JP5479279B2 - 加圧ローラ - Google Patents
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Description
さらに、高速化への要求も以前にもまして、強くなってきている。
この要求に対応する為には、定着ベルトと加圧ローラとにより形成されるニップ部の幅を大きくすることが必要となるが、その対応策の一つとして、加圧ローラの弾性層の硬度を低硬度にする方法が知られている。
ところが、加圧ローラの弾性層の硬度を低硬度にする弊害として、タック性の問題が生じ、定着ベルトと加圧ローラとの密着性あるいは粘着性が強くなり、定着ベルトが回転中にばたつくという問題があった。
さらに、この現象は、より大きなニップ幅、二ップ圧が必要な大口径の太物の加圧ローラにおいてより顕著に現れる傾向があることが判明した。
一方、トナーとの離型性を改善する方法として、弾性層上にフッ素樹脂(PFA)チユーブからなる離型層を被覆した加圧ローラが知られている。(特許文献1)
ところが、通常、弾性層はシリコーンゴム等のゴム部材から構成されており、硬度あるいは収縮率等の伸び特性の異なるフッ素樹脂とは相入れない部材であるため、トナーとの離型性は改善されるものの、ベルトのばたつき、ベルトとの密着(粘着)の問題に対しては解決策とはなっていないのが実状である。
しかも、この方法は弾性層を形成するゴムと離型層を形成するフッ素樹脂間の熱による伸縮率の差により、加圧ローラの長手方向に複数本のしわを生じ、定着されたトナー画像に乱れを生じるという別の問題もある。
従って、高速で大型のベルト式定着装置においても、ベルトのばたつきの発生がなく、
しかも、耐摩耗性および耐久性に優れ、安定した定着画像を実現可能とする加圧ローラが切望されている。
にシリコーンゴム弾性層が形成され、さらに、シリコーンゴム弾性層の外表面にシリコーン系プライマーがプライマーにクラックが入った状態で塗布されていることを特徴とする加圧ローラが提供される。
a.シリコーンゴム弾性層と相性の良いシリコーン系プライマーをクラックが入った状態で塗布したのでフッ素樹脂の場合と比較し、硬度変化も少なく、樹脂による密着性(粘着性)が改善され、ベルトのばたつき、並びに、ベルトへの損傷が解消される。
b.シリコーンゴムとシリコーン系プライマーは物性が類似し、しかも、接着力を向上させる部材が含有されているので、界面接着強度に優れ、耐磨耗性、並びに、耐久性に優れているとともに、熱膨張差に起因するローラ表面のしわの発生も無く、さらには、しわに起因する画像の乱れも改善される。
c.シリコーン系プライマーの加熱温度あるいは硬化温度はシリコーンゴムの加硫温度とほぼ同じかそれ以下の温度なので、従来のフッ素樹脂の焼成温度と比較し、はるかに低い温度で済むので、シリコーン系プライマーの加熱時あるいは硬化時の熱によるシリコーンゴム層のゴム劣化の懸念が無くなる。
d.弾性層上にフッ素チューブを被覆する場合のような弾性層との接着性改善のためのケミカル処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の化学的処理が不要で工程が簡略化できる。
e.通常、芯金とシリコーンゴム層との接着剤(プライマー)として使用する汎用のシリコーン系プライマーを使用しているので低コストが実現されることになる。
以下、本発明について添付図面を参照しながら説明する。
図1及び図2では、本発明の加圧ローラの一例を示し、(1)は芯金、(2)は芯金(1)の外周に被覆されたシリコーンゴム弾性層、(3)はシリコーンゴム弾性層(2)の外表面に被覆するシリコーン系プライマーである。
また、図3はシリコーン系プライマー(3)が塗布された本発明の加圧ローラの表面を100倍に拡大した拡大図である。
以下、本発明について、図1〜図3を参照しながら説明するが、本発明でのシリコーン系プライマーとはシリコーンレジンにカップリング剤等の接着力向上剤を含有させたものを指すものとする。
本発明の第一の特徴は、シリコーンゴム弾性層(2)の外表面にシリコーン系プライマー(3)をクラックが入った状態で塗布したことにある。
こうすることにより、シリコーンゴムとシリコーン系プライマーはフッ素樹脂系プライマーとは異なり元々物性が類似しており相性が良く、密着性(粘着性)が改善されるので、定着ベルトのばたつき、及び、ベルトの損傷が解消される。
