しかしながら、上述した特許文献1等によれば、例えばエンジンを起動する機会が一律に決定されていないプラグイン方式のハイブリッド車両(以下適宜、「プラグインHV車」と称す)では、エンジンの排気ガスを十分に浄化させることが困難となってしまうという技術的な問題点が生じる。何故ならば、家庭用電源で充電可能なプラグインHV車では、例えばエンジン負荷の要求量及び充電状態に応じて、エンジンを起動する機会が決定される。このため、プラグインHV車のようなエンジンを起動する機会及び頻度が少ない車両においては、触媒はエンジンを起動していない期間に冷えてしまい、エンジンの起動に際して、触媒を十分且つ迅速に暖機することが困難となってしまうという技術的な問題点が生じる。
そこで、本発明は、例えば上記の問題点に鑑みなされたものであり、排気ガスの浄化効率を向上させることが可能なハイブリッド車両の排気浄化装置及び方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド車両の排気浄化装置は、通電により加熱される電気加熱式触媒と、前記電気加熱式触媒の下流側に設けられた下流側触媒と、前記下流側触媒の温度を特定する下流側触媒温度特定手段と、内燃機関が始動する場合に、前記電気加熱式触媒の温度が、前記特定された下流側触媒温度に応じて決定される第1目標温度に近付くように、前記電気加熱式触媒の通電量を制御する通電量制御手段とを備え、前記第1目標温度は、前記特定された下流側触媒温度が低い程高い固定値に決定されることを特徴とする。
本発明に係るハイブリッド車両は、内燃機関と、電動機と、該電動機の駆動用電力を蓄え車両の走行に伴って充放電される二次電池と、内燃機関の排気系に設けられ活性化温度に基づき排気浄化を行なう、本発明に係る排気浄化装置を備えてよい。このハイブリッド車両には、内燃機関が車輌の駆動源となりうる型(所謂、パラレル方式のハイブリッド車両)と、内燃機関は直接車輌の駆動源とはなりえず主として発電機を運転するために搭載される型(所謂、シリーズ方式のハイブリッド車両)とがある。ハイブリッド車両は、電動機に電力を供給している二次電池の残容量が減少した場合や、加速時や登坂時など急激な電力が消費される可能性がある場合等には、やがて走行を維持することが困難になると予測されるため内燃機関を始動する。パラレル方式のハイブリッド車両では、加速時や登坂時などに内燃機関の動力を車輌の駆動力として用いるために、内燃機関を始動する場合もある。内燃機関の始動に際しては、排気ガス(又は排気エミッション)の排出を低減するために、内燃機関の始動に先立って排気浄化手段の加熱を行なう必要が生じる。
特に、本発明に係るハイブリッド車両の排気浄化装置において、電気加熱式触媒は、通電により加熱されることによって活性化温度に達し、内燃機関の排気を浄化する。ここに、本発明に係る電気加熱式触媒は、典型的には、通電量、即ち、外部から供給される電気エネルギーの量に応じて、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、この変換された熱エネルギーに応じて自らの温度を変化可能である触媒を意味する。この電気加熱式触媒は、自らの温度を活性化温度に到達させることによって、内燃機関の排気を浄化可能である触媒を意味する。典型的には、この電気加熱式触媒は、(i)触媒部分と、(ii)供給される電気エネルギーを熱エネルギーに変換することによって触媒部分を加熱する加熱手段とによって構成されてよい。下流側触媒は、電気加熱式触媒の下流に設けられ、電気加熱式触媒と共に、内燃機関の排気を浄化する。ここに、本発明に係る「下流側」とは、吸気の流れる方向を基準とする方向概念の一であり、この場合、即ち、マフラーを介して外気へ向かう側を意味する。下流側触媒温度特定手段は、下流側触媒の温度を特定する。ここに、本発明に係る「特定」とは、典型的には、上述した下流側触媒の温度を示す何らかの物理量やパラメータの範囲から下流側触媒の温度を直接的又は間接的に「特定」「推定」等することを意味する。このことに加えて又は代えて、本発明に係る特定とは、上述した下流側触媒の温度を示す何らかの物理量やパラメータの範囲から下流側触媒の温度を直接的又は間接的に「検知」「検出」「測定」等することを意味する。例えばマイクロプロセッサ等の通電量制御手段の制御下で、内燃機関の始動時に、電気加熱式触媒の温度が、前記特定された下流側触媒温度に応じて決定される第1目標温度に近付くように、電気加熱式触媒に供給される通電量が変化される。
一般的に、上述の電気加熱式触媒(以下適宜、EHCと称す)を含む排気浄化装置において、通電により電気加熱式触媒を暖機することができるが、その電気加熱式触媒の下流側に位置する下流側触媒を適切に暖機させることは技術的に困難である。特に、内燃機関を起動する機会が一律に決定されていないプラグイン方式のハイブリッド車両(以下適宜、「プラグインHV車」と称す)では、例えば内燃機関の負荷の要求量及び充電状態に応じて、内燃機関を起動する機会が決定される。このため、下流側触媒を有効に用いて、内燃機関の排気ガスを十分に浄化させることが技術的に困難となってしまう。具体的には、内燃機関の起動後、下流側触媒には、排気ガス自体が有する熱エネルギーが伝達されると共に、電気加熱式触媒が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して伝達される。しかしながら、プラグインHV車のような内燃機関を起動する機会及び頻度が少ない車両においては、下流側触媒は内燃機関を起動していない期間に冷えてしまい、内燃機関の起動に際して、下流側触媒を十分且つ迅速に暖機することが技術的に困難となってしまう。
これに対して、本発明によれば、通電量制御手段の制御下で、電気加熱式触媒の温度が、特定された下流側触媒温度に応じて決定される第1目標温度に近付くように、電気加熱式触媒の通電量が変化される。この結果、下流側触媒の温度に応じた、効率性の高い最適な電気加熱式触媒の電力制御(即ち、通電量制御)と、排気ガスの浄化効率の向上との両立を実現することが可能である。
特に、本発明によれば、下流側触媒の温度が低い場合でも、上述したように電気加熱式触媒によって、下流側触媒の触媒容量を補うことが可能であるので、プラグインHV車のように、内燃機関を起動する機会及び頻度が少なく、下流側触媒の温度低下の傾向が高いハイブリッド車両における内燃機関の起動に際して、排気ガスをより効果的に浄化することが可能である。このように、下流側触媒の温度に応じて、電気加熱式触媒の第1目標温度を変化させ、下流側触媒の活性化の度合いを変化させることにより、電気加熱式触媒と下流側触媒とを協調的且つ有機的に作用させ、効率性の高い最適な電気加熱式触媒の電力制御と、排気ガスの浄化効率の向上との両立を実現することが可能である。
ここで特に、本発明のハイブリッド車両の排気浄化装置において、第1目標温度は、特定された下流側触媒温度が低い程高い固定値に決定される。
排気浄化システムにおいては、触媒の浄化能力の度合いを示す触媒容量の総量、即ち、電気加熱式触媒の触媒容量と下流側触媒の触媒容量との合計は、ハイブリッド車両に搭載している内燃機関が高負荷運転されている時の排気ガス量に応じて決定される。
このため、下流側触媒の温度が低い場合、電気加熱式触媒の第1目標温度をより高くさせ、触媒容量の総量のうち電気加熱式触媒の触媒容量の割合をより高めることで、下流側触媒の触媒容量の低下を補い、排気浄化装置における浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。加えて、下流側触媒の温度が低い場合、電気加熱式触媒の第1目標温度をより高くさせ、電気加熱式触媒が有する熱エネルギーを、排気ガスの流動を介して、より多量に、下流側触媒に伝達させることで、下流側触媒の活性化を促進させ、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。
また、下流側触媒の温度が高い場合、電気加熱式触媒の第1目標温度をより低くさせ、触媒容量の総量のうち電気加熱式触媒の容量の割合をより低減することで、例えばバッテリ等の二次電池から電気加熱式触媒への通電量を低減させ、二次電池の消耗を低減することが可能である。加えて、電気加熱式触媒が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して過度に、下流側触媒に伝達されることを効果的に防止し、下流側触媒の温度が過度に上昇することを効果的に低減することが可能である。
本発明のハイブリッド車両の排気浄化装置の他の態様は、前記電気加熱式触媒に電力を供給する前記電力供給手段(例えば2次電池など)と、前記特定された下流側触媒温度に応じて前記第1目標温度を決定する決定手段とを更に備え、前記通電量制御手段は、前記決定された第1目標温度に応じた所定通電量を前記電気加熱式触媒に供給するように、前記電力供給手段を制御する。
この態様によれば、決定された第1目標温度に応じた所定通電量を電気加熱式触媒に供給することで、効率性の高い最適且つ高精度な電気加熱式触媒の電力制御を実現することが可能である。
本発明のハイブリッド車両の排気浄化装置の他の態様では、前記第1目標温度は、前記内燃機関の停止時間が長い程高く設定される。
この態様によれば、典型的には、通電量制御手段の制御下で、内燃機関の停止時間が長くなるに従って、第1目標温度が高くなるように電気加熱式触媒の通電量が変化される。何故ならば、上述したように、排気浄化システムにおける触媒の浄化能力の度合いを示す触媒容量の総量、即ち、電気加熱式触媒の触媒容量と下流側触媒の触媒容量との合計は、ハイブリッド車両に搭載している内燃機関が高負荷運転されている時の排気ガス量に応じて決定される。これにより、内燃機関の停止時間が長い場合、電気加熱式触媒の第1目標温度をより高くさせ、触媒容量の総量のうち電気加熱式触媒の触媒容量の割合をより高めることで、下流側触媒の触媒容量の低下を補い、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。加えて、内燃機関の停止時間が長い場合、電気加熱式触媒の第1目標温度をより高くさせ、電気加熱式触媒が有する熱エネルギーを、排気ガスの流動を介して、より多量に、下流側触媒に伝達させることで、下流側触媒の活性化を促進させ、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。
