JP5478330B2 - 熱交換器用耐アルカリ性アルミニウムフィン材及び熱交換器 - Google Patents
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Description
従来、アルミニウム合金からなる熱交換器において、水分と接触する環境下において水和反応が進行し、水酸化アルミニウムからなる白色の腐食生成物が生成されることがあり、この腐食生成物が乾燥された白色の生成物を熱交換器の設置環境に吹き出してしまう問題を回避するため、熱交換器をアルカリ珪酸塩水溶液に浸漬して表面処理する技術が知られている。(特許文献1参照)
また、熱交換器用フィンの間に水滴が残存して通風抵抗を増加し熱交換効率を低下させる現象を防止するために、フィン材表面を多孔性シリカ微粒子を含有する有機高分子樹脂溶液で表面処理する技術(特許文献2参照)、あるいは、アクリル系樹脂などからなる皮膜形成有機高分子物質と水に不溶の5〜10μmの粒子径のSiO2及びまたはTiO2を含む水性組成物で塗装してから乾燥し、乾燥後の皮膜でもって被覆する技術が知られている。(特許文献3参照)
ここで表面未処理のアルミニウム材の場合、アルカリ洗浄液で洗浄すると単純にアルミニウムが溶解し、表面は清浄な状態となる。しかし、親水性の皮膜を有しているアルミニウム材の場合、アルカリ洗浄液で洗浄を行うと、洗浄液が親水性皮膜中を浸透し、下地のアルミニウムを侵すが、溶解したアルミニウムを含むイオンは塗膜を透過することができず、結果として塗膜下にアルミニウム水酸化物層を生成するため、塗膜の下が腐食した状態を呈する。そして、このアルミニウム水酸化物層は多数の水酸基を有するため、空気中の臭気成分を吸着し易く、珪酸塩系の表面処理を用いた場合と同様に運転中に悪臭を発する問題がある。
ここで従来から、下塗り型の耐食性皮膜として、各種のものが用いられているが、環境重視の観点から溶剤系の処理剤は使用されなくなってきており、水系の処理剤に限定して例示すると、アクリル系変性エポキシ系、水溶性ポリエステル−アミノ系、水溶性ポリウレタン系の耐食性皮膜などが使用されている。
しかし、本発明者の研究によれば、これらいずれの系の下塗り型の耐食性皮膜を用いたとしても、殆どの耐食性皮膜において、熱交換器のアルミニウム板材をアルカリ系洗浄剤により洗浄した場合、下地のアルミニウムは腐食しないものの、熱交換器から悪臭が発生することを知見している。
これら樹脂系の下地皮膜がアルカリ洗浄によって臭気を発生させる理由は明確ではないが、本発明者の研究により、アクリル変性エポキシ樹脂の場合、アクリル樹脂中に存在するカルボキシル基の量が多い程、臭気が悪くなることが判っている。従って本発明者の考察ではカルボキシル基とアルカリ成分との間で何らかの臭気発生作用が起こっているものと考えている。
また、本発明者の検討により、アクリルアミノ系、ポリエステル系の皮膜の場合、アミノ樹脂含有量が多い程、臭気が強くなることから、アミノ樹脂と種樹脂の間の架橋点に洗浄剤のアルカリ成分が何らかの作用をなし、一部結合が分解され。臭気成分が吸着され易い官能基が生成することが臭気発生の原因ではないかと考えている。
本発明において、ポリアクリル酸及びその中和物、ポリビニルアルコール、セルロース系高分子体のいずれかを含む処理液を塗布、焼付けした親水性皮膜を有しても良い。
本発明の熱交換器は、先に記載の熱交換器用耐アルカリ性アルミニウムフィン材を複数備えてなることを特徴とする。
図1は、本発明に係る耐アルカリ性アルミニウムフィン材の一例を示す斜視図、図2は同アルミニウムフィン材の部分断面図、図3は同アルミニウムフィン材を備えた熱交換器の一例を示す斜視図である。
この例の耐アルカリ性アルミニウムフィン材10は細長い短冊形状を有しており、銅製の伝熱管を通すラッパ状のフレア11が、長さ方向に単列、或いは複数列で等間隔に配されている。また、アルミニウムフィン材10の表面には、伝熱性能の向上を目的にスリット12などを必要箇所に設けることがある。
図1に示すフィン10は、図2に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるフィン用の板材13の表面に、耐食性の下地皮膜14と親水性皮膜15が形成されてなるものである。
フィン用の板材13としては、燐酸クロメート処理などの表面処理を施したアルミニウムまたはアルミニウム合金板などが好適に用いられる。また、フィン用の板材13の表面に形成される下地皮膜14と親水性皮膜15の膜厚は0.5〜3.0μm程度であることが好ましい。
