JP3869579B2 - 金属板用水性塗料組成物、および表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板用水性塗料組成物およびそれを用いた金属板の表面処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、金属板表面に塗布して皮膜を形成させた際に、UV硬化型塗料、UV硬化型インキまたはUV硬化型接着剤の良好な密着性、耐食性、成形加工性、耐傷付き性を与える皮膜を形成させることができる水性塗料組成物、およびそれを用いた金属板の表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属板、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金板を用いた加工品や成形物は従来から幅広い分野で利用されており、またそれらの表面に成形加工性、耐食性、耐傷付き性等を付与する目的で樹脂皮膜を形成する技術が数多く存在する。例えば特開平8−127735号公報は、アルミニウム表面にクロメート皮膜を設け、該クロメート皮膜上に水分散型ポリウレタン樹脂、ケイ素化合物粒子および潤滑剤からなる潤滑皮膜を形成してなる潤滑処理用アルミニウム板を開示しており、特開平7−228828号公報は、樹脂中にポリエチレンワックス粒子を分散させた組成物を用いて樹脂皮膜を形成することによって作製した、潤滑性に優れ、強加工のプレス成形を可能とした耐食性に優れる樹脂塗装アルミニウム合金材を開示している。また、特開平7−195031号公報は、優れた成形性と耐傷付き性を具備させ得る表面処理アルミニウム板材料として、アルミニウム合金板材に粒径0.1μm以下のSiO2を5〜40%および潤滑剤を5〜60%含有する塗料が0.5〜10μmの厚さで塗布されており、摩擦係数が0.15以下に制御された表面処理アルミニウム板材料を開示している。
【0003】
これらの従来技術による金属板は、いずれもワックス粒子等の潤滑剤を含有させた樹脂皮膜を形成させることによって、良好な成形加工性や耐食性等を付与させた材料であるが、成形後の塗装密着性については、例えば特開平7−228828号公報ではピンホールによるアンカー効果、特開平8−127735号公報では、特に潤滑処理剤中のケイ素化合物粒子の粒径、潤滑剤の種類、配合量および樹脂系ワックスの粒径の組合せを特定すること、特開平7−195031号公報では、表面に形成させる皮膜の量を制限することにより確保されるとしている。
【0004】
近年、溶剤排出規制への対応や、作業上の利点から、上塗り塗料やインキにUV硬化型のものを使用する例が増加している。しかしUV硬化型の上塗りは、ラジカル重合を伴うため、硬化前後の体積収縮率が大であり、その結果硬化塗膜には大きな内部応力が残留することになる。そのため従来の溶剤系または水系の上塗りと比較して、UV硬化型の上塗りは基材への密着性は低く、UV硬化型上塗りを意識した基材設計が必要になる場合が多々ある。先に例示した従来技術によって処理した板材表面もUV硬化型上塗りの密着性が劣る場合が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べた通り、金属板の表面に成形加工性、耐食性、耐傷付き性等を付与する目的で樹脂皮膜を形成する従来の表面処理方法では、UV硬化型上塗りの密着性を満足する皮膜が得られていない。本発明はこの問題を解決することを目的として、金属板、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金板の表面に適用可能な、塗膜が、上記諸特性に加えて、良好なUV硬化型上塗り密着性を示す水性塗料組成物、およびそれを用いた金属板の表面処理方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明は、
(A)乾燥フィルムの伸長度が100%以上のウレタン樹脂(ただし下記(C)を除く)
(B)少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する合成樹脂(ただし下記(C)を除く)
(C)少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のウレタン樹脂
において、(C)単独、または(A)(B)および(C)から選ばれる2種以上、および水を含有し、光重合開始剤を含有しない金属板用水性塗料組成物に関する。また、本発明は上記金属板用水性塗料組成物を効果的に使用するための方法である、上記金属板用水性塗料組成物を金属板表面に塗布後乾燥し、さらにその表面の全部または一部にUV硬化型塗料、UV硬化型インキまたはUV硬化型接着剤の皮膜を形成させることを特徴とする金属板の表面処理方法に関する。上記組成物および表面処理方法を用いる場合には、良好な成形加工性、良好な耐食性および良好な耐傷付き性に加え、良好なUV硬化型上塗り密着性が得られる。
上記組成物および方法において、該組成物が(D)水分散性ワックスを全固形分中0.1〜20重量%の範囲内で含有する場合には、上記諸特性に加え、強度の成形加工における良好な成形加工性が得られ、また(E)モース硬度が2.5以上の水不溶性微粒子を、全固形分中30重量%以下の範囲内で含有する場合には、上記諸特性に加え、より良好な耐傷付き性が得られる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の内容を詳しく説明する。
本発明において、(A)乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂とは、その水分散液を支持板上に塗布し、24時間室温乾燥し、ついで120℃×10分追加乾燥して得られる乾燥フィルム(150μm厚×10mm幅)を300mm/minで引っ張り、破断したときの伸長度が100%以上であるポリウレタン樹脂をいうものとする。該伸長度が100%を下回る場合は、塗布乾燥後に金属板を加工する場合の変形追従性が劣り、加工部に亀裂が入りやすくなることにより耐食性の低下を招くため好ましくない。また、該伸長度の上限は特に制限されるものではないが、800%を超える場合は一般に皮膜硬度が低すぎるものとなり、耐傷付き性の点で実用範囲が狭くなるため、該伸長度は800%以下であることが好ましい。
