以下、本発明の固定子コイルの製造方法の実施形態について詳しく説明する。なお、説明する実施形態はあくまでも実施形態の例にすぎず、本発明の固定子コイルの製造方法は、下記実施形態に限定されるものではない。本発明の固定子コイルの製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
まず、本実施形態の固定子コイルの製造方法により得られた固定子コイルを用いた回転電気の構成について説明する。図1は、実施形態に係る回転電機の構成を模式的に示す軸方向断面図である。図2は、本実施形態に係る回転電機の固定子の全体斜視図であり、図3はその固定子の平面図、図4はその固定子の側面図である。
本実施形態に係る回転電機1は、例えば車両の電動機および発電機を兼ねる回転電機として使用されるものであって、略有底筒状の一対のハウジング部材10a,10bが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け11,12を介して回転自在に支承される回転軸13に固定された回転子14と、ハウジング10の内部で回転子14を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子20と、を備えている。
回転子14は、永久磁石により磁性が周方向に交互に異なる磁極を、固定子20の内周側と向き合う外周側に複数形成している。回転子14の磁極の数は、回転電機により異なるため限定されるものではない。本実施形態においては、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
固定子20は、図2〜図4に示すように、固定子コア30と、複数(本実施形態では48本)のコイル線材50から形成される三相の固定子コイル40とを備えている。なお、固定子コア30と固定子コイル40との間には、絶縁紙を配してもよい。
図5は、本実施形態に係る固定子コアの平面図である。図6は、本実施形態に係る分割コアの平面図である。
固定子コア30は、図5に示すように、内周に複数のスロット31を形成された円環状を呈している。複数のスロット31は、その深さ方向が径方向と一致するように周方向に設けられている。固定子コア30に形成されたスロット31の数は、回転子の磁極数(8磁極)に対し、固定子コイル40の一相あたり2個の割合で形成されている。本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。
固定子コア30は、図6に示す分割コア32を所定の数(本実施形態では24個)を周方向に連結して形成されている。分割コア32の外周には、外筒37が嵌合されている(図2〜4参照)。分割コア32は、一つのスロット31を区画するとともに、周方向で隣接する分割コア32との間で一つのスロット31を区画する形状を呈している。具体的には、分割コア32は、径方向内方に伸びる一対のティース部33と、ティース部33を径方向外方で連結するバックコア部34とを有している。
固定子コア30を構成する分割コア32は、複数枚の電磁鋼板を積層させて形成されている。積層された電磁鋼板の間には、絶縁薄膜が配置されている。分割コア32は、この電磁鋼板の積層体からだけでなく、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて形成してもよい。
図7は、本実施形態に係る固定子コイルの全体斜視図であり、図8は、その固定子コイルの側面図、図9は、その固定子コイルの平面図、図10は、その固定子コイルの底面図である。
固定子コイル40は、図7〜図10に示すように、複数のコイル線材50により円筒形状に形成されており、固定子コア30のスロット31内に収容される直状部41と、この直状部41の両端においてスロット31外に配置されるコイルエンド部42を有する。一方のコイルエンド部42の端面において、出力線および中性点が軸方向に突出するとともに、内径側から突出したコイル線材50の端部を外径側から突出したコイル線材50の端部に接続する渡り部70が設けられている。
固定子コイル40を構成するコイル線材50は、図11(A)に示すように、銅製の導体67と、導体67の外周を覆い導体67を絶縁する内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68とから形成されている。内層68aおよび外層68bを合わせた絶縁被膜68の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の厚みが厚いので、コイル線材50同士を絶縁するためにコイル線材50同士の間に絶縁紙等を挟み込む必要がなくなっているが、コイル線材50同士の間あるいは固定子コア30と固定子コイル40との間に絶縁紙を配設してもよい。
外層68bはナイロン等の絶縁材で形成され、内層68aは外層68bよりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機1に発生する熱により外層68bは内層68aよりも早く結晶化するため、外層68bの表面硬度が高くなり、コイル線材50に傷がつきにくくなる。このため、後述するターン部52に段部を形成する加工を施したコイル線材50の絶縁を確保することができる。
さらに、コイル線材50は、図11(B)に示すように、内層68aおよび外層68bからなる絶縁被膜68の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材69で被覆してもよい。これにより、融着材69は、回転電機に発生する熱により絶縁被膜68よりも早く溶融するので、同じスロット31に収容されている複数のコイル線材50同士が融着材69同士により熱接着する。その結果、同じスロット31に収容されている複数のコイル線材50が一体化しコイル線材50同士が硬化することで、スロット31内のコイル線材50の機械的強度が向上する。なお、絶縁被膜68の外層68bには、ポリフェニレンサルファイド(PPS)よりなる被膜を用いてもよい。
