JP5483111B2 - 回転電機用固定子巻線の製造方法 - Google Patents

回転電機用固定子巻線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、回転電機用固定子巻線の製造方法に関する。
例えば車両において電動機や発電機として使用される回転電機は、固定子コアのスロットに収容される複数のスロット収容部と、隣り合うスロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線により形成されて、固定子コアに巻装される固定子巻線を備えている。この固定子巻線を製造する方法として、所定本数の導線を重ねた状態で芯金に巻き取ることにより円筒状の巻き取り体を形成して固定子巻線とする方法が知られている。しかし、この方法の場合には、導線の表面を被覆している絶縁皮膜へのダメージが大きいという問題がある。
また、特許文献1に開示されているように、導線にスロット収容部およびターン部を成形しつつ複数の導線を所定の状態に重ね合わせて帯状の線材集積体を形成し、その線材集積体を渦巻き状に巻き付けて円筒状に成形することにより、固定子巻線を製造する方法が知られている。しかし、この方法の場合には、作業が複雑になるという問題がある。
特開2010−124655号公報
ところで、固定子巻線を製造する一方法として、以下に示す方法が考えられる。まず、複数のスロット収容部およびターン部を有する導線を形成する。次いで、その導線のターン部を円弧状に成形して渦巻き状の巻回体を形成する。そして、巻回体同士を軸方向に相対移動させて組み付けることにより複数の巻回体よりなる円筒状の組付体を形成し、これにより固定子巻線を製造する。この製造方法によれば、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線を製造することが可能となる。
ところが、導線のターン部の略中央部に固定子コアの径方向に位置ずれするクランク部が設けられている場合には、巻回体同士を軸方向に相対移動させて組み付ける際に、クランク部により巻回体同士の干渉が発生し易くなるため組み付けが困難となる。そこで、例えば、組付巻回体を拡径するように弾性変形させつつ被組付巻回体に組み付けるようにすれば、巻回体同士の干渉を回避することができる。しかし、このようにすると、スロット収容部が径方向に整列しにくくなる。よって、スロット収容部の整列精度を確保するためには、手作業で巻回体の組み付けを行わなければならず、生産性の低下を招くという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして簡易に製造することができ、且つスロット収容部の整列精度を向上させ得るようにした回転電機用固定子巻線の製造方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、複数のスロット収容部と隣り合う該スロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線を組み付けてなる回転電機用の固定子巻線を製造する方法であって、前記スロット収容部と前記ターン部とを有する所定形状の前記導線を形成する導線形成工程と、前記導線の前記ターン部を円弧状に成形して渦巻き状に巻回された巻回体を形成する巻回体形成工程と、被組付巻回体の所定の前記スロット収容部同士間に位置決め部材を配置する位置決め部材配置工程と、前記被組付巻回体に対して組付巻回体を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させた後に前記弾性変形を解除して組み付け、複数の前記巻回体よりなる組付体を形成する組付工程と、を有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、組付工程において、被組付巻回体に対して組付巻回体を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させた後に前記弾性変形を解除して組み付けるようにしている。そのため、被組付巻回体と組付巻回体との干渉を回避して、両巻回体を円滑且つ容易に軸方向へ相対移動させることができるので、両巻回体の組付けを簡易に行うことができる。これにより、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線を製造することが可能となる。
そして、本発明では、組付工程を行う前に、被組付巻回体の所定のスロット収容部同士間に位置決め部材を配置する位置決め部材配置工程を行うようにしている。そのため、組付工程において、被組付巻回体に対して組付巻回体を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付ける際に、組付巻回体のスロット収容部が位置決め部材にガイドされて所定位置に移動する。これにより、被組付巻回体と組付巻回体のスロット収容部を径方向に精度良く整列させることができるので、スロット収容部の整列精度を向上させることができる。
なお、本発明の組付工程における被組付巻回体および組付巻回体には、1つの巻回体の他に、複数の巻回体を組み付けてなる組付体も含まれる。即ち、本発明では、被組付巻回体と組付巻回体との組付けは、次の4通りとなる。(1)1つの巻回体よりなる被組付巻回体と1つの巻回体よりなる組付巻回体との組付け。(2)1つの組付体よりなる被組付巻回体と1つの巻回体よりなる組付巻回体との組付け。(3)1つの巻回体よりなる被組付巻回体と1つの組付体よりなる組付巻回体との組付け。(4)1つの組付体よりなる被組付巻回体と1つの組付体よりなる組付巻回体との組付け。
また、位置決め部材配置工程において用いられる位置決め部材としては、例えば、被組付巻回体の隣り合うスロット収容部同士の間に挿入配置可能な大きさで楔状に形成された通し矢を好適に採用することができる。この通し矢は、被組付巻回体の外周側の所定位置に複数個配置し、それぞれの通し矢を径方向に進退動可能にすることにより、自動化することができる。
請求項2に記載の発明は、前記組付工程は、第1の被組付巻回体に第1の組付巻回体を組み付けて第1の組付体を形成し、該第1の組付体に第2の組付巻回体を組み付けて第2の組付体を形成し、以後、第3の組付巻回体から第n(nは4以上の自然数)の組付巻回体を、前記第2の組付体から第(n−1)の組付体に対して順番に組み付けることにより第nの組付体を形成することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、被組付巻回体に対して、組付巻回体を1個ずつ順番に組み付けるようにしているので、組付作業を連続的に効率良く行うなうことができ、生産性の向上を図ることができる。また、任意の個数(n個)の巻回体よりなる固定子巻線を容易に製造することができる。
請求項3に記載の発明は、前記組付工程において、前記第1の組付体から前記第(n−1)の組付体をそれぞれ形成した後に、前記位置決め部材の配置位置を変更する配置位置変更工程を行うことを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、第1の組付体を形成した後、第(n−1)までの組付体を形成するごとに、位置決め部材の配置位置をその時点での最適な位置に変更する配置位置変更工程を行う。そのため、次に組付体(被組付巻回体)と組付巻回体とを組み付ける作業を行う際に、位置決め部材が最適な位置に配置されているので、スロット収容部を径方向に精度良く整列させることができる。これにより、スロット収容部の整列精度をより確実に向上させることができる。