【0008】
上記でポリウレタン樹脂としては、上記伸長度を満足する限り、一般のポリウレタン樹脂を使用することができる。すなわち本発明の上記ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基を2個以上(通常2個)有するポリイソシアネートと水酸基を2個以上(通常2個)有するポリオールとの重付加反応によって得られるポリウレタン樹脂であることができる。
【0009】
上記でポリイソシアネートとしては、芳香族、脂環式および脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、具体的には、芳香族ポリイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネート(TDI)(2,4−または2,6−TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(4,4´−または2,4´−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)(通常1,5−NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、3,3´−ジメトキシ−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート等が、脂環式ポリイソシアネートとしてはジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)(4,4´−または2,4´−HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソプロピリデンビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート(CHPI)(通常1,4−CHPI)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が、脂肪族ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、テトラメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0010】
上記でポリオールとしては、通常(ポリ)アルキレングリコール、ポリエステルポリオール、C−C結合を主鎖とするポリオールおよびその他のポリオールが挙げられる。
【0011】
ここで(ポリ)アルキレングリコールとしては、(ポリ)エチレングリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、上記のような(ポリ)アルキレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量のポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸との重縮合によって得られる末端に水酸基を有するポリエステルポリオールが挙げられる。
【0012】
C−C結合を主鎖とするポリオールとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート−ビニルアルコール共重合体、両末端に水酸基を有するポリオレフィン(両末端に水酸基を有するポリエチレン、ポリプロピレン等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分もしくは完全加水分解物等が挙げられる。
その他のポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
【0013】
本発明で使用する(A)の乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、500〜1,000,000程度であることが好ましい。
【0014】
(A)の乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂としては、市販品である、ハイドランHW−340(ポリエステルポリオール系ポリウレタン樹脂の水分散液、伸長度280%、大日本インキ化学工業株式会社製)、ハイドランHW−312B(ポリアルキレングリコール系ポリウレタン樹脂の水分散液、伸長度700%、大日本インキ化学工業株式会社製)、ハイドランHW−950(ポリエステルポリオール系ポリウレタン樹脂の水分散液、伸長度120%、大日本インキ化学工業株式会社製)、パーマリンUA−110(ポリアルキレングリコール系ポリウレタン樹脂の水分散液、伸長度500%、三洋化成工業株式会社製)、パーマリンUA−310(ポリエステルポリオール系ポリウレタン樹脂の水分散液、伸長度420%、三洋化成工業株式会社製)等を用いることも可能である。
【0015】
本発明で使用する、(B)の少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する合成樹脂としては、少なくとも1つの、好ましくは2つ以上のエチレン性二重結合を有する、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂やジアリルフタレート系樹脂が挙げられる。
【0016】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するエポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたは水添ビスフェノールA、またはビスフェノールA、ビスフェノールFおよび水添ビスフェノールAの任意の組合せの混合物とエピクロルヒドリンとの重縮合および重付加によって生成した両末端エポキシ基のビスフェノール型エポキシ樹脂に、エチレン性二重結合含有モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等)がエポキシ基とカルボキシル基との間の反応により付加した、ビスフェノール型エポキシ樹脂系エチレン性二重結合含有樹脂、代表的には上記でビスフェノールAおよび(メタ)アクリル酸を使用して得られる下記一般式で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂系エチレン性二重結合含有樹脂が挙げられる。