図12は、コイル線材50を平面上に展開した場合の展開図である。コイル線材50は、図12に示すように、固定子コア30のスロット31内に収容される複数のスロット収容部51と、スロット31から固定子コア30の外に突出し、周方向に異なるスロットに収容されているスロット収容部51同士を接続している複数のターン部52とを有する。本実施形態の場合、各コイル線材50は、12個のスロット収容部51A〜51Lと、11個のターン部52A〜52Kを備えている。
具体的には、本実施形態におけるスロット収容部51は、図12の左端に位置する第1スロット収容部51Aから順に、固定子コア30の周方向に離間したスロット31にそれぞれ収容される第2スロット収容部51B、第3スロット収容部51C、・・・、第12スロット収容部51Lの12個からなる。また、ターン部52は、固定子コア30の一端側におけるスロット31の外部と固定子コア30の他端側におけるスロット31の外部とで交互にスロット収容部51同士を接続する第1ターン部52A、第2ターン部52B、・・・、第10ターン部52J、および第11スロット収容部51Kと第12スロット収容部51Lを接続する第11ターン部52Kの11個からなる。
このコイル線材50の隣り合うスロット収容部51同士の周方向(矢印Y方向)の離間距離Xは、全ての箇所で異なるようにされている。この場合、離間距離Xは、コイル線材50の第1スロット収容部51A側から第12スロット収容部51L側に向かうにつれて、徐々に短くなるようにされている。即ち、離間距離Xは、X1>X2>X3>X4>X5>X6>X7>X8>X9>X10>X11となっている。なお、離間距離Xは、固定子コア30の周方向において隣り合うスロット31同士の離間距離(スロットピッチ)を考慮して適宜設定される。
コイル線材50の両端には、他のコイル線材50等と接続するための引出し部53a、53bが設けられている。一方の引出し部53aは、第1スロット収容部51Aの端末から内側(図12の右側)へ戻るように、スロット収容部51間にあるターン部52の略半分の長さに形成されたターン部52Mを介して形成されている。よって、一方の引出し部53aは、第1スロット収容部51Aからターン部52Mの長さだけ内側(図11の右側)へ寄った所に位置している。他方の引出し部53bは、第12スロット収容部51Lの端末から内側(図12の左側)へ戻るように、スロット収容部51間にあるターン部52の略半分の長さに形成されたターン部52Nを介して形成されている。よって、他方の引出し部53bは、第12スロット収容部51Lからターン部52Nの長さだけ内側(図12の左側)へ寄った所に位置している。他方の引出し部53bとターン部52Nとの間には、固定子コイル40の軸方向端面上で固定子コア30の径方向外方へ折り曲げられて配置される渡り部70が設けられている。
ターン部52の略中央部には、ターン部52の両端に接続するスロット収容部51の径方向での位置をずらすためのクランク部54が設けられている。具体的には、クランク部54は、第1〜第12スロット収容部51A〜51Lのそれぞれを、コイル線材50の長手方向およびスロット収容部51の延伸方向に対して直交する方向(固定子コア30の径方向)に順次変位させるようにクランク状に形成されている。その結果、コイル線材50は、図12(A)に示すように階段状の形状を有することになる。
図13(A)(B)に、図12に示すコイル線材50を用いて円筒形状の固定子コイル40を形成した場合のターン部52の形状を示す斜視図を示す。図13(A)に示すように、ターン部52は、固定子コア30の径方向に変位して固定子コア30の端面30aに沿って延びるクランク部54を有する。クランク部54のクランク形状によるずれ量(固定子コア30の径方向への変位量)は、ターン部52の径方向厚み分である。これにより、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、ターン部52の径方向厚み分だけ変位している。このようにクランク部54がターン部52に設けられていることにより、図13(B)に示すように、周方向に隣接しているコイル線材50のターン部52同士を密に巻回できる。また、図13(B)に示すように周方向に隣接するターン部52は互いに同じ形状であり、ターン部52同士が干渉するのを防止している。
また、スロット31から固定子コア30の外に突出するターン部52の突出箇所に、コイル線材50がまたがって設置されているスロット同士に向けて固定子コア30の軸方向両側の端面30aに沿って段部55が形成されている。これにより、スロット31から突出しているコイル線材50のターン部52の突出箇所の間隔、言い換えればターン部52が形成する三角形状部分の底辺の長さは、コイル線材50がまたがって設置されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンド部42の高さが低くなる。
また、固定子コア30の端面30aに沿った段部55の長さをd1、周方向に隣接するスロット31同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、コイル線材50の段部55が周方向に隣り合うスロット31から突出するコイル線材50と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロット31から突出するコイル線材50(ターン部52)同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンド部42の高さが高くなったり、あるいはコイルエンド部42の径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、コイルエンド部42の高さが低くなる。さらに、コイルエンド部42の径方向の幅が小さくなるので、固定子コイル40が径方向外側に張り出すことを防止する。