また、この態様によれば、例えば、内燃機関の停止時間が短くなるに従って、第1目標温度が低くなるように電気加熱式触媒の通電量が変化される。内燃機関の停止時間が短くなるに従って、下流側触媒の温度は高くなる傾向がある。これにより、内燃機関の停止時間が短い場合、電気加熱式触媒の第1目標温度をより低くさせ、触媒容量の総量のうち電気加熱式触媒の容量の割合をより低減することで、例えばバッテリ等の二次電池から電気加熱式触媒への通電量を低減させ、二次電池の消耗を低減することが可能である。加えて、電気加熱式触媒が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して過度に、下流側触媒に伝達されることを効果的に防止し、下流側触媒の温度が過度に上昇することを効果的に低減することが可能である。
このように、内燃機関の停止時間の長短に応じて、電気加熱式触媒の第1目標温度を変化させ、下流側触媒の活性化の度合いを変化させることにより、電気加熱式触媒と下流側触媒とを協調的且つ有機的に作用させ、効率性の高い最適な電気加熱式触媒の電力制御と、排気ガスの浄化効率の向上との両立を実現することが可能である。
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド車両の第2の排気浄化装置は、通電により加熱される電気加熱式触媒と、前記電気加熱式触媒の下流側に設けられた下流側触媒と、前記下流側触媒の温度を特定する下流側触媒温度特定手段と、前記特定された下流側触媒温度及び前記電気加熱式触媒の温度変化特性(典型的には、時間経過に伴う温度低下の度合い、より典型的には、単位時間当たりに低下する温度)に応じて決定される第2目標温度に前記電気加熱式触媒の温度が近付くように前記電気加熱式触媒の通電量を制御する通電量制御手段とを備える。
本発明に係るハイブリッド車両の第2の排気浄化装置によれば、通電量制御手段の制御下で、電気加熱式触媒の温度が、特定された下流側触媒温度及び電気加熱式触媒の温度変化特性に応じて決定される第2目標温度に近付くように、電気加熱式触媒の通電量が変化される。この結果、下流側触媒の温度及び電気加熱式触媒の温度変化特性に応じた、効率性の高い最適な電気加熱式触媒の電力制御(即ち、通電量制御)と、排気ガスの浄化効率の向上との両立を実現することが可能である。
典型的には、通電量制御手段の制御下で、(i)特定された下流側触媒温度が低くなるに従って、第2目標温度が高くなるように電気加熱式触媒の通電量が変化される。何故ならば、排気浄化システムにおける触媒の浄化能力の度合いを示す触媒容量の総量、即ち、電気加熱式触媒の触媒容量と下流側触媒の触媒容量との合計は、ハイブリッド車両に搭載している内燃機関が高負荷運転されている時の排気ガス量に応じて決定される。これにより、下流側触媒の温度が低い場合、電気加熱式触媒の第2目標温度をより高くさせ、触媒容量の総量のうち電気加熱式触媒の触媒容量の割合をより高めることで、下流側触媒の触媒容量の低下を補い、排気浄化装置における浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。加えて、下流側触媒の温度が低い場合、電気加熱式触媒の第2目標温度をより高くさせ、電気加熱式触媒が有する熱エネルギーを、排気ガスの流動を介して、より多量に、下流側触媒に伝達させることで、下流側触媒の活性化を促進させ、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。
他方、(ii)特定された下流側触媒温度が高くなるに従って、第2目標温度が低くなるように電気加熱式触媒の通電量が変化される。典型的には、内燃機関の停止時間が短くなるに従って、下流側触媒の温度は高くなる傾向がある。これにより、下流側触媒の温度が高い場合、電気加熱式触媒の第2目標温度をより低くさせ、触媒容量の総量のうち電気加熱式触媒の容量の割合をより低減することで、例えばバッテリ等の二次電池から電気加熱式触媒への通電量を低減させ、二次電池の消耗を低減することが可能である。加えて、電気加熱式触媒が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して過度に、下流側触媒に伝達されることを効果的に防止し、下流側触媒の温度が過度に上昇することを効果的に低減することが可能である。
特に、本発明に係るハイブリッド車両の第2の排気浄化装置によれば、通電量制御手段の制御下で、特定された下流側触媒温度に加えて電気加熱式触媒の温度変化特性に応じて決定される第2目標温度に電気加熱式触媒の温度が近付くように電気加熱式触媒の通電量が変化される。ここに、本発明に係る温度変化特性は、電気加熱式触媒の温度変化に関する性質において、時間経過に伴って温度が変化する際の変化の度合いを意味する。典型的には、温度変化特性は、電気加熱式触媒において、単位時間当たりに低下する温度低下量、即ち、温度低下速度を意味してよい。或いは、温度変化特性は、電気加熱式触媒の温度が所定の大きさの温度だけ低下するのに要する時間間隔を意味してよい。
本願発明者らによる、この温度変化特性に関する研究によれば、この電気加熱式触媒における温度変化特性、典型的には、所定温度だけ低下するのに要する時間は、例えばコージラーイト等の従来の三元触媒において所定温度だけ低下するのに要する時間と比較して短いことが判明している。何故ならば、この電気加熱式触媒は、SiC(即ち、炭化珪素)等の熱伝導性の一般的に高い要素群を含み、これらの含有割合が、例えばコージラーイト等の従来の三元触媒と比較して多いためである。これにより、電気加熱式触媒の温度変化特性の一例である温度低下速度は、この熱伝導性の度合いの差に起因して、例えばコージラーイト等の従来の三元触媒の温度低下速度と比較して大きい。特に、電気加熱式触媒の温度低下速度と、例えばコージラーイト等の従来の三元触媒の温度低下速度との差は、触媒温度が高くなるに従って大きくなることが判明している。
このように、本発明では、電気加熱式触媒の温度を、下流側触媒の温度に加えて電気加熱式触媒の温度低下速度に応じて決定される第2目標温度に近付けるように、電気加熱式触媒の通電量を制御する。即ち、本発明では、電気加熱式触媒の温度を、上述した第1目標温度よりも電気加熱式触媒の温度低下速度に相当する分だけ高くなった第2目標温度に近付けるように、電気加熱式触媒の通電量を制御する。これにより、電気加熱式触媒の通電処理(即ち、加熱処理)を停止する際の契機となる通電停止温度を高めることができる。これにより、電気加熱式触媒の実際の温度が、このより高い通電停止温度に到達した後、温度が時間経過に伴って低下し、通電開始温度を下回るタイミングを遅らせることが可能である。これにより、電気加熱式触媒の通電処理を実行する頻度を少なくさせることができる。これにより、例えばバッテリ等の二次電池から電気加熱式触媒へ通電する頻度を低減させ、通電量を低減させることができるので、二次電池の消耗を効果的に低減することが可能である。これにより、内燃機関の燃費及び二次電池の電力量を含むハイブリッド車両全体でのエネルギー効率を向上させることが可能である。特に、内燃機関を起動する機会及び頻度が少ないプラグインHV車においては、エネルギー効率を向上させ、信頼性を向上させることは実践上、大変好ましい。加えて、内燃機関を起動する機会及び頻度をより少なくさせることにより、内燃機関で発生するトルク変動を低減することができるので、ハイブリッド車両におけるドライバビリティを向上させることができる。
本発明のハイブリッド車両の第2の排気浄化装置の一の態様は、前記通電量制御手段は、前記電気加熱式触媒の温度が前記第2目標温度より低い加熱開始温度を下回った場合、前記電気加熱式触媒の通電を開始し、前記電気加熱式触媒の温度が前記第2目標温度より高い加熱停止温度を超えた場合、前記電気加熱式触媒の通電を停止するように前記電気加熱式触媒の通電量を制御する。
この態様によれば、電気加熱式触媒の通電量の制御を、第2目標温度に応じて決定された加熱開始温度及び加熱停止温度と電気加熱式触媒の温度との比較によって、より的確に実行することが可能である。この結果、電気加熱式触媒の温度をより高精度に第2目標温度に近付けることが可能である。
本発明のハイブリッド車両の第2の排気浄化装置の他の態様は、車両に搭載された内燃機関と、前記内燃機関の燃料を点火する点火手段と、前記車両に搭載された電動機と、前記電動機に電力を供給すると共に前記車両の走行に伴って充電可能な二次電池と、前記内燃機関による走行から前記電動機による走行に移行する前に、燃費及び熱効率のうち少なくとも一方が最適な点火時期である基準時期より遅角させた時期に前記燃料を点火するように前記点火手段を制御する制御手段とを更に備える。
この態様によれば、内燃機関による走行(所謂、HV走行)から電動機による走行(所謂、EV走行)へ実際に切り替える前に、基準時期より遅角させた時期に燃料を点火することにより、排気ガスの温度をより高くさせることができる。これにより、より高温となった排気ガス自体が有する熱エネルギーによって、下流側触媒の温度をより上昇させることができる。特に、ハイブリッド車両においては、排気ガスによる下流側触媒の加熱処理は、ハイブリッド車両がHV走行を行っている場合、即ち、内燃機関を運転している場合に行われる。これにより、HV走行から、内燃機関を運転させないEV走行へ実際に切り替える前に、下流側触媒の温度をより上昇させることができることは、実践上、大変有益である。
このように、この態様によれば、下流側触媒の温度をより上昇させることができるので、これに伴い、第2目標温度を低下させることができる。典型的には、電気加熱式触媒の通電処理を開始する際の契機となる通電開始温度を低下させることができる。これにより、電気加熱式触媒の実際の温度がこの通電開始温度を下回るタイミングを遅らせ、ひいては、電気加熱式触媒の通電処理を実行する頻度を少なくさせることができる。これにより、例えばバッテリ等の二次電池からEHC206へ通電する頻度を低減させ、通電量を低減させることができるので、二次電池の消耗を効果的に低減することが可能である。これにより、内燃機関の燃費及び二次電池の電力量を含むハイブリッド車両全体でのエネルギー効率を向上させることが可能である。特に、内燃機関を起動する機会及び頻度が少ないプラグインHV車においては、エネルギー効率を向上させ、信頼性を向上させることは実践上、大変好ましい。