【0017】
【化1】
【0018】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂系エチレン性二重結合含有樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、600〜1,000,000程度のものが好ましい。
【0019】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリエステル系樹脂としては、不飽和ジカルボン酸もしくはその無水物(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸等)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジもしくはトリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等)とを重縮合して得られる通常の不飽和ポリエステル樹脂を用いることができる。また不飽和ポリエステル樹脂としては、上記不飽和ジカルボン酸の一部がフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等で代替された不飽和ポリエステル樹脂であっても良い。
【0020】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリエステル系樹脂としては、また、グリシジル(メタ)アクリレートとアルカン二酸(コハク酸、アジピン酸等)もしくはその無水物またはアルケン二酸(マレイン酸、フマル酸等)もしくはその無水物とをグリシジル基とカルボキシル基との間で重付加および重縮合させるかもしくは単に重付加させて得られる樹脂を用いることができる。
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリエステル系樹脂としては、また、下記一般式で表されるメタクリル酸二量体−ポリオール共重合体を用いることができる。
【0021】
【化2】
【0022】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリエステル系樹脂としては、また、下記一般式で表されるプロキシル化ビスフェノールAフマラートポリエステル樹脂の2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン変性体を用いることができる。
【0023】
【化3】
【0024】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリエステル系樹脂としては、また、フタル酸もしくはイソフタル酸またはその無水物とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール等)とを重縮合、または重付加および重縮合させて得られる、両末端がOH基の共重合体を(メタ)アクリル酸で少なくとも片末端をエステル化して得られる樹脂を用いることができる。
【0025】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリエステル系樹脂としては、また、前記不飽和ポリエステル樹脂とグリシジル(メタ)アクリレートとを該不飽和ポリエステル樹脂の末端OH基もしくは末端カルボキシル基とグリシジル基との間で反応させて得られる樹脂を用いることができる。
【0026】
上述したような、少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリエステル系樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、1,000〜100,000程度であることが好ましい。
【0027】
次に少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリウレタン系樹脂としては、一般にイソシアネート基を2個以上(通常2個)有するポリイソシアネートと活性水素基を2個以上(通常2個)有するポリオールとの重付加反応によって得られる、両末端がNCO基のポリウレタン樹脂と1分子中にエチレン性二重結合とOH基とを併有する化合物とをNCO基とOH基との間で反応させて得られる樹脂を用いることができる。
【0028】
かかるポリイソシアネートおよびポリオールとしては、上記(A)の乾燥フィルムの伸長度が100%以上のウレタン樹脂の説明で述べたポリイソシアネートおよびポリオールをそれぞれ用いることができる。
【0029】
1分子中にエチレン性二重結合とOH基とを併有する化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル−o−キシリレン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−o−キシリレン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル等が挙げられる。
【0030】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリウレタン系樹脂としては、また、下記一般式で表されるヒドロキシエチルフタリルメタクリレートをキシリレンジイソシアネートでウレタン化したものを用いることができる。
【0031】
【化4】
【0032】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリウレタン系樹脂としては、また、下記一般式で表されるトリメチロールプロパンジアリルエーテルをトリレン−2,4−ジイソシアネートでウレタン化したものを用いることができる。