請求項4に記載の発明は、前記配置位置変更工程は、前記位置決め部材の配置位置を1スロットピッチずつ周方向にずらせることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、通常、巻回体のスロット収容部は1スロットピッチごと離れた位置に配置されているので、組付体と組付巻回体を周方向に1スロットピッチずれた状態に精度良く組み付けることができる。
請求項5に記載の発明は、前記組付工程は、前記組付巻回体を拡径するように弾性変形させて前記被組付巻回体の外周側に組み付けることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、被組付巻回体と組付巻回体とを、干渉しないようにして、容易に組み付けることができるので、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線を製造することが可能となる。
請求項6に記載の発明は、前記組付工程は、前記組付巻回体を縮径するように弾性変形させて前記被組付巻回体の内周側に組み付けることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、被組付巻回体と組付巻回体とを、干渉しないようにして容易に組み付けることができるので、導線の絶縁皮膜へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線を製造することが可能となる。
請求項7に記載の発明は、前記導線形成工程または前記巻回体形成工程において、前記ターン部に前記固定子巻線の径方向に位置ずれするクランク部を形成することを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、導線のターン部にクランク部が形成されていても、組付工程で被組付巻回体と組付巻回体とを組付ける際に、組付巻回体を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させるので、被組付巻回体と組付巻回体とのクランク部での干渉を回避することができる。よって、ターン部にクランク部を有する導線を用いて固定子巻線を製造する場合でも、本発明の製造方法を有効に適用することができる。
実施形態の製造方法により製造された固定子巻線が巻装された固定子の全体斜視図である。 図1に示す固定子の平面図である。 図1に示す固定子の側面図である。 図1に示す固定子を構成する固定子コアの平面図である。 図4に示す固定子コアを構成する分割コアの平面図である。 実施形態に係る固定子巻線の全体斜視図である。 図6に示す固定子巻線の側面図である。 図6に示す固定子巻線の平面図である。 図6に示す固定子巻線の底面図である。 (A)は実施形態に係る固定子巻線を構成する導線の断面図であり、(B)は変形例に係る導線の断面図である。 (A)は実施形態において用いられる導線の上面図であり、(B)は導線の正面図である。 (A)は実施形態において用いられる導線のターン部の形状を示す斜視図であり、(B)は隣接する複数のターン部を示す斜視図である。 実施形態の製造方法により製造された固定子巻線の結線図である。 実施形態において各スロットの最外径側に配置される各導線の第1スロット収容部の配置位置を示す説明図である。 実施形態の固定子巻線において1本の導線(U1−4’)のスロット収容部の配置位置および軌跡を示す説明図である。 実施形態においてV相巻線の接続状態を示す巻線仕様図である。 実施形態に係る製造方法の製造工程を示すブロック図である。 実施形態に係る製造方法の導線形成工程の様子を示す説明図である。 (A)は実施形態に係る製造方法の導線形成工程において折曲げ加工を開始する前の状態を示す説明図であり、(B)は折曲げ加工を開始した直後の状態を示す説明図である。 実施形態に係る製造方法の巻回体形成工程において形成された巻回体の軸方向から見た平面図である。 実施形態に係る製造方法の巻回体形成工程において形成された巻回体の斜視図である。 実施形態に係る製造方法の組付工程の様子を示す説明図である。 実施形態に係る製造方法の組付工程において形成された組付体の斜視図である。 他の実施形態に係る製造方法の組付工程の様子を示す説明図である。
以下、本発明に係る回転電機用固定子巻線の製造方法の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
先ず、本実施形態に係る回転電機用固定子巻線の製造方法により製造される固定子巻線が用いられた固定子について図1〜図16を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る回転電機の固定子の全体斜視図である。図2は、その固定子の平面図である。図3は、その固定子の側面図である。
本実施形態の固定子20は、例えば車両の電動機および発電機を兼ねる回転電機に使用されるものであって、内周側に回転子(図示せず)を回転自在に収容する。回転子は、永久磁石により周方向に磁性が交互に異なる磁極を、固定子20の内周側と向き合う外周側に複数形成している。固定子20は、図1〜図3に示すように、固定子コア30と、複数(本実施形態では48本)の導線50から形成される三相の固定子巻線40とを備えている。なお、固定子コア30と固定子巻線40との間には、絶縁紙を配してもよい。
図4および図5を参照して固定子コア30について説明する。図4は、本実施形態に係る固定子コアの平面図である。図5は、本実施形態に係る分割コアの平面図である。
固定子コア30は、図4に示すように、内周に複数のスロット31が形成された円環状を呈している。複数のスロット31は、その深さ方向が径方向と一致するように形成されている。固定子コア30に形成されたスロット31の数は、回転子の磁極数(8磁極)に対し、固定子巻線40の一相あたり2個の割合で形成されている。本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。
固定子コア30は、図5に示す分割コア32を所定の数(本実施形態では24個)を周方向に連結して形成されている。円環状に連結された分割コア32は、その外周に嵌合された外筒37により固定されている(図1〜4参照)。分割コア32は、一つのスロット31を区画するとともに、周方向で隣接する分割コア32との間で一つのスロット31を区画する形状を呈している。具体的には、分割コア32は、径方向内方に伸びる一対のティース部33と、ティース部33を径方向外方で連結するバックコア部34とを有している。
固定子コア30を構成する分割コア32は、複数枚の電磁鋼板を積層させて形成されている。積層された電磁鋼板の間には、絶縁薄膜が配置されている。分割コア32は、この電磁鋼板の積層体からだけでなく、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて形成してもよい。