加えて、上述した点火時期の遅角制御を実施することにより、内燃機関で発生するトルク変動を低減することができるので、ハイブリッド車両におけるドライバビリティを向上させることができる。
本発明のハイブリッド車両の第2の排気浄化装置の他の態様は、前記制御手段は、前記電気加熱式触媒及び前記下流側触媒の温度が所定閾値を超えない場合、前記基準時期より遅角させた時期に前記燃料を点火するように前記点火手段を制御し、前記電気加熱式触媒及び前記下流側触媒のうち少なくとも一方の温度が前記所定閾値を超える場合、前記基準時期に前記燃料を点火するように前記点火手段を制御する。
この態様によれば、電気加熱式触媒及び下流側触媒のうち少なくとも一方の温度が所定閾値を超える場合、制御手段の制御下で、点火手段によって、基準時期に燃料が点火される。ここに、本発明に係る所定閾値とは、典型的には、電気加熱式触媒の活性化温度を超える温度であり、且つ、電気加熱式触媒が有する熱エネルギーが、排気ガスの流動を介して、下流側触媒に伝達されることにより、下流側触媒の活性化を促進可能な温度を意味してよい。
この結果、浄化効果が十分であり、遅角制御を実施する必要のない場合において、遅角制御の実施を省略できるので、より迅速にEV走行に移行することが可能である。
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド車両の排気浄化方法は、通電により加熱される電気加熱式触媒と、前記電気加熱式触媒の下流側に設けられた下流側触媒とを備えたハイブリッド車両の排気浄化方法であって、前記下流側触媒の温度を特定する下流側触媒温度特定工程と、内燃機関が始動する場合に、前記電気加熱式触媒の温度が、前記特定された下流側触媒温度に応じて決定される第1目標温度に近付くように、前記電気加熱式触媒の通電量を制御する通電量制御工程とを備え、前記第1目標温度は、前記特定された下流側触媒温度が低い程高い固定値に決定されることを特徴とする。
本発明に係るハイブリッド車両の排気浄化方法によれば、上述した本発明に係るハイブリッド車両の排気浄化装置が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明に係るハイブリッド車両の排気浄化装置が有する各種態様に対応して、本発明に係るハイブリッド車両の排気浄化方法も各種態様を採ることが可能である。
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド車両の第2の排気浄化方法は、通電により加熱される電気加熱式触媒と、前記電気加熱式触媒の下流側に設けられた下流側触媒とを備えたハイブリッド車両の排気浄化方法であって、前記下流側触媒の温度を特定する下流側触媒温度特定工程と、前記特定された下流側触媒温度及び前記電気加熱式触媒の温度変化特性(典型的には、時間経過に伴う温度低下の度合い、より典型的には、単位時間当たりに低下する温度)に応じて決定される第2目標温度に前記電気加熱式触媒の温度が近付くように前記電気加熱式触媒の通電量を制御する通電量制御工程とを備える。
本発明に係るハイブリッド車両の第2の排気浄化方法によれば、上述した本発明に係るハイブリッド車両の第2の排気浄化装置が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明に係るハイブリッド車両の第2の排気浄化装置が有する各種態様に対応して、本発明に係るハイブリッド車両の第2の排気浄化方法も各種態様を採ることが可能である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
(第1実施形態)
(基本構成)
先ず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置を搭載したハイブリッド車両の基本構成について説明する。ここに、図1は、第1実施形態に係る排気浄化装置を組み込んだハイブリッド車両の概略構成を示した基本構成図である。このハイブリッド車両の構成は大きくは、駆動力を発生する動力系統と、その制御系統と、駆動源からの駆動力を駆動輪116、118に伝達する動力伝達系統と、運転操作部等からなっている。また、上記、動力系統はエンジン150を含む系統とモータMG1,MG2を含む系統とからなっており、制御系統は、エンジン150の運転を主に制御するための電子制御ユニット(以下、EFIECUと呼ぶ)170と、モータMG1,MG2の運転を主に制御する制御ユニット190と、EFIECU170および制御ユニット190に必要な信号を検出し入出力する種々のセンサ部とからなっている。なお、EFIECU170および制御ユニット190の内部構成は図示していないが、これらはそれぞれ内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、以下に示す種々の制御処理を行なうよう構成されている。本実施例では、上記制御系統が運転制御装置に該当する。
エンジン150は、吸入口200から吸入した空気と燃料噴射弁151から噴射されたガソリンとの混合気を燃焼室152に吸入し、この混合気の爆発により押し下げられるピストン154の運動をクランクシャフト156の回転運動に変換する。この爆発は、イグナイタ158からディストリビュータ160を介して導かれた高電圧によって点火プラグ162が形成した電気火花によって混合気が点火され燃焼することで生じる。燃焼により生じた排気は、排気口202を通り、触媒コンバータ204、サブ・マフラ208およびメイン・マフラ210からなる排気系を通って大気中に排出される。触媒コンバータ204は、典型的には、触媒自身を電気ヒータ等により電気エネルギーにより加熱し、排気浄化を行う電気加熱式の触媒である。即ち、この触媒コンバータ204は、触媒が活性温度(本実施例では摂氏400度前後)に達していないと排気を十分に浄化することができないため、バッテリからの通電により触媒を加熱するための電気触媒加熱ヒータ206が備えられている。或いは、触媒コンバータ204は、典型的には、例えばSiC(炭化珪素)等、導電性を有する基材で構成され、印加電圧に応じて発熱可能に構成されたDPF(Diesel Particulate Filter)等のフィルタ装置であってよい。或いは、触媒コンバータ204は、典型的には、プラズマ放電により、HC、CO或いはPM(Particulate Matter:粒子状物質)等を酸化燃焼を伴って浄化することが可能な、例えばプラズマリアクタ等のプラズマ放電浄化装置等であってもよい。
特に、この電気加熱式の触媒コンバータ204は、例えばコージラーイト等の三元触媒と比較して、熱伝導性が高い。何故ならば、この電気加熱式の触媒コンバータ204は、SiC(即ち、炭化珪素)等の熱伝導性の一般的に高い要素群を含み、これらの含有割合が、例えばコージラーイト等の従来の三元触媒と比較して多いためである。
また、触媒コンバータ205(以下、適宜、「下流触媒205」と称す)は、触媒コンバータ204の下流側(即ち、排出される際に大気に向かう側)に設けられ、内燃機関の排気に含まれるHC、COおよびNOx等の有害成分いわゆるエミッションを三元触媒により酸化還元処理する装置である。尚、制御ユニット190によって、本発明に係る通電量制御手段に一具体例が例示されている。また、触媒コンバータ204によって、本発明に係る電気加熱式触媒を構成する一の要素である触媒部分が例示されている。電気触媒加熱ヒータ(所謂、EHC)206によって、本発明に係る電気加熱式触媒を構成する他の要素である、供給される電気エネルギーを熱エネルギーに変換することによって触媒部分を加熱する加熱手段が例示されている。触媒コンバータ205によって、本発明に係る下流側触媒の一例が構成される。
エンジン150の運転は、EFIECU170により制御されている。EFIECU170が行なうエンジン150の制御としては、エンジン150の回転数に応じた点火プラグ162の点火時期制御や、吸入空気量に応じた燃料噴射量制御等がある。エンジン150の制御を可能とするために、EFIECU170にはエンジン150の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。例えばクランクシャフト156の回転数と回転角度を検出するためにディストリビュータ160に設けられた回転数センサ176及び回転角度センサ178などである。なお、EFIECU170には、この他、例えばイグニッションキーの状態STを検出するスタータスイッチ179なども接続されているが、その他のセンサ,スイッチなどの図示は省略した。
エンジン150についてのEFIECU170による制御には、運転効率の制御も含まれている。エンジン150は、種々のトルクおよび回転数で運転が可能である。
モータMG1は、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ132と、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータ133とを備える。ステータ133は、無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、ケース119に固定されている。このモータMG1は、ロータ132に備えられた永久磁石による磁界とステータ133に備えられた三相コイルによって形成される磁界との相互作用によりロータ132を回転駆動する電動機として動作し、場合によってはこれらの相互作用によりステータ133に備えられた三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。
