JP5482072B2 - アキシャルギャップ型モータ及び電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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また、隣り合う永久磁石との間に隙間が形成されることにより、隣り合う永久磁石間に磁束が形成されにくくなるとともに、各永久磁石から発せられる磁束は固定子側へ向かいやすくなる。このため、モータトルクの発生に係る、永久磁石の固定子側へ向かう磁束密度が増大する。したがって、モータトルクのいっそうの増大化が期待できる。なお、回転子側に電磁石を、固定子側に永久磁石を設ける構成を採用した場合であれ、前述と同様の作用及び効果が得られる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアキシャルギャップ型モータにおいて、前記回転子又は固定子は、前記永久磁石の前記固定子又は回転子と反対側の面の全体を覆う他の磁性体を有してなることをその要旨とする。
図1に示すように、ステアリング11が固定されたステアリングシャフト12は、ラックアンドピニオン機構13に連結されている。ステアリング操作に伴うステアリングシャフト12の回転は、ラックアンドピニオン機構13によりラックハウジング14の内部に挿通される図示しないラック軸の往復直線運動に変換される。このラック軸の往復直線運動により転舵輪15の舵角が変化することにより、車両の進行方向が変更される。
次に、モータの構成について詳細に説明する。図2に示すように、モータ16のケーシング21は、ステンレス綱鋼材等の非磁性金属材料によりその両端面が開口した円筒状に形成されている。当該ケーシング21の内周面には、円筒状の固定リング22が圧入固定されている。固定リング22の内周面には、複数の環状のスリット22bが形成されている。本例では、2つのスリット22bが固定リング22の軸線方向において間隔をおいて設けられている。スリット22bの切り込み深さは、固定リング22の内周面からケーシング21の内周面の近傍位置までの間において適宜設定される。なお、ケーシング21と後述する固定子23を構成するコア24との熱膨張差及び剛性の差により磁極部27の根元(コア24に対する連結部位の近傍)に過大な応力が加わらないように、スリット22bの形状は決められる。また、固定リング22は、熱の良導体でもあるアルミニウム等の軟質の非磁性金属材料により形成されている。すなわち、固定リング22は、後述する固定子23を構成するコイル25に通電された際に発生するジュール熱が伝達される熱の通路として機能する。そしてこの固定リング22の内周面には円環柱状の固定子23が固定されている。
図3に併せて示されるように、固定子23は、棒状のコア24及び当該コア24に巻回されるコイル25からなる複数個(本例では、18個)の電磁石26が環状に配設されてなる。コア24は、鉄等の磁性体により断面扇形の柱状に形成されるとともに、その両端部には扇形板状の磁極部27が設けられている。コア24において、両磁極部27間には導線が巻回されることによりコイル25が形成されている。また、図2に示されるように、磁極部27はコア24に設けられたコイル25の外側に張り出している。コア24の上下一対の磁極部27において、それらの張り出した部分である張出部27aの間には、固定リング22が嵌め込まれている。固定リング22を挟み込む上下一対の張出部27aのうち図2における下側の張出部27aは、ケーシング21の内周面に形成された段差面21aに当接している。これにより、固定リング22及び各電磁石26の図2における下方への変位が規制される。そしてケーシング21の段差面21aと反対側の開口部を介して、円環状の固定ナット28をケーシング21の内周面に対して締め付けることにより、各磁極部27の上下一対の張出部27aは固定リング22を間に挟み込んだ状態で、段差面21aと固定ナット28とにより挟持される。これにより、固定リング22及び各電磁石26のケーシング21からの抜け止めが図られる。
図2に示すように、固定子23の挿通孔23aには、中空状の出力軸31が回転可能に挿通されている。出力軸31の外径は、固定子23の挿通孔23aの内径よりも小さく設定されている。出力軸31の内径は、前述したラック軸が挿入可能、かつ図2における上下方向へ変位可能となる程度に設定される。
