以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。なお、本発明は、キャスク用緩衝体の衝撃吸収体に木材を用いる場合に特に好適である。
本実施形態に係るキャスク用緩衝体は、木板の木目の方向(繊維の方向)を揃えて、複数の木板を積層して構成される複数の衝撃吸収ブロックで構成される。そして、それぞれの衝撃吸収ブロックを構成する木板の木目の方向を揃えるとともに、隣り合うそれぞれの衝撃吸収ブロックは、木板の積層方向が互いに異なるように組み合わせされて、燃料(リサイクル燃料)を格納し、かつキャスク用緩衝体が嵌り合うキャスクの胴本体側に少なくとも配置される点に特徴がある。
図1は、本実施形態に係るキャスクの構成を示す説明図である。キャスク1は、内部にリサイクル燃料を格納して、これを輸送したり貯蔵したりするために用いられる。キャスク1の胴本体1b内には、キャビティ(1c)と呼ばれる空間が形成されており、このキャビティ1cにバスケット2が格納される。バスケット2は、例えば、断面内外形状が正方形の角パイプを束ねて構成され、複数の格子状のセルを備える。そして、リサイクル燃料集合体5は、バスケット2が備える前記格子状のセルに格納される。
胴本体1bは、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼製の鍛造品である。なお、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いてもよいし、鋳鉄や鋳鋼を用いてもよい。鋳鉄や鋳鋼を用いる場合、胴本体1bは、鋳造で製造される。バスケット2を格納したキャビティ1c内にリサイクル燃料集合体5を収納したら、一次蓋3及び二次蓋4を胴本体1bの開口部に取り付けて、キャビティ1cを密封する。このとき、密封性能を確保するため、胴本体1bと一次蓋3との間、及び胴本体1bと二次蓋4との間には、ガスケットを設けておく。なお、キャスクの種類によっては、さらに三次蓋を有する場合がある。
図2−1は、輸送時におけるキャスクの形態を示す斜視図である。図2−2は、輸送時におけるキャスクの形態を示す側面図である。図2−3は、輸送時におけるキャスクの形態を示す斜視図である。図3は、キャスクを列車で輸送する場合の一例を示す説明図である。図2−1、図2−2に示すように、キャスク1を輸送する際には、キャスク1の両方の端部1tにキャスク用緩衝体(以下緩衝体という)6を取り付け、輸送中における万一の落下や衝突等に備える。緩衝体6とキャスク1の端部1tとの重なり代は、図2−2のAで示す部分となる。キャスク1を列車で輸送する際には、緩衝体6を両端部に取り付けたキャスク1を輸送架台9に載せて専用貨車に搭載する。そして、キャスク1に設けられるトラニオン8を輸送架台9に固定し、輸送する。緩衝体6は、キャスク1の端部側から見たときの形状が、図2−1に示す円形のものの他、取り扱い施設又は輸送路の寸法制限に合わせるために、図2−3に示す円弧の4片を直線とした形状のものも用いられる。これらに限られず、キャスク1の仕様に応じて様々な形状の緩衝体を用いることができる。
図4−1は、キャスクの中心軸の定義を示す説明図である。本実施形態において、キャスク1の中心軸Zは、キャスク1の長手方向(すなわち、キャスク1内に格納された状態におけるリサイクル燃料の長手方向)に平行な軸であり、キャスク1の端面1tpに直交する軸である。そして、中心軸Zは、キャスクの長手方向に垂直な断面内の中心を通る。次に、キャスク1の落下あるいは衝突の形態について説明する。図4−2〜図4−4は、キャスクの落下あるいは衝突の形態を示す説明図である。
キャスク1の落下あるいは衝突の形態には、主として3種類の形態がある。図4−2に示す落下あるいは衝突の形態は、水平落下あるいは水平衝突である。これは、キャスク1の中心軸が、地面Lあるいは衝突面に対して略平行となって落下、あるいは衝突する形態である。図4−3に示す落下あるいは衝突の形態は、垂直落下あるいは垂直衝突であり、キャスク1の中心軸が、地面Lあるいは衝突面に対して略直交して落下、あるいは衝突する形態である。図4−4に示す落下あるいは衝突の形態は、斜め落下あるいは斜め衝突であり、キャスク1の中心軸が、地面Lあるいは衝突面に対して傾いて落下、あるいは衝突する形態である。このときの傾き角はθであり、傾き角θが略90度のときには垂直落下あるいは垂直衝突となり、傾き角θが略0度のときには水平落下あるいは水平衝突となる。
図5−1は、本実施形態に係る緩衝体の正面図である。図5−2は、本実施形態に係る緩衝体の側面図である。図5−1、図5−2に示すように、本実施形態に係る緩衝体6は、ステンレスや炭素鋼等の板で作られた外板6w内に、後述する衝撃吸収体を格納して構成される。本実施形態に係る緩衝体6は、正面、すなわち緩衝体6の中心軸(以下緩衝体中心軸)Z1と平行な方向から見た形状が円形となっている。ここで、緩衝体中心軸Z1はキャスク1の中心軸Zと等しく、図5−2に示すキャスク1の端面1tp(ここでは二次蓋端面4tp)と直交する。
なお、本発明は、図5−1に示す緩衝体6に限られず、例えば、緩衝体中心軸Z1と平行な方向から見た場合における緩衝体6の形状が一部直線部分を有する(すなわち平坦な面を有する)形状等、キャスク1の仕様に応じた様々な形状とすることができる。
図5―1に示すように、本実施形態に係る緩衝体6には、緩衝体中心軸Z1と平行な取り付け穴7が、緩衝体中心軸Z1を中心とした円周上に複数設けられている。図5−1、図5−2に示すように、本実施形態に係る緩衝体6にはキャスク1と嵌り合う開口部6oが設けられており、この開口部6oをキャスクの端部1t(ここでは二次蓋4の側、又は底部側)に覆い被せる。そして、前記取り付け穴7へ締結手段(例えばボルト)を挿入してキャスク1の端部1tにねじ込むことにより、緩衝体6をキャスク1の端部1tに取り付ける。また、緩衝体6は、締結手段によって直接キャスクの端部1tに取り付ける他、例えば取り付け板のような取り付け部材を介在させて、キャスク1へ取り付けてもよい。また、キャスク1の端部1tの外側と緩衝体6の開口部6oの内側との間にシムを介して、両者の隙間をできるだけ小さくして緩衝体6を取り付けてもよい。次に、本実施形態に係る緩衝体の内部構造について説明する。
