JP2004294191A - キャスク用緩衝構造体 - Google Patents

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信一 望月
Koichi Yamamoto
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Abstract

【課題】キャスク用緩衝構造体において、衝撃エネルギーを吸収する許容変形量が大きくとれる構造を提供すること。
【解決手段】円環状緩衝構造体11は、硬質木材21と軟質木材22とを組み合わせた環状体部分が金属被覆板23で被覆され、キャスク2の端面に装着される側には、キャスク端部の形状に合わせた金属板24が取りつけられてドーナツ型に構成されている。硬質木材21に張り出し部25を形成し、その先端部を金属板24に起立して設けたストッパ26に当接させている。また、金属板24にはキャスク径方向にフランジ部27が形成され、フランジ部27で木質環状体にねじ28により固定されている。本発明によれば、硬質木材の環状張り出し部によって、大きな衝撃エネルギーを吸収する構造が得られる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はキャスク用緩衝構造体に係り、特に、使用済核燃料集合体を収納して運搬するキャスク用に好適な衝撃加速度の低い木材緩衝体の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
使用済核燃料集合体を収納して運搬ないし貯蔵するキャスクには、運搬時や取扱時に生じると想定される落下事故あるいは衝突事故などによって受ける衝撃をやわらげるため、円筒状キャスクの両端部をそれぞれ覆うように、キャップ状もしくは円環状の木材緩衝体が装着される。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
この緩衝体は、一例として、硬い木材(ファープライウッド、レッドウッド、オーク材等、以下では、高圧縮応力低許容変形木材、または、単に硬質木材ともいう。)と、軟らかい木材(バルサ材等、以下では、低圧縮応力高許容変形木材、または、単に軟質木材ともいう。)とを組み合わせ、その外側を炭素鋼またはステンレス鋼の被覆板で被覆した構造を有している。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−83291号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に記載されたものは、キャスク両端部をそれぞれ全面的に被覆するキャップ状のもので、高価な高性能木材を多量に使用し、また、重量も重くなる構造であった。
【0006】
また、従来の円環状の木材緩衝体は、硬質木材と軟質木材の配置や組み合わせに対する制限があり、木材のもつ高性能な緩衝能力を十分に発揮させるものではなかった。すなわち、各方向から衝撃力を受けたときの硬質木材の変形量と軟質木材の変形量とのバランスに欠け、そのため、大きな衝撃加速度をキャスク本体が受ける結果となっていた。
【0007】
本発明の課題は、キャスク用緩衝構造体において、衝撃エネルギーを吸収する許容変形量が大きくとれる構造を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、使用済核燃料集合体を収容する円筒状キャスクの両端部にそれぞれ被冠され、木材を金属板で被覆してなる円環状の緩衝構造体であって、前記緩衝構造体は、前記キャスクの端部外周に被着される第1の筒状部と、該第1の筒状部と同一の内外径を有し、該第1の筒状部に連接させてキャスクの外方に延在されてなる第2の筒状部と、該第2の筒状部に内接され、外側端面が該第2の筒状部の外側端面と面一に設置される第3の筒状部とを有し、前記第1の筒状部と前記第2の筒状部の界面が、キャスク端面に設置される前記金属板と面一にされ、該金属板と前記第3の筒状部との間に、前記第2の筒状部の下端部内面を張り出して環状張り出し部を配置し、該環状張り出し部の内周面に対応する位置に前記金属板から起立した環状のストッパを備え、前記第1および前記第3の筒状部に軟質木材を配置し、前記第2の筒状部および環状張り出し部に硬質木材を配置してなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、第1の筒状部に軟質木材、第2の筒状部に硬質木材を配置し、硬質木材に形成した張り出し部を、キャスク端面を被覆する金属板上を摺動可能としたので、キャスク径方向の荷重に対して硬質木材の変形量を大きくとることができ、第1の筒状部の軟質木材の変形量とバランスさせることができる。そのため、第1の筒状部および第2の筒状部の硬質木材と軟質木材の両方を有効に働かせて衝撃エネルギーを吸収できる。また、キャスク軸方向の荷重に対しても、硬質木材の張り出し部が、第3の筒状部の軟質木材に加わる荷重を支えるため、キャスク軸方向荷重に対する支持力が増強される。
