JP5485186B2 - キャスク用緩衝体 - Google Patents
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Description
そこで、輸送時および取扱い時には、通常、キャスクの上下端にキャスク用緩衝体を取り付け、万一の落下時の衝撃を十分に緩和させるという対応がとられている。
このキャスク用緩衝体では、垂直落下による荷重を吸収する衝撃吸収部材が、キャスク端面部に接する内周側領域において強度を有する方向を軸方向に向けて配置され、また、水平落下による荷重を吸収する衝撃吸収部材が、キャスク側面に接する領域において強度を有する方向を半径方向に向けて配置され、さらに、コーナー落下による荷重を吸収する衝撃吸収部材が、キャスク端面部に接する外周側領域において強度を有する方向を半径方向に向けて配置されている。
このようなキャスク用緩衝体によれば、前記したような衝撃吸収部材の配置によって、キャスクの落下時における様々な姿勢の衝撃荷重を適度に吸収することが可能であり、衝撃加速度を低く抑えるとともに、変位量を低く抑えることが可能となっている。
このキャスク用緩衝体によれば、衝撃荷重による木材の変形力を隣接する木材に付勢することで衝撃を広い範囲で受けもち、吸収することができる。
蓋部への衝撃荷重の対策として、キャスクに対して緩衝体の領域を大きくしたり、キャスクのフランジ部を厚く形成したりする等の手法が挙げられる。しかしながら、キャスクは、輸送する際の機器の制約上、最大外形寸法が定められており、前記のように緩衝体の領域を大きくしたり、キャスクのフランジ部を厚く形成したりすると、その分、燃料収納領域が減少してしまい、燃料収納効率が低下してしまう。このため、緩衝体の領域を変化させることなく衝撃吸収能力を向上させる手法が必要とされている。
なお、キャスク用緩衝体10は、キャスク1の上部に外装した場合を例にとって説明するが、キャスク1の下部に対して外装するものとして用いてもよい。
胴部2は、使用済燃料集合体9を入れるバスケット(図示せず)が内部に収納される内筒4と、内筒4の外側に設けた中性子遮へい材5、中性子遮へい材5を囲む外筒6、キャスク1の吊上げ用および固定用として用いられるトラニオン7を備えて構成されている。そして、キャスク1の軸方向上側となる上端部にキャスク用緩衝体10が外装され、また、キャスク1の軸方向下側となる下端部にキャスク用下部緩衝体30が外装されるようになっている。
はじめに、キャスク用緩衝体10について説明し、後にキャスク用下部緩衝体30について説明する。
キャスク用緩衝体10は、図2に示すように、外殻11,12と、この外殻11,12の内部に充填された衝撃吸収部材20とを備えており、図1に示すように、キャスク1の蓋部3の上面3a、および蓋部3の先端部の外周面3b(蓋部3の先端部の外周面)を含むキャスク1の上端外周面を保護する。
また、このうち、蓋部外周面領域22は、内部が2つの領域22a,22bに分けられている。つまり、外殻11,12の内部は、衝撃吸収部材20の充填される領域が3つの領域に分けられている。
なお、蓋部上面領域21と蓋部外周面領域22の領域22aとを同じ材料(後記する木材としてのバルサ材等)で構成する場合には、これらを一体的に構成してもよい。
また、領域22bは、一端の断面が略L字形状とされた環状の領域であり、前記した領域22aに対して、キャスク1の径方向外側から領域22aの側面22a1を覆う(図中矢印X1方向に接する)とともに、蓋部3の下面3c(図1参照、以下同じ)側から上面3a側に向かう方向において(蓋部上面領域21のある側と反対側から)領域22aの下面22b1を覆う(図中矢印Y1方向に接する)ように配置されている。
第1の衝撃吸収部材22Aは、圧縮強度が概ね10MPa程度かそれ以下の圧縮強度を有する材料からなり、第1の衝撃吸収部材22Aとしては、例えば、ポリウレタンフォーム材、発泡スチロール材やバルサ材を用いることができる。
また、第2の衝撃吸収部材22Bは、圧縮強度が概ね20〜40MPa程度の材料からなり、第2の衝撃吸収部材22Bとしては、例えば、アルミ管材、発泡金属材、ファープライウッド材、オーク材、レッドウッド材、米杉材、米ヒバ材を用いることができる。
ここで、圧縮強度とは、応力−歪み線図(荷重−変位曲線(不図示))で表され、例えば、圧縮時に発生する応力が大きいほど圧縮強度の高い材料であるといえる。
