JP5482364B2 - 燃料電池用反応層 - Google Patents
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Description
例えば、燃料電池を低加湿環境で運転すると、膜電極接合体は乾燥状態となってそのプロトン伝導性が低下し、充分な発電特性を発揮できなくなる。他方、燃料電池を高加湿環境で運転すると、いわゆるフラッディングが発生し発電特性の低下をきたす。
これにより、低加湿環境化においても第1の層は湿潤状態に保たれ、高加湿環境下に滞留した水分が第2の層から効率よく排出される。
燃料電池において固体電解質膜と拡散層との間に介在される反応層であって、
前記固体電解質膜に接する第1の層と、前記拡散層に接する第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間に介在される中間層とを備え、前記第1の層と第2の層は、導電性の担体に担持された触媒を有し、かつ第1の層は前記第2の層より保湿性が高く、前記中間層には触媒が存在しない、ことを特徴とする燃料電池用反応層。
他方、高加湿環境下では、過剰になった生成水が、中間層に拡散するため、第1の層におけるフラッディングの発生を防止できる。
このように規定される第2の局面の反応層によれば、中間層がバッファ層としてより確実に機能する。
前記第3−1の層は前記第1の層と同じか若しくはそれより低い保湿性でありかつ前記第3−2の層より高い保湿性を有し、前記第3−2の層は前記第2の層と同じかそれより高い保湿性を有し、前記第3−3の層は前記第3−1の層及び前記第3−2の層より高い保湿性を有する。
このように規定される中間層ではその中心となる層の保湿性を高くすることにより、燃料電池用反応層として優れた性能を奏するものとなる。例えば低加湿環境においては第1の層で生成された生成水が保湿性の高い第3−3の層で吸水(トラップ)され、この第3−3の層より外側(第3−2の層、第2の層、即ち拡散層側)の層への生成水の移動が防止される。これら外側の層は拡散層におけるガス流れの影響を受けやすいので、即ち生成水が持ち去られやすいので、この第3−3の層で生成水をトラップすることにより、低加湿環境下における第1の層の過乾燥を防止し、そこでの燃料電池反応の高い効率を確保する。
なお、第3の局面において、触媒を備えないことの他は前記第3−1の層を前記第1の層と同じ特性とし、同じく触媒を備えないことの他は前記第3−2の層を前記第2の層と同じ特性とすることが好ましい(第4の局面)。例えば、同一細孔径(第1の細孔径)を有するカーボン粒子で第3−1の層と第1の層とを構成し、同様に同一細孔径(第2の細孔径)を有するカーボン粒子で第3−2層と第2の層とを構成する。第3−1の層を構成するカーボン粒子の細孔径と第1の層を構成するカーボン粒子の細孔径とが異なる場合に比べて、細孔径が同一とされた両層間では水の移動がより円滑に行われる。第3−2の層と第2の層との間においてもその細孔径を同じくすることにより水の移動が円滑になり、もって、高加湿環境下におけるフラッディングの防止に役立つ。
かかる第5の局面は保湿性を調整する具体的方策を列挙したものであり、かかる方策を採用することにより、安価でかつ確実に各層の保湿性を制御可能となる。
この燃料電池1は固体電解質膜2を水素極10と空気極20とで挟んだ構成である。
固体電解質膜2にはプロトン導電性の高分子材料、例えばナフィオン(デュポン社商標名、以下同じ)等のフッ素系ポリマーを用いることができる。
空気極20も反応層21及び拡散層26を備える。反応層21及び拡散層26の基本構造は、水素極10のそれらと同じである。
第1の層22と第2の層24にはともに担体に触媒が担持されている。中間層23には何ら触媒が担持されていない。
各層の保湿性の制御は、基材、電解質及び触媒の各特性を制御することにより行える。
例えば、カーボン粒子からなる基材の空隙率を高くすることにより保湿性が小さくなる。同様に、担体の撥水性を高めることにより保湿性が小さくなる。
電解質の配合割合を多くすることにより保湿性は高くなる。なお、電解質のEW(スルホン酸基1モル当たりの乾燥重量)を高くすることにより保湿性が低下する。
また、触媒金属の担持密度を高くする事によって、反応層が薄くなり、生成水の発生密度が高まり、乾燥を防止することもできる。
更には親水性の触媒を採用することにより保湿性を高く維持できる。親水性の触媒としてPtCo触媒を挙げることができる。また、PtCo触媒を含めて汎用的な触媒を酸処理することにより、その親水性を向上可能である。
上記を考慮して、即ち、基材、電解質及び触媒の少なくとも1つの特性を変えることにより、第1の層22の保湿性を第2の層24の保湿性より高くすることができる。
