JP5478412B2 - 膜−電極接合体および燃料電池 - Google Patents

膜−電極接合体および燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、高濃度メタノール水溶液を燃料として、従来の直接メタノール型燃料電池よりも高い出力密度を発現できる燃料電池および、これが備える膜−電極接合体に関する。
近年、従来の火力発電に比べて、小型化可能で、燃料消費効率の高い発電装置として、燃料電池技術が注目されている。
中でも燃料電池の一種である直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell;以下、DMFCと称する場合がある)は、エネルギー密度が高く小型化が容易なため、携帯機器用電源として注目されている。DMFCは、燃料であるメタノール水溶液をアノード触媒層で二酸化炭素とプロトンに変換し、該プロトンを高分子電解質膜に伝導させてカソード触媒層に移動させ、該カソード触媒層に別途供給される酸素によって水に変換し、かかる一連の反応によって電気を発生させる。アノード触媒層でメタノール水溶液を二酸化炭素とプロトンに変換させるためには、メタノールと等モルの水が必要となる。DMFCをコンパクトにすると共に、プロトン発生の容積効率を高めるために高濃度(たとえば30〜95重量%)のメタノール水溶液を燃料として用いることが望ましい。しかしながら、メタノール水溶液を高濃度化するにしたがって、メタノールとの反応に必要な水が反応系内で足りなくなり、DMFCの出力密度が低下するという問題が生じる。
上記問題を解決するため、カソード触媒層の高分子電解質膜と接していない面に設置されるガス拡散層の外側に、多孔質膜を配置する手法が提案されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。該手法は、カソード触媒層で生成した水の蒸発を抑制することで、アノード触媒層側への水の拡散を促すものである。しかしながら、多孔質膜によってカソード触媒層への酸素の供給が阻害されカソード触媒層での反応速度が低下するため、DMFCの出力密度が低下してしまうという問題がある。
一方、イオン交換容量の高い高分子電解質膜をアノード触媒層側、イオン交換容量の低い高分子電解質膜をカソード触媒層側に配置した積層高分子電解質膜を用いることで、カソード触媒層で生じた水のアノード触媒層への拡散を促進させる手法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、該手法では、イオン交換容量の低い高分子電解質を使用するためセル抵抗(電気抵抗)が高くなることに加え、高分子電解質膜とカソード触媒層との接触抵抗が高くなるため、DMFCの出力密度向上が難しいという問題がある。
特開2004−165047号公報 特開平6−93114号公報 特開2008−53224号公報 特開2008−218408号公報 特開2007−214064号公報 特開2007−258162号公報 WO2007/086309号公報 WO2004/051776号公報 WO2002/040611号公報
Journal of Power Sources 168(2007)434-446. International Journal of Hydrogen Energy 35(2010)1769-1777. Journal of Membrane Science 197(2002)231-242.
本発明の目的は、DMFCに用いた場合に高濃度メタノール水溶液を燃料とした場合に従来よりも高い出力密度が実現できる膜−電極接合体および該膜−電極接合体を備える燃料電池を提供することにある。
すなわち本発明の態様は次のとおりである。
(i) アノード触媒層とカソード触媒層との間に高分子電解質膜を備える膜−電極接合体であって、前記高分子電解質膜が、イオン伝導性基を有する重合体成分を含有するマトリックス中に、実質的にイオン伝導性基を有さないゴム状重合体成分が平均粒径20nm〜1μmの粒子として均一に分散された構造を有し、前記アノード触媒層およびカソード触媒層がイオン伝導性基を有する高分子電解質と触媒担持粒子を含有するとともに、下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする膜−電極接合体。
Xa/Xc>1.00 (1)
0.50≦Y/Z≦1.00 (2)
(但し、
Xa:アノード触媒層が含有する高分子電解質が有するイオン伝導性基の総モル数;
Xc:カソード触媒層が含有する高分子電解質が有するイオン伝導性基の総モル数;
Y :カソード触媒層が含有する高分子電解質の質量;
Z :カソード触媒層が含有する触媒担持粒子の質量)
(ii)前記(i)の膜−電極接合体を備える燃料電池。
本発明の膜−電極接合体は、カソード触媒層での空気拡散性と、生成する水の蒸発の抑制を両立できるので、該水を効率よくアノード触媒層に拡散でき、DMFCに用いた場合に高濃度メタノール水溶液を燃料に用いても、高い出力密度を実現できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の膜−電極接合体は、アノード触媒層における高分子電解質が有するイオン伝導性基の総モル数(Xa)と、カソード触媒層における高分子電解質が有するイオン伝導性基の総モル数(Xc)の比を、Xa/Xc>1.00の関係とすることにより、カソード触媒層における反応で生成した水のアノード触媒層への拡散を促進するとともに、該水をアノード触媒層に保持しやすくなる。そのため、DMFCに本発明の膜−電極接合体を用いると、高濃度のメタノール水溶液を燃料とした場合であっても、アノード触媒層でメタノールが反応するために十分な水を反応系に確保できるため、高い出力密度を発現することができる。