なお、木材に代えて、内部に同様の圧縮強度を有する木質ボードを充填するように構成してもよく、また、木材の集成材を用いてもよい。
これは、木材が木材繊維方向と垂直な方向に圧縮応力を負荷した場合には、低い応力で降伏が起こり、塑性変形が大きくなるにつれて応力も増大することとなるが、木材繊維方向と平行な方向に圧縮応力を負荷した場合には、木材繊維方向と垂直な方向への圧縮と比べて大きな応力で降伏が起こり、略一定の応力で塑性変形するという異方性をもつことによる。
一般に、衝撃荷重の緩和には塑性変形時に一定の応力を示すものが望ましい。このため、蓋部3への衝撃荷重が問題となる水平落下やコーナー落下時に対応するように、荷重の働く方向である径方向に木材繊維方向を合わせることで、衝撃荷重を好適に低減することができる。
なお、木材の長さや幅は、衝撃力を大きく上げずに、かつ、予想される最大の衝撃荷重が入力された場合に、第1の衝撃吸収部材22Aがつぶれ過ぎない範囲に設定されている。
すなわち、水平落下等によって蓋部外周面領域22に衝撃荷重が加わると、衝撃荷重の加わる初期段階において、第1の衝撃吸収部材22Aと第2の衝撃吸収部材22Bとが直列に配置される側(蓋部上面領域21側)にあっては、圧潰応力の小さい第1の衝撃吸収部材22A(のみ)が変形する。その後、第1の衝撃吸収部材22Aの圧潰応力が第2の衝撃吸収部材22Bの圧潰応力よりも大きくなると、第2の衝撃吸収部材22Bが変形し始める。
水平落下の場合、衝撃荷重は、図4(a)に示すように、キャスク1の軸方向に垂直な方向に働く。衝撃荷重の入力直後は、圧潰応力の小さい第1の衝撃吸収部材22Aが変形することとなり、蓋部外周面領域22は、キャスク1の蓋部3に対応する側(第1の衝撃吸収部材22A側)が大きく変形する状態となる(図4(b)参照)。
このように変形が大きくなると、これにつれて、蓋部3の付近に生じる衝撃荷重を第2の衝撃吸収部材22Bがより多く受け持つようになる。このため、蓋部3への衝撃荷重を弱めることができるようになる。
外殻31,32は、前記したキャスク用緩衝体10と同様にステンレス鋼や塗装した炭素鋼等の金属材料にて形成されており、その内部は、内筒4の下面4a(図1参照)を覆う内筒下面領域33と、内筒4の側部外周面4b(図1参照)を覆う内筒外周面領域34と、に分けられている。
なお、キャスク用下部緩衝体30の内部は、前記したキャスク用緩衝体10と同様に衝撃吸収部材20の充填される領域を3つに分けられた領域としてもよい。
なお、内筒外周面領域34においても、木材の木目である木材繊維方向が、キャスク用緩衝体10において説明したものと同様に、キャスク1の径方向となるように配設されている。
これにより、第1の衝撃吸収部材22Aが受け持つ衝撃荷重が減少して蓋部3への衝撃を弱めることができる。つまり、第2の衝撃吸収部材22Bに、より多くの衝撃荷重を受け持たせることができ、キャスク1の蓋部3の先端部に加わる衝撃荷重を、蓋部3の先端部以外の構造材として丈夫である部分(例えば、蓋部3周りの内筒4や胴部2)に作用させて、これを緩和(吸収)することができる。
したがって、キャスク1の蓋部3への衝撃荷重を好適に緩和することのできるキャスク用緩衝体10が得られる。
図6(a)(b)を参照して第2実施形態のキャスク用緩衝体について説明する。
本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、蓋部3が複数の蓋体から構成されている点である。
一次蓋3Aは、内筒4の開口を塞ぐ状態に、内筒4の上部開口縁に形成された上下二段からなる段部の下段41に載置され図示しないボルトによって取り付けられている。二次蓋3Bは、一次蓋3Aを覆う状態に段部の上段42に載置され図示しないボルトによって取り付けられている。
ここで、段部の下段41と一次蓋3Aとの間、段部の上段42と二次蓋3Bとの間、あるいは一次蓋3Aと二次蓋3Bとの間には、図示しないリング状のシール部材が配置される。
一次蓋3A,二次蓋3Bは、前記と同様にして取り付けられており、三次蓋3Cは、二次蓋3Bを覆う状態に上端開口縁部43の先端部に載置されて、図示しないボルトによって取り付けられている。
図7を参照して第3実施形態のキャスク用緩衝体について説明する。
本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、第1の衝撃吸収部材22Aの配置される領域22aが、第2の衝撃吸収部材22Bによって仕切られた空洞部25とされている点である。