モータMG2も、モータMG1と同様に同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ142と、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータ143とを備える。モータMG2のステータ143も無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、ケース119に固定されている。このモータMG2もモータMG1と同様に、電動機あるいは発電機として動作する。
これらのモータMG1,MG2は、スイッチングを行なうトランジスタを複数内蔵したトランジスタインバータ193を介してバッテリ194および制御ユニット190に電気的に接続されている。制御ユニット190には、この他EHC206や各種のセンサが電気的に接続されている。制御ユニット190に接続されているセンサとしては、アクセルペダルポジションセンサ164a、ブレーキペダルポジションセンサ165a、シフトポジションセンサ184、バッテリ194の残容量検出器199、触媒コンバータ204の温度を測定する触媒温度センサ204a、触媒コンバータ205の温度を測定する触媒温度センサ205aなどがある。尚、触媒温度センサ205aによって、本発明に係る下流側触媒温度特定手段の一例が構成される。
トランジスタインバータ193を用いたモータMG1,MG2の制御方法は周知の技術である。つまり、制御ユニット190からトランジスタインバータ193へ制御信号を出力して、トランジスタインバータ193に内蔵される各トランジスタをスイッチングし、モータMG1,MG2の三相コイルに流れる電流をPWM制御によって擬似的な正弦波にすると、モータMG1のステータ133に備えられた三相コイルおよびモータMG2のステータ143に備えられた三相コイルのそれぞれに回転磁界が形成される。上述したモータMG1,MG2の制御、EHC206への通電制御を含むハイブリッド車両の運転状態の制御を可能とするために、この制御ユニット190には運転操作部からの種々の信号や触媒コンバータ205内の触媒温度、触媒コンバータ204内の触媒温度、及びバッテリ194の残容量等が入力され、また、エンジン150を制御するEFIECU170との間で種々の情報を通信によりやりとりしている。具体的に運転操作部からの種々の信号としては、アクセルペダルポジションセンサ164aからのアクセルペダルポジション(アクセルペダルの踏込量)AP、ブレーキペダルポジションセンサ165aからのブレーキペダルポジション(ブレーキペダルの踏込量)BP、シフトポジションセンサ184からのシフトポジションSPがある。また、触媒コンバータ205内の触媒温度は触媒温度センサ205aで検出される。また、触媒コンバータ204内の触媒温度は触媒温度センサ204aで検出される。これにより、制御ユニット190は、後述されるように、触媒コンバータ204内の実際に検出された触媒温度を、触媒コンバータ205内の触媒温度に応じて決定される第1目標温度に近付けるためのEHC206への通電制御を行うことができる。また、バッテリ194の残容量は残容量検出器199で検出される。なお、残容量検出器199は、バッテリ194の電解液の比重またはバッテリ194の全体の重量を測定して残容量を検出するものや、充電・放電の電流値と時間を演算して残容量を検出するものや、バッテリの端子間を瞬間的にショートさせて電流を流し内部抵抗を測ることにより残容量を検出するものなどが知られている。
駆動源からの駆動力を駆動輪116、118に伝達する動力伝達系統は、エンジン150の動力を伝達するためのクランクシャフト156およびプラネタリキャリア軸127と、モータMG1,モータMG2の回転を伝達する回転軸125、126とが、後述するプラネタリギヤ120を介して動力伝達ギヤ111に機械的に結合され、この動力伝達ギヤ111はディファレンシャルギヤ114を介して最終的に左右の駆動輪116、118に結合される構成となっている。
プラネタリギヤ120の構成と併せてクランクシャフト156、プラネタリキャリア軸127、モータMG1の回転軸125、MG2の回転軸126の結合については、周知の技術である。
リングギヤ122には、動力の取り出し用の動力取出ギヤ128がモータMG1側に結合されている。この動力取出ギヤ128は、チェーンベルト129により動力伝達ギヤ111に接続されており、動力取出ギヤ128と動力伝達ギヤ111との間で動力の伝達がなされる。上述の構成およびプラネタリギヤ120の性質に基づいて、ハイブリッド車両はモータMG2のみを駆動源として走行することもできるし、エンジン150とモータMG2の双方を駆動源として走行することもできる。エンジン150とモータMG2の双方を駆動源として走行する場合には、必要なトルクおよびモータMG2で発生し得るトルクに応じて、エンジン150を効率のよい運転ポイントで運転できるため、エンジン150のみを駆動源とする車両に比べて省資源性および排気浄化性に優れている。このような機能に基づいて、ハイブリッド車両は普段モータMG2のみで走行しており、バッテリ194の残容量が少なくなっていずれ走行に支障が生じることが予想されるようになった場合や、加速時や登坂時などさらに動力が必要となった場合等に、エンジン150を始動するという形で駆動源の使い分けをしている。一方、クランクシャフト156の回転を、プラネタリキャリア軸127およびサンギヤ軸125を介してモータMG1に伝達することができるため、エンジン150の運転によりモータMG1で発電しつつ走行することも可能である。
(動作原理)
次に、図2及び図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の排気浄化システムの動作原理について説明する。ここに、図2は、本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置を含むハイブリッド車両を統括制御する制御ユニットにおける、エンジン始動時の制御処理の流れを示したフローチャートである。図3は、本発明の第1実施形態に係る触媒コンバータ204の第1目標温度と、下流触媒205の温度との定量的及び定性的な関係を示したマップである。尚、図2で示された制御処理は、制御ユニット190によって、所定周期で繰り返し実行される。
図2に示されるように、先ず、制御ユニット190の制御下で、エンジンを始動開始するか否かが判定される(ステップS101)。ここで、エンジンを始動開始すると判定される場合(ステップS101:Yes)、制御ユニット190の制御下で、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理が必要であるか否かが判定される(ステップS102)。典型的には、触媒コンバータ204の触媒温度が、触媒活性化温度である所定温度を超えているか否かが判定されてよい。
このステップS102の判定の結果、触媒コンバータ204の加熱処理が必要であると判定される場合(ステップS102:Yes)、制御ユニット190の制御下で、測定されている下流触媒205の温度を示す定量的又は定性的な情報が、ROM等の記憶装置に格納され、取得される(ステップS103)。
次に、制御ユニット190の制御下で、第1所定マップに基づいて、取得された下流触媒205の温度に対応される、触媒コンバータ204の目標となる第1目標温度が決定される(ステップS104)。ここに、本実施形態に係る第1所定マップとは、典型的には、触媒コンバータ204の浄化の度合いと、下流触媒205の浄化の度合いとの合計若しくは総量が所定レベルを超える状態での、下流触媒205の温度と、触媒コンバータ204の第1目標温度との定量的及び定性的な関係を示したマップを意味する。
典型的には、図3に示されるように、下流触媒205の温度が高くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度は低く設定される。このように、下流触媒205の温度が高くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度をより低くさせ、排気浄化システムにおける触媒の浄化能力の度合いを示す触媒容量の総量のうち触媒コンバータ204の容量の割合をより低減することで、例えばバッテリ等の二次電池からEHC206への通電量を低減させ、二次電池の消耗を低減することが可能である。加えて、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して過度に、下流触媒205に伝達されることを効果的に防止し、下流触媒205の温度が過度に上昇することを効果的に低減することが可能である。
他方、図3に示されるように、下流触媒205の温度が低くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度は高く設定される。このように、下流触媒205の温度が低くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度をより高くさせ、触媒容量の総量のうち触媒コンバータ204の触媒容量の割合をより高めることで、下流触媒205の触媒容量の低下又は不足を補い、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。加えて、下流触媒205の温度が低いと推定される場合、触媒コンバータ204の第1目標温度をより高くさせ、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーを、排気ガスの流動を介して、より多量に、下流触媒205に伝達させることで、下流触媒205の活性化を促進させ、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。
次に、制御ユニット190の制御下で、決定された触媒コンバータ204の第1目標温度に応じて、触媒コンバータ204を加熱するEHC206に通電する通電量を算出する(ステップS105)。詳細には、触媒コンバータ204の現在の温度が、触媒コンバータ204の第1目標温度に達するために必要な熱エネルギーを算出し、この算出された熱エネルギーに相当する、EHC206の通電量を算出する。