前記アノード触媒層における高分子電解質が有するイオン伝導性基の総モル数(Xa)と、前記カソード触媒層における高分子電解質が有するイオン伝導性基の総モル数(Xc)の比Xa/Xcは、両触媒層中の金属触媒量、および高分子電解質と触媒担持粒子の質量比に影響を受けて変動する。アノード触媒層に使用する金属触媒量を多くすると、比Xa/Xcの値を高め、出力密度を高める上では有利であるが、金属触媒コストが高くなる。一方、カソード触媒層における高分子電解質の量が少なすぎると、カソード触媒層において該高分子電解質と酸素と金属触媒との接触が不十分となり反応効率が低下するだけでなく、高分子電解質膜とカソード触媒層との接合性が低下する場合がある。また、アノード触媒層の緻密性が高すぎると、メタノールの反応により生成する二酸化炭素の排出性が低下する場合がある。比Xa/Xcは、アノード触媒層の保水性、カソード触媒層の空気拡散性、高分子電解質膜と電極の接合性等の観点から1.00<Xa/Xc≦15.0の範囲であるのが好ましく、2.00≦Xa/Xc≦12.00の範囲であるのがより好ましく、3.00≦Xa/Xc≦11.00の範囲であるのがさらに好ましく、4.00≦Xa/Xc≦10.00の範囲であるのが一層好ましく、5.00≦Xa/Xc≦9.00の範囲であるのがより一層好ましく、5.50≦Xa/Xc≦8.50の範囲であるのが最も好ましい。
本発明の膜−電極接合体は、カソード触媒層が含有する高分子電解質の質量Yと、カソード触媒層が含有する触媒担持粒子の質量Zの比が0.50≦Y/Z≦1.00の範囲であることで、カソード触媒層における空気拡散性が高く、生成する水の蒸発が抑制できる。
前記Y/Zが1.00よりも大きい場合には、カソード触媒層の空気拡散性が低下し、特に、ポンプ等の補機を用いず自然拡散のみでカソード触媒層に空気を供給するパッシブ方式の燃料電池では出力密度が低下する。一方、前記Y/Zが0.50よりも小さい場合には、カソード触媒層内のイオン伝導性が低下して出力密度が低下し、さらに、高分子電解質膜とカソード触媒層との接合性が低下する傾向がある。
Y/Zは、0.55≦Y/Z≦0.95の範囲であることが好ましく、0.65≦Y/Z≦0.85の範囲であることがより好ましい。
本発明の膜−電極接合体に用いる高分子電解質膜としては特に制限はなく、例えばナフィオン(Nafion,デュポン社の登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜、特許文献2および非特許文献3に記載されたスルホン化エンジニアリングプラスチック系高分子電解質膜、特許文献3および特許文献4に記載された無機材料と高分子材料からなる高分子電解質膜、特許文献5および特許文献6に記載されたようなスルホン化芳香族ビニル系高分子電解質膜、特許文献7および特許文献1に記載されたイオン交換容量の異なる複数の高分子電解質からなる層を複数有する高分子電解質膜、特許文献8に記載された軟化温度の異なる複数の高分子電解質からなる層を複数有する高分子電解質膜などが挙げられる。
本発明の膜−電極接合体に用いる高分子電解質膜が、イオン伝導性基を有する重合体成分を含有するマトリックス中に、実質的にイオン伝導性基を有さないゴム状重合体成分が平均20nm〜1μmの粒子として分散された構造を有する場合、イオン伝導性を有するマトリックスが連続しているのでイオン伝導経路の断裂がなく、カソード触媒層で生成した水を効率よくアノード触媒層に拡散させることが可能となる。加えて、高分子電解質のイオン伝導性を有するマトリックスが高分子電解質膜と電極触媒層(すなわちアノード触媒層およびカソード触媒層)の界面に必ず存在するため、イオン伝導経路および水の拡散経路の断裂がないことで、カソード触媒層で生成した水を効率よくアノード触媒層に拡散させることができ、同時に高分子電解質膜と電極触媒層との間のイオン伝導性が高まることで、発電時のセル抵抗が低減し出力密度が向上する。
さらに前記粒子はゴム状重合体成分からなるので、高分子電解質膜に柔軟性や弾力性が付与され、膜−電極接合体作製時の成形性(組立性、接合性、締付け性)が改善される。本明細書において、ゴム状重合体成分とは軟化温度が、30℃以下である重合体成分を意味する。該軟化温度は20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。なお、粒子がマトリックスと共有結合している場合においても、該軟化温度は、粒子を形成する重合体成分(すなわち共重合体のうち該重合体成分を形成する部分)の軟化温度が該範囲にあることでゴム状重合体として機能する。
平滑な高分子電解質膜を得るには、少なくとも該粒子の平均粒径は該高分子電解質膜の膜厚より十分小さいことが望ましい。通常、高分子電解質膜の膜厚は数μm〜数十μmであるため、粒子の平均粒径は実質的には1μm以下であることが好ましい。一方、平均粒径が20nm以下の粒子は製造が困難な場合がある。平均粒径は、より好ましくは30nm〜800nmであり、さらに好ましくは40nm〜500nmである。
前記粒子は単一の相を形成することが望ましく、マトリックスに含有される重合体成分と共有結合していてもよい。高分子電解質膜を構成する重合体が粒子を形成するゴム状重合体成分と他の重合体とをそれぞれ重合体セグメントとするブロック重合体やグラフト重合体であることが、粒子が単一の相を形成する上で好ましい。なお本発明において、「実質的にイオン伝導性基を有さない」とは、粒子を形成するゴム状重合体成分中のイオン伝導性基を含有する単量体単位が5モル%未満であることを意味する。
前記高分子電解質膜が、イオン伝導性基を有する重合体成分を含有するマトリックス中に、実質的にイオン伝導性基を有さないゴム状重合体成分が平均粒径20nm〜1μmの粒子として均一に分散された構造を実現する方法としては、互いに相分離するマトリックスを形成する重合体と粒子を形成する重合体との重合体ブレンドによる方法、コア−シェル粒子の凝集による方法、互いに相分離するマトリックスを形成する重合体成分と粒子を形成するゴム状重合体成分を含有する共重合体(ブロック共重合体、グラフト共重合体など)による方法などが挙げられる。すなわち、マトリックスを形成するイオン伝導性基を有する重合体成分と粒子を形成する実質的にイオン伝導性基を有さないゴム状重合体成分(これらは共有結合を形成していてもよい)の2成分の相分離を利用する。なお、ここで「相分離」とは微視的な意味での相分離を意味し、形成されるドメインサイズが可視光の波長(3800〜7800Å)以下であるミクロ相分離と呼ばれるものである。