【0010】
以上は、本発明の基本であるが、さらに、第2の筒状部は、硬質木材のみでなく、その一部を軟質木材に置き換えて、緩衝体の角部に配置することができる。これにより、キャスク軸方向および斜めからの荷重に対して、軟質木材量を増やすことにより、衝撃力増加を抑えることができる。また、第3の筒状部を、木目方向を変えた2つの軟質木材を組み合わせて構成することにより、広範囲からの衝撃力に対して対応できる緩衝体となる。
【0011】
また、ストッパは、緩衝構造体のキャスク端面側に取り付けた金属板から起立して設けることができ、第3の筒状部の内周面と面一の位置、もしくは、内周面の位置より緩衝体内部側に設置することができる。ストッパのキャスク径方向の位置を任意に設定することにより、硬質木材のキャスク径方向の長さを従来に比較して長くできるので、硬質木材の許容変形量が増え、その増加分だけ第1の筒状部の軟質木材の変形を有効に作用させることができる。そのため、キャスクに対する衝撃加速度を低減することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態の概要は、使用済核燃料集合体収納用キャスクに装着するために、緩衝用木材を金属板で被覆してドーナツ型に形成した緩衝構造体において、外周部の硬質木材をキャスク内径方向に張り出させてストッパに当接させ、ストッパまでの距離を長くしてキャスク端面側金属板上を摺動可能とすることにより硬質木材の許容変形量を増加させると共に、硬質木材および軟質木材それぞれの木目方向を配慮して組み合わせることにより、硬質木材および軟質木材の両者が共に変形可能にして緩衝能力を増加させ、かつ、多方向からの荷重に対しても衝撃力を吸収可能にしたものである。
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。まず、本発明の緩衝構造体が適用されるキャスクについて概略説明する。図1は金属キャスクの一例を示す断面図である。金属キャスク2の両端部には、本発明になる緩衝構造体11が装着さている。
【0014】
金属キャスク2は、円筒状の金属製外筒9内に、同じく円筒状の本体胴8と呼ばれる鉄(例えば、γ線遮蔽能力のある炭素鋼)製容器が設置され、さらに、本体胴8内に設置されている格子状のバスケット3に、使用済核燃料集合体1を、図1では左から右へ挿入して収納するようになっている。本体胴8と外筒9との間には中性子遮蔽材10が充填されている。
【0015】
図2は、本実施形態の円環状緩衝構造体11の軸方向断面図である。図では右側の環状体部分の断面は省略してある。緩衝構造体11は、硬質木材21と軟質木材22とを組み合わせた環状体部分が金属被覆板23(炭素鋼等)で被覆され、ドーナツ型に構成されている。キャスク2の端面に装着される側は、キャスク端部の形状に合わせた金属板24(炭素鋼等)が取りつけられている。
【0016】
本実施形態では、硬質木材21に張り出し部25を形成し、その先端部を金属板24に起立して設けたストッパ26に当接させている。また、金属板24にはキャスク径方向にフランジ部27が形成され、フランジ部27で木質環状体にねじ28により固定されている。
【0017】
円環状の中央部には、金属板24上には、例えば火災時の入熱防止用に断熱材12が装着されている。なお、本図では示していないが、金属板24には、例えばキャスク端面の貫通孔等に合わせた開口部を設けることができる。
【0018】
図3は、本実施形態の緩衝構造体の上面模式図である。硬質木材および軟質木材のそれぞれを扇形の木材ブロック30に形成し、これを放射状に配置して、金属被覆板23で被覆して環状を構成している。
【0019】
ここで、硬質木材および軟質木材の圧縮特性について、図4を参照して説明する。硬質木材にファープライウッドを用い、軟質木材にバルサ材を用いた場合の圧縮応力とひずみとの関係を、それぞれの木材の木目方向および木目垂直方向について調べた。
【0020】
図4に示すように、バルサ材のような軟質木材は、約0.7のボトミングひずみまで圧縮応力が一定で増加しないことがわかる。一方、ファープライウッドのような硬質木材は、約0.4〜0.6のボトミングひずみから圧縮応力が増加する。
【0021】
ファープライウッドなどの硬質木材は木材が密に詰まっているため、圧縮荷重が大きい一方、少ない圧縮変形量で圧縮荷重が増加する。軟質木材は木材があまり密に詰まっていないため、圧縮荷重が小さい一方、大きな圧縮変形量が確保できる。また、木目方向の圧縮応力が高く、木目垂直方向の圧縮方向が低い特性を有している。