さらに、コイル線材50には、ターン部52の略中央部のクランク部54と、ターン部52の突出箇所に形成した段部55との間に、それぞれ2個の段部56が形成されている。つまり、固定子コア30の一方の軸方向の端面30a側のコイル線材50のターン部52には、1個のクランク部54と合計6個の段部55、56が形成されている。これにより、クランク部54や段部55、56を形成しない三角形状のターン部の高さに比べ、ターン部52の高さが低くなる。クランク部54のクランク形状も、段部55、56と同様に、固定子コア30の端面30aに沿って形成されている。したがって、コイル線材50のターン部52は、クランク部54を挟んで両側が階段状に形成されている。
固定子コイル40は、図12に示したコイル線材50を48本用いて形成されている。ただし、固定子コイル40に出力線や中性点などを設けるために、渡り部70を設けていないコイル線材50を適宜混在させても良い。したがって、本実施形態では、48本のコイル線材50の全ては、各コイル線材50の両端部に形成された引出し部53a、53bの間において同じ形状に成形されている。
この固定子コイル40を構成するコイル線材50は、ターン部52の略中央部に、ターン部52の径方向厚み分だけ径方向にずれたクランク部54が設けられていることにより、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、固定子コア30の中心軸線からの半径距離が、スロット収容部51の径方向厚み分だけ異なっている。また、コイル線材50は、隣り合うスロット収容部51同士の離間距離Xが、コイル線材50の第1スロット収容部51A側から第12スロット収容部51L側に向かうにつれて、徐々に短くなるようにされており、全ての箇所で実質的に異なっている(図12(B)参照)。これらのことから、固定子コイル40は、径方向に重なり合うスロット収容部51が、周方向に位置ずれすることなく径方向一列にストレートな状態に整列するようになるので、真円筒形状により近い形状にすることができる(図7および図8参照)。
この固定子コイル40は、複数のコイル線材50の第1スロット収容部51A同士、第2スロット収容部51B同士、・・・、第12スロット収容部51L同士をそれぞれ周方向に連続するスロットに配置するとともに、第1スロット収容部51A同士、第2スロット収容部51B同士、・・・、第12スロット収容部51L同士の固定子コアの中心軸線Oからの半径距離がそれぞれ等しくなるよう配置されているので、固定子コイル40の外径寸法および内径寸法を周方向で均一化することができる。この固定子コイル40は、図14に示すように、それぞれの相が16本のコイル線材50を直列に接続した各相巻線43(U、V、W)をY結線した三相巻線として形成されている。
図15は、本実施形態において各スロットの最外径側に配置される各コイル線材の第1スロット収容部の配置位置を示す説明図である。図15において、各コイル線材50のスロット収容部51は、12個の破線円と放射方向に延びる破線とが交差する位置に配置されており、最外径側と最内径側のみが矩形断面形状で表されている。また、放射方向に1列に並んだスロット収容部51の外側には、それぞれ対応する1〜48のスロット番号が付されている(以後、図16においても同じ)。また、スロット番号の外側には、それぞれのスロットの最外径側(第12層)に、巻回の始端側となる第1スロット収容部51Aが配置されるコイル線材50の番号が付されている。
各相の巻線を構成する16本のコイル線材50は、8個の同一のスロット31にスロット収容部51が収容される8本のコイル線材50と、それら8個のスロット31とは別の8個の同一のスロット31にスロット収容部51が収容される8本のコイル線材50とに分かれている。例えばU相の場合には、8本のコイル線材(U1−1)〜(U1−4)および(U1−1’)〜(U1−4’)は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回されて、それぞれのスロット収容部51が、1番スロット、7番スロット、13番スロット、19番スロット、25番スロット、31番スロット、37番スロットおよび43番スロットに収容される。また、他の8本のコイル線材(U2−1)〜(U2−4)および(U2−1’)〜(U2−4’)は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回されて、それぞれのスロット収容部51が、2番スロット、8番スロット、14番スロット、20番スロット、26番スロット、32番スロット、38番スロットおよび44番スロットに収容される。
なお、図15には、代表としてコイル線材(U1−1)の軌跡が示されている。図15において、黒四角で示された部分はコイル線材(U1−1)のスロット収容部51が配置されていることを示し、コイル線材(U1−1)の周方向に延びる太線は、固定子コア30の軸方向一方側(図15の紙面手前側)に位置するターン部52を示し、コイル線材(U1−1)の周方向に延びる二点鎖線は、固定子コア30の軸方向他方側(図15の紙面後側)に位置するターン部52を示す(以後、図16においても同じ)。
この固定子コイル40は、図15に示すように、各スロット31において、8本のコイル線材50のスロット収容部51が径方向に12層、積層された状態になっている。コイル線材(U1−1)は、始端側の第1スロット収容部51Aが1番スロットの最外層(第12層)に位置し、終端側の第12スロット収容部51Lが19番スロットの最内層(第1層)に位置している。
また、固定子コイル40を構成する48本のコイル線材50は、長手方向(周方向)に1スロットピッチずつずれて配置されているので、各コイル線材50の始端側となる第1スロット収容部51Aが、48個の各スロット31の最外層(第12層)に順に収容されている。下記の表1は、1番〜48番の各スロット31において、最外層に位置するコイル線材50の番号と、最内層に位置するコイル線材50の番号をまとめたものである。
固定子コイル40を構成するコイル線材50は、各コイル線材50の一端側(第1スロット収容部51A側)から他端側(第12スロット収容部51L側)に向かうにつれて、スロット収容部51の固定子コア30の中心軸線Oからの半径距離が順次小さくなっている。本実施形態の場合、各コイル線材50は、ターン部52によって接続されたスロット収容部51同士の固定子コア30の中心軸線Oからの半径方向距離がスロット収容部51の径方向厚み分異なっている。