このうち、実質的にイオン伝導性基を有さないゴム状重合体成分からなる粒子を核(コア)として、該核をイオン導電性基を有する重合体成分の外殻(シェル)で覆った構造からなるコア−シェル粒子の分散した液(分散液または乳化液)を調製し、製膜することで、コア−シェル粒子が凝集した高分子電解質膜を得る方法が望ましい。この方法によって得られた高分子電解質膜はコア−シェル粒子の外殻に局在するイオン伝導性基によって界面活性剤を加えることなく粒子の分散が安定化され、また、製膜時にコア−シェル粒子が密にパッキングするため、マトリックス中のイオン伝導性基密度が高くなり、よりイオン伝導に有利な構造となる。
コア−シェル粒子の分散した液の調製方法としては、特定のブロック共重合体を後乳化する方法が挙げられる。以下、説明する。
コア−シェル粒子の分散した液を調製する上で用いる特定のブロック共重合体は、少なくともマトリックスを形成するイオン伝導性基を有する重合体ブロックとゴム状重合体成分を形成する実質的にイオン伝導性基を有さない重合体ブロック(以下、粒子形成性重合体ブロックと称する場合がある)を有することが必要である。すなわち該ブロック共重合体は、少なくともイオン伝導性基を有する重合体ブロックおよび実質的にイオン伝導性基を含まない粒子形成性重合体ブロックを含有する。中でも、粒子形成性重合体ブロックが末端にない、3ブロック以上からなるブロック共重合体が高分子電解質膜の力学強度を得る観点から好ましい。
イオン伝導性基を有する重合体ブロックを構成する主たる単量体は、ビニル系化合物、特に芳香族ビニル化合物であることが好ましい。また、該単量体がイオン伝導性基を有していることは必須ではなく、イオン伝導性基を有さない単量体を重合した後にイオン伝導性基を導入する方法、イオン伝導性基を有する単量体を重合する方法のいずれも採用することができる。
イオン伝導性基を有する重合体ブロックの製造方法の例として、イオン伝導性基を有さない芳香族ビニル化合物を重合した後にイオン伝導性基を導入する方法について説明する。
上記芳香族ビニル化合物としては、特に制限されないが、重合後に下記一般式(I)で表される繰り返し単位を形成することができる化合物類が挙げられる。
Figure 0005478412


(式中、Arは1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基を表し、Rは水素原子、1〜9個の置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基または1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基を表す)
一般式(I)中のArにおいて炭素数6〜14のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられる。該アリール基の任意の1〜3個の置換基としては、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基など)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基など)などが挙げられる。
上記芳香族ビニル化合物は2種以上組み合わせて用いてもよい。2種以上を共重合させて後にイオン伝導性基含有ブロックとなる重合体ブロックを形成する方法は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、テーパード共重合のいずれでもよい。
イオン伝導性基を有する重合体ブロックは、本発明の効果を損なわない範囲で芳香族ビニル化合物単位以外に1種もしくは複数種の他の単量体単位を含んでいてもよい。
本発明でイオン伝導性基に言及する場合のイオンとは主にプロトンなどの低分子量の荷電粒子を指す。イオン伝導性基としては、本発明の電解質膜が十分なイオン伝導度を発現するような基であれば特に限定されないが、−SOM、−POHM、−COM(式中Mは、水素イオン、アンモニウムイオンまたはアルカリ金属イオンを表す)で表されるスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基またはそれらの塩が好適に用いられる。
イオン伝導性基の導入位置については特に制限はないが、イオンチャンネル形成を容易にする等の観点から、上記芳香族ビニル単量体(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α―メチルビニルナフタレン、ビニルビフェニル等)に由来する単位(一般式(I)で表される繰り返し単位)中のアリール基(Rが表すアリール基も含む)に導入するのが好ましい。イオン伝導性基は公知の方法により導入することができる。
イオン伝導性基を有する重合体成分において、芳香族ビニル化合物単位(イオン伝導性基を導入された単位と導入されていない単位の和)の割合は特に限定されないが、十分なイオン伝導性を確保し、かつ乳化液の安定性を確保する観点から該重合体ブロックを構成する単量体単位の50モル%以上であることが好ましい(100モル%を含む)。
次に粒子形成性重合体ブロックの製造方法について説明する。ゴム状重合体成分を形成する実質的にイオン伝導性基を含まない重合体ブロックを構成する繰り返し単位としては、炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルカン単位、炭素数1〜12の側鎖を有するアクリル酸エステル単位、および炭素数1〜12の側鎖を有するメタクリル酸エステル単位が挙げられる。