【0022】
以下、硬質木材および軟質木材の組み合わせと、組み合わせた木材の木目方向を変えたいくつかの実施形態について図面を用いて説明する。基本的に緩衝構造体の木材部分を、例えば図5に示すように、第1の筒状部(領域Aともいう)、第2の筒状部(領域Bともいう)、第3の筒状部(領域Cともいう)の3つの部分に分けて説明する。また、図中の ⇔ は木目方向を示し、各木材の木目方向に沿って記載した実線は硬質木材、点線は軟質木材を示す。
【0023】
これらの実施形態に共通する点は、(1)領域Aには、軟質木材のみを、木目方向をキャスク径方向にして配置する。(2)領域Bには、硬質木材のみ、もしくは一部を軟質木材に置き換えて、必ず硬質木材が用いられ、この硬質木材の木目方向はキャスク径方向と一致させる。なお、領域Bの一部に軟質木材を用いる場合は、全てキャスク径方向に木目方向を配置する。(3)領域Cには、全て軟質木材を使用し、木目方向は任意に設定する。この場合、木目方向を変えて2つの軟質木材を配置する形態もある。
【0024】
さらに、各実施形態に共通する特徴として、(4)領域Bの硬質木材には金属板に接して張り出し部が形成され、先端部はストッパに当接しており、キャスク径方向の荷重を受けると、硬質木材は金属板24上を摺動してキャスク径方向に縮む変形が可能である。また、張り出し部が受けるキャスク軸方向の荷重は金属板により支持される。なお、領域Bの硬質木材と領域Aの軟質木材との接触面は金属板の表面と面一にしている。
【0025】
(1) 実施形態1(図5参照)、領域Bは木目径方向の硬質木材のみとし、領域Cは木目軸方向の軟質木材のみとする。ストッパ位置(張り出し部先端部)は環状体内周面に露出させる。領域Bの張り出し部25により、キャスク径方向の荷重に対し硬質木材の変形量が増加可能となり、衝撃エネルギーの吸収量が増加する。
【0026】
(2) 実施形態2(図6参照)、実施形態1の領域Bの角部領域b1を、木目径方向の軟質木材に置き換えて配置する。キャスク軸方向の荷重に対しLc寸法が短い場合は、ボトミングが生じることがあるため、Lc寸法に制限がある場合に領域b1を設けることにより、ボトミングが生じないようにすることができる。
【0027】
(3) 実施形態3(図7参照)、実施形態1の領域Cの軟質木材を木目周方向に配置する。実施形態1のキャスク軸方向荷重に対し衝撃加速度が大きい場合に、本配置により衝撃加速度を下げることができる。
【0028】
(4) 実施形態4(図8参照)、実施形態3の領域Bの角部領域b1を、木目径方向の軟質木材に置き換えて配置する。実施形態2と実施形態3の両者の作用効果が得られる。
【0029】
(5) 実施形態5(図9参照)、実施形態1の硬質木材張り出し長さを短くした配置。ストッパ位置も環状体内部になる。Lf寸法を調整することにより、キャスク径方向荷重に対する張り出し部のエネルギー吸収を調整し、そのバランスによりキャスク径方向および軸方向両方の衝撃加速度を抑えることができる。
【0030】
(6) 実施形態6(図10参照)、実施形態2の硬質木材張り出し長さを短くした配置。ストッパ位置も環状体内部になる。実施形態2に対して、実施形態5と同様に、キャスク径方向および軸方向両方の衝撃加速度を抑えることが可能となる。
【0031】
(7) 実施形態7(図11参照)、実施形態3の硬質木材張り出し長さを短くした配置。ストッパ位置も環状体内部になる。実施形態3に対して、実施形態5と同様に、キャスク径方向および軸方向両方の衝撃加速度を抑えることが可能となる。
【0032】
(8) 実施形態8(図12参照)、実施形態4の硬質木材張り出し長さを短くした配置。ストッパ位置も環状体内部になる。実施形態4に対して、実施形態5と同様に、キャスク径方向および軸方向両方の衝撃加速度を抑えることが可能となる。
【0033】
(9) 実施形態9(図13参照)、実施形態5の領域Cに、木目方向を変えた2つの軟質木材を配置。硬質木材に接する内部側領域c1に木目軸方向の軟質木材、外部側領域c2に木目周方向の軟質木材を配置し、両者の接触面はストッパの一面と面一にした。実施形態5において、キャスク軸方向荷重に対する衝撃加速度が大きい場合に、領域Cの一部を軟らかい方向の領域c2に変更することにより、衝撃加速度を抑えることができる。
【0034】
(10) 実施形態10(図14参照)、実施形態9の領域Bの角部領域b1を、木目径方向の軟質木材に置き換えて配置する。実施形態9において、キャスク軸方向荷重に対しボトミングが生じないようにすることができる。
【0035】
