領域が存在するのは、D(h,θ)>DITとなる領域である。式(3)、式(4)から式(5)が得られる。
【0033】
【数5】
Figure 0003936908
具体的にはS=0.04m3/s,θ=0とすると、h≦16mmの領域で、圧力が高くなる。
【0034】
式(5)によれば、イオントラップ重心付近の領域のガス密度を選択的に上昇させられるガス導入位置とイオントラップ重心部との位置関係が定義できる。リング電極9に設けられるガス導入孔の先端部からイオントラップの重心までの距離を16mm以下とすれば良いと言うことは、実施例1の構成例では、リング電極9の内側の半径は7mm程度であるから条件を満足する。
【0035】
一方、リング電極9の中心付近に設けられるガス導入孔(開口d=0.2mm〜2mmの直径)の開口面がイオントラップの重心に対して完全に垂直にできるとは限らず、幾分傾いたものとなる可能性がある。この場合、開口面の中心を頂点とし、この頂点と、エンドキャップ7a、7bの開口部50a、50bの中心を結ぶ軸上にあるイオントラップの重心の近傍の領域Oとを通る直線を中心軸とし、角度40°以下の天頂角をもつ円錐の内部に、パルスバルブ44から噴出されるガス流路の中心軸が配置されるようにすれば、実質的に、パルスバルブ44のガス流の中心軸がイオントラップの重心の近傍の領域Oを中心とする直径1mm〜2mmの領域を通るのと同じ程度のCID(衝突誘起分解)が期待できる。
【0036】
ガス密度がDAからDBになるまでの排気時間Δtは、式(6)で表される。Vは排気体積、Sは排気速度である。
【0037】
【数6】
Figure 0003936908
排気対象となるガスの体積に排気時間は比例している。このため、実施例1の構成により、イオントラップ重心部にのみ効率的にガス圧力を高めることができれば、間欠導入バッファガスの量を低減できるから、排気速度を大幅に高めることが期待される、
本発明の構造による排気速度の大幅な向上を確認するために、エンドキャップ7a、7bの開口部50a、50bの穴径を3mmφ、絶縁スペーサー28に設けたガス抜きの穴29(3mmφ)は4個のイオントラップを試作して評価した。この構造では、エンドキャップ電極7a、7b、リング電極9、絶縁スペーサー28に挟まれたイオントラップの内部容積は9ccであった。
【0038】
実施例1の構造と、図2に示す従来の構造とで、それぞれにおけるイオントラップの内部からのガス排出の時定数(ガス圧力が1/eになる時間)を実験で求めた。算出方式は、間欠導入バッファガスのガス密度に対応した解離効率を予め求めておき、ガス導入とイオンため込みの遅延時間を変化させることにより求めたものである。この実験から求められた時定数は、実施例1の方式では1ms以下、図2に示す従来の構造では7±2msであった。実施例1の方式の計算によるガス排出の時定数は1.6msとなる。
【0039】
この結果から、実施例1の方式での時定数は、図2に示す従来の構造の約7倍以上、計算値よりも1.6倍以上高速であることが分かった。これは、本発明では、エンドキャップ7a、7bの開口部50a、50bの中心を結ぶ軸にほぼ垂直でありイオントラップの重心の近傍の領域Oを通る直線と交差するリング電極9の中心付近からのガス導入により、イオンが集中する中心部のみのガス圧力が高まるため、間欠導入バッファガスの導入量が少なくても十分なイオンの解離ができ、したがって、実質的な排気体積Vを小さくできることおよび構造のシンプルさにより、コンダクタンスが大きいことによる。
【0040】
以下、本発明のイオントラップを適用した質量分析装置の実施例を説明する。
【0041】
(実施例2)
図4は、本発明の第2の実施例であり、イオン源としてエレクトロスプレーイオン源を用い、実施例1のイオントラップを用いた大気圧イオン化イオントラップ質量分析装置の構成例を、主要な構成部分を断面で示す図である。図4に示す実施例2はすべての種類の大気圧イオン源に対して同様に適用できる。
【0042】
実施例2の大気圧イオン化イオントラップ質量分析装置は、大気中に配置されているイオン源100と、イオン源100の生成する試料イオンをイオン取り込み細孔3を介して導入する真空レベルの第1差動排気室200、第1差動排気室200と細孔4を介して連通し、オクタポール7a,7bによりイオンをガイドする真空レベルの第2差動排気室300、第2差動排気室300と細孔14を介して連通し、オクタポール6a,6bによりイオンをガイドする真空レベルの第3差動排気室400を備える。第3差動排気室400には前述した実施例1の四重極イオントラップ500が配置される。各差動排気室200,300および400には排気ポンプ20,21および22が備えられて、各差動排気室を所定の真空度に維持している。
【0043】
イオン源100として、図4では、ESI(エレクトロスプレーイオン)キャピラリー1に数kVの高電圧を印加した状態で試料を先端部から噴出させることにより、大気圧下において試料をイオン化する例を示した。ESIキャピラリー1の典型的な直径は、外径0.3mm、内径0.15mm程度である。試料流量が20μL/分以上の場合には、更にESIキャピラリー1の周りに外筒2を設け、外筒2とESIキャピラリー1との間に窒素ガスを流すなどしてイオン化を安定に進行させることができる。