これらの群から選ばれる繰り返し単位は単独または2種以上組み合わせて用いてもよい。2種以上を共重合させる場合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合およびテーパード共重合のいずれでもよい。また、(共)重合に供する単量体が炭素−炭素二重結合を2つ有する場合にはそのいずれが重合に用いられてもよく、共役ジエンの場合には1,2−結合、1,4−結合、3,4−結合のいずれで重合してもよく、これらの混合であってもよい。
このようなゴム状重合体成分の繰り返し単位となる単量体の例としては、炭素数2〜8のアルケン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテンなど)、炭素数5〜8のシクロアルケン(シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンおよびシクロオクテンなど)、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン(ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンなど)、炭素数4〜8の共役ジエン(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン、2,4−ヘプタジエンなど)、炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン(シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンなど)、炭素数1〜12の側鎖を有するアクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチルなど)、炭素数1〜12の側鎖を有するメタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルなど)が挙げられる。これら単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの単量体を重合した後に炭素−炭素二重結合が存在する場合、その一部または全てを水素添加してもよい。ゴム状重合体成分の主鎖の炭素−炭素二重結合を水素添加した場合、該ゴム状重合体成分からなる粒子の安定性、柔軟性が高まる傾向がある。
前記ブロック共重合体はイオン伝導性基を有する重合体ブロック、粒子形成性重合体ブロック以外の他の重合体ブロックを含んでいてもよい。かかる他の重合体ブロックとしては、イオン伝導性基を有さない非ゴム状重合体ブロックが挙げられ、高分子電解質膜の強度を高める上で、主としてイオン伝導性基を有しない芳香族ビニル系化合物単位を繰り返し単位とする芳香族ビニル系重合体ブロックであることが好ましい。該芳香族ビニル系重合体ブロックが前記高分子電解質膜の好ましくは20〜60質量%、より好ましくは23〜50質量%、更に好ましくは25〜40質量%を占めることによって、燃料電池用高分子電解質膜として用いたときの機械的強度に優れる。芳香族ビニル系重合体ブロックとイオン伝導性基を有する重合体ブロックとの比率は、イオン伝導性基を導入する前の単量体単位の質量比として、85:15〜0:100の範囲であることが好ましく、高分子電解質膜の機械的強度と、高いイオン伝導性を両立する上では、65:35〜20:80の範囲であることが好ましく、55:45〜35:65の範囲であることがより好ましく、45:55〜35:65の範囲であることがさらに好ましい。
上記の芳香族ビニル系重合体ブロックは、ゴム状重合体成分からなる粒子と相分離していることが好ましく、マトリックスの一部を形成することが高分子電解質膜の強度を高める上で好ましい。また、マトリックスと共連続構造を形成するように相分離している場合、芳香族ビニル系重合体ブロックが独立した相を形成するのでより形状安定性が優れたものとなる。
上記の芳香族ビニル系重合体ブロックは主としてイオン伝導性基を有しない芳香族ビニル系化合物単位を繰り返し単位とする。ここで主としてイオン伝導性基を有さない芳香族ビニル系化合物単位を繰り返し単位とするとは芳香族ビニル系重合体ブロックが実質的にイオン伝導性を有さない程度であることを意味しており、例えば芳香族ビニル系重合体ブロックの繰り返し単位当たりのイオン伝導性基含有量が好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.01モル以下であり、最も好ましくはゼロである。またはマトリックスが含有するイオン伝導性基を有する重合体成分に対してイオン伝導性基の割合(モル基準)が1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましく、1/100以下であることが更に好ましい(それぞれゼロを含む)。この結果、芳香族ビニル系重合体ブロックは実質的にイオン伝導性を有しなくなり、イオンチャンネルを形成するマトリックスと相分離しやすくなる。
また上記の芳香族ビニル系重合体ブロックは疎水性であることが好ましい。例えば水酸基、アミノ基などの親水性基を実質的に有さないことが好ましく、エステル基などの極性基を実質的に有さないことも好ましい。ここで、芳香族ビニル系重合体ブロックを構成する芳香族ビニル系化合物単位は、1〜3個の炭素数1〜8の炭化水素基を芳香環上に有する置換芳香族ビニル系化合物単位であることが望ましい。例えば、芳香環上の水素をビニル基、1−アルキルエテニル基(例えばイソプロペニル基)、1−アリールエテニル基などの置換基で置換した化合物が挙げられる。