図16は、固定子コイル40を図15の裏側から見た場合の、1本のコイル線材(U1−4’)の軌跡を示す図である。このコイル線材(U1−4’)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが43番スロットの第12層(最外層)に配置され、第2スロット収容部51Bが1番スロットの第11層に配置され、第3スロット収容部51Cが7番スロットの第10層に配置され、第4スロット収容部51Dが13番スロットの第9層に配置され、最終の第12スロット収容部51Lが13番スロットの第1層(最内層)に配置されている。即ち、コイル線材(U1−4’)は、始端側(外径側)から終端側(内径側)に向かうにつれて、スロット収容部51の固定子コア30の中心軸線Oからの半径距離が順次小さくなっている。
よって、固定子コア30の中心軸線Oから、第1スロット収容部51Aまでの半径距離r43と、第2スロット収容部51Bまでの半径距離r1と、第3スロット収容部51Cまでの半径距離r7と、第4スロット収容部51Dまでの半径距離r13は、順次スロット収容部51の径方向厚み分小さくなっており、以後同様に、第12スロット収容部51Lに至るまで、半径距離が順次スロット収容部51の径方向厚み分小さくなっている。すなわち、第1スロット収容部51Aから第12スロット収容部51Lに至るまで、半径距離が順次小さくなるのみで、途中で半径距離が大きくなることはない。
次に、16本のコイル線材50を直列に接続してなる各相巻線43(U、V、W)のうち、代表としてV相の各相巻線43の接続状態を、図16、図17および上記の表1を参照して説明する。なお、U相、W相の各相巻線もV相と同様の接続となっている。
図16において出力線Vの始端に位置するコイル線材(V1−1)は、表1および図17に示すように、始端側の第1スロット収容部51Aが5番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが23番スロットの最内層(第1層)に配置されている。コイル線材(V1−1)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが17番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが35番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V1−2)の始端側が接続されている。
コイル線材(V1−2)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが29番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが47番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V1−3)の始端側が接続されている。コイル線材(V1−3)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが41番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが11番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V1−4)の始端側が接続されている。コイル線材(V1−4)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが6番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが24番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V2−1)の始端側が接続されている。
コイル線材(V2−1)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが18番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが36番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V2−2)の始端側が接続されている。コイル線材(V2−2)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが30番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが48番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V2−3)の始端側が接続されている。コイル線材(V2−3)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが42番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが12番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V2−4)の始端側が接続されている。