【0044】
イオン源100で生成されたイオンはイオン取り込み細孔3を通り、ポンプ20により排気された第1差動排気室200へと導入される。イオン取り込み細孔3の典型的な直径は0.2mm程度であり、ポンプ20は500L/分程度のロータリーポンプを使用する。この場合、第1差動排気室200の圧力は300Pa程度になる。
【0045】
その後、イオンは細孔4を通り、ポンプ21により排気された第2差動排気室300に導入される。細孔4の穴径は1mm〜2mmであり、第2差動排気室300の圧力は0.7Pa〜1.3Paである。ターボ分子ポンプ21の排気量は150L/sである。第2差動排気室300の圧力は0.7〜1.3Pa程度になる。
【0046】
第2差動排気室300には8本の丸棒からなるオクタポール7a,7b(紙面後方側4本のみ図示)が配置され、オクタポール5の中心をイオンが通過する。オクタポール5の電極には、1MHz、150V(0−peak)程度の逆位相の交流電圧を交互に印加する(電圧源と配線の表示は省略した)。オクタポール5はイオンの運動エネルギーや位置を収束し、効率良くイオンを輸送する効果がある。このため、イオン軌道を偏向させる際に用いることができる。
【0047】
オクタポール5を通過したイオンは細孔14を通過して第3差動排気室400へと導入される。第3差動排気室400はターボ分子ポンプ22により排気されている。ターボ分子ポンプ22の排気量は100L/s〜200L/s程度である。第3差動排気室400の圧力は0.03Pa〜0.01Pa程度である。細孔14を通過したイオンは、オクタポール6a、6b(紙面後方側4本のみ図示)、によってガイドされて、ゲート入口電極8、エンドキャップ電極7aの開口部50aを通過して四重極イオントラップ500内へと導入される。オクタポール6a、6bも、オクタポール7a,7bと同様に電圧が印加される。
【0048】
四重極イオントラップ500は、図1の構成と同じであるが、質量分析装置に組み込まれたときはトラップ内に導入されるイオンを冷却するためのクーリングガス(一般にHeガスのみ)が開口27から連続的に導入される。24はクーリングガスボンベである。連続して導入されるガスとしてHeしか用いられない理由は、重分子量ガスを使用すると検出時の質量分解能が著しく低下するためである。
【0049】
四重極イオントラップ500は、先にも説明したように、向かい合った一対のおわん形状のエンドキャップ電極7a、7bとドーナツ状のリング電極9により構成されている。パルスバルブ44は絶縁体28によりリング電極9から絶縁される。また、リング電極9とエンドキャップ電極7a、7bの間もテフロン(登録商標)などの絶縁体28で絶縁される。エンドキャップ電極間の距離は10mm程度、リング電極9に内接する円の半径は7mm程度である。リング電極9にはトラッピング用交流電圧発生電源33により供給される500kHz〜1MHzの高周波電圧が印加される。リング電極9には最大で数kVの高電圧(対アース)が印加される。これらの電極7a−7b間には、補助交流電圧発生電源32で生成された1kHz〜500kHzの交流電圧及びそれが重畳された電圧が印加される。リング電極9およびエンドキャップ電極7a,7bに挟まれた空間で3次元の四重極電場が形成され、3次元の四重極電場によりイオンを蓄積し、電極7a−7b間の周波数および電圧を制御して、イオン選択や衝突解離を行わせ、エンドキャップ電極7bの開口部50bから選択的にイオンを排出する。
【0050】
リング電極9には、パルスバルブ44の開口部が設けられるとともに、パルスバルブ44は間欠導入バッファガス源のボンベ25に連結される。パルスバルブ44を介して導入される間欠導入バッファガスのガス流量を絞る場合には、パルスバルブ44の上流側に設けられるポンプ(図示せず)で減圧すれば良い。間欠導入バッファガスはHe、Ar,N2、Xe、Kr,エアーなどを用いることが可能である。ガスボンベ24および25には開閉バルブが設けられる。
【0051】
ゲート入口電極8には、イオン源100で生成されたイオンがイオン取り込み細孔3、細孔4、細孔14、ゲート入口電極8およびエンドキャップ電極7aの開口部50aを経由して四重極イオントラップ500に導入されるイオン蓄積過程で0〜−200V程度の電圧(対アース)が印加される。一方、出口電極10には、エンドキャップ電極7bの開口部50bから排出されるイオンの検出過程で0〜−300V程度の電圧(対アース)が印加される。偏向電極11、コンバージョンダイノード12および検出器13が出口電極10の下流側に設けられる。出口電極10を通過したイオンは、偏向電極11によりイオン軌道を曲げられコンバージョンダイノード12に衝突する。コンバージョンダイノード12には、正イオン検出時には−数kVの電圧が印加されており、コンバージョンダイノード12にイオンが衝突する際、電子が発生する。発生した電子は10kV程度が印加された電子増倍管などからなる検出器13へ到達し、シグナルとして観測される。
【0052】