例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−イソブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、α−炭素原子に結合した水素原子が炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、もしくはtert−ブチル基)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基等)またはフェニル基で置換された芳香族ビニル系化合物(具体的には、α−メチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン、α−メチル−4−エチルスチレン、α−メチル−4−t−ブチルスチレン、α−メチル−4−イソプロピルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等)が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用できるが、中でも4−t−ブチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、α−メチル−4−t−ブチルスチレン、α−メチル−イソプロピルスチレンが好ましい。これらの2種以上を共重合させる場合の形態はランダム共重合でもブロック共重合でもグラフト共重合でもテーパード共重合でもよい。
芳香族ビニル系重合体ブロックは、本発明の効果を損なわない範囲内で1種もしくは複数の他の単量体単位を含んでいてもよい。
上記してきたブロック共重合体の合成法としては、各重合体ブロックを構成する単量体の種類や分子量によってラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法などから適宜選択されるが、工業的な容易さからラジカル重合法、アニオン重合法あるいはカチオン重合法が好ましい。特に分子量、分子量分布、重合体の構造制御の容易さなどからいわゆるリビング重合法が好ましく、具体的にはリビングラジカル重合法、リビングアニオン重合法あるいはリビングカチオン重合法がより好ましい。
ブロック共重合体の分子量に特に制限はないが、力学特性および種々の加工性の観点から、標準ポリスチレンを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて検量線を作成し、同条件で測定した換算数平均分子量で10,000〜2,000,000が好ましく、15,000〜1,000,000がより好ましく、20,000〜500,000がさらに好ましい。
ブロック共重合体中のイオン伝導性基を有する重合体ブロックと粒子形成性重合体ブロックとの質量比は得られるブロック共重合体の要求性能によって適宜選択されるが、イオン伝導性の観点からは95:5〜55:45であるのが好ましく、耐水性の観点からは45:55〜5:95が好ましく、イオン伝導性と耐水性を両立させるためには60:40〜40:60が好ましい。この質量比が95:5〜5:95である場合には、ミクロ相分離によりイオン伝導性基を有すブロック(A)の形成するイオンチャンネルがシリンダー状ないし連続相となるのに有利であって、実用上十分なイオン伝導性が発現し、また疎水性である粒子形成性重合体ブロックの割合が適切となって優れた耐水性が発現する。なお、ここで上記質量比は、ブロック共重合体の全てのイオン伝導性基を水素に置換した重合体ブロックを想定して算出する。
高分子電解質膜の力学強度を向上させるなどの目的で、イオン伝導性基を有する重合体ブロックを架橋することができる。この場合、高分子鎖を化学架橋する方法、イオン伝導性基を架橋サイトとして使用する方法、あるいはそれらを併用する方法などが挙げられる。
次いで、ブロック共重合体の乳化液の調製方法について説明する。乳化液の調製には通常の後乳化法が使用できる。イオン伝導性基が親水性、粒子形成性重合体ブロックが疎水性であるためブロック共重合体は保護コロイド形成能があり、界面活性剤や乳化剤を使用することなく乳化液を得ることができる。また、水などの極性溶媒を使用することで、極性の高いイオン伝導性基を外殻に有するコア−シェル粒子を容易に形成することができる。乳化液の固形分濃度は1〜30質量%であるのが好ましい。
乳化の方法としては公知の方法を用いることができるが、狭い粒径分布の乳化物が得られる点で転相乳化法を用いるのが好ましい。即ち、ブロック共重合体を適当な有機溶剤に溶解した液を乳化機などで攪拌しながら水等の極性溶剤を加えていく。該有機溶剤はブロック共重合体を良好に溶解する溶剤(例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、ブロック共重合体の各重合体ブロックを良好に溶解する有機溶剤の混合溶剤を用いることができる。混合溶剤に用いる有機溶剤としては、イオン伝導性基を有する重合体ブロックを良好に溶解する有機溶剤としてアルコール類が挙げられ、水との親和性、沸点などの観点から炭素数3以上のモノアルコール類が好ましい。また粒子形成性重合体ブロックを良好に溶解する有機溶剤としては脂肪族炭化水素溶剤もしくは芳香族炭化水素溶剤が挙げられ、混合するイオン伝導性基を有する重合体ブロックを良好に溶解する有機溶剤との親和性から芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレンなど)が好ましい。初期は有機溶剤相に水などの極性溶剤が粒子として分散している状態にあるが、極性溶剤の添加量がある量を超えると共連続状態となり、急激に粘度が上昇する。さらに極性溶剤を添加すると極性溶剤が連続相、ブロック共重合体を含有する有機溶媒が不連続相(粒子)となり、粘度は急激に低下する。この方法を用いることで、粒径の揃った乳化液を得ることができる。
ただし、コア−シェル粒子の直径が1μmを超える大粒径である場合、粒子内でブロック共重合体が相分離し、全てのイオン伝導性基が粒子の外殻に局在しないため、イオン伝導性基を有効に使用することができない。したがって、ブロック共重合体の分子量や重合体ブロックの比率にもよるが、平均粒径が1μm以下になるまで粒子化するのが好ましい。多くの場合、上記乳化での平均粒径は1μm以上となるため、さらなる微分散化が必要となる。微分散化の手法としては公知の方法を用いることができるが、不純物混入防止の観点でボールミルにおけるボールなどの粉砕用メディアを使用しない方法が好ましい。具体例としては高圧衝突法などが挙げられる。