図6は、本実施形態に係る緩衝体の内部構造を示す説明図である。図7、図8は、図6のA−A断面図である。緩衝体6は、衝撃荷重を吸収するための衝撃吸収体として木材を使用する。また、図6、図7中の矢印は、衝撃吸収体を構成する木材の繊維の方向を示している。
図6から分かるように、本実施形態に係る緩衝体6は、外板6w(図5−1、図5−2)の内部に、キャスクが落下や衝突したときの衝撃を吸収する衝撃吸収体が配置されている。上述した通り、本実施形態に係る緩衝体6では、木材で衝撃吸収体を構成するとともに、衝撃吸収体としての木材ブロックの種類(樹種)や繊維(木目)方向、積層の方向を変更して配置することにより、キャスク1の緩衝体として要求される機能を発揮できるようにしてある。
図6に示すように、緩衝体6は、通常、第1衝撃吸収体B1と、第2衝撃吸収体B2と、第3衝撃吸収体B3とを組み合わせて構成される。ここで、第1衝撃吸収体B1〜第3衝撃吸収体B3は、複数の衝撃吸収ブロックを組み合わせることにより構成される。また、緩衝体6は、取り付け穴7に締結手段であるボルト50を挿入し、キャスク1に設けられるボルト穴に前記ボルト50をねじ込むことで、緩衝体6をキャスク1の両端部、又はキャスク1の端板1p(図1参照)に取り付ける。キャスク1に設けられるボルト穴は、例えば、キャスク1の胴本体1b(図1参照)や、キャスク1の端面1tpに設けられる。
第1衝撃吸収体B1は、キャスク1が水平落下あるいは水平衝突したときの衝撃を吸収する。キャスク1が水平落下あるいは衝突したときには、緩衝体6の外周部の一部で地面等と衝突するため、衝撃吸収に寄与する第1衝撃吸収体B1の面積は小さくなる。さらに、緩衝体には外形制限があり大型化できないため、キャスク1が水平落下あるいは衝突したときの緩衝体の変形量を小さくする必要がある。このため、第1衝撃吸収体B1は、本実施形態に係る緩衝体6を構成する第1衝撃吸収体B1〜第3衝撃吸収体B3の中で、最も圧縮強度が高い第1の材料で製造される。木材を用いる場合、例えばオーク(樫)やレッドセダー(米杉)、レッドウッド等を用いる。ここで圧縮強度とは、応力−歪み線図(荷重−変位曲線)で表され、圧縮時に発生する応力が大きいほど圧縮強度が高い材料である。
第2衝撃吸収体B2は、キャスク1が垂直落下若しくは垂直衝突、又は斜め落下若しくは斜め衝突したときの衝撃を主に吸収する。垂直落下等においては、緩衝体中心軸Z1に垂直な面で垂直落下等の衝撃を吸収する。すなわち、垂直落下の場合、前記水平落下に比べて広い面積で緩衝体6が地面等に衝突し、衝撃を吸収するので、衝撃吸収に寄与する第2衝撃吸収体B2の面積は、第1衝撃吸収体B1よりも格段に大きくなる。このため、第2衝撃吸収体B2は、第1衝撃吸収体B1よりも圧縮強度が低い第2の材料で製造される。第2衝撃吸収体B2に木材を用いる場合、第1衝撃吸収体B1よりも軟質の、例えばレッドセダー(米杉)やバルサ、桐等を用いる。
第3衝撃吸収体B3は、キャスク1が垂直落下若しくは垂直衝突したときの主に衝撃を吸収し、一次蓋3及び二次蓋4(図1参照)へ伝達される衝撃力を十分に緩和する。一次蓋3及び二次蓋4と胴本体1b(図1参照)との間には、ガスケットが介在してキャスク1の密封を維持するが、キャスク1の垂直落下等によってこの密封が破壊されないように、第3衝撃吸収体B3によって落下等の衝撃を十分に緩和する。このため、第3衝撃吸収体B3は、第2衝撃吸収体B2よりも圧縮強度が低い第3の材料で製造される。これによって、一次蓋3及び二次蓋4に第3衝撃吸収体B3が衝撃を吸収する際の反力が過度に作用しないように、かつ、キャスクの落下時に蓋部が開かないように適度の反力が一次蓋3及び二次蓋4に作用するように選定・設計される。木材を用いる場合、例えばバルサや桐を用いる。このように、本実施形態では、第1の材料の圧縮強度>第2の材料の圧縮強度>第3の材料の圧縮強度となる。次に、各衝撃吸収体について説明する。
まず、第3の材料で構成される衝撃吸収体について説明する。上述したように、第3衝撃吸収体B3が第3の材料で構成される。図6に示すように、第3衝撃吸収体B3は、緩衝体中心軸Z1方向であって衝撃荷重入力側、すなわち緩衝体中心軸Z1方向であって開口部6oの反対側に配置される。第3衝撃吸収体B3は、緩衝体中心軸Z1の周囲に配置される。例えば、第3衝撃吸収体B3は、繊維の方向が緩衝体中心軸Z1と直交するように配置される。また、第3衝撃吸収体B3は、例えば、いずれも扇形形状とした第3衝撃吸収ブロック12を複数組み合わせて構成できる。
キャスク1が垂直落下あるいは垂直衝突した場合には、その衝撃荷重が第3衝撃吸収体B3へ入力する。この衝撃荷重は、第3衝撃吸収体B3が衝撃荷重の入力方向へ圧潰することによって吸収される。これによって、キャスク1の胴本体1bと一次蓋3及び胴本体1bと二次蓋4との間の密封を維持する。
次に、第2の材料で構成される衝撃吸収体について説明する。上述したように、第2衝撃吸収体B2が第2の材料で構成される。図6に示すように、第2衝撃吸収体B2は、緩衝体中心軸Z1に垂直な断面で見た場合、第3衝撃吸収体B3の周囲であって、開口部6oの反対側からの荷重入力側、すなわち緩衝体中心軸Z1方向であって開口部6oの反対側に配置される。
第2衝撃吸収体B2は、複数の第2衝撃吸収ブロック11を環状に組み合わせて構成される。第2衝撃吸収ブロック11は、例えば木板を重ね合わせて作られる。第2衝撃吸収体B2は、例えば、繊維の方向が緩衝体中心軸Z1と直交するように配置される。そして、キャスク1が斜め落下あるいは斜め衝突した場合には、衝撃荷重が第2衝撃吸収体B2へ入力する。この衝撃荷重は、第2衝撃吸収体B2が圧潰することによって吸収される。