次に、図6〜図9を参照して固定子巻線40について説明する。図6は、本実施形態に係る固定子巻線の全体斜視図であり、図7は側面図、図8は平面図、図9は底面図である。固定子巻線40は、図6〜図9に示すように、複数の導線50により円筒形状に形成されており、固定子コア30のスロット31内に収容されるストレート部41と、このストレート部41の両端においてスロット31外に配置されるコイルエンド部42を有する。一方のコイルエンド部42の端面において、出力線および中性点となるリード線が軸方向に突出するとともに、内径側から突出した導線50の端部を外径側から突出した導線50の端部に接続する渡り部70が設けられている。
固定子巻線40を構成する導線50は、図10(A)に示すように、銅製の導体67と、導体67の外周を覆い導体67を絶縁する内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68とから形成されている。内層68aおよび外層68bを合わせた絶縁被膜68の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の厚みが厚いので、導線50同士を絶縁するために導線50同士の間に絶縁紙等を挟み込む必要がなくなっているが、導線50同士の間あるいは固定子コア30と固定子巻線40との間に絶縁紙を配設してもよい。
外層68bはナイロン等の絶縁材で形成され、内層68aは外層68bよりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機100に発生する熱により外層68bは内層68aよりも早く結晶化するため、外層68bの表面硬度が高くなり、導線50に傷がつきにくくなる。このため、後述するターン部52に段部を形成する加工を施した導線50の絶縁を確保することができる。
さらに、導線50は、図10(B)に示すように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材69で被覆してもよい。これにより、融着材69は、回転電機に発生する熱により絶縁被膜68よりも早く溶融するので、同じスロット31に収容されている複数の導線50同士が融着材69同士により熱接着する。その結果、同じスロット31に収容されている複数の導線50が一体化し導線50同士が硬化することで、スロット31内の導線50の機械的強度が向上する。なお、絶縁被膜68の外層68bには、ポリフェニレンサルファイド(PPS)よりなる被膜を用いてもよい。
図11に、導線50を平面上に展開した場合の図を示す。導線50は、図11に示すように、固定子コア30のスロット31内に収容される複数のスロット収容部51と、スロット31から固定子コア30の外に突出し、周方向に異なるスロット31に収容されているスロット収容部51同士を接続している複数のターン部52とを有する。具体的には、複数のスロット収容部51は、少なくとも、スロット31に収容される第1スロット収容部51Aと、第1スロット収容部51Aから周方向に離間したスロット31に収容される第2スロット収容部51Bと、第2スロット収容部51Bから周方向に離間したスロット31に収容される第3スロット収容部51Cを含む。また、複数のターン部52は、少なくとも、固定子コア30の一端側におけるスロット31の外部で第1スロット収容部51Aと第2スロット収容部52Bを接続する第1ターン部52Aと、固定子コア30の他端側におけるスロット31の外部で第2スロット収容部51Bと第3スロット収容部51Cを接続する第2ターン部52Bを含む。なお、本実施形態においては、図11に示すように、各導線50は、12個のスロット収容部51A〜51Lと、11個のターン部52A〜52Kを備えている。
具体的には、本実施形態におけるスロット収容部51は、図11の左端に位置する第1スロット収容部51Aから順に、固定子コア30の周方向に離間したスロット31にそれぞれ収容される第2スロット収容部51B、第3スロット収容部51C、・・・、第12スロット収容部51Lの12個からなる。また、ターン部52は、固定子コア30の一端側におけるスロット31の外部と固定子コア30の他端側におけるスロット31の外部とで交互にスロット収容部51同士を接続する第1ターン部52A、第2ターン部52B、・・・、第10ターン部52J、および第11スロット収容部51Kと第12スロット収容部51Lを接続する第11ターン部52Kの11個からなる。
この導線50の隣り合うスロット収容部51同士の周方向(矢印Y方向)の離間距離Xは、全ての箇所で異なるようにされている。この場合、離間距離Xは、導線50の第1スロット収容部51A側から第12スロット収容部51L側に向かうにつれて、徐々に短くなるようにされている。即ち、離間距離Xは、X1>X2>X3>X4>X5>X6>X7>X8>X9>X10>X11となっている。なお、離間距離Xは、固定子コア30の周方向において隣り合うスロット31同士の離間距離(スロットピッチ)を考慮して適宜設定される。
導線50の両端には、他の導線50等と接続するための引出し部53a、53bが設けられている。一方の引出し部53aは、第1スロット収容部51Aの端末から内側(図11の右側)へ戻るように、スロット収容部間にあるターン部の略半分の長さに形成されたターン部52Mを介して形成されている。よって、一方の引出し部53aは、第1スロット収容部51Aからターン部52Mの長さだけ内側(図11の右側)へ寄った所に位置している。他方の引出し部53bは、第12スロット収容部51Lの端末から内側(図11の左側)へ戻るように、スロット収容部間にあるターン部の略半分の長さに形成されたターン部52Nを介して形成されている。よって、他方の引出し部53bは、第12スロット収容部51Lからターン部52Nの長さだけ内側(図11の左側)へ寄った所に位置している。他方の引出し部53bとターン部52Nとの間には、固定子巻線40の軸方向端面上で固定子コア30の径方向外方へ折り曲げられて配置される渡り部70が設けられている。
ターン部52の略中央部には、第1スロット収容部51A、第2スロット収容部51B、第3スロット収容部51C、・・・、第12スロット収容部51Lを導線50の長手方向およびスロット収容部51の長手方向に直交する方向に順次段差が生じるようにクランク部54(図12参照)が形成されている。その結果、導線50は図11(A)に示すように階段状の形状を有することになる。
図12に、図11に示す導線50を用いて円筒形状の固定子巻線40を形成した場合のターン部52の形状を示す斜視図を示す。図12(A)に示すように、ターン部52は、固定子コア30の径方向に変位して固定子コア30の端面30aに沿って延びるクランク部54を有する。クランク部54のクランク形状によるずれ量(径方向への変位量)は、ターン部52の径方向厚み分である。これにより、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、ターン部52の径方向厚み分だけ変位している。このようにクランク部54がターン部52に設けられていることにより、図12(B)に示すように周方向に隣接している導線50のターン部52同士を密に巻回できる。また、図12(B)に示すように周方向に隣接するターン部52は互いに同じ形状であり、ターン部52同士が干渉するのを防止している。