本発明に用いる高分子電解質膜が、ゴム状重合体成分からなる粒子が分散された構造を有する場合、該ゴム状重合体成分は架橋されていてもよい。架橋方法としては特に制限はないが、粒子形成時に架橋する方法、或いは粒子形成後に架橋する方法など、一般的に用いられる架橋方法が採用できる。
本発明の膜−電極接合体の電極触媒層(アノード触媒層およびカソード触媒層)中には、イオンを移動させる媒体として高分子電解質がバインダとして使用される。バインダは、膜−電極接合体の高分子電解質膜を構成する高分子電解質と同じまたは類似のものであってもよいし、全く別の材料でもよい。また、アノードとカソードでは要求性能が異なることから、アノードおよびカソードに用いるバインダをそれぞれ異なる材料にすることも可能である。本発明の膜−電極接合体のバインダとしては特に制限はなく、例えばフッ素系高分子電解質などが挙げられる。
本発明の膜−電極接合体の金属触媒としては特に制限はなく、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、パラジウム、あるいはそれらの合金、例えば白金−ルテニウム合金が挙げられる。特にメタノールなどの炭素を含有する化合物を燃料とする場合には、アノード極で一酸化炭素が発生して金属触媒が被毒されるため、白金−ルテニウム合金などの被毒対策が講じられた金属触媒を使用するのが好ましい。中でも白金や白金合金が多くの場合用いられる。金属触媒の粒径は、通常は、10から300オングストロームである。これら金属触媒はカーボン等の導電材/触媒担体に担持させた方が金属触媒使用量を少なくすることができ、コスト的に有利である。
本発明の膜−電極接合体の導電材/触媒担体としては特に制限はなく、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブなどの導電性炭素材料、などが挙げられ、これら単独であるいは二種以上混合して使用される。カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性炭素材料、酸化チタンなどのセラミック材料が挙げられる
本発明の膜−電極接合体の触媒層には、必要に応じて撥水剤が含まれていてもよい。撥水剤としては例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエーテルエーテルケトンの各種熱可塑性重合体が挙げられる。
触媒インクは上記成分を混合したものであるが、その混合には一般的に知られている混合法が使用できる。具体的には、ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、超音波照射などが挙げられる。また、微分散性をより向上させる等の目的で、高圧衝突法などのさらに微分散方法を併用してもよい。
このように調製した触媒インクは一般的な製膜方法や印刷方法により触媒層にする。例えばスプレー、スクリーン印刷、グラビア、間欠ダイコーター、インクジェットなどが挙げられる。
触媒層は、高分子電解質膜に直接製膜する方法、ガス拡散層に製膜する方法、あるいは、基材フィルムに塗布した後に転写する方法など、一般的に知られている方法により形成することができる。
本発明の膜−電極接合体のガス拡散層としては特に制限はなく、導電性およびガス透過性を備えた材料から構成され、かかる材料として例えばカーボンペーパーやカーボンクロス等の炭素繊維よりなる多孔性材料が挙げられる。また、かかる材料には、撥水性を向上させるために、撥水化処理を施してもよい。
本発明の膜−電極接合体を、極室分離と電極への燃料供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータ材の間に挿入することにより、燃料電池が得られる。本発明の膜−電極接合体は、燃料ガスとして水素を使用した純水素型、メタノールを改質して得られる水素を使用したメタノール改質型、天然ガスを改質して得られる水素を使用した天然ガス改質型、ガソリンを改質して得られる水素を使用したガソリン改質型、メタノールを直接使用する直接メタノール型などの燃料電池用の膜−電極接合体として使用できる。特に、本発明の膜−電極接合体を、高濃度メタノール水溶液を蒸気として供給する直接メタノール型燃料電池に用いることで、高出力の発現が可能である。
以下、参考例、実施例および比較例、並びに固体高分子型燃料電池用膜−電極接合体としての性能試験およびその結果を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
<参考例1:高分子電解質膜Aの作製>
特許文献7に記載されている手法を参考にして、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリスチレン−b−ポリ水添イソプロピレン−b−ポリスチレン−b−ポリ(4−tert−ブチルスチレン)の合成を実施した。スチレン含有率が17.4質量%、4−tert−ブチルスチレン含有率が42.9質量%であるポリマー(ポリマーa)と、スチレン含有率が35.6質量%、4−tert−ブチルスチレン含有率が24.0質量%であるポリマー(ポリマーb)をそれぞれ合成した。ポリマーaの数平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレンで検量)は95,000であり、得られたブロック共重合体の水素添加率をH−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.7%であった。また、ポリマーbの数平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレンで検量)は85,000であり、得られたブロック共重合体の水素添加率をH−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.6%であった。