続いて、第1の材料で構成される衝撃吸収体について説明する。上述したように、第1衝撃吸収体B1が第1の材料で構成される。図6、図8に示すように、第1衝撃吸収体B1は、緩衝体中心軸Z1方向であって、緩衝体6がキャスクと嵌り合う開口部6o側に配置される。また、第1衝撃吸収体B1は、図6、図7に示すように、緩衝体6の開口部6o側から見た場合、緩衝体中心軸Z1の周囲であって、前記緩衝体6の最外周に配置される。すなわち、第1衝撃吸収体B1は、キャスク1の胴本体1b側に、より具体的には胴本体の周囲に配置される。これによって、第1衝撃吸収体B1が、キャスク1の端部1tと重なり合うように配置される。このように第1衝撃吸収体B1を配置することにより、キャスク1が水平落下あるいは水平衝突した場合の衝撃を第1衝撃吸収体B1によって吸収する。図6では、第1衝撃吸収体B1が、キャスクと嵌り合う範囲である1tを越えているが、これは、緩衝体補強リングにより、キャスクと嵌り合うとみなせる構造上の範囲を拡大する構造物により、第1衝撃吸収体B1の領域を拡大して、第1衝撃吸収体B1に求められる圧縮強度を容易に入手できる木の種類から選択できるようにしたものである。
図8に示すように、第1衝撃吸収体B1は、複数の第1衝撃吸収ブロック10A、10Bを環状に組み合わせて構成される。第1衝撃吸収ブロック10A、10Bは、複数の木板を重ね合わせて(積層して)接着して作られる。図6、図7に示すように、第1衝撃吸収体B1は、繊維の方向が緩衝体中心軸Z1と直交するように配置される。キャスク1が水平落下あるいは水平衝突した場合には、第1衝撃吸収体B1の繊維の方向に対して平行に衝撃荷重が入力する。この衝撃荷重は、第1衝撃吸収体B1が繊維の方向に対して平行方向に圧潰することによって吸収される。ここで、一般的に、木材の木目方向の圧縮強度は高く、木目と直角方向は木目方向よりも圧縮強度が低い。
キャスク1が水平落下あるいは水平衝突する場合、そのときの衝撃荷重は、図6、図7に示す緩衝体中心軸Z1に対して直交する方向から入力される。この場合、図6、図7から明らかなように、衝撃吸収に寄与できる第1衝撃吸収体B1は、キャスク1の端部1tの周囲に環状に配置される第1衝撃吸収体B1の一部であることが分かる。したがって、第1衝撃吸収体B1は、すべての衝撃吸収体の中で最も圧縮強度の高い第1の材料で構成されるとともに、繊維の方向が衝撃荷重の入力方向と略平行になるように配置される。これによって、キャスク1が水平落下あるいは水平衝突した場合に、一部の第1衝撃吸収体B1で衝撃荷重を十分に吸収できるようになっている。
図9は、本実施形態に係る緩衝体を構成する第1衝撃吸収体を示す斜視図である。図10は、本実施形態に係る緩衝体を構成する第1衝撃吸収体を示す一部拡大図である。ここで、図9は、図6のB1の領域に配置される第1衝撃吸収ブロック10A、10Bの木板の積層状態を表現している。図10は、図9の一部を拡大したものである。また、図11−1、図11−2は、第1衝撃吸収体を構成する衝撃吸収ブロックの構造を示す分解図である。図12は、本実施形態に係る緩衝体を構成する第1衝撃吸収体に衝撃荷重が作用したときの挙動を説明する模式図である。これらの図において、両端に矢印が付された線分、あるいはXで示される両端に矢印が付された線分が、木目の方向である。
本実施形態に係る緩衝体6において、第1衝撃吸収体B1を構成する衝撃吸収ブロック10A、10Bは、図7、図10〜図12に示すように、木板の木目の方向が揃えられる(木板の木目の方向が略平行になるように配置される)。そして、衝撃吸収ブロック10A、10Bは、衝撃吸収ブロック10Aの木板の積層方向と、衝撃吸収ブロック10Bの木板の積層方向とが互いに異なる(直交する)ように組み合わされる。これによって、キャスク1が水平落下あるいは水平衝突した場合に第1衝撃吸収体B1へ入力される衝撃荷重Fによって、衝撃吸収ブロック10A、10Bを構成するそれぞれの木板が受ける負荷を略同等にするとともに、前記木板が圧潰(座屈)する挙動を制限して、より大きい荷重に耐えられるようにする。
図11−1に示すように、衝撃吸収ブロック10Aは、木板20を、それぞれの板面20P同士を接着剤等で接着し、複数の木板20を積層することで構成される。図11−2に示すように、衝撃吸収ブロック10Bは、木板21を、それぞれの板面21P同士を接着剤等で接着し、複数の木板21を積層することで構成される。木板20、21の板厚を薄くし過ぎると、接着剤の影響が大きくなり、木材としての強度特性が得られにくくなる。一方、木板20、21の板厚を厚くし過ぎると、乾燥させにくくなり、含水率が不均一となって強度のバラツキが大きくなる。このため、木板20、21の板厚は、例えば、20mm〜100mm程度である。
このようにして構成された衝撃吸収ブロック10Aと衝撃吸収ブロック10Bとは、図9、図10に示すように、木板20、21の木目の方向を揃えるとともに、木板20、21の積層方向が互いに異なるように組み合わされる。本実施形態では、衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20の積層方向と、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21とが互いに直交するように組み合わされる。ここで、木板20、21の積層方向とは、図11−1、図11−2に示す木板20、21の板面20P、21Pと直交する方向である。