【0033】
【化5】
【0034】
少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するポリウレタン系樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、600〜1,000,000程度であることが好ましい。
【0035】
(B)の少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する合成樹脂としては、さらに、少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合系樹脂、シリコーン樹脂等も用いることができる。
【0036】
(B)の少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する合成樹脂であるジアリルフタレート系樹脂としては、ジアリルフタレートまたはジアリルイソフタレートの単独重合体もしくは両者の共重合体を用いることができる。ジアリルフタレート系樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、2,000〜1,000,000程度であることが好ましい。
【0037】
(C)の少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のウレタン樹脂としては、上記(B)の説明で述べた、少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するウレタン系樹脂中、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のものを用いることができる。
(C)の市販品としては、R−5000(ポリウレタンアクリレート水分散液、伸長度340%、第一工業製薬株式会社製)等を用いることができる。
【0038】
樹脂(A)、(B)および(C)の相互比率については、樹脂(A)+(B)+(C)を基準として、(A)+(C)が50〜100重量%で、かつ(B)+(C)が0.1〜100重量%であることが必要である。(A)+(C)が50重量%未満であると、成形加工時に求められる皮膜表面の滑り性、耐磨耗性が不十分となり、(B)+(C)が0.1重量%未満であると、UV硬化型塗料、インキまたは接着剤の密着性が不十分となる。(A)+(C)は好ましくは60〜100重量%であり、(B)+(C)は好ましくは5〜100重量%である。
【0039】
本発明の金属板用水性塗料組成物中での樹脂(A)、(B)および(C)の合計の濃度については、特に制限はないが、低すぎると塗布したときに必要な塗膜を形成させることが困難になり、高すぎると組成物を水分散液に維持することが困難になるので、組成物全体に対し5〜70重量%程度、さらには10〜60重量%程度が適当である。
【0040】
本発明の金属板用水性塗料組成物は光重合開始剤を含有しない。なお、本発明で光重合開始剤とは、エチレン性二重結合を有するモノマーの重合や架橋を開始するラジカル重合活性種またはイオン重合活性種を露光、特に紫外線への暴露によって生成する物質をいうものとする。UV硬化型塗料、インキまたは接着剤は少なくとも使用時に光重合開始剤を含有しているが、それによる連鎖重合時に、本発明組成物から形成される下塗り塗膜中の二重結合を関与せしめて、塗膜間の密着性を確保しようとするのが本発明の狙いである。
【0041】
かかる樹脂(C)単独または樹脂(A)、(B)および(C)の2種以上を含有し、光重合開始剤を含有しない本発明の金属板用水性塗料組成物を金属板に塗布することにより得られる塗膜は、良好な成形加工性、良好な耐食性および良好な耐傷付き性に加え、良好なUV硬化型上塗り密着性を示す。
【0042】
樹脂(C)単独または樹脂(A)、(B)および(C)の2種以上を含有する本発明の金属板用水性塗料組成物がさらに(D)水分散性ワックスを全固形分中0.1〜20重量%の範囲内で含有する場合には、形成される塗膜は、良好な上記諸特性に加え、金属板の屈曲曲げ、絞り、打ち抜きなどの強度の成形加工時にも良好な潤滑性を示し、金属板に良好な成形加工性を与える。
【0043】
水分散性ワックスの例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、カルナウバワックス、糠ロウ、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、脂肪酸アミドワックス、サゾールワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらの中で好ましいものはポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスである。
水分散性ワックスは粒子状のものを、物理的手法、化学的手法またはそれらを併用した手法により水中に分散して使用し、また水中に分散したものが市販されている。
【0044】
この水分散性ワックスの含有量は、本発明の金属板用水性塗料組成物中の、それ自身も含めた全固形分中の0.1〜20重量%の範囲内であることが必要である。水分散性ワックスの全固形分中の含有量が20重量%を超える場合には、UV硬化型上塗り密着性の低下や皮膜強度の不足が生じてくるため好ましくない。また、該含有量が0.1重量%未満の場合には、強度の成形加工の場合に、被処理金属板に不十分な成形加工性しか与えられなくなる。
なお、本発明において全固形分とは樹脂(A)、(B)および(C)、水分散性ワックス(D)およびモース硬度が2.5以上の水不溶性微粒子(E)の合計をいうものとする。
【0045】
樹脂(C)単独または樹脂(A)、(B)および(C)の2種以上を含有する本発明の金属板用水性塗料組成物がさらに(E)モース硬度が2.5以上の水不溶性微粒子を、全固形分中5〜30重量%の範囲内で含有する場合には、形成される塗膜は、良好な成形加工性、良好な耐食性、良好な耐傷付き性および良好なUV硬化型上塗り密着性を示すことに加え、金属板にさらに良好な耐傷付き性を与える。