また、スロット31から固定子コア30の外に突出するターン部52の突出箇所に、導線50がまたがって設置されているスロット同士に向けて固定子コア30の軸方向両側の端面30aに沿って段部55が形成されている。これにより、スロット31から突出している導線50のターン部52の突出箇所の間隔、言い換えればターン部52が形成する三角形状部分の底辺の長さは、導線50がまたがって設置されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンド部42の高さが低くなる。ターン部52の突出箇所(スロット収容部51の延長線上の部位)に形成された段部55は、スロット収容部51に対して略直角に屈曲されており、その屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部57が設けられている。
また、固定子コア30の端面30aに沿った段部55の長さをd1、周方向に隣接するスロット同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、導線50の段部55が周方向に隣り合うスロットから突出する導線50と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロットから突出する導線50同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンド部42の高さが高くなったり、あるいはコイルエンド部42の径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、コイルエンド部42の高さが低くなる。さらに、コイルエンド部42の径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。
さらに、導線50には、ターン部52の略中央部のクランク部54と、ターン部52の突出箇所に形成した段部55との間に、それぞれ2個の段部56が形成されている。つまり、固定子コア30の一方の軸方向の端面30a側の導線50のターン部52には、1個のクランク部54と合計6個の段部55、56が形成されている。これにより、クランク部54や段部55、56を形成しない三角形状のターン部の高さに比べ、ターン部52の高さが低くなる。クランク部54のクランク形状も、段部55、56と同様に、固定子コア30の端面30aに沿って形成されている。したがって、導線50のターン部52は、クランク部54を挟んで両側が階段状に形成されている。また、ターン部52の階段部において、4個の段部56により形成されるそれぞれの屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部58が設けられている。
固定子巻線40は、図11に示した導線50を48本用いて形成されている。ただし、固定子巻線40に出力線や中性点などを設けるために、渡り部70を設けていない導線50を適宜混在させても良い。したがって、本実施形態では、48本の導線50の全ては、各導線50の両端部に形成された引出し部53a、53bの間において同じ形状に成形されている。
この固定子巻線40を構成する導線50は、ターン部52の略中央部に、ターン部52の径方向厚み分だけ径方向にずれたクランク部54が設けられていることにより、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、固定子コア30の中心軸線からの半径距離が、スロット収容部51の径方向厚み分だけ異なっている。また、導線50は、隣り合うスロット収容部51同士の離間距離Xが、導線50の第1スロット収容部51A側から第12スロット収容部51L側に向かうにつれて、徐々に短くなるようにされており、全ての箇所で実質的に異なっている(図8参照)。これらのことから、固定子巻線40は、径方向に重なり合うスロット収容部51が、周方向に位置ずれすることなく径方向一列にストレートな状態に整列するようになるので、真円筒形状により近い形状にすることができる(図6および図7参照)。
この固定子巻線40は、複数の導線の第1スロット収容部51A同士、第2スロット収容部51B同士、・・・、第12スロット収容部51L同士をそれぞれ周方向に連続するスロットに配置するとともに、第1スロット収容部51A同士、第2スロット収容部51B同士、・・・、第12スロット収容部51L同士の固定子コアの中心軸線Oからの半径距離がそれぞれ等しくなるよう配置されているので、固定子巻線40の外径寸法および内径寸法を周方向で均一化することができる。この固定子巻線40は、図13に示すように、それぞれの相が16本の導線50を直列に接続した各相巻線43(U、V、W)をY結線した三相巻線として形成されている。
図14において、各導線50のスロット収容部51は、12個の破線円と放射方向に延びる破線とが交差する位置に配置されており、最外径側と最内径側のみが矩形断面形状で表されている。また、放射方向に1列に並んだスロット収容部51の外側には、それぞれ対応する1〜48のスロット番号が付されている(以後、図15においても同じ)。また、スロット番号の外側には、それぞれのスロットの最外径側(第12層)に、巻回の始端側となる第1スロット収容部51Aが配置される導線の番号が付されている。
各相の巻線を構成する16本の導線50は、8個の同一のスロット31にスロット収容部51が収容される8本の導線50と、それら8個のスロット31とは別の8個の同一のスロット31にスロット収容部51が収容される8本の導線50とに分かれている。例えばU相の場合には、8本の導線(U1−1)〜(U1−4)および(U1−1’)〜(U1−4’)は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回されて、それぞれのスロット収容部51が、1番スロット、7番スロット、13番スロット、19番スロット、25番スロット、31番スロット、37番スロットおよび43番スロットに収容される。また、他の8本の導線(U2−1)〜(U2−4)および(U2−1’)〜(U2−4’)は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回されて、それぞれのスロット収容部51が、2番スロット、8番スロット、14番スロット、20番スロット、26番スロット、32番スロット、38番スロットおよび44番スロットに収容される。
なお、図14には、代表として導線(U1−1)の軌跡が示されている。図14において、黒四角で示された部分は導線(U1−1)のスロット収容部51が配置されていることを示し、導線(U1−1)の周方向に延びる太線は、固定子コア30の軸方向一方側(図14の紙面手前側)に位置するターン部52を示し、導線(U1−1)の周方向に延びる二点鎖線は、固定子コア30の軸方向他方側(図14の紙面後側)に位置するターン部52を示す(以後、図15においても同じ)。
この固定子巻線40は、図14に示すように、各スロット31において、8本の導線50のスロット収容部51が径方向に12層、積層された状態になっている。導線(U1−1)は、始端側の第1スロット収容部51Aが1番スロットの最外層(第12層)に位置し、終端側の第12スロット収容部51Lが19番スロットの最内層(第1層)に位置している。
また、固定子巻線40を構成する48本の導線50は、長手方向(周方向)に1スロットピッチずつずれて配置されているので、各導線50の始端側となる第1スロット収容部51Aが、48個の各スロット31の最外層(第12層)に順に収容されている。下記の表1は、1番〜48番の各スロット31において、最外層に位置する導線の番号と、最内層に位置する導線の番号をまとめたものである。
Figure 0005483111