より具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリエーテルジオール、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの多価カルボン酸とエチレングリコール、1,2プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのポリオール成分及び、メチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸などのカルボキシル基含有ポリオールとの反応によって得られるポリエステルポリオールなどを用いることができる。この場合、カルボキシル基含有モノマーの比率が高すぎると、アルカリ洗浄時の臭気に悪影響を与えるため、カルボキシル基含有モノマー/低分子ポリオール成分が1/2(重合比)以下である方が好ましい。
また、これらのポリオールは2種類以上のものを混合して用いても構わない。
ポリオールの平均分子量を1000〜5000に規定した理由は以下の通りである。ポリオールの平均分子量が1000未満の場合、アルカリ洗浄後の臭気が悪化してくる。この理由については明確ではないが、塗膜中にウレタン結合の占める割合が多くなり、このウレタン結合部分がアルカリの洗浄液によって劣化し、臭気を吸収し易くなっていると本発明者は推定している。
ポリオールの平均分子量が5000を超えるようになると、塗膜の硬度が下がりすぎるため、アルミニウムの板材13に塗布した後にコイル状に巻き付けると、塗膜どうしがブロッキングし易くなり(密着し易くなり)、コイルを巻き戻す時に剥がれなくなるというトラブルを発生し易くなる。
ここでアルミニウムの板材13にあっては、無処理のもの、リン酸クロメート皮膜を形成したもの、または、プライマーとなる樹脂皮膜を予め塗装したものなど、いずれの形態であっても差し支えない。また、焼付け温度についても特に制限はないが、250℃を超える温度で焼き付けるとエーテル系のポリオールを用いた場合などに熱分解が発生し、塗膜強度が著しく低下する場合もあるので、250℃以下の温度、例えば、180℃〜230℃の範囲が好ましい。
親水性皮膜15の一例は、ポリアクリル酸及びその中和物、ポリビニルアルコール、セルロース系高分子体のいずれかを含む処理液を塗布し、焼き付けることによって得ることができる。ここでの焼付け温度についても特に制限はないが、耐水性、親水性を確保するために、200〜250℃の範囲で焼付け温度を選択することが好ましい。
これは、通常のフィン材を備えた熱交換器であるならば、2槽構造の塗膜が形成されていたとしても、下側の下地皮膜を通過してアルカリ洗浄液がアルミニウムに到達してアルミニウムの表面を一部溶解し、イオンを含むアルミニウムの溶解物(水酸化物)が下地皮膜の内側に残存し、下地皮膜を劣化させる結果、下地皮膜の劣化部分に臭気を吸着する性質を付与する結果、エアーコンディショナーを設置している室内の臭気成分を吸着し、エアーコンディショナーが臭気を発生させてしまう問題があったが、本実施形態の構造ではこの現象を防止して臭気の発生を防止できる。即ち、前記構造の下地皮膜14であるならば、アルカリ洗浄液がアルミニウムに到達してアルミニウムの表面を一部溶解し、イオンを含むアルミニウムの溶解物(水酸化物)が下地皮膜の内側に残存しても、下地皮膜14のウレタン結合部分がイオンを含むアルミニウムの溶解物(水酸化物)に侵されるおそれが少なく、ウレタン結合部分が周囲の臭気を吸着するようにならないために、臭気発生の少ないフィン材10を提供できるという効果がある。
図3に示す熱交換器20は、図2に示すフィン10と、複数の伝熱管30とを備えたものである。アルミニウムフィン材10は、一定の等間隔で平行に並べられており、アルミニウムフィン材10の相互間に空気が流動するようになっている。伝熱管30は、アルミニウムフィン材10のフレア11を貫通しており、その内部を冷媒が流動するようになっている。
図3に示す熱交換器20は、図2に示すアルミニウムフィン材10を備えているので、空気中から凝縮した水滴がアルミニウムフィン材10に付着しにくく、アルミニウムフィン材10に水滴が付着することによる圧力損失が小さく、長期にわたって使用した場合でも熱交換能力が低下しにくいものとなる。また、アルカリ洗浄剤によりフィン10を洗浄した後であっても、上述の説明の如く下地皮膜14が臭気を吸着することがないので、臭気発生の生じない熱交換器20を提供できる。