【0046】
モース硬度が2.5を下回る場合、耐傷付き性の向上効果は認められない。また、モース硬度が7を超える場合には、耐傷付き性はさらに良好となるが、表面処理後の成形加工に用いる金型の材質によってはその表面を損傷する場合が出てくる恐れがあるため、モース硬度は好ましくは2.5〜7の範囲内である。
【0047】
かかる水不溶性微粒子は、上記モース硬度条件を満たしている限り、特に制限されないが、具体例としては、珪藻土、シリカ、アルミナ、石英、二酸化チタン、ガラス、炭酸カルシウム、マイカ、鉄、ニッケル、ステンレス、酸化鉄、金属酸化物、アルミニウム等が挙げられる。
【0048】
また、この水不溶性微粒子含有量は、本発明の金属板用水性塗料組成物中の、それ自身も含めた全固形分中の30重量%以下であることが必要である。この含有量が30重量%を超える場合には、該組成物をを用いて皮膜形成した金属板の屈曲曲げ、絞り、打ち抜き等の成形加工時の潤滑性や皮膜の強度が劣ってくるため好ましくない。また、この含有量が5重量%未満の場合は、外的要因により表面に傷が付くのを防ぐ効果が十分でない場合が出てくる可能性があるため、水不溶性微粒子の含有量は、5〜30重量%であることが好ましい。
【0049】
本発明の金属板用水性塗料組成物には、さらに必要に応じて体質顔料、着色剤、導電剤、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、増粘剤等の公知の各種添加剤を含有させることができる。
【0050】
本発明の金属板用水性塗料組成物を調製するに際しては、上記各成分を水に分散させれば良い。水としては脱イオン水等を用いることができる。本発明で使用する樹脂(A)、(B)および(C)や水分散性ワックスが水分散液として利用できる場合には、そのまま用いることができる。
【0051】
本発明の金属板用水性塗料組成物は、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛系やアルミニウム系の各種めっき鋼板、アルミニウムまたはアルミニウム合金板等の各種金属板に適用される。
これらの金属板は、通常、溶剤系洗浄剤、アルカリまたは酸性の水系洗浄剤によって清浄化し、ついで、必要に応じて、耐食性、上塗り密着性、加工密着性等を付与する目的で、公知のクロメート処理、リン酸鉄処理、リン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、リン酸ジルコン処理、有機皮膜処理等の下地処理を行う。
【0052】
ついで本発明組成物を金属板表面に塗布するが、この塗布は、ロールコート、ディップコート、バーコート、フローコート、スプレーコート、刷毛塗り等によって行うことができる。塗布後、塗膜の乾燥を行うが、この乾燥は自然乾燥もしくは加熱乾燥による溶媒の揮発をもって完了すべきで、光重合開始剤を用いるUV硬化を行ってはならない。光重合開始剤を用いるUV硬化を行うと、本発明の水性塗料組成物が含有するエチレン性二重結合部位が反応・結合に費やされてしまい、上塗りUV硬化型塗料、インキまたは接着剤の密着性を向上し得なくなるからである。
【0053】
乾燥皮膜量は、最終用途により異なるが、おおよそ0.3〜20g/m2が適切である。0.3g/m2を下回る場合、本発明の目的とする良好な上塗り密着性、良好な成形加工性、良好な耐食性および良好な耐傷付き性のすべてを達成することができない。20g/m2を上回る場合、加工性が不十分となりまた経済的でない。
【0054】
本発明の金属板用水性塗料組成物によって形成された皮膜を有する表面には、さらにその表面の全部または一部に、UV硬化型塗料、インキまたは接着剤の皮膜を形成させることで、意匠性、識別性、耐食性、接着性等の機能を付与することができる。UV硬化型塗料、インキまたは接着剤としては、通常使用されるものを、特別の制限なく、用いることができる。
なお、UV硬化とは、紫外線の化学エネルギーを利用し、塗料やインキや接着剤等を光重合させ、短時間に硬化乾燥させる方法であり、塗料やインキや接着剤に含まれる感光性分子が光重合開始剤の存在下で紫外線を吸収し、重合・固化する方法である。すなわち、UV硬化型塗料、インキまたは接着剤とは、該方法の適用を前提とした、感光性高分子と光重合開始剤とを含有する塗料、インキまたは接着剤である。
【0055】
また、本発明の水性塗料組成物によって形成された皮膜を有する金属板は、多くの場合、曲げ、深絞り、押し出し、パンチング等の加工が施され、最終用途の家電用、自動車用等の部品となる。
【0056】
【作用】
本発明の金属板用水性塗料組成物が含有する乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂は、被塗物である金属板表面に塗布後、乾燥されることによりポリウレタン樹脂皮膜を形成し、成形加工時に求められる皮膜表面の滑り性、耐摩耗性等を付与する。その際、本発明の水性塗料組成物が含有する、少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する合成樹脂はポリウレタン樹脂と絡み合っており、形成されたポリウレタン樹脂皮膜中に固定されて含まれることとなる。また、少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂が使用される場合には上記固定状況がそのもの自体で生じている。ここで、本発明の水性塗料組成物は光重合開始剤を含有しないため、被塗物表面で皮膜となった時点でも、依然エチレン性二重結合を有している。そのため皮膜表面にも少なからずエチレン性二重結合が存在しており、光重合開始剤と紫外線、および重合の相手となるエチレン性二重結合が存在すれば、光反応を起こすことができるのである。このような表面に、やはりエチレン性二重結合を有するモノマーもしくはオリゴマーを主成分とするUV硬化型インキや塗料を塗布し、紫外線を照射して硬化すると、UV硬化型塗料、インキまたは接着剤が含有する光重合開始剤の働きによりエチレン性二重結合が重合を開始し、連鎖反応により、本発明の水性塗料組成物による下地皮膜中のエチレン性二重結合との結合を交えながら、UV硬化型塗料、インキまたは接着剤が高分子化し、上塗り硬化が完了する。このようにして形成されたUV硬化型上塗り皮膜は、層間に強力な化学結合を有するものとなり、良好な密着性を発揮できるのである。