固定子巻線40を構成する導線50は、各導線50の一端側(第1スロット収容部51A側)から他端側(第12スロット収容部51L側)に向かうにつれて、スロット収容部51の固定子コア30の中心軸線Oからの半径距離が順次小さくなっている。本実施形態の場合、各導線50は、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士の固定子コア30の中心軸線Oからの半径方向距離がスロット収容部51の径方向厚み分異なっている。
図15は、固定子巻線40を図14の裏側から見た場合の、1本の導線(U1−4’)の軌跡を示す図である。この導線(U1−4’)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが43番スロットの第12層(最外層)に配置され、第2スロット収容部51Bが1番スロットの第11層に配置され、第3スロット収容部51Cが7番スロットの第10層に配置され、第4スロット収容部51Dが13番スロットの第9層に配置され、最終の第12スロット収容部51Lが13番スロットの第1層(最内層)に配置されている。即ち、導線(U1−4’)は、始端側(外径側)から終端側(内径側)に向かうにつれて、スロット収容部51の固定子コア30の中心軸線Oからの半径距離が順次小さくなっている。
よって、固定子コア30の中心軸線Oから、第1スロット収容部51Aまでの半径距離r43と、第2スロット収容部51Bまでの半径距離r1と、第3スロット収容部51Cまでの半径距離r7と、第4スロット収容部51Dまでの半径距離r13は、順次スロット収容部51の径方向厚み分小さくなっており、以後同様に、第12スロット収容部51Lに至るまで、半径距離が順次スロット収容部51の径方向厚み分小さくなっている。すなわち、第1スロット収容部51Aから第12スロット収容部51Lに至るまで、半径距離が順次小さくなるのみで、途中で半径距離が大きくなることはない。
次に、16本の導線50を直列に接続してなる各相巻線43(U、V、W)のうち、代表としてV相の各相巻線43の接続状態を、図13、図16および上記の表1を参照して説明する。なお、U相、W相の各相巻線もV相と同様の接続となっている。
図13において出力線Vの始端に位置する導線(V1−1)は、表1および図16に示すように、始端側の第1スロット収容部51Aが5番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが23番スロットの最内層(第1層)に配置されている。導線(V1−1)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが17番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが35番スロットの第1層に配置された導線(V1−2)の始端側が接続されている。
導線(V1−2)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが29番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが47番スロットの第1層に配置された導線(V1−3)の始端側が接続されている。導線(V1−3)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが41番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが11番スロットの第1層に配置された導線(V1−4)の始端側が接続されている。導線(V1−4)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが6番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが24番スロットの第1層に配置された導線(V2−1)の始端側が接続されている。
導線(V2−1)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが18番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが36番スロットの第1層に配置された導線(V2−2)の始端側が接続されている。導線(V2−2)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが30番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが48番スロットの第1層に配置された導線(V2−3)の始端側が接続されている。導線(V2−3)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが42番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが12番スロットの第1層に配置された導線(V2−4)の始端側が接続されている。
導線(V2−4)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが48番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが18番スロットの第1層に配置された導線(V2−4’)の終端側が接続されている。導線(V2−4’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが36番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが6番スロットの第1層に配置された導線(V2−3’)の終端側が接続されている。導線(V2−3’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが24番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが42番スロットの第1層に配置された導線(V2−2’)の終端側が接続されている。導線(V2−2’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが12番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが30番スロットの第1層に配置された導線(V2−1’)の終端側が接続されている。
導線(V2−1’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが47番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが17番スロットの第1層に配置された導線(V1−4’)の終端側が接続されている。導線(V1−4’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが35番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが5番スロットの第1層に配置された導線(V1−3’)の終端側が接続されている。導線(V1−3’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが23番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが41番スロットの第1層に配置された導線(V1−2’)の終端側が接続されている。導線(V1−2’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが11番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが29番スロットの第1層に配置された導線(V1−1’)の終端側が接続されている。なお、導線(V1−1’)の始端側は、中性点Vに接続されている。