31は制御装置であり、リング電極9に印加するトラッピング交流電圧源33、エンドキャップ電極7a、7bの間に印加する補助交流電圧源32、パルスバルブ制御用電源34の電圧の大きさおよび周波数および印加のタイミングを制御する。また、検出器13から得られる信号の処理を行ない、試料のマススペクトルデータを得る。なお、制御装置31の信号処理部はいわゆるパソコンで構成され、必要なシーケンシャル処理やデータの統計的な処理が可能なものとされる。
【0053】
図5は、実施例2の測定シーケンスを示す図である。図5に示す測定シーケンスは制御装置31により制御される。以下、実施例2におけるイオントラップの動作方法を図5を用いて説明する。
【0054】
実施例2におけるイオントラップによる質量分析の動作には、イオン蓄積過程、前駆イオン選択過程、イオン分解(解離)過程およびイオン検出過程の4つの過程よりなるシーケンスがあり、データの集積効果を得るために、この過程をシーケンス必要な回数だけ繰り返すことが行われる。
【0055】
イオン蓄積過程では、イオン取り込み用の交流電源33で生成するトラッピング交流電圧がリング電極9に印加される。この間、イオン源100で生成され、イオン取り込み細孔3、細孔4、細孔14、ゲート入口電極8およびエンドキャップ電極7aの開口部50aを経由したイオンはイオントラップ500内にため込まれていく。イオンの蓄積時間の典型的な値は、0.1ms〜100ms程度である。この蓄積時間が長すぎると、イオントラップ500内でのイオンのスペースチャージと呼ばれる現象により電界が乱れるから、試料の種類等に応じて適当な時間を選択する。イオン蓄積過程では、パルスバルブ44からのイオン分解(解離)のための間欠導入バッファガス導入はしない。
【0056】
次に、前駆イオン選択過程で、トラッピング交流電圧、補助交流電圧を設定して、検出対象となる前駆イオンの選択が行なわれる。例えば、リング電極9にトラッピング交流電圧を印加し、エンドキャップ電極7a、7bの間に、前駆イオンの共鳴周波数を除いた高周波成分を重畳した電界を印加する。これにより、前駆イオン以外のイオンがトラップ条件から外れるようにして、イオントラップ500の外部に排出されて、検出対象のイオン質量数範囲のイオンのみを、イオントラップ500内に残留させることができる。
【0057】
この外にも、検出対象のイオン選択の方式は種々あり、いずれを採用しても良い。いずれの場合も、あるイオン質量数範囲の検出対象のイオンのみをイオントラップ内に残留させる目的においては同じである。イオン選択に要する典型的な時間は、5ms〜20ms程度である。前駆イオン選択過程でも、パルスバルブ44からのイオン分解(解離)のための間欠導入バッファガス導入はしない。
【0058】
次に、イオン分解過程では、選択された前駆イオンの解離(分解)が行なわれる。リング電極9にトラッピング交流電圧が印加され、エンドキャップ電極7a、7bの間に補助交流電圧が印加される。イオン分解過程の区間では、パルスバルブ44が開き間欠導入バッファガスが導入される。導入ガスとして、イオンの分解効率を高める目的でAr、Xe、Krなど分子量の大きなイオンが選択される。
【0059】
最後に、イオン検出過程で、イオン検出が行なわれる。イオン検出時には、トラッピング交流電圧、補助交流電圧を低電圧から高電圧へと変化させていく。低質量数のイオンから不安定化してイオントラップの外部へ排出され検出器13でイオン強度が検出される。イオン検出時にも、パルスバルブ44から間欠導入バッファガスの導入はしない。イオントラップ内には、Heガスのみが存在するため、分解能は維持される。トラッピング交流電圧と排出されるイオンの質量とは一定の関係があるため、この時の検出器13による検出イオン強度がマススペクトルデータとして制御装置31に記録される。
【0060】
実施例2における具体的な電圧設定方法について以下説明する。擬似的なポテンシャルDZ、イオンの安定度を決定する指数qZは、式(7)、式(8)で与えられる。eは電子素量、mはイオン質量、Vはリング電極9に印加する電圧、Ωはリング電極9に印加する電圧Vの角周波数、z0はエンドキャップ電極7a,7bの間の距離(最接近部での距離)の半分の値である。r0 2=2z0 2のとき、
【0061】
【数7】
Figure 0003936908
【数8】
Figure 0003936908
図6は、実施例2における電圧設定方法に係る擬似的なポテンシャルとイオンの安定度を決定する指数との関係を示す図である。図6では、質量数が1000amu、リング電極9に印加する交流電圧Vの周波数が770kHz、エンドキャップ電極の間の距離が14mmの時の、ポテンシャルDZの深さを示す。低質量数の分解物イオンを検出するには、qZを小さくする必要があるが、ポテンシャルの深さはqZの二乗に比例するため、qZが小さくなると解離に至るような衝突が行なえない。そのため、従来、質量数比の低いイオンを分解物イオンとして得ることは四重極イオントラップ質量分析装置においては難しいとされている。
【0062】
一方、イオンの共鳴周波数fは、式(9)で与えられる。β(qZ)はqZで一義的に与えられる安定化パラメーターである。
【0063】
【数9】
Figure 0003936908