コイル線材(V2−4)の終端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが48番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが18番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V2−4’)の終端側が接続されている。コイル線材(V2−4’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが36番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが6番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V2−3’)の終端側が接続されている。コイル線材(V2−3’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが24番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが42番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V2−2’)の終端側が接続されている。コイル線材(V2−2’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが12番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが30番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V2−1’)の終端側が接続されている。
コイル線材(V2−1’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが47番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが17番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V1−4’)の終端側が接続されている。コイル線材(V1−4’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが35番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが5番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V1−3’)の終端側が接続されている。コイル線材(V1−3’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが23番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが41番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V1−2’)の終端側が接続されている。コイル線材(V1−2’)の始端側には、始端側の第1スロット収容部51Aが11番スロットの第12層に配置され、終端側の第12スロット収容部51Lが29番スロットの第1層に配置されたコイル線材(V1−1’)の終端側が接続されている。なお、コイル線材(V1−1’)の始端側は、中性点Vに接続されている。
次に、表1、図12および図17を参照して各コイル線材50の接続状態を説明する。ここでは、代表として2本のコイル線材(V1−1)(V1−2)の接続状態を説明する。一方のコイル線材(V1−1)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが5番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側となる第12スロット収容部51Lが23番スロットの最内層(第1層)に配置されている。このコイル線材(V1−1)の終端側に設けられた引出し部53b(内周側端部)は、第12スロット収容部51Lが配置されている23番スロットからターン部52Nの長さ分だけ戻った所(20番スロット付近)に位置している。
そして、他方のコイル線材(V1−2)は、始端側となる第1スロット収容部51Aが17番スロットの最外層(第12層)に配置され、終端側となる第12スロット収容部51Lが35番スロットの最内層(第1層)に配置されている。このコイル線材(V1−2)の始端側に設けられた引出し部53a(外周側端部)は、第1スロット収容部51Aが配置されている17番スロットからターン部52Mの長さ分だけ戻った所(20番スロット付近)に位置している。図7〜図10に示すように、このコイル線材(V1−1)の引出し部53b(内周側端部)は、径方向外方側へ略直角に折り曲げられた後、その先端が、固定子コイル40の外周端部に位置するコイル線材(V1−2)の引出し部53a(外周側端部)の先端部に溶接接合されることにより接続されている。
この溶接接合は、固定子コイル40の最も外径側に位置するターン部52よりも外径側において溶接により接続されている。この場合、コイル線材(V1−1)の引出し部53b(内周側端部)の折り曲げ部は、固定子コイル40の軸方向端面(ターン部52の軸方向外面)上を通る渡り部70を形成しており、2本のコイル線材(V1−1)(V1−2)は、渡り部70を介して接続されている。これにより、内径側に位置する第12スロット収容部51Lの径方向内方への膨出をより効果的に防止することができるので、内径側に位置する回転子との干渉を回避することが可能となる。
なお、渡り部70は、図3および図9に示すように、渡り部70の径方向両端部が、固定子コア30(固定子コイル40)の中心軸線Oから放射方向に延びる直線に沿って延びるように形成されている。渡り部70の形状をこのようにすることによって、コイル線材50の折り曲げを容易にするとともに、溶接接合を容易にすることができる。
また、この渡り部70は、図3および図9に示すように、固定子コイル40の軸方向端面上において、周方向に略3/4周する範囲の領域に設けられている。そして、固定子コイル40の軸方向端面上の残り1/4周する範囲の領域には、中性点V、出力線W、中性点U、出力線V、中性点Wおよび出力線Uの引出し部が順番に並んで設けられている。即ち、固定子コイル40の軸方向端面において、中性点U、V、Wの引出し部と同じ領域に出力線U、V、Wの引出し部が設けられているとともに、渡り部70が設けられる領域と中性点U、V、Wおよび出力線U、V、Wの引出し部が設けられる領域が分離されている。