図9、図12に示すように、衝撃荷重Fが第1衝撃吸収体B1に作用すると、衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20は、第1衝撃吸収体B1の周方向(図12の矢印C方向)に向かって倒れようとする。木板20同士の接着力が保持されている場合には、木板20同士は剥離せず、衝撃吸収ブロック10Aのうち、衝撃荷重Fにより座屈した部分以外は元の形状を保つが、緩衝体6の使用環境における温度によっては、木板20同士を接着する接着剤の接着強度が低下することがある。すると、衝撃荷重Fによって衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20同士が座屈した部分以外でも剥離してしまい、木板20同士が剥離しない場合よりも小さい衝撃荷重Fで木板20の座屈が発生したり、木板20が倒れたりする現象が発生する。緩衝体6は、衝撃吸収ブロック10Aを衝撃吸収ブロック10Aの外周面から衝撃吸収ブロック10Aの内周面までの領域を外周面から逐次圧潰させることにより衝撃荷重Fを吸収するものなので、木板20の座屈等が衝撃吸収ブロック10Aの外周面から衝撃吸収ブロック10Aの内周面までの一部で急激に発生すると、衝撃吸収ブロック10Aの圧縮強度が低下してしまい、衝撃荷重Fを十分に吸収できないおそれがある。
本実施形態では、衝撃吸収ブロック10A、10Bの木目の方向を揃え、かつ衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20の積層方向と、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の積層方向とが互いに異なるように、より具体的には互いに直交するように組み合わせて、第1衝撃吸収体B1を構成する。その結果、第1衝撃吸収体B1を構成する衝撃吸収ブロック10Aは、衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20の積層方向(第1衝撃吸収体B1の周方向と略平行)側に、木板21の積層方向が異なる衝撃吸収ブロック10Bが配置される。これによって、衝撃吸収ブロック10Aは、衝撃吸収ブロック10Bに挟まれる。
第1衝撃吸収体B1へ衝撃荷重Fが入力された場合、衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20は、木板20の積層方向に向かって倒れようとして、剥離や座屈等が発生する。前記剥離や前記座屈によって衝撃吸収ブロック10Aがずれる方向は、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の板面21Pと略平行な方向である。すなわち、衝撃吸収ブロック10Aのずれに起因して発生する力が衝撃吸収ブロック10Bへ入力される方向は、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の積層方向とは直交する方向なので、衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20の接着が剥がれることによるずれが、衝撃吸収ブロック10Bで支持される。これによって衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20のずれを抑制できる。
このため、衝撃吸収ブロック10Bが衝撃吸収ブロック10Aのずれに起因して発生する力を受けても、これによって木板21の剥離や衝撃吸収ブロック10Bのずれは発生せず、衝撃吸収ブロック10Bは元(衝撃荷重Fが作用する前)の形状を維持する。その結果、衝撃吸収ブロック10Aのずれが抑制できるので、それぞれの木板20に同程度の負荷を担わせることができる。これによって、木板20の衝撃吸収ブロック10Aの外周面から衝撃吸収ブロック10Aの内周面までの一部での座屈等の急激な発生を抑制して、衝撃吸収ブロック10Aを衝撃吸収ブロック10Aの外周面から衝撃吸収ブロック10Aの内周面までの領域を外周面から逐次圧潰させることができる。
ここで、衝撃吸収ブロック10Bには、衝撃荷重Fによって衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の積層方向に向かう力が作用する。この力は、図5−2、図6に示す緩衝体中心軸Z1と略平行な方向の力である。ここで、衝撃吸収ブロック10Bの緩衝体中心軸Z1と平行な方向側には、図5−2に示す緩衝体6の外板6w及び図6に示す第2衝撃吸収体B2が配置される。衝撃吸収ブロック10Bに作用する木板21の積層方向に向かう力は、外板6w及び第2衝撃吸収体B2が受けるので、衝撃吸収ブロック10Bのずれが抑制される。これによって、それぞれの木板21に同程度の負荷を担わせることができる。その結果、衝撃吸収ブロック10Bにおいても、木板21の衝撃吸収ブロック10Bの外周面から衝撃吸収ブロック10Bの内周面までの一部での座屈等の急激な発生を抑制して、衝撃吸収ブロック10Bを衝撃吸収ブロックの外周面から衝撃吸収ブロックの内周面までの略全体を外周面から逐次圧潰させることができる。ここで、第1衝撃吸収体B1の周方向における衝撃吸収ブロック10Aの寸法は、第1衝撃吸収体B1の周方向における衝撃吸収ブロック10Bの寸法と同じ、又は大きくすることが好ましい。
これらの作用により、第1衝撃吸収体B1に衝撃荷重Fが入力された場合には、衝撃吸収ブロック10A、10Bを構成する木板20、21の座屈や剥離を抑制して、衝撃吸収ブロック10A、10Bのずれが抑制される。その結果、衝撃荷重Fが第1衝撃吸収体B1へ入力された場合には、衝撃吸収ブロック10A、10Bを衝撃吸収ブロックの外周面から衝撃吸収ブロックの内周面までの領域を外周面から逐次圧潰させることができるので、緩衝体6の使用環境の温度が変化した場合であっても、第1衝撃吸収体B1の衝撃荷重Fの吸収機能を十分かつ安定して発揮させることができる。