図7は、実施例2における電圧設定方法に係る共鳴周波数とイオンの安定度を決定する指数との関係を示す図である。図7では、リング電極9に印加する交流電圧Vの周波数が770kHzの時の共鳴周波数を示す。エンドキャップ電極7a,7b間に、この共鳴周波数、もしくは、この共鳴周波数近傍の周波数の補助交流電圧を印加する。
【0064】
補助交流電圧の周波数として、単一の周波数を用いて良いし、複数の周波数を重畳しても良い。
【0065】
以上が電圧設定法の説明である。
【0066】
質量mのイオンが、分子量Mの間欠導入バッファガスと衝突することに得られる内部エネルギーの増加分ΔEintは式(10)で与えられる。
【0067】
【数10】
Figure 0003936908
つまり、同一ポテンシャルにおいて、バッファガスの分子量が大きいほどイオンの内部エネルギーを大きく励起することが式(10)より分かる。
【0068】
図8は、本発明の効果を検証するために、実施例2において、実際にイオンの安定度を決定する指数であるqZ値を変化させた時のロイシンエンケファリン1価イオンの分解効率を示す図である。実施例2では、qZが0.1以上で高い分解効率を維持しているが、図2に示す従来の構造のイオントラップでは、qZが0.2以上でないとイオンは分解しない。実施例2では低いqZ値でイオン分解が進行しているため、図2に示す従来のイオントラップの構造では不可能であった低質量イオンの検出が可能であることが確認できた。
【0069】
図9は、本発明の実施例2におけるイオン分解過程での電圧設定方法の一例を示す図であり、エンドキャップ電極7a、7bの間に印加する補助交流電圧の例を示す図である。図9(A)に示すように、補助交流電圧として前駆イオンに共鳴する周波数近傍の単一の周波数(f(qz=0.1))の補助交流電圧51の印加が有効である。また、図9(B)に示すように、補助交流電圧として周波数(f(qz=0.1))から周波数(f(qz=0.4))までの周波数を含み、且つ、周波数が大きい成分の方が電圧の大きさが小さい広帯域周波数の補助交流電圧52の印加も有効である。さらに、図9(C)に示すように、補助交流電圧として、時間的に周波数を低周波数から高周波数へと変化させた補助交流電圧53の印加が有効である。この場合、補助交流電圧53の周波数は、時間と共に、低周波数f(qz=0.1))から高周波数f(qz=0.4)へと変化し、電圧の大きさは時間とともに小さくなるように制御される。
【0070】
図9(B)に示す広帯域の補助交流電圧52の印加、あるいは、図9(C)に示す時間的に周波数変化する補助交流電圧53の印加とする方が、図9(A)に示す単一周波数の補助交流電圧の印加と比較して、一度分解したイオンが追分解されて多種類の分解物ピークが計測できるというメリットがある。
【0071】
イオン検出過程では、イオントラップ500の内部で衝突解離が行われたイオンは、トラッピング交流電圧、補助交流電圧が低電圧から高電圧へと変化させられるのに対応して、イオンの質量ごとにエンドキャップ電極7bの開口部50bより、イオントラップ500の外部に排出され、検出器13で検出され、この出力が制御装置31に送られマススペクトルとして記録される。
【0072】
図10、図11は、本発明の実施例2における効果を示す図であり、横軸はM/z、縦軸は相対信号強度を示す。
【0073】
図10は、間欠導入バッファガスとしてArを使用し、イオン分解過程(CID時間)に導入するとともに、この間にエンドキャップ電極7a、7bの間に単一周波数の補助交流電圧51を印加した場合のロイシン−エンケファリン擬分子イオンの質量スペクトルを示す図である(qz=0.1)。図10に示す質量スペクトルでは、低質量数(m/z<250)の分解物イオンは余り見られない。これは前駆イオンから直接生成する分解物イオンが高質量数(m/z>250)のイオンであるためである。
【0074】
一方、図11は、図10の場合と同様に、間欠導入バッファガスとしてArをイオン分解過程(CID時間)で導入し、エンドキャップ電極7a、7bの間に広帯域の補助交流電圧52を印加した場合のロイシン−エンケファリン擬分子イオンの質量スペクトルを示す図である(qZ=0.1)。
【0075】
図10と対比して明らかなように、図11に示す質量スペクトルでは、低質量数(m/z<250)のイオンも検出される。これは、広帯域の補助交流電圧52の印加により、一度分解した高質量数(m/z>250)のイオンが追分解されて、低質量数のイオンが生成されたことを示すものである。低質量数まで多種類のイオンが検出されることは、イオンを同定する上で有用であるため、図9(B)に示すような、広帯域の補助交流電圧52の印加は有効であることがわかる。また、図9(C)に示すような、時間的に周波数変化する補助交流電圧53の印加でも、広帯域の補助交流電圧52の印加とほぼ同様の効果が得られる。
【0076】
また、低質量数の分解物イオンを検出する目的以外において、例えば、Heを間欠導入バッファガスとして用いた場合には解離不可能であったイオンの解離にも効果がある。この場合には、解離時のqZを、通常の衝突解離と同じく、0.2〜0.4程度になるようリング電極9に印加する電圧Vを設定することで、イオンの分解が可能である。また、イオントラップ500の周辺部を加熱し、間欠導入バッファガスの温度を上昇させることで、さらにこの効果は増加する。