他方、高湿度環境で高性能を得るためには、生成水による細孔の閉塞を防止して、反応層全体で発電させることが重要となる。中間層を設けた場合、第1層22が高保湿性であっても、過剰になった生成水が、中間層に拡散するため、第1の層22におけるフラッディングの発生を防止できる。
以上の作用を確保する見地から、中間層23は0.1〜10μm程度の厚さを備えることが好ましい。中間層23には触媒を担持させないが、製造工程において第1の層22や第2の層24から触媒が拡散することがあり、このような意図しない触媒が存在する場合も中間層の定義に含まれるものとする。
実施例の反応層21は次の様にして形成される。
先ずは、反応層21を構成する各層22,23,24のペーストを準備する。
第1の層22のペーストは、担体としてケッチェンブラックEC600JD(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)の商標名、以下同じ)にPtCo合金を触媒として50w%担持させる。なお、PtとCoはモル比で1:3としている。電解質にはナフィオンの5w%溶液を用い、カーボン担体と電解質との重量比は1:1とした。
中間層23のペーストは、担体としてケッチェンブラックEC(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)の商標名、以下同じ)を用い、これをナフィオンの5%溶液に分散させる。カーボン担体と電解質との重量比は1:1とした。
第2の層24のペーストはケッチェンブラックEC600JDにPt触媒を60w%担持させる。なお、電解質にはナフィオンの5w%溶液を用い、カーボン担体と電解質との重量比は1:0.8とした。
上記において、第1の層22と第2の層24とを比べると、第1の層22の触媒は第2の層24の触媒より保湿性が高い。また、基材に対する電解質の配合割合は第1の層22が第2の層24より大きい。
水素極10側においても同様にして拡散層16の表面へ反応層11を積層する。
水素極10と空気極20の各反応層11、21を電解質膜2へ貼り合わせて、図1の燃料電池1を構成する。
図2の低加湿環境とは乾燥空気をプロセス空気として使用した場合であり、図3の高加湿環境とは加湿空気をプロセス空気として使用した場合である。
図2及び図3の結果より、高保湿性である第1の層22と低保湿性である第2の層24との間に無触媒の中間層23を介在させた実施例の燃料電池によれば、低加湿環境及び高加湿環境ともに優れた動作特性を示すことがわかる。
この燃料電池100では、中間層230を三層構造とした。この中間層230は高保湿性の第1の層22に接続する第3−1の層231、低保湿性の第2の層24に接続する第3−2の層232及び第3−1の層231と第3−2の層232に挟まれる第3−3の層233からなる。
第3−1の層231は、触媒を持たないことの他は第1の層22の層と同じである。即ち、ケッチェンブラックEC600JDと電解質としてのナフィオンとを混合し、カーボンと電解質との重量比は1:1である。従って、この第3−1の層231の保湿性は第1の層22とほぼ同じである。
第3−2の層232は、触媒を持たないことの他は第2の層24と同じである。即ち、ケッチェンブラックEC600JDと電解質としてのナフィオンとを混合し、カーボンと電解質との重量比は1:0.8である。従って、この第3−2の層233の保湿性は第2の層24とほぼ同じである。
第3−3の層233は第3−1の層231及び第3−2の層232よりその保湿性が高くされている。具体的にはケッチェンブラックEC600JDと酸化チタンを混合し、さらに、電解質としてのナフィオンとを混合し、カーボンと電解質の重量比を1:1.1とした。
触媒を含まない層の保湿性を高くする方法として、上記の酸化チタン、シリカゲル等の親水性材料を混合する以外に、カーボンを熱処理あるいは酸処理して表面を酸化させ親水性とする方法も可能である。さらに、酸化処理したカーボンと親水性材料を混合しても良い。また、酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性のある親水性材料をカーボンの代わりに用いることもできる。
図4の例において、水素極10側の反応層11は担体としてケッチェンブラックEC600JDにPtを触媒として60w%担持させる。電解質にはナフィオンの5w%溶液を用い、カーボン担体と電解質との重量比は1:1とした。
この燃料電池200では、水素極10側の反応層11を拡散層16側から低保湿性の第2の層14、中間層130及び高保湿性の第1の層12を順次積層した構成とした。ここに中間層130を更に三層構造とする、即ち、この中間層130は高保湿性の第1の層12に接続する第3−1の層131、低保湿性の第2の層14に接続する第3−2の層132及び第3−1の層131と第3−2の層132に挟まれる第3−3の層133からなる。