【0057】
また、本発明で使用する水分散性ワックスは、本発明の金属板用水性塗料組成物の使用目的に応じて適宜含有させる。含有させることが必要なのは、例えば深絞り成形加工等の強度の加工に供される場合等であり、形成される皮膜表面あるいは内部にあって、低変形抵抗、低表面エネルギーといった特性を与え、成形加工性をより向上させる。一般に、表面にワックス類が存在する場合、低い表面エネルギーとなる上、表面脆弱層的に存在するため上塗りの密着性は劣る傾向となる。しかしながら、本発明においては水分散性ワックスを用いているため、形成された皮膜表面の二次元構造は、点在するワックス粒子の空隙から本発明の水性塗料組成物が含有する、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂と少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する合成樹脂とが絡み合って形成された皮膜表面、または少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂から形成された皮膜表面が露出しており、露出面にはエチレン性二重結合が存在するため光反応を起こすことができ、水分散性ワックスの存在下であってもやはり上塗り塗膜との間に強力な化学結合を形成することができ、良好な密着性を発揮できるのである。
【0058】
さらに、本発明の水性塗料組成物にモース硬度が2.5以上の水不溶性微粒子を、全固形分中30重量%以下の範囲内で含有させた場合、水分散性ワックスの場合と同様に、形成された皮膜表面の二次元構造は、点在する該水不溶性微粒子の空隙から本発明の水性塗料組成物が含有する、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂と少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する合成樹脂とが絡み合って形成された皮膜表面、または少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂から形成された皮膜表面が露出しているものとなって良好な密着性を発揮できる上、鋭利な物体が接触しても該水不溶性微粒子が接触して皮膜に傷が付くのを防止できるのである。
【0059】
【実施例】
以下実施例を比較例と共に挙げ、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例、比較例における試験法は次の通りである。
【0060】
1.金属板用水性塗料組成物
表1に実施例および比較例に用いた金属板用水性塗料組成物の内容を示す。
これらの金属板用水性塗料組成物はそれぞれ、脱イオン水をマグネチックスターラーで発泡しない程度に強撹拌しながら(A)→(B)→(C)→(D)→(E)の順序で順次添加し、他方(A)+(B)+(C)の濃度をいずれも25重量%とすることにより調製した。なお、光重合開始剤を添加した例では、これを塗布直前(すなわち(E)の後)に添加した。
【0061】
【表1】
【0062】
<表1の説明>
ポリウレタン樹脂(A)
ハイドランHW−340
商品名、大日本インキ化学工業(株)製、ポリエステル系ポリウレタン水分散体、伸長度280%
ハイドランHW−312B
商品名、大日本インキ化学工業(株)製、ポリエーテル系ポリウレタン水分散体、伸長度700%
ハイドランHW−950
商品名、大日本インキ化学工業(株)製、ポリエステル系ポリウレタン水分散体、伸長度120%
パーマリンUA−110
商品名、三洋化成工業(株)製、ポリエーテル系ポリウレタン水分散体、
伸長度500%
パーマリンUA−310
商品名、三洋化成工業(株)製、ポリエステル系ポリウレタン水分散体、
伸長度420%
ハイドランHW−350
商品名、大日本インキ化学工業(株)製、ポリエステル系ポリウレタン水分散体、伸長度10%
【0063】
エチレン性二重結合含有合成樹脂(B)
ラロマーLR8765
商品名、BASF Japan製、脂肪族エポキシ樹脂系エチレン性二重結合含有樹脂
ニューフロンティアPET−3
商品名、第一工業製薬(株)製、ポリエステル系エチレン性二重結合含有樹脂
エチレン性二重結合含有ポリウレタン樹脂(C)
R−5000
商品名、第一工業製薬(株)製、ポリウレタン系エチレン性二重結合含有樹脂、伸長度340%
【0064】
水分散性ワックス(D)
ワックスa
ケミパールW−950、商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系ワックス水分散体
ワックスb
ヘキストワックスPED522、商品名、ヘキストジャパン(株)製、酸化ポリエチレン系ワックス
水不溶性微粒子(E)
微粒子a
シリチンZ−89、商品名、ホフマンミネラル社製、モース硬度7.0の粒子と2.5の粒子との混合物
微粒子b
デントールWK200、商品名、大塚化学(株)製、モース硬度4.0〜5.0
微粒子c
クラライトマイカ600−W、商品名、(株)クラレ製、モース硬度2.5
光重合開始剤
開始剤a
ESACURE KIP100F、商品名、Fratelli
Lanberti s.p.a製、ヒドロキシケトンオリゴマー光重合開始剤
【0065】
2.表面処理方法
1)試験体と下地処理
A)アルミニウム合金板
市販のA−5052アルミニウム板テストピース(板厚1.0mm)を、以下に示す仕様で前処理したものを用いた。
▲1▼脱脂:日本パーカライジング(株)製「ファインクリーナー4498SK」を用い、55℃で10秒間スプレー脱脂を行った。
▲2▼水洗:水道水を用い、15秒間スプレー水洗を行った。
▲3▼クロメート処理:日本パーカライジング(株)製「アルクロム K−702」を用い、55℃で7秒間スプレー処理し、表面Cr付着量15mg/m2のクロメート処理を行った。
▲4▼水切り乾燥:電気オーブンにて80℃で5分間水切り乾燥を行った。