特許文献7に記載の方法を参考にポリマーaをスルホン化し、イオン交換容量が2.60meq/gの高分子電解質aを合成した。同様に、ポリマーbをスルホン化し、イオン交換容量が1.50meq/gの高分子電解質bを合成した。該二種類の高分子電解質を、前記特許文献7に記載の方法を参考に、高分子電解質a/高分子電解質b/高分子電解質aの順番に、それぞれの厚みが7μm/15μm/7μmとなるように製膜して高分子電解質膜Aを得た。
<参考例2:高分子電解質膜Bの作製>
特許文献9に記載の方法を参考にして、ポリα−メチルスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリα−メチルスチレン型トリブロック共重合体(mSEBmS)を合成した。得られたmSEBmSの数平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレンで検量)は76,000であり、H−NMRスペクトル測定から求めたボリブタジエン部分の1,4−結合量は55モル%、α−メチルスチレン単位の含有量は28.0質量%であった。
合成したmSEBmSをシクロヘキサンに溶解し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下で80℃、5時間水素添加反応を行い、ポリα―メチルスチレン−b−水添ポリブタジエン−b−ポリα−メチルスチレン型トリブロック共重合体(ポリマーc)を得た。得られたポリマーcの水素添加率をH−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.6%であった。
ポリマーc100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン290ml中、0℃にて無水酢酸145mlと硫酸65.0mlとを反応させて得られた硫酸化試薬を20分かけて徐々に滴下した。35℃にて20時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、次いでろ過した。洗浄水のpHに変化がなくなるまでこの洗浄およびろ過の操作を繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥して高分子電解質cを得た。得られた高分子電解質cのα―メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は99.8モル%であり、イオン交換容量は1.99meq/gであった。
高分子電解質c20gをトルエン/イソプロパノール=80/20の混合溶剤80gに溶解し、20質量%のポリマー溶液を調整した。乳化機で攪拌しながら150gの水を約20分かけて徐々に加え、転相乳化させた。得られた乳化液中の分散粒子の粒径を静的光散乱法で測定したところ、平均粒子径は7μmであった。次いで、エバポレータを用いてこの乳化液から混合溶剤を除去した。得られた乳化液を、高圧衝突法(ナノマイザー、150MPa)により粒子化処理して平均粒径90nmのコア−シェル粒子を含有する乳化液を得た。さらにエバポレータで濃縮し、固形分濃度15質量%の乳化液を得た。
得られた乳化液を、離型処理PETフィルム(東洋紡績(株)製エステルフィルムK1504)上にコートし、60℃で10分間乾燥させ、高分子電解質膜Bを得た。透過型電子顕微鏡で観察した像から1μm四方の面内に確認できる粒子すべてについて最も長い径と最も短い径を測定し、その幾何平均を各粒子の粒径とした。このようにして測定した粒径から平均粒径を算出したところ、平均粒径70nmであった。
<実施例1:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製−1>
PtRu合金触媒担持カーボンに、和光純薬製DE1021(ナフィオンの10質量%水分散液)を、前記カーボン/前記ナフィオンの質量比が1.00/1.00 になるように添加混合し、均一に分散されたペーストを調製した。このペーストを単位面積あたりのPt量が5mg/cmになるようにガス拡散層に塗布し、24時間乾燥させて、アノード電極を作製した。次いで、Pt触媒担持カーボンに、和光純薬製DE1021を、前記カーボン/前記ナフィオンの質量比が0.75/1.00 になるように添加混合し、均一に分散されたペーストを調製した。このペーストを単位面積あたりのPt量が3mg/cmになるようにガス拡散層に塗布し、24時間乾燥させて、カソード電極を作製した。参考例1にて作製した高分子電解質膜Aを、上記アノード電極およびカソード電極でそれぞれの電極の触媒層が向かい合うように挟み、その外側を2枚の耐熱性フィルムおよび2枚のステンレス板で順に挟み、ホットプレス(115℃、1.5MPa、8min)により高分子電解質膜と電極とを接合させた。最後にステンレス板および耐熱性フィルムを外し、膜−電極接合体1を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは4.11であり、前記Y/Zは0.75であった。
<実施例2:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製−2>
アノード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を1.50/1.00とした以外は、実施例1と同様の手法で膜−電極接合体2を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは6.17であり、前記Y/Zは0.75であった。
<実施例3:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製−3>