次に、制御ユニット190の制御下で、算出された通電量だけ、EHC206に通電される(ステップS106)。
次に、制御ユニット190の制御下で、例えば、EHC206への通電が完了後に、エンジンが始動される(ステップS107)。
この結果、本実施形態によれば、下流触媒205の温度が低い場合でも、上述したように触媒コンバータ204によって、下流触媒205の触媒容量を補うことが可能であるので、プラグインHV車のように、エンジンを起動する機会及び頻度が少なく、下流触媒205の温度低下の傾向が高いハイブリッド車両におけるエンジンの起動に際して、排気ガスをより効果的に浄化することが可能である。このように、下流触媒205の温度に応じて、触媒コンバータ204の第1目標温度を変化させ、下流触媒205の活性化の度合いを変化させることにより、触媒コンバータ204と下流触媒205とを協調的且つ有機的に作用させ、効率性の高い最適なEHC206の電力制御と、排気ガスの浄化効率の向上との両立を実現することが可能である。
一般的に、上述の触媒コンバータ204及びEHC206を備える電気加熱式触媒を含む排気浄化装置(又は排気エミッションシステム)において、電力を供給することにより触媒コンバータ204を暖機することができるが、その触媒コンバータ204の下流に位置する下流触媒205までは暖機させることは困難である。特に、エンジンを起動する機会が一律に決定されていないプラグイン方式のハイブリッド車両(即ち、プラグインHV車)では、例えばエンジン負荷の要求量及び充電状態に応じて、エンジンを起動する機会が決定される。このため、下流触媒205を有効に用いて、エンジンの排気ガスを十分に浄化させることが技術的に困難となってしまう。具体的には、エンジンの起動後、下流触媒205には、排気ガス自体が有する熱エネルギーが伝達されると共に、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して伝達される。しかしながら、プラグインHV車のようなエンジンを起動する機会及び頻度が少ない車両においては、下流触媒205はエンジンを起動していない期間に冷えてしまい、エンジンの起動に際して、下流触媒205を十分且つ迅速に暖機することが技術的に困難となってしまう。具体的には、排気浄化システムにおける触媒容量の総量、即ち、触媒コンバータ204の容量と下流触媒205の容量との合計は、ハイブリッド車両に搭載しているエンジンが高負荷運転されている時の排気ガス量に応じて決定される。このため、仮に、触媒コンバータ204が暖機されている場合でも、下流触媒205が暖機されていない場合、排気ガスを十分に浄化させることが技術的に困難となってしまう。
(第2実施形態)
(動作原理)
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係るハイブリッド車両の排気浄化装置の動作原理について説明する。ここに、図4は、本発明の第2実施形態に係るハイブリッド車両の排気浄化装置を統括制御する制御ユニット190における、エンジン始動時の制御処理の流れを示したフローチャートである。尚、図4で示された制御処理は、制御ユニット190によって、所定周期で繰り返し実行される。
図4に示されるように、上述したステップS101及びステップS102を経て、制御ユニット190の制御下で、例えば30分前から現在までの期間などの、現在より所定時間だけ過去の時点以降、エンジンの起動履歴があるか否かが判定される(ステップS201)。ここに、第2実施形態に係る所定時間とは、典型的には、エンジン起動中からエンジンを停止後、触媒コンバータ204の触媒温度が活性化温度を下るまでに掛かる時間を意味してよい。
このステップS201の判定の結果、現在より所定時間だけ過去の時点以降、エンジンの起動履歴があると判定される場合(ステップS201:Yes)、制御ユニット190の制御下で、触媒コンバータ204の目標となる第1目標温度として、温度T1が決定される(ステップS202)。ここに、温度T1は、典型的には、上述した第1所定マップ上の触媒コンバータ204の第1目標温度であって、上述した所定時間に応じて、決定されてよい。
このように、現在より所定時間だけ過去の時点以降、エンジンの起動履歴がある場合、エンジンの停止時間が短く、下流触媒205の温度が高いと推定されるので、触媒コンバータ204の第1目標温度は低く設定される。これにより、下流触媒205の温度が高いと推定される場合、触媒コンバータ204の第1目標温度をより低くさせ、触媒容量の総量のうち触媒コンバータ204の容量の割合をより低減することで、例えばバッテリ等の二次電池からEHC206への通電量を低減させ、二次電池の消耗を低減することが可能である。加えて、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して過度に、下流触媒205に伝達されることを効果的に防止し、下流触媒205の温度が過度に上昇することを効果的に低減することが可能である。
他方、ステップS201の判定の結果、現在より所定時間だけ過去の時点以降、エンジンの起動履歴があると判定されない場合(ステップS201:No)、制御ユニット190の制御下で、触媒コンバータ204の目標となる第1目標温度として、温度T2(但し、T1<T2)が決定される(ステップS203)。ここに、温度T2は、典型的には、上述した第1所定マップ上の触媒コンバータ204の第1目標温度であり、且つ、上述した温度T1より大きくなるように決定されてよい。
このように、現在より所定時間だけ過去の時点以降、エンジンの起動履歴がない場合、エンジンの停止時間が長いと推定され、下流触媒205の温度が低いと推定されるので、触媒コンバータ204の第1目標温度は高く設定される。これにより、下流触媒205の温度が低いと推定される場合、触媒コンバータ204の第1目標温度をより高くさせ、触媒容量の総量のうち触媒コンバータ204の触媒容量の割合をより高めることで、下流触媒205の触媒容量の低下を補い、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。加えて、下流触媒205の温度が低いと推定される場合、触媒コンバータ204の第1目標温度をより高くさせ、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーを、排気ガスの流動を介して、より多量に、下流触媒205に伝達させることで、下流触媒205の活性化を促進させ、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。
以下、制御ユニット190の制御下で、上述したステップS105乃至ステップS107が行われる。
特に、第2実施形態によれば、エンジンの起動履歴があるか否かにより、触媒コンバータ204の第1目標温度を、簡便且つ迅速に決定することが可能である。
(第3実施形態)
(動作原理)
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第3実施形態に係るハイブリッド車両の排気浄化装置の動作原理について説明する。ここに、図5は、本発明の第3実施形態に係るハイブリッド車両の排気浄化装置を統括制御する制御ユニット190における、エンジン始動時の制御処理の流れを示したフローチャートである。図6は、本発明の第3実施形態に係る触媒コンバータ204の第1目標温度と、エンジン停止カウンタとの定量的及び定性的な関係を示したマップである。尚、図5で示された制御処理は、制御ユニット190によって、所定周期で繰り返し実行される。
図5に示されるように、上述したステップS101及びステップS102を経て、制御ユニット190の制御下で、第2所定マップに基づいて、エンジン停止カウンタ変数に対応される、触媒コンバータ204の目標となる第1目標温度が決定される(ステップS304)。ここに、本実施形態に係る第2所定マップとは、典型的には、触媒コンバータ204の浄化の度合いと、下流触媒205の浄化の度合いとの合計若しくは総量が所定レベルを超える状態での、エンジン停止カウンタ変数と、触媒コンバータ204の第1目標温度との定量的及び定性的な関係を示したマップを意味する。典型的には、図6に示されるように、エンジン停止カウンタ変数が大きくなるに従って、言い換えると、エンジンの停止時間が長くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度は高く設定される。
尚、エンジン停止カウンタ変数は、エンジンの停止時間の長短を示す変数であり、エンジンが稼動中でない場合にインクリメント(増分)され、エンジンが始動中である場合にゼロとされる変数である。
このように、エンジン停止カウンタ変数が大きくなるに従って、エンジンの停止時間が長く、下流触媒205の温度が低いと推定されるので、触媒コンバータ204の第1目標温度は高く設定される。これにより、下流触媒205の温度が低いと推定される場合、触媒コンバータ204の第1目標温度をより高くさせ、触媒容量の総量のうち触媒コンバータ204の触媒容量の割合をより高めることで、下流触媒205の触媒容量の低下を補い、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。加えて、下流触媒205の温度が低いと推定される場合、触媒コンバータ204の第1目標温度をより高くさせ、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーを、排気ガスの流動を介して、より多量に、下流触媒205に伝達させることで、下流触媒205の活性化を促進させ、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。