上述したように、本実施形態では、衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20の積層方向と、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の積層方向とが互いに直交するように構成する。これによって、衝撃吸収ブロック10Aのずれによって発生する力は、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21が受け止めて木板20の変形を抑制できるので、この抑制力により、木板20は荷重に伴う変形を抑制することができる。その結果、衝撃吸収ブロック10Aのずれによって発生する力による衝撃吸収ブロック10Bのずれは、木板21は積層方向が、衝撃吸収ブロック10Aのずれによって発生する力の作用する方向とは直交しているので、木板21の積層面には衝撃吸収ブロック10Aのずれによって発生する力によるずれはほとんど発生しない。そして、衝撃吸収ブロック10Aのずれによって発生する力の作用する方向に対しては、木板21は極めて厚い板と同様に、多少荷重が大きくても容易には変形しないので、衝撃吸収ブロック10Bによって衝撃吸収ブロック10Aのずれをより確実に抑制できる。ここで、直交には、第1衝撃吸収体B1の製造上における公差や、第1衝撃吸収体B1の製造上許容される誤差は含まれる。
上述したように、本実施形態では、衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20の積層方向と、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の積層方向とが互いに直交するように構成する。これによって、衝撃吸収ブロック10Aのずれによって発生する力は、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の積層方向にはほとんど作用しないようにすることができる。その結果、前記力による衝撃吸収ブロック10Bのずれはほとんど発生せず、衝撃吸収ブロック10Bによって衝撃吸収ブロック10Aのずれをより確実に抑制できる。ここで、直交には、第1衝撃吸収体B1の製造上における公差や、第1衝撃吸収体B1の製造上許容される誤差は含まれる。
なお、本実施形態では、衝撃吸収ブロック10Aを構成する木板20の積層方向と、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の積層方向とは、90度が最も望ましいが、必ずしも互いに直交していなくともよい。すなわち、木板20の積層方向と木板21の積層方向とのなす角度は、第1衝撃吸収体B1に要求される仕様に応じて、0よりも大きい所定の範囲で適宜設定されれば、それなりの効果は得られる。角度が90度以外の場合、木板20を変形させようとする力を正面から受けることにならないので、木板21の積層面をずらそうとする力は、角度が90度の構成よりも強く作用するようになるとともに、木板21の変形量は、角度が90度の構成よりも大きくなる。木板20の積層方向と木板21の積層方向とのなす角度を90度(直交する場合であり、公差、誤差は含む)以外の値とする場合、前記角度は、45度以上が好ましく、より好ましくは60度以上、さらには85度以上が望ましい。
また、第1衝撃吸収体B1のみならず、第2衝撃吸収体B2や第3衝撃吸収体B3も、第1衝撃吸収体B1のように、衝撃吸収ブロックを構成する木板の木目の方向を揃えるとともに、それぞれの衝撃吸収ブロックを、木板の積層方向が交互に直交するように組み合わせてもよい。これによって、第2衝撃吸収体B2や第3衝撃吸収体B3の衝撃吸収機能を安定して発揮させることができる。
(第1変形例)
図13−1〜図16は、本実施形態の緩衝体を構成する衝撃吸収ブロックの第1変形例を示す説明図である。本変形例の衝撃吸収ブロック10Aa、10Baは、上述した衝撃吸収ブロック10A、10Bと略同様であるが、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baを構成する木板20、21の積層方向に向かって木板20、21を貫通するずれ抑制材31、33が設けられる点が異なる。他の構成は、上述した衝撃吸収ブロック10A、10Bと同様である。
図13−1、図13−2に示すように、衝撃吸収ブロック10Aaには、これを構成するそれぞれの木板20の端部20tに溝(本変形例ではあり溝)30が形成される。そして、溝30の断面形状に合う外形状のずれ抑制材31をはめ込んで取り付ける。溝30は、木板20の端部20tのうち少なくとも一つに形成する。溝30はあり溝(溝30の長手方向に直交する断面形状が台形であり、短辺が開口する)なので、ずれ抑制材31は、長手方向に垂直な断面形状が台形形状となる。なお、このときに、ずれ抑制材31と木板20とを接着してもよい。なお、木板20の端部20tと、木板20の端部20t側におけるずれ抑制材31の外面31Pとは、極力面一、すなわち同一面となるようにする。
また、図14−1、図14−2に示すように、衝撃吸収ブロック10Baには、これを構成するそれぞれの木板21の端部21tに溝(本変形例ではあり溝)32が形成される。そして、溝32の断面形状に合う外形状のずれ抑制材33をはめ込んで取り付ける。このときには、ずれ抑制材31と木板21とを接着してもよい。なお、溝32は、木板21の端部21tのうち少なくとも一つに形成する。溝32はあり溝なので、ずれ抑制材33は、長手方向に垂直な断面形状が台形形状となる。なお、木板21の端部21tと、木板21の端部21t側におけるずれ抑制材33の外面33Pとは、極力面一、すなわち極力同一面となるようにする。