第2の層14のペーストはケッチェンブラックEC600JDにPt触媒を40w%担持させる。なお、電解質にはナフィオンの5w%溶液を用い、カーボン担体と電解質との重量比は1:0.8とした。
第3−1の層131は、触媒を持たないことの他は第1の層12の層と同じである。即ち、ケッチェンブラックEC600JDと電解質としてのナフィオンとを混合し、カーボンと電解質との重量比は1:1である。従って、この第3−1の層131の保湿性は第1の層12とほぼ同じである。
第3−2の層132は、触媒を持たないことの他は第2の層14と同じである。即ち、ケッチェンブラックEC600JDと電解質としてのナフィオンとを混合し、カーボンと電解質との重量比は1:0.8である。従って、この第3−2の層132の保湿性は第2の層14とほぼ同じである。
第3−3の層133は第3−1の層131及び第3−2の層132よりその保湿性が高くされている。具体的にはケッチェンブラックEC600JDと酸化チタンを混合し、さらに、電解質としてのナフィオンとを混合し、カーボンと電解質の重量比を1:1.1とした。
かかる中間層130は、これを構成する各層131,132,133のペーストを、第3−2の層から順次第2の層14へ積層し、かつ乾燥して図5に示す三層構造とする。
触媒を含まない層の保湿性を高くする方法として、上記の酸化チタン、シリカゲル等の親水性材料を混合する以外に、カーボンを熱処理あるいは酸処理して表面を酸化させ親水性とする方法も可能である。さらに、酸化処理したカーボンと親水性材料を混合しても良い。また、酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性のある親水性材料をカーボンの代わりに用いることもできる。
図6及び図7の結果より、中間層を三層構造にすることにより、特に低加湿環境での燃料電池の出力特性の向上が確認できる。特に、空気極及び水素極の各反応層に中間層を設け、かつその中間層を三層構造とする図5の実施例3では、低加湿環境及び高加湿環境とも優れた出力特性を示す。
この発明を別の観点からながめれば、反応層においてその厚さ方向に無触媒層を介在させた燃料電池用反応層として把握することができる。
空隙率を高くしその保湿性を小さくするには、ペーストを水又はアルコールで薄めて拡散層へ塗布すること、電解質/担体の比率を小さくすること、触媒担持密度を高くすること、凍結乾燥させること等が挙げられる。
また、触媒を粉砕することにより層全体としての空隙率を上げることができる。
2 固体電解質膜
10 水素極
11 反応層
16 拡散層
20 空気極
21 反応層
12、22 第1の層
130、230 中間層
14、24 第2の層
Claims (5)
- 燃料電池において固体電解質膜と拡散層との間に介在される反応層であって、
前記固体電解質膜に接する第1の層と、前記拡散層に接する第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間に介在される中間層とを備え、前記第1の層と前記第2の層は、導電性の担体に担持された触媒を有し、かつ前記第1の層は前記第2の層より保湿性が高く、
前記中間層には触媒が存在せず、前記中間層は触媒を担持していない導電性の担体と電解質を含み、
前記中間層は前記第1の層より保湿性が低くかつ前記第2の層より保湿性が高い、ことを特徴とする燃料電池用反応層。 - 前記中間層は前記第1の層に接する第3−1の層と、前記第2の層に接する第3‐2の層と、前記第3−1の層と該第3−2の層とに挟まれる第3−3の層を備え、
前記第3−1の層は前記第1の層と同じか若しくはそれより低い保湿性でありかつ前記第3−2の層より高い保湿性を有し、前記第3−2の層は前記第2の層と同じかそれより高い保湿性を有し、前記第3−3の層は前記第3−1の層及び前記第3−2の層より高い保湿性を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用反応層。 - 前記第3−1の層は触媒を備えないことの他は前記第1の層と同一の前記導電性の担体で構成され、前記第3−2の層は触媒を備えないことの他は前記第2の層と同一の前記導電性の担体で構成される、ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用反応層。
- 前記第1の層は前記第2の層に比べて担体の空隙率が低く、電解質比率が大きく、若しくは該電解質のEWが低い、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用反応層。
- 前記中間層は0.1〜10μmの厚さを備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用反応層。
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