他方、図6に示されるように、エンジン停止カウンタ変数が小さくなるに従って、言い換えると、エンジンの停止時間が短くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度は低く設定される。このように、エンジン停止カウンタ変数が小さく、エンジンの停止時間が短い場合、下流触媒205の温度が高いと推定されるので、触媒コンバータ204の第1目標温度は低く設定される。これにより、下流触媒205の温度が高いと推定される場合、触媒コンバータ204の第1目標温度をより低くさせ、触媒容量の総量のうち触媒コンバータ204の容量の割合をより低減することで、例えばバッテリ等の二次電池からEHC206への通電量を低減させ、二次電池の消耗を低減することが可能である。加えて、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して過度に、下流触媒205に伝達されることを効果的に防止し、下流触媒205の温度が過度に上昇することを効果的に低減することが可能である。
以下、制御ユニット190の制御下で、上述したステップS105乃至ステップS107が行われる。
特に、第3実施形態によれば、エンジンの停止時間の長短を示すエンジン停止カウンタ変数により、触媒コンバータ204の第1目標温度を、簡便且つ迅速に決定することが可能である。
(第4実施形態)
(動作原理)
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第4実施形態に係るハイブリッド車両の排気浄化システムの動作原理について説明する。ここに、図7は、本発明の第4実施形態に係る排気浄化装置を含むハイブリッド車両を統括制御する制御ユニットにおける制御処理の流れを示したフローチャートである。図8は、本発明の第4実施形態に係る触媒コンバータ204の第1目標温度と、触媒コンバータ204の加熱処理を開始する際の触媒コンバータ204の温度である加熱開始温度と、触媒コンバータ204の加熱処理を停止する際の触媒コンバータ204の温度である加熱停止温度と、下流触媒205の温度との定量的及び定性的な関係を示したマップである。尚、図7で示された制御処理は、制御ユニット190によって、所定周期で繰り返し実行される。
図7に示されるように、先ず、制御ユニット190の制御下で、バッテリ194の残容量、所謂、電池状態(即ち、SOC(State of Charge))を示す定量的又は定性的な情報が取得される(ステップS401)。
次に、制御ユニット190の制御下で、取得されたSOCが30%を超えるか否かが判定される(ステップS402)。ここで、取得されたSOCが30%を超えると判定される場合(ステップS402:Yes)、制御ユニット190の制御下で、電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204の測定された触媒温度を示す定量的又は定性的な情報が、変数Tsicとして、ROM等の記憶装置に記憶され取得される(ステップS403)。
次に、制御ユニット190の制御下で、下流触媒205の測定された温度を示す定量的又は定性的な情報が、変数Tufcとして、ROM等の記憶装置に記憶され取得される(ステップS404)。
次に、制御ユニット190の制御下で、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を開始する際の触媒コンバータ204の温度である加熱開始温度を示す変数ksic1、及び、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を停止する際の触媒コンバータ204の温度である加熱停止温度を示す変数ksic2が取得される(ステップS405)。詳細には、これらの加熱開始温度を示す変数ksic1、及び、加熱停止温度を示す変数ksic2は、下流触媒205の温度を示す変数Tufcに応じて一義的に決定される。具体的には、図8に示されるように、変数Tufcによって示される下流触媒205の温度が温度T0である場合、変数ksic1によって示される加熱開始温度T1及び変数ksic2によって示される加熱停止温度T2が一義的に決定される。
このようにして、図8の実線に示されるように、第4実施形態に係る触媒コンバータ204の温度は、加熱開始温度及び加熱停止温度に応じて決定可能な第1目標温度に近付けられる。加えて、上述したように、加熱開始温度及び加熱停止温度は下流触媒205の温度に応じて一義的に決定される。以上より、第4実施形態に係る触媒コンバータ204の温度は、下流触媒205の温度に応じて一義的に決定される第1目標温度に適切に近付けることが可能である。
尚、触媒コンバータ204の温度を第1目標温度に近付ける際に、触媒コンバータ204の温度と加熱開始温度及び加熱停止温度との比較を行う手法は、上述した第1乃至第3実施形態において用いてよい。加えて、この手法は、後述される第5実施形態において用いてよい。
典型的には、図8に示されるように、下流触媒205の温度が高くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度は低く設定される。このように、下流触媒205の温度が高くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度、加熱開始温度及び加熱停止温度をより低くさせ、触媒容量の総量のうち触媒コンバータ204の容量の割合をより低減することで、例えばバッテリ等の二次電池からEHC206への通電量を低減させ、二次電池の消耗を低減することが可能である。加えて、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーが排気ガスの流動を介して過度に、下流触媒205に伝達されることを効果的に防止し、下流触媒205の温度が過度に上昇することを効果的に低減することが可能である。
他方、図8に示されるように、下流触媒205の温度が低くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度は高く設定される。このように、下流触媒205の温度が低くなるに従って、触媒コンバータ204の第1目標温度、加熱開始温度及び加熱停止温度をより高くさせ、触媒容量の総量のうち触媒コンバータ204の触媒容量の割合をより高めることで、下流触媒205の触媒容量の低下又は不足を補い、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。加えて、下流触媒205の温度が低いと推定される場合、触媒コンバータ204の第1目標温度をより高くさせ、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーを、排気ガスの流動を介して、より多量に、下流触媒205に伝達させることで、下流触媒205の活性化を促進させ、排気浄化システムにおける浄化効率の効果的な向上を実現することが可能である。
この結果、第4実施形態によれば、下流触媒205の温度が低い場合でも、上述したように触媒コンバータ204によって、下流触媒205の触媒容量を補うことが可能であるので、プラグインHV車のように、エンジンを起動する機会及び頻度が少なく、下流触媒205の温度低下の傾向が高いハイブリッド車両におけるエンジンの起動に際して、排気ガスをより効果的に浄化することが可能である。このように、下流触媒205の温度に応じて、触媒コンバータ204の第1目標温度を変化させ、下流触媒205の活性化の度合いを変化させることにより、触媒コンバータ204と下流触媒205とを協調的且つ有機的に作用させ、効率性の高い最適なEHC206の電力制御と、排気ガスの浄化効率の向上との両立を実現することが可能である。
特に、第4実施形態によれば、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を開始する際の触媒コンバータ204の温度である加熱開始温度、及び、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を停止する際の触媒コンバータ204の温度である加熱停止温度を、下流触媒205の温度に応じて変化させている。これにより、触媒コンバータ204の加熱処理を、下流触媒205の温度に応じて決定された加熱開始温度及び加熱停止温度を契機としてより的確に実行することによって、触媒コンバータ204の温度をより高精度に第1目標温度に近付けることが可能である。
次に、制御ユニット190の制御下で、変数XENGONが「0」即ち「ゼロ」であるか否かが判定される(ステップS406)。ここで、変数XENGONが「0」である場合(ステップS406:Yes)、更に、制御ユニット190の制御下で、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic1が示す加熱開始温度より小さいか否かが判定される(ステップS407)。ここで、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic1が示す加熱開始温度より小さいと判定される場合(ステップS407:Yes)、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両の車速を示す定量的及び定性的な情報が変数spdとして、ROM等の記憶装置に記憶され取得される(ステップS408)。
次に、制御ユニット190の制御下で、変数spdが「0(km/h)」であるか否か、即ち、ハイブリッド車両が停止しているか否かが判定される(ステップS409)。ここで、変数spdが「0(km/h)」であると判定される場合(ステップS409:Yes)、制御ユニット190の制御下で、変数XSICONに「1」が代入される(ステップS410)。
次に、制御ユニット190の制御下で、触媒コンバータ204において、電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される(ステップS411)。
他方、上述のステップS409の判定の結果、変数spdが「0(km/h)」でないと判定される場合、即ち、ハイブリッド車両が停止状態でなく、走行状態であると判定される場合(ステップS409:No)、制御ユニット190の制御下で、変数XENGONに「1」が代入され、且つ、変数XSICONに「0」が代入される(ステップS412)。
次に、制御ユニット190の制御下で、エンジン150が運転状態とされ、触媒コンバータ204、205において、エンジン150から排出される排出ガスが有する熱エネルギーによる加熱処理が実行される(ステップS413)。