(11) 実施形態11(図15参照)、実施形態9の領域Cで、領域c1に木目周方向、領域c2に木目軸方向の軟質木材を配置する。実施形態5において、領域Cの一部を軟らかい方向の領域c2に変更することにより、衝撃加速度を抑えることができる。
【0036】
(12) 実施形態12(図16参照)、実施形態11の領域Bの角部領域b1を、木目径方向の軟質木材に置き換えて配置する。実施形態11において、実施形態2と同様に、キャスク軸方向の荷重に対しLc寸法が短い場合は、ボトミングが生じることがあるため、Lc寸法に制限がある場合に領域b1を設けることにより、ボトミングが生じないようにすることができる。
【0037】
そのほか、図面は省略しているが、実施形態1〜4で、領域Cに木目方向の異なる2つの軟質部材を組み合わせて配置する形態もある。領域Cの木目方向を変えることによって、キャスク軸方向荷重に対する変形量およびエネルギー吸収量のバランスを決定し、ボトミングが生じない範囲で効率よくエネルギーを吸収する配置とすることができる。
【0038】
次に、第2の筒状部の硬質木材張り出し部の張り出し長さについて、図5の実施形態と、図17の従来例とを参照して説明する。例えば、硬質木材の張り出し方向の全長さLfを、約1.4Lbとすることにより、硬質木材のキャスク径方向の荷重に対する許容変形量は、0.5Lf=0.5×1.4Lb=0.7Lb、まで増加してとれる構造となる。したがって、第1の筒状部の軟質木材および第2の筒状部の硬質木材の変形量が増加可能となり、衝撃エネルギーの吸収量が増加する。
【0039】
一方、図17に示す従来例では、軟質木材Aと硬質木材Bが同じ厚みLbとなり、許容変軽量は硬質木材Bのひずみ0.5に制約され、許容変形量は0.5Lbまでしかとれなかった。そのため、キャスクに与える衝撃加速度を低く抑えることができなかった。
【0040】
また、キャスク軸方向荷重に対しては、第1の筒状部および第3の筒状部に配置する軟質木材でエネルギーを吸収するようにした。上記各実施形態によれば、0.7程度の許容変形量を確保できる。
【0041】
なお、Lc寸法を短く制限する必要がある場合は、キャスク軸方向荷重で第1の筒状部の軟質木材にボトミングが生じるため、例えば、図6に示すように、第2の筒状部の外方角部(b1)に軟質木材を配置し、Lc+Le寸法を確保してボトミングが生じないようにした。また、斜め外方からの荷重に備える場合は、角部に局所変形が生じるため、角部を硬質木材で形成する。
【0042】
本発明では、実施形態1〜2を基本とするが、第2の筒状部および第3の筒状部の木材は、任意に分割配置が可能であり、実施形態3〜12を必要に応じて選択し採用できる。
【0043】
なお、上記各実施形態の緩衝構造体に関して、1/4スケールモデルを製作し、9m相当の落下試験を行った。垂直、水平、コーナーのいずれの方向でも、170G以下の衝撃加速度に収まった。また、解析コードによる比較解析でも、発生加速度の解析結果が試験結果より大きく、安全側の解析であることを確認した。また、解析コードによる実機寸法による9m落下解析では、衝撃加速度が50G以下に収まることを確認した。
【0044】
以下、まず比較解析について説明する。図18は解析モデルの説明図で、キャスクを軸方向に直立させ、そのキャスク下端部に装着した場合の緩衝構造体の一部で、図では右側環状体の木材配置を示している。ケース1〜5が従来の構造で、ケース6〜9が本発明に係わる構造例である。
【0045】
図中の斜線部は硬質木材(ファープライウッド)、白抜き部は軟質木材(バルサ材)を示し、矢印(←→)は木目方向を示し、曲線の矢印はキャスク周方向の木目を示している。また、図中の数字は円環状の緩衝構造体の中心からの径寸法、および緩衝構造体端面からの寸法を例示したものである。
【0046】
本発明に係わるケース6〜9が従来のケース1〜5と相違する点は、▲1▼ 第3の筒状部(領域C)に木目方向を変えた2つの軟質木材を採用し、▲2▼ 硬質木材の一端部にストッパが設けられ、▲3▼ ケース7〜9では、第2の筒状部(領域B)の硬質木材は張り出し部を有し、▲4▼ ケース6〜8では第2の筒状部の角部に軟質木材を配置している点である。
【0047】
表1は、ケース1〜9の各モデルをキャスクに装着し、重量132トン、落下距離9mを想定して、垂直落下(キャスク軸方向)および水平落下(キャスク径方向)させたときの、各ケースの加速度(G)および変形量(mm)を、ショックアブソーバ解析コードCRUSHを用いて解析したものである。
【0048】
【表1】
Figure 2004294191
【0049】
表1に示すように、キャスクに与える衝撃加速度は、従来構造ではケース1の水平落下以外は全て50G以上であるのに対して、本発明に係わる構造では、ケース8〜9の垂直落下以外は全て50G以下である。また、本発明に係わる構造の変形量は、全て許容変形量(垂直落下462mm、水平落下437mm)以内である。これらの結果から、本発明に係わる構造の優位性がわかる。