【0066】
B)亜鉛めっき鋼板
市販の電気亜鉛めっき鋼板テストピース(目付20/20g/m2、板厚0.8mm)を、以下に示す仕様で前処理したものを用いた。
▲1▼脱脂:日本パーカライジング(株)製「ファインクリーナー4336」を用い、60℃で20秒間スプレー脱脂を行った。
▲2▼水洗:水道水を用い、15秒間スプレー水洗を行った。
▲3▼クロメート処理:日本パーカライジング(株)製「ジンクロム357」を用い、50℃で5秒間スプレー処理し、表面Cr付着量15mg/m2のクロメート処理を行った。
▲4▼水切り乾燥:電気オーブンにて80℃で5分間水切り乾燥を行った。
【0067】
2)表面処理
表1に示した金属板用水性塗料組成物を用い、上記下地処理を施された試験板に以下の方法により表面処理を行った。
実施例1
水性塗料組成物aをエアスプレーコートにより、乾燥皮膜重量が5.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで120℃×2分の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
実施例2
水性塗料組成物bをロールコートにより、乾燥皮膜重量が0.6g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで230℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
実施例3
水性塗料組成物cをバーコートにより、乾燥皮膜重量が3.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで120℃×2分の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
実施例4
水性塗料組成物dをディップコートにより、乾燥皮膜重量が1.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで120℃×2分の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
【0068】
実施例5
水性塗料組成物eをロールコートにより、乾燥皮膜重量が2.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで230℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
実施例6
水性塗料組成物fをロールコートにより、乾燥皮膜重量が2.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで120℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:亜鉛めっき鋼板)
実施例7
水性塗料組成物gをロールコートにより、乾燥皮膜重量が1.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで180℃×2分の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
実施例8
水性塗料組成物hをロールコートにより、乾燥皮膜重量が2.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで120℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
【0069】
比較例1
水性塗料組成物iをロールコートにより、乾燥皮膜重量が2.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで230℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
比較例2
水性塗料組成物jをロールコートにより、乾燥皮膜重量が2.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで120℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
比較例3
水性塗料組成物kをロールコートにより、乾燥皮膜重量が2.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで230℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:亜鉛めっき鋼板)
比較例4
水性塗料組成物lをロールコートにより、乾燥皮膜重量が2.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで120℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
比較例5
水性塗料組成物mをロールコートにより、乾燥皮膜重量が2.0g/m2となるように塗布した後、電気オーブンで230℃×20秒の乾燥を行った。(試験板:アルミニウム合金板)
比較例6
表面処理を行わなかった。(試験板:アルミニウム合金板)
【0070】
3.試験方法
1)UV硬化型上塗り印刷性
上塗り剤:「RIG BLACK No.10」(SEIKO ADVANCE(株)製
塗布方法:#240シルクスクリーン、ベタ印刷
硬化方法:UV(ランプ出力120W/cm)照射8秒間
評価方法:上塗り印刷後の試験片表面にセロテープを貼付・密着後、急激に剥離した後の印刷面を観察し、以下の判定基準に基づいて判定、評価した。
○…インキ剥離無し △…一部インキ剥離有り ×…全面剥離
2)耐食性
評価方法:試験片に2tのハゼ折り加工を施し、沸騰水道水中に30分間浸漬し、加工部の外観観察により以下の判定基準に基づいて判定、評価した。
○…黒変なし △…若干黒変有り ×…明らかに黒変
3)表面潤滑性
評価方法:バウデン式摩擦摩耗試験機を用いて表面動摩擦係数(μ[−])を測定、評価した。
4)耐傷付き性
評価方法:JIS−K−5400で規定される鉛筆引っ掻き試験を行い、目立つ傷が付いた時点での鉛筆硬度で評価した。