他方、上述したステップS406の判定の結果、変数XENGONが「0」でない場合、即ち、変数XENGONが「1」である場合(ステップS406:No)、更に、制御ユニット190の制御下で、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic2が示す加熱停止温度より小さいか否かが判定される(ステップS414)。ここで、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic2が示す加熱停止温度より小さいと判定される場合(ステップS414:Yes)、制御ユニット190の制御下で、上述したように、エンジン150が運転状態とされ、触媒コンバータ204、205において、エンジン150から排出される排出ガスが有する熱エネルギーによる加熱処理が実行される(ステップS413)。
他方、上述したステップS414の判定の結果、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic2が示す加熱停止温度より小さくないと判定される場合、即ち、触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic2が示す加熱停止温度より大きいと判定される場合(ステップS414:No)、制御ユニット190の制御下で、エンジン150の運転が停止され、触媒コンバータ204、205において、エンジン150から排出される排出ガスが有する熱エネルギーによる加熱処理が停止される。加えて、制御ユニット190の制御下で、変数XENGONに「0」が代入される(ステップS415)。
他方、上述したステップS407の判定の結果、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic1が示す加熱開始温度より小さくないと判定される場合、即ち、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic1が示す加熱開始温度より大きいと判定される場合(ステップS407:No)、制御ユニット190の制御下で、変数XSICONが「1」であるか否かが判定される(ステップS416)。ここで、変数XSICONが「1」であると判定される場合(ステップS416:Yes)、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic2が示す加熱停止温度より大きいか否かが判定される(ステップS417)。ここで、変数Tsicが示す触媒コンバータ204の測定された触媒温度が、変数ksic2が示す加熱停止温度より大きいと判定される場合(ステップS417:Yes)、制御ユニット190の制御下で、触媒コンバータ204において、電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が停止される。加えて、制御ユニット190の制御下で、変数XSICONに「0」が代入される(ステップS418)。
他方、上述したステップS402の判定の結果、取得されたSOCが30%を超えると判定されない場合、即ち、取得されたSOCが30%を超えないと判定される場合(ステップS402:No)、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両において、エンジン150が運転状態とされ、バッテリ194の充電が行われると共に、エンジン150が出力する駆動力によってハイブリッド車両が走行する(ステップS419)。
(第5実施形態)
(動作原理)
次に、図9乃至図12を参照して、本発明の第5実施形態に係るハイブリッド車両の排気浄化システムの動作原理について説明する。ここに、図9は、本発明の第5実施形態に係る排気浄化装置を含むハイブリッド車両を統括制御する制御ユニットにおけるの制御処理の流れを示したフローチャートである。尚、図9で示された制御処理は、制御ユニット190によって、所定周期で繰り返し実行される。図10は、本発明の第5実施形態に係る触媒コンバータ204の第2目標温度と、触媒コンバータ204の加熱処理を開始する際の触媒コンバータ204の温度である加熱開始温度と、触媒コンバータ204の加熱処理を停止する際の触媒コンバータ204の温度である加熱停止温度と、下流触媒205の温度との定量的及び定性的な関係を示したマップである。図11は、本発明の第5実施形態に係る触媒コンバータ204及び従来の三元触媒において、セ氏600度の触媒温度から各温度に低下するまでに要する時間を示したグラフである。尚、図11中の横軸は時間を示し、縦軸は触媒温度を示す。図12は、本発明の第5実施形態に係る下流触媒205の温度と触媒コンバータ204の第1目標温度との定量的及び定性的な関係を示したグラフ(図12(a))、触媒コンバータ204の温度と触媒コンバータ204の温度低下速度との定量的及び定性的な関係を示したグラフ(図12(b))、及び、下流触媒205の温度と触媒コンバータ204の第2目標温度との定量的及び定性的な関係を示したグラフ(図12(c))である。
図9に示されるように、上述したステップS401乃至ステップS404を経て、制御ユニット190の制御下で、第5実施形態に係る、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を開始する際の触媒コンバータ204の温度である加熱開始温度を示す変数ksic1、及び、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を停止する際の触媒コンバータ204の温度である加熱停止温度を示す変数ksic3が取得される(ステップS501)。詳細には、これらの加熱開始温度を示す変数ksic1、及び、加熱停止温度を示す変数ksic3は、下流触媒205の温度を示す変数Tufcに加えて、上述の触媒コンバータ204の温度変化特性に応じて一義的に決定される。ここに、本実施形態に係る温度変化特性は、例えば触媒コンバータ204等の対象物の温度変化に関する性質において、時間経過に伴って温度が変化する際の変化の度合いを意味する。
典型的には、温度変化特性は、上述の触媒コンバータ204において、単位時間当たりに低下する温度低下量、即ち、温度低下速度を意味してよい。或いは、温度変化特性は、上述の触媒コンバータ204の温度が所定の大きさの温度だけ低下するのに要する時間間隔を意味してよい。
具体的には、図10に示されるように、変数Tufcによって示される下流触媒205の温度が温度T0である場合、変数ksic1によって示される加熱開始温度T1及び変数ksic3によって示される加熱停止温度T3(但し、T3>T2)が一義的に決定される。特に、第5実施形態に係る電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を停止する際の触媒コンバータ204の温度である加熱停止温度T3は、上述した第4実施形態に係る電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を停止する際の触媒コンバータ204の温度である加熱停止温度T2と比較して、温度差αだけ高くさせている。この温度差αは、上述した電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204の温度変化特性に基づいて定義可能である。
本願発明者らによる、この温度変化特性に関する研究によれば、この電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204における温度変化特性、典型的には、所定温度だけ低下するのに要する時間は、例えばコージラーイト等の従来の三元触媒において所定温度だけ低下するのに要する時間と比較して短いことが判明している。何故ならば、この電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204は、SiC(即ち、炭化珪素)等の熱伝導性の一般的に高い要素群を含み、これらの含有割合が、例えばコージラーイト等の三元触媒と比較して多いためである。
これにより、電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204の温度変化特性の一例である温度低下速度は、この熱伝導性の度合いの差に起因して、例えばコージラーイト等の従来の三元触媒の温度低下速度と比較して大きい。特に、電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204の温度低下速度と、例えばコージラーイト等の三元触媒の温度低下速度との差は、触媒温度が高くなるに従って大きくなることが判明している。具体的には、図11中の時間Ti1に示されるように、例えばセ氏600度からセ氏400度までの200度だけ低下するのに要する時間は、触媒コンバータ204の場合、約350秒である。他方、図11中の時間Ti2に示されるように、例えばコージラーイト等の三元触媒の場合、約740秒であり、触媒コンバータ204の方が、例えばコージラーイト等の従来の三元触媒と比較して、温度が低下する速度が速いことが判明している。更に、具体的には、図11中の傾きSlp1及びSlp3に示されるように、触媒コンバータ204の温度が高い程、温度低下速度は、大きくなることが判明している。加えて、共通の触媒温度において、触媒コンバータ204の温度低下速度と従来の三元触媒の温度低下速度とを比較した場合、この共通の触媒温度が高くなるに従って、触媒コンバータ204の温度低下速度は、従来の三元触媒の温度低下速度と比べて大きくなることが判明している。具体的には、触媒温度がセ氏600度の場合における、触媒コンバータ204の温度低下速度と従来の三元触媒の温度低下速度との差(即ち、図11中の傾きSlp1及びSlp2との傾く角度の差)は、触媒温度が氏400度の場合における、触媒コンバータ204の温度低下速度と従来の三元触媒の温度低下速度との差(即ち、図11中の傾きSlp3及びSlp4との傾く角度の差)よりも大きいことが判明している。