次に、表1、図11および図16を参照して各導線50の接続状態を説明する。ここでは、代表として2本の導線(V1−1)(V1−2)の接続状態を説明する。一方の導線(V1−1)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが5番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側となる第12スロット収容部51Lが23番スロットの最内層(第1層)に配置されている。この導線(V1−1)の終端側に設けられた引出し部53b(内周側端部)は、第12スロット収容部51Lが配置されている23番スロットからターン部52Nの長さ分だけ戻った所(20番スロット付近)に位置している。
そして、他方の導線(V1−2)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが17番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側となる第12スロット収容部51Lが35番スロットの最内層(第1層)に配置されている。この導線(V1−2)の始端側に設けられた引出し部53a(外周側端部)は、第1スロット収容部51Aが配置されている17番スロットからターン部52Mの長さ分だけ戻った所(20番スロット付近)に位置している。図6〜図9に示すように、この導線(V1−1)の引出し部53b(内周側端部)は、径方向外方側へ略直角に折り曲げられた後、その先端が、固定子巻線40の外周端部に位置する導線(V1−2)の引出し部53a(外周側端部)の先端部に溶接接合されることにより接続されている。
この溶接接合は、固定子巻線40の最も外径側に位置するターン部52よりも外径側において溶接により接続されている。この場合、導線(V1−1)の引出し部53b(内周側端部)の折り曲げ部は、固定子巻線40の軸方向端面(ターン部52の軸方向外面)上を通る渡り部70を形成しており、2本の導線(V1−1)(V1−2)は、渡り部70を介して接続されている。これにより、内径側に位置するス第12ロット収容部51Lの径方向内方への膨出をより効果的に防止することができるので、内径側に位置する回転子との干渉を回避することが可能となる。
なお、渡り部70は、図2および図8に示すように、渡り部70の径方向両端部が、固定子コア30(固定子巻線40)の中心軸線Oから放射方向に延びる直線に沿って延びるように形成されている。渡り部70の形状をこのようにすることによって、導線の折り曲げを容易にするとともに、溶接接合を容易にすることができる。
また、この渡り部70は、図2および図8に示すように、固定子巻線40の軸方向端面上において、周方向に略3/4周する範囲の領域に設けられている。そして、固定子巻線40の軸方向端面上の残り1/4周する範囲の領域には、中性点V、出力線W、中性点U、出力線V、中性点Wおよび出力線Uの引出し部が順番に並んで設けられている。即ち、固定子巻線40の軸方向端面において、中性点U、V、Wの引出し部と同じ領域に出力線U、V、Wの引出し部が設けられているとともに、渡り部70が設けられる領域と中性点U、V、Wおよび出力線U、V、Wの引出し部が設けられる領域が分離されている。
上記のように構成された固定子巻線40は、外周側から分割コア32が挿入されることによって固定子コア30と組み付けられている(図1〜図3参照)。これにより、固定子巻線40を構成する導線50は、固定子コア30の内周側で周方向に沿って波巻きされた状態に組み付けられている。導線50のターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、所定のスロットピッチ(本実施形態では、3相×2個=6スロットピッチ)だけ離間したスロット31に収容されている。隣り合うスロット収容部51同士を接続するターン部52は、固定子コア30の軸方向の両端面からそれぞれ突出し、その突出している部分(ターン部52の集合体)によりコイルエンド部42が形成されている。
次に、本実施形態の固定子巻線40の製造方法について説明する。本実施形態の固定子巻線40の製造方法は、図17に示すように、導線形成工程101と、巻回体形成工程102と、位置決め部材配置工程103と、組付工程104とからなる。
最初の導線形成工程101では、図18および図19に示すように、治具を用いて、線材50aに対して、スロット31に収容されるスロット収容部51と、周方向に異なるスロット31に収容されるスロット収容部51同士を接続するターン部52とを形成し、図11に示す導線50を作製する。ここで用いられる治具は、線材50aの幅に相当する距離を隔てて対向配置された第1および第2固定治具81、82と、支軸83aに回転可能に取着され、第1および第2固定治具81、82の間に挟持された線材50aを第1固定治具81側へ屈曲させる回転治具83とを備えている。第1固定治具81は、線材50aが屈曲される際に屈曲部が当接する略直角のコーナ部81aを有する。コーナ部81aは、所定の大きさのアール形状とされている。
この治具により、ターン部52を形成するには、図19(A)に示すように、第1および第2固定治具81、82の間に、線材50aのスロット収容部51となる部分を挟持させて、支軸83aを中心にして回転治具83を第1固定治具81側へ回転させる。なお、第1固定治具81と第2固定治具82の対向方向は、固定子コア30の周方向に相当する(図18参照)。これにより、図19(B)に示すように、回転治具83が線材50aを第1固定治具81のコーナ部81aに押し付け、コーナ部81aのアール形状に沿って屈曲させる。
これにより、スロット31から突出するターン部52の突出箇所(スロット収容部51の延長線上の部位)が、スロット収容部51に対して略直角に屈曲され、ターン部52の突出箇所に、固定子コア30の端面に沿った段部55が形成される。このとき形成された屈曲部の内側部分には、スロット収容部51の表面よりも固定子コア30の径方向両側に膨出した膨出部57が形成される。なお、屈曲部の肉厚tは、屈曲部に膨出部57が形成されるのに伴って、線材50aの初期の肉厚Tよりも小さくなっている。
そして、上記の治具を上記と同様に操作して、各ターン部52に、固定子コア30の端面に平行な合計4個の段部56からなる階段部を形成することにより、その階段部の屈曲部の内側部分に、固定子コア30の径方向に膨出する膨出部58(図12参照)を形成する。また、成形装置(図示せず)を用いて、各ターン部52の中央部に、固定子巻線40の径方向に位置ずれするクランク部54を形成する。なお、このクランク部54は、後に行われる巻回体形成工程において、ターン部52を円弧状に成形する際に形成するようにしてもよい。
以上のように導線形成工程101を行って、固定子巻線40の1個あたり48本の導線50を準備する。