さらに両者は物性が類似し、当然ながら界面接着強度にも優れており、ひいてはロール全体での耐磨耗性、並びに、耐久性にも優れた加圧ロールが得られる。
また、運転時に発生するローラ表面のしわの発生も無く、さらには、しわに起因する画像の乱れも改善される。
本発明では、図3に示すように、シリコーンゴム弾性層(2)の外表面にシリコーン系プライマーをクラックが入った状態で塗布する。
従って、ローラ表面とベルトとの接触がクラックが無い場合の面接触から点接触となるとともに、シリコーンゴム弾性層(2)の熱膨張力によりクラックを形成する方法であるので、プライマー粒子の分散度に依存しなく、しかも、クラック幅がほぼ一定であるという特徴との相乗効果により、ベルトとの密着性(粘着性)が改善され、定着ベルトのばたつき、ひいては、ベルトへの損傷も解消されるものと考えられる。
これに対して、従来のレジンの場合にはレジン粒子の分散度に依存するため、レジン粒子間の間隙がばらつき、間隙を一定に制御することが困難であったため、ローラ表面とベルトとの均一な点接触が得ることが難しく、ベルトとの密着性(粘着性)が、思いの外、改善されないものと考えられる。
さらに、シリコーン系プライマー(3)にはカップリング剤等の接着力向上剤が含有されているので、従来のシリコーンレジンだけの場合と比較し界面接着強度に優れ、耐久性耐磨耗性にも優れた加圧ロールが得られる。
又、シリコーン系プライマーにはクラックによる適度な間隙があるので熱膨張差に起因する、運転時に発生するローラ表面のしわの発生も無く、さらには、しわに起因する画像の乱れも同時に改善される。
しかも、本発明の副次的な効果として、シリコーン系プライマー(3)の加熱温度あるいは硬化温度はシリコーンゴムの加硫温度とほぼ同じか、低い加熱温度あるいは硬化温度で済むので、加熱・硬化時の熱によるシリコーンゴム層(2)のゴム劣化の心配も無くなる。
その中でも、粘度が0.1mm2/S〜1.1mm2/S、且つ、比重が1以下であるシリコーン系プライマーが塗布し易く、薄い塗膜を形成し易いのでより好ましい。
ここでシリコーン系プライマー(3)はコーティング、ディッピング等の方法により、被覆すれば良く、通常のプライマーと同様、塗布する方法がより好ましい。
シリコーン系プライマー(3)の厚さの上限はあまり厚くすると硬度が大きくなり過ぎボロボロとなって異物となり、二ップ幅にも影響がでるので30μm以下とし、一方、シリコーン系プライマー(3)の厚さの下限はあまり薄くすると硬度は変化しないものの、耐磨耗性が低下するとともに、密着性改善効果が期待できないので1μm以上とし、結局、シリコーン系プライマー(3)の厚さは1μm〜30μmが好ましい範囲で、2μm〜10μmがさらに好ましい範囲である。
さらに、シリコーン系プライマー(3)の厚さはシリコーンゴム弾性層(2)の厚さに対し0.001%〜10%の範囲にあることが望ましい。
その理由は、加熱によりシリコーンゴム層(2)が熱膨張し、この時の熱膨張力がロール表面に塗布されたシリコーン系プライマー(3)に均等に作用し、一定の間隙を有するクラックを発生させるからである。
クラックに囲まれた部分の大きさについては、本発明の効果を得るためには、その大きさが5μm〜300μmの範囲にあることも肝要である。また、クラック幅については、5μm〜50μmであることが望ましい。
また、クラックに囲まれた部分の大きさはシリコーン系プライマー(3)塗布後の再加熱温度と時間によりほぼ決定されるが、本発明では、加熱温度100℃〜245℃、加熱時間15分〜480分の範囲内で制御すれば良い。
シリコーンゴム(2)の硬度はニップにも拠るが、JIS A 0度〜50度の範囲にあることが好ましく、シリコーンゴム弾性層(2)の厚さは、断熱性、熱容量(蓄熱性)、硬度を考慮して決定されることになるが、通常0.3mm〜30mmの範囲にあることが望ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。
なぜなら、Raが0.5μm以下であるとベルトへの貼付が改善されない、言い換えれば密着改善効果が得られなく、Raが4μm以上であると、今度は逆に、凹凸によりベルトがばたつくとともに、ベルトとの接触面が少なくなりシリコーン系プライマー(3)の磨耗性が悪化するためである。