【0050】
次に、本発明の実施形態の1/4スケールモデルを製作して行った落下試験について説明する。試験体モデルは前記実施形態10(図14)で、硬質木材はファープライウッドを使用し、軟質木材はバルサ材を使用している。
【0051】
緩衝構造体の変形は、キャスク軸方向の垂直落下は、図19(a)に示すように、衝撃荷重を端面の広い範囲で受けるため、軟質木材のみで受ける配置としている。キャスク径方向の水平落下は、図19(b)に示すように、いわゆるかまぼこ形の変形をするため、垂直落下より受け面が小さくなるので、領域Aの軟質木材や領域Bの硬質木材は、木目方向を落下方向に向けて配置している。この場合、前述のように硬質木材の長さを軟質木材より長くして許容変形量を大きくしている。斜め方向のコーナー落下は、図19(c)に示すように、いわゆるひずめ形の変形となるため、硬い木材が有効に変形するように配置する。
【0052】
垂直、水平、コーナーの3つの姿勢で落下試験を行った。試験条件として、落下高さは試験施設の制限により8.2〜8.4mの高さに設定し、9m落下と同等の落下エネルギーとなるように、表2のように補正した。
【0053】
すなわち、実機重量132トンの1/4スケール重さ2062キログラム(132トン/4)の9m落下に対して、落下エネルギー(E)は、試験体重量(M)×落下高さ(h)より求まり、E=1.86×10kg・mとなる。したがって、表2に示すように試験体重量を補正し、E=1.86×10kg・m以上の落下エネルギーであることを確認した。
【0054】
【表2】
Figure 2004294191
【0055】
落下試験方法は、クレーンにより各落下姿勢で吊り上げ、遠隔自動着脱装置を介してフックと切り離して落下させた。計測は、円筒状キャスクモデルの胴体に、軸方向の3箇所に加速度センサを配置して、▲1▼加速度、▲2▼落下高さ、▲3▼緩衝構造体変形量等を計測した。
【0056】
本スケールモデル落下試験に関し、実機緩衝構造体の設計目標値(垂直・水平・コーナー:50G)を満足する衝撃加速度は以下のとおりとなる。
スケールモデル設計目標値=実機目標設計値×(Aσ/W)/(Aσ/W
ここで、A:実機緩衝構造体衝突面積 A:1/4スケールモデル緩衝構造体衝突面積(1/4×A) W:実機輸送物重量(132000kg) W:落下試験体重量(垂直:2222kg、水平:2290kg、コーナー:2221kg) σ=σ(1/4スケール緩衝構造体に対し、1/4の落下エネルギー設定のため)である。
【0057】
以上から、本落下試験における設計目標値は、垂直落下:185G、水平落下:180G、コーナー落下:185Gとなる。これに対して、本落下試験の結果は、垂直落下:170G、水平落下:140G、コーナー落下:93G、であった。これを実機相当の衝撃加速度に換算すると、垂直落下:46G、水平落下:39G、コーナー落下:25G程度となり、各姿勢において46Gを下まわることが確認された。
【0058】
また、落下解析コードCRUSHコードにより垂直落下と水平落下の比較解析を行った。本落下試験の解析結果は、垂直落下178G、水平落下144Gと、試験結果を安全側に高めて評価することを確認した。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、キャスク用緩衝構造体の外周部に配置した硬質木材に環状張り出し部を設け、組み合わせる軟質木材の木目方向を配慮することにより、大きな衝撃エネルギーを吸収する構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になるキャスク用緩衝構造体をキャスクに装着した一実施形態を示す断面図。
【図2】本発明になるキャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図3】図2の上面模式図。
【図4】キャスク用緩衝構造体に用いる木材の特性図。
【図5】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図6】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図7】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図8】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図9】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図10】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