1.実施例サンプルの作成
予め重合しておいたポリオール化合物とジイソシアネートをN−メチルピロリドンの中で窒素気流下、125℃で2時間反応させてポリウレタン系の重合物を得た。ポリオール化合物とジイソシアネートの比は、モル比でポリオール化合物/ジイソシアネート=1:1となるように調整した。
また、以上のように作成したウレタン重合物の下地皮膜上に表1の親水性塗膜の欄に示す親水性皮膜を厚さ1μmになるようにバーコーターで塗工し、220℃で2分間焼付けを行い、後述のアルカリ洗浄臭気、親水性、耐食性の評価用サンプルを作成した。表1にこれらの試験に供したポリウレタン重合体の組成を示した。
本発明範囲外の組成のポリウレタン重合体について、「1.実施例サンプルの作成」で説明した製造方法と同等の方法で作成し、その後、表1の親水性塗膜の欄に示す親水性塗膜を塗布し、前記と同じ条件で焼き付けして各試験に供した。これらのサンプルについては、表2に示した。
また、ポリウレタン以外の樹脂系の塗膜についても、厚さ2μmになるように塗工し、それぞれの塗膜についての最適焼付け温度にて焼付けを行った。その試料を先の実施例試料と同様にブロッキング性試験に供した。また、その上に、前記と同じ親水性の皮膜を塗布し、後述のアルカリ洗浄臭気、親水性、耐食性の評価用サンプルを作成した。また、親水性皮膜のみを塗装したサンプルも作成した。表3にこれらサンプルを示した。
(1)アルカリ洗浄後臭気
SHOWA製強力アルミフィンクリーナー:EA115−36を20%に希釈した液に塗装サンプルを10分間浸漬した後、水道水で10分間洗浄し、50℃で乾燥を行った。これを5サイクル繰り返した後、臭気について10名のテスターによる官能試験を実施した。評価点は以下の3段階とした。
○印:ほとんど臭気がない:△印:やや臭気がある: ×印:著しい臭気がある
下地皮膜のみをアルミニウム板材の表面に塗装焼き付けしたサンプルを10枚重ねてその上に20cmφ、20kgの重りを載せ、50℃で1時間加熱を行った。その後、室温まで冷却した後、重りを外し、1枚ずつサンプルを剥がして板材どうしが接着しているか否かを評価した。
○印:接着していない:△印:僅かに接着している:×印:かなり接着している
水洗24時間の前処理を行った後、接触角の測定を行った。接触角が30゜以下であれば、実用レベルである。
(4)耐食性
耐食性については、JIS Z2371に従い、塩水噴霧試験を1000時間行った後の腐食状態を目視観察し、R.N. 9.8以上を評価値1、R.N. 9.0以上を評価値2、R.N. 9.0未満を評価値3とした。耐食性の熱交換用フィン材としては、評価値1が求められる。
(5)平均分子量の測定
重量平均分子量(Mw)は、SEC/MALS(サイズ排除クロマトグラフィー/多角度光散乱検出器:東ソー(株)製HLC−8020)を使用して測定した、絶対分子量を示す。
以上説明した(1)〜(4)の評価結果と重量平均分子量の測定結果について表4に示した。
表4に示す結果から特に、平均分子量が1000〜5000の範囲内のポリオールとジイソシアネートを重合させてなるウレタン重合物を使用したものが、アルカリ洗浄後の臭気とブロッキング性評価と親水性と耐食性においてバランスのとれた優れた特性を発揮していることが明らかである。
Claims (3)
- ジイソシアネートと平均分子量1000〜5000のポリオールを必須成分として反応させたウレタン重合物を水に溶解もしくは分散させた処理液を、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる板材の上に塗布焼付けしたことによって得られる下地皮膜を有し、その下地皮膜の上に塗布焼付けにより形成された親水性皮膜を具備してなることを特徴とするアルカリ洗浄後の臭気性を低減した熱交換器用耐アルカリ性アルミニウムフィン材。
- ポリアクリル酸及びその中和物、ポリビニルアルコール、セルロース系高分子体のいずれかを含む処理液を塗布、焼付けした親水性皮膜を有することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ洗浄後の臭気性を低減した熱交換器用耐アルカリ性アルミニウムフィン材。
- 請求項1または2に記載の熱交換器用耐アルカリ性アルミニウムフィン材を複数枚備えてなる熱交換器。
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