このような構成により、衝撃荷重が衝撃吸収ブロック10Aa、10Baに入力された場合に、木板20、21が倒れようとする動きが変位抑制材31、33と木板20、21との間の摩擦抵抗及び衝撃吸収ブロック10Aa、10Baを構成する木板20、21が変位しようとする際に、木板20、21と変位抑制材は合わせ面に互いに相反する変形を受けるので、接触面は単純な平面ではなくなる。その結果、変形した合わせ面を破壊しないと木板20、21が変位できないので、木材20、21の接着剤のみでは得られない強い変位抑制効果を得ることができる。さらに、変位抑制材31、33のこの抑制効果によって、木板20、21の剥離や倒れが抑制されるので、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baのずれやこれに起因する変形が抑制できる。
ここで、ずれ抑制材31、33は、非金属を用い、木材を用いることが好ましい。衝撃吸収ブロック10Aa、10Baは、それぞれ複数の木板20、21で構成される。木材は金属と比較すると相対的に軟らかいので、例えば、ずれ抑制材31、33に金属のボルト及びナットを用いて両者の締結力で複数の木板20、21を拘束すると、衝撃荷重が作用した場合には、締結部分において木板20、21の座屈等が発生するおそれがある。また、金属のずれ抑制材を用いると、衝撃荷重が衝撃吸収ブロック10Aa、10Baに作用した場合には、ずれ抑制材31、33が木板20、21に食い込んで、木板20、21の拘束力が低減するおそれもある。その結果、ずれ抑制材31、33による複数の木板20、21の拘束力が失われ、緩衝体6の衝撃吸収機能が十分に発揮できないおそれがある。
したがって、ずれ抑制材31、33は、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baと同じ樹種(木材)を用いてもよいが、さらに、ずれ抑制材31、33の硬度を、木材の異方性を前提に、前記衝撃吸収ブロックの繊維の方向に対して平行方向(強軸方向)に近い強度を弱軸方向(繊維の方向に対して直交方向)に有する高強度な木材を使用すると、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baを構成する木板20、21が変位しようとする際に、木板20、21とずれ抑制材31、33は合わせ面に互いに相反する変形を受ける。これによって、接触面は単純な平面ではなくなり、変形した合わせ面を破壊しないと木板が変位できない合わせ面が生成されるが、金属と木材のように硬度に大差があると、硬度の高い部材は変形しないため、変形した合わせ面は生成されない。このような観点から、ずれ抑制材31、33には、木材を用いることが好ましい。この場合、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baを構成する木板20、21とずれ抑制材31、33とは同種の材料を用いることが好ましい。あるいは、ずれ抑制材31、33の木目に垂直な方向の強度が、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baの木目に垂直な方向の圧縮強度と木目に平行な方向の圧縮強度との範囲であることが望ましい。これによって、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baを構成する木板20、21とずれ抑制材31、33との硬度差が小さい状態で、かつ、ずれ抑制材31、33の曲げ剛性が高い状態で木板20、21のずれを抑制できる。その結果、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baを構成する木板20、21のずれや、これに起因する衝撃吸収ブロック10Aa、10Baの変形をより効果的に抑制できる。
ずれ抑制材31、33に木材を用いる場合、ずれ抑制材31、33の木目の方向を、木板20、21の木目の方向と交差、より好ましくは直交させることが好ましい。これによって、ずれ抑制材31、33の曲げ剛性が高い状態で用いることができるので、木板20、21のずれをより効果的に抑制できる。ここで、図13−1〜図15のYで示される両端に矢印が付された線分が、ずれ抑制材31、33等の木目の方向である(以下の例でも同様)。ずれ抑制材31、33に木材以外の非金属を用いる場合、例えば、CFRP(Carbone Fiber Reinforced Plastics)やGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)等のFRP(Fiber Reinforced Plastics)を用いることができる。
図10に示す衝撃吸収ブロック10Aは、衝撃吸収ブロック10Bによって木板20のずれが抑制されるが、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21は、木板20のようには周方向には積層していないので、周方向の剥離はないものの、木板21は、緩衝体中心軸Z1と平行な方向に積層しており、木板21は緩衝体中心軸Z1と平行な方向に向かって倒れようとして、剥離や座屈等が発生するおそれがある。第2衝撃吸収体B2が配置されているにしても、第2衝撃吸収体B2は、第2衝撃吸収体B1を構成する木板21よりも軟質の樹種(木材)を選定しており、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21の相互のズレを衝撃吸収ブロック10Bのみでも変位を小さくする必要がある。
図15−1に示すように、ずれ抑制材33を取り付けた衝撃吸収ブロック10Baと、ずれ抑制材を取り付けていない衝撃吸収ブロック10Aとを組み合わせることにより、衝撃吸収ブロック10Baを構成する木板21のずれを抑制する。また、図15−2に示すように、ずれ抑制材33を取り付けた衝撃吸収ブロック10Baと、ずれ抑制材31を取り付けた衝撃吸収ブロック10Aaとを組み合わせてもよい。これによって、衝撃吸収ブロック10Aa、10Baを構成する木板20、21のずれをより効果的に抑制できる。