次の巻回体形成工程102では、導線形成工程101で作製した導線50の各ターン部52を、成形装置(図示せず)などを用いて円弧形状に塑性変形させて、導線50が渦巻き状に巻回された巻回体60を形成する。本実施形態では、図20に示すように、導線50が周方向に11/8周する渦巻き状の巻回体60を形成する。この場合、巻回体60の両端部の径方向に重なった部分(3/8周部分)においては、隣り合うスロット収容部51同士の周方向の離間距離Xの短い側の端部が径方向内側に位置し、離間距離Xの長い側の端部が径方向外側に位置している。そして、スロット収容部51は、51Aと51I、51Bと51J、51Cと51K、51Dと51Lのスロット収容部同士が径方向に対向して1列に並んでいる。なお、巻回体60の周回数(11/8周=1.375周)は、固定子巻線40の仕様に応じて適宜設定される。
次の位置決め部材配置工程103では、被組付巻回体60Aに対して、所定のスロット収容部51同士の間に位置決め部材としての通し矢90を配置する。ここで用いられる通し矢90は、基端から先端に向かって次第に薄肉となる楔状に形成されており、被組付巻回体60Aの外周側から所定のスロット収容部同士の間に先端部を挿入して配置する。なお、通し矢90は、被組付巻回体60Aに対して、制御装置(図示せず)によりそれぞれ単独で径方向に進退動可能とされている。
この通し矢90は、次の組付工程104(図22参照)において、被組付巻回体61に対して組付巻回体62を軸方向に相対移動させて組み付ける際に、組付巻回体62の反リード線側にあるターン部52(A、C、E、G、I、K)が干渉しない位置に配置する。即ち、巻回体60の隣り合うスロット収容部51同士は、6スロットピッチ離れているので、ターン部52が干渉しない範囲の6スロットピッチ間に6個ずつ通し矢90を配置する。このとき、6個の通し矢90は、スロット収容部51の周方向幅寸法分の距離を隔てた状態に配置する。本実施形態の場合、完成品の固定子巻線40は、径方向1列に整列した12本のスロット収容部51が周方向に1スロットピッチ離れて48列配列されているので、6個の通し矢90が配置された6スロットピッチの領域と、通し矢90が配置されていない6スロットピッチの領域が周方向に交互に4箇所ずつ存在している。即ち、本実施形態では、合計24個の通し矢90が所定のスロット収容部51同士の間に挿入配置されている。
なお、図22には、11個の巻回体60が組み付けられた組付体63に対して、組付巻回体62の組付けを行う状態が示されているが、合計24個の通し矢90は、最初の被組付巻回体61としての1個の巻回体60に対して所定位置に挿入配置される。
次の組付工程104では、巻回体形成工程102で渦巻き状に形成した48個の巻回体60を1個ずつ順番に軸方向に相対移動させて組み付けて、図23に示す円筒状の組付体63を形成する。即ち、本実施形態では、最初に、位置決め部材配置工程103において位置決め部材90が挿入配置された1個の巻回体60よりなる第1の被組付巻回体61に対して、1個の巻回体60よりなる第1の組付巻回体62を組み付ける。このとき、第1の被組付巻回体61に対して、第1の組付巻回体62を周方向(時計回り方向)に1スロットピッチずらせた位置に配置し、第1の組付巻回体62を拡径するように弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて第1の被組付巻回体61の外周側への組付けを開始する。なお、第1の組付巻回体62を拡径するように弾性変形させる際には、第1の被組付巻回体61および第1の組付巻回体62のターン部52にそれぞれ形成されたクランク部54が干渉しない大きさに弾性変形させる。
そして、第1の組付巻回体62の反リード線側のターン部52(A、C、E、G、I、K)が、第1の被組付巻回体61のリード線側のターン部52(B、D、F、H、J、L)を通過した時点で、第1の組付巻回体62の弾性変形による拡径状態を解除し、更に軸方向に相対移動させる。これにより、第1の組付巻回体62の各スロット収容部51は、通し矢90にガイドされて、第1の被組付巻回体61の各スロット収容部51と1スロットピッチ(通し矢90の周方向肉厚分の距離)離れた所定位置に移動する。また、第1の被組付巻回体61と第1の組付巻回体62の径方向に対向するスロット収容部51同士は、2個の通し矢90の間に挟まれた状態で径方向に1列に整列する。このようにして、第1の被組付巻回体61に第1の組付巻回体62を組み付けることにより、第1の組付体63を形成する。
第1の組付体63を形成した後、通し矢90の配置位置を変更する配置位置変更工程を行う。即ち、各通し矢90の配置位置を周方向(時計回り方向)に1スロットピッチずつずらせる。本実施形態の場合、6スロットピッチ間にある6個の通し矢90のうち、時計回り方向の最後尾にある1個の通し矢90を抜き取って、先頭の通し矢90の前方側に隣接したスロット収容部同士の間位置に挿入配置すればよい。
次いで、第1の組付体63(第2の被組付巻回体)に対して、第2の組付巻回体62を上記と同様にして第1の組付体63の外周側に組み付けて、第2の組付体63を形成する。その後、通し矢90の配置位置を変更する配置位置変更工程を上記と同様に行った後、第2の組付体63(第3の被組付巻回体)に対して、第3の組付巻回体62を上記と同様にして第2の組付体63の外周側に組み付け、第3の組付体63を形成する。
以後、上記の通し矢90の配置位置変更工程と、その直前に形成された組付体63と次の組付巻回体62を組み付ける組付工程とを繰り返し行って、第47の組付体63に第48の組付巻回体62を組み付けてなる第48の組付体63、即ち、図23に示す円筒状の最終組付体64を形成する。
以上のようにして組付工程104を行った後、最終組付体64に対して所定の導線50の引出し部53a、53bを溶接で接続するなどの必要な処理を施すことにより、図6〜図9に示す固定子巻線40が完成する。この固定子巻線40は、通し矢90により位置決めされる48個の巻回体60を互いに軸方向に相対移動させることにより組み付けられているので、スロット収容部51の位置ずれや固定子巻線40の形くずれ等の発生が回避されている。
以上のように、本実施形態の固定子巻線40の製造方法によれば、組付工程104において、被組付巻回体61に対して組付巻回体62を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付けるようにしている。そのため、被組付巻回体61と組付巻回体62との干渉を回避して、両巻回体61、62を円滑且つ容易に軸方向へ相対移動させることができるので、両巻回体61、62の組付けを簡易に行うことができる。これにより、導線50の絶縁皮膜68へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線40を製造することができる。
また、本実施形態の製造方法は、組付工程104を行う前に、被組付巻回体61の所定のスロット収容部51同士間に通し矢90(位置決め部材)を配置する位置決め部材配置工程103を行うようにしている。そのため、組付工程104において、被組付巻回体61に対して組付巻回体62を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて組み付ける際に、組付巻回体62のスロット収容部51が通し矢90にガイドされて所定位置に移動する。これにより、被組付巻回体61と組付巻回体62のスロット収容部51を径方向に精度良く整列させることができるので、スロット収容部51の整列精度を向上させることができる。