なお、本発明は加圧ローラの外径が10mm以上であるローラにおいて十分な効果が得られる。
さらに、本発明ではフッ素樹脂型層を有していないので構造が簡略化される事も特長として挙げられる。
先ず、長さ100mm〜1000mm、外径が10mm〜100mmのアルミニウムからなる芯金(1)にシリコーンゴム弾性層(2)として液状シリコーンゴムを加硫・固化する。次に、シリコーンゴムを研磨して厚さ0.3mm〜30mmのシリコーンゴム弾性層からなる弾性層(2)を形成する。 次に、この弾性層(2)の外周に市販のシリコーン系プライマー(3)を塗布した。その後、加熱温度100℃〜245℃、加熱時間15分〜480分にて加硫・固化し、シリコーン系プライマー(3)に図3に示すクラック(クラックに囲まれた部分の大きさが5μm〜300μmで、且つ、クラック幅が5μm〜50μm)が入った本発明の加圧ローラが得られた。
この際のシリコーン系プライマー(3)の厚さは、1μm〜30μmとした。
上記の説明では、弾性層(2)として液状シリコーンゴムをコーティングする方法を説明したが、この方法に限定されず、芯金(1)上にシリコーンゴムを押出被覆する方法、あるいは、予めチューブ状に成形したシリコーンゴムチューブ成形体を芯金に挿入、圧入しても良い。なお、強度向上のため、接着剤は適宜使用してもよい。
「実施例1」
上述した製造方法において、弾性層(2)として厚さ10mm、幅300mmのシリコーンゴム層とし、さらに、その外周にシリコーン系プライマー層(3)として、粘度が0.2mm2/S〜1.0mm2/S、且つ、比重が0.77〜0.78の市販のシリコーン系プライマー(3)を厚さが3μmでコーティングし、加熱温度150℃、加熱時間30分にて再度加硫・固化して、シリコーン系プライマー(3)に図3に示すクラック(クラックに囲まれた部分の大きさが15μm〜100μmで、且つ、クラック幅が20μm〜30μmでほぼ一定)が入った本発明の加圧ローラを作成した。
磨耗試験を実施した。
引張せん断密着強さ試験の結果は下記の表1に示し、同試験条件は下記表2に示す。
屈曲試験は180°の連続屈曲試験とし、荷重は219.7g、屈曲部軸径はφ10mmとした。
又、磨耗試験はニップ幅5mm、回転数1356rpm、ワーク径φ30mmとした。
この結果、密着力については0.1kgf以下となり密着がないレベルにまで密着力が低減化できていることが確認できた。
また、通紙枚数250k枚に相当する屈曲試験を行なった結果、シリコーン系プライマー表面には特段の変化ないことが確認された。
さらに、10分間、ポリイミドベルト(PIヘ゛ルト)との磨耗試験を行なった結果、シリコーン系プライマー層の脱落、剥がれも一切無いことも確認できた。
2 シリコーンゴム弾性層
3 シリコーン系プライマー
Claims (8)
- ベルト定着装置に使用する加圧ローラであって、芯金上にシリコーンゴム弾性層が形成され、さらに、該シリコーンゴム弾性層の該表面にシリコーン系プライマーが該プライマーにクラックが入った状態で塗布されていることを特徴とする加圧ローラ。
- 該クラックに囲まれた部分の大きさが5μm〜300μmの範囲にある請求項1に記載の加圧ローラ。
- 該クラック幅が5μm〜50μmの範囲にある請求項1または2に記載の加圧ローラ。
- 該シリコーン系プライマーの厚さが1μm〜30μmの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の加圧ローラ。
- 該シリコーン系プライマーの厚さが該シリコーンゴム弾性層の厚さに対して0.001%〜10%の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の加圧ローラ。
- 該シリコーン系プライマーの粘度が0.1mm2/S〜1.1mm2/S、且つ、比重が1以下である請求項1〜5のいずれかに記載の加圧ローラ。
- 該弾性層の硬度がJISA 0度〜50度の範囲にある請求項1〜6のいずれかに記載の加圧ローラ。
- 該加圧ローラの表面粗さRaが0.5μm〜4.0μmである請求項1〜7のいずれかに記載の加圧ローラ。
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