【0077】
(実施例3)
図12は、本発明の実施例3であり、実施例2で説明した大気圧イオン化イオントラップ質量分析装置に対して、レーザー照射によるイオン解離を適用した構成をもつ質量分析装置の構成例を示す図である。図4と同じものに同じ参照符号を付したので、両者を対比して明らかなように、実施例3の質量分析装置でも、イオン源100により生成されたイオンがイオントラップ500へ導入されるまでの経緯および分解されたイオンが検出される過程は、実施例2の質量分析装置と同じである。この実施例では、第3差動排気室400の細孔14に対向する位置に入射窓15が設けられ、ここからレーザー光が入射される点において実施例2と異なる。入射されたレーザー光はイオントラップ重心付近の領域Oに向けて、エンドキャップ電極7bのイオン出射孔50bを通過して、照射される。30は赤外レーザー源、16はレンズ、17はミラーである。レンズ16及び入射窓15には、CO2レーザー(波長10.6μm)の透過率が高いZnSeなどの材質が用いられる。
【0078】
レーザー光のアライメントはまず、エンドキャップ電極7a、7bの開口部50a、50bを光が通過するようにミラー17の傾きの粗調整を行なう。その後、レセルピンイオンなどの擬似的サンプルを用いてその解離効率が最大となるように、ミラー17の調整を行なう。ミラー17は大気圧中にあるためこの操作は容易である。レーザー光の焦点面積を小さくするには、初期のビーム広がりが大きいほど有利であるため、レーザー源30とミラー17の間にビームエクスパンダー(図示せず)を設置することも有効である。これによりビーム径をより細く収束させることが可能となる。
【0079】
レーザービーム径を、より細く収束させ、イオントラップの重心付近の領域Oでのイオンの広がりとほぼ一致する面積に合わせるとレーザーのエネルギーを効率良くイオンへ与えることが可能である。図12ではレンズ、ミラーを介してレーザーが導入されているが、これらを省略してレーザー源から直接照射する形態もあり得る。この場合には、光学部品のコストを削減できるメリットがある。
【0080】
実施例3の場合、イオン分解過程では、実施例2ではクーリングガス導入孔27よりイオントラップ500の内部に連続して導入されるクーリングガスを流さないか、又は、ガスの流量を極めて低流量に設定する。レーザー光がクーリングガスと衝突することによりイオン分解が緩和されるため、レーザー照射によるイオン分解は、イオントラップ500の内部の圧力が高い(0.01Pa以上)と進行しない。クーリングガスを流さないか、又は、ガスの流量を極めて低流量に設定するのはこのためである。イオントラップ500の重心領域Oに照射されるレーザー光の出力は10W〜30W、焦点面積は0.3mm2〜2mm2程度である。赤外レーザー30の強度と照射のタイミングは制御装置31により行なわれる。
【0081】
図13は、実施例3の測定シーケンスを示す図である。図13に示す測定シーケンスは制御装置31により制御される。以下、実施例3におけるイオントラップの動作方法を図13を用いて説明する。実施例3におけるイオントラップの動作も、実施例2(図5)と同様に、イオン蓄積過程、前駆イオン選択過程、イオン分解(解離)過程、イオン検出過程の4つのシーケンスがある。以下では、実施例3の測定シーケンスで実施例2の測定シーケンスと共通する点の説明は省略し、相違する点を中心に説明する。
【0082】
イオン蓄積過程では、実施例2のイオン蓄積過程と同様にして、リング電極にトラッピング交流電圧が印加され、イオンはイオントラップ500内にため込まれていく。実施例3のイオン蓄積過程では、パルスバルブ44から間欠導入バッファガスが導入され、補助交流電圧の印加、レーザー照射はなされない。間欠導入バッファガスとしてはHeのほかAr、エアーなどを用いることが可能である。イオン取込み時のトラッピング効率は間欠導入バッファガス量が多いほど高くなるので、トラップに十分な間欠導入バッファガスを導入することにより感度が向上する。
【0083】
前駆イオン選択過程では、実施例2の前駆イオン選択過程と同様にして、特定のイオン質量数範囲のイオンのみをトラップ内に残留させる。実施例3の前駆イオン選択過程では、パルスバルブ44から間欠導入バッファガスの導入が行なわれ、レーザー照射はなされない。
【0084】
イオン解離過程では、選択された前駆イオンの解離が行なわれる。この時、低質量数の分解物イオンを検出したいのであれば、トラッピング交流電圧は低めに設定される。また、難分解性のイオンを解離したいのであれば、トラッピング交流電圧を高めに設定する。また、イオン解離過程では、レーザー光が照射され、前駆イオンに共鳴する数10mV〜数Vの補助交流電圧が印加される。
【0085】
イオン解離に要する典型的な時間は5ms〜50ms程度である。レーザー光の典型的な出力は10W〜30W、この時のレーザー光密度は20W/mm2〜60W/mm2(計算値により不正確)である。イオン解離過程では、パルスバルブ44から間欠導入バッファガスの導入は停止される。このため、トラップ内の圧力はイオン解離過程では0.01Pa以下まで低下する。