上記のように構成された固定子コイル40は、外周側から分割コア32のティース部33が挿入されることによって固定子コア30と組み付けられている(図2〜図4参照)。これにより、固定子コイル40を構成するコイル線材50は、固定子コア30の内周側で周方向に沿って波巻きされた状態に組み付けられている。コイル線材50のターン部52によって接続されたスロット収容部51同士は、所定のスロットピッチ(本実施形態では、3相×2個=6スロットピッチ)だけ離間したスロット31に収容されている。隣り合うスロット収容部51同士を接続するターン部52は、固定子コア30の軸方向の両端面からそれぞれ突出しており、その突出しているターン部52の集合体によりコイルエンド部42が形成されている。
次に、本実施形態の固定子コイル40の製造方法について説明する。本実施形態の固定子コイル40の製造方法は、図18に示すように、コイル線材形成工程101と、組む込み工程102と、予備成形工程103と、巻き取り工程104とからなる。
<コイル線材形成工程101>
コイル線材形成工程101では、電気導体線を所定形状に成形してコイル線材50を形成する。本実施形態場合、1個の固定子コイル40につき48本のコイル線材50を準備する。ここで形成するコイル線材50は、互いに平行に延びてコイル線材50の長手方向に並列した12個のスロット収容部51と、隣り合うスロット収容部51同士をスロット収容部51の一端側と他端側とで交互に連結する11個のターン部52とを有する(図12参照)。なお、電気導体線を成形する成形装置としては、従来より公知のものを採用することができる。
<組み込み工程102>
組み込み工程102では、コイル線材形成工程101で形成したコイル線材50を、6本ずつ所定の方法で組み込むことにより、図19に示される組み込み体47を形成する。この組み込み体47は、6本のコイル線材50が組み込み体47の長手方向に1スロットピッチずつずれた状態で重ね合わされることにより組み付けられており、略平面状に形成されている。
<予備成形工程103>
予備成形工程103は、図20及び図21に示す予備成形装置を用いて、組み込み体47を所定の円弧状に成形する予備成形を行う。まず、ここで用いる予備成形装置の構成について説明する。この予備成形装置は、図20に示すように、ベッド80上に設置されたシュートケース81と、第1成形工程を行う第1ローラ82及び第1押さえ部材83と、第2成形工程を行う第2ローラ84及び第2押さえ部材85と、案内部材86と、整列部材87と、センサ88を備えている。
シュートケース81は、成形すべき組み込み体47を整列させた状態で送り出すものであって、組み込み体47の厚み寸法と略同じ幅で長手方向にストレートに延びる凹溝81aを有する。この場合、組み込み体47は、その先端が図20の直線Aに位置するようにして凹溝81aにセットされる。
シュートケース81の送り出し側端部の近傍位置には、外径110mmの第1ローラ82が配設されている。この第1ローラ82は、図20に示すように、シュートケース81の凹溝81aの延長方向が、第1ローラ82の外周面の周方向と略一致する位置に配設されている。この第1ローラ82は、図21に示すように、ベッド80に対してベアリング82aを介して回転可能に立設された第1回転軸82bの上端部外周に同軸状に嵌合固定されている。なお、第1ローラ82の外径は、次の巻き取り工程104で形成される巻き取り体の外径の大きさに合わせられている。
第1回転軸82bの下端には、第1回転軸82b及び第1ローラ82を図20において反時計回りに回転駆動させるサーボモータ82cが連結されている。このサーボモータ82cは、図示しない制御部により回転制御される。第1回転軸82bの軸方向中央部には、プーリ82dが第1回転軸82bと同軸状に取着されている。
第1押さえ部材83は、ベッド80上に設置された基台83aに対して、第1ローラ82の外周面に向かって進退移動自在に設置された可動基板83bを有する。この可動基板83bは、第1駆動モータ83cにより第1ローラ82の外周面に対して進退移動可能にされている。そして、この可動基板83bには、互いに所定距離を隔てて配置された一対の第1プーリ83d、83dが設けられており、一対の第1プーリ83d、83d間には、第1周回ベルト83eが掛け渡されている。
この第1押さえ部材83は、組み込み体47の先端が図20の直線Aの所に位置合わせされてシュートケース81の凹溝81aに組み込み体47をセットした後、第1駆動モータ83cを駆動させて可動基板83bを第1ローラ82の外周面に向かって前進移動させることにより、組み込み体47の先端部を第1周回ベルト83eで第1ローラ82の外周面に押し当てるようにされている。なお、第1周回ベルト83eで組み込み体47が第1ローラ82の外周面に押し付けられる範囲は、第1ローラ82の回転角度で約90°の範囲となっている。
第2ローラ84は、外径が90mmで、第1ローラ82よりも外径の小さいものが用いられている。なお、第2ローラ84の外径は、次の巻き取り工程104で用いられる芯部材の外径と同じ寸法に設定されている。この第2ローラ84は、第1ローラ82と所定距離を隔てて並列状に配設されている。本実施形態では、シュートケース81から組み込み体47が送り出される方向と、第1ローラ82と第2ローラ84を結ぶ方向が略直角となる位置に配設されている。第2ローラ84は、図21に示すように、ベッド80に対してベアリング84aを介して回転可能に立設された第2回転軸84bの上端部外周に同軸状に嵌合固定されている。
第2回転軸84bの下端には、プーリ84dが第2回転軸84bと同軸状に取着されている。このプーリ84dと第1回転軸82bに取着されたプーリ82dとの間には、タイミングベルト82eが掛け渡されている。これにより、第2回転軸84bは、サーボモータ82cにより回転駆動される第1回転軸82bに従動して回転するようになっている。この場合、第1ローラ82と第2ローラ84は、プーリ82dとプーリ84dのプーリ比により、回転周速を合わせて同期回転するように設定されている。