また、本実施形態の組付工程104は、被組付巻回体61に対して、組付巻回体62を1個ずつ順番に組み付けるようにしているので、組付作業を連続的に効率良く行うなうことができ、生産性の向上を図ることができる。また、任意の個数(n個)の巻回体60よりなる固定子巻線40を容易に製造することができる。
そして、本実施形態の製造方法は、第1の組付体63を形成した後、第47までの組付体を形成するごとに、通し矢90の配置位置をその時点での最適な位置に変更する配置位置変更工程を行うようにしている。そのため、次に組付体63と組付巻回体62とを組み付ける作業を行う際に、通し矢90が最適な位置に配置されているので、スロット収容部51を径方向に精度良く整列させることができる。これにより、スロット収容部51の整列精度をより確実に向上させることができる。また、通し矢90の配置位置変更工程は、通し矢90の配置位置を1スロットピッチずつ周方向にずらせるようにしているので、組付体63と組付巻回体62を周方向に1スロットピッチずれた状態に精度良く組み付けることができる。
また、組付工程104は、組付巻回体62を拡径するように弾性変形させて被組付巻回体61(組付体63)の外周側へ順番に組み付けるようにしている。そのため、被組付巻回体61(組付体63)と組付巻回体62とを、干渉しないようにして容易に組み付けることができるので、導線50の絶縁皮膜68へのダメージを少なくして、簡易に固定子巻線40を製造することが可能となる。
また、本実施形態の製造方法は、導線形成工程101において、導線50のターン部52にクランク部54が形成されている。しかし、組付工程104で被組付巻回体61と組付巻回体62とを組付ける際には、組付巻回体62を拡径するように弾性変形させつつ軸方向に相対移動させるので、被組付巻回体61と組付巻回体62とのクランク部54での干渉を回避することができる。よって、ターン部52にクランク部54を有する導線50を用いて固定子巻線40を製造する場合でも、本実施形態の上記の作用効果を有効に発揮させることができる。
〔他の実施形態〕
上記の実施形態では、組付工程104は、組付巻回体62を拡径するように弾性変形させて被組付巻回体61(組付体63)の外周側へ順番に組み付けるようにしていたが、図24に示すように、組付巻回体62を縮径するように弾性変形させて被組付巻回体61(組付体63)の内周側へ順番に組み付けるようにしてもよい。
このようにした場合には、被組付巻回体61(組付体63)に対して、組付巻回体62を反時計回り方向に1スロットピッチずらせた位置に配置する。そして、組付巻回体62を、縮径するように弾性変形させつつ軸方向に相対移動させて被組付巻回体61(組付体63)の内周側へ組み付ける。また、通し矢90の配置位置変更工程を行う際には、6スロットピッチ間にある6個の通し矢90のうち、反時計回り方向の最後尾にある1個の通し矢90を抜き取って、先頭の通し矢90の前方側に隣接したスロット収容部51同士の間位置に挿入配置すればよい。
また、上記の実施形態の組付工程104では、1個の被組付巻回体61に対して、47個の組付巻回体62を1個ずつ順番に組み付けて、最終的に48個の巻回体60よりなる組付体63を形成するようにしていたが、その他の方法で組み付けることも可能である。例えば、48個の巻回体60よりなる組付体63を形成する場合、2個の巻回体60よりなる組付体63を24個形成して、それらを順番に組み付けて48個の巻回体60よりなる組付体63を形成するようにする。また、3個の巻回体60よりなる組付体63を16個形成して、それらを順番に組み付けて48個の巻回体60よりなる組付体63を形成するようにしてもよい。さらに、組付体63を構成する巻回体60の個数を、4個、6個、8個、12個、24個に増やすようにしてもよい。
20…固定子、 30…固定子コア、 30a…端面、 31…スロット、 40…固定子巻線、 43…各相巻線、 50…導線、 51…スロット収容部、 52…ターン部、 53a…引出し部、 53b…引出し部、 54…クランク部、 55、56…段部、 57、58…膨出部、 60…巻回体、 61…被組付巻回体、 62…組付巻回体、 63…組付体、 64…最終組付体、 67…導体、 68…絶縁皮膜、 70、70B…渡り部、 81…第1固定治具、 82…第2固定治具、 83…回転治具、 90…通し矢(位置決め部材)。

Claims (7)

  1. 複数のスロット収容部と隣り合う該スロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有する複数の導線を組み付けてなる回転電機用の固定子巻線を製造する方法であって、
    前記スロット収容部と前記ターン部とを有する所定形状の前記導線を形成する導線形成工程と、
    前記導線の前記ターン部を円弧状に成形して渦巻き状に巻回された巻回体を形成する巻回体形成工程と、
    被組付巻回体の所定の前記スロット収容部同士間に位置決め部材を配置する位置決め部材配置工程と、
    前記被組付巻回体に対して組付巻回体を径方向に弾性変形させつつ軸方向に相対移動させた後に前記弾性変形を解除して組み付け、複数の前記巻回体よりなる組付体を形成する組付工程と、
    を有することを特徴とする回転電機用固定子巻線の製造方法。
  2. 前記組付工程は、第1の被組付巻回体に第1の組付巻回体を組み付けて第1の組付体を形成し、該第1の組付体に第2の組付巻回体を組み付けて第2の組付体を形成し、以後、第3の組付巻回体から第n(nは4以上の自然数)の組付巻回体を、前記第2の組付体から第(n−1)の組付体に対して順番に組み付けることにより第nの組付体を形成することを特徴とする請求項1に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
  3. 前記組付工程において、前記第1の組付体から前記第(n−1)の組付体をそれぞれ形成した後に、前記位置決め部材の配置位置を変更する配置位置変更工程を行うことを特徴とする請求項2に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
  4. 前記配置位置変更工程は、前記位置決め部材の配置位置を1スロットピッチずつ周方向にずらせることを特徴とする請求項3に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
  5. 前記組付工程は、前記組付巻回体を拡径するように弾性変形させて前記被組付巻回体の外周側に組み付けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
  6. 前記組付工程は、前記組付巻回体を縮径するように弾性変形させて前記被組付巻回体の内周側に組み付けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
  7. 前記導線形成工程または前記巻回体形成工程において、前記ターン部に前記固定子巻線の径方向に位置ずれするクランク部を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転電機用固定子巻線の製造方法。
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