【0086】
イオン検出過程は、実施例2のイオン検出過程と同じである。
【0087】
図14は、図2に示す従来のイオントラップの構造で連続してイオン解離のための間欠導入バッファガスを導入した場合と、実施例3の場合とを、トラップされるイオン量とレーザー照射によるイオン解離効率について比較した結果を示す図である。
【0088】
図14では、信号強度約6000、解離効率約90%に対応するデータ点でのみ、図2に示す従来構造のイオントラップでも、高い解離効率で解離が進行している。これは、しかし、間欠導入バッファガスの導入を停止している場合のデータであり、トラッピング効率を高めるため、間欠導入バッファガスを導入すると信号量は増加するが、解離が進行しなくなる(解離効率は約10%以下)。
【0089】
一方、実施例3では、図2に示す従来法の6倍以上のトラッピング効率となるように間欠導入バッファガスを導入しても解離効率の低下は見られなかった。実施例3を用いれば、従来不可能であった高トラッピング効率を維持したままのレーザー照射によるイオン解離が可能になる。
【0090】
(実施例4)
図15は、本発明の実施例4であり、実施例1のイオントラップを用いる大気圧イオン化イオントラップ飛行時間型質量分析装置の構成例を示す図である。図4と同じものに同じ参照符号を付したので、両者を対比して明らかなように、実施例4の質量分析装置でも、イオン源100により生成されたイオンがイオントラップ500へ導入されるまでの経緯は実施例2の質量分析装置と同じである。
【0091】
この実施例4では、イオンの検出方式が実施例2の質量分析装置と異なる。第3差動排気室400に隣接して開口43で連通したターボ分子ポンプ23により排気される第4差動排気室600(飛行時間型質量分析室)が設けられる。第4差動排気室600内には数kVの電圧が印加されたリフレクトロン42が設けられ、イオントラップ500からリフレクトロン42の方向へ飛行したイオンは逆方向へ押し戻され検出器13へ到達して検出される。すなわち、四重極イオントラップからイオンを引き出し、四重極イオントラップの中心軸と同軸方向に加速を行ない、イオンの飛行時間から質量分離を行なう。
【0092】
イオントラップ500内で解離されたイオンは、イオン検出過程の初期段階でエンドキャップ電極7a、7bの間に数100V〜数kVの直流電圧を印加することにより、第4差動排気室600の方向に排出され、イオンの出口側のエンドキャップ電極7bと加速電極40の間に、数100V〜数kVのパルス電圧を印加することにより、加速電極40の開口41を通して飛行時間型質量分析室600に輸送される。実施例4の質量分析装置の検出器13には高速のMCPなどが用いられる。実施例4の構成は、実施例2の構成と比較して、検出されるイオンの質量分解能や質量精度がより優れている利点がある。
【0093】
なお、実施例4では、上述の説明から明らかなように、実施例2および3で示した電源以外に直流電圧源およびパルス電源とこれらを必要個所に接続するための配線が必要である。しかし、これらは通常の技術者が容易に準備することができるものであるので、図示は省略した。また、制御装置31をこれに対応するものとすることも同様に容易にできる。
【0094】
図16は、実施例4の測定シーケンスを示す図である。図16に示す測定シーケンスは制御装置31により制御される。以下、実施例4におけるイオントラップの動作方法を図16を用いて説明する。
【0095】
実施例4におけるイオントラップの動作は、実施例2(図5)、実施例3(図13)と同様に、イオン蓄積過程、前駆イオン選択過程、イオン分解(解離)過程、イオン検出過程の4つのシーケンスがある。以下では、実施例4の測定シーケンスで実施例2の測定シーケンスと共通する点の説明は省略し、相違する点を中心に説明する。
【0096】
イオン蓄積過程では、実施例2のイオン蓄積過程と同様にして、リング電極にトラッピング交流電圧が印加され、イオンはイオントラップ500内にため込まれていく。実施例4のイオン蓄積過程では、正イオンの測定時に、ゲート入口電極8には−100V程度、加速電極40には100V程度の電圧が印加される。前者はイオンを効率良くイオントラップへと導入するため、後者はイオントラップ500に一度入ったイオンが排出されないために印加される。実施例2のイオン蓄積過程と同様にして、スペースチャージと呼ばれる現象が起こらないうちに蓄積を終了する。
【0097】
エンドキャップ電極7aを通過してイオントラップの内部へ到達したイオンのうち、安定にトラップされる効率はイオントラップの内部のクーリングガスによるガス圧に依存する。0.06Pa〜0.4Paのガス圧力が、感度、分解能が良好なバッファガス圧である。
【0098】
前駆イオン選択過程、イオン分解過程は、それぞれ、実施例2の前駆イオン選択過程、イオン分解過程と同じである。
【0099】