ここで、第2の衝撃吸収部材22Bは、特許請求の範囲に記載の「蓋部外周面領域に充填される衝撃吸収部材」に相当する。
なお、図示しない隔壁を用いて領域22aを仕切り、空洞部25を形成するようにしてもよい。
領域22bは、一端の断面が略コ字形状とされた環状の領域であり、領域22aに対して、キャスク1の径方向外側から領域22aの側面22a1を覆うとともに、蓋部3の下面3c側から上面3a側に向かう方向において領域22aの下面22b1を覆い、さらに、蓋部3の上面3a側から領域22aの上面22c1を覆うように、第1の衝撃吸収部材22Aを三方向から囲っている。
このように構成することによって、キャスク1の蓋部3の先端部に加わる衝撃荷重を、より一層効果的に緩和(吸収)することができる。
3 蓋部
3a 上面
3b 外周面
4 内筒
10 キャスク用緩衝体
11,12 外殻
20 衝撃吸収部材
21 蓋部上面領域
22 蓋部外周面領域
22A 第1の衝撃吸収部材
22B 第2の衝撃吸収部材
22a 領域
22b 領域
25 空洞部
Claims (5)
- 略円柱形状をなすキャスクの少なくとも蓋部周りに外装され、外殻と、この外殻の内部に充填された衝撃吸収部材と、を備えてなる有底円筒状のキャスク用緩衝体であって、
前記衝撃吸収部材の充填される領域は、少なくとも、
前記蓋部の上面を覆う蓋部上面領域と、前記蓋部の外周面を覆う蓋部外周面領域と、に分けられており、
前記蓋部外周面領域には、前記衝撃吸収部材として、第1の衝撃吸収部材と、この第1の衝撃吸収部材よりも圧縮強度の高い第2の衝撃吸収部材とが充填されており、
前記第1の衝撃吸収部材は、前記蓋部の先端部の外周面を覆うように環状に配置されているとともに、
前記第2の衝撃吸収部材は、前記キャスクの径方向外側から前記第1の衝撃吸収部材を覆うように、かつ、前記キャスクの軸方向に沿って前記蓋部上面領域のある側と反対側から前記第1の衝撃吸収部材を覆うように、環状に配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝体。 - 略円柱形状をなすキャスクの少なくとも蓋部周りに外装され、外殻と、この外殻の内部に充填された衝撃吸収部材と、を備えてなる有底円筒状のキャスク用緩衝体であって、
前記衝撃吸収部材は、
前記蓋部の先端部の外周面を覆うように、または前記蓋部の外周面を覆うように、環状に配置された第1の衝撃吸収部材と、
この第1の衝撃吸収部材よりも圧縮強度の高い部材で構成され、前記キャスクの径方向外側から前記第1の衝撃吸収部材を覆うように、かつ、前記キャスクの軸方向に沿って前記蓋部の上面となる側と反対側から前記第1の衝撃吸収部材を覆うように、環状に配置された第2の衝撃吸収部材と、を含んでなることを特徴とするキャスク用緩衝体。 - 請求項1または請求項2に記載のキャスク用緩衝体において、
前記第1の衝撃吸収部材および前記第2の衝撃吸収部材は、応力ひずみ特性の異方性を有する部材で形成されており、この応力ひずみ特性の高い方位が前記キャスクの軸方向に対して垂直となる方向に配設されていることを特徴とするキャスク用緩衝体。 - 略円柱形状をなすキャスクの少なくとも蓋部周りに外装され、外殻と、この外殻の内部に充填された衝撃吸収部材と、を備えてなる有底円筒状のキャスク用緩衝体であって、
前記衝撃吸収部材の充填される領域は、少なくとも、
前記蓋部の上面を覆う蓋部上面領域と、前記蓋部の外周面を覆う蓋部外周面領域と、に分けられており、
前記蓋部外周面領域には、前記蓋部の先端部の外周面を覆うように環状に区画された空洞部が形成されており、
前記蓋部外周面領域に充填される前記衝撃吸収部材は、前記キャスクの径方向外側から前記空洞部を覆うように、かつ、前記キャスクの軸方向に沿って前記蓋部上面領域のある側と反対側から前記空洞部を覆うように、環状に配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝体。 - 請求項4に記載のキャスク用緩衝体において、
前記蓋部外周面領域に充填される前記衝撃吸収部材は、応力ひずみ特性の異方性を有する部材で形成されており、この応力ひずみ特性の高い方位が前記キャスクの軸方向に対して垂直となる方向に配設されていることを特徴とするキャスク用緩衝体。
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