次に、前述のように構成したモータの組立方法を説明する。図3に示すようにまず、両磁石支持部材33に対してそれぞれ磁石ヨーク34、磁石35及び共通ヨーク36を固定することにより2つの回転子30,30を予め組み立てておく。また、固定子23についても予め組み立てておく。この固定子23の組み立ては、例えば次のようにして行われる。すなわち、各コア24の一の端部に磁極部27を溶接等により固定する。次いで、各コア24の磁極部27が固定された端部と反対側の端部からコイル25を挿入して、これらコア24とコイル25とを接着剤等により密に固定する。そしてこれら一体をなすコア24及びコイル25を固定リング22に挿入して、その反対側から各コア24の残りの一の端部に磁極部27を溶接等により固定する。これにより、固定子23の組み立てが完了となる。なお、固定リング22は、例えば半円筒状の分割体を組み合わせてなる構成を採用してもよい。このようにすれば、コア24、コイル25及び2つの磁極部27を組み立てた後に、これらに対して固定リング22を取り付けることができる。
次に、共通ヨーク36の形状を図6(a)に基づいて詳細に説明する。この図6(a)は、固定子23及び回転子30をそれらの一箇所を軸線方向に切断して展開した状態を示す。同図に示されるように、共通ヨーク36の固定子23側の側面は、固定子23側に凸となるように湾曲してなる曲面36a(湾曲面)が形成されている。曲面36aと固定子23との間の距離Lは、当該曲面36aの両端側が最も大きく、その中央に向かうにつれて徐々に小さくなって当該中央で最小となる。この共通ヨーク36と固定子23との間の距離Lは、磁気抵抗に大きく影響する。すなわち、共通ヨーク36と固定子23との間の距離Lが小さくなるほど磁気抵抗も小さく、逆に当該距離Lが大きくなるほど磁気抵抗も大きくなる。したがって、図6(b)のグラフに示されるように、横軸を電気角(機械角)、縦軸を磁石35から固定子23側へ向かう磁束密度(Bz)したとき、磁石35の磁場分布は、サインカーブ(正弦波)を描く。一の磁石35に着目したとき、その両隣の磁石35との間の隙間の中央間の距離は、電気角180度(機械角60度)に対応する。本例では、6つの磁石35を使用しているからである。このように、共通ヨーク36の固定子23側の側面を湾曲形状とすることにより、いわゆるサイン磁場が形成される。ひいては、三相正弦波駆動を通じてモータトルクを好適に得ることが可能となる。
次に、各磁石35の磁気回路について説明する。図7(a)に実線の矢印で示されるように、各磁石35から発せられる磁束は、磁石ヨーク34及び共通ヨーク36の内部を通過しつつ(閉じ込められつつ)、互いに反対側に設けられる回転子30の磁石35間において形成される。磁石35の固定子23側の側面の全面が磁性体、すなわち共通ヨーク36により覆われるとともに、当該共通ヨーク36の固定子23側の側面に当該固定子23側に凸となる曲面36aが形成されていることにより、磁石35から発せられる磁束は好適に固定子23側へ向かうようになる。また、回転子30の回転方向において隣り合う磁石35間には隙間が形成されている。このため、当該回転方向において隣り合う磁石35間に磁束は形成されにくくなり、磁石35の磁束は固定子23側へ向かいやすくなる。したがって、磁石35の固定子23側へ向かう磁束の密度が好適に確保される。
次に、各コイル25の磁気回路について説明する。図7(b)に破線の矢印で示されるように、各コイル25に三相交流電力が印加された場合、これらコイル25から発せられる磁束は、共通ヨーク36の内部に閉じ込められるかたちで形成される。具体的には、当該磁束は、各共通ヨーク36の内部及び各磁極部27を通過する。すなわち、各コイル25から発せられる磁束は、磁石35に鎖交することがない。コイル25の磁束が磁石35を通過しないことにより、当該コイル磁束が磁石35の磁気抵抗の影響を受けることはない。このため、コイル25の磁束を効率よく発生させることが可能となる。コイル25の磁束密度も好適に確保される。なお、同図では、一例としてU+相及びU−相に対応する磁束が主に示されている。これは次の理由による。すなわち、これらU相及びU−相の間の各相に対応するコイル25にも磁束は発生するものの、逆方向の磁束同士は打ち消し合うので、結果的に図7(b)に示される磁束が残るかたちとなる。