イオン検出過程では、図16に示すようにDC電圧が印加され、エンドキャップ電極7a、7b、リング電極9、加速電極40に直流電圧が印加される。この時の電圧の一例として、入口側のエンドキャップ電極7aに4kV、出口側のエンドキャップ電極7bに3.5V、加速電極40に0V程度が印加される。0〜数10マイクロ秒後にイオンは検出器13に到達する。
【0100】
(実施例5)
以上説明した実施例では、図5、図13、図16に示すように、パルスバルブ44は1つであり、パルスバルブ44からイオントラップの内部へ導入する間欠導入ガスのガス圧力を、パルス状に、ON、OFFの2通りに変化させたい場合の例を説明した。
【0101】
図17は、本発明の実施例5であり、リング電極9に複数のパルスバルブ44を配置する構成例を示す断面図である。図17に示すように、パルスバルブ44をリング電極9に複数設置すれば、イオンに化学作用を起こさせるためのガス噴射を与えることが可能である。この時、実施例2と同様に、エンドキャップ7a、7bの開口部50a、50bの中心を結ぶ軸にほぼ垂直でありイオントラップの重心を通る直線と各パルスバルブ44のガス流路の中心軸とが一致する領域Oに、各パルスバルブ44をリング電極9の一部に配置する。図17に示す例では、2つのパルスバルブ44が対向するようにリング電極9に配置されている。
【0102】
(実施例6)
前述の実施例は全てリング電極9にパルスバルブ44を設けたものであったが、本発明では、当然、エンドキャップ7aに設けても良い。図18はこのような形になされた実施例を示す図である。
【0103】
図18では、実施例2に示す第3差動排気室400にイオントラップ500を設け、エンドキャップ7aにパルスバルブ44を設けた。エンドキャップ7bの開口50bはイオンの導出に必要であるので実施例2と同じにした。60はエンドキャップ7aとパルスバルブ44との間の絶縁体である。エンドキャップ7aの開口部50aはパルスバルブ44の開口部がふさいでしまうので、イオントラップ500内部に、直接、イオン源を設ける構造とした。トラップ内部に設定できるイオン源としては電子衝撃イオン源(EI)およびマトリックス支援レーザーイオン源(MALDI)があるが、図18にはEIの場合を示す。試料溜め56より、試料はキャピラリーチューブ57を通り、絶縁体28に設けられた開口58からイオントラップ内部へと導入される。試料のイオン化はフィラメント55より放出される電子と、キャピラリーチューブ57から放出される試料ガスが衝突することにより行われる。その他の構成要素は実施例2(図4)の構成と同じものに同じ参照符号を付した。
【0104】
測定シーケンスは、実施例2のシーケンスを示す図5と同様であるフィラメント55は制御装置31により制御され、イオンため込み時のみ電流が流れ、熱電子を放出するように制御される。
【0105】
実施例6のように、イオン源をイオントラップの中に配置し、エンドキャップ7aにパルスバルブ44を設ける形としても、パルスバルブ44から供給される間欠導入ガスの照射領域をイオンがトラップされるイオントラップ500の重心付近の領域Oと一致させれば、効率良くイオンの分解ができる。
【0106】
(その他の実施例)
以上の各実施例では、イオン源としてエレクトロスプレーイオン源を用いた場合を例にとって説明したが、マトリックス支援レーザーイオン化、大気圧化学イオン化、超音速噴霧イオン化法等で生成されたイオンに関しても、本発明は同様の効果が得られる。
【0107】
本発明によれば、四重極イオントラップにおいて、感度や分解能を低下させることなく、低質量数の分解物イオンを検出でき、難分解性のイオンの分解が可能な質量分析装置を提供できる。従来技術に比べ、定性及び定量能力が向上した質量分析装置を提供できる。
【0108】
【発明の効果】
本発明によれば、イオントラップを用いる質量分析装置及び質量分析方法において、低質量数の分解物イオンを検出し、かつ高感度な測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の四重極イオントラップの実施例を断面図の形で示す図。
【図2】図1に示す実施例1に対応する従来方式の四重極イオントラップの構成を示す断面図。
【図3】既設の質量分析装置のイオントラップを図1に示す本発明の実施例1の構造とした場合と、図2に示す従来の構造とした場合について、既知のサンプルの質量分析を行ない、イオンのトラッピング効率の間欠導入バッファガス量依存性を評価した結果を示す図。
【図4】本発明の第2の実施例であり、イオン源としてエレクトロスプレーイオン源を用い、実施例1のイオントラップを用いた大気圧イオン化イオントラップ質量分析装置の構成例を、主要な構成部分を断面で示す図。
【図5】本発明の実施例2の測定シーケンスを示す図。
【図6】実施例2における電圧設定方法に係る擬似的なポテンシャルとイオンの安定度を決定する指数との関係を示す図。
【図7】実施例2における電圧設定方法に係る共鳴周波数とイオンの安定度を決定する指数との関係を示す図。
【図8】本発明の効果を検証するために、実施例2において、実際にイオンの安定度を決定する指数であるqZ値を変化させた時のロイシンエンケファリン1価イオンの分解効率を示す図。
【図9】本発明の実施例2におけるイオン分解過程での電圧設定方法の一例を示す図であり、エンドキャップ電極7a、7bの間に印加する補助交流電圧の例を示す図。