アノード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を2.00/1.00とした以外は、実施例1と同様の手法で膜−電極接合体3を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは8.23であり、前記Y/Zは0.75であった。
<実施例4:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製−4>
アノード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を2.50/1.00とした以外は、実施例1と同様の手法で膜−電極接合体4を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは10.3であり、前記Y/Zは0.75であった。
<実施例5:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製−5>
アノード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を2.00/1.00とし、カソード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を0.65/1.00とした以外は、実施例1と同様の手法で膜−電極接合体5を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは9.49であり、前記Y/Zは0.65であった。
<実施例6:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製−6>
アノード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を2.00/1.00とし、カソード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を0.55/1.00とした以外は、実施例1と同様の手法で膜−電極接合体6を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは11.2であり、前記Y/Zは0.55であった。
<実施例7:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製−7>
アノード電極における単位面積あたりのPt量を3mg/cmとした以外は、実施例1と同様の手法で膜−電極接合体7を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは2.47であり、前記Y/Zは0.75であった。
<実施例8:高分子電解質膜Bを用いた膜−電極接合体の作製>
高分子電解質膜Bを用いた以外は、実施例3と同様の手法で膜−電極接合体8を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは8.23であり、前記Y/Zは0.75であった。
<比較例1:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製−8>
カソード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を1.25/1.00とした以外は、実施例3と同様の手法で膜−電極接合体11を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは4.94であり、前記Y/Zは1.25であった。
<比較例2:高分子電解質膜Aを用いた膜−電極接合体の作製―9>
カソード電極における前記カーボン/前記ナフィオンの質量比を1.75/1.00とした以外は、実施例1と同様の手法で膜−電極接合体12を作製した。作製した膜−電極接合体の前記Xa/Xcは3.53であり、前記Y/Zは1.75であった。
<実施例1〜8および比較例1〜2で得られた膜−電極接合体のDMFC発電試験>
作製した膜−電極接合体を、2枚の金メッシュで挟み、さらにその外側を2枚の締付板で挟み、DMFC用の評価セルを作製した。25℃50%相対湿度の実験室にて、60質量%のメタノール水溶液を気体状態で供給して発電特性を評価した。
<DMFC発電試験結果>
実施例1〜8および比較例1〜2で作製した膜−電極接合体の出力密度を表1に示す。
Figure 0005478412
実施例、比較例の対比から、Y/Zが本発明で開示する範囲にあることで出力密度が高いことが判る。
また、イオン伝導性基を有する重合体成分を含有するマトリックス中に、実質的にイオン伝導性基を有さない平均粒径20nm〜1μmの粒子が均一に分散された構造を有する高分子電解質膜Bを用いた実施例8が高い出力密度を実現できることが判る。

Claims (2)

  1. アノード触媒層とカソード触媒層との間に高分子電解質膜を備える膜−電極接合体であって、前記高分子電解質膜が、イオン伝導性基を有する重合体成分を含有するマトリックス中に、実質的にイオン伝導性基を有さないゴム状重合体成分が平均粒径20nm〜1μmの粒子として均一に分散された構造を有し、前記アノード触媒層およびカソード触媒層がイオン伝導性基を有する高分子電解質と触媒担持粒子を含有するとともに、下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする膜−電極接合体。
    Xa/Xc>1.00 (1)
    0.50≦Y/Z≦1.00 (2)
    (但し、
    Xa:アノード触媒層が含有する高分子電解質が有するイオン伝導性基の総モル数;
    Xc:カソード触媒層が含有する高分子電解質が有するイオン伝導性基の総モル数;
    Y :カソード触媒層が含有する高分子電解質の質量;
    Z :カソード触媒層が含有する触媒担持粒子の質量)
  2. 請求項1に記載の膜−電極接合体を備える燃料電池。
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