図11】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図12】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図13】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図14】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図15】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図16】キャスク用緩衝構造体の一実施形態を示す断面図。
【図17】キャスク用緩衝構造体の従来例を示す断面図。
【図18】本発明における緩衝構造体の解析モデル説明図。
【図19】キャスク用緩衝構造体の変形説明図。
【符号の説明】
1 使用済核燃料集合体
2 金属キャスク
3 バスケット
8 本体胴
8b 本体胴底板
8c 肉厚部
9 金属製外筒
10 中性子遮蔽材
11 緩衝構造体
12 断熱材
21 硬質木材
22 軟質木材
23 被覆板
24 金属板
25 硬質木材張り出し部
26 ストッパ

Claims (13)

  1. 使用済核燃料集合体を収容する円筒状キャスクの両端部にそれぞれ被冠され、木材を金属板で被覆してなる円環状の緩衝構造体であって、前記緩衝構造体は、前記キャスクの端部外周に被着される第1の筒状部と、該第1の筒状部と同一の内外径を有し、該第1の筒状部に連接させてキャスクの外方に延在されてなる第2の筒状部と、該第2の筒状部に内接され、外側端面が該第2の筒状部の外側端面と面一に設置される第3の筒状部とを有し、前記第1の筒状部と前記第2の筒状部の界面が、キャスク端面に設置される前記金属板と面一にされ、該金属板と前記第3の筒状部との間に、前記第2の筒状部の下端部内面を張り出して環状張り出し部を配置し、該環状張り出し部の内周面に対応する位置に前記金属板から起立した環状のストッパを備え、前記第1および前記第3の筒状部に軟質木材を配置し、前記第2の筒状部および環状張り出し部に硬質木材を配置してなるキャスク用緩衝構造体。
  2. 請求項1に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、硬質木材のみ、もしくは硬質木材および軟質木材が、それぞれ木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第3の筒状部は、1つの軟質木材が木目方向を任意に設定して配置されるか、もしくは、2つの軟質木材が互いに木目方向を変えて配置され、かつ、前記ストッパは、前記第3の筒状部の内周面と面一の位置、もしくは、該内周面の位置より緩衝体内部側に設置されることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  3. 請求項1に記載の緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、硬質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第3の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク軸方向と同一にして配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  4. 請求項1に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、前記第1の筒状部の軟質木材に接する位置に、木目方向がキャスク径方向と同一の硬質木材が配置されるとともに、該硬質木材に接して外方に、木目方向がキャスク径方向と同一の軟質木材を配置し、前記第3の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク軸方向と同一にして配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  5. 請求項1に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、硬質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第3の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク周方向と同一にして配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  6. 