木板21は、これを変位抑制材により抑制するので、ずれ抑制材33の使用量は木板20よりも多くしてもよい。木板21はこの変位抑制材により前記剥離や前記座屈によって衝撃吸収ブロック10Bがずれる方向の変位を抑制できる。これによって、木板21の衝撃吸収ブロック10Bの外周面から衝撃吸収ブロック10Bの内周面までの一部での座屈等の急激な発生を抑制して、衝撃吸収ブロック10Bを衝撃吸収ブロック10Aの外周面から衝撃吸収ブロック10Aの内周面までの領域を外周面から逐次圧潰させることができる。
なお、本変形例に係る衝撃吸収ブロック10Aa、10Baに設けられる溝30、32は、あり溝に限定されるものではない。例えば、図16に示す衝撃吸収ブロック10Aaのように、溝30’の長手方向に直交する断面形状を矩形とし、ずれ抑制材31’の長手方向に直交する断面形状を矩形としてもよい。このようにすれば、溝30’の形成やずれ抑制材31’の製造が容易になる。なお、衝撃吸収ブロック10Aaについても同様である。
(第2変形例)
図17−1〜図22−2は、本実施形態の緩衝体を構成する衝撃吸収ブロックの第2変形例を示す説明図である。本変形例の衝撃吸収ブロック10Ab、10Bb、10Ac、10Bcは、第1変形例に係る衝撃吸収ブロック10Aa、10Baと略同様であるが、衝撃吸収ブロック10Ab、10Bb、10Ac、10Bcの内部にも、木板20、21の積層方向に向かって木板20、21を貫通するずれ抑制材35、37、39、41が設ける点が異なる。他の構成は、第1変形例に係る衝撃吸収ブロック10Aa、10Baと同様である。
図17−1、図17−2に示すように、衝撃吸収ブロック10Abには、これを構成するそれぞれの木板20を貫通する貫通孔34が形成される。貫通孔34は、複数でもよいし単数でもよい。そして、貫通孔34の断面形状に合う外形状のずれ抑制材35を貫通孔34にはめ込んで取り付ける。なお、このときには、ずれ抑制材35と木板20とを接着してもよい。貫通孔34の長手方向に垂直な断面形状は円形なので、ずれ抑制材35は、長手方向に垂直な断面形状が円形となる。
また、図18−1、図18−2に示すように、衝撃吸収ブロック10Bbには、これを構成するそれぞれの木板21を貫通する貫通孔36が形成される。貫通孔36は複数でもよいし、単数でもよい。そして、貫通孔36の断面形状に合う外形状のずれ抑制材37を貫通孔36にはめ込んで取り付ける。なお、このときには、ずれ抑制材37と木板21とを接着してもよい。貫通孔36の長手方向に垂直な断面形状は円形なので、ずれ抑制材37は、長手方向に垂直な断面形状が円形となる。
このような構成により、衝撃荷重が衝撃吸収ブロック10Ab、10Bbに入力された場合に、木板20、21が倒れようとする動きがずれ抑制材35、37と木板20、21との間の摩擦抵抗及びずれ抑制材35、37の曲げ剛性や、変形した合わせ面が生成されることによって拘束される。これによって、木板20、21の剥離や倒れが抑制されるので、衝撃吸収ブロック10Ab、10Bbのずれやこれに起因する変形が抑制できる。本変形例では、ずれ抑制材35、37を衝撃吸収ブロック10Ab、10Bbの内部に設けるので、ずれ抑制材35、37のずれや脱落のおそれはほとんどない。その結果、衝撃吸収ブロック10Ab、10Bbを構成する木板20、21のずれや、これに起因する衝撃吸収ブロック10Ab、10Bb変形をより効果的に抑制できる。
なお、ずれ抑制材35、37の材料や、ずれ抑制材35、37に木材を用いる場合における木目の方向については、上述した第1変形例と同様である。また、本変形例に係る衝撃吸収ブロック10Ab、10Bbに設けられる貫通孔34、36の長手方向に垂直な断面形状やずれ抑制材35、37の長手方向に垂直な断面形状は円形に限定されるものではない。例えば、これらを矩形としてもよい。
図10に示す衝撃吸収ブロック10Aは、衝撃吸収ブロック10Bによって木板20のずれが抑制されるが、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21のずれを抑制する必要がある。図19−1に示すように、ずれ抑制材37を取り付けた衝撃吸収ブロック10Baと、ずれ抑制材を取り付けていない衝撃吸収ブロック10Aとを組み合わせることにより、衝撃吸収ブロック10Bbを構成する木板21のずれを抑制する。これによって、ずれ抑制材の使用量を抑制できる。また、図19−2に示すように、ずれ抑制材37を取り付けた衝撃吸収ブロック10Bbと、ずれ抑制材35を取り付けた衝撃吸収ブロック10Abとを組み合わせてもよい。これによって、衝撃吸収ブロック10Ab、10Bbを構成する木板20、21のずれをより効果的に抑制できる。
図20−1、図20−2に示す衝撃吸収ブロック10Acには、これを構成するそれぞれの木板20の端部20tに溝38aが形成される。そして、溝38aの断面形状に合う外形状のずれ抑制材39をはめ込んで取り付ける。溝38aは、木板20の端部20tのうち少なくとも一つに設ける。また、衝撃吸収ブロック10Acには、これを構成するそれぞれの木板20を貫通する貫通孔38bが形成される。貫通孔38bは、複数でもよいし単数でもよい。そして、貫通孔38bの断面形状に合う外形状のずれ抑制材39を貫通孔38bにはめ込んで取り付ける。溝38a及び貫通孔38bは、長手方向に直交する断面形状が矩形なので、ずれ抑制材39も、長手方向に垂直な断面形状が矩形となる。なお、ずれ抑制材39と木板20とを接着してもよい。
また、図21−1、図21−2に示す衝撃吸収ブロック10Bcには、これを構成するそれぞれの木板21の端部21tに溝40aが形成される。そして、溝40aの断面形状に合う外形状のずれ抑制材41をはめ込んで取り付ける。溝40aは、木板21の端部21tのうち少なくとも一つに設ける。また、衝撃吸収ブロック10Bcには、これを構成するそれぞれの木板21を貫通する貫通孔40bが形成される。貫通孔40bは、複数でもよいし単数でもよい。そして、貫通孔40bの断面形状に合う外形状のずれ抑制材41を貫通孔40bにはめ込んで取り付ける。溝40a及び貫通孔40bは、長手方向に直交する断面形状が矩形なので、ずれ抑制材41も、長手方向に垂直な断面形状が矩形となる。なお、ずれ抑制材41と木板21とを接着してもよい。