第2押さえ部材85は、ベッド80上に設置された基台85aに対して、第2ローラ84の外周面に向かって進退移動自在に設置された可動基板85bを有する。この可動基板85bは、第2駆動モータ85cにより第2ローラ84の外周面に対して進退移動可能にされている。そして、この可動基板85bには、互いに所定距離を隔てて配置された一対の第2プーリ85d、85dが設けられており、一対の第2プーリ85d、85d間には、第2周回ベルト85eが掛け渡されている。
この第2押さえ部材85は、第1ローラ82から搬送されて来る組み込み体47の先端部が、第2ローラ84と第2周回ベルト85eの間に到達したときに、第2駆動モータ85cを駆動させて可動基板85bを第2ローラ84の外周面に向かって前進移動させることにより、組み込み体47の先端部を第2周回ベルト85eで第2ローラ84の外周面に押し当てるようにされている。なお、第2周回ベルト85eで組み込み体47が第2ローラ84の外周面に押し付けられる範囲は、第2ローラ84の回転角度で約90°の範囲となっている。
第1ローラ82と第2ローラ84の間には、第1ローラ82から第2ローラ84へ向かって搬送される組み込み体47の先端を、第2ローラ84の外周面の所定位置に向けて案内する案内部材86が設置されている。
また、第2ローラ84及び第2押さえ部材85の組み込み体47送り出し側には、円弧状に成形された組み込み体47の先端部を整列させる整列部材87が設置されている。この整列部材87は、シリンダ87aの作動によって組み込み体47のスロット収容部51を整列させた状態でクランプするクランプ部87bを有する。
また、整列部材87の組み込み体47送り出し側には、発光素子88aと受光素子88bとからなり、組み込み体47の先端部の到達を検出する光電センサ88が設置されている。この光電センサ88は、組み込み体47の先端部の到達を検出したときに、その検出信号を、サーボモータ82cを制御する前記制御部に送信する。この光電センサ88は、搬送しつつ成形する組み込み体47の先端を検出することによって、第1成形工程及び第2成形工程の終了位置を同時に検出することができる。
上記のように構成された予備成形装置による組み込み体47の予備成形は次のようにして行う。まず、成形すべき組み込み体47を、その先端が図20の直線Aに位置するようにして、シュートケース81の凹溝81aにセットする。このとき、組み込み体47は、各コイル線材50の引出し部53bが先端側となるようにセットする。
次いで、第1押さえ部材83の第1駆動モータ83cを駆動させて、可動基板83bを第1ローラ82の外周面に向かって前進移動させる。これにより、第1周回ベルト83eが、組み込み体47の先端部を第1ローラ82の外周面に押し当てた状態になる。このとき、第1周回ベルト83eによる組み込み体47の先端部の押し当て範囲は、第1ローラ82の回転角度で約45°の範囲となっており、この押し当て範囲において、組み込み体47の上下両側にあるターン部52(コイルエンド部42)が第1ローラ82の外周面に沿った円弧状に成形される。
この状態で、サーボモータ82cを駆動させることにより、第1回転軸82b及び第1ローラ82が回転を開始するとともに、これと同期して第2回転軸84b及び第2ローラ84が回転を開始する。これにより、第1周回ベルト83eで第1ローラ82の外周面に先端部が押し当てられた組み込み体47は、第1ローラ82の回転に伴って第1周回ベルト83eと共に連れ周りした状態で搬送される。このとき、組み込み体47を押圧している第1周回ベルト83eは、一対の第1プーリ83d、83d間を周回する。
これにより、搬送される組み込み体47は、第1ローラ82の外周面と第1周回ベルト83eで挟持される箇所を通過する際に、組み込み体47のターン部52(コイルエンド部42)が第1ローラ82の外周面に沿った円弧状に成形される。なお、第1ローラ82の外周面と第1周回ベルト83eにより行う第1成形工程は、組み込み体47の後端部が到達乃至は通過するまで行われる。これにより、略平面状であった帯状の組み込み体47が、長手方向の全長に亘って円弧状に成形される。
このようにして成形されつつ搬送される組み込み体47は、その先端部が案内部材86によって第2ローラ84の外周面の所定位置Bに向けて案内される。そして、組み込み体47の先端が第2ローラ84の外周面の所定位置Bに到達すると、第2押さえ部材85の第2駆動モータ85cを駆動させて、可動基板85bを第2ローラ84の外周面に向かって前進移動させる。これにより、第2周回ベルト85eが、組み込み体47の先端部を第2ローラ84の外周面に押し当てた状態になる。これにより、組み込み体47は、第2ローラ84の回転に伴って第2周回ベルト85eと共に連れ周りした状態で搬送される。
このとき、組み込み体47を押圧している第2周回ベルト85eは、一対の第2プーリ85d、85d間を周回する。これにより、搬送される組み込み体47は、第2ローラ84の外周面と第2周回ベルト85eで挟持される箇所を通過する際に、組み込み体47の先端部のターン部52(コイルエンド部42)が第2ローラ84の外周面に沿った円弧状に成形される。即ち、第2ローラ84の外周面と第2周回ベルト85eにより組み込み体47の先端部を成形する第2成形工程が行われる。なお、第2成形工程が行われている際には、第1成形工程も続行されており、第1成形工程と第2成形工程は、組み込み体47を搬送しつつ連続的に行われる。
そして、第2ローラ84の外周面と第2周回ベルト85eによる成形を終えて送り出された組み込み体47の先端が到達したことを光電センサ88が検出すると、光電センサ88から送信された検出信号に基づき、前記制御部がサーボモータ82cの駆動を停止させる。これにより、第1ローラ82及び第2ローラ84の回転が同時に停止し、第1成形工程及び第2成形工程が同時に終了する。
その後、整列部材87のシリンダ87aを作動させて、クランプ部87bにより組み込み体47のスロット収容部51を整列させた状態でクランプする。次いで、第1押さえ部材83の第1駆動モータ83cを駆動させて、可動基板83b及び第1周回ベルト83eを第1ローラ82から後退移動させると同時に、第2押さえ部材85の第2駆動モータ85cを駆動させて、可動基板85b及び第2周回ベルト85eを第2ローラ84から後退移動させる。その状態で、予備成形工程を終了した組み込み体47は、予備成形装置の上方から取り出され、次の巻き取り工程104へ送られる。