請求項1に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、前記第1の筒状部の軟質木材に接する位置に、木目方向がキャスク径方向と同一の硬質木材が配置されるとともに、該硬質木材に接して外方に、木目方向がキャスク径方向と同一の軟質木材を配置し、前記第3の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク周方向と同一にして配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  7. 請求項1に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、硬質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第3の筒状部は、前記第2の筒状部の内周面および前記張り出し部に接する位置に、木目方向がキャスク軸方向と同一の軟質木材を配置するとともに、該軟質木材の内周面に接して、木目方向がキャスク周方向と同一の軟質木材が配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  8. 請求項1に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、前記第1の筒状部の軟質木材に接する位置に、木目方向がキャスク径方向と同一の硬質木材が配置されるとともに、該硬質木材に接して外方にに、木目方向がキャスク径方向と同の軟質木材を配置し、前記第3の筒状部は、前記第2の筒状部の内周面および前記張り出し部に接する位置に、木目方向がキャスク軸方向と同一の軟質木材を配置するとともに、該軟質木材の内周面に接して、木目方向がキャスク周方向と同一の軟質木材が配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  9. 請求項1に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、硬質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第3の筒状部は、前記第2の筒状部の内周面および前記張り出し部に接する位置に、木目方向がキャスク周方向と同一の軟質木材を配置するとともに、該軟質木材の内周面に接して、木目方向がキャスク軸方向と同一の軟質木材が配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  10. 請求項1に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記第1の筒状部は、軟質木材が木目方向をキャスク径方向と同一にして配置され、前記第2の筒状部は、前記第1の筒状部の軟質木材に接する位置に、木目方向がキャスク径方向と同一の硬質木材が配置されるとともに、該硬質木材に接して外方に、木目方向がキャスク径方向と同一の軟質木材を配置し、前記第3の筒状部は、前記第2の筒状部の内周面および前記張り出し部に接する位置に、木目方向がキャスク周方向と同一の軟質木材を配置するとともに、該軟質木材の内周面に接して、木目方向がキャスク軸方向と同一の軟質木材が配置されていることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  11. 請求項3乃至6のうちいずれか1項に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記硬質木材の張り出し部先端面が当接するストッパは、外周面が前記第3の筒状部の軟質木材の内周面と面一の位置に設置されることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  12. 請求項3乃至6のうちいずれか1項に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記硬質木材の張り出し部先端面が当接するストッパは、前記第3の筒状部の内周面の位置より緩衝体内部側に設置されることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
  13. 請求項7乃至10のうちいずれか1項に記載のキャスク用緩衝構造体において、前記硬質木材の張り出し部先端面が当接するストッパは、前記第3の筒状部の内周面の位置より緩衝体内部側に設置され、前記第2の筒状部の2つの軟質木材同士の界面が、前記ストッパの内周面と面一に設置されることを特徴とするキャスク用緩衝構造体。
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