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)磁石35の固定子23側の側面全体を共通ヨーク36で覆った。そして、当該共通ヨーク36の固定子23側の側面には当該固定子23側に凸となる曲面36aを形成した。このため、磁石35の磁場分布を滑らかなサインカーブとすることができる。すなわち、回転子30から固定子23へ向かう磁束の密度が好適に確保される。これにより、トルクリップルの発生が抑制されて、モータ16を三相正弦波駆動方式により円滑に駆動させることができる。騒音の発生等も抑制される。また、磁石35の固定子23側の側面全体が共通ヨーク36により覆われることにより、コイル25から発せられる磁束が磁石35を通過することがない。このため、コイル25の磁束密度を好適に確保することができる。ひいては、モータトルクを確保することができる。
(3)回転子30は、磁石35の固定子23側の面の全体を覆う共通ヨーク36、及び固定子23と反対側の面の全体を覆う磁石ヨーク34を備えてなる。このため、磁石35から発せられる磁束が固定子23と反対側の面から漏洩することが抑制される。したがって、磁石35の磁気回路が好適に形成されるとともに、磁石35の固定子23側へ向かう磁束の密度をより好ましいレベルで確保することができる。
隣り合う磁石35との間に隙間が形成されることにより、隣り合う磁石35間に磁束が形成されにくくなるとともに、各磁石35から発せられる磁束は固定子23側へ向かいやすくなる。このため、モータトルクの発生に係る、磁石35の固定子23側へ向かう磁束の密度が増大する。したがって、モータトルクのいっそうの増大化が期待できる。
なお、前記実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・本例では、6個の磁石35を使用したが、例えば4つにしてもよい。このようにすれば、固定子23の鉄損が小さくなる。
Claims (6)
- 永久磁石を備えてなる回転子又は固定子、及び電磁石を備えてなる固定子又は回転子が、その軸線方向において対向して配設されてなるアキシャルギャップ型モータにおいて、
前記回転子又は固定子は、前記永久磁石の前記固定子又は回転子に対向する面の全体を覆う磁性体を備え、
前記磁性体の前記固定子又は回転子側の面には、前記永久磁石の磁場分布を滑らかなサインカーブとするべく、前記固定子又は回転子側に凸となる曲面であって、前記回転子の回転方向に高さが変化するように湾曲してなる曲面が形成され、
前記永久磁石は、前記回転子の回転方向において、隙間を空けて複数に分割されてなるとともに、前記永久磁石間の隙間には、他の永久磁石が介在され、
前記他の永久磁石は、隣に位置する前記永久磁石の極性と同じ極性となるように設けられているアキシャルギャップ型モータ。 - 請求項1に記載のアキシャルギャップ型モータにおいて、
前記永久磁石及び前記磁性体を含んでなる一対の回転子又は固定子を備え、これら回転子又は固定子は前記固定子又は回転子を間に挟んで互いに対向してなるアキシャルギャップ型モータ。 - 請求項1又は請求項2に記載のアキシャルギャップ型モータにおいて、
前記回転子又は固定子は、前記永久磁石の前記固定子又は回転子と反対側の面の全体を覆う他の磁性体を有してなるアキシャルギャップ型モータ。 - 請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型モータにおいて、
前記固定子又は回転子側の磁性体は、前記回転子の回転方向において、隙間を空けて複数に分割されてなるアキシャルギャップ型モータ。 - 請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型モータにおいて、
前記回転子及び前記固定子を収容するケーシングを備え、前記固定子は前記ケーシングの内周面に固定部材を介して固定するとともに、前記回転子は前記ケーシングの内周面に対して相対回転可能に支持し、
前記固定部材は非磁性金属材料により形成するとともに、その固定子側の面には当該固定子の軸線方向に対して交わる方向へ延びるスリットを形成してなるアキシャルギャップ型モータ。 - 請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型モータが駆動源として採用されてなる電動パワーステアリング装置。
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