【図10】本発明の実施例2において、Arをイオン分解過程で導入して単一周波数の補助交流電圧を印加した場合のロイシン−エンケファリン擬分子イオンの質量スペクトルを示す図。
【図11】本発明の実施例2において、Arをイオン分解過程で導入して広帯域の補助交流電圧を印加した場合のロイシン−エンケファリン擬分子イオンの質量スペクトルを示す図。
【図12】本発明の実施例3であり、実施例2で説明した大気圧イオン化イオントラップ質量分析装置に対して、レーザー照射によるイオン解離を適用した構成をもつ質量分析装置の構成例を示す図。
【図13】本発明の実施例3の測定シーケンスを示す図。
【図14】図図2に示す従来のイオントラップの構造で連続してイオン解離のための間欠導入バッファガスを導入した場合と、実施例3の場合とを、トラップされるイオン量とレーザー照射によるイオン解離効率について比較した結果を示す図。
【図15】本発明の実施例4であり、実施例1のイオントラップを用いる大気圧イオン化イオントラップ飛行時間型質量分析装置の構成例を示す図。
【図16】本発明の実施例4の測定シーケンスを示す図。
【図17】本発明の実施例5であり、リング電極9に複数のパルスバルブ44を配置する構成例を示す断面図。
【図18】本発明の実施例6であり、エンドキャップ7aにパルスバルブ44を設けた質量分析装置の構成例を示す断面図。
【符号の説明】
1…ESIキャピラリー、2…ガス導入外筒、3…イオン取り込み細孔、4…第2細孔、7a,7b…オクタポール、6a、6b…オクタポール、7a、7b…エンドキャップ電極、8…ゲート入口電極、9…リング電極、10…ゲート出口電極、11…偏向電極、12…コンバージョンダイノード、13…検出器、15…入射窓、16…レンズ、17…反射ミラー、20…ポンプ、21…ターボ分子ポンプ、22…ターボ分子ポンプ、23…ターボ分子ポンプ、24…ガスボンベ、25…ガスボンベ、27…クーリングガス導入孔、28…絶縁体、29…絶縁体に形成された孔、30…赤外レーザー、31…制御装置、32…補助交流電圧発生電源、33…トラッピング用交流電圧発生電源、34…パルスバルブ制御用電源、40…加速電極、42…リフレクトロン、44…パルスバルブ、50a…エンドキャップ7aの開口部、50b…エンドキャップ7bの開口部、51…単一周波数の補助交流電圧、52…広帯域の補助交流電圧、53…時間的に周波数変化する補助交流電圧、55…フィラメント、56…試料溜め、57…キャピラリーチューブ、58…開口、60…絶縁体、100…大気中に配置されているイオン源、200…第1差動排気室、300…第2差動排気室、400…第3差動排気室、500…四重極イオントラップ。

Claims (6)

  1. 試料のイオンを生成するイオン源と、
    1対のエンドキャップ電極とリング電極とを具備し前記イオンを蓄積して排出するイオントラップと、
    前記リング電極又は前記エンドキャップ電極に配置され、間欠導入バッファガスを前記イオントラップの内部に導入するガス導入孔と、
    前記イオントラップから排出されたイオンを検出する検出装置とを有し、
    前記ガス導入孔の中心軸が、前記イオントラップの中心を通るように配置され、
    前記リング電極に印加する交流電圧の印加タイミングと前記ガス導入孔からの前記間欠導入バッファガスの導入のタイミングとを制御する装置を備えることを特徴とする質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析装置において、前記ガス導入孔が前記リング電極に配置されていることを特徴とする質量分析装置。
  3. 請求項1に記載の質量分析装置において、前記ガス導入孔が少なくとも一方の前記エンドキャップ電極に配置されていることを特徴とする質量分析装置。
  4. 請求項1に記載の質量分析装置において、前記間欠導入バッファガスが、ソレノイドを利用したパルスバルブを介して、前記イオントラップの内部に導入されることを特徴とする質量分析装置。
  5. 請求項1に記載の質量分析装置において、前記ガス導入孔の先端部から前記イオントラップの中心までの距離が16mm以下であることを特徴とする質量分析装置。
  6. イオン源で試料のイオンを生成する過程と、
    前記イオンを、1対のエンドキャップ電極とリング電極を具備するイオントラップに入射させて蓄積する過程と、
    所望の質量数をもつ前駆イオンを前記イオントラップに選択的に保持する過程と、
    前記リング電極に配置され、前記イオントラップの中心を通るように配置される中心軸をもつガス導入孔から間欠導入バッファガスを、前記イオントラップの内部に導入して、前記前駆イオンを分解する過程と、
    前記イオントラップから分解されたイオンを排出する過程と、
    排出された前記イオンを検出する過程と、
    前記リング電極に印加する交流電圧の印加タイミングと前記ガス導入孔からの前記間欠導入バッファガスの導入のタイミングとを制御する過程とを有することを特徴とする質量分析方法。
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