以上の試験手順で評価を行った結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2の結果から明らかなように、本発明の金属板用水性塗料組成物を用いた実施例1〜8は、UV硬化型上塗りの密着性、耐食性共に優れ、表面潤滑性、耐傷付き性も良好である。また、表面潤滑性のさらなる向上のために水分散性ワックスを含有させた実施例6においても、また耐傷付き性のさらなる向上のために水不溶性微粒子を含有させた実施例7においても、さらには表面潤滑性のさらなる向上のための水分散性ワックスと耐傷付き性のさらなる向上のための水不溶性微粒子の双方を含有させた実施例7においても、上塗り密着性、耐食性への悪影響は認められず、良好な性能を示した。
【0073】
これに対して、比較例1は、エチレン性二重結合を有する樹脂((B)、(C))を使用していないため、上塗り密着性が十分でなかった。比較例2は、光重合開始剤を添加したため、UV硬化性上塗りを塗布する前に皮膜中のエチレン性二重結合が光重合起こしたか、またはUV硬化性上塗りの硬化時に自身が含有するエチレン性二重結合同士の反応に多くが費やされたため、表面のエチレン性二重結合が十分でなく、その結果上塗り密着性が劣ったものである。比較例3は、伸長度が100%未満のポリウレタン樹脂を用いたため、耐食性が劣るものとなった。比較例4は、水分散性ワックスを固形分中20重量%を超えて含有させたため、上塗り密着性、耐食性共に劣ったものである。比較例5は、水不溶性微粒子を固形分中30重量%を超えて含有させたため、皮膜強度が失われ、性能が劣った例である。比較例6は、本発明の表面処理を行わなかったため、表面潤滑性が極端に劣り、いかなる軽加工でも塗油なしでは成形できないレベルである。
【0074】
【発明の効果】
本発明の金属板用水性塗料組成物を用いて得られる金属板の処理表面は、ポリウレタン樹脂の特性により、成形加工時に求められる皮膜表面の滑り性が付与されており、さらにエチレン性二重結合を有する合成樹脂がポリウレタン樹脂と絡み合い固定されて含まれるかポリウレタン樹脂自身がエチレン性二重結合を有し、かつ該組成物が光重合開始剤を含有しないため、UV硬化型塗料、インキまたは接着剤を塗布し紫外線を照射して硬化したときに、皮膜の持つエチレン性二重結合との結合を交えながらUV硬化型塗料、インキまたは接着剤が高分子化し、良好な密着性を示す。また、使用目的に応じて水分散性ワックスを適宜使用すれば、深絞り成形加工等の強度の加工に供することが可能な表面潤滑性を与えつつも、点在するワックス粒子の空隙で上塗りと接触し、本発明の水性塗料組成物による下塗り皮膜が有するエチレン性二重結合の働きにより、良好な密着性を維持するという効果を併せ持つことができる。さらにモース硬度が2.5以上の水不溶性微粒子を添加することにより、上記と同様に良好な密着性を維持しつつ、鋭利な物体が接触しても該水不溶性微粒子が接触して皮膜に傷が付くのを防止することが可能であるという優れた特長を有する。
Claims (10)
- (A)乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂(ただし下記 (C)を除く)
(B)少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する合成樹脂(ただし下記(C)を除く)
(C)少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する、乾燥フィルムの伸長度が100%以上のポリウレタン樹脂
において、(C)単独、または(A)、(B)および(C)から選ばれる2種以上、および水を必須成分として含有し、光重合開始剤を含有しない金属板用水性塗料組成物。 - 樹脂(B)がそれぞれ少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合体系樹脂もしくはシリコーン樹脂、またはジアリルフタレート系樹脂である請求項1記載の金属板用水性塗料組成物。
- 樹脂(A)、(B)および(C)の合計に基づいて、(A)および(C)の合計が50〜100重量%であり、および(B)および(C)の合計が0.1〜100重量%である請求項1または2記載の金属板用水性塗料組成物。
- (D)水分散性ワックスを全固形分中0.1〜20重量%の範囲内で含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属板用水性塗料組成物。
- (E)モース硬度が2.5以上の水不溶性微粒子を、全固形分中30重量%以下の範囲内で含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属板用水性塗料組成物。
- 水不溶性微粒子(E)がそれぞれモース硬度が2.5以上の珪藻土、シリカ、アルミナ、石英、二酸化チタン、ガラス、炭酸カルシウム、マイカ、鉄、ニッケル、ステンレス、酸化鉄、金属酸化物またはアルミニウムである請求項5記載の金属板用水性塗料組成物。
- 金属板が冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウムまたはアルミニウム合金板である請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属板用水性塗料組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属板用水性塗料組成物を塗布し乾燥することによって形成される皮膜を表面に有する金属板。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属板用水性塗料組成物を金属板表面に塗布後乾燥し、さらにその表面の全部または一部にUV硬化型塗料、UV硬化型インキまたはUV硬化型接着剤の皮膜を形成させることを特徴とする金属板の表面処理方法。
- 請求項9記載の表面処理方法によって形成される皮膜を表面に有する金属板。
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