<巻き取り工程104>
巻き取り工程104では、予備成形された8組の組み込み体47を、芯部材に巻き取って巻き取り体を形成する。この場合、8組の組み込み体47を、予備成形工程103の第2成形工程で円弧状に成形された先端部を芯部材の外周面に沿うように当接させて、芯部材の周方向に45°ずつ位相をずらせて等間隔となるように配置する。これにより、8組の組み込み体47は、芯部材の外周面の周りに45°位相がずれた状態で渦巻き状に配置される。この状態で、芯部材を回転させつつ、組み込み体47を外周側から押圧して芯部材に巻き取ることにより、円筒形状に成形された巻き取り体を形成する。この巻き取り体においては、組み込み体47の各コイル線材50が周方向に略1周半する渦巻き状に巻き付けられている。
その後、48本のコイル線材50のうち所定のコイル線材50の引出し部53a、53bを溶接で接続することにより、図7〜図10に示す固定子コイル40が得られる。
以上のように、本実施形態の固定子コイル40の製造方法によれば、巻き取り工程104の前に、第1成形工程及び第2成形工程よりなる予備成形工程103を行うようにしている。そのため、次の巻き取り工程104において組み込み体47を先端部から芯部材に巻き取る際に、組み込み体47の先端部が芯部材の外周面形状に倣い易くなるので、芯部材の外周面に密着した状態にすることができる。これにより、組み込み体47を、所望の径で安定して巻き取ることができる。
また、本実施形態の予備成形工程103は、第1ローラ82と第2ローラ84のそれぞれの外周面で組み込み体47を搬送しつつ、第1成形工程と第2成形工程を連続的に行うようにしているので、第1ローラ82と第2ローラ84による組み込み体47の成形を効率良く行うことができる。そのため、生産性が向上し、低コスト化を図ることができる。
さらに、第1ローラ82と第2ローラ84は、回転周速が同じになるように同期して回転するようにしている。これにより、第1ローラ82と第2ローラ84の外周面で搬送される組み込み体47のコイル線材50へのダメージを低減することができるとともに、第1ローラ82と第2ローラ84の両方のローラで同時に成形することができる。
また、第2ローラ84の外径は、芯部材の外径と同じ寸法に設定されていることから、第2ローラ84で成形する組み込み体47の先端部の円弧形状を、芯部材の外周面形状に合わせることができる。そのため、巻き取り工程を行う際に、組み込み体47の先端部を芯部材の外周面により確実に密着した状態にすることができるので、所望の径でより安定した巻き取りを行うことが可能となる。
また、第1ローラ82の外径は、第2ローラ84の外径よりも大きい寸法に設定され、且つ巻き取り工程104で形成される巻き取り体の外径に合わせられているので、狙いの外径寸法に巻き取られた巻き取り体を得ることができる。本実施形態では、上記のように、第2ローラ84の外径が、芯部材の外径と同じ寸法に設定されているので、巻き取り体の外径寸法を狙いの外径寸法により確実に近付けることが可能となる。
そして、本実施形態の予備成形装置によれば、第1ローラ82と第1押さえ部材83によって、組み込み体47を長手方向の全長に亘って円弧形状に成形するとともに、第2ローラ84と第2押さえ部材85によって、その組み込み体47の先端部の所定範囲を円弧形状に成形することができる。これにより、巻き取り工程104を行う際に、組み込み体47の先端部が芯部材の外周面に密着した状態にすることが可能になり、所望の径で安定した巻き取りを行うことが可能になる。
また、第1押さえ部材83は、一対の第1プーリ83d、83dと第1周回ベルト83eと第1駆動モータ83cとを備え、第2押さえ部材85は、一対の第2プーリ85d、85dと第2周回ベルト85eと第2駆動モータ85cとを備えている。そのため、巻き取り工程104を行う際に、所望の径で安定した巻き取りを行うことができる予備成形装置を容易に実現することができる。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
例えば、上記の実施形態では、第1ローラ82の外径は、第2ローラ84の外径よりも大きい寸法に設定され、且つ巻き取り工程104で形成される巻き取り体の外径に合わせられていたが、成形すべき組み込み体47の剛性が高くスプリングバックが発生し易い場合には、第1ローラ82と第2ローラ84の外径を、巻き取り工程で形成される巻き取り体の外径よりもスプリングバックの分だけ小さくして、同じ寸法に設定するようにしてもよい。このようにすれば、第1ローラ82で成形された組み込み体47がスプリングバックにより変形した場合でも、組み込み体47の先端部が第2ローラ84で再度成形されることによって、スプリングバックの変位量を解消乃至は低減することができるので、組み込み体47の全長において狙いの円弧形状に成形することが可能となる。
また、上記の実施形態の組み込み工程102では、48本のコイル線材50を6本ずつ組み込んで8組の組み込み体47を形成するようにしていたが、組み込み体47に組み込まれるコイル線材50の本数は、適宜変更してもよい。例えば、8本ずつ組み込んで6組の組み込み体47を形成したり、12本ずつ組み込んで4組の組み込み体47を形成したり、16本ずつ組み込んで3組の組み込み体47を形成したり、24本ずつ組み込んで2組の組み込み体47を形成したりすることができる。
但し、組み込み体47に組み込まれるコイル線材50の本数が多くなる程、組み込み体47の剛性が高まるので、予備成形工程103において組み込み体47を成形する際に、大きなスプリングバックが発生し易くなる。したがって、この点を考慮して、組み込み体47に組み込まれるコイル線材50の本数を決定すればよい。
また、上記の実施形態では、組み込み体47は、6本のコイル線材50が組み込み体47の長手方向に1スロットピッチずつずれた状態で重ね合わされることにより組み付けられていたが、それらのコイル線材50を所定の方法で編み込むことにより組み付けるようにしてもよい。