即ち、第5実施形態では、触媒コンバータ204の温度を、下流触媒205の温度に加えて触媒コンバータ204の温度低下速度に応じて決定される第2目標温度に近付けるように、EHC206へ通電する通電量を制御する。即ち、図12(a)に示されるように、下流触媒205の温度が低くなるに従って、第1目標温度を高くしている。加えて、図12(b)に示されるように、上述したように、触媒コンバータ204の温度が高くなるに従って、触媒コンバータ204の温度低下速度は大きくなることが判明している。これにより、第5実施形態では、図12(c)に示されるように、第2目標温度を下流触媒205の温度が低くなるに従って高くすることに加えて、触媒コンバータ204の温度低下速度に相当する分(図12(c)中のα1、α2、α3、並びに、上述した図10中の温度差αを参照)だけ更に高くさせている。
このように第5実施形態では、触媒コンバータ204の温度を、上述した第1目標温度よりも触媒コンバータ204の温度低下速度に相当する分だけ高くなった第2目標温度に近付けるように、EHC206へ通電する通電量を制御する。これにより、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を停止する際の契機となる加熱停止温度を高めることができる。これにより、触媒コンバータ204の実際の温度が、このより高い加熱停止温度に到達した後、温度が時間経過に伴って低下し、加熱開始温度を下回るタイミングを遅らせることが可能である。これにより、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を実行する頻度を少なくさせることができる。これにより、例えばバッテリ等の二次電池からEHC206へ通電する頻度を低減させ、通電量を低減させることができるので、二次電池の消耗を効果的に低減することが可能である。これにより、エンジンの燃費及び二次電池の電力量を含むハイブリッド車両全体でのエネルギー効率を向上させることが可能である。特に、エンジンを起動する機会及び頻度が少ないプラグインHV車においては、エネルギー効率を向上させ、信頼性を向上させることは実践上、大変好ましい。加えて、エンジンを起動する機会及び頻度をより少なくさせることにより、エンジンで発生するトルク変動を低減することができるので、ハイブリッド車両におけるドライバビリティを向上させることができる。
(第6実施形態)
次に、図13を参照して、本発明の第6実施形態に係るハイブリッド車両の排気浄化システムの動作原理について説明する。ここに、図13は、本発明の第6実施形態に係る排気浄化装置を含むハイブリッド車両を統括制御する制御ユニットにおける制御処理の流れを示したフローチャートである。尚、第6実施形態に係る制御処理は、第4実施形態に係る制御処理と同時に又は相前後して実行されてよい。或いは、第6実施形態に係る制御処理は、第5実施形態に係る制御処理と同時に又は相前後して実行されてよい。また、上述した図13で示された制御処理は、制御ユニット190によって、所定周期で繰り返し実行される。
図13に示されるように、先ず、制御ユニット190の制御下で、バッテリ194の残容量、所謂、電池状態(即ち、SOC(State of Charge))を示す定量的又は定性的な情報が取得される(ステップS601)。
次に、制御ユニット190の制御下で、電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204の測定された触媒温度を示す定量的又は定性的な情報が、変数Tsicとして、ROM等の記憶装置に記憶され取得される(ステップS602)。
次に、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両において回生が要求されたか否かが判定される(ステップS603)。ここで、ハイブリッド車両において回生が要求されたと判定される場合(ステップS603:Yes)、更に、制御ユニット190の制御下で、取得された変数Tsicが示す電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204の測定された触媒温度が例えばセ氏700度等の所定閾値より小さいか否かが判定される(ステップS604)。ここに、第6実施形態に係る所定閾値は、典型的には、触媒コンバータ204の活性化温度を超える温度であり、且つ、触媒コンバータ204が有する熱エネルギーが、排気ガスの流動を介して、下流触媒205に伝達されることにより、下流触媒205の活性化を促進可能な温度を意味してよい。
このステップS604の判定の結果、電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204の測定された触媒温度が例えばセ氏700度等の所定閾値より小さいと判定される場合(ステップS604:Yes)、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両において、例えば軽負荷状態でエンジンの運転が継続される(ステップS605)。
次に、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両のエンジン制御において、点火時期の遅角制御が実施される(ステップS606)。
次に、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両のエンジン制御において、点火時期の遅角制御の実施が完了したか否かが判定される(ステップS607)。ここで、ハイブリッド車両のエンジン制御において、点火時期の遅角制御の実施が完了したと判定される場合(ステップS607:Yes)、一連の制御処理を終了する。他方、ハイブリッド車両のエンジン制御において、点火時期の遅角制御の実施が完了したと判定されない場合(ステップS607:No)、再度、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両のエンジン制御において、点火時期の遅角制御が実施される(ステップS606)。
他方、上述したステップS604の判定の結果、電気触媒加熱ヒータによる加熱処理が実行される触媒コンバータ204の測定された触媒温度が例えばセ氏700度等の所定閾値より小さいと判定されない場合、即ち、触媒コンバータ204の測定された触媒温度が例えばセ氏700度等の所定閾値より大きいと判定される場合(ステップS604:No)、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両のエンジン制御において、点火時期の遅角制御の実施が停止される(ステップS608)。これにより、不必要な遅角制御の実施をできるだけ省略し、迅速にEV走行に移行することが可能である。
次に、制御ユニット190の制御下で、ハイブリッド車両において、回生が実際に実施される(ステップS609)。尚、第6実施形態では、HV走行からEV走行に実際に移行するタイミングを固定して、その固定されたタイミングより時間軸上早く点火時期の遅角制御を実施してよい。或いは、HV走行からEV走行に実際に移行するタイミングを遅らせた後、その遅らせられたタイミングより時間軸上早く点火時期の遅角制御を実施してよい。即ち、HV走行からEV走行に実際に移行するタイミングが、点火時期の遅角制御を実際に実施するタイミングと比較して、時間軸上、早ければよい。
このように第6実施形態においては、HV走行からEV走行へ切り替える要求が発生した場合、言い換えると、走行速度を減速する減速運転が要求され、回生が要求される場合、点火時期を基準値と比較して遅角側に変化させる遅角制御を実施する。ここに、本実施形態に係る点火時期における基準時期とは、燃費及び熱効率のうち少なくとも一方が最適な点火時期を意味してよい。典型的には、燃料の燃焼によって内燃機関が発生するトルクが最大となる点火時期を意味してよい。遅角側に変化させる際の変化量は、第6実施形態では、吸気管内の圧力、エンジン回転数、変速比等の走行パラメータのうちを少なくとも一つに応じて、点火時期を遅角側に変化させる際の変化量が設定されてよい。
これにより、HV走行からEV走行へ実際に切り替える前に、排気ガスの温度をより高くさせることができ、より高温となった排気ガス自体が有する熱エネルギーによって、下流触媒の温度をより上昇させることができる。特に、ハイブリッド車両においては、排気ガスによる下流触媒の加熱処理は、ハイブリッド車両がHV走行を行っている場合、即ち、エンジンを運転している場合に行われる。これにより、HV走行から、エンジンを運転させないEV走行へ実際に切り替える前に、下流触媒の温度をより上昇させることができることは、実践上、大変有益である。
このように第6実施形態では、下流触媒の温度をより上昇させることができるので、上述した触媒コンバータ204の目標温度及び第2目標温度を低下させることができる。典型的には、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を開始する際の契機となる加熱開始温度を低下させることができる。これにより、触媒コンバータ204の実際の温度がこの加熱開始温度を下回るタイミングを遅らせ、ひいては、電気触媒加熱ヒータによる触媒コンバータ204の加熱処理を実行する頻度を少なくさせることができる。これにより、例えばバッテリ等の二次電池からEHC206へ通電する頻度を低減させ、通電量を低減させることができるので、二次電池の消耗を効果的に低減することが可能である。これにより、エンジンの燃費及び二次電池の電力量を含むハイブリッド車両全体でのエネルギー効率を向上させることが可能である。特に、エンジンを起動する機会及び頻度が少ないプラグインHV車においては、エネルギー効率を向上させ、信頼性を向上させることは実践上、大変好ましい。
加えて、上述した点火時期の遅角制御を実施することにより、エンジンで発生するトルク変動を低減することができるので、ハイブリッド車両におけるドライバビリティを向上させることができる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の排気浄化装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。