このような構成により、衝撃荷重が衝撃吸収ブロック10Ac、10Bcに入力された場合に、木板20、21が倒れようとする動きがずれ抑制材39、41と木板20、21との間の摩擦抵抗及びずれ抑制材39、41の曲げ剛性や、変形した合わせ面が生成されることによって拘束される。これによって、木板20、21の剥離や倒れが抑制されるので、衝撃吸収ブロック10Ac、10Bcのずれやこれに起因する変形が抑制できる。
図10に示す衝撃吸収ブロック10Aは、衝撃吸収ブロック10Bによって木板20のずれが抑制されるが、衝撃吸収ブロック10Bを構成する木板21のずれを抑制する必要がある。図22−1に示すように、ずれ抑制材41を取り付けた衝撃吸収ブロック10Bcと、ずれ抑制材を取り付けていない衝撃吸収ブロック10Aとを組み合わせることにより、衝撃吸収ブロック10Bcを構成する木板21のずれを抑制する。これによって、ずれ抑制材の使用量を抑制できる。また、図22−2に示すように、ずれ抑制材41を取り付けた衝撃吸収ブロック10Bcと、ずれ抑制材39を取り付けた衝撃吸収ブロック10Acとを組み合わせてもよい。これによって、衝撃吸収ブロック10Ac、10Bcを構成する木板20、21のずれをより効果的に抑制できる。
(第3変形例)
図23−1〜図25は、本実施形態の緩衝体を構成する衝撃吸収ブロックの第3変形例を示す説明図である。本変形例の衝撃吸収ブロック10Ad、10Bdは、衝撃吸収ブロック10Adの端部に配置される木板20の板面20Pに凹部46を形成し、衝撃吸収ブロック10Bdを構成する一部の木板21の端部21tに凹部46と嵌め合わされる凸部47を形成する点に特徴がある。
このような構成により、衝撃荷重が衝撃吸収ブロック10Ad、10Bdに入力された場合に、衝撃吸収ブロック10Adを構成する木板20のずれによって発生する力を衝撃吸収ブロック10Bdを構成する木板21で受け止めて木板20の変形を抑制するとともに、衝撃吸収ブロック10Bdを構成する木板21の緩衝体中心軸Z1と平行な方向に向かって発生するずれを前記木板20の板面20Pに設けられた凹部により抑制できるので、衝撃吸収ブロック10Adの変形にともなって生じる力を衝撃吸収ブロック10Bdで抑制できる。
(第4変形例)
図26−1は、本実施形態の緩衝体を構成する衝撃吸収ブロックの第4変形例を示す説明図である。図26−2は、本実施形態の第4変形例に係る衝撃吸収ブロックを製造するための積層材を示す斜視図である。図27は、本実施形態の緩衝体を構成する衝撃吸収ブロックの第4変形例を示す説明図である。本変形例に係る衝撃吸収ブロック10Ae、10Beは、木板20、21の積層面を所定の角度(本実施形態では45度)傾斜させて構成される。所定の角度は、30度以上60度以下が好ましく、より好適には40度以上50度以下である。
図26−2に示すように、木板20、21の積層面を約45度傾斜させて積層し、接着した積層材から、衝撃吸収ブロック10Ae、10Beを切り出す。そして、図27に示すように、衝撃吸収ブロック10Ae、10Beを組み合わせる。これによって、衝撃吸収ブロック10Ae、10Beを構成する木板20、21のずれが、衝撃吸収ブロック10Ae、10Be同士で互いに抑制される。その結果、衝撃荷重が衝撃吸収ブロック10Ae、10Beに入力された場合に、衝撃吸収ブロック10Aeを構成する木板20のずれ、及びと衝撃吸収ブロック10Beを構成する木板21のずれを抑制できるので、衝撃吸収ブロック10Adの変形にともなって生じる力を衝撃吸収ブロック10Bdで抑制できる。さらに、前記衝撃吸収ブロック10Ae,10Beの木板の積層方向に向かって貫通するようにずれ抑制材を配置してもよい。
以上、本実施形態に係るキャスク用緩衝体は、木板の木目の方向を揃えて複数の木板を積層して衝撃吸収ブロックを構成し、複数の衝撃吸収ブロックを組み合わせて構成される。複数の衝撃吸収ブロックを組み合わせるにあたっては、それぞれの衝撃吸収ブロックを構成する木板の木目の方向を揃えるとともに、それぞれの衝撃吸収ブロックは、木板の積層方向が互いに異なるように組み合わせされる。これによって、衝撃荷重が作用することによって発生する衝撃吸収ブロックの木板を剥離させようとする力を、前記衝撃吸収ブロックの両側に配置される、木板の積層方向が異なる衝撃吸収ブロックが受けるので、衝撃吸収ブロックを構成する木板のずれが抑制できる。その結果、衝撃吸収ブロックが座屈する際の座屈の挙動を制限して、衝撃吸収ブロックを衝撃吸収ブロックの外周面から衝撃吸収ブロックの内周面までの領域を外周面から逐次圧潰させることができるので、緩衝体による衝撃荷重の吸収機能を十分に、かつ安定して発揮させることができる。特に、衝撃吸収ブロックを構成する木板の接着強度が低下するような環境(高温あるいは低温)で緩衝体が使用された場合でも、衝撃吸収ブロックが座屈する際の座屈の挙動を制限して、緩衝体による衝撃荷重の吸収機能を十分に、かつ安定して発揮させることができる。
また、本実施形態の変形例に係るキャスク用緩衝体は、衝撃吸収ブロックを構成する木板の積層方向に向かって、木板を貫通するずれ抑制材が設けられる。これによって、衝撃荷重が衝撃吸収ブロックに入力された場合に、木板が倒れようとする動きや木板同士を剥離させようとする力が、ずれ抑制材と木板との間の摩擦抵抗及びずれ抑制材の曲げ剛性や、変形した合わせ面が生成されることによって変位が制限される。その結果、木板の剥離や倒れが抑制されるので、衝撃吸収ブロックのずれやこれに起因する変形をさらに効果的に抑制して、緩衝体による衝撃荷重の吸収機能をさらに有効に、かつ安定して発揮させることができる。